非吸収性偏光カラーフィルター及びそれを組み込んだ液晶表示装置
本発明は、カラーフィルターの分野に関し、特に、非吸収性偏光カラーフィルターに関し、さらに、非吸収性偏光カラーフィルターを用いそして隣接するサブピクセル間での光の再利用を用いて画像のコントラストを向上させた高輝度カラー液晶表示装置に関する。本開示の発明は、以下の要素、すなわち、後方広帯域多層無損失偏光子、前方広帯域多層無損失偏光子、及び色偏光回転子を有する、非吸収性偏光カラーフィルターに代表される。前記後方広帯域多層無損失偏光子は、所定の方向の透過軸ABを有する。前記前方広帯域多層無損失偏光子は、前記後方広帯域多層無損失偏光子に略平行に配置されており、かつ、透過軸ABに略平行又は略直交な透過軸を有する。前記色偏光回転子は、前記前方広帯域多層無損失偏光子と前記後方広帯域多層無損失偏光子との間に、配置されている。前記色偏光回転子は、前記透過軸ABの方向に対して振れ角度αで符号が交互に変わるc軸の配向を有する複数の複屈折薄膜の積層体からなる。前記複屈折薄膜の数、振れ角度α、厚み、及び光学異方性は、前記非吸収性偏光カラーフィルターが、透過軸ABに略平行な偏光状態を有する所定の色の光を透過させるよう、透過軸ABに直交な偏光状態を有する前記所定の色の光を反射させるよう、そして、他の所定の色の非偏光を反射させるよう、選択されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルター、特に、非吸収性偏光カラーフィルターに関し、さらに、非吸収性偏光カラーフィルター用いて画像のコントラスト、さらには隣接するサブピクセル間での光の再利用を向上させた高輝度カラー液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コントラストが高いビデオ画像を表示できるフラット液晶表示装置(LCD)の需要は大きい。直視型のそのような表示構造が求められる装置の具体例には、ノート型、ラップトップ型、及び他の型のコンピュータがある。
【0003】
一般的に、従来のカラーLCDパネルは、実質的に同じ基本構造を有する。それぞれのLCD表示パネルは、均一な照明強度の平面を作るためのバックライト構造体、光の強度の変調をもたらす制御素子の電気的にアドレス可能なアレイ、及び、カラー画像を形成するため、変調された光のスペクトルフィルタリングをもたらす変調素子のアレイの近傍に配置されるカラーフィルターのアレイ、のような主要素を有する。
【0004】
カラーLCDパネルの設計において、バックライト構造体からカラーフィルターアレイを通過する光の透過百分率を最大にすることが目標となる。しかし、従来のデザインと技術を用いる場合、以下の要因により生じる透過光の顕著な損失のため、この目標を達成することは不可能であった。すなわち、LCDパネルに使用される吸収型偏光子による光エネルギーの損失、LCDパネルに使用されるピクセル化された空間強度変調アレイの薄膜トランジスタ(TFT)及び配線から反射される光の吸収、LCDパネルのスペクトルフィルターに使用される色素による光の吸収、及び、LCDパネル内の層間で屈折率が整合していないことによるフレネル損失、である。このような要因の結果、従来のカラーLCDパネルの光透過効率は典型的に5%以下であった。その結果、バックライト構造体が生成した光の最高95%が、LCDパネルの全域で熱に変換される。従って、高電力を必要とし、そして、適当な冷却手段等が必要となる大量の熱を発生する、超高強度のバックライト光源を用いることなく、従来のカラーLCDパネルを用いて高輝度の画像を得ることは、直接型及び投影型のいずれの表示システムにおいても不可能である。
【0005】
従来のカラーLCDパネルデザインの欠点に対し、パネルの光透過効率を向上させて、生成させる画像の輝度を高めるため、いくつかの代替アプローチが提案されている。
【0006】
例えば、従来のLCDパネルの吸収性色素偏光子の代わりに、色純度を向上させるため、コレステリック液晶(CLC)偏光子を用いるLCDパネルがある。LCDパネルの輝度を向上させるため、光を部分的に再利用する仕組みを用いるLCDパネルもある。さらにもう1つ、LCDパネルの輝度を向上させるため、バックライト構造体の導光パネルから光を取り出すためのホログラフィック拡散板とホログラフィック拡散板により散乱された拡散光を部分的に再利用するめのCLC偏光子とを用いるLCDパネルも存在する。
【0007】
しかし、そのような従来のLCDパネルは、やはり欠点や不利な点が解消されていない。特に、非吸収性CLC偏光子及び局部的光再利用の原理を利用しているにもかかわらず、従来のLCDパネルは依然として、バックライト構造体から見る者に延びる光路に沿った光吸収性層を、少なくとも一つ必要とする。その結果、従来のLCDパネルは、非常に低い光透過効率を有する。従って、従来のLCDパネルを用いて高輝度のカラー画像を形成するには、高強度のバックライト光源を必要とした。それは、非常に高い電力を消費し、大量の熱を発生し、そして、LCDパネルとバックライト構造体におけるランプの両方の温度を安全な動作範囲に維持するため、ファンや他の冷却手段の使用を必要とする。
【0008】
従って、非吸収性カラーフィルターが強く求められており、そして、従来のLCDパネル装置の欠点や不利な点がなく高輝度のカラー画像を生成できる改良されたカラーLCDパネルが強く求められている。
【発明の開示】
【0009】
本開示の発明は、以下の要素、すなわち、後方広帯域多層無損失偏光子、前方広帯域多層無損失偏光子、及び色偏光回転子を有する、非吸収性偏光カラーフィルターである。前記後方広帯域多層無損失偏光子は、所定の方向の透過軸ABを有する。前記前方広帯域多層無損失偏光子は、前面と、前記後方広帯域多層無損失偏光子に面する裏面とを有する。前記前方広帯域多層無損失偏光子は、前記後方広帯域多層無損失偏光子に略平行に配置されており、かつ、透過軸ABに略平行又は略直交な透過軸を有する。前記色偏光回転子は、前記前方広帯域多層無損失偏光子と前記後方広帯域多層無損失偏光子との間に、これらの偏光子と略平行に、配置されている。前記色偏光回転子は、前記透過軸ABの方向に対して振れ角度αで符号が交互に変わるc軸の配向を有する複数の複屈折薄膜の積層体を有する。複屈折薄膜の数、振れ角度α、厚み、及び光学異方性は、前記非吸収性偏光カラーフィルターが、透過軸ABに略平行な偏光状態を有する所定の色の光を透過させ、透過軸ABに直交な偏光状態を有する前記所定の色の光を反射させ、そして、他の所定の色の非偏光を反射させるように、選択されている。
【0010】
また、本発明は、液晶セル及び前記非吸収性偏光カラーフィルターを有する液晶表示装置を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明及びその多くの利点のより完全な理解は、添付の図面及び詳細な仕様と併せて以下の詳細な説明(それらのすべては本開示の一部を構成する)を参照することによってより良い理解が得られることで、容易に達成される。
【0012】
本発明を概説してきたが、添付の特許請求の範囲を限定することなく単に例示の目的でここに示す特定の好ましい態様を参照することにより、本発明をさらに理解することができる。
【0013】
図1において、広帯域多層無損失偏光子のサブコンポーネント構造がより明確に示されている。この偏光子は、複屈折膜60と等方性膜62とが交互に配置される層の積層体からなる。前記偏光子は透過軸ABを有する。非偏光63が前記広帯域多層無損失偏光子に入射する場合、前記透過軸ABに対して略直交に偏光を有する一部の光64(b型の偏光状態)は、前記広帯域多層無損失偏光子から反射される。同時に、前記透過軸ABに対して略平行に偏光を有する他の部分の光65(a型の偏光状態)は、前記広帯域多層無損失偏光子を通過する。
【0014】
バックライト構造体は、a型とb型の両方の偏光状態を有するスペクトル成分からなる非偏光をもたらす。前記広帯域多層無損失偏光子は、積層された複数の層からなる多層構造体であり、それは、少なくとも可視帯における波長を有しかつ前記b型の偏光状態を有するスペクトル成分からなる光を反射させ、かつ、少なくとも可視帯における波長を有しかつ前記a型の偏光状態を有するスペクトル成分からなる偏光を透過させる。
【0015】
前記広帯域多層無損失偏光子は、反射偏光子、干渉偏光子、及び混合型偏光子すなわち反射干渉偏光子、の三種類とすることができる。積層される層の厚みは、厚いものと薄いものの両方とすることができる。厚い層の厚みは、数波長分を超えるものであってもよい。薄い層の厚みは、ある波長の四分の一に略等しいものとすることができる。前記積層体において隣接する層の厚みは、入射光の波長の四分の一に略等しいものとすることができる。広帯域多層無損失偏光子の他の変形例も可能であり、そこにおいては、厚い層と薄い層とが交互に配置される。
【0016】
多層構造体の少なくとも一つの層は、光学異方性であり、かつ、カスケード結晶化プロセスによって作られたものである。
【0017】
図2は、積層された層からなる多層構造体の一つの断面を示す模式図である。この図は、X、Y及びZの方向を規定する座標系を示す。図示される多層構造体は、図面及び明細書を通じて異方性層(結晶薄膜,TCFとも呼ぶ)及び等方性層Bと呼ぶ二つの異なる有機材料の交互に配置される層からなる。異方性TCFは、Optiva, Inc.によって開発されたカスケード結晶化プロセスと呼ばれる方法により得ることができる(P. Lazarev and M. Paukshto, Proceedings of the 7th International Workshop "Displays, Materials and Components" (Kobe, Japan, November 29-December 1, 2000), pp. 1159-1160)。この方法によれば、適当な溶媒に溶解される有機化合物が、コロイド系(リオトロピック液晶溶液)を形成し、そこにおいて、分子は、系の動力学的単位を構成する超分子に集められる。この液晶相は、実質的に、系の秩序づけられた状態の前駆体であり、そこから、その後の超分子の配向および溶媒の除去の過程において、固体の異方性結晶層(結晶薄膜又はTCFとも呼ばれる)が形成される。
【0018】
超分子を有するコロイド系から異方性結晶薄膜を合成するために必要な方法は、以下の工程を含む。
(i)基材上(またはある装置もしくは多層構造体における層の上)に上述したコロイド系を塗布する工程;前記コロイド系はチキソトロピックな特性を有する必要があり、それは、予め設定された温度及び特定の濃度の分散相を保持することにより、もたらされる);
(ii)溶液の粘度を低下させる任意の外部作用(加熱、剪断変形など)によって、塗布されたコロイド系を高流動性の(低下した粘度の)状態にする工程;この作用は、次の配向工程全体の間付与されてもよく、あるいは、配向工程の間に前記系がより高い粘度の状態に戻らないように最小限必要な時間続いてもよい;
(iii)機械的要素を用いてあるいは他の任意の手段により発生させることができる、前記系への外部からの配向作用の工程;前記外部作用の程度は、前記コロイド系の動力学的単位が、必要な配向を獲得しかつ異方性結晶薄膜の結晶格子の基礎として作用する構造を形成するように、十分なものである必要がある;
(iv)層の配向された領域を、前記外部作用により達成される、粘度が低下した状態から最初の粘度の状態又はより高い粘度の状態に変換する工程;この移行は、異方性結晶薄膜構造の配向の減少が起こらないよう、そして、表面欠陥が生じないよう、行われる;
(v)溶媒を除去する(乾燥する)最終工程、この工程の間に、最終的な異方性結晶薄膜の構造が形成される。
【0019】
得られる異方性層において、分子の複数の平面は互いに平行であり、そして、分子は、前記層の少なくとも一部において三次元的結晶構造を形成している。製造技術を最適化することにより、単結晶膜の形成が可能になり得る。
【0020】
前記異方性層の厚みは、通常、1μmを超えない。この層の厚みは、塗布される溶液中の固体物質の含有量を変えることにより、かつ/又は、塗布される層の厚みを変えることにより、調節することができる。必要な光学特性を有する層を得るため、コロイドの混合系(そのような混合物は共同の超分子を形成することができる)を用いることが可能である。
【0021】
溶液中で前記有機化合物を混合すれば、種々の組成の混合集合体が形成される。色素混合物のX線回折パターンを解析すれば、3.1〜3.7Åの範囲の分子間距離に該当する特徴的な回折ピークの存在により、超分子における分子パッキングについて判断することができる。一般的な場合、この値は、結晶及び凝集体の形態の芳香族化合物に共通する。ピークの強度及び鋭さは乾燥の過程で増すが、ピークの位置は変化しないままである。この回折ピークは、集合体(積層体)内の分子間間隔に対応するものであり、種々の材料のX線回折パターンで観測されている。混合することは、分子(又はそのフラグメント)の面構造にとって有利であり、そして、対象とする有機化合物において分子寸法の一つが一致することにとって有利である。塗布される水性層において、有機分子は、一つの方向に、長い距離の秩序を有し、それが、基材表面上で超分子が配向することに関係する。溶媒が蒸発させられるに従い、分子が二軸結晶の三次元構造を形成するのにエネルギー的に有利になる。この目的に使用できる化合物は、上記のものに限定されない。
【0022】
異方性層は、さらに、高度な光学異方性を有する。そのような層は、超分子複合体の光学吸収の特性に関連する、E型偏光子の特性を示し、かつ、吸収がわずかであるスペクトル領域において位相差板(位相シフトフィルム)として機能する。これら異方性層の位相差特性は、その複屈折性(二重屈折)、すなわち、基材上にLLC溶液を塗布する方向において測定される屈折率とそれに直交な方向において測定される屈折率の違い、に関係する。強い(耐光性の)色素分子をベースとするLLC系から形成される層は、高い熱安定性と放射抵抗を特徴とする。そのような層は、約350〜700℃の温度範囲において安定なままである。
【0023】
本開示の非吸収性偏光カラーフィルター及びLCDにおいて実施されるカスケード結晶化プロセスの適用の重要な利点は、前記フィルター及びLCDの機能的要素の形成に印刷技術を用いることができるということである。
【0024】
かくして、光学異方性のA-層は、カスケード結晶化プロセスによって得られる。そのような層は、光軸の一つの方向において3.4±0.3Åの分子間間隔を有する全体的に秩序のある二軸結晶構造を特徴とする。各A層は、少なくとも二つの屈折率nx及びnyを特徴とする。これらの層は、400nm未満の基礎吸収端を有し、可視光の波長帯域において一様に透明であり、かつ、0.98以上の透過係数を有する。各A層は、棒状超分子によって形成される。前記棒状超分子は、共役π系及びイオノゲン基を有する少なくとも一種の多環式有機化合物に相当する。
【0025】
X軸は、「配向」方向と呼ばれ、図2に示すいわゆる「配向」軸(20)を規定する。一方、Y軸は、「横断」方向と呼ばれ、図2に示すいわゆる「透過」軸(30)を規定する。
【0026】
層Bは、等方性層であり、かつ定格屈折率(例えばn=1.64)を有する。前記定格屈折率は、カスケード結晶化プロセスによって実質的に変わることはない。
【0027】
カスケード結晶化プロセスは、TCFの屈折率を変化させる。例えば、TCFは、配向方向についてある一つの屈折率(例えばn=1.88)を有し、かつ、横断方向について別の屈折率(例えばn=1.64)を有する。定義により、面内軸(膜面に平行な軸)についての屈折率を、その偏光面が前記軸に平行な面偏光された入射光に対する「有効」屈折率と呼ぶ。
【0028】
従って、多層積層体(TCF-B-TCF-B-TCF...)は層間で、配向方向について屈折率の大きな差(Δn=1.88−1.64=0.24)を示す。横断方向において、種々の層の屈折率は、実質的に同じ(Δn=1.64−1.64=0)である。これらの光学特性によって、前記多層構造体は、図2に示す「透過」軸に対して正確に配向する入射光の偏光成分を透過させるようになる。
【0029】
図3において、広帯域多層無損失偏光子のもう一つの変形例をより分かりやすく示す。偏光子は、複屈折膜(60及び61)と等方性膜(62)とが交互に配置される層の4分の1波長積層体からなる。屈折率が整合する複屈折率の大きい膜を用いる必要がある。全ての視野角において効率を向上させるため、この偏光子の変形例では、屈折率が異なる二つの異なる複屈折膜を使用する。非偏光63が広帯域多層無損失偏光子に入射するとき、b型の固有の偏光状態を有する一部の光64は、前記広帯域多層無損失偏光子から反射される。同時に、a型の固有の偏光状態を有する他の部分の光65は、前記広帯域多層無損失偏光子を通過する。前記多層構造体の少なくとも一つの複屈折膜は、カスケード結晶化プロセスによって作られる。
【0030】
図4は、色偏光回転子(CPR)が「赤」、「緑」及び「青」のサブピクセルの要素として機能する原理を示している。一つの色(例えば赤、緑又は青)の偏光状態のみが各サブピクセルにおいて90度回転させられる。他の二つの色成分の偏光状態は、変わらないままである。a型の直線偏光状態を有する入射光69に対し、「赤」のサブピクセル66の色偏光回転子は、「赤」の光の偏光状態(b型の偏光状態)を90度回転させる。一方、前記回転子は、光の「緑」成分及び「青」成分の偏光状態(a型の偏光状態)を変わらないままにしておく。「緑」のサブピクセルにおいて、色偏光回転子67は、光の「緑」成分の偏光状態を90度回転させる一方、光の「赤」成分及び「青」成分の偏光状態を変化させない。「青」のサブピクセルにおいて、色偏光回転子68は、光の「青」成分の偏光状態を90度回転させる一方、光の「赤」成分及び「緑」成分の偏光状態を変化させない。
