説明

非対称分岐ポリマー抱合体およびマイクロアレイアッセイ

【課題】生物活性材料、特に、アッセイおよびマイクロアレイの構築のためのキャリアとして使用するための、改変された不規則および規則的な非対称分岐ポリマーを提供すること。
【解決手段】本発明において、薬物送達およびアッセイで使用するための結合対の1つのメンバーとの抱合を含む種々の目的のために、非対称分岐ポリマーは、生物活性因子と組み合わされる。本発明は、所望される材料に会合した非対称分岐ポリマー(ABP)を含むポリマー抱合体材料(ABP抱合体と呼ぶ)、これらのポリマーおよび抱合体の調製プロセス、その抱合体を含む組成物、その抱合体および組成物の使用方法に関する。具体的には、本発明は、少なくとも1つの生物活性因子と会合した少なくとも1つの非対称分岐ポリマーを含む、非対称分岐ポリマー抱合体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、農業、環境研究、診断、薬物のモニタリング、薬物標的のスクリーニング、リード化合物(lead)の至適化で使用することができる抱合体などの複合材料、ならびに他の材料、特に生物活性および標的認識能力を有する材料における非対称分岐ポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
(非対称分岐ポリマー)
近年、デンドリティックポリマー(dendritic polymer)と呼ばれる新規のポリマークラス(スターバーストデンドリマー(Starburst dendrimer)(またはデンススターポリマー(Dense Star polymer))およびコームバーストデンドリグラフト(Combburst dendrigraft)(またはハイパーコーム分岐ポリマー(hyper comb−branched polymer))の両方が含まれる)が開発され、産業的および学術的に広く研究されている(非特許文献1および非特許文献2)。これらのポリマーは、Tomaliaの特許文献1;特許文献2;特許文献3;特許文献4;特許文献5;特許文献6;特許文献7、およびこれらの引例に記載のように、しばしば、(a)十分に定義されたコア分子、(b)対称(均衡)分岐結合点を有する少なくとも2つの同心円樹枝状層(世代)、および(c)外面の基を示す。
【0003】
これらの対称分岐デンドリマーも、以前に調製された非対称分岐デンドリマーと明確に異なる(Denkewalterの特許文献8;特許文献9;および特許文献10)。後者は、非対称(不均衡)分岐連結点(juncture)を有する。
【0004】
両デンドリマー型は、ダイバージェント法またはコンバージェント法のいずれかによる保護および脱保護手順の繰り返しによって生成され得る。対称および非対称デンドリマーの両方がコアおよび分岐のための分子構成単位として小分子を使用するので、これらのデンドリマーの分子量はしばしば正確に定義される。より低い世代の場合、しばしば単一分子量のデンドリマーが得られる。
【0005】
デンドリマーと類似して、コームバーストデンドリグラフトも、段階的合成方法によって対称分岐を有するコア分子および同心円層によって構築される。デンドリマーと対照的に、コームバーストデンドリグラフトまたはポリマーは、単分散線状重合体構成単位を使用して生成する(Tomaliaの特許文献11ならびにYimの特許文献12および特許文献13)。さらに、分岐パターンは、デンドリマーの分岐パターンと非常に異なる。例えば、コームバーストデンドリグラフトはポリマー骨格に沿って分岐点を形成し(鎖分岐(chain branch))、スターバーストデンドリマーは、しばしば、末端で分岐する(末端分岐)。リビング重合技術の利用により、これらのポリマー基礎単位(コアおよび分岐)の分子量分布(Mw/Mn)はしばしば非常に狭い。結果として、グラフト対グラフト(graft−upon−graft)プロセスによって生成されたコームバーストデンドリグラフトは、むしろ、しばしば1.2未満の分子量分布(Mw/Mn)で十分に定義される。
【0006】
十分に定義されたサイズ、形状、および表面官能基などの十分に制御された分子構造を有するにもかかわらず、デンドリマーおよびデンドリグラフトは共に多数の反復工程でしか生成することができないため、デンドリマーおよびデンドリグラフトは大規模な商業的応用よりもむしろ難解な学問的研究のみに有用である。
【0007】
デンススターポリマー(Dense Star Polymer)については、Tomaliaの特許文献14;特許文献15;および特許文献16、ハイパーコーム分岐ポリマーについてはYinの特許文献17に記載のように、デンドリマーおよびデンドリグラフトは、生物活性因子としての固有のキャリア特性を有することが示されている。これらの固有の特性(すなわち、表面官能基および内部空間)は、主に、予測可能な分岐パターン(対称末端またはポリマー鎖分岐のいずれか)および分子量を有する十分に制御された対称樹状構造によるものである。
【0008】
これらの教示によれば、不規則および規則的な非対称分岐ポリマー(ran−ABPおよびreg−ABP)は、長い間不十分なキャリア材料と見なされていた。例えば、ran−ABPは、a)コアがなく、b)外部および内部の両方に官能基を有し、c)種々の分岐長および分岐パターン(すなわち、末端分岐および鎖分岐)を有し、d)内部空間が偏在している。reg−ABPはコアを有するが、官能基は外部および内部の両方に存在する。したがって、ran−ABPおよびreg−ABPは共に生物活性因子の保有に不適切であると一般に見なされている。
【0009】
特許文献18;特許文献19;および特許文献20に例示されるように、ポリリジンからのreg−ABPの調製が記載されている。
【0010】
ポリエチレンイミン(PEI)などから生成されたran−ABPの合成および機構は、広く研究されている(非特許文献3,非特許文献4および非特許文献5を参照のこと)。
【0011】
ポリオキサゾリンなどから生成された不規則な非対称分岐ポリマー(すなわち、ポリ(2−メチルオキサゾリン)および/またはポリ(2−エチルオキサゾリン))の合成および特徴づけは、Litt(非特許文献6)およびWarakomski(非特許文献7)によって広く研究されている。
【0012】
ほとんどの先行技術は、固体表面の特性を変化させる(すなわち、電荷、電荷密度、および疎水性を変化させる)ためのコーティング材料としてのポリエチレンイミンポリマーの使用に関していた。ポリエチレンイミンポリマーのコーティングの態様は、J Nessの特許文献21およびK Moynihanの特許文献22に記載されている。ポリエチレンイミンは、遺伝子トランスフェクション研究のためのDNA分子の保有に関しても試験されている。しかし、このポリマーは細胞傷害性を示すことが見出された。
【0013】
不規則な分岐ポリ(2−エチルオキサゾリン)はまた、タンパク質分子を物理的にカプセル化するために使用されている(特許文献23)。しかし、このようなアプローチは、バイオアッセイおよび薬物送達に応用するための生物活性材料とのABPの直接的共有結合のためには設計されていなかった。
【0014】
これまで、既存の先行技術は、溶液から固体表面上への生物活性物質の輸送、固定、および配向が全て同時に起こるような、薬物送達および標的認識、特に、アッセイおよびマイクロアレイに関連する応用のための生物活性材料を保有するために改変ran−ABPおよび改変reg−ABPを使用していない。
【0015】
(アッセイおよびマイクロアレイ)
ヒトゲノム計画の完了以来、より多くの研究者が、タンパク質レベルでの生物学的経路および機構の解明が実際には遺伝子レベルよりもはるかに重要であることに気づいた。これは、前者が異なる疾患および病期とより密接に関連するからである。この強い要望の後押しにより、最近は産業および学術研究者の両方でプロテオミクスと呼ばれる新規のフォーラムが主な研究対象となりつつある。
【0016】
現在、新規のタンパク質標的および薬物リード化合物の発見、ハイスループットスクリーニング、および検証のために3つの主な研究ツールがプロテオミクス研究領域で使用されている。これらのツールには、二次元(2−D)ゲル電気泳動、質量分析、より最近では、タンパク質マイクロアレイが含まれる。質量分析に関与する、時間のかかる2−Dゲル手順および単調なサンプル調製(主に、分離)と対照的に、タンパク質マイクロアレイは、大量のタンパク質およびその機能をスクリーニングするための迅速で容易な低コストの方法を提供する。したがって、マイクロアレイは、プロテオミクスの研究者に非常に望まれている。
【0017】
しかし、タンパク質ベースのマイクロアレイ技術は、遺伝子マイクロアレイよりもはるかに開発が遅れている。タンパク質/抗体チップの構築には、古典的な免疫アッセイまたはDNAチップの開発において遭遇しない困難な問題が存在する。一般に、タンパク質は、核酸よりもその環境に影響を受けやすい。多くの膜、ガラス、およびプラスチック表面の疎水性によってタンパク質が変性し、捕捉分子が不活性になり、それによって感度が低下し、ノイズ/シグナル比が高くなる。言い換えれば、タンパク質マイクロアレイを構築するために、少なくとも3つの主な問題(タンパク質の変性、固定、および配向)を克服することができなければならない。
【0018】
例えば、タンパク質分子は、しばしば、生物活性を維持するために溶液中で三次元構造に折り畳まれる。様々な固体表面との相互作用の際、例えば、膜、スライドガラス、または微粒子/ナノ粒子へのタンパク質の固定時に、タンパク質分子の三次元構造はしばしば崩壊し、それによって生物活性が喪失する。さらに、タンパク質は、種々の表面への接着能力がないこともよくある。
【0019】
表面上にタンパク質分子を固定するために、しばしば、直接的共有結合反応または静電相互作用(物理的吸着)を使用しなければならない。しばしば不均一化学反応が不完全に起こり、望ましくない副生成物(すなわち、表面の不完全な改変)が得られ、いくつかの場合では、異なる反応段階で部分的に変性したタンパク質が得られる。
【0020】
静電相互作用は、タンパク質の等電点および緩衝液のpHに強く依存する。
【0021】
両アプローチは、これらの手順に関与する複雑さによって再現不可能な結果が得られる傾向がある。したがって、ロット毎の再現性は非常に低い。結果として、タンパク質分子自体ではなく固体基板の改変に大きな関心が寄せられている。P Wagnerらの特許文献24に記載されているように、タンパク質アレイの構築のために固体表面の特徴を変化させるためのコーティング材料として種々のポリマー(ポリエチレンイミンポリマーを含む)が使用されている。
【0022】
これまで、先行技術は、改変された不規則および規則的な非対称分岐ポリマーを、生物活性材料、特に、アッセイおよびマイクロアレイの構築のためのキャリアとして使用していない。
【特許文献1】米国特許第4,435,548号明細書
【特許文献2】米国特許第4,507,466号明細書
【特許文献3】米国特許第4,568,737号明細書
【特許文献4】米国特許第4,587,329号明細書
【特許文献5】米国特許第5,338,532号明細書
【特許文献6】米国特許第5,527,524号明細書
【特許文献7】米国特許第5,714,166号明細書
【特許文献8】米国特許第4,289,872号明細書
【特許文献9】米国特許第4,360,646号明細書
【特許文献10】米国特許第4,410,688号明細書
【特許文献11】米国特許第5,773,527号明細書
【特許文献12】米国特許第5,631,329号明細書
【特許文献13】米国特許第5,919,442号明細書
【特許文献14】米国特許第5,338,532号明細書
【特許文献15】米国特許第5,527,524号明細書
【特許文献16】米国特許第5,714,166号明細書
【特許文献17】米国特許第5,919,442号明細書
【特許文献18】米国特許第4,289,872号明細書
【特許文献19】米国特許第4,360,646号明細書
【特許文献20】米国特許第4,410,688号明細書
【特許文献21】米国特許第6,150,103号明細書
【特許文献22】米国特許第6,365,349号明細書
【特許文献23】米国特許第6,716,450号明細書
【特許文献24】米国特許第6,406,921号明細書
【非特許文献1】GR Newkomeら編,Dendritic Molecules,VCH,Weinheim,1996年
【非特許文献2】JMJ FrechetおよびDA Tomalia編,Dendrimers and Other Dendritic Polymers,John Wiley & Sons,Ltd.,2001年
【非特許文献3】GD Jonesら,J.Org.Chem.9,125,1944年
【非特許文献4】GD Jonesら,J.Org.Chem.30,1965年,p.1994
【非特許文献5】CR Dickら,J.Macromol.Sci.Chem.,A4(6),1970年,p.1301−1314
