説明

非対称性関節面を有する脛骨側人口関節

【課題】天然膝関節の運動力学をより良く模倣出来る人口膝を提供する。
【解決手段】脛骨側人口関節は、内側区画22にある内側関節面と外側区画24にある外側関節面とを含む脛骨側関節面を有しており、前記内側関節面が、第1の曲率半径と、第1の下上方向位置で前記脛骨側人口関節の前記後部縁の近くにある第1部位へと前記内側区画の後部面に沿って延びる第1後部部分とを有する第1の弓形軌道に従っており、前記外側関節面が、第2の曲率半径と、第2の上下方向位置で前記脛骨側人口関節の前記後部縁の近くにある第2部位へと前記外側区画の後部面に沿って延びる第2後部部分とを有する第2の弓形軌道に従っており、前記第2後部部分が、前記第2の上下方向位置が前記第1の上下方向位置から下側方向に所定距離だけ離間するように、前記外側区画の前記後部面に沿って下側方向に延びる傾斜を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総括的には膝義足との天然膝関節の置換に関し、特に、人口膝において天然膝関節の運動力学をより良く模倣することの実現に関するものである。
【背景技術】
【0002】
天然膝関節の相互動作中には、脛骨と大腿骨との間に横軸回りの屈曲が起こり、同時に脛骨と大腿骨との間に縦軸回りの相対回旋が幾分生ずる。このような屈曲及び回旋は、正常なゲートサイクル(gate cycle)を遂行するのに必要である。最近の膝義足は、脛骨支持インサートにより提供される脛骨支持面に厳密にぴったり適合するよう設計された顆頭支持面を有する大腿骨側コンポーネントを提供している。従来の膝義足の中には、大腿骨側コンポーネントの顆頭が膝側コンポーネントに対する大腿骨側コンポーネントの屈曲及び回旋を行うために減少した支持半径を取り入れているものがある。脛骨側コンポーネントの脛骨支持部分により提供される関節面は、該支持部分の前後方向中心線に対して対称である。従って、脛骨支持の内側区画の前後方向アスペクトに沿った関節面は、屈曲中に内側及び外側回旋を行うために脛骨支持の横区画の前後方向アスペクトに沿って関節面と対称となっている。
【0003】
運動学的解析によると、天然膝は、屈曲及び回旋中に膝の内側区画における前後方向の並進と比較して、より大きな横区画における前後方向の並進を示すことが指摘されている。その結果、最近開発された人口膝は、前後方向の中心線に対して非対称の関節面を脛骨支持に与えることにより、内側回旋の増大を考慮している。
【発明の開示】
【0004】
本発明は、スムーズな膝の運動力学、特に膝の回旋運動のために膝義足が天然膝の動きをもっと厳密に模倣することを可能にすべく、脛骨側人口関節に特別の非対称関節面を与える改良を提示している。従って、本発明は幾つかの目的及び利点を達成し、それらの一部について概略的に述べると以下の通りである。本発明は、スムーズな膝の屈曲及び伸張、特に膝の回旋運動のために天然膝の動きをより良く模倣する膝義足を提供し、特に回旋運動に対応する際にスムーズな義足膝の運動力学を示しながら、あまり努力せずに膝義足の提供を受ける人が膝を容易に屈曲することを可能とし、全ての人口膝関節置換術を受ける人に、手術に対応する際により高い快適性と向上した信頼性とを提供し、簡素化した製造が可能に構成された比較的に少数の部品を有する人口膝で、特に天然膝の回旋運動の際の該膝のより精確な模倣を可能とし、天然膝に対する有効な代替物を提供して、長い耐用年数にわたり模範的な特性を示している。
【0005】
上述した目的及び利点は言うまでもなく、更なる目的及び利点は、簡単に述べると、脛骨側関節面を有する脛骨側人口関節であって、該脛骨側関節面は前記脛骨側人口関節の前部縁と前記脛骨側人口関節の後部縁との間に延在しており、前記脛骨側関節面は内側区画にある内側関節面と外側区画にある外側関節面とを含んでいる、前記脛骨側人口関節において、前記内側関節面は、第1の曲率半径と、第1の下上方向位置で前記脛骨側人口関節の前記後部縁の近くにある第1部位へと前記内側区画の後部面に沿って延びる第1後部部分とを有する第1の弓形軌道に従っており、前記外側関節面は、第2の曲率半径と、第2の上下方向位置で前記脛骨側人口関節の前記後部縁の近くにある第2部位へと前記外側区画の後部面に沿って延びる第2後部部分とを有する第2の弓形軌道に従っており、前記第2後部部分は、前記第2の上下方向位置が前記第1の上下方向位置から下側方向に所定距離だけ離間するように、前記外側区画の前記後部面に沿って下側方向に延びる傾斜を有している、ことを特徴とする脛骨側人口関節を提供するものとして説明されている本発明により達成されることになる。
【0006】
