説明

非接触型データ受送信体の製造方法

【課題】耐薬品性、耐候性、耐熱性および柔軟性に優れ、さらには、アンテナに生じる通信特性の低下を防止した非接触型データ受送信体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の非接触型データ受送信体の製造方法は、インレットおよびこれを被覆する接着材と、これを介してインレットを挟む第一基材および第二基材と、を備え、凹部と凸部が交互に連続して設けられて断面が凹凸形状をなす樹脂基材のそれぞれの凸部の上面に、インレットを、粘着材を介して貼着する工程と、凸部の上面に配されたインレットを覆うように、接着材を塗布する工程と、樹脂基材とインレットからなる積層体に、第二基材を、接着材を介して重ね合わせる工程と、接着材を硬化させる工程と、樹脂基材、インレット、接着材および第二基材からなる積層体を、インレットの形状に合わせて裁断する工程と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID(Radio Frequency IDentification)用途の情報記録メディアのように、電磁波を媒体として外部から情報を受信し、また外部に情報を送信できるようにした非接触型データ受送信体の製造方法に関し、特に、耐候性、耐熱性および柔軟性に優れ、さらには、通信特性に優れる非接触型データ受送信体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触型データ受送信体の一例であるICタグは、基材と、その一方の面に設けられ互いに接続されたアンテナおよびICチップとから構成されるインレットを備えており、13.56MHz帯で使用するICタグは、情報書込/読出装置からの電磁波を受信すると共振作用によりアンテナに起電力が発生し、この起電力によりICタグ内のICチップが起動し、このICチップ内の情報を信号化し、この信号がICタグのアンテナから発信される。
ICタグから発信された信号は、情報書込/読出装置のアンテナで受信され、コントローラーを介してデータ処理装置へ送られ、識別などのデータ処理が行われる。
【0003】
このようなICタグを耐熱性、耐候性および柔軟性に優れたものとするために、インレットを、シリコーン樹脂やポリテトラフルオロエチレン樹脂などからなる樹脂フィルムによって被覆して樹脂でモールドし、パッケージ化したICタグが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、インレットをエポキシ樹脂などの樹脂のみでモールドし、パッケージ化したICタグが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−24783号公報
【特許文献2】特開2002−312747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような樹脂モールドでは、インレットを、その両面から樹脂フィルムで挟み、この樹脂フィルムを、一対の熱ロールで加熱、加圧することにより溶融接着しているため、この際、インレットに過剰な圧力や温度が加えられたり、樹脂フィルムが収縮したりするので、インレットを構成するICチップが破損することや、劣化することがあるという問題があった。
また、加熱により、インレットを構成する基材も収縮して、アンテナの通信特性が低下するという問題があった。
さらに、シリコーン樹脂は、他の樹脂や金属などと接着し難いばかりでなく、このパッケージ化したICタグの製造方法では、インレットと樹脂フィルムとの接合は、固体同士の接合であるため、両者の密着度が低いという問題があった。したがって、このICタグの曲げを繰り返すと、インレットと樹脂フィルムとの界面で剥離するおそれがあった。
【0005】
また、インレットをエポキシ樹脂などの樹脂のみでモールドした場合、樹脂が硬化する際の収縮により、インレットを構成するICチップやアンテナが破損したり、劣化するばかりでなく、モールド樹脂内において、インレットを基準面(例えば、パッケージの外面の1つ)に対して平行な状態で固定することが難しく、アンテナの通信特性が低下することがあるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、耐薬品性、耐候性、耐熱性および柔軟性に優れ、さらには、アンテナに生じる通信特性の低下を防止した非接触型データ受送信体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の非接触型データ受送信体の製造方法は、インレットと、該インレットを被覆する接着材と、該接着材を介して前記インレットを挟む第一基材および第二基材と、を備えた非接触型データ受送信体の製造方法であって、凹部と凸部が交互に連続して設けられて断面が凹凸形状をなし、前記第一基材となる樹脂基材のそれぞれの凸部の上面に、前記インレットを、粘着材を介して貼着する工程と、前記凸部の上面に配されたインレットを覆うように、前記接着材を塗布する工程と、前記樹脂基材と前記インレットからなる積層体に、第二基材を、前記接着材を介して重ね合わせる工程と、前記接着材を硬化させる工程と、前記樹脂基材、前記インレット、前記接着材および前記第二基材からなる積層体を、前記インレットの形状に合わせて裁断する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の非接触型データ受送信体の製造方法は、インレットと、該インレットを被覆する接着材と、該接着材を介して前記インレットを挟む第