説明

非導電性の筐体に一体化して形成された電気化学エネルギ源、及び、かかるエネルギ源を製造する方法

本発明は、非導電性の筐体に一体化して形成された電気化学エネルギ源に係る。該エネルギ源は、筐体に組み込まれ更に陽極に結合された第1のカレント・コレクタと、筐体に組み込まれ陰極に結合された第2のカレント・コレクタと、陽極と陰極との間の電解質及び分離器とを有し、筐体は、電子機器の筐体の一部分を有する。本発明は更に、非導電性の筐体に一体化して形成された電気化学エネルギ源を製造する方法に係る。該方法は、A)陽極及び陰極を有する少なくとも1つの電気化学セルを筐体に適用する段階と、B)電気化学セルに適切な構造を実現する段階と、C)筐体に電解質を適用する段階と、D)形成された電気化学エネルギ源が筐体によって少なくとも略取り囲まれるよう筐体の向きを適応する段階とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非導電性の筐体に一体化して形成された電気化学エネルギ源に係る。かかる電気化学エネルギ源は、前出の筐体に組み込まれ、更には陽極に結合される第1のカレント・コレクタと、前出の筐体に組み込まれ、陰極に結合された第2のカレント・コレクタと、前出の陽極と前出の陰極との間の電解質及び分離器とを有し、筐体は、電子機器の筐体の一部分を有する。本発明は、更に、非導電性の筐体に一体化して形成された電気化学エネルギ源を製造する方法に係る。筐体は、電子機器の筐体の一部分を有する。製造方法は、A)前出の筐体に、陽極と陰極を有する電気化学セルを少なくとも1つ適用する段階と、B)前出の電気化学セルに適切な構造を実現する段階と、C)前出の筐体に電解質を適用する段階と、D)前出の筐体の向きを適応させ、前出の形成された電気化学エネルギ源が前出の筐体によって少なくとも略取り囲まれる段階とを有する。
【背景技術】
【0002】
電気器具の筐体の一部分に一体化されるバッテリ等の電気化学エネルギ源は、米国特許第5,180,645号明細書(特許文献1)に開示される。一体化されたバッテリを(永久的に)器具の筐体の一部分に組み込ませること、又は、器具の筐体の一部分を形成させることは、多数の利点を有する。一体化されたバッテリは、通例、より小さい外形寸法、より軽い全重重量、電子機器のより低い製造コストを結果的にもたらす。しかしながら、電子機器の筐体の一部分に一体化して形成された既知の電気化学エネルギ源のこれらの利点は、複数の不利点によって相殺される。不利点のうちの1つは、望ましい形及び/又は形式の選択が、フラット・バッテリのみに非常に限られるため、設計の自由度が比較的制限的であることである。それ故に、前出の電子機器の筐体の形は、通例、その特定の機器に適切なバッテリーの形及び形式に適応される。
【特許文献1】米国特許第5,180,645号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、いかなる形の電子機器にも適用され得る、即ち前述の不利点がなく従来技術の利点は維持する、改善された電気化学エネルギ源を与えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、前述されたとおりの電気化学源によって達成され、また、電気化学エネルギ源が湾曲した平面形状を有することを特徴とする。湾曲した平面形状を有する電気化学エネルギ源の主要な利点は、前出の電気化学エネルギ源のいかなる所望の形も実現され得ることであるため、前出の電気化学エネルギ源の形及び寸法に関する選択の自由が、最先端によって提供される自由よりも非常に大きい。前出の電気化学エネルギ源の形状は、このように、いかなる電気器具によっても課せられる空間的制限に適応され得、そこでバッテリが従来技術で既知の技術に反して使用され得る。電気化学エネルギ源の形状のより大きな選択の自由により、電気器具は、多くの場合でより効果的に空間的に構成され得る。即ち、これにより、器具の空間の節約、及び、器具の設計のより大きな自由に繋がり得る。湾曲した平面形状は、凹状若しくは凸状、又は波形であり得る湾曲した平面形を有する湾曲したバッテリをもたらすことが、留意されるべきである。しかしながら、当業者が、かぎ状の形を有する角度のあるバッテリを適用することも考えられ得る。