【0031】
図5は、「緑」のCPRのデザインを模式的に示している。このCPRは、光学c軸74の方向が振れている複数の位相差板として機能させられる複数の複屈折薄膜の積層体72を有する。これらの位相差板の光軸は、隣り合うものと正確に±αだけ異なっている。第一の位相差板が基準軸75に対して+αである場合、その隣の位相差板は基準軸に対して−αであり、第三の位相差板は+αに戻り、図5に示すように、それが同様に繰返される。前記積層体におけるそのような位相差板の数をNとすると、N個の位相差板の作用は、偏光ベクトルを2αN回転させることである。偏光ベクトルが角度pi/2回転するならば、以下の等式2αN=pi/2を満たす必要がある。位相差板の数がNである積層体の各位相差板に対する角度αは、pi/(4N)に等しい。なお、積層体における位相差板の数が減少するに従って、スペクトル帯幅(バンド幅)は増加する。従って、飽和色を必要とするカラー再生システムにこのようなCPRを用いる場合、前記システムにおける複屈折位相差板の数は重要な部分となる。しかし、色度より輝度を優先させる場合、位相差板の数を減らすことができ、その特定の要件に対してユーザーが特性を調節できるようにすることができる。膜の厚みがλ/(2Δn)に等しいとき、最大透過率が得られる(ここで、λは回転させられる波長に等しく、かつ、Δn=ne−noである)。図5は、基準軸75の方向に偏光されたスペクトル成分(赤、緑、及び青)を有する入射光71を示している。この場合、出力光73の緑成分の偏光状態は90度回転させられる。同様の理論が他の光成分(赤及び青)に対して当てはまる。積層膜は、カスケード結晶化プロセスによって得ることができる。この場合、c軸は配向方向と一致する。
【0032】
「緑」の非吸収性偏光カラーフィルターを図6に模式的に示す。非吸収性偏光カラーフィルターは、後方広帯域多層無損失偏光子76と前方広帯域多層無損失偏光子78との間に配置された色偏光回転子(CPR)77を有する。図6に示す本発明の一態様において、後方広帯域多層無損失偏光子と前方広帯域多層無損失偏光子は、直交する偏光子であり、そして、後方広帯域多層無損失偏光子の透過軸はCPRの基準軸に平行である。以下の用語をさらなる説明で用いることとする。後方広帯域多層無損失偏光子の透過軸に対して平行な電気ベクトルを有する光の偏光状態を、a型の偏光状態と呼ぶ。一方、後方広帯域多層無損失偏光子の透過軸に対して直交な電気ベクトルを有する光の偏光状態を、b型の偏光状態と呼ぶ。
【0033】
「赤」の帯域(バンド)内の波長を有するスペクトル成分を持つ入射非偏光79Rに対し、b型の偏光状態80Rを有する光の部分は、後方広帯域多層無損失偏光子から反射される一方、a型の偏光状態81Rを有する光のもう一つの部分は、後方広帯域多層無損失偏光子を通過する。従って、光の透過部分は、偏光状態82Rを変えることなくCPRを通過し、そして、同じ偏光状態83Rで前方広帯域多層無損失偏光子から反射される。その結果、光は、偏光状態84Rを変えることなくCPRを再通過し、そして、同じ偏光状態85Rで後方広帯域多層無損失偏光子を再通過する。従って、偏光されていない「赤」の入射光は、実質的に損失なく、「緑」の非吸収性偏光カラーフィルターから反射される。
【0034】
同様の理論が、「青」の帯域内の波長を有するスペクトル成分を持つ入射非偏光79Bについて当てはまる。b型の偏光状態80Bを有する光の部分は、後方広帯域多層無損失偏光子から反射される一方、a型の偏光状態81Bを有する光のもう一つの部分は、後方広帯域多層無損失偏光子を通過する。従って、光の透過部分は、偏光状態82Bを変えることなくCPRを通過し、そして、同じ偏光状態83Bで前方広帯域多層無損失偏光子から反射される。その結果、光は、偏光状態84Bを変えることなくCPRを再通過し、そして、同じ偏光状態85Bで後方広帯域多層無損失偏光子を再通過する。従って、上記の場合と同様、偏光されていない「青」の入射光は、実質的に損失なく、「緑」の非吸収性偏光カラーフィルターから反射される。
【0035】
上記の場合と異なり、「緑」の帯域内の波長を有するスペクトル成分を持つ偏光されていない入射光の部分は、前記非吸収性偏光カラーフィルターを通過する。b型の偏光状態80Gを有する「緑」の光の部分は、後方広帯域多層無損失偏光子から反射される。a型の偏光状態81Gを有する「緑」の光のもう一つの部分は、後方広帯域多層無損失偏光子を通過する。その結果、透過されたスペクトル成分81Gは、偏光状態をa型からb型82Gに変えるCPRを通過する。最終的に、b型の偏光状態を有する前記スペクトル成分は、前方広帯域多層無損失偏光子を通過する(矢印83Gを参照)。従って、a型の偏光状態を有する偏光されていない「緑」の光の部分は、その偏光状態をa型からb型に変える非吸収性偏光カラーフィルターによって透過される一方、b型の偏光状態を有する光のもう一つの部分は、非吸収性偏光カラーフィルターから反射される。従って、非吸収性偏光カラーフィルターは、バンドパスフィルターであり、それは、一つの色(例えば緑)のみの偏光状態を90度回転させる。他の色(青及び赤)の偏光状態は、同じままである。
【0036】
本発明の一態様において、非吸収性偏光フィルターは、無色の複屈折結晶膜のみから作られる。かくして、後方広帯域多層無損失偏光子、前方広帯域多層無損失偏光子及びCPRは、エネルギー損失なく又は吸収なく、光のスペクトル成分を透過させるか又は反射させる。
【0037】
従って、非吸収性偏光カラーフィルターは、二つの広帯域多層無損失偏光子と色偏光回転子とを有する多層構造である。CPRの複屈折薄膜の数、振れ角度α、厚み、及び光学異方性は、前記非吸収性偏光カラーフィルターが、後方広帯域多層無損失偏光子の透過軸ABに略平行な偏光状態を有する所定の色の光を透過させるよう、前記透過軸ABに直交な偏光状態を有する前記所定の色の光を反射させるよう、そして、他の所定の色の非偏光を反射させるよう、選択される。
【0038】
図7及び8に示すこのLCDパネル構造の具体例において、空間強度変調及びそこで使用されるスペクトルフィルタリング機能を実行するため、直線偏光法が用いられる。
【0039】
図7及び8に示す具体例において、バックライト構造体2は、準−拡散反射体3、導光パネル11、端部照明光源12、及び、集束ミラー14をそれぞれ有し、光源12が発生させる光束を導光パネル11の端部に連結する。好ましくは、導光パネル11は、光学的に透明な材料からなり、非偏光を発する一対の小型の蛍光灯が、光源12の役割を果たす。
【0040】
バックライトの動作時、光源12が発生させる光束は、集束ミラー14の支援により、光が通常の態様で全内部反射を示す、導光パネル11の端部に連結される。この実施形態において、導光パネル11の前面は、界面で全内部反射の条件を破るため、そして、偏光方向を回転させる素子のピクセル化アレイの方向に光を放出させるため、微細なピットを有する。非偏光の平面をもたらすため、多くの代わりの方法があり、それらは、本発明によるLCDパネルの任意の具体的構造において用いることができる。
【0041】
単なる例示の目的で、第一の実施形態のLCDパネル内で実現されるスペクトルフィルタリング機能は、RGB(赤、緑、青)の加法原色系に基づくものである。しかし、その代わりに、LCDパネル内のスペクトルフィルタリング機能は、CMY(シアン、マゼンタ、黄)の減法原色系に基づくものであってもよい。
【0042】
LCDパネルの第一の実施形態において、バックライトパネル内にある光源の発光スペクトルは「白」とみなされ、そして、LCDパネルのスペクトルフィルタリング機能は、RGB(赤、緑、青)の表色系に基づく。非吸収性偏光カラーフィルター86R、86G及び86Bのそれぞれは、光源の「赤」、「緑」及び「青」の帯域のスペクトル成分すべてがそれぞれ表示のためカラー画像の生成に用いられるようなバンドパス特性を有する設計となっている。この実施形態において、非吸収性偏光カラーフィルター86R、86G及び86Bのそれぞれは、「バンドパス」干渉カラーフィルターとして実現される。
【0043】
図7及び8に示す第一の実施形態において、広帯域の後方多層無損失偏光子4は、a型の偏光状態を有する光を透過させ、b型の偏光状態を有する光を反射させ、そして、偏光標準として働く。同様に、前方広帯域シート偏光子70は、b型の偏光状態を有する光を透過させ、a型の偏光状態を有する光を吸収する。
【0044】
図7及び8に示す第一の実施形態において、偏光方向回転素子5R、5G、及び5Bのアレイは、a型に従って直線偏光される電界をb型の偏光状態に回転させる電気制御素子のアレイとして実現され、また、逆も同様であり、そのとき、光は、LCDパネルにおける対応するピクセルを通過する。前記偏光方向回転素子のそれぞれは、連続する液晶層の一部(一領域)である。図7及び8に示す第一の実施形態において、電気制御される直線偏光方向回転素子のそれぞれは、90°に等しいねじれ角度を有するねじれネマチック(TN)液晶層の一部として実現することができ、その動作は、当該技術でよく知られるとおり、印加電圧(ピクセル駆動部10による)によって制御される。また、液晶層のそのように電気制御される部分を、偏光方向回転素子と呼ぶこととする。直線偏光方向回転素子の構造において、液晶材料の層全体にわたる電圧降下を引き起こすために必要な液晶分子の配向をもたらすため、そして、対応する素子が透過光の偏光方向を回転させないようにするため、薄膜トランジスタ(TFT)を用いることができる。電気的に不活性な状態(すなわち、ゼロの印加電圧)において、セル出力での光の電界強度は実質的にゼロであり、従って、「暗」のサブピクセルレベルが生成される(図7参照)。電気的に活性な状態(すなわち、しきい電圧VTが印加されるとき)において、セル出力での光の電界強度は実質的にゼロではなく、従って、「明」のサブピクセルレベルが生成される(図8参照)。
【0045】
図7及び8に示す第一の実施形態において、非吸収性偏光カラーフィルター86R、86G、及び86Bのピクセル化アレイは、単一の平面内に形成されたバンドパス直線偏光素子のアレイとして実現される。前方広帯域シート偏光子70が、非吸収性偏光カラーフィルターのピクセル化アレイ及び通常の(従来の)吸収性フィルター90R、90G、及び90Bのピクセル化アレイの上に積層されている。前方広帯域シート偏光子70は、b型の偏光状態を有する光を透過させ、そして、広い波長域においてa型の偏光状態を有する光を吸収する。
【0046】
従来のLCDパネルの光透過効率は、LCDパネルのスペクトルフィルターに使用された色素による光吸収の結果、低下した。かなりの光エネルギー損失のため、従来のLCDパネルの光透過効率を約5%より高くなるよう向上させることは事実上不可能であった。
【0047】
本発明によるLCDパネルは、光を再利用する仕組みを用いるため、上記欠点がないものである。この仕組みは、従来のLCDパネルデザインに伴う高いエネルギー損失を回避するため、それにより、バックライト構造体がもたらす光エネルギーをより十分に利用するため、本開示のLCDパネルにおいて実施される。この光を再利用する仕組みの詳細は、具体例のそれぞれに対して後に説明するが、光再利用の一般的原理の概要を簡単に説明することは、本件において好都合なはずである。
【0048】
本発明のすべての実施形態において、単一の偏光状態の光は、バックライト構造体からLCDパネルの上記構造体(又はサブピクセル)を通過し、そこにおいて、透過偏光の空間強度変調及びスペクトルフィルタリングがサブピクセルで起こる。各ピクセルの位置において、スペクトルフィルタリング時に表示装置表面に至らないスペクトル帯域内の光は、吸収されることなく反射され、バックライト構造体の方に戻される。そこにおいて、偏光は、それと共に獲得される光エネルギーとともに再利用され、バックライト構造体からLCDパネルのその部分を再通過し、そこにおいて、再透過偏光の空間強度変調及びスペクトルフィルタリングがサブピクセルで起こる。この光を再利用する仕組みは、図7及び8に模式的に示されるが、この後、より詳細に説明する。約5%の最大効率を有する従来のLCDパネルとは顕著に異なり、今や、本発明の光再利用機構によって、バックライト光源がもたらす光を高い効率で利用できるLCDパネルを設計することが可能である。
【0049】
図7及び8に示すように、バックライト構造体内で生じる非偏光は、a型及びb型の偏光状態の両方を有するスペクトル成分からなる。a型の偏光状態にあるスペクトル成分のみが、バックライトパネル2に隣接する後方広帯域多層無損失偏光子4を通過する。一方、そこに入射するb型の偏光状態のスペクトル成分は、エネルギー損失や吸収がなく、反射される。後方広帯域多層無損失偏光子4から反射されるスペクトル成分は、準−拡散反射体3に入射して偏光の変換(a型からb型への変換及びその逆の変換)を受ける。この反射プロセスは波長に無関係である。b型からa型に反転された偏光を有するスペクトル成分は、今度は、後方広帯域多層無損失偏光子4を通過する。そして、後方広帯域多層無損失偏光子を通過した光は、後方広帯域シート偏光子40に入射し、そこにおいて、可視帯域内の波長を有しかつb型の偏光状態を有するスペクトル成分からなる光は、吸収され、そして、前記可視帯域内の波長を有しかつa型の偏光状態を有するスペクトル成分からなる光は、通過する。
【0050】
「赤」、「緑」及び「青」のサブピクセル(8R、8G及び8B)に関する直線偏光方向回転素子5R、5G及び5Bが図7に示すような不活性の状態に駆動されるとき、透過光のスペクトル成分は、偏光状態の直交変換(a型からb型への変換及びその逆の変換)の結果、変更され、そして、所定の素子が駆動される不活性状態に応答して、「暗」のサブピクセルレベルが生成される。
【0051】
「赤」のサブピクセル8Rが、図7に示すその「暗」状態に駆動されるとき、「赤」、「緑」及び「青」の帯域(ΔλR、ΔλG又はΔλB)内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4及び後方広帯域シート偏光子40を通過する。その結果、前記スペクトル成分は、偏光状態をa型からb型に変える偏光方向回転素子5Rを通過する。そして、b型の偏光状態を有する変換されたスペクトル成分は、非吸収性偏光カラーフィルター86Rから反射される。b型の偏光状態を有する反射された「赤」、「緑」及び「青」のスペクトル成分(ΔλR、ΔλG及びΔλB)は、偏光をb型からa型に変える偏光方向回転素子5Rを通過する。最終的に、a型の偏光状態を有する変換されたスペクトル成分は、後方広帯域シート偏光子40及び後方広帯域多層無損失偏光子4を通過して、再利用のためバックライト構造体に戻る。a型の偏光状態を有する「白」の環境光(図7において矢印25R参照)は、前方広帯域シート偏光子70によって吸収される。一方、b型の偏光状態を有する「白」の環境光(図7において矢印35R参照)は、前方広帯域シート偏光子70によって透過される。そして、「赤」のスペクトル成分を有する光の部分は、吸収性カラーフィルター90Rを通過し、一方、「緑」又は「青」のスペクトル成分を有する光の部分は、前記カラーフィルターによって吸収される。そして、「赤」のスペクトル成分を有する光は、偏光状態をb型からa型に変える非吸収性偏光カラーフィルター86Rを通過する。その結果、「赤」のスペクトル成分(矢印45R参照)は、偏光状態をa型からb型に変える偏光方向回転素子5Rを通過する。そして、後方広帯域シート偏光子40は、変換された「赤」のスペクトル成分を吸収する(矢印55R参照)。
【0052】
「緑」のサブピクセル8Gが、図7に示すその「暗」状態に駆動されるとき、「赤」、「緑」及び「青」の帯域(ΔλR、ΔλG又はΔλB)内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4及び後方広帯域シート偏光子40を通過する。その結果、前記スペクトル成分は、偏光状態をa型からb型に変える偏光方向回転素子5Gを通過する。そして、b型の偏光状態を有する変換されたスペクトル成分は、非吸収性偏光カラーフィルター86Gから反射される。b型の偏光状態を有する反射された「赤」、「緑」及び「青」のスペクトル成分(ΔλR、ΔλG及びΔλB)は、偏光をb型からa型に変える偏光方向回転素子5Gを再通過する。最終的に、a型の偏光状態を有する変換されたスペクトル成分は、後方広帯域シート偏光子40及び後方広帯域多層無損失偏光子4を通過して、再利用のためバックライト構造体に戻る。a型の偏光状態を有する「白」の環境光(図7において矢印25G参照)は、前方広帯域シート偏光子70によって吸収される。一方、b型の偏光状態を有する「白」の環境光(図7において矢印35G参照)は、前方広帯域シート偏光子70によって透過される。そして、「緑」のスペクトル成分を有する光の部分は、吸収性カラーフィルター90Gを通過し、一方、「赤」又は「青」のスペクトル成分を有する光の部分は、前記カラーフィルターによって吸収される。そして、「緑」のスペクトル成分を有する光は、偏光状態をb型からa型に変える非吸収性偏光カラーフィルター86Gを通過する。その結果、「緑」のスペクトル成分(矢印45G参照)は、偏光状態をa型からb型に変える偏光方向回転素子5Gを通過する。そして、後方広帯域シート偏光子40は、変換された「赤」のスペクトル成分を吸収する(矢印55G参照)。
【0053】