本発明は、添付図面に例示された本発明の好適な実施形態についての以下の詳細な説明において、更なる目的及び利点を明らかにしながら、より十分に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図面、特に図1及び図2を参照すると、本発明に従って構成された脛骨側人口関節が脛骨支持インサート10の形で示されており、この脛骨支持インサート10は、前部縁12と、後部縁14と、内側面16と、外側面18とを有している。上側面20は、3つの主な区画、即ち内側区画22と、外側区画24と、該内側区画22及び外側区画24の間に配置された隆起26とを含んでおり、該隆起26は、矢状面30にある前後方向中心線28に沿って延在している。この脛骨支持インサート10は、技術的に周知の方法で膝義足の脛骨側コンポーネントの脛骨トレーに取り付けるための脛骨支持部から構成されている。
【0008】
上側面20は、内側区画22内の第1弓形軌道42に沿って延びていると共に、第1半径44を有する内側関節面40を含んでいる。外側関節面46は、内側区画24内の第2弓形軌道48に沿って延びていると共に、第2半径50を有している。関節面40及び46の溝は、矢状面30に対して垂直に脛骨支持インサート10を横に交差して延びる冠状面60にあり、該冠状面60が内側関節面40を前部面62と後部面64とに分けていると共に、外側関節面46を前部面66と後部面68とに分けている。
【0009】
内側回旋の増大を可能にし、それにより、屈曲及び回旋中に天然膝に出現する内側区画における前後方向並進と比較してより大きな外側区画における前後方向並進を吸収するために、上側面20は、外側関節面46の後部面68の輪郭形状が内側関節面40の後部面64の輪郭形状と異なっている点で非対称である。図1及び図2に限らず、図3〜図5を参照すると、第1弓形軌道42が含む第1後部部分70は、内側関節面40の後部面64に沿って、冠状面60と第1上下方向位置のところで後部縁14の近くに配置された第1部位72との間に延在している。第2弓形軌道48が含む第2後部部分80は、外側関節面46の後部面68に沿って、冠状面60と第2上下方向位置のところで後部縁14の近くに配置された第2部位82との間に延在している。第2部位82は、第1部位72の上下方向位置に対して下側方向に規定された距離Dだけ離間している。好適な構成においては、後部部分70及び80は、部位72及び82の上下方向位置間に距離Dを確保するピッチを有する基本的に螺旋の通路90の対応部分84及び86に沿って位置している。同時に、最も好ましい実施形態においては、第1半径44及び第2半径50は、弓形軌道42及び48の後部部分70及び80に沿って同じに維持されると共に、回旋の長手方向軸心94上に配置された共通中心92から延在している。
【0010】
図6及び図7を参照すると、距離Dは、冠状面60から第2部位82への第2軌道48の後部部分80の傾斜により確保されている。内側区画24は、該内側区画24の横方向に離間した境界96間の幅Wを有していることが分かる。冠状面60に配置されていて、従って、境界96間の中程の溝にある中心点100と第2部位82との間に延びる線Lを決めると、後部部分80の傾斜は、この線Lと、矢状面30に対して及び冠状面60に対して垂直であると共に中心点100を通る前後方向の面110との間の捻転角もしくは傾斜角Aにより表されている。好適な実施形態において、傾斜角Aは最大で約4°であり、最も好ましい傾斜角は約2°である。
【0011】
本発明は、概略的に上述した幾つかの目的及び利点を達成することが分かるであろう。即ち、本発明は、スムーズな膝の屈曲及び伸張、特に膝の回旋運動のために天然膝の動きをより良く模倣する膝義足を提供し、特に回旋運動に対応する際にスムーズな義足膝の運動力学を示しながら、あまり努力せずに膝義足の提供を受ける人が膝を容易に屈曲することを可能とし、人口膝関節手術を受ける人に、手術に対応する際により高い快適性と向上した信頼性とを提供し;簡素化した製造が可能に構成された比較的に少数の部品を有する人口膝で、特に天然膝の回旋運動の際の該膝のより精確な模倣を可能とし、天然膝に対する有効な代替物を提供して、長い耐用年数にわたり模範的な特性を示している。
【0012】
本発明の好適な実施形態についての以上の詳細な説明は例示のためだけになされていることを理解されたい。設計及び構造の種々の細部は、特許請求の範囲に記載された本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなく変更され得るものである。
【0013】
排他的所有権もしくは権利が請求されている本発明の諸実施形態は特許請求の範囲に規定されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】脛骨支持インサートの外側面、後部縁及び上面斜視図である。
