説明

非接触データ通信システム及び非接触ICタグ

【課題】システム全体としてコストの低減が可能な非接触データ通信システムを提供する。
【解決手段】第1の非接触ICタグ5の検出部で検出されたデータをデータ判定部が判定し、その判定結果をデータ送信部を介して第2の非接触ICタグ6に送信する。このとき、第1の非接触ICタグ5は、リーダライタ2が発生する誘導電磁界Wから電力を生成し、この電力を利用して第2の非接触ICタグ6と通信を行う。そして、第2の非接触ICタグ6は、データ受信部を介して第1の非接触ICタグ5から送信されたデータを受信し、受信したデータに基づいて表示部の表示を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触ICタグとリーダライタとの間で誘導電磁界を利用した非接触データ通信を行う非接触データ通信システム、そのような非接触データ通信システムに用いられる非接触ICタグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、非接触ICタグを商品に貼り付けて、その非接触ICタグが有する固有IDを読み取るため、非接触ICタグとリーダライタとの間で誘導電磁界を利用した非接触データ通信を行う非接触データ通信システムがある。このような非接触データ通信システムは、例えば、商品の在庫管理を行う在庫管理システムや、流通段階の履歴データを読み書きする物流システムなどに広く利用されている。
【0003】
また、非接触データ通信システムは、液体の入った容器の管理にも利用されている。例えば、容器外壁に非接触ICタグを貼り付けて、容器に入った液体を識別する液体容器が提案されている(特許文献1を参照)。また、創薬用試料を封入する複数容器の管理のために、容器に貼り付けられた非接触識別ダダの読取書込みを一括で行う装置が提案されている(特許文献2を参照)。一方、ラベル印字を行うことができる非接触ICタグを使用して、貼り付ける物品に関連する情報などを上位システムからの指令によりラベルに印刷し、タグへと書き込み、それを物品に貼り付けることが行われている(特許文献3を参照)。
【特許文献1】特開2002−259934号公報
【特許文献2】特開2005−351641号公報
【特許文献3】特開2002−207984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、容器内の液体が何であるか判明していない場合には、予め容器内の液体を検査し、明らかにする必要がある。また、液体を入れ替えた場合、入れ替える毎にその液体が何であるかを検査する必要がある。さらに、容器内の液体を入れ替える度に容器に貼り付けてある非接触ICタグを交換したり、ラベルの表示を書き換えたりすることになる。この場合、流通段階や検査段階で非接触ICタグの交換作業に時間を要したり、廃棄するタグが増加したりするため、システム全体としてコストの上昇を招くことになる。
【0005】
また、従来のシステムでは、容器内の液体と、容器に貼り付けられた非接触ICタグの表示とが一致しているか判別する方法がないため、液体を入れ替えた場合には、実際の液体と表示とが誤っていることがないよう更なる安全確認が必要となる。
【0006】
さらに、液体の入った容器の場合、非接触ICタグとリーダライタとの間の通信距離が短くなるため、非接触ICタグの内部を特殊な実装構造に作り替える必要がある。したがって、この場合もコストの上昇を招くことになる。
【0007】
そこで、本発明に係る一つの具体的態様は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、流通段階や検査段階で非接触ICタグの交換作業に時間を要したり、廃棄するタグが増加したりすることがなく、システム全体としてコストの低減が可能な非接触データ通信システムを提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明に係る一つの具体的態様は、容器内の液体と、容器に貼り付けられた非接触ICタグの表示とが液体を入れ替えた場合でも常に一致するように、表示内容の信憑性を高めることを可能とした非接触データ通信システムを提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明に係る一つの具体的態様は、非接触ICタグとリーダライタとの間の通信距離が短くなる場合でも、非接触ICタグの内部を特殊な実装構造に作り替えることのない低コストな非接触データ通信システムを提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明に係る一つの具体的態様は、そのような非接触データ通信システムに好適に用いられる新規な非接触ICタグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を踏まえて、本発明に係る非接触データ通信システムは、固有の識別子が登録された第1及び第2の非接触ICタグと、第1及び第2の非接触ICタグに対して非接触状態でデータの読み出し及び書き込みを行うリーダライタとを備え、第1及び第2の非接触ICタグとリーダライタとの間で誘導電磁界を利用した非接触データ通信を行う非接触データ通信システムであって、第1の非接触ICタグは、データの検出を行うデータ検出部と、データ検出部で検出されたデータを判定するデータ判定部と、データ判定部で判定した判定結果を第2の非接触ICタグに送信するデータ送信部とを有し、第2の非接触ICタグは、第1の非接触ICタグから送信されたデータを受信するデータ受信部と、データ受信部で受信したデータに基づいて表示を行う表示部とを有し、第1の非接触ICタグは、リーダライタが発生する誘導電磁界から電力を生成し、この電力を利用して第2の非接触ICタグと通信を行うことを特徴とする。
【0012】
この非接触データ通信システムでは、第1の非接触ICタグの検出部で検出されたデータをデータ判定部が判定し、その判定結果をデータ送信部を介して第2の非接触ICタグに送信する。このとき、第1の非接触ICタグは、リーダライタが発生する誘導電磁界から電力を生成し、この電力を利用して第2の非接触ICタグと通信を行う。そして、第2の非接触ICタグは、データ受信部を介して第1の非接触ICタグから送信されたデータを受信し、受信したデータに基づいて表示部の表示を行う。
【0013】
したがって、この非接触データ通信システムによれば、非接触ICタグを交換することなく、表示部に表示される内容を書き換えることが可能なため、流通段階や検査段階で非接触ICタグの交換作業に時間を要したり、廃棄するタグが増加したりすることがなく、システム全体としてコストの低減が可能である。
【0014】
また、第1の非接触ICタグの検出部で検出された内容を第2の非接触ICタグの表示部で表示することから、表示内容の信憑性を高めることが可能である。
【0015】