「青」のサブピクセル8Bが、図7に示すその「暗」状態に駆動されるとき、「赤」、「緑」及び「青」の帯域(ΔλR、ΔλG又はΔλB)内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4及び後方広帯域シート偏光子40を通過する。その結果、前記スペクトル成分は、偏光状態をa型からb型に変える偏光方向回転素子5Bを通過する。そして、b型の偏光状態を有する変換されたスペクトル成分は、非吸収性偏光カラーフィルター86Bから反射される。b型の偏光状態を有する反射された「赤」、「緑」及び「青」のスペクトル成分(ΔλR、ΔλG及びΔλB)は、偏光をb型からa型に変える偏光方向回転素子5Bを再通過する。最終的に、a型の偏光状態を有する変換されたスペクトル成分は、後方広帯域シート偏光子40及び後方広帯域多層無損失偏光子4を通過して、再利用のためバックライト構造体に戻る。a型の偏光状態を有する「白」の環境光(図7において矢印25B参照)は、前方広帯域シート偏光子70によって吸収される。一方、b型の偏光状態を有する「白」の環境光(図7において矢印35B参照)は、前方広帯域シート偏光子70によって透過される。そして、「青」のスペクトル成分を有する光の部分は、吸収性カラーフィルター90Bを通過し、一方、「緑」又は「赤」のスペクトル成分を有する光の部分は、前記カラーフィルターによって吸収される。そして、「青」のスペクトル成分を有する光は、偏光状態をb型からa型に変える非吸収性偏光カラーフィルター86Bを通過する。その結果、「青」のスペクトル成分(矢印45B参照)は、偏光状態をa型からb型に変える偏光方向回転素子5Bを通過する。そして、後方広帯域シート偏光子40は、変換された「赤」のスペクトル成分を吸収する(矢印55B参照)。
【0054】
直線偏光回転素子が図8に示すような活性状態に駆動されるとき、前記素子は、偏光状態の変換を行うことなく、波長とは無関係にスペクトル成分を透過させ、所定の素子が駆動される活性状態に応答して、「明」のサブピクセルレベルを生成させる。
【0055】
「赤」のサブピクセル8Rが図8に示すような「明」の状態に駆動されるとき、「赤」の帯域ΔλR内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4、後方広帯域シート偏光子40、偏光状態を変えることのない直線偏光方向回転素子5R、偏光をa型からb型に変える非吸収性偏光カラーフィルター86R、「赤」の吸収性カラーフィルター90R、及び前方広帯域シート偏光子70を通過する。この状態において、「緑」の帯域ΔλG又は「青」の帯域ΔλB内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4、後方広帯域シート偏光子40、直線偏光方向回転素子5Rを通過し、「赤」の非吸収性偏光カラーフィルター86Rによって反射され、そして、直線偏光方向回転素子5R、後方広帯域シート偏光子40、及び後方広帯域多層無損失偏光子4を再通過して、再利用のためバックライト構造体に戻る。
【0056】
「緑」のサブピクセル8Gが図8に示すような「明」の状態に駆動されるとき、「緑」の帯域ΔλG内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4、後方広帯域シート偏光子40、偏光状態を変えることのない直線偏光方向回転素子5G、偏光をa型からb型に変える非吸収性偏光カラーフィルター86G、「緑」の吸収性カラーフィルター90G、及び前方広帯域シート偏光子70を通過する。この状態において、「赤」の帯域ΔλR又は「青」の帯域ΔλB内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4、後方広帯域シート偏光子40、直線偏光方向回転素子5Gを通過し、「緑」の非吸収性偏光カラーフィルター86Gによって反射され、そして、直線偏光方向回転素子5G、後方広帯域シート偏光子40、及び後方広帯域多層無損失偏光子4を再通過して、再利用のためバックライト構造体に戻る。
【0057】
「青」のサブピクセル8Bが図8に示すような「明」の状態に駆動されるとき、「青」の帯域ΔλB内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4、後方広帯域シート偏光子40、偏光状態を変えることのない直線偏光方向回転素子5B、偏光をa型からb型に変える非吸収性偏光カラーフィルター86B、「青」の吸収性カラーフィルター90B、及び前方広帯域シート偏光子70を通過する。この状態において、「緑」の帯域ΔλG又は「赤」の帯域ΔλR内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4、後方広帯域シート偏光子40、直線偏光方向回転素子5Bを通過し、「青」の非吸収性偏光カラーフィルター86Bによって反射され、そして、直線偏光方向回転素子5B、後方広帯域シート偏光子40、及び後方広帯域多層無損失偏光子4を再通過して、再利用のためバックライト構造体に戻る。
【0058】
「マゼンタ」の非吸収性偏光カラーフィルターを図9に模式的に示す。非吸収性偏光カラーフィルターは、後方広帯域多層無損失偏光子76と前方広帯域多層無損失偏光子87との間に配置された色偏光回転子(CPR)77を有する。図9に示す本発明の実施形態において、後方広帯域多層無損失偏光子の透過軸ABは、前方広帯域多層無損失偏光子の透過軸に平行であり、かつ、CPRの基準軸に平行である。以下の用語をさらなる説明で用いることとする。後方広帯域多層無損失偏光子の透過軸ABに対して平行な電気ベクトルを有する光の偏光状態を、a型の偏光状態と呼ぶ。一方、後方広帯域多層無損失偏光子の透過軸ABに対して直交な電気ベクトルを有する光の偏光状態を、b型の偏光状態と呼ぶ。
【0059】
「赤」の帯域(バンド)内の波長を有するスペクトル成分を持つ入射非偏光79Rに対し、b型の偏光状態80Rを有する光の部分は、後方広帯域多層無損失偏光子から反射される一方、a型の偏光状態81Rを有する光のもう一つの部分は、後方広帯域多層無損失偏光子を通過する。そして、光の透過部分は、偏光状態82Rを変えることなくCPRを通過し、さらに、同じa型の偏光状態83Rで前方広帯域多層無損失偏光子を通過する。
【0060】
同様の理論が、「青」の帯域内の波長を有するスペクトル成分を持つ入射非偏光79Bについて当てはまる。b型の偏光状態80Bを有する光の部分は、後方広帯域多層無損失偏光子から反射される一方、a型の偏光状態81Bを有する光のもう一つの部分は、後方広帯域多層無損失偏光子を通過する。従って、光の透過部分は、偏光状態82Bを変えることなくCPR77を通過し、そして、同じa型の偏光状態83Bで前方広帯域多層無損失偏光子を通過する。従って、上記の場合と同様に、偏光されていない「青」の入射光は、実質的に損失なく、「マゼンタ」の非吸収性偏光カラーフィルターによって透過される。
【0061】
上述の場合と異なり、「緑」の帯域内の波長を有するスペクトル成分を持つ偏光されていない入射光の部分は、前記非吸収性偏光カラーフィルターを通過する。b型の偏光状態80Gを有する「緑」の光の部分は、後方広帯域多層無損失偏光子から反射される。a型の偏光状態81Gを有する「緑」の光のもう一つの部分は、後方広帯域多層無損失偏光子を通過する。その結果、透過されたスペクトル成分81Gは、偏光状態をa型からb型82Gに変えるCPRを通過する。そして、b型の偏光状態を有する前記スペクトル成分は、前方広帯域多層無損失偏光子から反射される(矢印83Gを参照)。その結果、光は、偏光状態をb型からa型84Gに変えるCPRを再通過し、そして、同じa型の偏光状態85Gで後方広帯域多層無損失偏光子を再通過する。従って、a型の偏光状態を有する偏光されていない「緑」の光の部分は、偏光状態を変えることなく非吸収性偏光カラーフィルターから反射される一方、b型の偏光状態を有する光のもう一つの部分も、非吸収性偏光カラーフィルターから反射される。
【0062】
「赤」の帯域ΔλR及び「青」の帯域ΔλB内にある波長を有するスペクトル成分は、非吸収性偏光カラーフィルターの出力において互いに混合され、a型の偏光状態を有する「シアン」色の光を生成させる(矢印88参照)。
【0063】
図9に示す一実施形態において、非吸収性偏光フィルターは、無色の複屈折結晶膜のみからなる。従って、後方広帯域多層無損失偏光子、前方広帯域多層無損失偏光子、及びCPRは、エネルギー損失や吸収がなく、光のスペクトル成分を透過又は反射させる。
【0064】
図10及び11に示すように、バックライト構造体内で生じる非偏光は、a型及びb型の偏光状態の両方を有するスペクトル成分からなる。a型の偏光状態にあるスペクトル成分のみが、バックライトパネル2に隣接する後方広帯域多層無損失偏光子4を通過する。一方、そこに入射するb型の偏光状態のスペクトル成分は、エネルギー損失や吸収がなく、反射される。後方広帯域多層無損失偏光子4から反射されるスペクトル成分は、準−拡散反射体3に入射して偏光の変換(a型からb型への変換及びその逆の変換)を受ける。この反射プロセスは波長に無関係である。b型からa型に反転された偏光を有するスペクトル成分は、今度は、後方広帯域多層無損失偏光子4を通過する。そして、後方広帯域多層無損失偏光子を通過した光は、後方広帯域シート偏光子40に入射し、そこにおいて、可視帯域内の波長を有しかつb型の偏光状態を有するスペクトル成分からなる光は、吸収され、そして、前記可視帯域内の波長を有しかつa型の偏光状態を有するスペクトル成分からなる光は、通過する。
【0065】
「シアン」、「マゼンタ」及び「黄」のサブピクセル(8C、8M及び8Y)に関する直線偏光方向回転素子5C、5M及び5Yが図10に示すような不活性の状態に駆動されるとき、透過光のスペクトル成分は、偏光状態の直交変換(a型からb型への変換及びその逆の変換)の結果、変更され、そして、所定の素子が駆動される不活性状態に応答して、「暗」のサブピクセルレベルが生成される。
【0066】
「シアン」のサブピクセル8Cが、図10に示すその「暗」状態に駆動されるとき、「赤」、「緑」及び「青」の帯域(ΔλR、ΔλG又はΔλB)内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4及び後方広帯域シート偏光子40を通過する。その結果、前記スペクトル成分は、偏光状態をa型からb型に変える偏光方向回転素子5Cを通過する。そして、b型の偏光状態を有する変換されたスペクトル成分は、非吸収性偏光カラーフィルター86Cから反射される。b型の偏光状態を有する反射された「赤」、「緑」及び「青」のスペクトル成分(ΔλR、ΔλG及びΔλB)は、偏光をb型からa型に変える偏光方向回転素子5Cを再通過する。最終的に、a型の偏光状態を有する変換されたスペクトル成分は、後方広帯域シート偏光子40及び後方広帯域多層無損失偏光子4を通過して、再利用のためバックライト構造体に戻る。b型の偏光状態を有する「白」の環境光(図10において矢印25C参照)は、前方広帯域シート偏光子70によって吸収される。一方、a型の偏光状態を有する「白」の環境光(図10において矢印35C参照)は、前方広帯域シート偏光子70によって透過される。そして、「シアン」のスペクトル成分を有する光の部分は、吸収性カラーフィルター90Cを通過し、一方、「赤」のスペクトル成分を有する光の部分は、前記カラーフィルターによって吸収される。そして、「シアン」のスペクトル成分を有する光は、偏光状態を変えることなく、非吸収性偏光カラーフィルター86Cを通過する。その結果、「シアン」のスペクトル成分(矢印45C参照)は、偏光状態をa型からb型に変える偏光方向回転素子5Rを通過する。そして、後方広帯域シート偏光子40は、変換された「シアン」のスペクトル成分を吸収する(矢印55C参照)。
【0067】
「マゼンタ」のサブピクセル8Mが、図10に示すその「暗」状態に駆動されるとき、「赤」、「緑」及び「青」の帯域(ΔλR、ΔλG又はΔλB)内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4及び後方広帯域シート偏光子40を通過する。その結果、前記スペクトル成分は、偏光状態をa型からb型に変える偏光方向回転素子5Mを通過する。そして、b型の偏光状態を有する変換されたスペクトル成分は、非吸収性偏光カラーフィルター86Mから反射される。b型の偏光状態を有する反射された「赤」、「緑」及び「青」のスペクトル成分(ΔλR、ΔλG及びΔλB)は、偏光をb型からa型に変える偏光方向回転素子5Mを再通過する。最終的に、a型の偏光状態を有する変換されたスペクトル成分は、後方広帯域シート偏光子40及び後方広帯域多層無損失偏光子4を通過して、再利用のためバックライト構造体に戻る。b型の偏光状態を有する「白」の環境光(図10において矢印25M参照)は、前方広帯域シート偏光子70によって吸収される。一方、a型の偏光状態を有する「白」の環境光(図10において矢印35M参照)は、前方広帯域シート偏光子70によって透過される。そして、「マゼンタ」のスペクトル成分を有する光の部分は、吸収性カラーフィルター90Mを通過し、一方、「緑」のスペクトル成分を有する光の部分は、前記カラーフィルターによって吸収される。そして、「マゼンタ」のスペクトル成分を有する光は、偏光状態を変えることなく、非吸収性偏光カラーフィルター86Mを通過する。その結果、「マゼンタ」のスペクトル成分(矢印45M参照)は、偏光状態をa型からb型に変える偏光方向回転素子5Mを通過する。そして、後方広帯域シート偏光子40は、変換された「マゼンタ」のスペクトル成分を吸収する(矢印55M参照)。
【0068】
「黄」のサブピクセル8Yが、図10に示すその「暗」状態に駆動されるとき、「赤」、「緑」及び「青」の帯域(ΔλR、ΔλG及びΔλB)内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4及び後方広帯域シート偏光子40を通過する。その結果、前記スペクトル成分は、偏光状態をa型からb型に変える偏光方向回転素子5Yを通過する。そして、b型の偏光状態を有する変換されたスペクトル成分は、吸収なく、非吸収性偏光カラーフィルター86Yから反射される。b型の偏光状態を有する反射された「赤」、「緑」及び「青」のスペクトル成分(ΔλR、ΔλG及びΔλB)は、偏光をb型からa型に変える偏光方向回転素子5Yを再通過する。最終的に、a型の偏光状態を有する変換されたスペクトル成分は、後方広帯域シート偏光子40及び後方広帯域多層無損失偏光子4を通過して、再利用のためバックライト構造体に戻る。b型の偏光状態を有する「白」の環境光(図10において矢印25Y参照)は、前方広帯域シート偏光子70によって吸収される。一方、a型の偏光状態を有する「白」の環境光(図10において矢印35Y参照)は、前方広帯域シート偏光子70によって透過される。そして、「黄」のスペクトル成分を有する光の部分は、吸収性カラーフィルター90Yを通過し、一方、「青」のスペクトル成分を有する光の部分は、前記カラーフィルターによって吸収される。そして、「黄」のスペクトル成分を有する光は、偏光状態を変えることなく、非吸収性偏光カラーフィルター86Yを通過する。その結果、「黄」のスペクトル成分(矢印45Y参照)は、偏光状態をa型からb型に変える偏光方向回転素子5Yを通過する。そして、後方広帯域シート偏光子40は、変換された「黄」のスペクトル成分を吸収する(矢印55Y参照)。
【0069】
直線偏光回転素子が図11に示すような活性状態に駆動されるとき、前記素子は、偏光状態の変換を行うことなく、波長とは無関係にスペクトル成分を透過させ、所定の素子が駆動される活性状態に応答して、「明」のサブピクセルレベルを生成させる。
【0070】
「シアン」のサブピクセル8Cが図11に示すような「明」の状態に駆動されるとき、「緑」の帯域ΔλG及び「青」の帯域ΔλB内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4、後方広帯域シート偏光子40、偏光状態を変えることのない直線偏光方向回転素子5C、偏光を変えることのない非吸収性偏光カラーフィルター86C、「シアン」の吸収性カラーフィルター90C、及び前方広帯域シート偏光子70を通過する。この状態において、「赤」の帯域ΔλR内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4、後方広帯域シート偏光子40、直線偏光方向回転素子5Cを通過し、「シアン」の非吸収性偏光カラーフィルター86Cによって反射され、そして、直線偏光方向回転素子5C、後方広帯域シート偏光子40、及び後方広帯域多層無損失偏光子4を再通過して、再利用のためバックライト構造体に戻る。
【0071】
「マゼンタ」のサブピクセル8Mが図11に示すような「明」の状態に駆動されるとき、「赤」の帯域ΔλR及び「青」の帯域ΔλB内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4、後方広帯域シート偏光子40、偏光状態を変えることのない直線偏光方向回転素子5M、偏光を変えることのない非吸収性偏光カラーフィルター86M、「マゼンタ」の吸収性カラーフィルター90M、及び前方広帯域シート偏光子70を通過する。この状態において、「緑」の帯域ΔλG内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4、後方広帯域シート偏光子40、直線偏光方向回転素子5Mを通過し、「マゼンタ」の非吸収性偏光カラーフィルター86Mによって反射され、そして、直線偏光方向回転素子5M、後方広帯域シート偏光子40、及び後方広帯域多層無損失偏光子4を再通過して、再利用のためバックライト構造体に戻る。
【0072】