【非特許文献6】Litt,J.Macromol.Sci.Chem.A9(5),1975年,p.703−727
【非特許文献7】J.Polym.Sci.Polym.Chem.28,1990年,p.3551
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0023】
(発明の要旨)
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
少なくとも1つの生物活性因子と会合した少なくとも1つの非対称分岐ポリマーを含む、非対称分岐ポリマー抱合体。
(項目2)
上記非対称分岐ポリマーが、改変されていない非対称分岐ポリマーであるかまたは改変された非対称分岐ポリマーである、項目1に記載の抱合体。
(項目3)
上記生物活性因子が、診断剤、治療剤、または診断剤と治療剤との組み合わせである、項目1に記載の抱合体。
(項目4)
上記非対称分岐ポリマーが、共有結合または非共有結合のいずれかを介して別の生物活性因子と連結している、項目1に記載の抱合体。
(項目5)
上記非対称分岐ポリマーが、不規則な非対称分岐ポリマーまたは規則的な非対称分岐ポリマーである、項目2に記載の抱合体。
(項目6)
上記不規則な非対称分岐ポリマーが、ポリエチレンイミンまたは改変ポリエチレンイミンである、項目5に記載の抱合体。
(項目7)
上記不規則な非対称分岐ポリマーが、ポリオキサゾリンまたは改変ポリオキサゾリンである、項目5に記載の抱合体。
(項目8)
上記不規則な非対称分岐ポリオキサゾリンが、ポリ(2−メチルオキサゾリン)またはポリ(2−エチルオキサゾリン)である、項目7に記載の抱合体。
(項目9)
上記修飾された不規則な非対称分岐ポリオキサゾリンが、改変ポリ(2−メチルオキサゾリン)または改変(2−エチルオキサゾリン)である、項目8に記載の抱合体。
(項目10)
上記規則的な非対称分岐ポリマーが、ポリリジンまたは改変ポリリジンである、項目5に記載の抱合体。
(項目11)
上記生物活性因子が金属である、項目1に記載の抱合体。
(項目12)
上記金属が、遷移金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタニド系列の元素、またはアクチニド系列の元素である、項目11に記載の抱合体。
(項目13)
項目1に記載の抱合体およびレポーター分子を含む、アッセイキット。
(項目14)
上記生物活性因子が、結合対のメンバーである、項目13に記載のキット。
(項目15)
上記結合対が、抗体、その抗原結合部位、抗原、またはそのエピトープ含有部分を含む、項目14に記載のキット。
(項目16)
上記レポーター分子が、着色、発光、もしくは蛍光の粒子もしくは部分、酵素、またはその組み合わせを含む、項目13に記載のキット。
(項目17)
上記発光または蛍光の粒子または部分が、量子ドット、ナノ結晶、高周波数変換リン光性粒子、またはフルオロフォア含有ラテックスビーズを含む、項目16に記載のキット。
(項目18)
上記着色された粒子が、金または銀を含むコロイド金属、着色されたラテックスビーズ、または有色色素を含む、項目16に記載のキット。
(項目19)
上記キットが、上記抱合体および上記レポーター分子を含有する固相を含む、項目13に記載のキット。
(項目20)
上記固相が、平面または膜を含む、項目19に記載のキット。
(項目21)
上記平面が、シリコンウエハー、石英、ガラス、金属、またはプラスチックを含む、項目20に記載のキット。
(項目22)
上記膜が、紙、プラスチック膜、ナイロン膜、またはニトロセルロースを含む、項目20に記載のキット。
(項目23)
上記固相および上記抱合体が、マイクロアレイまたはビーズアレイを含む、項目19に記載のキット。
(項目24)
上記レポーター分子により、色または光により検出可能な生成物が得られる、項目13に記載のキット。
(項目25)
上記生物活性因子が、生体ポリマー、ホルモン、神経伝達物質、病原体、毒素、または薬物に結合する、項目13に記載のキット。
(項目26)
上記病原体が、細菌、胞子、寄生生物、またはウイルスである、項目25に記載のキット。
(項目27)
上記生体ポリマーが、ポリペプチド、ポリサッカリド、またはポリヌクレオチドである、項目25に記載のキット。
(項目28)
上記ポリペプチドが酵素である、項目27に記載のキット。
(項目29)
上記ポリペプチドが、抗体、その抗原結合部位、抗原、またはそのエピトープ含有部分である、項目27に記載のキット。
(項目30)
上記固相が、ディップスティック(dipstck)、側方流動免疫アッセイ、またはマイクロアレイを含む、項目19に記載のキット。
(項目31)
標的分子を含むと疑われるサンプルを得る工程、
そのサンプルを項目1に記載の抱合体に曝露する工程であって、ここで生物活性因子が、その標的分子に特異的に結合する、工程、
およびその抱合体とその標的分子との複合体が形成されるか否かを決定する工程
を含む、標的分子の検出方法。
(項目32)
上記決定工程がレポーター分子を含む、項目31に記載の方法。
(項目33)
上記レポーター分子の存在が、視覚的に決定される、項目31に記載の方法。
(項目34)
上記レポーター分子の存在が、機械的手段によって検出される、項目31に記載の方法。
(項目35)
上記機械的手段が検出手段を含む、項目34に記載の方法。
(項目36)
上記機械的手段が、データをデジタル化する検知手段およびデータ保存手段を含む、項目34に記載の方法。
(項目37)
上記機械的手段が表示手段を含む、項目34に記載の方法。
(項目38)
上記機械的手段が手持ち式のデバイスである、項目34に記載の方法。
(項目39)
データ通信手段をさらに含む、項目34に記載の方法。
(項目40)
上記機械的手段が携帯可能である、項目34に記載の方法。
(項目41)
上記機械的手段が、検出シグナル定量化手段を含む、項目34に記載の方法。
(項目42)
上記通信手段がワイヤレス手段である、項目39に記載の方法。
(項目43)
上記生物活性因子が薬物である、項目1に記載の抱合体。
(項目44)
上記薬物が、麻酔薬、抗生物質、抗真菌薬、抗ウイルス薬、鎮痛薬、抗高血圧薬、抗炎症薬、解毒薬、抗ヒスタミン薬、化学療法薬、抗鬱薬、抑制薬、刺激薬、精神安定薬、泌尿器抗感染薬、血管収縮薬、ビタミン、心臓作用薬、免疫抑制薬、または栄養補給薬である、項目43に記載の抱合体。
(項目45)
上記薬物が生体ポリマーである、項目43に記載の抱合体。
(項目46)
上記薬物がホルモンである、項目43に記載の抱合体。
(項目47)
上記薬物が上記ポリマーによってカプセル化されている、項目43に記載の抱合体。
(項目48)
上記生体ポリマーが、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドである、項目45に記載の抱合体。
(項目49)
上記ポリヌクレオチドが、DNAまたはRNAである、項目48に記載の抱合体。
(項目50)
上記ポリペプチドが、リガンドまたは抗原結合性である、項目48に記載の抱合体。
(項目51)
上記抗原結合ポリペプチドが免疫グロブリンまたはその抗原結合部分である、項目50に記載の抱合体。
(項目52)
上記RNAがRNAiである、項目49に記載の抱合体。
【0024】
1つの局面では、本発明は、所望の材料に会合した非対称分岐ポリマー(ABP)を含むポリマー抱合体材料(以後、ABP抱合体と呼ぶ)、これらのポリマーおよび抱合体の調製プロセス、前記抱合体を含む組成物、前記抱合体および組成物の使用方法に関する。
【0025】
それぞれ異なる性質および活性を有する複数の保持材料単位と会合した非対称分岐ポリマーも含む。このような抱合体を、例えば、生体検出、診断、農業、および医薬品で使用するために許容可能なキャリア、希釈剤、および添加物を使用して処方することができる。
【0026】
非対称分岐ポリマー抱合体は、生体活性材料の特異的送達が望まれる種々の適用での使用に適切である。本発明の好ましい実施形態では、不規則な非対称分岐ポリマー抱合体は、1つまたは複数の生体活性材料と会合した1つまたは複数の非対称分岐ポリマーから構成される。
【0027】
本発明の別の局面では、非対称分岐ポリマーは、不規則または規則的であり、末端分岐パターンおよび鎖分岐パターンの混合物を有する非対称分岐連結点を有する。
【0028】
本発明の別の局面では、非対称分岐ポリマーは、外部および内部の両方に官能基を有する。
【0029】
本発明の別の態様では、非対称分岐ポリマーは、偏在空間を有する。
【0030】
本発明の別の態様では、非対称分岐ポリマーは、新規の材料の性質を得ることができるように一定時間にさらなる分岐を形成することができる少なくとも1つの単量体で修飾されており、この改変ポリマーは、改変非対称分岐ポリマーと定義される。
【0031】
改変非対称分岐ポリマーを、規則的な非対称分岐ポリリジンまたは不規則な非対称分岐ポリエチレンイミン(Aldrich、Polysciencesからか、またはLuposal(商標)の商標名でBASFから市販されている)のいずれかにある化学結合官能基を介して得ることができる。
【0032】
不規則な非対称分岐ポリオキサゾリンポリマーを、M Litt(J.Macromol.Sci.Chem.A9(5),pp.703−727(1975))に記載の手順にしたがって調製することができる。
【0033】
本発明の別の局面では、非対称分岐ポリマーは、−NH基、−NHR基、−NR基、−NR基、−COOR基、−COOH基、−COO−基、−OH基、−C(O)R基、−C(O)NH基、−C(O)NHR基、または−C(O)NR基、分岐することができ、1つ以上の二重結合および/または三重結合を含み、そして/または置換され得る脂肪族基、複数の環を含むことができ、融合または分離することができ、その環が種々のサイズであってよく、そして/または置換基を含み得る芳香族基、ペルフルオロカーボン鎖、種々の環サイズであってよく、その環が硫黄原子または窒素原子などのヘテロ原子を含むことができ、そして/または置換され得るサッカリド、2つまたはそれ以上の単量体を含み、分岐することができ、そして/または置換され得るポリサッカリド、ならびにポリエチレングリコールなどの官能基(これらに限定されない)(式中、Rは、本明細書中に定義の任意の脂肪族基、芳香族基、またはこれらの組み合わせであり得る)でさらに改変されている。
【0034】
これらの非改変非対称分岐ポリマーおよび改変非対称分岐ポリマーの分子量は、約500〜5,000,000超;好ましくは約500〜約1,000,000;より好ましくは約1,000〜約500,000;およびより好ましくは約2,000〜約100,000の範囲であり得る。
【0035】
本発明の好ましい抱合体には、非対称分岐ポリマー抱合体が少なくとも1つの生物学的に活性な(生物活性)材料の少なくとも1つの単位と会合した少なくとも1つの非改変非対称分岐ポリマーおよび/または修飾非対称分岐ポリマーを含む抱合体が含まれる。生物活性材料のいくつかの例は、インターロイキン、インターフェロン、Tヘルパー細胞CD4分子、Fレセプター、アセチルコリンレセプター(AChR)、抗原に対するT細胞レセプター、インスリンレセプター、腫瘍壊死因子、顆粒球コロニー刺激因子、ホルモンレセプター、抗体、抗体フラグメント、IgG分子、Fabおよび抗原に結合する他の抗体誘導体、組換えタンパク質、ポリペプチド、ファージ、ファージフラグメント、DNAフラグメント、RNAフラグメント、ホルモン(インスリンおよびhCGなど)、酵素、シアル酸、ポルフィリン、ヌクレオチド、ウイルス、およびウイルスフラグメントなどである。
【0036】
本発明はまた、少なくとも1つの生物活性分子をカプセル化する、目的の複数のポリマー含む組成物を意図する。目的の単一または複数の種のポリマーを使用して、封緘層を形成することができる。
【0037】
本発明の1つの局面では、非改変非対称分岐ポリマーおよび/または改変非対称分岐ポリマー−生物活性材料抱合体を、例えば、環境汚染物質、化学物質、および細菌兵器などの目的の標的分子の迅速な検出ならびに薬物標的およびリード化合物のスクリーニング、ならびに治療剤および治療効果のモニタリングのために使用することができる。
【0038】
本発明の別の局面では、非改変非対称分岐ポリマーおよび/または改変非対称分岐ポリマー−生体活性材料抱合体を、例えば、様々な癌、腫瘍、病状、および疾患の迅速な診断、ならびにバイオマーカーの変化のモニタリングならびに臨床試験および治療上の処置におけるタンパク質プロファイリングのために使用することができる。
【0039】
本発明の別の局面では、非改変非対称分岐ポリマーおよび/または改変非対称分岐ポリマー−生物活性材料抱合体を、例えば、直接サンドイッチアッセイ、間接サンドイッチアッセイ、連続的アッセイ、および競合生物アッセイのために使用することができる。
【0040】