本発明による電気化学エネルギ源は、Liバッテリ又はNiMHバッテリ等の再生可能バッテリ、再充電不能バッテリ、及びスーパーキャパシタを有し得る。前出の筐体は、非導電性材料を有するが、望ましくは、ポリマ、セラミック、合成物、ガラス、非導電性層を与えられた金属、又は木から製造される。電解質は、固体の電解質によって形成され得る。この場合、分離器は通例、固体の電解質によって形成される。望ましくは、液体の電解質は、本発明に従った電気化学エネルギ源に使用される。かかる実施例では、分離器は通例、かかる液体の電解質に浸漬される。
【0005】
望ましい実施例では、電気化学エネルギ源は、前出の陽極及び前出の陰極のラミネーションを有し、ラミネーションは湾曲形を有するため、ラミネーションは1つの湾曲した平面に置かれることを特徴とする。比較的薄く細長いラミネートは、このように、比較的簡単に与えられ得る。
【0006】
他の望ましい実施例では、電気化学エネルギ源は、互いに電気的に結合された電気化学セルの組立体を少なくとも1つ有する。各セルは、前出の陽極と、前出の第1のカレント・コレクタと、前出の陰極と、前出の第2のカレント・コレクタと、前出の陽極と前出の陰極との間に置かれた前出の電解質と前出の分離機と、前出の組立体内の1つのセルを前出の組立体内の他のセルから絶縁する絶縁手段とを有する。電気化学セルの各組立体又は別個の筐体に入れられた単一の電気化学セルの夫々の組立体は、バッテリとしても既知である。各セル又は各バッテリは、例えば、予め製造され得、また、望ましいときにエネルギ源に適用され得る。各セル及び各バッテリの形は、不定である。セル(及びバッテリ)の全体の組立体は、電気化学エネルギ源の最終形を決定する。望ましくは、電気的に結合されたセル及び/又はバッテリのより多くの組立体が適用される。
【0007】
特に、望ましい一実施例では、一組のバッテリが適用され、前出のバッテリは互いに電気的に結合され、各バッテリは、少なくとも1つの電気化学セルを有する。このように、前出の一組のバッテリは、バッテリの向きによって決定されるいかなる望ましい形も有することができる。
【0008】
望ましい一実施例では、前出の組立体又は一組のバッテリの少なくとも一部分は、従来のバッテリによって形成される。これによって、従来のバッテリは、本発明に従った電気化学エネルギ源を形成するよう使用され得る。前出の従来のバッテリは、また、1つ又はそれ以上のセルの特定の構成によって形成され得る。
【0009】
特に他の一実施例では、前出のバッテリは、「バイセル(bicell)」としても既知である、特定の単一の電気化学セルを有する。これらのバイセル又は他のバッテリは、既知である「ベルコア(Bellcore)社」の技術、「ゲル(gel)」技術、又は「Lithylene」技術によって製造され得る。より多くのバッテリが適用されると、バッテリは互いに直列又は並列に電気的に結合され得る。各組立体内の電気化学セル又はバッテリもまた、前出の電気機器(の前出の筐体)のニーズに依存して(直列又は並列に)電気的に結合され得る。このように、本発明の趣旨の範囲内で、異なる電気的接続を備えたセル及びバッテリの異なる構造が使用され得、異なる要求を有する異なる電子機器を適合させる。
【0010】
本発明はまた、本発明に従った種類の方法に係り、段階B)に従った前出の電気化学セルの適切な構造が実現されるため前出の電気化学セルは湾曲した平面形状を示すことを特徴とする。湾曲した平面形状の利点は上述された。前出の陽極及び陰極は、多種の様式で筐体上に与えられ得る。筐体上に活性電極を適用する通例の様式は、物理的な蒸着技術によるもの、及び、シルクスクリーンの焼付け及び塗布によるものである。従来の(多孔性)電極を適用することも考えられ得る。段階D)に従った前出の筐体の構造の適応は、例えば、(超音波)溶接、ダイオード「レーザ処置」、機械的変形、熱処理、又は液体ポリマの重合によって、実現され得る。上述された通り、段階A)に従って、前出のバイセル及びバッテリ等の従来の(予め組み立てられた)バッテリを筐体に適用することが考えられ得る。段階C)に従った前出の電解質の適用は、従来通りに実現され得る。