「黄」のサブピクセル8Yが図11に示すような「明」の状態に駆動されるとき、「赤」の帯域ΔλR及び「緑」の帯域ΔλG内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4、後方広帯域シート偏光子40、偏光状態を変えることのない直線偏光方向回転素子5Y、偏光を変えることのない非吸収性偏光カラーフィルター86Y、「黄」の吸収性カラーフィルター90Y、及び前方広帯域シート偏光子70を通過する。この状態において、「青」の帯域ΔλB内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4、後方広帯域シート偏光子40、直線偏光方向回転素子5Yを通過し、「黄」の非吸収性偏光カラーフィルター86Yによって反射され、そして、直線偏光方向回転素子5Y、後方広帯域シート偏光子40、及び後方広帯域多層無損失偏光子4を再通過して、再利用のためバックライト構造体に戻る。
【実施例】
【0073】
本開示の発明の好ましい一実施形態は、以下の要素、すなわち、後方広帯域多層無損失偏光子、前方広帯域多層無損失偏光子、及び色偏光回転子を有する、非吸収性偏光カラーフィルターである。後方広帯域多層無損失偏光子は、所定の方向の透過軸ABを有する。前方広帯域多層無損失偏光子は、前面と、前記後方広帯域多層無損失偏光子に面する裏面とを有する。前記前方広帯域多層無損失偏光子は、前記後方広帯域多層無損失偏光子に略平行に配置されており、かつ、透過軸ABに対して略平行又は略直交な透過軸を有する。前記色偏光回転子は、前記前方広帯域多層無損失偏光子と前記後方広帯域多層無損失偏光子との間に、これらの偏光子と略平行に、配置されている。前記色偏光回転子は、透過軸ABの方向に対して振れ角度αで符号が交互に変わるc軸の配向を有する複数の複屈折薄膜の積層体からなる。複屈折薄膜の数、振れ角度α、厚み、及び光学異方性は、前記非吸収性偏光カラーフィルターが、透過軸ABに略平行な偏光状態を有する所定の色の光を透過させるよう、透過軸ABに直交な偏光状態を有する前記所定の色の光を反射させるよう、そして、他の所定の色の非偏光を反射させるよう、選択されている。
【0074】
本開示の発明の一変形例において、前記非吸収性偏光カラーフィルターは、透明基材をさらに有する。発明のこの変形例において、前記非吸収性偏光カラーフィルターは、以下の順序の要素、すなわち、前記基材、前記後方広帯域多層無損失偏光子、前記色偏光回転子、及び前記前方広帯域多層無損失偏光子を有することができる。前記非吸収性偏光カラーフィルターの他の実施形態において、前記基材は、前記後方広帯域多層無損失偏光子と前記色偏光回転子との間に配置される。前記非吸収性偏光カラーフィルターのさらに他の変形例において、前記基材は、前記色偏光回転子と前記前方広帯域多層無損失偏光子との間に配置される。発明の他の変形例において、前記非吸収性偏光カラーフィルターは、以下の順序に、前記後方広帯域多層無損失偏光子、前記色偏光回転子、前記前方広帯域多層無損失偏光子、及び前記基材を有する。
【0075】
前記非吸収性偏光カラーフィルターの一実施形態において、前記後方広帯域多層無損失偏光子は、複屈折膜と等方性膜とが交互に配置される層の積層体を有する。前記非吸収性偏光カラーフィルターの他の実施形態において、少なくとも一つの等方性膜は、屈折率が異なる材料からなる少なくとも二つの層を有する。前記非吸収性偏光カラーフィルターのさらに他の実施形態において、前記後方広帯域多層無損失偏光子は、可視光の広帯域において前記透過軸ABに略平行に偏光される光の透過率の干渉極値をもたらすように、かつ、可視光の広帯域において前記透過軸ABに略直交に偏光される光の反射率の干渉極値をもたらすように、複屈折薄膜及び等方性膜の数、厚み並びに光学異方性が選択されている広帯域干渉偏光子である。
【0076】
前記非吸収性偏光カラーフィルターの可能な一変形例において、前記前方広帯域多層無損失偏光子は、複屈折膜と等方性膜とが交互に配置される層の積層体からなる。前記非吸収性偏光カラーフィルターの可能なもう一つの変形例において、少なくとも一つの等方性膜は、屈折率が異なる材料からなる少なくとも二つの層を有する。前記非吸収性偏光カラーフィルターの可能なさらに他の変形例において、前記前方広帯域多層無損失偏光子は、可視光の広帯域において前記透過軸ABに略平行に偏光される光の透過率の干渉極値をもたらすように、かつ、可視光の広帯域において前記透過軸ABに略直交に偏光される光の反射率の干渉極値をもたらすように、複屈折薄膜及び等方性膜の数、厚み並びに光学異方性が選択されている広帯域干渉偏光子である。
【0077】
本開示の発明の一変形例において、前記非吸収性偏光カラーフィルターは、前方広帯域多層無損失偏光子の前面上に配置された所定の色の光を透過させる少なくとも一つの通常の吸収性カラーフィルターをさらに有する。
【0078】
本開示の発明のもう一つの変形例において、前記非吸収性偏光カラーフィルターは、前記吸収性カラーフィルター上に配置される少なくとも一つの前方広帯域シート偏光子をさらに有する。前記シート偏光子は、前方広帯域多層無損失偏光子の透過軸に略平行な透過軸を有する。
【0079】
少なくとも一つの複屈折膜は、カスケード結晶化プロセスによって調製されたものであり、かつ、光軸の一つの方向に3.4±0.3Åの分子間間隔を有する全体的に秩序のある二軸結晶構造を特徴とする。前記複屈折膜は、可視光の波長帯域において透明であり、かつ、共役π系及びイオノゲン基を有する少なくとも一つの多環式有機化合物に相当する棒状超分子によって形成されている。
【0080】
本開示の非吸収性偏光カラーフィルターの可能な一変形例において、少なくとも一つの透明な複屈折薄膜は、400nm未満の基礎吸収端を有する。本開示の非吸収性偏光カラーフィルターの可能なもう一つの変形例において、少なくとも一つの透明な複屈折薄膜は、0.98以上の透過係数を有する。本開示の非吸収性偏光カラーフィルターの可能なさらに他の変形例において、少なくとも一つの透明な複屈折薄膜は、可視光の波長帯域において一様に透明である。
【0081】
他の実施形態において、本発明は、少なくとも一つの光学異方性の層が二価の金属及び/又は三価の金属のイオンで処理されている非吸収性偏光カラーフィルターを提供する。もう一つの非吸収性偏光カラーフィルターにおいて、少なくとも一種の有機化合物材料の分子は複素環を含む。本開示の発明の一変形例において、非吸収性偏光カラーフィルターは、少なくとも一つの二色性染料をベースとするリオトロピック液晶からなる少なくとも一つの光学異方性の層を含む。
【0082】
もう一つの好ましい実施形態において、本発明は、液晶セル及び非吸収性偏光カラーフィルターを有する液晶表示装置を提供する。前記非吸収性偏光カラーフィルターは、以下の要素、すなわち、後方広帯域多層無損失偏光子、前方広帯域多層無損失偏光子、及び色偏光回転子を有する。前記後方広帯域多層無損失偏光子は、所定の方向の透過軸ABを有する。前記前方広帯域多層無損失偏光子は、前面と、前記後方広帯域多層無損失偏光子に面する裏面とを有する。前記前方広帯域多層無損失偏光子は、前記後方広帯域多層無損失偏光子に略平行に配置されており、かつ、透過軸ABに対して略平行又は略直交な透過軸を有する。前記色偏光回転子は、前記前方広帯域多層無損失偏光子と前記後方広帯域多層無損失偏光子との間に、これらの偏光子と略平行に、配置されている。前記色偏光回転子は、透過軸ABの方向に対して振れ角度αで符号が交互に変わるc軸の配向を有する複数の複屈折薄膜の積層体からなる。複屈折薄膜の数、振れ角度α、厚み、及び光学異方性は、前記非吸収性偏光カラーフィルターが、透過軸ABに略平行な偏光状態を有する所定の色の光を透過させるように、前記透過軸ABに直交な偏光状態を有する前記所定の色の光を反射させるように、そして、他の所定の色の非偏光を反射させるよう、選択されている。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明による広帯域多層無損失偏光子の第一の変形例を示す図である。
【図2】複数の層の積層体からなる多層構造体の断面を示す図である。
【図3】本発明による広帯域多層無損失偏光子の第二の変形例を示す図である。
【図4】「赤」、「緑」及び「青」のサブピクセルの要素としての色偏光回転子の機能を示す図である。
【図5】「緑」の色偏光回転子の内部構造を示す図である。
【図6】「緑」の非吸収性偏光カラーフィルターの模式図である。
【図7】LCDパネルの第一の特定の実施形態における具体的なピクセル構造の拡大断面を示す模式図である。そこにおいて、LCDパネルの空間強度変調素子は、直線偏光回転素子を用いて実現されており、そこに付与されるピクセル駆動信号は、その具体的なピクセル構造のRGB(赤、緑、青)サブピクセルのそれぞれにおいて、「暗」の出力レベルをもたらすよう、選択される。
【図8】LCDパネルの第一の特定の実施形態における具体的なピクセル構造の拡大断面を示す模式図である。そこにおいて、LCDパネルの空間強度変調素子は、直線偏光回転素子を用いて実現されており、そこに付与されるピクセル駆動信号は、その具体的なピクセル構造のRGBサブピクセルのそれぞれにおいて、「明」の出力レベルをもたらすよう、選択される。
【図9】「マゼンタ」の非吸収性偏光カラーフィルターを示す模式図である。
【図10】LCDパネルの第二の特定の実施形態における具体的なピクセル構造の拡大断面を示す模式図である。そこにおいて、LCDパネルの空間強度変調素子は、直線偏光回転素子を用いて実現されており、そこに付与されるピクセル駆動信号は、その具体的なピクセル構造のCMY(シアン、マゼンタ、黄)サブピクセルのそれぞれにおいて、「暗」の出力レベルをもたらすよう、選択される。
【図11】LCDパネルの第二の特定の実施形態における具体的なピクセル構造の拡大断面を示す模式図である。そこにおいて、LCDパネルの空間強度変調素子は、直線偏光回転素子を用いて実現されており、そこに付与されるピクセル駆動信号は、その具体的なピクセル構造のCMY(シアン、マゼンタ、黄)サブピクセルのそれぞれにおいて、「明」の出力レベルをもたらすよう、選択される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルター、特に、非吸収性偏光カラーフィルターに関し、さらに、非吸収性偏光カラーフィルター用いて画像のコントラスト、さらには隣接するサブピクセル間での光の再利用を向上させた高輝度カラー液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コントラストが高いビデオ画像を表示できるフラット液晶表示装置(LCD)の需要は大きい。直視型のそのような表示構造が求められる装置の具体例には、ノート型、ラップトップ型、及び他の型のコンピュータがある。
【0003】
一般的に、従来のカラーLCDパネルは、実質的に同じ基本構造を有する。それぞれのLCD表示パネルは、均一な照明強度の平面を作るためのバックライト構造体、光の強度の変調をもたらす制御素子の電気的にアドレス可能なアレイ、及び、カラー画像を形成するため、変調された光のスペクトルフィルタリングをもたらす変調素子のアレイの近傍に配置されるカラーフィルターのアレイ、のような主要素を有する。
【0004】
カラーLCDパネルの設計において、バックライト構造体からカラーフィルターアレイを通過する光の透過百分率を最大にすることが目標となる。しかし、従来のデザインと技術を用いる場合、以下の要因により生じる透過光の顕著な損失のため、この目標を達成することは不可能であった。すなわち、LCDパネルに使用される吸収型偏光子による光エネルギーの損失、LCDパネルに使用されるピクセル化された空間強度変調アレイの薄膜トランジスタ(TFT)及び配線から反射される光の吸収、LCDパネルのスペクトルフィルターに使用される色素による光の吸収、及び、LCDパネル内の層間で屈折率が整合していないことによるフレネル損失、である。このような要因の結果、従来のカラーLCDパネルの光透過効率は典型的に5%以下であった。その結果、バックライト構造体が生成した光の最高95%が、LCDパネルの全域で熱に変換される。従って、高電力を必要とし、そして、適当な冷却手段等が必要となる大量の熱を発生する、超高強度のバックライト光源を用いることなく、従来のカラーLCDパネルを用いて高輝度の画像を得ることは、直接型及び投影型のいずれの表示システムにおいても不可能である。
【0005】
従来のカラーLCDパネルデザインの欠点に対し、パネルの光透過効率を向上させて、生成させる画像の輝度を高めるため、いくつかの代替アプローチが提案されている。
【0006】
例えば、従来のLCDパネルの吸収性色素偏光子の代わりに、色純度を向上させるため、コレステリック液晶(CLC)偏光子を用いるLCDパネルがある。LCDパネルの輝度を向上させるため、光を部分的に再利用する仕組みを用いるLCDパネルもある。さらにもう1つ、LCDパネルの輝度を向上させるため、バックライト構造体の導光パネルから光を取り出すためのホログラフィック拡散板とホログラフィック拡散板により散乱された拡散光を部分的に再利用するめのCLC偏光子とを用いるLCDパネルも存在する。
【0007】
しかし、そのような従来のLCDパネルは、やはり欠点や不利な点が解消されていない。特に、非吸収性CLC偏光子及び局部的光再利用の原理を利用しているにもかかわらず、従来のLCDパネルは依然として、バックライト構造体から見る者に延びる光路に沿った光吸収性層を、少なくとも一つ必要とする。その結果、従来のLCDパネルは、非常に低い光透過効率を有する。従って、従来のLCDパネルを用いて高輝度のカラー画像を形成するには、高強度のバックライト光源を必要とした。それは、非常に高い電力を消費し、大量の熱を発生し、そして、LCDパネルとバックライト構造体におけるランプの両方の温度を安全な動作範囲に維持するため、ファンや他の冷却手段の使用を必要とする。
【0008】
従って、非吸収性カラーフィルターが強く求められており、そして、従来のLCDパネル装置の欠点や不利な点がなく高輝度のカラー画像を生成できる改良されたカラーLCDパネルが強く求められている。
【発明の開示】
【0009】
本開示の発明は、以下の要素、すなわち、後方広帯域多層無損失偏光子、前方広帯域多層無損失偏光子、及び色偏光回転子を有する、非吸収性偏光カラーフィルターである。前記後方広帯域多層無損失偏光子は、所定の方向の透過軸ABを有する。前記前方広帯域多層無損失偏光子は、前面と、前記後方広帯域多層無損失偏光子に面する裏面とを有する。前記前方広帯域多層無損失偏光子は、前記後方広帯域多層無損失偏光子に略平行に配置されており、かつ、透過軸ABに略平行又は略直交な透過軸を有する。前記色偏光回転子は、前記前方広帯域多層無損失偏光子と前記後方広帯域多層無損失偏光子との間に、これらの偏光子と略平行に、配置されている。前記色偏光回転子は、前記透過軸ABの方向に対して振れ角度αで符号が交互に変わるc軸の配向を有する複数の複屈折薄膜の積層体を有する。複屈折薄膜の数、振れ角度α、厚み、及び光学異方性は、前記非吸収性偏光カラーフィルターが、透過軸ABに略平行な偏光状態を有する所定の色の光を透過させ、透過軸ABに直交な偏光状態を有する前記所定の色の光を反射させ、そして、他の所定の色の非偏光を反射させるように、選択されている。
【0010】
また、本発明は、液晶セル及び前記非吸収性偏光カラーフィルターを有する液晶表示装置を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明及びその多くの利点のより完全な理解は、添付の図面及び詳細な仕様と併せて以下の詳細な説明(それらのすべては本開示の一部を構成する)を参照することによってより良い理解が得られることで、容易に達成される。
【0012】
本発明を概説してきたが、添付の特許請求の範囲を限定することなく単に例示の目的でここに示す特定の好ましい態様を参照することにより、本発明をさらに理解することができる。
【0013】
図1において、広帯域多層無損失偏光子のサブコンポーネント構造がより明確に示されている。この偏光子は、複屈折膜60と等方性膜62とが交互に配置される層の積層体からなる。前記偏光子は透過軸ABを有する。非偏光63が前記広帯域多層無損失偏光子に入射する場合、前記透過軸ABに対して略直交に偏光を有する一部の光64(b型の偏光状態)は、前記広帯域多層無損失偏光子から反射される。同時に、前記透過軸ABに対して略平行に偏光を有する他の部分の光65(a型の偏光状態)は、前記広帯域多層無損失偏光子を通過する。
【0014】
バックライト構造体は、a型とb型の両方の偏光状態を有するスペクトル成分からなる非偏光をもたらす。前記広帯域多層無損失偏光子は、積層された複数の層からなる多層構造体であり、それは、少なくとも可視帯における波長を有しかつ前記b型の偏光状態を有するスペクトル成分からなる光を反射させ、かつ、少なくとも可視帯における波長を有しかつ前記a型の偏光状態を有するスペクトル成分からなる偏光を透過させる。
【0015】
前記広帯域多層無損失偏光子は、反射偏光子、干渉偏光子、及び混合型偏光子すなわち反射干渉偏光子、の三種類とすることができる。積層される層の厚みは、厚いものと薄いものの両方とすることができる。厚い層の厚みは、数波長分を超えるものであってもよい。薄い層の厚みは、ある波長の四分の一に略等しいものとすることができる。前記積層体において隣接する層の厚みは、入射光の波長の四分の一に略等しいものとすることができる。広帯域多層無損失偏光子の他の変形例も可能であり、そこにおいては、厚い層と薄い層とが交互に配置される。
【0016】