本発明のさらに別の局面では、少なくとも1つの非改変非対称分岐ポリマーおよび/または改変非対称分岐ポリマーを使用して、少なくとも1つのタンパク質分子を種々の固体表面に保持させることができ、それにより、少なくとも1つのタンパク質分子を実質的に変性させない。これらの表面には、ニトロセルロース、紙、他の膜、ガラス、金属、およびプラスチックなどが含まれ、シート、およびストリップなどの平面、粒子およびビーズなどの球体、ならびに他の形態などの種々の形態で存在することができ、例えば、ビーズアレイ、マイクロアレイまたはナノアレイ、およびアッセイのための空間的配置に基づいたプレートマイクロアレイの作製のために使用することができる。ビーズマイクロ/ナノアレイを、同一のマイクロ/ナノ粒子へ複数のタンパク質を付着するかまたはビーズを混合するだけかのいずれかによって構築することができる。ここで、各ビーズは、1つの特定の種類のタンパク質分子を保有する。検出に加えて、ビーズマイクロ/ナノアレイを、タンパク質プレートマイクロアレイ、2Dゲル、または質量分析計を使用した分析前の生物活性材料の迅速なハイスループット分離に使用することもできる。このようなタンパク質アレイは、タンパク質標的の発見、検証、薬物リード化合物のスクリーニング、ならびに治療上の処置におけるバイオマーカーおよびタンパク質プロフィールのモニタリングのための理想的なツールである。
【0041】
非対称分岐ポリマー抱合体を、農業、食品の安全保証、ならびにインビトロおよびインビボでの診断、治療剤送達、およびターゲティングに関連する適用でさらに使用することができる。したがって、ポリマー抱合体を、ボーラス送達、遅延放出、徐放、腸溶コーティング、および所望の特徴の、他の種々の薬理学的処方物を提供することができる薬物送達デバイスとして使用することができる。このような抱合体を、種々のセンサープラットフォーム(光学デバイス、電気デバイス、圧電デバイス、ならびにマイクロ流体光学システム、マイクロ電気機械システム(MEMS)、およびナノ電気機械システム(NEMS)が含まれるが、これらに限定されない)における重要な検知構成要素としても使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
(発明の詳細な説明)
非対称分岐を含む非対称分岐ポリマーを図1に示す。ここで目的のいくつかのポリマーはコアを含まず、ポリマー全体にわたり鎖分岐および末端分岐の両方からなる非対称分岐連結点を示す。外部および内部の両方に官能基が存在する。
【0043】
このようなポリマーは、多数の固有の利点を示す。第1に、種々の公知の出発材料を使用することができる。このようなモノマーおよびポリマーは低コストであり、大量に製造するのが非常に容易である。例えば、目的のポリマーを合成するために使用することができる1つのこのような前駆体ポリマーは、ポリエチレンイミン(PEI)である。不規則な非対称分岐ポリエチレンイミンは60年以上前に発見されており(GD Jones et al.,J.Org.Chem.9,125(1944))、これらの前駆体ポリマーの合成手順は十分に確立されている。種々の分子量を有するポリエチレンイミンが、Aldrich、Polysciences、およびBASF(商標名LuposalTM)などの異なる供給元から市販されている。不規則な非対称分岐ポリエチレンイミンは、主に、開始剤としてルイス酸またはブレンステッド酸を使用したアジリジン(エチレンイミン)およびアゼチジン(プロピレンイミン)などの環が歪んだ環式イミンモノマーのカチオン性開環重合によって生成されている。(OC Dermer et al.,“Ethylenediamine and Other Aziridines”,Academic Press,New York,(1969)およびAS Pell,J.Chem.Soc.71(1959))。ワンポットプロセスであるので、大量の不規則な非対称分岐ポリマーを容易に生成することができる(図2)。
【0044】
不規則な分岐ポリ(2−置換オキサゾリン)ポリマーを、M Litt(J.Macromol.Sci.Chem.A9(5),pp.703−727(1975))に記載の手順にしたがって調製することができる。
【0045】
第2に、先行技術の合成プロセスは、しばしば、高分子内に種々の分岐連結点を生成する。言い換えれば、末端および鎖の分岐連結点の混合が分子構造全体に分布している。これらの不規則な非対称分岐ポリマーの分岐密度は低く、分子構造は、デンドリマーおよびデンドリグラフトと比較した場合により開いている。分岐パターンが不規則であるにもかかわらず、第一級、第二級、および第三級アミン基の平均比は、比較的一定であり、CR
Dick et al.,J.Macromol.Sci.Chem.,A4(6),1301−1314(1970)およびGM Lukovkin,Eur.Polym.J.9,559(1973)に記載のように、約1:2:1である。
【0046】
これらの分岐連結点が存在するために、不規則な分岐ポリエチレンイミンは依然として球状高分子と見なされる。球状構造内に、高分子内部に不完全な分岐連結点から形成された種々のサイズのポケットが存在する。内部ポケットが常に分子の中心の周囲に存在するデンドリマーおよびデンドリグラフトと異なり、不規則な非対称分岐ポリマーのポケットは、分子全体に偏在している。結果として、不規則な非対称分岐ポリマーは、種々の分子とさらに反応し、それにより改変された不規則な非対称分岐ポリマーと定義される新規の高分子構造を形成することができる外部官能基および偏在内部官能基の両方を有する(図3)。
【0047】
コアを有するにもかかわらず、規則的な非対称分岐ポリマーの官能基も外部および内部の両方に分布しており、これは、不規則なABPと非常に類似している。さらに、種々の前駆体ポリマーを使用して、このような目的のポリマーを構築することができる。このような前駆体ポリマーの1つはポリリジンである。このようなポリマーの生成の最良の例は、米国特許第4,289,872号;同第4,360,646号;および同第4,410,688号に記載の規則的な非対称分岐ポリリジンポリマーである。結果として、このようなポリマーを、不規則なABPと同様の様式で改変することもできる。
【0048】
本発明の1つの実施形態では、非対称分岐ポリマー(例えば、不規則な非対称分岐ポリエチレンイミン(PEI)または規則的な非対称分岐ポリリジンのいずれか)を、例えば、マイケル付加またはポリマーのアミンへのアクリル酸エステルの付加によって異なる種の第一級アミン基で改変した。したがって、例えば、マイケル付加反応によって、アクリル酸メチルを、ポリエチレンイミンポリマーおよびポリリジンポリマーの第一級および/または第二級アミノ基に導入することができる。次いで、エステル基を、例えば、アミド化反応によってさらに誘導体化することができる。したがって、例えば、エチレンジアミンとのこのようなアミド化反応により、アミノ基を新規に形成された分岐の末端に付加することができる。ポリマーに対する他の改変を、例えば、Handbook of Polymer Synthesis(Part A)Edited by HR Kricheldorf,New York,Marcel Dekker,1994中の「ポリ(アミン)およびポリ(アンモニウム塩)」に記載の公知の化学反応を使用して行うことができる。
【0049】
このような付加の際、改変PEIまたはポリリジンポリマーなどの改変された非対称分岐ポリマーが形成される。PEIおよびポリリジンなどの非対称分岐ポリマーの伸長として、得られた改変ABPも非対称に分岐する。溶媒環境(すなわち、pHまたは極性)に依存して、表面官能基は、異なる電荷および電荷密度を有し得る。次いで、これらの特徴に基づいて、分子の形状および官能基の位置(すなわち、官能基の逆折りたたみ(back folding))をさらに調整することができる。
【0050】
本発明の別の実施形態では、改変された非対称分岐ポリマーを、例えば、ポリマーの適切な部位と反応しやすいことが公知の任意の種々の合成スキームを使用して生成することができる。さらに、任意の種々の試薬を合成スキームで使用して、任意の種々の改変を行うかポリマー骨格に付加することができる。したがって、例えば、上記アミンへのマイケル付加反応の場合、任意の種々の単量体の付加を、C〜C22アクリレートとのアルキル化段階で使用することができる。好ましい反応物質としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル、およびこれらの混合物が挙げられる。同様に、上記例示の例中のアミド化段階で、任意の種々のアミンを使用することができる。例えば、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、アルキルアミン、アリルアミン、または任意のアミノ改変ポリマー(ポリエチレングリコール(PEG)、ペルフルオロポリマー、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリジメチルシリキサン、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレートなどが含まれる)、およびこれらの混合物を使用することができる。
【0051】
この合成ストラテジーにより、より多数のポケットを容易に誘導することができる分子を非対称に増加させるだけでなく、構造の内部および外部の両方に複数の官能基を付加することも可能である。明らかに、適切な分子量および官能基を有する所望の非対称分岐ポリマーが達成されるまで、同一または異なる合成プロセスを使用して、前駆体ポリマーを連続的に改変することができる。さらに、このようなポリマーの疎水性および親水性ならびに電荷密度を、ポリマーの構築に適切な単量体および適切な改変反応を使用して、特定の適用に対するニーズに適合するように容易に調整することができる。
【0052】
本発明の別の実施形態では、不規則な非対称分岐ポリマーの鎖末端を、別の小分子で終結するか反応させ、それにより、ポリマー鎖末端に種々の官能基(第一級、第二級、もしくは第三級アミン基、ならびにカルボキシレート基、ヒドロキシル基、アルキル基、フルオロアルキル基、アリール基、PEG基、アセテート基、アミド基、および/またはエステル基が含まれる)を生成することができる。あるいは、同一の官能基型を鎖末端に導入することができるように種々の開始剤を使用することもできる(J.Macromol.Sci.Chem.A9(5),pp.703−727(1975))。したがって、第一級アミン鎖末端を有するアルキル修飾された非対称分岐ポリ(2−エチルオキサゾリン)を、前述のM Littの手順を使用して調製することができる。
【0053】
本発明の別の実施形態では、非対称分岐ポリマーを使用して、インビトロおよびインビボの両方に関連した適用のための生物活性材料を保有することができる。生物活性材料は、種々の分子、特に、生体ポリマー(ポリペプチド、ポリヌクレオチド、脂質、ポリサッカリド、酵素、レセプター、抗体、ビタミン、およびレクチンなど)などの別の分子に結合する能力を有する分子を含む。標的は、寄生生物、細菌、ウイルスなどの病原体、または毒液などの毒素であり得る。生物活性材料を、種々の用途(診断剤よび治療剤など)のために使用することができる。「診断剤」は、特定の疾患、生理学的な状態または段階、病理学的な状態または段階などのマーカーとして使用することができる分子を意味する。アルブミン、ミネラルレベル、微生物、特異的抗体、特異的抗原、および毒素などが診断剤の例である。治療剤は、薬物、栄養物、およびタンパク質などの有益な効果を付与するものである。特定の標的が診断剤および治療剤の両方であることは珍しくない。
【0054】
内部または外部のいずれかの偏在するポケットおよび種々の官能基を生成する能力のために、適切に改変されたこれらの非対称分岐ポリマーは、金属イオンおよび薬物などの小分子からタンパク質およびDNAなどの他の巨大生物活性材料の範囲の種々の材料を保有することができる。
【0055】
目的のポリマーを使用して、生物活性因子、特に医薬品をカプセル化することができる。
【0056】
本明細書中に教示され、且つ当該分野で公知のように、マイクロカプセルを作製することができる。例えば、Microencapsulation,Methods and
Industrial Applications,Benita,ed.,Dekker,1996を参照のこと。マイクロカプセルを乾燥状態の混合または反応で作製することができるか、液体状態の混合または反応で作製することができる。
【0057】
マイクロカプセルを、当該分野で公知の種々の方法で(経口、IM、SC、IV、直腸、局所などが含まれる)宿主に投与することができる。
【0058】
本発明のマイクロカプセルを、クリーム、軟膏剤(ointment)、ローション剤、軟膏(unguent)、および他の化粧品などの局所的適用で使用することができる。医薬品および他の生体活性化合物または不活性化合物(緩和薬、漂白剤、制汗剤、医薬品、保湿剤、芳香剤、着色剤、色素、染料、酸化防止剤、油、脂肪酸、脂質、無機塩、有機分子、乳白剤、ビタミン類、医薬品、角質溶解薬、UV遮断剤、日焼け促進剤(tanning accelerator)、脱色剤、脱臭剤、香料、および防虫剤など)をカプセル化することができる。