さらに、非接触ICタグとリーダライタとの間の通信距離が短くなる場合でも、非接触ICタグの内部を特殊な実装構造に作り替えることがないため、システムのコスト上昇を防ぐことが可能である。
【0016】
また、本発明に係る非接触データ通信システムは、データ検出部が、容器に収容された液体を検出するセンサを備え、このセンサが検出したデータに基づいてデータ判定部が液体の種類を判定することを特徴とする。
【0017】
この非接触データ通信システムによれば、容器内の液体と、容器に貼り付けられた非接触ICタグの表示とが液体を入れ替えた場合でも常に一致するように、表示内容の信憑性を高めることが可能であり、容器を扱う使用者の安全性を高めることが可能である。
【0018】
また、本発明に係る非接触データ通信システムは、第1の非接触ICタグが容器の内側に、第2の非接触ICタグが容器の外側に配置されていることを特徴とする。
【0019】
この非接触データ通信システムによれば、容器の内側に配置された第1の非接触ICタグがリーダライタが発生する誘導電磁界から電力を生成し、この電力を利用して、容器の外側に配置された第2の非接触ICタグと通信を行うことが可能である。
【0020】
また、本発明に係る非接触データ通信システムにおいて、リーダライタは、第1の非接触ICタグが第2の非接触ICタグと通信している間、第1の非接触ICタグに第2の非接触ICタグの機能が追加されたとみなすことを特徴とする。
【0021】
この非接触データ通信システムによれば、あたかも非接触ICタグに機能が追加(第1の非接触ICタグと第2の非接触ICタグとが非接触ICタグ間通信を使用することで一体化されているようになる)されたように見せることができる。また、この非接触データ通信システムによれば、事前に複数の機能を非接触ICタグに持たせることなく非接触ICタグの機能を追加することができるので、非接触ICタグのコストダウンが期待できる。
【0022】
また、本発明に係る非接触データ通信システムは、機能の異なる複数の第2の非接触ICタグを用意し、希望する機能に合わせて第2の非接触ICタグを交換し、交換された第2の非接触ICタグが、第1の非接触ICタグから送信されたデータに基づいて、それぞれの機能に応じた処理を行うことを特徴とする。
【0023】
この非接触データ通信システムによれば、機能の異なる複数の第2の非接触ICタグを用意し、希望する機能に合わせて第2の非接触ICタグを交換するだけで、あたかも非接触ICタグの機能が変更されたように見せることができる。また、この非接触データ通信システムによれば、事前に複数の機能を非接触ICタグに持たせることなく非接触ICタグの機能を変更することができるので、非接触ICタグのコストダウンが期待できる。
【0024】
また、本発明に係る非接触データ通信システムは、識別子が異なる複数の第1の非接触ICタグの識別子情報を第2の非接触ICタグに予め登録しておき、第2の非接触ICタグが、登録された識別子を有する第1の非接触ICタグから送信されたデータに基づいて、表示部の表示を行うことを特徴とする。
【0025】
この非接触データ通信システムによれば、識別子が異なる複数の第1の非接触ICタグの識別子情報を第2の非接触ICタグに予め登録しておくことで、識別子が異なる第1の非接触ICタグからのデータに基づく表示を行うことができる。例えば、容器を前後に並べて保管する場合でも、奥に置いた容器の第1の非接触ICタグから送信されたデータに基づく表示を手前に置いた別の容器の表示部に行わせることも可能である。
【0026】
一方、本発明に係る非接触ICタグは、固有の識別子が登録され、リーダライタが発生する誘導電磁界から電力を生成し、この電力を利用して、リーダライタ又は別の非接触ICタグと非接触データ通信を行う非接触ICタグであって、データの検出を行うデータ検出部と、データ検出部で検出されたデータを判定するデータ判定部と、データ判定部で判定した判定結果を別の非接触ICタグに送信するデータ送信部とを有することを特徴とする。
【0027】
この非接触ICタグによれば、検出部で検出されたデータをデータ判定部が判定し、その判定結果をデータ送信部を介して別の非接触ICタグに送信することが可能である。
【0028】
一方、本発明に係る接触タグ識別タグは、固有の識別子が登録され、リーダライタが発生する誘導電磁界から電力を生成し、この電力を利用して、リーダライタ又は別の非接触ICタグと非接触データ通信を行う非接触タグICタグであって、リーダライタ又は別の非接触ICタグから送信されたデータを受信するデータ受信部と、データ受信部で受信したデータに基づいて表示を行う表示部とを備えることを特徴とする。
【0029】
この非接触ICタグによれば、リーダライタ又は別の非接触ICタグから送信された通信内容を表示部に表示することから、非接触ICタグを交換することなく、表示部に表示される内容を書き換えることが可能である。
【0030】
また、本発明に係る非接触タグICタグは、前記表示部が無電力状態で表示を保持するメモリ性の表示装置を備えることを特徴とする。
【0031】
この非接触ICタグによれば、表示部に表示された内容を無電力状態で保持することが可能であり、表示内容を書き換えられることがないため、表示内容の信憑性を高めることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明が適用される非接触データ通信システムとは、通信媒体に電波・電磁波を用いたRFID(Radio Frequency IDentification)システムであり、非接触ICタグが、(1)携帯容易な大きさであること、(2)情報を電子回路に記憶すること、(3)非接触通信により交信することの3つの特徴を備えている。
【0033】
したがって、非接触データ通信システムは、非接触ICタグを持つ人・物・車などと、その情報とを一元化させる目的で使用される。つまり、人・物・車がある場所で随時、必要な情報を非接触ICタグから取り出すことができ、かつ必要に応じて新たな情報を非接触ICタグに書き込むことができる。
【0034】
また、非接触データ通信システムの代表的な種類としては、電磁結合方式、電磁誘導方式、マイクロ波方式、光方式の4つがある。このうち、
電磁結合方式は、主に、交流磁界によるコイルの相互誘導を利用して非接触ICタグとの交信を行う。
【0035】
電磁誘導方式は、主に、250kHz以下、或いは、13.56MHz帯の長・中波帯の電磁波を利用して非接触ICタグとの交信を行う。
【0036】
マイクロ波方式は、リーダライタ2のアンテナ2hと非接触ICタグ7間で、2.45GHz帯のマイクロ波により交信を行う。
【0037】
光方式は、光の発生源としてLEDを、受光器としてはフォトトランジスタ等を配置し、光の空間伝送を利用して非接触ICタグとの交信を行う。
【0038】