状況に応じて、段階C)に従った前出の電解質の適用は、真空処理によって達成される。前出の電解質が固体の電解質である場合、前出の固体の電解質も、通常、前出の陽極及び前出の陰極を分離する分離器を形成する。液体の電解質が使用される場合は、追加の分離器が適用されなければならない。(別個の)分離器の適用が段階A)に組み込まれ得るが、望ましくは段階C)に組み込まれる。前出の分離器は、Liイオンバッテリ及びNiMHバッテリに使用される単一の分離器を有し得るか、又は、ベルコア社の技術、ポリマ・ゲル技術、Lithylene半製品、及び「UHMW」等に基づいたLiイオン及びNiMHに使用されるラミネーションに適応された分離器を有し得る。ラミネーションに適応された分離器が使用される場合、機械的に安定しているバッテリは、前出の形成されたバッテリを熱処理することによって、原位置で形成され得る。
【0011】
望ましい一実施例では、前出の電気化学セルは、前出の陽極と前出の陰極を囲む不浸透性シートを有する。不浸透性シートは、予め筐体に適用され得るか、段階A)に従って前出のセルが前出の筐体に適用される前に、前出の電解質セルに適用され得る。特に、不浸透性シートは、一方では前出のセルからの(液体の)電解質の漏れを防ぎ、また、他方では周辺の空気から前出のセルへの湿気及び空気の侵入を防ぐよう、適応される。前出の不浸透性シートは、金属及び/又はポリマのシートの組立体として製造され得る。状況に応じて、不浸透性のシートは、前出の筐体の(射出)成形中に電気化学エネルギ源の筐体と一体化される。
【0012】
段階A)に従った前出の電気化学セルの前出の筐体への適用中、複数の電気化学セルが前出の筐体に適用される。電気化学セルは、互いに電気的に結合され、バッテリを形成する。このようにして、より多くのバッテリが前出の筐体に適用され得、各バッテリは、より多くの電気化学セルを有する。前出のバッテリは、直列又は並列で電気的に結合される。セルの結合は望ましくは予め実現される。上述された通り、前出のセルは、予め組み立てられたセルを有し得るか、又は原位置で作られ得る。
【0013】
最後の望ましい一実施例では、段階C)に従って前出の電解質及び分離器が電気化学セルに適用される前に、電気化学セルは、熱処理をされる安定した電気化学セルは、このようにして作られ得る。機械的に安定したセル又はセルのバッテリを形成する可能な技術は、上述されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、以下の非制限的な例を伴って例示される。
【0015】
図1は、家庭用ミキサ3の筐体2に永久的に置かれ、且つ、完全に一体化された湾曲したバッテリ1を図示する。前出の湾曲したバッテリ1は、特には前出のミキサ3である器具の必要性に適応され、効率的且つかさばらない様式で電気化学エネルギ源を受容する。前出の湾曲したバッテリ1は、多種の型であってよいが、望ましくはこの用途では再充電可能である。前出の湾曲したバッテリ1は、陽極と、陰極と、電解質と、分離手段とを有するが、組立体は図1中図示されない。前出の組立体は、不浸透性シート4に密封され、一方では前出のバッテリ1からの液体の漏れを防ぎ、他方では、空気、湿気、及び他の物質の前出のバッテリへの侵入を防ぐようにされる。更なる利点と同様に前出の筐体2内の前出のバッテリ1の製造方法は上に詳述されている。
【0016】
図2は、体の部分に形成された蜂巣炎(セルライト)を除去する器具であるセレスト(celest)9の筐体8の室7に一体化された、予め組み立てられた電気化学セル6の湾曲したバッテリ5を図示する。セル6は、導電性ワイヤ10を用いて全て(電気的に)直列に結合される。望ましくは、全てのセル6は再充電可能である。この実施例の利点は、湾曲したバッテリ5は、従来の比較的廉価なバッテリで形成され得ることであり、一般的には、電子機器の筐体の内部空間の要求に適応され得る。前出の湾曲したバッテリ5は、前出の筐体8の前出の室7に永久的に固定されることが留意される。前出の筐体8内に作られた前出の湾曲したバッテリ5の提供は、結果的に、通例は、より小さい外形寸法、より軽い全重量、及び前出のセレスト・クリーナ9の低い製造コストをもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】家庭用ミキサーの筐体に永久的に位置付けられ、且つ、完全に一体化された湾曲したバッテリを図示する。