多層構造体の少なくとも一つの層は、光学異方性であり、かつ、カスケード結晶化プロセスによって作られたものである。
【0017】
図2は、積層された層からなる多層構造体の一つの断面を示す模式図である。この図は、X、Y及びZの方向を規定する座標系を示す。図示される多層構造体は、図面及び明細書を通じて異方性層(結晶薄膜,TCFとも呼ぶ)及び等方性層Bと呼ぶ二つの異なる有機材料の交互に配置される層からなる。異方性TCFは、Optiva, Inc.によって開発されたカスケード結晶化プロセスと呼ばれる方法により得ることができる(P. Lazarev and M. Paukshto, Proceedings of the 7th International Workshop "Displays, Materials and Components" (Kobe, Japan, November 29-December 1, 2000), pp. 1159-1160)。この方法によれば、適当な溶媒に溶解される有機化合物が、コロイド系(リオトロピック液晶溶液)を形成し、そこにおいて、分子は、系の動力学的単位を構成する超分子に集められる。この液晶相は、実質的に、系の秩序づけられた状態の前駆体であり、そこから、その後の超分子の配向および溶媒の除去の過程において、固体の異方性結晶層(結晶薄膜又はTCFとも呼ばれる)が形成される。
【0018】
超分子を有するコロイド系から異方性結晶薄膜を合成するために必要な方法は、以下の工程を含む。
(i)基材上(またはある装置もしくは多層構造体における層の上)に上述したコロイド系を塗布する工程;前記コロイド系はチキソトロピックな特性を有する必要があり、それは、予め設定された温度及び特定の濃度の分散相を保持することにより、もたらされる);
(ii)溶液の粘度を低下させる任意の外部作用(加熱、剪断変形など)によって、塗布されたコロイド系を高流動性の(低下した粘度の)状態にする工程;この作用は、次の配向工程全体の間付与されてもよく、あるいは、配向工程の間に前記系がより高い粘度の状態に戻らないように最小限必要な時間続いてもよい;
(iii)機械的要素を用いてあるいは他の任意の手段により発生させることができる、前記系への外部からの配向作用の工程;前記外部作用の程度は、前記コロイド系の動力学的単位が、必要な配向を獲得しかつ異方性結晶薄膜の結晶格子の基礎として作用する構造を形成するように、十分なものである必要がある;
(iv)層の配向された領域を、前記外部作用により達成される、粘度が低下した状態から最初の粘度の状態又はより高い粘度の状態に変換する工程;この移行は、異方性結晶薄膜構造の配向の減少が起こらないよう、そして、表面欠陥が生じないよう、行われる;
(v)溶媒を除去する(乾燥する)最終工程、この工程の間に、最終的な異方性結晶薄膜の構造が形成される。
【0019】
得られる異方性層において、分子の複数の平面は互いに平行であり、そして、分子は、前記層の少なくとも一部において三次元的結晶構造を形成している。製造技術を最適化することにより、単結晶膜の形成が可能になり得る。
【0020】
前記異方性層の厚みは、通常、1μmを超えない。この層の厚みは、塗布される溶液中の固体物質の含有量を変えることにより、かつ/又は、塗布される層の厚みを変えることにより、調節することができる。必要な光学特性を有する層を得るため、コロイドの混合系(そのような混合物は共同の超分子を形成することができる)を用いることが可能である。
【0021】
溶液中で前記有機化合物を混合すれば、種々の組成の混合集合体が形成される。色素混合物のX線回折パターンを解析すれば、3.1〜3.7Åの範囲の分子間距離に該当する特徴的な回折ピークの存在により、超分子における分子パッキングについて判断することができる。一般的な場合、この値は、結晶及び凝集体の形態の芳香族化合物に共通する。ピークの強度及び鋭さは乾燥の過程で増すが、ピークの位置は変化しないままである。この回折ピークは、集合体(積層体)内の分子間間隔に対応するものであり、種々の材料のX線回折パターンで観測されている。混合することは、分子(又はそのフラグメント)の面構造にとって有利であり、そして、対象とする有機化合物において分子寸法の一つが一致することにとって有利である。塗布される水性層において、有機分子は、一つの方向に、長い距離の秩序を有し、それが、基材表面上で超分子が配向することに関係する。溶媒が蒸発させられるに従い、分子が二軸結晶の三次元構造を形成するのにエネルギー的に有利になる。この目的に使用できる化合物は、上記のものに限定されない。
【0022】
異方性層は、さらに、高度な光学異方性を有する。そのような層は、超分子複合体の光学吸収の特性に関連する、E型偏光子の特性を示し、かつ、吸収がわずかであるスペクトル領域において位相差板(位相シフトフィルム)として機能する。これら異方性層の位相差特性は、その複屈折性(二重屈折)、すなわち、基材上にLLC溶液を塗布する方向において測定される屈折率とそれに直交な方向において測定される屈折率の違い、に関係する。強い(耐光性の)色素分子をベースとするLLC系から形成される層は、高い熱安定性と放射抵抗を特徴とする。そのような層は、約350〜700℃の温度範囲において安定なままである。
【0023】
本開示の非吸収性偏光カラーフィルター及びLCDにおいて実施されるカスケード結晶化プロセスの適用の重要な利点は、前記フィルター及びLCDの機能的要素の形成に印刷技術を用いることができるということである。
【0024】
かくして、光学異方性のA-層は、カスケード結晶化プロセスによって得られる。そのような層は、光軸の一つの方向において3.4±0.3Åの分子間間隔を有する全体的に秩序のある二軸結晶構造を特徴とする。各A層は、少なくとも二つの屈折率nx及びnyを特徴とする。これらの層は、400nm未満の基礎吸収端を有し、可視光の波長帯域において一様に透明であり、かつ、0.98以上の透過係数を有する。各A層は、棒状超分子によって形成される。前記棒状超分子は、共役π系及びイオノゲン基を有する少なくとも一種の多環式有機化合物に相当する。
【0025】
X軸は、「配向」方向と呼ばれ、図2に示すいわゆる「配向」軸(20)を規定する。一方、Y軸は、「横断」方向と呼ばれ、図2に示すいわゆる「透過」軸(30)を規定する。
【0026】
層Bは、等方性層であり、かつ定格屈折率(例えばn=1.64)を有する。前記定格屈折率は、カスケード結晶化プロセスによって実質的に変わることはない。
【0027】
カスケード結晶化プロセスは、TCFの屈折率を変化させる。例えば、TCFは、配向方向についてある一つの屈折率(例えばn=1.88)を有し、かつ、横断方向について別の屈折率(例えばn=1.64)を有する。定義により、面内軸(膜面に平行な軸)についての屈折率を、その偏光面が前記軸に平行な面偏光された入射光に対する「有効」屈折率と呼ぶ。
【0028】
従って、多層積層体(TCF-B-TCF-B-TCF...)は層間で、配向方向について屈折率の大きな差(Δn=1.88−1.64=0.24)を示す。横断方向において、種々の層の屈折率は、実質的に同じ(Δn=1.64−1.64=0)である。これらの光学特性によって、前記多層構造体は、図2に示す「透過」軸に対して正確に配向する入射光の偏光成分を透過させるようになる。
【0029】
図3において、広帯域多層無損失偏光子のもう一つの変形例をより分かりやすく示す。偏光子は、複屈折膜(60及び61)と等方性膜(62)とが交互に配置される層の4分の1波長積層体からなる。屈折率が整合する複屈折率の大きい膜を用いる必要がある。全ての視野角において効率を向上させるため、この偏光子の変形例では、屈折率が異なる二つの異なる複屈折膜を使用する。非偏光63が広帯域多層無損失偏光子に入射するとき、b型の固有の偏光状態を有する一部の光64は、前記広帯域多層無損失偏光子から反射される。同時に、a型の固有の偏光状態を有する他の部分の光65は、前記広帯域多層無損失偏光子を通過する。前記多層構造体の少なくとも一つの複屈折膜は、カスケード結晶化プロセスによって作られる。
【0030】
図4は、色偏光回転子(CPR)が「赤」、「緑」及び「青」のサブピクセルの要素として機能する原理を示している。一つの色(例えば赤、緑又は青)の偏光状態のみが各サブピクセルにおいて90度回転させられる。他の二つの色成分の偏光状態は、変わらないままである。a型の直線偏光状態を有する入射光69に対し、「赤」のサブピクセル66の色偏光回転子は、「赤」の光の偏光状態(b型の偏光状態)を90度回転させる。一方、前記回転子は、光の「緑」成分及び「青」成分の偏光状態(a型の偏光状態)を変わらないままにしておく。「緑」のサブピクセルにおいて、色偏光回転子67は、光の「緑」成分の偏光状態を90度回転させる一方、光の「赤」成分及び「青」成分の偏光状態を変化させない。「青」のサブピクセルにおいて、色偏光回転子68は、光の「青」成分の偏光状態を90度回転させる一方、光の「赤」成分及び「緑」成分の偏光状態を変化させない。
【0031】
図5は、「緑」のCPRのデザインを模式的に示している。このCPRは、光学c軸74の方向が振れている複数の位相差板として機能させられる複数の複屈折薄膜の積層体72を有する。これらの位相差板の光軸は、隣り合うものと正確に±αだけ異なっている。第一の位相差板が基準軸75に対して+αである場合、その隣の位相差板は基準軸に対して−αであり、第三の位相差板は+αに戻り、図5に示すように、それが同様に繰返される。前記積層体におけるそのような位相差板の数をNとすると、N個の位相差板の作用は、偏光ベクトルを2αN回転させることである。偏光ベクトルが角度pi/2回転するならば、以下の等式2αN=pi/2を満たす必要がある。位相差板の数がNである積層体の各位相差板に対する角度αは、pi/(4N)に等しい。なお、積層体における位相差板の数が減少するに従って、スペクトル帯幅(バンド幅)は増加する。従って、飽和色を必要とするカラー再生システムにこのようなCPRを用いる場合、前記システムにおける複屈折位相差板の数は重要な部分となる。しかし、色度より輝度を優先させる場合、位相差板の数を減らすことができ、その特定の要件に対してユーザーが特性を調節できるようにすることができる。膜の厚みがλ/(2Δn)に等しいとき、最大透過率が得られる(ここで、λは回転させられる波長に等しく、かつ、Δn=ne−noである)。図5は、基準軸75の方向に偏光されたスペクトル成分(赤、緑、及び青)を有する入射光71を示している。この場合、出力光73の緑成分の偏光状態は90度回転させられる。同様の理論が他の光成分(赤及び青)に対して当てはまる。積層膜は、カスケード結晶化プロセスによって得ることができる。この場合、c軸は配向方向と一致する。
【0032】
「緑」の非吸収性偏光カラーフィルターを図6に模式的に示す。非吸収性偏光カラーフィルターは、後方広帯域多層無損失偏光子76と前方広帯域多層無損失偏光子78との間に配置された色偏光回転子(CPR)77を有する。図6に示す本発明の一態様において、後方広帯域多層無損失偏光子と前方広帯域多層無損失偏光子は、直交する偏光子であり、そして、後方広帯域多層無損失偏光子の透過軸はCPRの基準軸に平行である。以下の用語をさらなる説明で用いることとする。後方広帯域多層無損失偏光子の透過軸に対して平行な電気ベクトルを有する光の偏光状態を、a型の偏光状態と呼ぶ。一方、後方広帯域多層無損失偏光子の透過軸に対して直交な電気ベクトルを有する光の偏光状態を、b型の偏光状態と呼ぶ。
【0033】
「赤」の帯域(バンド)内の波長を有するスペクトル成分を持つ入射非偏光79Rに対し、b型の偏光状態80Rを有する光の部分は、後方広帯域多層無損失偏光子から反射される一方、a型の偏光状態81Rを有する光のもう一つの部分は、後方広帯域多層無損失偏光子を通過する。従って、光の透過部分は、偏光状態82Rを変えることなくCPRを通過し、そして、同じ偏光状態83Rで前方広帯域多層無損失偏光子から反射される。その結果、光は、偏光状態84Rを変えることなくCPRを再通過し、そして、同じ偏光状態85Rで後方広帯域多層無損失偏光子を再通過する。従って、偏光されていない「赤」の入射光は、実質的に損失なく、「緑」の非吸収性偏光カラーフィルターから反射される。
【0034】
同様の理論が、「青」の帯域内の波長を有するスペクトル成分を持つ入射非偏光79Bについて当てはまる。b型の偏光状態80Bを有する光の部分は、後方広帯域多層無損失偏光子から反射される一方、a型の偏光状態81Bを有する光のもう一つの部分は、後方広帯域多層無損失偏光子を通過する。従って、光の透過部分は、偏光状態82Bを変えることなくCPRを通過し、そして、同じ偏光状態83Bで前方広帯域多層無損失偏光子から反射される。その結果、光は、偏光状態84Bを変えることなくCPRを再通過し、そして、同じ偏光状態85Bで後方広帯域多層無損失偏光子を再通過する。従って、上記の場合と同様、偏光されていない「青」の入射光は、実質的に損失なく、「緑」の非吸収性偏光カラーフィルターから反射される。
【0035】
上記の場合と異なり、「緑」の帯域内の波長を有するスペクトル成分を持つ偏光されていない入射光の部分は、前記非吸収性偏光カラーフィルターを通過する。b型の偏光状態80Gを有する「緑」の光の部分は、後方広帯域多層無損失偏光子から反射される。a型の偏光状態81Gを有する「緑」の光のもう一つの部分は、後方広帯域多層無損失偏光子を通過する。その結果、透過されたスペクトル成分81Gは、偏光状態をa型からb型82Gに変えるCPRを通過する。最終的に、b型の偏光状態を有する前記スペクトル成分は、前方広帯域多層無損失偏光子を通過する(矢印83Gを参照)。従って、a型の偏光状態を有する偏光されていない「緑」の光の部分は、その偏光状態をa型からb型に変える非吸収性偏光カラーフィルターによって透過される一方、b型の偏光状態を有する光のもう一つの部分は、非吸収性偏光カラーフィルターから反射される。従って、非吸収性偏光カラーフィルターは、バンドパスフィルターであり、それは、一つの色(例えば緑)のみの偏光状態を90度回転させる。他の色(青及び赤)の偏光状態は、同じままである。
【0036】
本発明の一態様において、非吸収性偏光フィルターは、無色の複屈折結晶膜のみから作られる。かくして、後方広帯域多層無損失偏光子、前方広帯域多層無損失偏光子及びCPRは、エネルギー損失なく又は吸収なく、光のスペクトル成分を透過させるか又は反射させる。
【0037】
従って、非吸収性偏光カラーフィルターは、二つの広帯域多層無損失偏光子と色偏光回転子とを有する多層構造である。CPRの複屈折薄膜の数、振れ角度α、厚み、及び光学異方性は、前記非吸収性偏光カラーフィルターが、後方広帯域多層無損失偏光子の透過軸ABに略平行な偏光状態を有する所定の色の光を透過させるよう、前記透過軸ABに直交な偏光状態を有する前記所定の色の光を反射させるよう、そして、他の所定の色の非偏光を反射させるよう、選択される。
【0038】
図7及び8に示すこのLCDパネル構造の具体例において、空間強度変調及びそこで使用されるスペクトルフィルタリング機能を実行するため、直線偏光法が用いられる。
【0039】
図7及び8に示す具体例において、バックライト構造体2は、準−拡散反射体3、導光パネル11、端部照明光源12、及び、集束ミラー14をそれぞれ有し、光源12が発生させる光束を導光パネル11の端部に連結する。好ましくは、導光パネル11は、光学的に透明な材料からなり、非偏光を発する一対の小型の蛍光灯が、光源12の役割を果たす。
【0040】
バックライトの動作時、光源12が発生させる光束は、集束ミラー14の支援により、光が通常の態様で全内部反射を示す、導光パネル11の端部に連結される。この実施形態において、導光パネル11の前面は、界面で全内部反射の条件を破るため、そして、偏光方向を回転させる素子のピクセル化アレイの方向に光を放出させるため、微細なピットを有する。非偏光の平面をもたらすため、多くの代わりの方法があり、それらは、本発明によるLCDパネルの任意の具体的構造において用いることができる。
【0041】
単なる例示の目的で、第一の実施形態のLCDパネル内で実現されるスペクトルフィルタリング機能は、RGB(赤、緑、青)の加法原色系に基づくものである。しかし、その代わりに、LCDパネル内のスペクトルフィルタリング機能は、CMY(シアン、マゼンタ、黄)の減法原色系に基づくものであってもよい。
【0042】
LCDパネルの第一の実施形態において、バックライトパネル内にある光源の発光スペクトルは「白」とみなされ、そして、LCDパネルのスペクトルフィルタリング機能は、RGB(赤、緑、青)の表色系に基づく。非吸収性偏光カラーフィルター86R、86G及び86Bのそれぞれは、光源の「赤」、「緑」及び「青」の帯域のスペクトル成分すべてがそれぞれ表示のためカラー画像の生成に用いられるようなバンドパス特性を有する設計となっている。この実施形態において、非吸収性偏光カラーフィルター86R、86G及び86Bのそれぞれは、「バンドパス」干渉カラーフィルターとして実現される。
【0043】
図7及び8に示す第一の実施形態において、広帯域の後方多層無損失偏光子4は、a型の偏光状態を有する光を透過させ、b型の偏光状態を有する光を反射させ、そして、偏光標準として働く。同様に、前方広帯域シート偏光子70は、b型の偏光状態を有する光を透過させ、a型の偏光状態を有する光を吸収する。
【0044】