また、アクセス方式は、主に、シングルアクセスモード、FIFO(First In First Out)アクセスモード、マルチアクセスモード、セレクティブアクセスモードの4つがある。
このうち、シングルアクセスモードは、アンテナ交信領域内に存在する非接触ICタグは1個であり、複数の非接触ICタグ7がアンテナの交信領域内にあると交信エラーとなり、交信できなくなる。
【0039】
FIFOアクセスモードは、アンテナの交信領域内に順番に人ってくる非接触ICタグと順番に交信することができる。交信を終了した非接触ICタグにはアクセス禁止処理を行うので、交信終了した非接触ICタグ7がアンテナの交信領域内に複数存在しても、新たな非接触ICタグが1個だけアンテナの交信領域内に入ってくれば交信ができる。同時に非接触ICタグが交信領域内にはいると、交信エラーとなり交信できなくなる。
【0040】
マルチアクセスモードは、アンテナの交信領域内に複数の非接触ICタグが存在しても、全ての非接触ICタグと交信ができる。
【0041】
セレクティブアクセスモードは、交信領域内にある複数の非接触ICタグのうち、特定の非接触ICタグと交信ができるもので、交信領域内の非接触ICタグに番号を割り当てるコマンドと、割り当てた番号をもとに、特定の非接触ICタグとの交信を行うコマンドで実現される。
【0042】
非接触ICタグとは、RFID(Radio Frequency IDentification)システムにおいて用いられるもので、一般にデータキャリアなどとも呼ばれている。その形状には、ラベル型、カード型、コイン型、スティック型等の様々なものがある。
【0043】
これらの形状はアプリケーションと密接な関係があり、例えば、人が持つものは、カード形あるいはラベル形をキーホルダ形状に加工したものがある。また、半導体のキャリアIDとしてはスティック形が主流となっている。なお、リネン関連の服に縫い込まれるものはコイン形が主流となっている。
【0044】
また、非接触ICタグは、データ読取専用、或いは、データの読み書きが自由に行える記憶領域を備えており、更に、リーダライタからの非接触電力伝送により電池が無くても動作可能なものがある。
【0045】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について、図1〜図8を参照しながら説明する。
図1は、本発明を適用した非接触データ通信システム1の構成を示すブロック図である。
この非接触データ通信システム1は、図1に示すように、リーダライタ2と、複数の非接触ICタグ3とを備え、複数の非接触ICタグ3とリーダライタ2との間で誘導電磁界Wを利用した非接触データ通信を行うものである。
【0046】
具体的に、この非接触データ通信システム1は、容器4に収容された溶液Lを検出するために、容器4の内側に貼り付けられた第1の非接触ICタグ(以下、内側タグという。
)5がバイオセンサを搭載し、容器4に収容された溶液Lの種類を表示するために、容器4の外側に貼り付けられた第2の非接触ICタグ(以下、外側タグという。)6が不揮発表示可能な表示装置を搭載した構成を有している。なお、以下の説明では、内側タグ5と外側タグ6とを組み合わせたものを非接触ICタグ7として扱うものとする。
【0047】
図2は、リーダライタ2の構成を示すブロック図である。
このリーダライタ2は、図2に示すように、非接触ICタグ7に対して非接触状態でデータの読み出し及び書き込みを行うためのものであり、データ受信部2aと、データ送信部2bと、制御部2cと、操作部2dと、RAM(Random Access Memory)2eと、ROM(Read Only Memory)2fと、表示部2gと、アンテナ2hとを備えて構成されている。
【0048】
データ受信部2aは、非接触ICタグ7からの情報を非接触で受信するものである。これにより、データ受信部2aは、溶液Lに関連した管理情報等を取得することが可能である。
【0049】
データ送信部2bは、管理情報等の非接触ICタグ7に記憶された情報を読み取るコマンドや、非接触ICタグ7と商品を対応付けるための管理情報等を、当該非接触ICタグ7に非接触で伝送するものである。また、本実施形態においては、データ通信時の搬送波を非接触ICタグ7への電力供給に利用している。
【0050】
ここで、本実施形態におけるリーダライタ2と非接触ICタグ7との間のデータ通信は、主に、250kHz以下、或いは、13.56MHz帯の長・中波帯の電磁波を利用して交信を行う電磁誘導方式を利用している。また、リーダライタ2と非接触ICタグ7とのデータ通信は、交信領域内にある複数の非接触ICタグ7のうち、特定の非接触ICタグ7と交信ができるセレクティブアクセスモードを利用している。
【0051】
制御部2cは、図示しないCPU(Central Processing Unit)により、ROM2fに記憶された制御プログラムを実行することにより、リーダライタ2の動作を統括制御するものである。その制御内容としては、先ず、非接触ICタグ7からのデータの受信や、非接触ICタグ7へのデータの送信などの、データ受信部2a及びデータ送信部2bを用いた電磁誘導方式によるデータ通信処理の制御がある。さらに、操作部2dの操作内容に応じて制御プログラム実行時に用いる設定値の変更処理等の制御、表示部2gに非接触ICタグ7から取得した情報等の所定情報の表示処理制御などを行う。
【0052】
操作部2dは、電源の投入と切断、プログラムのリセットなどを行うためのスイッチ等の操作機能、非接触ICタグ7に書き込む情報内容の設定部等を備えたものである。
【0053】
RAM2eは、制御部2cのCPUにより、ROM2fに記憶された制御プログラムを実行する際に必要なデータを一時記憶するためのメモリである。
【0054】
ROM2fは、リーダライタ2を統括制御するための制御プログラムと、後述する表1に示す検査容器と貼り付けられた非接触ICタグ7のUIDとが記憶された不揮発メモリであり、EEPROM、FeRAM、FLASHのいずれかで構成されている。
【0055】
表示部2gは、液晶等の表示領域を備え、非接触ICタグ7から取得した情報、リーダライタ2の現在の設定内容、処理の実行状況などを表示する機能を備えたものである。
【0056】
アンテナ2hは、リーダライタ2から非接触ICタグ7へデータを含んだ電磁波を送信するためのものである。
【0057】
以上のような構成を有するリーダライタ2は、容器4に貼り付けられた内側タグ5に対して溶液Lを検出する指令を出したり、外側タグ6に溶液Lの情報を書き込んだり、非接触ICタグ7に書き込まれた情報を読み出して表示部2gに表示したり、非接触ICタグ7に送信する情報などを表示部2gに表示したりする。
【0058】
図3は、非接触ICタグ7の構成を示すブロック図である。
この非接触ICタグ7は、図3に示すように、容器4と1対1に対応付けられて、リーダライタ2との間で識別ID番号を用いた非接触のデータ通信を行い、容器4を管理するものである。なお、識別ID番号は、非接触ICタグ7毎にそれぞれ固有のものであり、後述する記憶部としてのデータ記億部33に記憶されている。