【図2】身体に形成された蜂巣炎を除去する装置であるセレストの筐体の室に一体化された予め組み立てられた電気化学セルの湾曲したバッテリを図示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電性の筐体に一体化して形成された電気化学エネルギ源であって、
・ 前記筐体に組み込まれ、更に陽極に結合された第1のカレント・コレクタと、
・ 前記筐体に組み込まれ、陰極に結合された第2のカレント・コレクタと、
・ 前記陽極と前記陰極との間の電解質及び分離器とを有し、
前記筐体は、電子機器の筐体の一部分を有し、
前記電気化学エネルギ源は、湾曲した平面形状を有することを特徴とする、
電気化学エネルギ源。
【請求項2】
前記電気化学エネルギ源は、前記陽極及び前記陰極のラミネーションを有することを特徴とし、前記ラミネーションは、湾曲形を有するためラミネーションは一平面に位置付けられることを特徴とする、請求項1記載の電気化学エネルギ源。
【請求項3】
前記電解質は液体の電解質であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電気化学エネルギ源。
【請求項4】
前記電気化学エネルギ源は、
・ 各セルが、前記陽極と、前記第1のカレント・コレクタと、前記陰極と、前記第2のカレント・コレクタと、前記陽極と前記陰極との間に置かれた前記電解質及び前記分離器とを有する、電気的に互いに結合された電気化学セルの少なくとも1つの組立体と、
・ 前記組立体内の1つのセルを、前記組立体内の他のセルから絶縁する絶縁手段と、
を有することを特徴とする、請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の電気化学エネルギ源。
【請求項5】
少なくとも1つの組立体は、従来のバッテリによって形成されることを特徴とする、請求項4記載の電気化学エネルギ源。
【請求項6】
一組のバッテリが与えられ、前記バッテリは互いに電気的に結合され、各バッテリは少なくとも1つの電気化学セルを有する、請求項4又は5に記載の電気化学エネルギ源。
【請求項7】
非導電性の筐体に一体化して形成された電気化学エネルギ源を製造する方法であって、前記筐体は、電子機器の筐体の一部分を有し、以下の:
A) 陽極及び陰極を有する少なくとも1つの電気化学セルを前記筐体に適用する段階と、
B) 前記電気化学セルに適切な構造を実現する段階と、
C) 前記筐体に電解質を適用する段階と、
D) 前記形成された電気化学エネルギ源が前記筐体によって少なくとも略取り囲まれるよう前記筐体の向きを適応する段階と、を有し、
段階B)に従って前記電気化学セルに適切な構造の実現が達成され、前記電界セルが湾曲した平面形状を示すことを特徴とする、
方法。
【請求項8】
前記電気化学セルは、前記陽極及び前記陰極を取り囲む不浸透性のシートを有する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
複数の電気化学セルは、段階A)に従った前記筐体への前記電気化学セルの適用中に、前記筐体に適用されることを特徴とする、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記電気化学セルは、段階C)に従って前記電解質が前記筐体に適用される前に、熱処理を受けることを特徴とする、請求項7乃至9のうちいずれか一項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−512727(P2006−512727A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−563453(P2004−563453)
【出願日】平成15年12月10日(2003.12.10)
【国際出願番号】PCT/IB2003/005962
【国際公開番号】WO2004/059759
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】