図7及び8に示す第一の実施形態において、偏光方向回転素子5R、5G、及び5Bのアレイは、a型に従って直線偏光される電界をb型の偏光状態に回転させる電気制御素子のアレイとして実現され、また、逆も同様であり、そのとき、光は、LCDパネルにおける対応するピクセルを通過する。前記偏光方向回転素子のそれぞれは、連続する液晶層の一部(一領域)である。図7及び8に示す第一の実施形態において、電気制御される直線偏光方向回転素子のそれぞれは、90°に等しいねじれ角度を有するねじれネマチック(TN)液晶層の一部として実現することができ、その動作は、当該技術でよく知られるとおり、印加電圧(ピクセル駆動部10による)によって制御される。また、液晶層のそのように電気制御される部分を、偏光方向回転素子と呼ぶこととする。直線偏光方向回転素子の構造において、液晶材料の層全体にわたる電圧降下を引き起こすために必要な液晶分子の配向をもたらすため、そして、対応する素子が透過光の偏光方向を回転させないようにするため、薄膜トランジスタ(TFT)を用いることができる。電気的に不活性な状態(すなわち、ゼロの印加電圧)において、セル出力での光の電界強度は実質的にゼロであり、従って、「暗」のサブピクセルレベルが生成される(図7参照)。電気的に活性な状態(すなわち、しきい電圧VTが印加されるとき)において、セル出力での光の電界強度は実質的にゼロではなく、従って、「明」のサブピクセルレベルが生成される(図8参照)。
【0045】
図7及び8に示す第一の実施形態において、非吸収性偏光カラーフィルター86R、86G、及び86Bのピクセル化アレイは、単一の平面内に形成されたバンドパス直線偏光素子のアレイとして実現される。前方広帯域シート偏光子70が、非吸収性偏光カラーフィルターのピクセル化アレイ及び通常の(従来の)吸収性フィルター90R、90G、及び90Bのピクセル化アレイの上に積層されている。前方広帯域シート偏光子70は、b型の偏光状態を有する光を透過させ、そして、広い波長域においてa型の偏光状態を有する光を吸収する。
【0046】
従来のLCDパネルの光透過効率は、LCDパネルのスペクトルフィルターに使用された色素による光吸収の結果、低下した。かなりの光エネルギー損失のため、従来のLCDパネルの光透過効率を約5%より高くなるよう向上させることは事実上不可能であった。
【0047】
本発明によるLCDパネルは、光を再利用する仕組みを用いるため、上記欠点がないものである。この仕組みは、従来のLCDパネルデザインに伴う高いエネルギー損失を回避するため、それにより、バックライト構造体がもたらす光エネルギーをより十分に利用するため、本開示のLCDパネルにおいて実施される。この光を再利用する仕組みの詳細は、具体例のそれぞれに対して後に説明するが、光再利用の一般的原理の概要を簡単に説明することは、本件において好都合なはずである。
【0048】
本発明のすべての実施形態において、単一の偏光状態の光は、バックライト構造体からLCDパネルの上記構造体(又はサブピクセル)を通過し、そこにおいて、透過偏光の空間強度変調及びスペクトルフィルタリングがサブピクセルで起こる。各ピクセルの位置において、スペクトルフィルタリング時に表示装置表面に至らないスペクトル帯域内の光は、吸収されることなく反射され、バックライト構造体の方に戻される。そこにおいて、偏光は、それと共に獲得される光エネルギーとともに再利用され、バックライト構造体からLCDパネルのその部分を再通過し、そこにおいて、再透過偏光の空間強度変調及びスペクトルフィルタリングがサブピクセルで起こる。この光を再利用する仕組みは、図7及び8に模式的に示されるが、この後、より詳細に説明する。約5%の最大効率を有する従来のLCDパネルとは顕著に異なり、今や、本発明の光再利用機構によって、バックライト光源がもたらす光を高い効率で利用できるLCDパネルを設計することが可能である。
【0049】
図7及び8に示すように、バックライト構造体内で生じる非偏光は、a型及びb型の偏光状態の両方を有するスペクトル成分からなる。a型の偏光状態にあるスペクトル成分のみが、バックライトパネル2に隣接する後方広帯域多層無損失偏光子4を通過する。一方、そこに入射するb型の偏光状態のスペクトル成分は、エネルギー損失や吸収がなく、反射される。後方広帯域多層無損失偏光子4から反射されるスペクトル成分は、準−拡散反射体3に入射して偏光の変換(a型からb型への変換及びその逆の変換)を受ける。この反射プロセスは波長に無関係である。b型からa型に反転された偏光を有するスペクトル成分は、今度は、後方広帯域多層無損失偏光子4を通過する。そして、後方広帯域多層無損失偏光子を通過した光は、後方広帯域シート偏光子40に入射し、そこにおいて、可視帯域内の波長を有しかつb型の偏光状態を有するスペクトル成分からなる光は、吸収され、そして、前記可視帯域内の波長を有しかつa型の偏光状態を有するスペクトル成分からなる光は、通過する。
【0050】
「赤」、「緑」及び「青」のサブピクセル(8R、8G及び8B)に関する直線偏光方向回転素子5R、5G及び5Bが図7に示すような不活性の状態に駆動されるとき、透過光のスペクトル成分は、偏光状態の直交変換(a型からb型への変換及びその逆の変換)の結果、変更され、そして、所定の素子が駆動される不活性状態に応答して、「暗」のサブピクセルレベルが生成される。
【0051】
「赤」のサブピクセル8Rが、図7に示すその「暗」状態に駆動されるとき、「赤」、「緑」及び「青」の帯域(ΔλR、ΔλG又はΔλB)内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4及び後方広帯域シート偏光子40を通過する。その結果、前記スペクトル成分は、偏光状態をa型からb型に変える偏光方向回転素子5Rを通過する。そして、b型の偏光状態を有する変換されたスペクトル成分は、非吸収性偏光カラーフィルター86Rから反射される。b型の偏光状態を有する反射された「赤」、「緑」及び「青」のスペクトル成分(ΔλR、ΔλG及びΔλB)は、偏光をb型からa型に変える偏光方向回転素子5Rを通過する。最終的に、a型の偏光状態を有する変換されたスペクトル成分は、後方広帯域シート偏光子40及び後方広帯域多層無損失偏光子4を通過して、再利用のためバックライト構造体に戻る。a型の偏光状態を有する「白」の環境光(図7において矢印25R参照)は、前方広帯域シート偏光子70によって吸収される。一方、b型の偏光状態を有する「白」の環境光(図7において矢印35R参照)は、前方広帯域シート偏光子70によって透過される。そして、「赤」のスペクトル成分を有する光の部分は、吸収性カラーフィルター90Rを通過し、一方、「緑」又は「青」のスペクトル成分を有する光の部分は、前記カラーフィルターによって吸収される。そして、「赤」のスペクトル成分を有する光は、偏光状態をb型からa型に変える非吸収性偏光カラーフィルター86Rを通過する。その結果、「赤」のスペクトル成分(矢印45R参照)は、偏光状態をa型からb型に変える偏光方向回転素子5Rを通過する。そして、後方広帯域シート偏光子40は、変換された「赤」のスペクトル成分を吸収する(矢印55R参照)。
【0052】
「緑」のサブピクセル8Gが、図7に示すその「暗」状態に駆動されるとき、「赤」、「緑」及び「青」の帯域(ΔλR、ΔλG又はΔλB)内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4及び後方広帯域シート偏光子40を通過する。その結果、前記スペクトル成分は、偏光状態をa型からb型に変える偏光方向回転素子5Gを通過する。そして、b型の偏光状態を有する変換されたスペクトル成分は、非吸収性偏光カラーフィルター86Gから反射される。b型の偏光状態を有する反射された「赤」、「緑」及び「青」のスペクトル成分(ΔλR、ΔλG及びΔλB)は、偏光をb型からa型に変える偏光方向回転素子5Gを再通過する。最終的に、a型の偏光状態を有する変換されたスペクトル成分は、後方広帯域シート偏光子40及び後方広帯域多層無損失偏光子4を通過して、再利用のためバックライト構造体に戻る。a型の偏光状態を有する「白」の環境光(図7において矢印25G参照)は、前方広帯域シート偏光子70によって吸収される。一方、b型の偏光状態を有する「白」の環境光(図7において矢印35G参照)は、前方広帯域シート偏光子70によって透過される。そして、「緑」のスペクトル成分を有する光の部分は、吸収性カラーフィルター90Gを通過し、一方、「赤」又は「青」のスペクトル成分を有する光の部分は、前記カラーフィルターによって吸収される。そして、「緑」のスペクトル成分を有する光は、偏光状態をb型からa型に変える非吸収性偏光カラーフィルター86Gを通過する。その結果、「緑」のスペクトル成分(矢印45G参照)は、偏光状態をa型からb型に変える偏光方向回転素子5Gを通過する。そして、後方広帯域シート偏光子40は、変換された「赤」のスペクトル成分を吸収する(矢印55G参照)。
【0053】
「青」のサブピクセル8Bが、図7に示すその「暗」状態に駆動されるとき、「赤」、「緑」及び「青」の帯域(ΔλR、ΔλG又はΔλB)内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4及び後方広帯域シート偏光子40を通過する。その結果、前記スペクトル成分は、偏光状態をa型からb型に変える偏光方向回転素子5Bを通過する。そして、b型の偏光状態を有する変換されたスペクトル成分は、非吸収性偏光カラーフィルター86Bから反射される。b型の偏光状態を有する反射された「赤」、「緑」及び「青」のスペクトル成分(ΔλR、ΔλG及びΔλB)は、偏光をb型からa型に変える偏光方向回転素子5Bを再通過する。最終的に、a型の偏光状態を有する変換されたスペクトル成分は、後方広帯域シート偏光子40及び後方広帯域多層無損失偏光子4を通過して、再利用のためバックライト構造体に戻る。a型の偏光状態を有する「白」の環境光(図7において矢印25B参照)は、前方広帯域シート偏光子70によって吸収される。一方、b型の偏光状態を有する「白」の環境光(図7において矢印35B参照)は、前方広帯域シート偏光子70によって透過される。そして、「青」のスペクトル成分を有する光の部分は、吸収性カラーフィルター90Bを通過し、一方、「緑」又は「赤」のスペクトル成分を有する光の部分は、前記カラーフィルターによって吸収される。そして、「青」のスペクトル成分を有する光は、偏光状態をb型からa型に変える非吸収性偏光カラーフィルター86Bを通過する。その結果、「青」のスペクトル成分(矢印45B参照)は、偏光状態をa型からb型に変える偏光方向回転素子5Bを通過する。そして、後方広帯域シート偏光子40は、変換された「赤」のスペクトル成分を吸収する(矢印55B参照)。
【0054】
直線偏光回転素子が図8に示すような活性状態に駆動されるとき、前記素子は、偏光状態の変換を行うことなく、波長とは無関係にスペクトル成分を透過させ、所定の素子が駆動される活性状態に応答して、「明」のサブピクセルレベルを生成させる。
【0055】
「赤」のサブピクセル8Rが図8に示すような「明」の状態に駆動されるとき、「赤」の帯域ΔλR内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4、後方広帯域シート偏光子40、偏光状態を変えることのない直線偏光方向回転素子5R、偏光をa型からb型に変える非吸収性偏光カラーフィルター86R、「赤」の吸収性カラーフィルター90R、及び前方広帯域シート偏光子70を通過する。この状態において、「緑」の帯域ΔλG又は「青」の帯域ΔλB内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4、後方広帯域シート偏光子40、直線偏光方向回転素子5Rを通過し、「赤」の非吸収性偏光カラーフィルター86Rによって反射され、そして、直線偏光方向回転素子5R、後方広帯域シート偏光子40、及び後方広帯域多層無損失偏光子4を再通過して、再利用のためバックライト構造体に戻る。
【0056】
「緑」のサブピクセル8Gが図8に示すような「明」の状態に駆動されるとき、「緑」の帯域ΔλG内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4、後方広帯域シート偏光子40、偏光状態を変えることのない直線偏光方向回転素子5G、偏光をa型からb型に変える非吸収性偏光カラーフィルター86G、「緑」の吸収性カラーフィルター90G、及び前方広帯域シート偏光子70を通過する。この状態において、「赤」の帯域ΔλR又は「青」の帯域ΔλB内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4、後方広帯域シート偏光子40、直線偏光方向回転素子5Gを通過し、「緑」の非吸収性偏光カラーフィルター86Gによって反射され、そして、直線偏光方向回転素子5G、後方広帯域シート偏光子40、及び後方広帯域多層無損失偏光子4を再通過して、再利用のためバックライト構造体に戻る。
【0057】
「青」のサブピクセル8Bが図8に示すような「明」の状態に駆動されるとき、「青」の帯域ΔλB内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4、後方広帯域シート偏光子40、偏光状態を変えることのない直線偏光方向回転素子5B、偏光をa型からb型に変える非吸収性偏光カラーフィルター86B、「青」の吸収性カラーフィルター90B、及び前方広帯域シート偏光子70を通過する。この状態において、「緑」の帯域ΔλG又は「赤」の帯域ΔλR内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4、後方広帯域シート偏光子40、直線偏光方向回転素子5Bを通過し、「青」の非吸収性偏光カラーフィルター86Bによって反射され、そして、直線偏光方向回転素子5B、後方広帯域シート偏光子40、及び後方広帯域多層無損失偏光子4を再通過して、再利用のためバックライト構造体に戻る。
【0058】
「マゼンタ」の非吸収性偏光カラーフィルターを図9に模式的に示す。非吸収性偏光カラーフィルターは、後方広帯域多層無損失偏光子76と前方広帯域多層無損失偏光子87との間に配置された色偏光回転子(CPR)77を有する。図9に示す本発明の実施形態において、後方広帯域多層無損失偏光子の透過軸ABは、前方広帯域多層無損失偏光子の透過軸に平行であり、かつ、CPRの基準軸に平行である。以下の用語をさらなる説明で用いることとする。後方広帯域多層無損失偏光子の透過軸ABに対して平行な電気ベクトルを有する光の偏光状態を、a型の偏光状態と呼ぶ。一方、後方広帯域多層無損失偏光子の透過軸ABに対して直交な電気ベクトルを有する光の偏光状態を、b型の偏光状態と呼ぶ。
【0059】
「赤」の帯域(バンド)内の波長を有するスペクトル成分を持つ入射非偏光79Rに対し、b型の偏光状態80Rを有する光の部分は、後方広帯域多層無損失偏光子から反射される一方、a型の偏光状態81Rを有する光のもう一つの部分は、後方広帯域多層無損失偏光子を通過する。そして、光の透過部分は、偏光状態82Rを変えることなくCPRを通過し、さらに、同じa型の偏光状態83Rで前方広帯域多層無損失偏光子を通過する。
【0060】
同様の理論が、「青」の帯域内の波長を有するスペクトル成分を持つ入射非偏光79Bについて当てはまる。b型の偏光状態80Bを有する光の部分は、後方広帯域多層無損失偏光子から反射される一方、a型の偏光状態81Bを有する光のもう一つの部分は、後方広帯域多層無損失偏光子を通過する。従って、光の透過部分は、偏光状態82Bを変えることなくCPR77を通過し、そして、同じa型の偏光状態83Bで前方広帯域多層無損失偏光子を通過する。従って、上記の場合と同様に、偏光されていない「青」の入射光は、実質的に損失なく、「マゼンタ」の非吸収性偏光カラーフィルターによって透過される。
【0061】
上述の場合と異なり、「緑」の帯域内の波長を有するスペクトル成分を持つ偏光されていない入射光の部分は、前記非吸収性偏光カラーフィルターを通過する。b型の偏光状態80Gを有する「緑」の光の部分は、後方広帯域多層無損失偏光子から反射される。a型の偏光状態81Gを有する「緑」の光のもう一つの部分は、後方広帯域多層無損失偏光子を通過する。その結果、透過されたスペクトル成分81Gは、偏光状態をa型からb型82Gに変えるCPRを通過する。そして、b型の偏光状態を有する前記スペクトル成分は、前方広帯域多層無損失偏光子から反射される(矢印83Gを参照)。その結果、光は、偏光状態をb型からa型84Gに変えるCPRを再通過し、そして、同じa型の偏光状態85Gで後方広帯域多層無損失偏光子を再通過する。従って、a型の偏光状態を有する偏光されていない「緑」の光の部分は、偏光状態を変えることなく非吸収性偏光カラーフィルターから反射される一方、b型の偏光状態を有する光のもう一つの部分も、非吸収性偏光カラーフィルターから反射される。
【0062】
「赤」の帯域ΔλR及び「青」の帯域ΔλB内にある波長を有するスペクトル成分は、非吸収性偏光カラーフィルターの出力において互いに混合され、a型の偏光状態を有する「シアン」色の光を生成させる(矢印88参照)。
【0063】
図9に示す一実施形態において、非吸収性偏光フィルターは、無色の複屈折結晶膜のみからなる。従って、後方広帯域多層無損失偏光子、前方広帯域多層無損失偏光子、及びCPRは、エネルギー損失や吸収がなく、光のスペクトル成分を透過又は反射させる。
【0064】
図10及び11に示すように、バックライト構造体内で生じる非偏光は、a型及びb型の偏光状態の両方を有するスペクトル成分からなる。a型の偏光状態にあるスペクトル成分のみが、バックライトパネル2に隣接する後方広帯域多層無損失偏光子4を通過する。一方、そこに入射するb型の偏光状態のスペクトル成分は、エネルギー損失や吸収がなく、反射される。後方広帯域多層無損失偏光子4から反射されるスペクトル成分は、準−拡散反射体3に入射して偏光の変換(a型からb型への変換及びその逆の変換)を受ける。この反射プロセスは波長に無関係である。b型からa型に反転された偏光を有するスペクトル成分は、今度は、後方広帯域多層無損失偏光子4を通過する。そして、後方広帯域多層無損失偏光子を通過した光は、後方広帯域シート偏光子40に入射し、そこにおいて、可視帯域内の波長を有しかつb型の偏光状態を有するスペクトル成分からなる光は、吸収され、そして、前記可視帯域内の波長を有しかつa型の偏光状態を有するスペクトル成分からなる光は、通過する。