【0059】
目的のポリマーによって保有することができる金属としては、遷移金属および他の金属(Sc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、およびHgなど)、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタニド系列の元素(Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuなど)、またはアクチニド系列の元素(Th、Pa、U、Np、Pu、Am、Cm、Bk、Cf、Es、Fm、Md、No、およびLrなど)が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0060】
目的のポリマーによって保有することができる薬物としては、麻酔薬、抗生物質、抗真菌薬、抗ウイルス薬、鎮痛薬、抗高血圧薬、抗炎症薬、解毒薬、抗ヒスタミン薬、化学療法薬、抗鬱薬、抑制薬、刺激薬、精神安定薬、泌尿器抗感染薬(urinary antiinfective)、血管収縮薬、ビタミン、心臓作用薬、免疫抑制薬、または栄養補給薬が挙げられるが、これらに限定されない。特定の例は、リドカイン、ブピバカイン、ヒドロコルチゾン、クロルフェニラミン、トリプロリジン、デキストロメトルファン、コデイン、メチジジン(methidizine)、トリメプリジン(trimeprizine)、アトロピン、2−PAMクロリド、ホマトロピン、レボドパ、シクリジン、メクリジン、スコポラミン、アセトアミノフェン、アムホテリシンB、アンフェタミン、メタンフェタミン、デキストロアンフェタミン、プロパノロール、プロカインアミド、ジソピラミニド(disopyraminide)、キニジン、エンカイニド、ミルリノン、アムリノン、ドブタミン、エナラプリル、コルニジン(colnidine)、ヒドララジン、グアナドレル、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、テトラサイクリン、エリスロマイシン、およびキノロン薬である。
【0061】
目的のポリマーによって保有することができる巨大生体活性材料としては、タンパク質、組換えタンパク質、抗体、Fab抗体フラグメント、抗原に結合する他の抗体フラグメント、酵素、DNA、組換えDNA、DNAフラグメント、RNA、RNAi、組換えRNA、RNAフラグメント、ヌクレオチド、ウイルス、およびウイルスフラグメントなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0062】
本発明のさらに別の実施形態では、これらの非対称分岐ポリマーを使用して、ナノメートルスケールで生体検知事象を操作することができる。本発明の好ましい抱合体には、非対称分岐ポリマーが少なくとも1つの生物活性材料または生物学的反応指標の少なくとも1単位に会合した少なくとも1つの非対称分岐ポリマーを含む抱合体が含まれる。
【0063】
生物活性材料、生物学的応答指標、または治療分子は、しばしば、認識能力または結合能力を有するものである。本発明の目的のために、認識能力または結合能力を有する目的の分子を、結合対と見なすか、個別に結合対の1つまたは1つのメンバーと見なす。したがって、結合対の例としては、抗体と抗原;抗体の抗原結合部分と抗原;抗体のF部分とFレセプター;アビジン、ストレプトアビジン、中性アビジン、NeutraLiteアビジンまたは他のアビジン誘導体およびアビジンアナログとビオチン;ホルモンレセプターとホルモン;タンパク質などの核酸結合部分と標的核酸(制限酵素など);酵素と基質;酵素と補因子;核酸の一方の鎖と核酸の相補鎖;制限酵素と同様に、酵素と核酸認識部位;レクチンと同族サッカリドなどが挙げられる。分子間の結合を存在の検出に活用することができる特異的結合反応を示す任意の分子組またはそのいずれか一方を、本発明の実施において使用することができる。
【0064】
これらの生物活性材料のいくつかの例は、インターロイキン、インターフェロン、Tヘルパー細胞CD4分子、Fレセプター、アセチルコリンレセプター(AChR)、抗原に対するT細胞レセプター、インスリンレセプター、腫瘍壊死因子、顆粒球コロニー刺激因子、ホルモンレセプター、抗体、抗体フラグメント、IgG分子、Fab抗体フラグメント分子、組換えタンパク質、ポリペプチド、ファージ、ファージフラグメント、DNAフラグメント、RNAフラグメント、ホルモン(インスリンおよびhCGなど)、酵素、シアル酸、ポルフィリン、ヌクレオチド、ウイルス、およびウイルスフラグメントなどである。
【0065】
一般に、リガンド分子としては、抗原(すなわち、細菌、ウイルス、および毒素)、抗体(すなわち、IgGおよびIgE分子)、抗体フラグメント、Fabフラグメント、ポリペプチド、ホルモン(すなわち、インスリンおよびhCG)、神経伝達物質(すなわち、アセチルコリン)、DNAフラグメント、RNAフラグメント、酵素(すなわち、有機リン酸アンヒドロラーゼ(OPAA)および有機リン酸ヒドロラーゼ(OPH))、小分子(シアル酸、ポルフィリン、およびヌクレオチドなど)、または当業者に周知の他のレセプター分子が挙げられる。本発明において好ましいリガンドは、IgG、Fab、および免疫グロブリンの他の抗原結合部分(天然に存在する免疫グロブリンまたは組換えによって作製されたタンパク質のいずれかに由来する)である。
【0066】
レセプターは、しばしば細胞表面に存在し、しばしば部分的に細胞原形質膜中に包埋されているか貫通している生体分子(すなわち、タンパク質または多糖類)である。レセプターは、ウイルス、抗原、神経伝達物質、およびホルモンなどを認識することができる。例えば、Tヘルパー細胞CD4分子は、HIVのウイルス特異的レセプターであり、T細胞レセプターは特異的抗原を認識する。アセチルコリンレセプター(AChR)は、神経伝達物質であるアセチルコリンに結合するのに対して、アドレナリン作動性レセプターまたはインスリンレセプターなどのホルモンレセプターはそれぞれアドレナリンおよびインスリンを認識する。その他には、免疫グロブリンのレセプターであるマクロファージ上のFcレセプターが含まれる。これらのレセプターまたはレセプター部分を、生物系から単離するか、生物的経路または非生物的経路のいずれかによって合成することができる。したがって、これらの新規に開発されたレセプター分子またはレセプター部分を、ナノ操作への適用のためのリガンドとして使用することもできる。
【0067】
抗体およびその抗原結合活性から惹起されたそのフラグメントの使用によって上記アッセイ形式を例示したが、目的のポリマーを、抗原結合能力を有する他の分子と共に使用することができる。このような他の分子の例には、細胞から単離されたか組換えによって産生された核酸(デオキシリボ核酸およびリボ核酸など)、レセプター(ホルモンレセプターなど)が含まれる。
【0068】
目的のポリマーと生物活性因子(タンパク質(抗原または抗体など)、核酸、ビオチン、ストレプトアビジン、およびコロイド金など)などの別の目的の分子との連結を、ポリマーまたは改変ポリマーおよびポリマーに結合すべき分子の化学的特徴を使用した化学合成法などの公知の方法を使用して行う。したがって、ポリマーを、例えば、目的の分子が共有結合を介して結合することができる反応部位として使用することができるアミノ基を含むように改変することができる。あるいは、非共有結合を介したポリマーと結合すべき分子との簡潔な混合によって連結することができる。目的のポリマーへの別の物質(entity)の結合を、これらの組み合わせによって行うこともできる。例えば、目的のポリマーを、リガンドに共有結合させ、その後、非共有結合を介してレポーター粒子を物理的に吸着させ、それにより、バイオアッセイに容易に使用することができるリガンド−ポリマー−レポーター粒子抱合体を形成することができる。
【0069】
これらの免疫アッセイ形式に基づいてタンパク質ベースのアッセイまたは検出系を準備する場合、しばしば以下の3つの主な困難に遭遇する:変性、接着/固定化、およびタンパク質の配向。タンパク質または抗体分子は、しばしば、生物活性を保持するように溶液中で三次元構造に折り畳まれている。様々な固体表面との相互作用の際、例えば、膜、スライドガラス、またはマイクロ/ナノ粒子へのタンパク質の固定時に、タンパク質分子の三次元構造はしばしば崩壊し、それによって生物活性が喪失する。
【0070】
同様に、いくつかのタンパク質は、簡単に固相へ固定できない。固相に一定のタンパク質を貼り付けるために、しばしば化学反応または静電相互作用の介入が必要である。しかし、上記で考察するように、このような反応は、目的の生体分子の二次構造および三次構造に影響を与え得る。さらに、不均一な化学反応は、しばしば、完全に進まないことがあるか、本質的に、所望の生成物を高度に優先する反応速度を有さない。これにより、望ましくない反応物および副生成物を含む混合物が得られ得る。
【0071】
いくつかの場合、反応により、固体表面に結合すべきタンパク質をうかつにも部分的または完全に変性させ得る。
【0072】
静電反応は、目的のタンパク質の等電点および双極子モーメントに依存する。さらに、これらの特徴は、タンパク質の環境(例えば、緩衝液のpHおよび組成)に依存する。
【0073】
したがって、これらのアプローチにより、所望の生成物の収率および一般的な再現性の低さなどの望ましくない結果が得られ得る。商業的見地から、結果はロット毎の一貫性が低い。
【0074】
したがって、物理的析出ストラテジーは、費用が安いが、結合リガンドの配向が完全に不規則である。他方では、多段階化学結合アプローチによって配向が改善される。しかし、後者はしばしば非常に高価であり、不完全な化学反応によって不可逆的な結果が得られる傾向もある。
【0075】
目的のポリマーを使用して、バイオアッセイを有利にすることができる。種々のアッセイ形式が存在し、いずれも目的のポリマーを使用して改良することができる。このような公知のアッセイ形式の例を、以下に提供する。
【0076】
抗体ベースの「サンドイッチ」アッセイは、以下の3つの成分からなる:捕捉抗体、抗原、およびレセプターと連結した検出抗体(すなわち、視覚的および/または機械的補助などを使用して検出可能な酵素、フルオロフォア、有色粒子、着色粒子または色素を含む粒子、染色粒子、放射性標識、量子ドット、ナノ結晶、高周波数変換(up−converting)リン光性粒子、フルオロフォアもしくは色素含有ポリマーまたはラテックスビーズ)。このようなアッセイは、しばしば、3つの個別の実験工程が必要である。第1の工程は、固体表面上に捕捉抗体を固定し、その後に抗原溶液を添加して抗体−抗原複合体を形成する工程を含む。最後の工程は、標的検出抗体を含むレポーター基を添加して捕捉抗体−抗原−検出抗体複合体を生成する工程である。この「サンドイッチ」アッセイの結果として、未知の抗原を同定することができ、この抗原の量および濃度を、例えば、光学リーダーで定量することができる。抗原がサンプル溶液中に存在しない場合、「サンドイッチ」複合体は形成されず、シグナルは認められない。
【0077】
「サンドイッチ」複合体の実際の構造は、結合試薬およびレポーター部分に非常に依存する。種々のアッセイ形式を、レポーター分子として金コロイドを使用して例示することができる。捕捉抗体−抗原−検出抗体−金粒子複合体の形成によって正の試験が得られることが周知である。しかし、実際には、金標識検出抗体の合成時に、例えば、異なるタンパク質の双極子モーメントおよび等電点のばらつきにより、抗体はしばしば金表面上に不規則に配向することが見出された。結果として、抗原の非存在下でさえも検出物質(detector)−金抗体凝集体のみからなる架橋前生成物が形成された。この架橋前生成物は、非常に高いノイズレベルまたはバックグラウンドレベルを生じ、いくつかの場合、非常に深刻に偽陽性に読取られる。
【0078】
他方では、非対称分岐ポリマーベースのアッセイは、クリーンであるが、非常に異なる免疫複合体が得られる:捕捉抗体−抗原−検出抗体−ABP−粒子。この場合、クリーンな免疫複合体のみが形成され、架橋前生成物は完全に消失する。結果として、アッセイ感度は非常に高くなり、偽陽性の読取りは劇的に減少する。さらに、目的のポリマーを使用しない標準的な抗体ベースのアッセイと比較した場合、はるかに少量試薬の使用でよい。さらに、捕捉抗体を、類似の固定化ストラテジーを使用して、ABPを介して異なる固体表面上に貼り付けることもできる。このアプローチは、タンパク質の双極子モーメントおよび等電点とは無関係であるので、アッセイ構築過程が非常に簡潔になり、その間中天然の配置または少なくとも特定の結合部位および目的のエピトープを維持する配置で目的のタンパク質が維持される。
【0079】