【0059】
この非接触ICタグ7は、データ受信部30と、データ送信部31と、制御部32と、データ記億部33と、データ判定部34と、検出部35と、表示処理のための表示処理部36と、表示部37と、電源生成部38と、コイルアンテナ39とを備えて構成されている。
【0060】
なお、非接触ICタグ7は、検出部35と表示部37との両方を必ずしも備える必要はないものの、内側タグ5には検出部35が必須で実装され、外側タグ6には表示部37が必須で実装されている。
【0061】
データ受信部30は、リーダライタ2から伝送されたデータを電磁誘導方式により受信する機能を備えるものである。
【0062】
データ送信部31は、データ記億部33によって記憶された所定データを、電磁誘導方式によってリーダライタ2、又は、内側タグ5から外側タグ6に直接データを転送する機能を備えるものである。また、この直接転送するための通信方式としては、リーダライタ2へ送信するのと同じ方式である負荷変調信号を利用して送信する。
【0063】
負荷変調信号とは、リーダライタ2と非接触ICタグ7とが電磁誘導によってコイルアンテナ39のコイルが電磁結合しているときに、非接触ICタグ7の共振回路のパラメータを変化させ、非接触ICタグ7のインピーダンスの大きさや位相を変化させる信号である。このインピーダンスの変化をリーダライタ2が検出して非接触ICタグ7から送信されるデータに変換し(データの有無で1か0のデータに変換する)、非接触でデータ転送する方式に利用されている。
【0064】
直接転送する通信に使用する負荷変調信号は、非接触ICタグ7からリーダライタ2に送信される負荷変調信号をそのまま使用し、送信先をリーダライタ2ではなく別の非接触ICタグ7に設定する。このとき、リーダライタ2の通信エリア内にある非接触ICタグ7はリーダライタ2と電磁結合しているときの周波数(例えば13.56MHz)をベースにして負荷変調されているため、リーダライタ2からデータ転送を行いながら非接触ICタグ7間で直接データを転送する通信を行うと、信号が重複して信号が読み取れなくなってしまう。そこで、直接転送する通信を行う場合は、リーダライタ2はデータを転送せず非接触ICタグ7と電磁結合させた状態のみにしておく。この状態で内側タグ5から負荷変調信号を外側タグ6に対して送信することで、外側タグ6は内側タグ5からめデータをデータ受信部30で負荷変調信号の変化として読み取ることができる。これを利用することで、新たに非接触ICタグ7間で通信するための受信回路を追加することなく、非接触ICタグ7間で負荷変調信号を利用したデータ転送を行うことができる。
【0065】
制御部32は、図示しないCPUにより各部に対応する制御プログラムを実行することによって、非接触ICタグ7の各部の動作を制御するものである。なお、本実施形態においては、CPU及び制御プログラムにより非接触ICタグ7の機能を変更する構成としているが、これに限らず、これらの動作をロジック回路により制御する構成としてもよい。
なお、本実施形態では、制御部32がデータ判定部34と表示処理部36とを含んだ構成となっている。
【0066】
データ記億部33は、制御部32からの命令に応じて、リーダライタ2から受信した管理情報などの所定データを自己のメモリに記憶する機能を備えるものである。ここで、本実施形態において、データ記憶部33は、上記した制御プログラムも記憶している。さらに、データ記憶部33は、容器4毎に登録された識別ID番号の情報や、リーダライタ2から非接触ICタグ7ヘアクセスした情報などを記憶する。
データ記憶部33は、制御部32内へ組み込まれていても、外付けになっていてもよい。本実施例では、制御部32内へ組み込まれ、EEPROM、FLASH、FeRAMの何れかで構成されている。
【0067】
検出部35は、溶液L内の酵素を検出するグルコースセンサを備えており、データ判定部34で溶液Lを特定する。グルコースセンサはバイオセンサの中でも代表的なセンサで、酸素検出用電極(酸素電極)又は過酸化水素検出用電極と、電極に固定された酵素であるグルコースオキシダーゼとから構成されている。そして、このグルコースセンサは、溶液L内のゲルコースがグルコースオキシダーゼと触媒反応してグルコノラクトンに変化するときに消費される酸素の減少量又は発生する過酸化水素の濃度を電極で検出して溶液L内のグルコース濃度を測定し、ゲルコースが含まれているかを検出する。
【0068】
なお、バイオセンサとは、生体が持っている機能を実現するためのセンサで、生体の物質をセンサとして利用(酵素センサなど)、人工的に作り上げた素材を利用して生体機能を真似るなど(味覚センサなど)がある。一般的なバイオセンサの種類としては、酵素センサ(酸素電極を使用してグルコース、尿素などを検出する)、免疫センサ(抗原抗体反応を利用して抗原を検出する)などがある。一般的な検出方法は、バイオセンサに一定の電圧を印加してセンサの出力である電流又は電圧を測定し、ある閾値の値を一定時間超えているかにより酵素などが検出されたかを判定する。なお、本実施形態では、上述した内側タグ5の検出部35に酵素センサを取り付け、この酵素センサに反応する酵素が溶液L内に存在するかを検査する。なお、検出部35の酵素センサは1つ又は複数取り付けることが可能である。
【0069】
表示処理部36は、制御部32からの命令に応じて、表示部37に所定情報を表示する制御を行うものである。
【0070】
表示部37は、電気泳動現象を利用した表示装置である。ここで、電気泳動式の表示装置の動作原理である電気泳動現象とは、液相分散媒中に微粒子を分散させた分散液に電界を印加したときに、分散によって自然に帯電した粒子(電気泳動粒子)がクーロンカにより泳動する現象である。この電気泳動式表示装置は、表示画像保持性能(以下、「メモリ性」と称する。)を有しており、電界の印加により一度表示された画像を無電力状態で保持することが可能である。そして、この表示部37は、データ判定部34で判定された溶液Lの内容を表示する。なお、判定された溶液Lに対応させて、表示色を変えて色だけで溶液Lを判別できるようにしてもよい。
【0071】
電源生成部38は、リーダライタ2から受信した電磁波から電力を生成して上記各部に供給するものである。
【0072】
コイルアンテナ39は、リーダライタ2から送信されるデータを含んだ電磁波を電磁誘導方式で受信するためのものである。
【0073】
図4は、非接触ICタグ7の構造を示す透視平面図である。