【0065】
「シアン」、「マゼンタ」及び「黄」のサブピクセル(8C、8M及び8Y)に関する直線偏光方向回転素子5C、5M及び5Yが図10に示すような不活性の状態に駆動されるとき、透過光のスペクトル成分は、偏光状態の直交変換(a型からb型への変換及びその逆の変換)の結果、変更され、そして、所定の素子が駆動される不活性状態に応答して、「暗」のサブピクセルレベルが生成される。
【0066】
「シアン」のサブピクセル8Cが、図10に示すその「暗」状態に駆動されるとき、「赤」、「緑」及び「青」の帯域(ΔλR、ΔλG又はΔλB)内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4及び後方広帯域シート偏光子40を通過する。その結果、前記スペクトル成分は、偏光状態をa型からb型に変える偏光方向回転素子5Cを通過する。そして、b型の偏光状態を有する変換されたスペクトル成分は、非吸収性偏光カラーフィルター86Cから反射される。b型の偏光状態を有する反射された「赤」、「緑」及び「青」のスペクトル成分(ΔλR、ΔλG及びΔλB)は、偏光をb型からa型に変える偏光方向回転素子5Cを再通過する。最終的に、a型の偏光状態を有する変換されたスペクトル成分は、後方広帯域シート偏光子40及び後方広帯域多層無損失偏光子4を通過して、再利用のためバックライト構造体に戻る。b型の偏光状態を有する「白」の環境光(図10において矢印25C参照)は、前方広帯域シート偏光子70によって吸収される。一方、a型の偏光状態を有する「白」の環境光(図10において矢印35C参照)は、前方広帯域シート偏光子70によって透過される。そして、「シアン」のスペクトル成分を有する光の部分は、吸収性カラーフィルター90Cを通過し、一方、「赤」のスペクトル成分を有する光の部分は、前記カラーフィルターによって吸収される。そして、「シアン」のスペクトル成分を有する光は、偏光状態を変えることなく、非吸収性偏光カラーフィルター86Cを通過する。その結果、「シアン」のスペクトル成分(矢印45C参照)は、偏光状態をa型からb型に変える偏光方向回転素子5Rを通過する。そして、後方広帯域シート偏光子40は、変換された「シアン」のスペクトル成分を吸収する(矢印55C参照)。
【0067】
「マゼンタ」のサブピクセル8Mが、図10に示すその「暗」状態に駆動されるとき、「赤」、「緑」及び「青」の帯域(ΔλR、ΔλG又はΔλB)内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4及び後方広帯域シート偏光子40を通過する。その結果、前記スペクトル成分は、偏光状態をa型からb型に変える偏光方向回転素子5Mを通過する。そして、b型の偏光状態を有する変換されたスペクトル成分は、非吸収性偏光カラーフィルター86Mから反射される。b型の偏光状態を有する反射された「赤」、「緑」及び「青」のスペクトル成分(ΔλR、ΔλG及びΔλB)は、偏光をb型からa型に変える偏光方向回転素子5Mを再通過する。最終的に、a型の偏光状態を有する変換されたスペクトル成分は、後方広帯域シート偏光子40及び後方広帯域多層無損失偏光子4を通過して、再利用のためバックライト構造体に戻る。b型の偏光状態を有する「白」の環境光(図10において矢印25M参照)は、前方広帯域シート偏光子70によって吸収される。一方、a型の偏光状態を有する「白」の環境光(図10において矢印35M参照)は、前方広帯域シート偏光子70によって透過される。そして、「マゼンタ」のスペクトル成分を有する光の部分は、吸収性カラーフィルター90Mを通過し、一方、「緑」のスペクトル成分を有する光の部分は、前記カラーフィルターによって吸収される。そして、「マゼンタ」のスペクトル成分を有する光は、偏光状態を変えることなく、非吸収性偏光カラーフィルター86Mを通過する。その結果、「マゼンタ」のスペクトル成分(矢印45M参照)は、偏光状態をa型からb型に変える偏光方向回転素子5Mを通過する。そして、後方広帯域シート偏光子40は、変換された「マゼンタ」のスペクトル成分を吸収する(矢印55M参照)。
【0068】
「黄」のサブピクセル8Yが、図10に示すその「暗」状態に駆動されるとき、「赤」、「緑」及び「青」の帯域(ΔλR、ΔλG及びΔλB)内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4及び後方広帯域シート偏光子40を通過する。その結果、前記スペクトル成分は、偏光状態をa型からb型に変える偏光方向回転素子5Yを通過する。そして、b型の偏光状態を有する変換されたスペクトル成分は、吸収なく、非吸収性偏光カラーフィルター86Yから反射される。b型の偏光状態を有する反射された「赤」、「緑」及び「青」のスペクトル成分(ΔλR、ΔλG及びΔλB)は、偏光をb型からa型に変える偏光方向回転素子5Yを再通過する。最終的に、a型の偏光状態を有する変換されたスペクトル成分は、後方広帯域シート偏光子40及び後方広帯域多層無損失偏光子4を通過して、再利用のためバックライト構造体に戻る。b型の偏光状態を有する「白」の環境光(図10において矢印25Y参照)は、前方広帯域シート偏光子70によって吸収される。一方、a型の偏光状態を有する「白」の環境光(図10において矢印35Y参照)は、前方広帯域シート偏光子70によって透過される。そして、「黄」のスペクトル成分を有する光の部分は、吸収性カラーフィルター90Yを通過し、一方、「青」のスペクトル成分を有する光の部分は、前記カラーフィルターによって吸収される。そして、「黄」のスペクトル成分を有する光は、偏光状態を変えることなく、非吸収性偏光カラーフィルター86Yを通過する。その結果、「黄」のスペクトル成分(矢印45Y参照)は、偏光状態をa型からb型に変える偏光方向回転素子5Yを通過する。そして、後方広帯域シート偏光子40は、変換された「黄」のスペクトル成分を吸収する(矢印55Y参照)。
【0069】
直線偏光回転素子が図11に示すような活性状態に駆動されるとき、前記素子は、偏光状態の変換を行うことなく、波長とは無関係にスペクトル成分を透過させ、所定の素子が駆動される活性状態に応答して、「明」のサブピクセルレベルを生成させる。
【0070】
「シアン」のサブピクセル8Cが図11に示すような「明」の状態に駆動されるとき、「緑」の帯域ΔλG及び「青」の帯域ΔλB内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4、後方広帯域シート偏光子40、偏光状態を変えることのない直線偏光方向回転素子5C、偏光を変えることのない非吸収性偏光カラーフィルター86C、「シアン」の吸収性カラーフィルター90C、及び前方広帯域シート偏光子70を通過する。この状態において、「赤」の帯域ΔλR内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4、後方広帯域シート偏光子40、直線偏光方向回転素子5Cを通過し、「シアン」の非吸収性偏光カラーフィルター86Cによって反射され、そして、直線偏光方向回転素子5C、後方広帯域シート偏光子40、及び後方広帯域多層無損失偏光子4を再通過して、再利用のためバックライト構造体に戻る。
【0071】
「マゼンタ」のサブピクセル8Mが図11に示すような「明」の状態に駆動されるとき、「赤」の帯域ΔλR及び「青」の帯域ΔλB内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4、後方広帯域シート偏光子40、偏光状態を変えることのない直線偏光方向回転素子5M、偏光を変えることのない非吸収性偏光カラーフィルター86M、「マゼンタ」の吸収性カラーフィルター90M、及び前方広帯域シート偏光子70を通過する。この状態において、「緑」の帯域ΔλG内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4、後方広帯域シート偏光子40、直線偏光方向回転素子5Mを通過し、「マゼンタ」の非吸収性偏光カラーフィルター86Mによって反射され、そして、直線偏光方向回転素子5M、後方広帯域シート偏光子40、及び後方広帯域多層無損失偏光子4を再通過して、再利用のためバックライト構造体に戻る。
【0072】
「黄」のサブピクセル8Yが図11に示すような「明」の状態に駆動されるとき、「赤」の帯域ΔλR及び「緑」の帯域ΔλG内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4、後方広帯域シート偏光子40、偏光状態を変えることのない直線偏光方向回転素子5Y、偏光を変えることのない非吸収性偏光カラーフィルター86Y、「黄」の吸収性カラーフィルター90Y、及び前方広帯域シート偏光子70を通過する。この状態において、「青」の帯域ΔλB内にある波長を有しかつa型の偏光状態を有するバックライト発光のスペクトル成分は、後方広帯域多層無損失偏光子4、後方広帯域シート偏光子40、直線偏光方向回転素子5Yを通過し、「黄」の非吸収性偏光カラーフィルター86Yによって反射され、そして、直線偏光方向回転素子5Y、後方広帯域シート偏光子40、及び後方広帯域多層無損失偏光子4を再通過して、再利用のためバックライト構造体に戻る。
【実施例】
【0073】
本開示の発明の好ましい一実施形態は、以下の要素、すなわち、後方広帯域多層無損失偏光子、前方広帯域多層無損失偏光子、及び色偏光回転子を有する、非吸収性偏光カラーフィルターである。後方広帯域多層無損失偏光子は、所定の方向の透過軸ABを有する。前方広帯域多層無損失偏光子は、前面と、前記後方広帯域多層無損失偏光子に面する裏面とを有する。前記前方広帯域多層無損失偏光子は、前記後方広帯域多層無損失偏光子に略平行に配置されており、かつ、透過軸ABに対して略平行又は略直交な透過軸を有する。前記色偏光回転子は、前記前方広帯域多層無損失偏光子と前記後方広帯域多層無損失偏光子との間に、これらの偏光子と略平行に、配置されている。前記色偏光回転子は、透過軸ABの方向に対して振れ角度αで符号が交互に変わるc軸の配向を有する複数の複屈折薄膜の積層体からなる。複屈折薄膜の数、振れ角度α、厚み、及び光学異方性は、前記非吸収性偏光カラーフィルターが、透過軸ABに略平行な偏光状態を有する所定の色の光を透過させるよう、透過軸ABに直交な偏光状態を有する前記所定の色の光を反射させるよう、そして、他の所定の色の非偏光を反射させるよう、選択されている。
【0074】
本開示の発明の一変形例において、前記非吸収性偏光カラーフィルターは、透明基材をさらに有する。発明のこの変形例において、前記非吸収性偏光カラーフィルターは、以下の順序の要素、すなわち、前記基材、前記後方広帯域多層無損失偏光子、前記色偏光回転子、及び前記前方広帯域多層無損失偏光子を有することができる。前記非吸収性偏光カラーフィルターの他の実施形態において、前記基材は、前記後方広帯域多層無損失偏光子と前記色偏光回転子との間に配置される。前記非吸収性偏光カラーフィルターのさらに他の変形例において、前記基材は、前記色偏光回転子と前記前方広帯域多層無損失偏光子との間に配置される。発明の他の変形例において、前記非吸収性偏光カラーフィルターは、以下の順序に、前記後方広帯域多層無損失偏光子、前記色偏光回転子、前記前方広帯域多層無損失偏光子、及び前記基材を有する。
【0075】
前記非吸収性偏光カラーフィルターの一実施形態において、前記後方広帯域多層無損失偏光子は、複屈折膜と等方性膜とが交互に配置される層の積層体を有する。前記非吸収性偏光カラーフィルターの他の実施形態において、少なくとも一つの等方性膜は、屈折率が異なる材料からなる少なくとも二つの層を有する。前記非吸収性偏光カラーフィルターのさらに他の実施形態において、前記後方広帯域多層無損失偏光子は、可視光の広帯域において前記透過軸ABに略平行に偏光される光の透過率の干渉極値をもたらすように、かつ、可視光の広帯域において前記透過軸ABに略直交に偏光される光の反射率の干渉極値をもたらすように、複屈折薄膜及び等方性膜の数、厚み並びに光学異方性が選択されている広帯域干渉偏光子である。
【0076】
前記非吸収性偏光カラーフィルターの可能な一変形例において、前記前方広帯域多層無損失偏光子は、複屈折膜と等方性膜とが交互に配置される層の積層体からなる。前記非吸収性偏光カラーフィルターの可能なもう一つの変形例において、少なくとも一つの等方性膜は、屈折率が異なる材料からなる少なくとも二つの層を有する。前記非吸収性偏光カラーフィルターの可能なさらに他の変形例において、前記前方広帯域多層無損失偏光子は、可視光の広帯域において前記透過軸ABに略平行に偏光される光の透過率の干渉極値をもたらすように、かつ、可視光の広帯域において前記透過軸ABに略直交に偏光される光の反射率の干渉極値をもたらすように、複屈折薄膜及び等方性膜の数、厚み並びに光学異方性が選択されている広帯域干渉偏光子である。
【0077】
本開示の発明の一変形例において、前記非吸収性偏光カラーフィルターは、前方広帯域多層無損失偏光子の前面上に配置された所定の色の光を透過させる少なくとも一つの通常の吸収性カラーフィルターをさらに有する。
【0078】
本開示の発明のもう一つの変形例において、前記非吸収性偏光カラーフィルターは、前記吸収性カラーフィルター上に配置される少なくとも一つの前方広帯域シート偏光子をさらに有する。前記シート偏光子は、前方広帯域多層無損失偏光子の透過軸に略平行な透過軸を有する。
【0079】
少なくとも一つの複屈折膜は、カスケード結晶化プロセスによって調製されたものであり、かつ、光軸の一つの方向に3.4±0.3Åの分子間間隔を有する全体的に秩序のある二軸結晶構造を特徴とする。前記複屈折膜は、可視光の波長帯域において透明であり、かつ、共役π系及びイオノゲン基を有する少なくとも一つの多環式有機化合物に相当する棒状超分子によって形成されている。
【0080】
本開示の非吸収性偏光カラーフィルターの可能な一変形例において、少なくとも一つの透明な複屈折薄膜は、400nm未満の基礎吸収端を有する。本開示の非吸収性偏光カラーフィルターの可能なもう一つの変形例において、少なくとも一つの透明な複屈折薄膜は、0.98以上の透過係数を有する。本開示の非吸収性偏光カラーフィルターの可能なさらに他の変形例において、少なくとも一つの透明な複屈折薄膜は、可視光の波長帯域において一様に透明である。
【0081】
他の実施形態において、本発明は、少なくとも一つの光学異方性の層が二価の金属及び/又は三価の金属のイオンで処理されている非吸収性偏光カラーフィルターを提供する。もう一つの非吸収性偏光カラーフィルターにおいて、少なくとも一種の有機化合物材料の分子は複素環を含む。本開示の発明の一変形例において、非吸収性偏光カラーフィルターは、少なくとも一つの二色性染料をベースとするリオトロピック液晶からなる少なくとも一つの光学異方性の層を含む。
【0082】
もう一つの好ましい実施形態において、本発明は、液晶セル及び非吸収性偏光カラーフィルターを有する液晶表示装置を提供する。前記非吸収性偏光カラーフィルターは、以下の要素、すなわち、後方広帯域多層無損失偏光子、前方広帯域多層無損失偏光子、及び色偏光回転子を有する。前記後方広帯域多層無損失偏光子は、所定の方向の透過軸ABを有する。前記前方広帯域多層無損失偏光子は、前面と、前記後方広帯域多層無損失偏光子に面する裏面とを有する。前記前方広帯域多層無損失偏光子は、前記後方広帯域多層無損失偏光子に略平行に配置されており、かつ、透過軸ABに対して略平行又は略直交な透過軸を有する。前記色偏光回転子は、前記前方広帯域多層無損失偏光子と前記後方広帯域多層無損失偏光子との間に、これらの偏光子と略平行に、配置されている。前記色偏光回転子は、透過軸ABの方向に対して振れ角度αで符号が交互に変わるc軸の配向を有する複数の複屈折薄膜の積層体からなる。複屈折薄膜の数、振れ角度α、厚み、及び光学異方性は、前記非吸収性偏光カラーフィルターが、透過軸ABに略平行な偏光状態を有する所定の色の光を透過させるように、前記透過軸ABに直交な偏光状態を有する前記所定の色の光を反射させるように、そして、他の所定の色の非偏光を反射させるよう、選択されている。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明による広帯域多層無損失偏光子の第一の変形例を示す図である。
【図2】複数の層の積層体からなる多層構造体の断面を示す図である。
【図3】本発明による広帯域多層無損失偏光子の第二の変形例を示す図である。
【図4】「赤」、「緑」及び「青」のサブピクセルの要素としての色偏光回転子の機能を示す図である。
【図5】「緑」の色偏光回転子の内部構造を示す図である。
【図6】「緑」の非吸収性偏光カラーフィルターの模式図である。
【図7】LCDパネルの第一の特定の実施形態における具体的なピクセル構造の拡大断面を示す模式図である。そこにおいて、LCDパネルの空間強度変調素子は、直線偏光回転素子を用いて実現されており、そこに付与されるピクセル駆動信号は、その具体的なピクセル構造のRGB(赤、緑、青)サブピクセルのそれぞれにおいて、「暗」の出力レベルをもたらすよう、選択される。