第2のアッセイ形態は、未知のサンプル中の抗体の検出のための連続アッセイ形式に基づく。この場合、抗原またはエピトープを保有するそのフラグメントを、固体表面に適用する。試験中、抗原は標的化された抗体に結合し、その後、コロイド金で標識された別の一般的抗種抗体と反応する。したがって、特徴的な赤色は陽性の試験を示し、変色しない場合は陰性の試験を示す。上記のように、目的のポリマーを使用して、抗原を固相に貼り付け、これを使用して、目的の抗体を標識することができる。
【0080】
第3のアッセイ形態は、間接的サンドイッチ形式である。この場合、捕捉抗体を膜表面に適用する。試験中、捕捉抗体は、中間体リンカー分子(例えば、ビオチンまたはフルオレセイン)と予め結合した標的化された抗原と結合し、その後、コロイド金で標識したストレプトアビジンまたは抗フルオレセイン抗体と反応する。したがって、赤色は陽性の試験を示し、変色しない場合は陰性の試験を示す。さらに、目的のポリマーを使用して、固相に目的のタンパク質を貼り付け、ビオチンまたはストレプトアビジンなどのさらなる反応物質などの標識でのタンパク質の標識を媒介する。
【0081】
さらに、1つまたは複数のビオチンまたはフルオレセイン結合酵素分子(HRPなど)は、コロイド金粒子で標識された、ストレプトアビジンまたは抗フルオレセイン抗体に付着され得る。基質分子を加えた時点で、複数のレポーター分子のためにシグナルをさらに強化することができる。
【0082】
あるいは、捕捉抗体は、中間体リンカー分子(例えば、ビオチンまたはフルオレセイン)と予め結合した抗原−検出抗体からなる複合体と結合し、その後、コロイド金で標識したストレプトアビジンまたは抗フルオレセイン抗体と反応することができる。赤色は陽性の試験を示し、変色しない場合は陰性の試験を示す。
【0083】
本発明の別の局面は、ビオチン−ストレプトアビジン−ABPまたはフルオレセイン−抗フルオレセイン−ABP結合を介して検出抗体をコロイド金粒子に結合することである。これにより、種々のサンドイッチベースのアッセイおよびマイクロアレイを迅速に構築することが可能である。
【0084】
本発明の別の局面は、抗原または抗原の混合物をビオチンまたはフルオレセインなどの中間体リンカーで最初に標識することである。捕捉抗体は、抗原または抗原のエピトープと抱合するビオチン/フルオレセインなどの抗原上のレポーター分子に結合することができ、その後、例えば、ストレプトアビジン標識レポーターまたは抗フルオレセイン標識レポーターで結合抗体を検出することができる。陰性の試験は変色せず、陽性の試験は変色によって示される。さらに、目的のポリマーを使用して、ストレプトアビジンまたは抗フルオレセイン−抗体をレポーター(すなわち、コロイド金粒子)と結合する。
【0085】
第4のアッセイ形態は、競合形式に基づく。捕捉抗体を固相に固定し、抗原を、例えば、コロイド金粒子で標識する。標的化抗原の非存在下では、金標識抗原は捕捉抗体と直接反応するので、特徴的な赤色を生じ、陰性の試験と解釈される。対照的に、標的化抗原の存在下では、立体効果により、標的化抗原は、金標識抗原よりも迅速且つ強力に抗体を捕捉し、それにより、変色せず、陽性の試験と解釈される。逆に、逆抗原/抗体形態を使用することもできる。
【0086】
第5のアッセイ形態は、任意の上記アッセイ形式、または、例えば、定量のための光学リーダーを使用した複数の抗原の検出および定量のためのタンパク質マイクロアレイを構築するために目的の標的を直接的または間接的に検出および/または定量する、任意の他のアッセイ形式を使用することである(図4)。
【0087】
任意の種々のアッセイ形式を、本発明の実施に際して使用することができる。当業者は、目的の標的化合物を同定することができる試薬を使用してアッセイを十分に設定することができる。
【0088】
本発明のアッセイを、「イエス/ノー」可視反応が得られる市販の妊娠アッセイキットなどの定性的アッセイとして設定することができる。本発明のアッセイにより、基準の役割を果たすための「検量線」を得るための段階的な量の反応物質、適切なコントロール、および既知の試薬を使用したコントロール反応セットを得ることによって定性的結果を得ることもできる。任意の種々のテキストおよび刊行物から得ることができるガイダンスを使用して定量的結果を得るためのアッセイの設定は、当該分野で公知である。
【0089】
本発明の1つの局面では、非対称分岐ポリマーは、生物活性因子(すなわち、IgG抗体、アビジン、またはストレプトアビジン)と共有結合される。得られた抱合体を、コロイド金粒子と反応させる。得られた抗体−ABP−金抱合体を、図5Aおよび5Bに示す側方流動免疫アッセイに組み込むことができる。
【0090】
非対称分岐ポリマーは、3つの固有の特徴を提供する。第1に、非対称分岐ポリマーは、抗体と固体表面または粒子表面との間のスペーサー分子として役立つ。第2に、非対称分岐ポリマーは、生物活性因子を輸送するためのキャリアとして作用し、表面に接触する抱合体の非対称分岐ポリマー部分のみを含む溶液から固体表面上にこれらの分子を接着するためのアンカーとして作用する。第3に、この固着過程の間に、非対称分岐ポリマー−生物活性因子抱合体はまた、複合体を固体表面に自己配向する。
【0091】
図6は、側方流動アッセイ形式を使用した修飾された不規則な非対称分岐PEIポリマー−抗体抱合体のアッセイ性能の比較結果を示す。前に説明するように、抗体が固体表面(すなわち、コロイド金表面)に直接吸着する場合、抗体分子は、変性のせいで非常に急速に失活する傾向がある。さらに、抗体とコロイド金との間の結合は、一般に、抗体の等電点に非常に依存する。ほとんどの場合、抗体と金粒子との間の静電相互作用はそれほど強くないので、解離に起因する種々の望ましくない副生成物が生成され、これは、しばしば深刻な偽陽性反応および安定性の問題を引き起こす。したがって、非対称分岐ポリマー−抗体抱合体により、感度、安定性、および再現性に関して非常に良好なアッセイ結果が得られる。
【0092】
図6に示すように、光学密度の測定(スキャナ単位)によって示された定量的アッセイ結果は、抗原(リシン類毒素)濃度の増加に伴って増加するシグナルの正の相関関係を示す。改変ABP−抗リシン抱合体ベースのアッセイと抗体ベースのみの試験ストリップとを比較した場合、非常に劇的な感度の相違が認められた。30スキャナ単位(訓練されていない人が容易に試験ラインを同定することができる)を正の試験の最小として設定した場合、ABPベースのアッセイは、対応する抗体ベースのアッセイよりも少なくとも60倍の感度である。より高い濃度では、結果はさらにより劇的であり、光学密度はABP−Abベースのアッセイにおける濃度の増加と共に急速に増加する一方で、Abベースのアッセイ試験ラインは濃度増加にかかわらず最終的にはプラトーを形成した。
【0093】
データは、ABPを使用しない場合に大部分の抗体分子は変性したか固相表面で不十分に配向することを再度証明した。ABPはキャリアとしてだけでなく、より重要には固体表面上の溶液から固定された場合に抗体分子の固着スペーサーとして役立つので、タンパク質変性問題が完全に排除される。種々の濃度にわたる光学密度応答の劇的な相違により、未知のサンプル濃度の定量的決定方法も得られた。対照的に、同一の濃度範囲で、抗体ベースのアッセイは、濃度変化に対してあまり反応しないので、定量的測定に適切ではない。
【0094】
感度の有意な増加に加えて、ABP−Abベースの側方流動アッセイはまた、医学的診断、標的の発見、ならびに臨床試験および治療上の処置におけるバイオマーカーの変化およびタンパク質プロフィールのモニタリングが可能である。
【0095】
ボツリヌス類毒素の検出のためのマイクロアレイ形式で「間接的」サンドイッチアッセイも構築した。図7に示すように、ABPを使用してストレプトアビジンをコロイド金に貼り付けた場合、非ABPアッセイと比較した場合に反応強度が劇的に改良され、それにより、アッセイ感度が非常に増加した。結果として、陽性のシグナルが増強される。同一の原理を使用して、サンドイッチアッセイ形式、競合アッセイ形式、または連続的アッセイ形式に基づいたアッセイおよびマイクロアレイを容易に作製することができる。
【0096】
結合対、目的の不規則な非対称分岐ポリマーおよびレポーター分子のうちの1つを含む目的の抱合体を、多数の異なるアッセイ形式に設定し、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の標的を同時にモニタリングすることができる。マイクロタイタープレートなどのプラスチックまたはニトロセルロースなどの膜などの本明細書中に記載されており、且つ当該分野で公知の適切な固相上に抱合体を保有する1つ以上のデバイスを使用して、このような同時アッセイを行うことができる。1つのデバイスは、複数の標的を検出するための複数の抱合体を含むことができる。このような多重デバイスは、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の標的を検出することができる。
【0097】
一旦コロイド金ナノ粒子(5〜100nm)またはラテックスビーズ(0.2〜1μm)上に貼り付けたABP−Ab抱合体を使用して、ビーズベースのナノアレイまたはマイクロアレイを作製することもできる。いずれかの場合、ビーズあたり1つの抗体またはビーズあたり複数の抗体を合成することができる。ビーズナノ/マイクロアレイは、血清、血漿、全血、唾液、および尿などの体液からの標的化タンパク質の分離および検出に非常に有効であることが見出された。
【0098】
一旦上記アッセイ形態が組み込まれると、1つのアッセイまたはデバイスで検出された分子数またはマーカー数は1つまたは複数であり得ることが認められる。したがって、チップマイクロアレイも構築することができる(図4)。同一の原理を使用して、複数の標的(タンパク質、毒素、ウイルス、細菌、菌の胞子、薬物、化学薬剤、汚染物質および/または任意の他の目的の標的が含まれる)の同時同定のための高密度マイクロアレイを開発することもできる。得られたマイクロアレイを、側方流動アッセイ形式を使用して構築することができる。別のアッセイ形式は、BD Illumina and Luminex製のビーズアッセイ、プレートマイクロアレイ、ビーズマイクロアレイまたはこれらの組み合わせである。
【0099】
このようなアッセイを、所望の目的物を診断する複数のバイオマーカーを含むように設定することができる。したがって、ナノアレイまたはマイクロアレイであり得るこのような多重デバイスは、病状を診断し、刺激(食品または薬物など)に対する反応を明らかにすることができる。使用されるバイオマーカーの数は終点に依存し、一般に、終点が存在するか否かを証明するために必要とされる最小マーカー数である。したがって、当該分野で公知なように、病原体への宿主の曝露の決定は、この病原体が結合する1つの診断抗体に依存し得る。宿主に対する薬物の影響が多数の細胞機能における反応を誘発し得るので、薬物に対する反応性には多数のバイオマーカーが必要であり得る。さらに、使用されるバイオマーカーは、大部分の無作為に交配した集団の操作を最適にするために必要であり得るか、各アッセイにおいて異なるバイオマーカーセットを使用した複数のアッセイが必要であり得る。
【0100】
本発明の好ましい抱合体には、非対称分岐ポリマー抱合体が少なくとも1つの生物活性材料または生物応答指標の少なくとも1単位に会合した少なくとも1つの非対称分岐ポリマーを含む抱合体が含まれる。目的のポリマーには、Denkewalterらの特許に開示のポリマーなどのようなコアを含まないポリマーまたはコアを含むポリマーが含まれ得る。本発明の好ましい非対称分岐ポリマーには、非対称分岐ポリマーがさらなる分岐を形成することができる少なくとも1つのモノマー型によって構築される少なくとも1つの不規則または規則的な非対称分岐ポリマーを含むものが含まれる。本明細書中に記載されるように、いくつかの目的のポリマーは、コアを含まない。不規則および規則的な非対称分岐ポリマーのいくつかの例は、不規則な分岐ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリアミドアミン、および規則的な分岐ポリリジンである。
【0101】
非対称分岐ポリマー抱合体が結合することができる表面は様々であり、ガラス、ニトロセルロース、紙、石英、プラスチック、金属、コロイド粒子(コロイド金粒子、コロイド銀、およびコロイド白金が含まれる)、ポリマーまたはラテックスビーズ、無機粒子、シリコンウエハー、着色ラテックス粒子、蛍光材料または着色材料を含む粒子、粘土、セラミック、シリコンベースの半導体粒子またはセラミック半導体粒子、シリコンまたはセラミックの半導体チップ、ナノ結晶、量子ドット、および高周波数変換リン光性粒子が含まれ得る。量子ドットは、粒子内に含まれる材料の組成およびサイズの制御によって異なる色の光を発することができる無機ナノ粒子(しばしば、直径5nm未満)である。高周波数変換リン光体は、近赤外線での励起の際に可視光を発するサブミクロンのセラミックマイクロ粒子である。このような粒子は、100nm〜500nmの範囲のサイズであり、赤外線の2つの光子を吸収することができる希土類イオン(例えば、イッテルビウム)を含む。バックグラウンド中に自己蛍光が存在しないので、これらのマイクロ粒子は、しばしば、生物アッセイのためのタグ化部分として使用される。