この非接触ICタグ7は、図4に示すように、基板300上に、前記基板300の周囲に沿って金属の渦巻線を形成することで、コイルアンテナ39が形成されている。基板300は、ポリイミドのようなフレキシブルな材質からなる。コイルアンテナ39は、例えば金属インクを用いたインクジェット法又はスクリーン印刷法によって形成される。また、基板300には、制御部32がICチップとして実装され、更に、表示部37がメモリ性の表示装置として実装されている。制御部32は、図4に示すように、配線300aを介して検出部35と接続されている。この検出部35は、基板300に実装されているが、検出部35を基板300から配線300aを介して外部に取り出してもよい。また、この基板300に実装された回路には、外部の埃等から保護することを目的に、薄いフィルム等が貼り付けられている。
【0074】
第1の実施形態として示す非接触データ通信システム1は、非接触ICタグ7を溶液Lの入った容器4に貼り付けて溶液Lを特定するシステムに適用したものであり、非接触ICタグ7で検出され、特定された溶液Lの内容を非接触ICタグ7に表示して管理する。
【0075】
ここで、非接触データ通信システム1の具体的な動作について説明する。
先ず、溶液Lの入る容器4には、予め非接触ICタグ7を貼り付けておく。そして、リーダライタ2の操作部2dにおいて、容器4にそれぞれ貼り付けられた非接触ICタグ7で溶液Lを検出して検出結果を表示部37に表示させるための設定を行う。
【0076】
ここで、設定する情報としては、容器4の内側に貼り付けられたグルコースセンサ付の内側タグ5を特定するためのID番号(以下UIDとする)や、その内側タグ5と対になって容器4の外側に貼り付けられた表示部37付の外側タグ6を特定するためのUID、操作担当者名などがある。
【0077】
これらの設定情報は、リーダライタ2に表示される表示部2gから操作部2dで選択して入力するか、若しくはリーダライタ2に接続されたデータベース(図示しない)から転送して設定する。
【0078】
次に、リーダライタ2は、これらの設定が終わると、図5(a)に示すセンシングリクエストコマンドのフレームを組み立て、データ送信部2bを介して内側タグ5に送信する。この図5(a)に示すセンシングリクエストコマンドは、内側タグ5のグルコースセンサで溶液Lを検査して検出データ判定部34で溶液Lを特定し、その結果を外側タグ6として設定されているUIDに対して表示部37で表示するデータとともに送信するためのコマンドである。
【0079】
内側タグ5は、リーダライタ2からセンシングリクエスコマンドを受信すると、その電源生成部38において、この信号の搬送波から駆動電力を生成し、内側タグ5の各部に供給する。そして、電力が供給されたデータ制御部32の制御により、リーダライタ2から送信された情報を、データ受信部30を介して受信し、データ記憶部33によって不揮発性のメモリに記憶する。そして、検出部35で溶液Lをセンシングし、検出データ判定部34で溶液Lを特定する。最後に、内側タグ5は、検出データ判定部34で特定された溶液情報を、図5(b)に示す表示コマンド内の表示データに設定し、データ送信部31を介して外側タグ6に送信する。
【0080】
一方、外側タグ6は、図5(b)に示す表示コマンドを受信すると、その電源生成部38において、この信号の搬送波から駆動電力を生成し、外側タグ6の各部に供給する。そして、電力が供給されたデータ制御部32の制御により、内側タグ5から送信された情報を、データ受信部30を介して受信し、データ記億部33によって不揮発性のメモリに記憶する。そして、表示コマンド内の表示データを取り出し、表示処理部36を介して表示部37の電気泳動ディスプレイに表示させる。ここで、電気泳動ディスプレイの特性から、情報の表示の維持には電力を必要としない。
【0081】
最後に、外側タグ6は、図5(c),(d)に示すセンシングレスポンスコマンドを組み立て、データ送信部31を介してリーダライタ2へ送信する。なお、リーダライタ2は、センシングリクエストコマンドを送信した後、このコマンドの処理が完了したことを示す信号、すなわち図5(c),(d)に示すセンシングレスポンスコマンドを受信するまで、非接触ICタグ7との電磁結合を切り離さない。
【0082】
次に、図5に示す各コマンドのフレームフォーマットについて説明する。
リーダライタ2と非接触ICタグ7との間のデータ通信は、図5(a)〜(d)に示すようなISO/IEC18000−3又はISO/IEC15693に準拠したフレームフォーマットで行う。
【0083】
図5(a)に示すセンシングリクエストコマンドのフレームフォーマットは、SOF(Start of Field)とEOF(End of Field)との間に、FLAGS400と、センシングコマンドコード401、UID402と、表示コマンドデータ403と、CRC404とを、この順で備えて構成されている。
【0084】
図5(b)に示す表示コマンドデータ403のフレームフォーマットは、SOFとEOFとの間に、FLAGS405と、表示コマンドコード406と、UID407と、表示データ408とを、この順で備えて構成されている。
【0085】
図5(c)示すセンシングレスポンスコマンド(エラー有り)のフレームフォーマットは、SOFとEOFとの間に、FLAGS409と、エラーコードフィールド410と、CRC411とを、この順で備えて構成されている。一方、図5(d)示すセンシングレスポンスコマンド(エラー無し)のフレームフォーマットは、SOFとEOFとの間に、FLAGS409と、CRC411とを、この順で備えて構成されている。
【0086】
なお、各フレームフォーマットは、これらに限定することなく構成することも可能である。フレームは、SOF(Start of Field)とEOF(End of Field)に囲まれたフオーマットで構成されている。また、CRCには、SOFの次からCRCの前までISO/IEC13239の規定に従って計算した結果がセットされる。FLAGSは、フレームの機能を設定する。
【0087】
コマンドの種類としては、上記コマンドの他に、データ書込みコマンドや、タグ応答コマンド、タグ応答開始停止コマンド等がある。なお、本実施形態では、通常のコマンドとして処理する。
【0088】
データ書込みコマンドは、非接触ICタグ7に管理情報等のデータを書き込むためのものである。すなわち、非接触ICタグ7は、例えば、データ記億部33の書き替え可能なROMに対してリーダライタ2からデータが送信され情報が書き込まれている。
【0089】
タグ応答コマンドは、非接触ICタグ7のUIDをリーダライタ2に送信するコマンドである。このコマンドを受信した非接触ICタグ7は全て、非接触ICタグ7に記憶されたUIDをリーダライタ2に送信する。
【0090】
タグ応答開始停止コマンドは、リーダライタ2に情報を返信または返信しないための制御コマンドである。このコマンドは、リーダライタ2から送信されるコマンドを受信した場合、このコマンドに応答して非接触ICタグ7からリーダライタ2にデータを返信するかを決定するためのものである。コマンドの内容が開始状態に設定されている場合、非接触ICタグ7は、リーダライタ2からこのコマンドを受信すると応答してデータを返信する。また、停止状態に設定されている場合、非接触ICタグ7は、リーダライタ2からこのコマンドを受信しても何も応答しない。