【図2】本発明に従って構成された脛骨支持インサートの形の膝義足の平面図である。
【図3】脛骨支持インサートの後部縁及び上面斜視図である。
【図4】脛骨支持インサートの後部縁正面図である。
【図5】脛骨支持インサートの側正面図である。
【図6】脛骨支持インサートの幾分略図的な平面図である。
【図7】図6の線7−7に沿った幾分略図的な拡大断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脛骨側関節面を有する脛骨側人口関節であって、該脛骨側関節面は前記脛骨側人口関節の前部縁と前記脛骨側人口関節の後部縁との間に延在しており、前記脛骨側関節面は内側区画にある内側関節面と外側区画にある外側関節面とを含んでいる、前記脛骨側人口関節において、
前記内側関節面は、第1の曲率半径と、第1の下上方向位置で前記脛骨側人口関節の前記後部縁の近くにある第1部位へと前記内側区画の後部面に沿って延びる第1後部部分とを有する第1の弓形軌道に従っており、
前記外側関節面は、第2の曲率半径と、第2の上下方向位置で前記脛骨側人口関節の前記後部縁の近くにある第2部位へと前記外側区画の後部面に沿って延びる第2後部部分とを有する第2の弓形軌道に従っており、
前記第2後部部分は、前記第2の上下方向位置が前記第1の上下方向位置から下側方向に所定距離だけ離間するように、前記外側区画の前記後部面に沿って下側方向に延びる傾斜を有している、
ことを特徴とする、脛骨側人口関節。
【請求項2】
前記第1後部部分及び前記第2後部部分の各々は、前記第1及び第2の上下方向位置間に前記所定距離を確保するためのピッチを有する共通の螺旋路の対応する部分に沿って延在していることを特徴とする、請求項1に記載の脛骨側人口関節。
【請求項3】
前記第1の曲率半径及び前記第2の曲率半径は、前記第1後部部分及び前記第2後部部分に沿って同じに維持されていることを特徴とする、請求項2に記載の脛骨側人口関節。
【請求項4】
前記第1の曲率半径及び前記第2の曲率半径は、共通の中心から延在していることを特徴とする、請求項3に記載の脛骨側人口関節。
【請求項5】
前記共通の中心は、回旋の長手方向軸線上にあることを特徴とする、請求項4に記載の脛骨側人口関節。
【請求項6】
前記外側区画は横方向に離間した境界の間の横方向幅を有しており、
前記外側関節面は冠状面に配置された溝を含んでおり、
前記傾斜は、前記冠状面に位置すると共に、前記横方向に離間した境界間の途中で前記外側関節面上に置かれた点からの線が前記冠状面に対して垂直な前後方向面と所定の傾斜角度をなすようになっていることを特徴とする、請求項5に記載の脛骨側人口関節。
【請求項7】
前記所定の傾斜角度は最大で約4°であることを特徴とする、請求項6に記載の脛骨側人口関節。
【請求項8】
前記所定の傾斜角度は約2°であることを特徴とする、請求項6に記載の脛骨側人口関節。
【請求項9】
前記脛骨側人口関節は、膝義足の脛骨側コンポーネントの脛骨側トレーに取り付けるための脛骨支持部材を備えていることを特徴とする、請求項6に記載の脛骨側人口関節。
【請求項10】
前記外側区画は横方向に離間した境界間の横方向幅を有しており、
前記外側関節面は冠状面にある溝を含んでおり、
前記傾斜は、前記冠状面に位置すると共に、前記横方向に離間した境界間の途中で前記外側関節面上に置かれた点からの線が前記冠状面に対して垂直な前後方向面と所定の傾斜角度をなすようになっていることを特徴とする、請求項1に記載の脛骨側人口関節。
【請求項11】
前記所定の傾斜角度は最大で約4°であることを特徴とする、請求項10に記載の脛骨側人口関節。
【請求項12】
前記所定の傾斜角度は約2°であることを特徴とする、請求項10に記載の脛骨側人口関節。
【請求項13】
前記脛骨側人口関節は、膝義足の脛骨側コンポーネントの脛骨側トレーに取り付けるための脛骨支持部材を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の脛骨側人口関節。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−222616(P2007−222616A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−27542(P2007−27542)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(500239373)ハウメディカ・オステオニクス・コーポレイション (13)
【Fターム(参考)】