【0102】
目的の非対称分岐ポリマーおよび薬物結合能力を有する部分を含むアッセイを使用して、薬物の存在およびレシピエント中の薬物レベルをモニタリングすることができる。このような部分は、例えば、抗体、抗体の抗原結合部分またはリガンドであり得る。モニタリングすべき薬物は、任意の薬物であってよく、本明細書中に記載の薬物が含まれ、cox−2インヒビター、NSAID、抗有糸分裂薬、抗生物質、および抗ウイルス薬(例えば、ワルファリン、フェニトイン、ジゴキシン、カルバマゼピン、メトトレキサート、フェノバルビタール、プロカインアミド、バルプロエート、テオフィリン、シクロスポリン、タクロリムス、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、およびバンコマイシン)などがさらに含まれる。
【0103】
本発明は、本明細書中の上記のアッセイなどのアッセイを含む保存可能な保管安定性試薬を含むキットを企図する。保管安定性を、室温および冷蔵庫の温度での保存期間によって評価することができる。このキットは、液体試薬もしくは滅菌水または緩衝液などの適切な希釈剤で再構成すべき乾燥試薬を含む複数のバイアルを含み得る。このキットは、公知の妊娠検査キットおよび側方流動免疫アッセイキットなどの種々の試薬を格納したデバイスを含み得る。したがって、キットのアッセイ形式は、ディップスティック、棒、およびスライドなどの形態または形状であり得る。一般に、このようなデバイスは、プラスチック、膜、および紙などの適切な固相を備えるプラスチックホルダーを含む。
【0104】
本発明のアッセイの結果を、視覚的に読出されるディップスティックアッセイなどにおいて定性様式で確認することができる。このようなアッセイは公知であり、妊娠検査キットなどの種々の免疫アッセイによって例示される。
【0105】
本発明のアッセイの結果を、機械的手段によって確認することができる。この機械的手段は、レポーター分子またはレポーター分子の生成物の特定の物理的特徴を検知または検出する任意の物理的デバイスであり得る。この機械的デバイスは、研究所に備え付けられているか、手持ち式デバイスなどの使用用途のための移動可能な状況に置かれ得るデバイスであり得る。このデバイスを、病室、診療所、および野外などのより関連した用途のためにより小さな携帯可能な形式にすることができる。分光光学的、発光、化学発光、蛍光、または比色分析のためのレポーター分子を検出するために使用することができる携帯用デバイスおよび手持ち式デバイスの例は、例えば、米国特許第5,083,868号;同第H1563号;同第6,480,115号;同第6,394,952号;同第5,900,379号;同第6,663,833号;同第6,656,745号;同第6,267,722号;同第6,706,539号;同第5,646,735号;同第6,346,984号;同第6,002,488号;同第5,962,838号;同第4,917,495号;同第6,575,368号;および同第6,583,880号に記載されている。
【0106】
このような機械的デバイスは、特にレポーター分子を確認するための検出または検知手段を有するものである。検出手段は、特定のレポーター分子の存在の決定に適切なものである。放射性レポーター分子は、例えば、シンチレーションカウンターまたはGeiger−Mullerカウンターで検出可能である。光の放射、蛍光、または発光レポーター分子は、例えば、光電子増倍管、スキャナ、電荷結合素子(CCD)画像センサー、および相補型金属酸化膜半導体(CMOS)画像センサーなどを含む、比色計、屈折計、反射率計、光感知デバイスを使用して検出可能である。
【0107】
このデバイスはまた、検出されたシグナルを処理してデジタル化するデータ処理手段を備え得る。この処理手段は、しばしば、データの処理および分析を行う中央演算処理装置(CPU)または半導体チップなどのマイクロプロセッサと呼ばれる。デジタル化された情報を、内臓型データ記憶装置(テープ、ディスケット、およびハードドライブなど)に保存するか、データ通信手段(有線コンピュータ通信手段など)を介するか、赤外線、電波、およびマイクロ波などの適切な手段を使用した無線手段によって、情報が分析される遠隔データ記憶手段またはデータ処理手段と通信する。
【0108】
このデバイスは、データ入力手段を備え得る。例えば、デバイスは、デバイスによる実行コマンドを得るためか、識別情報をデータと組み合わせるためのキーボードおよびスキャナなどを備え得る。このスキャナは、画像を取得して保存するスキャナであり得るか、バーコードなどのコードを解釈するスキャナであり得る。例えば、米国特許第5,885,530号および同第6,099,469号を参照のこと。
【0109】
したがって、この遠隔検出デバイスは、デバイスの操作を制御するためのソフトウェアを備える集積回路を有する回路基板などのデータ処理手段(例えば、米国特許第5,494,798号および同第6,480,115号を参照のこと)を備え得る。この遠隔デバイスは、ディスケット、「スティック」、および他のデータ記憶形態などの脱着可能なデータ記憶手段を備え得る。脱着可能でない場合、保存されたデータは、データ通信手段によってアクセス可能である。このような通信手段は、データを直接ダウンロードするためのハードワイヤであり得るか、このような通信は、無線信号(例えば、高周波、マイクロ波、および赤外線などの短波信号)などの当該分野で公知の別の形態を取ることができる。このような無線信号を、アンテナまたは衛星を介して送信することができる。
【0110】
例えば、実験およびコントロールを比較するために情報を分析することができる。あるいは、実験(生データの図またはコントロールによって修正した図のいずれか)を、集団の平均値と比較する。任意の種々の利用可能なアルゴリズムを使用してデータの整理および分析を行うことができるか、または適切なデータ分析および適切な結果の出力を行うためのソフトウェア手段を開発することができる。
【0111】
このデバイスは、CRTまたは液晶ディスプレイなどの表示手段を備えることができ、表示手段は、検出および/または分析されたデータを適切に処理し、例えば、事前に得た集団データに関するコントロールデータと比較し、データをデバイスオペレータに供給する。このデータを要望通りに表示し(例えば、本明細書中で上記したように)、生データ、一旦コントロール値に対して調整した比較データ、またはその両方を、遠隔デバイス上に表示することができる。例えば、使用結果については、米国特許第5,885,530号を参照のこと。
【0112】
あるいは、デジタル化した情報を、データ記憶手段に送信することができ、このデータ記憶手段は、デバイス内に含まれるか、デバイスと分離されている。デジタル化した情報を、公知の通信手段を使用して外部記憶手段に送信することができる。次いで、記憶手段に含まれるデータを、適切なデータ分析のために、CPUと交信することができる。
【0113】
データ処理のインターフェースおよび手段を備えたこのようなデバイスの例としては、米国特許第5,543,920号;同第5,589,932号;および同第6,362,886号が挙げられる。
【0114】
目的の抱合体は、治療生物活性因子を保有することができ、投与に適切な薬学的組成物に組み込むことができる。例えば、目的のポリマーを使用して、インスリンなどの薬物などの薬理学的に活性な分子などの生物活性因子をコーティングするかカプセル化することができる。このような組成物は、典型的には、有効成分である組成物および薬学的に許容可能なキャリアを含む。本明細書中で使用される、用語「薬学的に許容可能なキャリア」は、薬学的投与に適合する任意および全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌薬、抗真菌薬、等張化剤、および吸収遅延剤などを含むことを意図する。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および薬剤は、当該分野で周知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性化合物に適合する範囲を除いて、組成物でのその使用が意図される。補助的な活性化合物も組成物中に組み込むことができる。
【0115】
本明細書中に開示ように使用される本発明の薬学的組成物は、意図する投与経路に適合するように処方される。投与経路の例としては、非経口(例えば、静脈内、皮内、皮下)、経口(例えば、吸入)、経皮(局所)、経粘膜、および直腸への投与が挙げられる。非経口、皮内、または皮下への適用のために使用される溶液または懸濁液には、以下の成分が含まれ得る:注射用の水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌薬;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;EDTAなどのキレート剤;酢酸、クエン酸またはリン酸などの緩衝液;ならびに塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの等張化剤。pHを、HClまたはNaOHなどの酸または塩基を使用して調整することができる。非経口調製物を、ガラス製またはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ、または複数回投与用のバイアルに封入して保存することができる。
【0116】
注射に適切な薬学的組成物には、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液およびその後に滅菌した、注射溶液または分散液を調製するための滅菌粉末が含まれる。静脈内投与のために、適切なキャリアとしては、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(登録商標)(BASF;Parsippany,NJ)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合で、この組成物は滅菌されていなければならず、かつシリンジで利用可能な範囲の流動物であるべきである。この組成物は、製造および保存条件下で安定でなければならず、かつ細菌および真菌などの微生物の汚染に対抗して保存されなければならない。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体のポリエチレングリコールなど)およびこれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒であり得る。例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合には必要な粒子サイズの維持および増粘剤または界面活性剤の使用によって適切な流動性を維持することができる。種々の抗菌薬および抗真菌薬(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸およびチメロサールなど)によって、微生物作用を防止することができる。多くの場合、等張化剤(例えば、糖、ポリアルコール(マンニトール、ソルビトールなど)または塩化ナトリウムなど)を組成物中に含めることが好ましい。組成物中に吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチン)を含めることによって注射用組成物の吸収を遅延させることができる。
【0117】
滅菌注射液を、上に列挙した成分の1つまたは組み合わせと共に適切な溶媒中に必要量の活性化合物を組み込み、必要に応じて、その後、濾過滅菌することによって調製することができる。一般に、基剤となる分散媒および上に列挙したものから必要な他の成分を含む滅菌賦形剤への活性化合物の組み込みによって分散液を調製する。滅菌注射液を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、予め濾過滅菌した溶液から有効成分および任意のさらなる所望の成分の粉末が得られる真空乾燥および凍結乾燥である。
【0118】
経口組成物は、一般に、不活性希釈剤または可食キャリアを含む。経口治療剤の投与の目的で、活性化合物を、賦形剤に組み込み、錠剤、トローチまたはカプセルの形態で使用することができる。経口組成物を、シロップもしくは液体処方物を得るために流動物キャリアを使用して調製することもできるか、またはうがい薬として使用するために、化合物を含む流動物キャリアを経口投与して口内をすすぎ、吐き出すか飲み込む。
【0119】