【図8】LCDパネルの第一の特定の実施形態における具体的なピクセル構造の拡大断面を示す模式図である。そこにおいて、LCDパネルの空間強度変調素子は、直線偏光回転素子を用いて実現されており、そこに付与されるピクセル駆動信号は、その具体的なピクセル構造のRGBサブピクセルのそれぞれにおいて、「明」の出力レベルをもたらすよう、選択される。
【図9】「マゼンタ」の非吸収性偏光カラーフィルターを示す模式図である。
【図10】LCDパネルの第二の特定の実施形態における具体的なピクセル構造の拡大断面を示す模式図である。そこにおいて、LCDパネルの空間強度変調素子は、直線偏光回転素子を用いて実現されており、そこに付与されるピクセル駆動信号は、その具体的なピクセル構造のCMY(シアン、マゼンタ、黄)サブピクセルのそれぞれにおいて、「暗」の出力レベルをもたらすよう、選択される。
【図11】LCDパネルの第二の特定の実施形態における具体的なピクセル構造の拡大断面を示す模式図である。そこにおいて、LCDパネルの空間強度変調素子は、直線偏光回転素子を用いて実現されており、そこに付与されるピクセル駆動信号は、その具体的なピクセル構造のCMY(シアン、マゼンタ、黄)サブピクセルのそれぞれにおいて、「明」の出力レベルをもたらすよう、選択される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向の透過軸ABを有する後方広帯域多層無損失偏光子、
前面と前記後方広帯域多層無損失偏光子に面する裏面とを有し、前記後方広帯域多層無損失偏光子に略平行に配置されており、かつ、透過軸ABに対して略平行又は略直交な透過軸を有する前方広帯域多層無損失偏光子、及び
前記前方広帯域多層無損失偏光子と前記後方広帯域多層無損失偏光子との間に、これらの偏光子と略平行に配置されており、かつ、透過軸ABの方向に対して振れ角度αで符号が交互に変わるc軸の配向を有する複数の複屈折薄膜の積層体を有する色偏光回転子を有する非吸収性偏光カラーフィルターであって、
複屈折薄膜の数、振れ角度α、厚み、及び光学異方性は、前記非吸収性偏光カラーフィルターが、透過軸ABに略平行な偏光状態を有する所定の色の光を透過させ、透過軸ABに直交な偏光状態を有する前記所定の色の光を反射させ、かつ、他の所定の色の非偏光を反射させるように、選択されている、非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項2】
透明基材をさらに有する、請求項1に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項3】
以下の順序で、
前記基材、
前記後方広帯域多層無損失偏光子、
前記色偏光回転子、
前記前方広帯域多層無損失偏光子を有する、請求項2に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項4】
前記基材は、前記後方広帯域多層無損失偏光子と前記色偏光回転子との間に配置される、請求項2に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項5】
前記基材は、前記色偏光回転子と前記前方広帯域多層無損失偏光子との間に配置される、請求項2に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項6】
以下の順序で、
前記後方広帯域多層無損失偏光子、
前記色偏光回転子、
前記前方広帯域多層無損失偏光子、
前記基材を有する、請求項2に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項7】
前記後方広帯域多層無損失偏光子は、複屈折膜と等方性膜とが交互に配置される層の積層体を有する、請求項1に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項8】
少なくとも一つの等方性膜は、屈折率が異なる材料からなる少なくとも二つの層を有する、請求項7に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項9】
前記後方広帯域多層無損失偏光子は、可視光の広帯域において前記透過軸ABに略平行に偏光される光の透過率の干渉極値をもたらし、かつ、可視光の広帯域において前記透過軸ABに略直交に偏光される光の反射率の干渉極値をもたらすように、複屈折薄膜及び等方性膜の数、厚み並びに光学異方性が選択されている広帯域干渉偏光子である、請求項7に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項10】
前記前方広帯域多層無損失偏光子は、複屈折膜と等方性膜とが交互に配置される層の積層体を有する、請求項1に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項11】
少なくとも一つの等方性膜は、屈折率が異なる材料からなる少なくとも二つの層を有する、請求項10に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項12】
前記前方広帯域多層無損失偏光子は、可視光の広帯域において前記透過軸ABに略平行に偏光される光の透過率の干渉極値をもたらし、かつ、可視光の広帯域において前記透過軸ABに略直交に偏光される光の反射率の干渉極値をもたらすように、複屈折薄膜及び等方性膜の数、厚み並びに光学異方性が選択されている広帯域干渉偏光子である、請求項10に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項13】
前方広帯域多層無損失偏光子の前面上に配置された、所定の色の光を透過させる少なくとも一つの通常の吸収性カラーフィルターをさらに有する、請求項1に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項14】
前記吸収性カラーフィルター上に配置される、少なくとも一つの前方広帯域シート偏光子をさらに有し、前記シート偏光子は、前方広帯域多層無損失偏光子の透過軸に略平行な透過軸を有する、請求項13に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項15】
少なくとも一つの複屈折膜が、
カスケード結晶化プロセスによって調製されたものであり、
光軸の一つの方向に3.4±0.3Åの分子間間隔を有する全体的に秩序のある二軸結晶構造を特徴とし、
可視光の波長帯域において透明であり、かつ、
共役π系及びイオノゲン基を有する少なくとも一つの多環式有機化合物に相当する棒状超分子によって形成されている、請求項1に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項16】
少なくとも一つの透明な複屈折薄膜は、400nm未満の基礎吸収端を有する、請求項15に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項17】
少なくとも一つの透明な複屈折薄膜は、0.98以上の透過係数を有する、請求項15に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項18】
少なくとも一つの透明な複屈折薄膜は、可視光の波長帯域において一様に透明である、請求項15に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項19】
少なくとも一つの透明な複屈折薄膜は、二価の金属及び/又は三価の金属のイオンで処理されている、請求項15に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項20】
少なくとも一種の有機化合物材料の分子は複素環を含む、請求項15に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項21】
少なくとも一つの透明な複屈折薄膜が、少なくとも一つの二色性染料をベースとするリオトロピック液晶により形成されている、請求項15に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項22】
液晶セル、及び
所定の方向の透過軸ABを有する後方広帯域多層無損失偏光子、
前面と前記後方広帯域多層無損失偏光子に面する裏面とを有し、前記後方広帯域多層無損失偏光子に略平行に配置されており、かつ、透過軸ABに対して略平行又は略直交な透過軸を有する前方広帯域多層無損失偏光子、及び
前記前方広帯域多層無損失偏光子と前記後方広帯域多層無損失偏光子との間に、これらの偏光子と略平行に配置されており、かつ、透過軸ABの方向に対して振れ角度αで符号が交互に変わるc軸の配向を有する複数の複屈折薄膜の積層体を有する色偏光回転子を有する非吸収性偏光カラーフィルターであって、
複屈折薄膜の数、振れ角度α、厚み、及び光学異方性は、前記非吸収性偏光カラーフィルターが、透過軸ABに略平行な偏光状態を有する所定の色の光を透過させ、透過軸ABに直交な偏光状態を有する前記所定の色の光を反射させ、かつ、他の所定の色の非偏光を反射させるように、選択されている、非吸収性偏光カラーフィルター、を有する液晶表示装置。
【請求項1】
所定の方向の透過軸ABを有する後方広帯域多層無損失偏光子、
前面と前記後方広帯域多層無損失偏光子に面する裏面とを有し、前記後方広帯域多層無損失偏光子に略平行に配置されており、かつ、透過軸ABに対して略平行又は略直交な透過軸を有する前方広帯域多層無損失偏光子、及び
前記前方広帯域多層無損失偏光子と前記後方広帯域多層無損失偏光子との間に、これらの偏光子と略平行に配置されており、かつ、透過軸ABの方向に対して振れ角度αで符号が交互に変わるc軸の配向を有する複数の複屈折薄膜の積層体を有する色偏光回転子を有する非吸収性偏光カラーフィルターであって、
複屈折薄膜の数、振れ角度α、厚み、及び光学異方性は、前記非吸収性偏光カラーフィルターが、透過軸ABに略平行な偏光状態を有する所定の色の光を透過させ、透過軸ABに直交な偏光状態を有する前記所定の色の光を反射させ、かつ、他の所定の色の非偏光を反射させるように、選択されている、非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項2】
透明基材をさらに有する、請求項1に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項3】
以下の順序で、
前記基材、
前記後方広帯域多層無損失偏光子、
前記色偏光回転子、
前記前方広帯域多層無損失偏光子を有する、請求項2に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項4】
前記基材は、前記後方広帯域多層無損失偏光子と前記色偏光回転子との間に配置される、請求項2に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項5】
前記基材は、前記色偏光回転子と前記前方広帯域多層無損失偏光子との間に配置される、請求項2に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項6】
以下の順序で、
前記後方広帯域多層無損失偏光子、
前記色偏光回転子、
前記前方広帯域多層無損失偏光子、
前記基材を有する、請求項2に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項7】
前記後方広帯域多層無損失偏光子は、複屈折膜と等方性膜とが交互に配置される層の積層体を有する、請求項1に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項8】
少なくとも一つの等方性膜は、屈折率が異なる材料からなる少なくとも二つの層を有する、請求項7に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項9】
前記後方広帯域多層無損失偏光子は、可視光の広帯域において前記透過軸ABに略平行に偏光される光の透過率の干渉極値をもたらし、かつ、可視光の広帯域において前記透過軸ABに略直交に偏光される光の反射率の干渉極値をもたらすように、複屈折薄膜及び等方性膜の数、厚み並びに光学異方性が選択されている広帯域干渉偏光子である、請求項7に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項10】
前記前方広帯域多層無損失偏光子は、複屈折膜と等方性膜とが交互に配置される層の積層体を有する、請求項1に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項11】
少なくとも一つの等方性膜は、屈折率が異なる材料からなる少なくとも二つの層を有する、請求項10に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項12】
前記前方広帯域多層無損失偏光子は、可視光の広帯域において前記透過軸ABに略平行に偏光される光の透過率の干渉極値をもたらし、かつ、可視光の広帯域において前記透過軸ABに略直交に偏光される光の反射率の干渉極値をもたらすように、複屈折薄膜及び等方性膜の数、厚み並びに光学異方性が選択されている広帯域干渉偏光子である、請求項10に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項13】
前方広帯域多層無損失偏光子の前面上に配置された、所定の色の光を透過させる少なくとも一つの通常の吸収性カラーフィルターをさらに有する、請求項1に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項14】
前記吸収性カラーフィルター上に配置される、少なくとも一つの前方広帯域シート偏光子をさらに有し、前記シート偏光子は、前方広帯域多層無損失偏光子の透過軸に略平行な透過軸を有する、請求項13に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項15】
少なくとも一つの複屈折膜が、
カスケード結晶化プロセスによって調製されたものであり、
光軸の一つの方向に3.4±0.3Åの分子間間隔を有する全体的に秩序のある二軸結晶構造を特徴とし、
可視光の波長帯域において透明であり、かつ、
共役π系及びイオノゲン基を有する少なくとも一つの多環式有機化合物に相当する棒状超分子によって形成されている、請求項1に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項16】
少なくとも一つの透明な複屈折薄膜は、400nm未満の基礎吸収端を有する、請求項15に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項17】
少なくとも一つの透明な複屈折薄膜は、0.98以上の透過係数を有する、請求項15に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項18】
少なくとも一つの透明な複屈折薄膜は、可視光の波長帯域において一様に透明である、請求項15に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項19】
少なくとも一つの透明な複屈折薄膜は、二価の金属及び/又は三価の金属のイオンで処理されている、請求項15に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項20】
少なくとも一種の有機化合物材料の分子は複素環を含む、請求項15に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項21】
少なくとも一つの透明な複屈折薄膜が、少なくとも一つの二色性染料をベースとするリオトロピック液晶により形成されている、請求項15に記載の非吸収性偏光カラーフィルター。
【請求項22】
液晶セル、及び
所定の方向の透過軸ABを有する後方広帯域多層無損失偏光子、
前面と前記後方広帯域多層無損失偏光子に面する裏面とを有し、前記後方広帯域多層無損失偏光子に略平行に配置されており、かつ、透過軸ABに対して略平行又は略直交な透過軸を有する前方広帯域多層無損失偏光子、及び
前記前方広帯域多層無損失偏光子と前記後方広帯域多層無損失偏光子との間に、これらの偏光子と略平行に配置されており、かつ、透過軸ABの方向に対して振れ角度αで符号が交互に変わるc軸の配向を有する複数の複屈折薄膜の積層体を有する色偏光回転子を有する非吸収性偏光カラーフィルターであって、
複屈折薄膜の数、振れ角度α、厚み、及び光学異方性は、前記非吸収性偏光カラーフィルターが、透過軸ABに略平行な偏光状態を有する所定の色の光を透過させ、透過軸ABに直交な偏光状態を有する前記所定の色の光を反射させ、かつ、他の所定の色の非偏光を反射させるように、選択されている、非吸収性偏光カラーフィルター、を有する液晶表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2007−535689(P2007−535689A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500842(P2007−500842)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/012453
【国際公開番号】WO2005/106577
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/012453
【国際公開番号】WO2005/106577
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]