【0091】
図6は、リーダライタ2から非接触ICタグ7ヘセンシングリクエストコマンドを送信してからレスポンスを受信するまでの処理を示すフローチャートである。
また、表1は、検査容器と貼り付けられた非接触ICタグのUIDとの対応を示す。
【0092】
【表1】

【0093】
具体的に、ステップS11では、予め登録されている検査容器を選択する。検査容器は、表1に示すように、内側タグ5であるグルコースセンサの実装されたセンシングタグのUIDと、外側タグ6である表示部37が実装された表示タグのUIDがデータベースとしてリーダライタ2のROM2fに登録されている。容器4を選択するためには、表示部2gに表示された検査容器を操作部2dでカーソル移動をさせて選択する。
【0094】
ステップS12では、図5(a)に示すセンシングリクエストコマンドフレームを組み立てる。また、このセンシングリクエストコマンドフレーム中にある表示コマンドデータ403には、図5(b)に示す表示コマンドデータフレームが組み込まれている。そして、UID402には、ステップS11で選択したセンシングタグのUIDを設定する。一方、表示コマンドデータ403の中にあるUID407には、ステップS11で選択した表示タグのUIDを設定する。
【0095】
ステップS13では、ステップS12で組み立てたセンシングリクエストコマンドのデータをデータ送信部2bへ送り、非接触ICタグ7に向けて送信する。
【0096】
ステップS14では、送信したセンシングリクエストコマンドに対する非接触ICタグ7からの応答を受信し解析する。応答フレームは、図5(c)に示す。そして、応答がある場合は、ステップS16へ進む。ステップS16では、エラーがない場合はステップS18に進み、表示内容を表示部2gに表示して処理を終了する。一方、エラーがある場合はステップS17に進み、エラー内容を表示部2gに表示して処理を終了する。
【0097】
一方、ステップS14で応答がない場合は、ステップS15に進み、タイムアウトであるかを確認する。タイムアウトである場合はステップS17に進み、エラー内容を表示部2gに表示して処理を終了する。一方、タイムアウトでない場合は、再びステップS14に戻り、応答があるかを確認する処理を繰り返す。
【0098】
図7は、酵素センサが実装された内側タグ5内でセンシングリクエストコマンドに対する処理を示すフローチャートである。
【0099】
具体的に、ステップS21では、データ受信部30を介してリーダライタ2からの自分宛てのコマンドを受信し、ステップS29へ進む。ステップS29では、フレームにCRCエラーがあるか確認する。
【0100】
ステップS29でCRCエラーである場合は、ステップS30に進み、図5(c)に示すセンシングレスポンスコマンドのエラーコード410にCRCエラーを示すコードを設定し、FLAGS409にエラーを設定しステップS28へ進む。そして、ステップS28では、センシングレスポンスコマンドをデータ送信部28へ転送し、リーダライタ2へ送信して処理を終了する。
【0101】
一方、ステップS29でCRCエラーがない場合は、ステップS22に進む。ステップS22では、ステップS21で受信したコマンドがセンシングリクエストコマンドであるかを判断する。
【0102】
ステップS21でセンシングリクエストコマンドでない場合は、ステップS23へ進み、通常コマンドとして処理され終了する。通常コマンド処理では、ISO/IEC18000−3又はISO/IEC15693に準拠した内容で処理が行われる。
【0103】
一方、ステップS21でセンシングリクエストコマンドと判断されると、ステップS24へ進み、制御部32から検出部35に対して一定電圧をかけ測定を開始する。検出部35には、酵素がセンサとして取り付けられている。酵素は特定の物質にしか反応しない。
反応する特定物質がある場合は、酵素センサの出力値(電圧レベル)が一定のピーク値を持つパルス電圧が発生する。これをセンサとして特定物質が存在するか検査するために利用する。
【0104】
ステップS24が終了した後に、ステップS25へ進む。ステップS25では、特定物質に反応したかを検出部35である酵素センサの出力電圧から判断する。酵素センサが複数取り付けられている場合も同様に出力電圧から確認する。予め設定されている出力電圧値と比較し、パルス上の電圧が得られているかを解析した後、ステップS26へ進む。
【0105】
ステップS26では、検出部35の酵素センサから一定の出力を得られたときには、表示部37にデータ記億部33に予め記憶してある反応した酵素名を取り出し、表示データに設定する。複数のセンサの場合も同様にして表示データを設定する。一定の出力が得られない場合は、反応なしなどの表示を設定する。表示データを設定した後、ステップS27へ進む。表示データとしては、溶液Lの購入日、購入者、使用期限などをデータ記億部33から取り出して表示することも可能である。
【0106】
ステップS26が終了した後に、ステップS27へ進む。ステップS27では、図5(b)で示す表示コマンドフレームを組み立てる。表示コマンドはセンシングリクエストコマンド内の表示コマンドデータ部に組み込まれている。表示データ408の表示データ部にステップS26で設定した表示データと表示データ長を設定する。フレームが完成するとステップS28へ進む。なお、SOF、CRC、EOFは、制御部32で計算されフレームが組み立てられる。
【0107】
ステップS28では、ステップS27で組み立てた表示コマンドをデータ送信部31へ転送し、負荷変調信号を使用して外側タグ6へ送信し、処理を終了する。
【0108】
図8は、表示部37が実装された外側タグ6において表示コマンドに対する処理を示すフローチャートである。
【0109】
具体的に、ステップS31では、自分宛てのコマンドであることを確認して受信し、ステップS38へ進む。
【0110】
ステップS38では、受信した表示コマンドがCRCエラーであるかを確認する。CRCエラーである場合は、ステップS39に進み、図5(c)に示すエラーコード410とFLAGS409にエラー内容を設定し、ステップS36に進む。CRCエラーでない場合はステップS32へ進む。
【0111】
ステップS32では、表示コマンドであるかを確認する。表示コマンドでない場合は、ステップS33へ進み、通常コマンドとして処理を行い終了する。なお、ステップS33では、ISO/IEC18000−3又はSO/IEC15693に準拠した内容で処理が行われる。表示コマンドである場合は、ステップS34へ進む。
【0112】