一基材および第二基材と、を備えた非接触型データ受送信体の製造方法であって、凹部と凸部が交互に連続して設けられて断面が凹凸形状をなし、前記第一基材となる樹脂基材のそれぞれの凸部の上面に、前記インレットを、粘着材を介して貼着する工程と、前記凸部の上面に配されたインレットを覆うように、前記接着材を塗布する工程と、前記樹脂基材と前記インレットからなる積層体に、第二基材を、前記接着材を介して重ね合わせて、押圧する工程と、前記接着材を硬化させる工程と、前記樹脂基材、前記インレット、前記接着材および前記第二基材からなる積層体を、前記インレットの形状に合わせて裁断する工程と、を有するので、硬化前は液体の液状シリコーンからなる接着材がインレットの外形形状に追従し、インレットの外面を隙間なく被覆するとともに、接着材から揮発した溶媒が、樹脂基材の凹部、接着材および第二基材からなる空間を流路として外部へ放出され、接着材を短時間に十分に硬化させることができるから、インレットと接着材との密着度、並びに、接着材と第一基材および第二基材との密着度の高い非接触型データ受送信体を製造することができる。また、液状シリコーンと親和性の高い固体のシリコーンゴムまたは加硫ゴムからなる第一基材および第二基材により、液状シリコーンで被覆したインレットを挟み込むので、接着材と第一基材および第二基材との密着度を高くすることができる。したがって、本発明の非接触型データ受送信体の製造方法によって得られた非接触型データ受送信体は、曲げを繰り返しても、インレットと接着材との界面、並びに、接着材と第一基材および第二基材との界面で剥離するという不具合が生じることがなく、柔軟性に優れている。また、本発明の非接触型データ受送信体の製造方法によって得られた非接触型データ受送信体は、前記のように構成部材間の密着度が高いから、外部からインレットに、水、油、薬品などが浸入することが防止され、耐薬品性および耐候性に優れている。さらに、インレットが、基準面となる第一基材の一方の面および第二基材の一方の面に沿って固定されるから、アンテナの通信特性が低下することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の非接触型データ受送信体の製造方法の最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0010】
本発明の非接触型データ受送信体の製造方法は、インレットと、該インレットを被覆する接着材と、該接着材を介して前記インレットを挟む第一基材および第二基材と、を備えた非接触型データ受送信体の製造方法であって、凹部と凸部が交互に連続して設けられて断面が凹凸形状をなし、前記第一基材となる樹脂基材のそれぞれの凸部の上面に、前記インレットを、粘着材を介して貼着する工程と、前記凸部の上面に配されたインレットを覆うように、前記接着材を塗布する工程と、前記樹脂基材と前記インレットからなる積層体に、第二基材を、前記接着材を介して重ね合わせて、押圧する工程と、前記接着材を硬化させる工程と、前記樹脂基材、前記インレット、前記接着材および前記第二基材からなる積層体を、前記インレットの形状に合わせて裁断する工程と、を有する方法である。
【0011】
以下、図1〜5を参照して、本発明の非接触型データ受送信体の製造方法の一実施形態を説明する。
まず、図1に示すように、凹部12と凸部13が交互に、かつ、並列に連続して設けられ、凹部12と凸部13の長手方向と垂直な断面が凹凸形状をなす樹脂基材11を用意する。
凹部12の形状およびその大きさ(深さ)は、特に限定されないが、後述する第二基材を重ね合わせる工程にて、インレットに塗布した接着材の余剰分が流入しても、樹脂基材11と第二基材との間に十分な空間(空隙)が確保できるものとする。
【0012】
凸部13の上面13aの形状およびその大きさは、上面13a上に貼着されるインレットの形状およびその大きさに応じて適宜決定され、形状としては、例えば、図1(a)において平面視した場合、正方形、長方形状などが挙げられる。
また、凸部13の断面形状は、その上面13aが、樹脂基材11の底面11aと平行な平面をなすものとする。
さらに、凸部13の厚みは、樹脂基材11を加工して得られる第一基材に必要とされる厚みとすることが好ましい。
【0013】
樹脂基材11としては、弾性および可撓性を有するシリコーンゴムまたは加硫ゴムが用いられ、耐候性、耐熱性、耐薬品性、柔軟性などに優れる点から、シリコーンゴムが好適に用いられる。
シリコーンゴムとしては、ミラブル型タイプの何れでもよく、例えば、東レ・ダウコーニング社製の熱加硫型のシリコーンコンパウンドが用いられ、その製品名としては、「SH831U」、「SH841U」、「SH851U」、「SH861U」、「SH871U」、「SH881U」、「SH35U」、「SH55UA」、「SH75UN」、「SE4705U」、「SE4706U」、「SE1185U」、「SE1186U」、「SE1187U」、「SH502U A/B」、「DY32−1005U」、「DY32−1000U」、「DY32−5013U」、「DY32−6014U」、「DY32−7040U」、「DY32−8013U」、「SH745U」、「SH746U」、「SH747U」などが挙げられる。
加硫ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン・プロピレンゴム(EPM、EPDM)、ウレタンゴム(U)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、アクリルゴム(ACM)、エピクロドリンゴム(CO、ECO)、フッ素ゴム(FKM)などのゴムを加硫したものが挙げられる。