薬学的に適合する結合剤および/またはアジュバント材料を、組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸薬、カプセルおよびトローチなどは、任意の以下の成分または類似の性質の化合物を含み得る:微結晶性セルロース、トラガカントガム、またはゼラチンなどの結合剤;デンプンまたはラクトースなどの賦形剤;アルギン酸、Primogel、またはコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはSterotesなどの潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;スクロースまたはサッカリンなどの甘味料;またはペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジフレーバーなどの香味物質。
【0120】
吸入投与のために、化合物を、例えば、適切な噴射剤(例えば、二酸化炭素などのガス)を含む加圧容器もしくはディスペンサーまたは噴霧器由来のエアゾールスプレイまたはミストの形態で送達させる。
【0121】
経粘膜手段または経皮手段によって全身投与することもできる。経粘膜投与または経皮投与のために、浸透すべきバリアに適切な浸透剤を処方物で使用する。このような浸透剤は、当該分野で一般に公知であり、例えば、経粘膜投与については、界面活性剤、胆汁塩、およびフシジン酸誘導体が挙げられる。鼻内噴霧または坐剤の使用によって経粘膜投与を行うことができる。経皮投与のために、当該分野で一般に公知のように、活性化合物を、軟膏(ointment)、軟膏(salve)、ゲル、またはクリーム中に処方することができる。別の公知の浸透剤は、ジメチルスルホキシドである。
【0122】
化合物を、直腸送達のための坐剤(例えば、ココアバターおよび他のグリセリドなどの従来の坐剤の基剤を含む)または持続的浣腸剤(retention enema)の形態で調製することができる。
【0123】
1つの実施形態では、活性化合物は、制御された放出処方物などの体内からの急速な排除から化合物を防御するキャリア(インプラント、デポー、ポンプおよびマイクロカプセル化送達系が含まれる)を使用して調製する。エチレンビニルアセテート、ポリアンヒドライド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。例えば、処方物は、腸溶コーティングすることができる。
【0124】
このような処方物の調製方法は、当業者に明らかである。これらの材料は、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Inc.から購入することができる。
【0125】
リポソーム懸濁液および蝸牛殻状の(cochleate)懸濁液(抗体または他のターゲティング部分を含む感染細胞にターゲティングしたリポソームが含まれる)も薬学的に許容可能なキャリアとして使用することができる。これらを、例えば、米国特許第4,522,811号に記載のように、当業者に公知の方法にしたがって調製することができる。
【0126】
容易に投与し、且つ均一な用量で投与するために単位投薬形態に経口または非経口組成物を処方することが特に有利である。本明細書中で使用される、「単位投薬形態」は、治療すべき被験体のための単回投薬として適切な物理的に個別の単位をいい、各単位は、必要な薬学的キャリアと組み合わせた所望の治療効果が得られるように計算された一定量の活性化合物を含む。投薬(例えば、好ましい投与経路および投与量)を、当該分野で公知の方法を実施した前臨床試験および臨床試験から得た経験的データに基づいて得ることができる。数日間またはそれ以上にわたる反復投与のために、条件に依存して、病徴の所望の抑制が認められるまで治療を維持する。しかし、他の投薬計画が有用であり得る。治療の進行は、従来の技術およびアッセイによって容易にモニタリングされる。例示的投与計画は、WO94/04188号に開示されている。本発明の単位投薬形態の仕様は決定づけられており、活性化合物の固有の特徴、達成されるべき特定の治療効果および個体の治療のためのこのような活性化合物の混合方法に固有の制約に直接依存する。
【0127】
薬学的組成物を、投与指示書と共にコンテナ、パックまたはディスペンサーに含めることができる。
【0128】
別の投与方法は、食品もしくは飲料への目的の化合物の添加、栄養補助食品もしくは添加物、またはビタミンと同様に予防的に摂取される投薬形態としての投与を含む。目的の抱合体を、胃環境の通過に耐える形態にカプセル化することができる。このような形態は、腸溶コーティング処方物として一般に公知である。あるいは、目的の抱合体を、当該分野で公知のように、経口投与の安定性を確実にするために、ペプチド結合の化学修飾などの半減期を延長するための改変を行うことができる。
【0129】
本発明は、癌のリスクのある(または疑いのある)被験体を処置する予防方法および治療方法の両方を提供する。公知の薬理学的および薬学的パラダイムにしたがって、活性成分のみ、前臨床試験、指標、および臨床試験などの使用によって得た経験的知識に基づいて、特定の投薬(すなわち、投与あたりの量および投与様式)を当該分野で公知のように決定する。
【0130】
本発明を、以下の非限定的な実施例で例示する。
【実施例】
【0131】
材料:不規則な非対称分岐ポリエチレンイミンを、AldrichおよびPolysciencesから購入した。規則的な非対称分岐ポリマーを、米国特許第4,289,872号に提供される手順にしたがって調製した。コロイド金粒子を、文献で発表された手順にしたがって調製した(G.Frens et al.,Nature Physical Science,Vol.241,Jan.1,1973,20)。全ての抗体は、Sigma−Aldrich,BiodesignまたはFitzgeraldから購入した。
【0132】
(アミノ官能基で修飾された不規則な非対称分岐PEI(m−ran−AB−PEI−NH−1.0)の合成)
不規則な非対称分岐ポリエチレンイミン(ran−AB−PEI、分子量2,000、25,000、および75,000)、アクリル酸メチル(MA、FW=86.09)、エチレンジアミン(EDA、FW=60.10)、およびメタノールを含む以下の試薬を、本合成で使用した。
【0133】
丸底フラスコに、1.0gのPEI(分子量2,000)および20mlのメタノールを添加した(溶液A)。別の丸底フラスコに、3.0gのメチルアクリレート(MA)および10mlのメタノールを添加した(溶液B)。次いで、室温で撹拌しながら溶液Aを溶液Bにゆっくり滴下した。得られた溶液を、40℃で2時間反応させた。完全な反応後、溶媒および未反応のMAモノマーを、ロータリーエバポレーションによって除去し、生成物(MA官能化PEI)を20mlのメタノールに再溶解した。
【0134】
丸底フラスコに、80gのEDAおよび50mlのメタノールを添加し、その後、0℃でMA官能化PEIをゆっくり添加した(20mlのメタノールに溶解した1gのMA)。次いで、溶液を、4℃で48時間反応させた。溶媒および過剰なEDAを、ロータリーエバポレーションによって除去した。次いで、エチルエーテル溶液から粗生成物を沈殿させ、透析によってさらに精製して、分子量が約7300の約3.0gの第一級アミンで官能化された不規則な非対称分岐PEI(m−ran−AB−PEI−NH−1.0)を得た。Hおよび13C核磁気共鳴(NMR)およびサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)によってこの生成物を特徴づけた。
【0135】
種々の分子量の他のMAまたは第一級アミンで改変された不規則な非対称分岐PEIおよび規則的な非対称分岐ポリリジンポリマーを、同様の様式で調製した。
【0136】
(混合された水酸基およびアミノ官能基で改変された不規則な非対称分岐PEI(m−ran−AB−PEI−NH/OH−2)の合成)
アミノ官能化された不規則な非対称分岐ポリエチレンイミン(m−ran−AB−PEI−NH−1.0)、MA、EDA、モノエタノールアミン(MEA、FW=61.08)、およびメタノールを含む以下の試薬を、本合成で使用した。
【0137】
丸底フラスコに、1.0gのアミノ改変PEIまたは前の手順から生成されたm−ran−AB−PEI−NH−1.0および20mlのメタノールを添加した(溶液A)。別の丸底フラスコに、3.0gのMAおよび10mlのメタノールを添加した(溶液B)。次いで、室温で撹拌しながら溶液Aを溶液Bにゆっくり滴下した。得られた溶液を、40℃で2時間反応させた。完全な反応後、溶媒および未反応のMA単量体を、ロータリーエバポレーションによって除去し、生成物(MA官能化m−ran−AB−PEI−MA−1.5)を20mlのメタノールに再溶解した。
【0138】
丸底フラスコに、60gのEDA、240gのMEA、および100mlのメタノール(EDA:MEAのモル比は20:80)を添加し、その後、m−ran−AB−PEI−MA−1.5を0℃でゆっくり添加した(20mlのメタノールに溶解した1gのMA)。次いで、この溶液を、4℃で48時間反応させた。溶媒および過剰なEDAを、ロータリーエバポレーションによって除去した。次いで、エチルエーテル溶液から粗生成物を沈殿させ、透析によってさらに精製して、3.0gの混合された水酸基とアミノ基で官能化した不規則なABP(m−ran−AB−PEI−NH/OH−2.0、平均して20%のNH基および80%のOH基を有し、分子量が約18,000である)を得た。
【0139】
種々の水酸基とアミノ基との比ならびに異なる分子量を有する他の改変された不規則なAB−PEIおよび規則的なABポリリジンポリマーを、同様の様式で調製した。
【0140】
(第一級アミン鎖末端基でアルキル改変された不規則な非対称分岐ポリ(2−エチルオキサゾリン)(PEOX)の合成)
CH−(CHl78−PEOXABP100(ABP100は、最初の反応における単量体と開始剤との比を示すための任意の名称である)の合成を、コア−シェルナノカプセルの調製のための一般的手順として提供する。N下で蒸留ヘッドを使用してCH(CHl78CH−Br(3.36g)を含む500mlのトルエンの混合物を約15分間共沸して水を除去した。2−エチルオキサゾリン(100g)を、添加漏斗(addition funnel)によって滴下し、混合物を24時間〜48時間還流した。重合完了後、12.12gのEDAを反応ポリマー溶液(A)に添加してアミノ官能基を導入した。ポリオキサゾリン鎖末端とEDAとのモル比は1:20であった。
【0141】
反応を停止させるためにモルホリンを添加することもできる。したがって、モルホリンを反応ポリマー溶液(A)に添加して反応を停止させた。この粗生成物をメタノールに再溶解し、過剰なジエチルエーテルから沈殿させた。下層をメタノールに再溶解し、ロータリーエバポレーションおよび真空によって乾燥させて、白色固体(101g)として非対称の不規則なコア−シェル過分岐PEOXポリマーを得た。Cl2−PEOX ABP20、50、100、200、300、500、C18−PEOX ABP20、50、200、300、500、C22−PEOX ABP20、50、100、200、300、500、およびポリスチレン−PEOXなどの他の非対称の過剰に不規則な(hyperrandom)分岐ポリマーならびにポリ(2−メチルオキサゾリン)ポリマーなどの非改変ポリ(2−置換オキサゾリン)および改変ポリ(2−置換オキサゾリン)を、同様の様式で調製した。全生成物を、SECおよびNMRによって分析した。
【0142】
(IgG非対称不規則分岐ポリマー抱合体の調製)
不規則に分岐した混合表面(OH/NH混合物)m−ran−AB−PEI−NH/OH−2−IgG抱合体の調製を、ポリマー−抗体およびポリマー−ストレプトアビジンの抱合体の調製についての一般的手順として提供する。PEI−IgG、m−ran−AB−PEI−NH−1−IgG、m−ran−AB−PEI−NH−2−IgG、m−ran−AB−PEI−NH−3−IgG、m−ran−AB−PEI−NH−4−IgG、ならびにm−ran−AB−PEI−NH/OH−l(OH/NH混合物)−IgG、m−ran−AB−PEI−NH/OH−2(OH/NH混物)−IgG、m−ran−AB−PEI−NH/OH−3(OH/NH混合物)−IgG、規則的なポリリジンポリマー、第一級アミン鎖末端を有するアルキル改変された不規則な分岐ポリ(2−エチルオキサゾリン)などの他の抱合体をすべて類似の様式で合成した。非対称不規則分岐PEOXポリマーとの種々のタンパク質抱合体の合成も同様の様式で行う。ビオチン化IgG抱合体を、Bioconjugate Techniques(G.Hermanson,Academic Press,1996)に記載のように合成した。
【0143】
LC−SPDP混合表面m−ran−AB−PEI−NH/OH−2:混合表面である不規則に分岐したm−ran−AB−PEI−NH/OH−2(400×10−9mol)を含む400mlリン酸緩衝液(20mMリン酸および0.1M NaCl(pH7.5))に、4.0×10−6molのスルホ−LC−SPDP(Pierce,IL)を含む400mlの水溶液を添加した。これをボルテックスし、30℃で30分間インキュベートした。LC−SPDP−m−ran−AB−PEI−NH/OH−2をゲル濾過クロマトグラフィによって精製し、緩衝液A(0.1M リン酸、0.1M NaCl、および5mM EDTA(pH6.8))で平衡化した。これをさらに濃縮し、それにより、約0.77nmol/μmolの濃度の465mlの溶液を得た。