ステップS34では、図5(b)に示す表示コマンドの表示データ408から表示部37に表示するデータを取り出し、ステップS35へ進む。そして、ステップS35では、ステップS34で取り出した表示データを表示処理部36へ転送し、表示部37ヘデータを表示させ、ステップS36へ進む。そして、ステップS36では、図5(c)又は図5(d)に示すリーダライタ2へ返信するセンシングレスポンスコマンドのフレームを組み立てる。すなわち、エラーがある場合は、図5(c)のフレームを組み立て、エラーがない場合は、図5(d)のフレームを組み立て、S37へ進む。
【0113】
ステップS37では、ステップS36で組み立てたセンシングレスポンスコマンドをデータ送信部31へ転送し、リーダライタ2ヘデータを送信して処理を終了する。
【0114】
以上のような第1の実施形態に示す非接触データ通信システム1によれば、以下の効果を得ることが可能である。
(1) 非接触ICタグ7に検出部35と表示部37を搭載して非接触ICタグ7を取り替えることなく表示を書き換えることで、非接触ICタグ7の廃棄を最小限することが可能であり、また、近接した距離で非接触ICタグ7同士が直接通信することで特殊構造の必要のない非接触ICタグ7を構成できるため、コストの削減が可能である。
(2) 非接触ICタグ7の検出部35で直接検出した溶液Lの内容を表示することで、表示内容の信憑性を高め、容器4を扱う使用者の安全性を高めることが可能である。
【0115】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について、図9を参照しながら説明する。
なお、以下の説明では、上記第1の実施形態と同等の部分については説明を省略し、同じ符号を付すものとする。
【0116】
第2の実施形態として示す非接触データ通信システム1は、リーダライタ2から非接触ICタグ7ヘアクセスコードを設定して、アクセスコードが非接触ICタグ7に予め設定してあるコードと一致したときに、検出部35であるセンサからデータを取り込む。そして、アクセスコードが一致しない場合は、リーダライタ2がアクセスしてきた記録を表示データとして表示部37に表示するところが、第1の実施形態と異なる部分である。したがって、リーダライタ2及び非接触ICタグ7の構成は、第1の実施形態の場合と同様である。
【0117】
図9は、リーダライタ2から非接触ICタグ7ヘセンシングリクエストコマンドを送信してからレスポンスを受信するまでの処理を示すフローチャートである。
なお、図9は、上記第1の実施形態の図6に示すフローチャートに対応しており、異なるのはステップS46とステップS47である。したがって、図6に示すフローチャートと同様の部分については説明を省略するものとする。
【0118】
具体的に、ステップS41からステップS44では、データ受信部30を介してリーダライタ2からのセンシングリクエストコマンドを受信する。このとき、リーダライタ2からアクセス記録情報を受信し(図示しない)、CRCエラーでない場合は、データ記億部33で記憶する。
【0119】
そして、ステップS46では、図5(a)に示したセンシングリクエストコマンドのコマンドコード401内に設定してあるアクセスコードを取り出す。センシングコマンドコード401は、1バイトで構成されているが、上位4ビットにアクセスコードが設定されている(図示しない)。アクセスコードの設定は、図6に示すフローチャートのステップS12で設定する。この4ビットのアクセスコードは、非接触ICタグ7のデータ記億部33に予め設定してあるアクセスコードと比較される。アクセスコードが一致している場合は、ステップS48に進み、検出部35である酵素センサでセンシングする。一方、一致していない場合は、不正なアクセスと判断し、ステップS47へ進む。
【0120】
ステップS47では、リーダライタ2が不正にアクセスしてきたと判断し、データ記億部33からアクセス記録を取り出し、図5(b)の表示データ408に設定し、ステップS51へ進む。アクセス記録としては、日時、アクセスしたリーダライタ名、アクセス者などを設定することが可能である。また、表示色を変更させたり、文字だけでなく画像データの表示や文字のバックカラーを変更させることで表示させることも可能である。
【0121】
ステップS51では、図5(b)の表示コマンドフレームを組み立て、ステップS52で表示部37が実装された外側タグ6へ送信して処理を終了する。
【0122】
以上のような第2の実施形態に示す非接触データ通信システム1によれば、以下の効果を得ることが可能である。
(3) 非接触ICタグ7は、アクセスコードによりリーダライタ2からのアクセスを制限している。すなわち、非接触ICタグ7は、不正なアクセスがあった場合、制限されたリーダライタ2とのみアクセスすることができる。したがって、非接触ICタグ7は、不正にデータが読み出されたり、書き込まれたりすることを防止することが可能である。また、同時にリーダライタ2から非接触ICタグ7へのアクセス記録(日時、アクセス装置名、アクセス者など)や溶液Lの購入日、使用期限などを表示し容器4を目視することで、使用者が誤った情報で取り扱わないよう目視で確認でき、安全性を高めることも可能である。
【0123】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態について説明する。
なお、以下の説明では、上記第1の実施形態と同等の部分については説明を省略し、同じ符号を付すものとする。
【0124】
第3の実施形態として示す非接触データ通信システムは、機能の異なる複数の外側タグ6を用意し、希望する機能に合わせて外側タグ6を交換し、交換された外側タグ6が、内側タグ5から送信されたデータに基づいて、それぞれの機能に応じた処理を行うことを特徴とするものである。なお、ここで言う機能とは、上述した容器4に収容された液体を検出する機能だけでなく、非接触データ通信を行う上で有効な様々な機能を言う。
【0125】
この非接触データ通信システムによれば、機能の異なる複数の外側タグ6を用意し、希望する機能に合わせて外側タグ6を交換するだけで、あたかも非接触ICタグの機能が追加又は変更されたように見せることができる。また、この非接触データ通信システムによれば、事前に複数の機能を非接触ICタグ7に持たせることなく非接触ICタグ7の機能を追加又は変更することができるので、非接触ICタグ7のコストダウンが期待できる。
【0126】
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態について説明する。
なお、以下の説明では、上記第1の実施形態と同等の部分については説明を省略し、同じ符号を付すものとする。
【0127】
第4の実施形態として示す非接触データ通信システムは、識別子が異なる複数の第1の非接触ICタグの識別子情報を第2の非接触ICタグに予め登録しておき、第2の非接触ICタグが、登録された識別子を有する第1の非接触ICタグから送信されたデータに基づいて、表示部の表示を行うことを特徴とするものである。
【0128】
具体的に、上記非接触データ通信システム1において、容器4を前後に並べて保管する場合を例に挙げて説明する。
上記非接触データ通信システム1では、上述したように、容器4を管理するため、容器4毎に固有の識別ID番号を有する非接触ICタグ7が取り付けられている。また、各容器4の非接触ICタグ7は、容器4毎に登録された識別ID番号を自身の識別ID番号だけでなく、他の容器4の識別ID番号についても予め登録しておく。
【0129】
この場合、一の容器4に取り付けられた非接触ICタグ7が、他の容器4から送信されたデータを受信すると、予め登録された識別ID番号の中から、データを送信した容器4を特定する。そして、このデータを送信した容器4が特定された場合には、その受信したデータに基づて表示部2gの表示を行う。したがって、容器4を前後に並べて保管する場合に、奥に置いた容器4の非接触ICタグ7から送信されたデータに基づく表示を手前に置いた別の容器4の表示部2gに行わせることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】非接触データ通信システムの一構成例を示すブロック図である。
【図2】リーダライタの一構成例を示すブロック図である。
【図3】非接触ICタグの一構成例を示すブロック図である。
【図4】非接触ICタグの構造を示す透視平面図である。
【図5】リーダライタと非接触ICタグとの間で通信するデータフレームを示す図である。
【図6】リーダライタのセンシングリクエストコマンドに対する処理を示すフローチャートである。
【図7】非接触ICタグのセンシングリクエストコマンドに対する応答処理を示すフローチャートである。
【図8】非接触ICタグの表示コマンドに対する応答処理を示すフローチャートである。
【図9】非接触ICタグのセンシングリクエストコマンドに対する応答処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0131】
1…非接触データ通信システム、 2…リーダライタ、 3…非接触ICタグ、 4…容器、 5…内側タグ(第1の非接触ICタグ)、 6…外側タグ(第2の非接触ICタグ)、 7…非接触ICタグ、 2a…データ受信部、 2b…データ送信部、 2c…制御部、 2d…操作部、 2e…RAM、 2f…ROM、 2g…表示部、 2h…アンテナ、 30…データ受信部、 31…データ送信部、 32…データ制御部、 33…データ記億部、 34…データ判定部、 35…検出部、 36…表示処理部、 37…表示部、 38…電源生成部、 39…コイルアンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固有の識別子が登録された第1及び第2の非接触ICタグと、前記第1及び第2の非接触ICタグに対して非接触状態でデータの読み出し及び書き込みを行うリーダライタとを備え、前記第1及び第2の非接触ICタグと前記リーダライタとの間で誘導電磁界を利用した非接触データ通信を行う非接触データ通信システムであって、
前記第1の非接触ICタグは、データの検出を行うデータ検出部と、前記データ検出部で検出されたデータを判定するデータ判定部と、前記データ判定部で判定した判定結果を前記第2の非接触ICタグに送信するデータ送信部とを有し、
前記第2の非接触ICタグは、前記第1の非接触ICタグから送信されたデータを受信するデータ受信部と、前記データ受信部で受信したデータに基づいて表示を行う表示部とを有し、
前記第1の非接触ICタグは、前記リーダライタが発生する誘導電磁界から電力を生成し、この電力を利用して前記第2の非接触ICタグと通信を行うことを特徴とする非接触データ通信システム。
【請求項2】
前記データ検出部は、容器に収容された液体を検出するセンサを備え、このセンサが検出したデータに基づいて前記データ判定部が前記液体の種類を判定することを特徴とする請求項1に記載の非接触データ通信システム。
【請求項3】
前記第1の非接触ICタグが前記容器の内側に、前記第2の非接触ICタグが前記容器の外側に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の非接触データ通信システム。
【請求項4】
前記リーダライタは、前記第1の非接触ICタグが前記第2の非接触ICタグと通信している間、前記第1の非接触ICタグに前記第2の非接触ICタグの機能が追加されたとみなすことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の非接触データ通信システム。
【請求項5】
機能の異なる複数の第2の非接触ICタグを用意し、希望する機能に合わせて前記第2の非接触ICタグを交換し、前記交換された第2の非接触ICタグは、前記第1の非接触ICタグから送信されたデータに基づいて、それぞれの機能に応じた処理を行うことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の非接触データ通信システム。
【請求項6】
前記識別子が異なる複数の第1の非接触ICタグの識別子情報を前記第2の非接触ICタグに予め登録しておき、前記第2の非接触ICタグは、前記登録された識別子を有する第1の非接触ICタグから送信されたデータに基づいて、前記表示部の表示を行うことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の非接触データ通信システム。
【請求項7】
固有の識別子が登録され、リーダライタが発生する誘導電磁界から電力を生成し、この電力を利用して、前記リーダライタ又は別の非接触ICタグと非接触データ通信を行う非接触ICタグであって、
データの検出を行うデータ検出部と、前記データ検出部で検出されたデータを判定するデータ判定部と、前記データ判定部で判定した判定結果を前記別の非接触ICタグに送信するデータ送信部とを有することを特徴とする非接触ICタグ。
【請求項8】
固有の識別子が登録され、リーダライタが発生する誘導電磁界から電力を生成し、前記電力を利用して、前記リーダライタ又は別の非接触ICタグと非接触データ通信を行う非接触ICタグであって、
前記リーダライタ又は別の非接触ICタグから送信されたデータを受信するデータ受信部と、前記データ受信部で受信したデータに基づいて表示を行う表示部とを備えることを特徴とする非接触ICタグ。
【請求項9】
前記表示部は、無電力状態で表示を保持するメモリ性の表示装置を備えることを特徴とする請求項8に記載の非接触ICタグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−97585(P2008−97585A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208973(P2007−208973)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】