LC−SPDPm−ran−AB−PEI−NH/OH−2由来のチオール化m−ran−AB−PEI−NH/OH−2
LC−SPDPm−ran−AB−PEI−NH/OH−2(50nmolを含む65mlの緩衝液A)を、100mlのジチオスレイトール(DTT)(緩衝液A中に50mM)と混合し、室温で15分間インキュベートした。過剰なDTTおよび副生成物を、緩衝液Aを使用したゲル濾過によって除去した。これを、10K Centricon Concentratorで濃縮して390mlのチオール化m−ran−AB−PEI−NH/OH−2を得て、これを活性化抗体との抱合に使用した。
【0144】
マレイミドR(MAL−R)−活性化抗体:この抗体を含むPBS(310μl、5.1mgまたは34nmol)に、20.4mlのMAL−R−NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)溶液(10mM水溶液)を添加した。混合物をボルテックスし、30℃で15分間インキュベートした。これを、緩衝液Aを使用したゲル濾過によって精製した。マレイミド−R活性化抗体を、チオール化m−ran−AB−PEI−NH/OH−2との抱合に使用した。
【0145】
m−ran−AB−PEI−NH/OH−2抗体抱合体:チオール化m−ran−AB−PEI−NH/OH−2(310mlまたは35.7nmol)に、MAL−R活性化抗体(4.8mLまたは34nmol)を添加した。反応混合物を約800mlに濃縮し、4℃で一晩インキュベートし、室温で約1時間インキュベートした。完了後、100μLのエチルマレイミド(50mM溶液)で反応を停止させ、この抱合体を20mM リン酸緩衝液(pH6)中の塩化ナトリウムの段階的勾配をつけたカルボキシメチルセルロースカラム(5ml)で分画した。この抱合体を塩化ナトリウム勾配で溶離し、陽イオン交換クロマトグラフィ、UV分光学、およびポリアクリルアミドゲル電気泳動によって特徴づけた。
【0146】
(還元カップリングによる抱合)
抗体の還元:抗体(2.1mgまたは14nmol)を含む160μLの緩衝液B(0.1M リン酸ナトリウム、5mM EDTA、および0.1M NaCl(pH6.0)を含む)に、40μLのDTT(緩衝液B中に50mM)を添加した。この溶液を室温で30分間静置した。これを、緩衝液Bで平衡化したSephadex G−25カラムでのゲル濾過によって精製した。還元抗体を220μLに濃縮し、以下の抱合に使用した。
【0147】
MAL−R混合表面ABP:400μLの混合表面ABP(400×10−9mol)(pH7.4)に、400μLのMAL−R−NHS(10mMの水溶液)を添加した。これを混合し、30℃で15分間インキュベートした。終了後、緩衝液Bで平衡化したSephadex G−25カラムで精製した。MAL−R混合表面ABPを回収し、同一の緩衝液中にて等分して−40℃で保存した。
【0148】
混合表面ABP−抗体抱合体:還元抗体(220μL中に14nmol)に、撹拌しながらMAL−R混合表面m−ran−AB−PEI−NH/OH−2(154μL、16.6nmol)を添加した。これに、12.5μLの炭酸ナトリウム(1.0M溶液)を添加して、pHを約6.8にした。室温で1時間反応を継続した。100μLのシステアミン(0.4mM溶液)の添加によって反応を停止させた。この抱合体混合物を、塩化ナトリウム勾配溶離を使用したCMセルロースカラムによって精製した。
【0149】
(コロイド金ベースの免疫アッセイ)
(金−Ab抱合体の調製)
125mlのフラスコに、60mlのコロイド金溶液(TEMで測定したところ、直径20〜80nmであり、UV分光法で測定したところ、O.D.は1.078である)を添加した(Frens et al.,前出)。この溶液のpHを、0.2M 炭酸カリウム溶液の添加によってpH8〜11に調整した。この溶液に、600mlの抱合体化抗体溶液(ホウ酸ナトリウム緩衝液でO.D. 0.1〜1.5)を撹拌しながら添加し、その後、600mlのウシ血清アルブミン(20%アジ化ナトリウム安定剤)を添加した。この混合物を20℃で20〜60分間またはそれ以上撹拌した。溶液は紫色のままであり、いくらか泡が認められた。完了後、撹拌棒を除去し、反応混合物を50mlのコニカルチューブに移した。上清の色がほとんど認められなくなるまで、この材料を遠心分離した。上清を除去し、400mlの25mM ホウ酸ナトリウム緩衝液を、各チューブに添加した。内容物を完全に混合し、2つのチューブの材料を合わせ、UV−Visによって特徴づけた。
【0150】
金−ABP−ストレプトアビジン抱合体を、同様の様式で調製した。金−ABP−ストレプトアビジン−ビオチン−Ab抱合体を、その後の金−ABP−ストレプトアビジン抱合体へのビオチン化Abの添加によって調製した。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)またはアビジンならびにその誘導体およびアナログなどのレポーターとして使用することができる他の生物活性分子も同様の様式で金に貼り付けることができる。しかし、試験中、シグナルを増強させるためにさらなる基質を添加しなければならない。
【0151】
(側方流動またはディップスティック免疫アッセイチケット実験)
免疫アッセイデバイスまたは「チケット」は、一般に、不活性プラスチック、吸着パット(a)および膜の末端の受け取りパット(b)から構成される膜保持デバイス中のセルロースまたは他の膜のストリップ(c)からなり得る(図5A)。2つの異なる抗体(捕捉抗体(d)およびコントロール抗体(e))を、約4mm以内の距離で膜に噴霧する。捕捉抗体を使用して分析分子を捕捉し、一方でコントロール抗体を使用して検出抗体の活性を検証する。検出抗体(例えば、予めコロイド金粒子上に抱合したレポーターで標識した)を、抱合体放出パッド(b)上に保存し、吸着パッドの下部に置く。次いで、主に、野外または家庭内での取扱いを容易にするために、ストリップ/パッド複合体を、保持デバイス(図5B)に置く。このチケットの総重量は、約4.5g、寸法は約2cm(幅)×7cm(長さ)×0.5cm(厚さ)であり得る。
【0152】
一旦サンプルウェルを介してサンプル溶液を吸着パッド(a)上に適用するか、ディップスティックを使用して適用すると、抗原は検出抗体−ABP−金抱合体とインサイチュで混合され、得られた抗原−検出抗体−ABP−金複合体は、予め膜上に噴霧した捕捉抗体によって捕捉される。結果として、捕捉抗体−抗原−検出抗体−ABP−金複合体が形成され、赤色が出現する(T)(図5B)。
【0153】
この複合体は、捕捉抗体−抗原−検出抗体−金複合体のみからなる異なる複合体または生成物を含む先行技術(すなわち、「サンドイッチ」ベースの側方流動免疫アッセイ)と明らかに異なる。これらの複合体内で、検出抗体は、コロイド金粒子と直接相互作用し、それにより、金表面でこのような抗体が不規則に配向する。この不規則な配向により、望ましくない架橋前生成物(すなわち、検出抗体−コロイド金粒子クラスター)が生じ、バックグラウンドノイズまたは偽陽性レベルに顕著に上昇する。対照的に、本発明のABPベースのアッセイにより、架橋前副生成物が完全に排除される。この組成の相違の結果として、ABPベースのアッセイは、1/10〜1/20の試薬を使用して100倍の感度を示す(図6)。
【0154】
図5Bに図解するように、サンプルウェル(S)への未知の溶液の適用の際、捕捉(T)およびコントロール(C)ラインの両方が赤色になる場合、試験結果は陽性である。コントロールラインのみが赤色になる場合、試験は陰性である。
【0155】
定性的、すなわち、アッセイが視覚的に識別できる結果を提供することを意図する、確実な様式で陽性または陰性のいずれかの結果が得られる形式および様式で結果が示されるようにアッセイを設定することができる。他方では、アッセイ形式は、定量化が可能な結果を得ることができる。したがって、チケットを、反応レベルを測定するデバイスによってスキャンすることができる。
【0156】
1〜250ng/ml(総体積は100ml)の範囲の抗原(すなわち、類毒素)濃度の一連のサンプルを、試験のために調製した。一旦サンプル溶液が吸着パッドに5秒間にわたって滴下されると(時間を示す)、溶液は、流体相の毛細管移動に基づいて側方に流動する。金−Ab抱合体または金−ABP−Ab抱合体は、溶液が抱合体放出パットを通過するとすぐに放出される。試験が陽性である場合、コントロールラインおよび試験ラインの両方が免疫複合体の形成のために赤色になり、この赤色はコロイド金粒子に由来する。試験が陰性の場合、コントロールラインのみが赤色になり、試験ライン/捕捉Ab部位での「サンドイッチ」免疫複合体が存在しないために試験ライン上は無色である。検出に必要な時間は、約15分間である。
【0157】
同一のアッセイデザインによれば、マクロアレイベースのアッセイを同様の様式で構築することができる。この場合、捕捉抗体を、市販のマイクロアレイロボットによって固体表面にスポットし、検出抗体−金抱合体を混合する。直接的、間接的、または連続的サンドイッチアッセイ形式中の未知のサンプルに加えて、陽性試験は表面上の予め決定した対応する捕捉抗体の位置での赤色への変化を示す一方で、陰性試験は色の変化を示さない。あるいは、競合アッセイ形式では、その逆が真である。さらに、目的のポリマーを使用して、固体表面に抗体または抗原を貼り付ける。
【0158】
本明細書中で引用した全ての引例(利益が主張された2つの仮出願(2003年11月21日出願の米国特許出願番号60/523,692号および2004年6月21日出願の同第60/580,728号)が含まれる)の全体が、本明細書中で参考として援用される。
【0159】
上記教示を考慮して本発明の種々の変化、変更、改変が可能であることが当業者に明らかである。したがって、本発明は本明細書中にいくらか詳細に記載されているが、本発明は本明細書中に記載の特定の実施形態に制限されることを意図しないと理解すべきである。対照的に、本発明の精神および範囲内に含まれ得る場合、全ての変更形態、改変形態、および等価物を対象とすることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0160】
以下の図面の説明および各図面は、本発明を例示する種々の実施形態を示す非限定的な例である。
【図1】図1は、非対称分岐連結点およびパターンを有する(A)不規則な、および(B)規則的な非対称分岐ポリマーを示す。
【図2】図2は、不規則な非対称分岐ポリエチレンイミンポリマーの化学構造を示す。
【図3】図3は、不規則な非対称分岐ポリエチレンイミンポリマーの化学修飾反応を示す。
【図4】図4は、複数の抗原を同時に検出および定量するための非対称分岐ポリマーを使用して構築したタンパク質マイクロアレイを示す。
【図5】図5は、側方流動ベースの免疫アッセイの構成を示す。図5A。プラスチックカバーを用いない免疫アッセイチケットの構成:(a)吸収パッド、(b)抱合体放出パット、(c)膜、(d)捕捉抗体を含む領域、(e)コントロール抗体を含む領域、(f)受け取りパッド。図5B。サンプル溶液を添加した側方流動アッセイ形式における陽性および陰性免疫アッセイチケットの例。ディップスティックアッセイを類似の様式で行った。(S)サンプルウェル、(T)試験ライン、および(C)コントロールライン。
【図6】図6は、リシン類毒素の検出についての改変した不規則な非対称分岐PEIポリマー−抗体ベースのアッセイと抗体ベースの側方流動試験とのアッセイ性能の比較を示す。
【図7】図7は、不規則な非対称分岐ポリマーを使用するか使用しない、間接的アッセイの比較を示す。ABPベースのアッセイの感度がはるかに高かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の、発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−116464(P2008−116464A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299905(P2007−299905)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【分割の表示】特願2006−541419(P2006−541419)の分割
【原出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【出願人】(506166572)エイエヌピー テクノロジーズ, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】