また、樹脂基材11は、無色あるいは有色のいずれであっても、また、透明あるいは不透明のいずれであってもよく、非接触型データ受送信体の用途に応じて、適宜調整される。
【0014】
次いで、図2に示すように、樹脂基材11のそれぞれの凸部13の上面13aに、インレット20を、粘着材31を介して貼着する。
この工程では、インレット20の基材21におけるICチップ22が実装されている面(一方の面)21aを上面(非貼着面)とし、凸部13の上面13aに、その形状に沿って、インレット20を貼着する。
【0015】
インレット20は、基材21と、ICチップ22と、アンテナ23とから概略構成されている。また、ICチップ22およびアンテナ23は、基材21の一方の面21aに設けられ、互いに電気的に接続されている。
アンテナ23は、各種導電体からなり、互いに対向し、その対向する側にそれぞれ給電点(ICチップ22と接続している部分)を有する一対の放射素子24,25と、放射素子24,25の給電点近傍を短絡する短絡部26とからなるダイポールアンテナである。
アンテナ23の長手方向における長さは、非接触ICカードなどの非接触ICモジュールに利用できる極超短波帯〈UHF〉やマイクロ波帯の電波帯の周波数(300MHz〜30GHz)の1/2波長に相当する長さとなっている。すなわち、放射素子24,25の長手方向における長さは、1/4波長に相当する長さとなっている。
【0016】
インレット20の基材21としては、少なくとも表層部には、ガラス繊維、アルミナ繊維などの無機繊維からなる織布、不織布、マット、紙などまたはこれらを組み合わせたもの、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの有機繊維からなる織布、不織布、マット、紙などまたはこれらを組み合わせたものや、あるいはこれらに樹脂ワニスを含浸させて成形した被覆部材や、ポリアミド系樹脂基材、ポリエステル系樹脂基材、ポリオレフィン系樹脂基材、ポリイミド系樹脂基材、エチレン−ビニルアルコール共重合体基材、ポリビニルアルコール系樹脂基材、ポリ塩化ビニル系樹脂基材、ポリ塩化ビニリデン系樹脂基材、ポリスチレン系樹脂基材、ポリカーボネート系樹脂基材、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合系樹脂基材、ポリエーテルスルホン系樹脂基材、(ガラス)エポキシ樹脂基材などのプラスチック基材や、あるいはこれらにマット処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、フレームプラズマ処理、オゾン処理、または各種易接着処理などの表面処理を施したものなどの公知のものから選択して用いられる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレートまたはポリイミドからなる電気絶縁性のフィルムまたはシートが好適に用いられる。
【0017】
ICチップ22としては、特に限定されず、アンテナ23を介して非接触状態にて情報の書き込みおよび読み出しが可能なものであれば、非接触型ICタグや非接触型ICラベル、あるいは非接触型ICカードなどのRFIDメディアに適用可能なものであればいかなるものでも用いられる。
【0018】
アンテナ23は、基材21の一方の面21aにポリマー型導電インクを用いて所定のパターン状にスクリーン印刷により形成されてなるものか、もしくは、導電性箔をエッチングしてなるもの、金属メッキしてなるものである。
【0019】
ポリマー型導電インクとしては、例えば、銀粉末、金粉末、白金粉末、アルミニウム粉末、パラジウム粉末、ロジウム粉末、カーボン粉末(カーボンブラック、カーボンナノチューブなど)などの導電微粒子が樹脂組成物に配合されたものが挙げられる。
【0020】
樹脂組成物として熱硬化型樹脂を用いれば、ポリマー型導電インクは、200℃以下、例えば100〜150℃程度でアンテナ23をなす塗膜を形成することができる熱硬化型となる。アンテナ23をなす塗膜の電気の流れる経路は、塗膜をなす導電微粒子が互いに接触することによる形成され、この塗膜の抵抗値は10-5Ω・cmオーダーである。
また、本発明におけるポリマー型導電インクとしては、熱硬化型の他にも、光硬化型、浸透乾燥型、溶剤揮発型といった公知のものが用いられる。
【0021】
光硬化型のポリマー型導電インクは、光硬化性樹脂を樹脂組成物に含むものであり、硬化時間が短いので、製造効率を向上させることができる。光硬化型のポリマー型導電インクとしては、例えば、熱可塑性樹脂のみ、あるいは熱可塑性樹脂と架橋性樹脂(特にポリエステルとイソシアネートによる架橋系樹脂など)とのブレンド樹脂組成物に、導電微粒子が60質量%以上配合され、ポリエステル樹脂が10質量%以上配合されたもの、すなわち、溶剤揮発型かあるいは架橋/熱可塑併用型(ただし熱可塑型が50質量%以上である)のものや、熱可塑性樹脂のみ、あるいは熱可塑性樹脂と架橋性樹脂(特にポリエステルとイソシアネートによる架橋系樹脂など)とのブレンド樹脂組成物に、ポリエステル樹脂が10質量%以上配合されたもの、すなわち、架橋型かあるいは架橋/熱可塑併用型のものなどが好適に用いられる。
【0022】
また、アンテナ23をなす導電性箔としては、銅箔、銀箔、金箔、白金箔、アルミニウム箔などが挙げられる。
さらに、アンテナ23をなす金属メッキとしては、銅メッキ、銀メッキ、金メッキ、白金メッキなどが挙げられる。
【0023】
なお、この実施形態では、アンテナ23がダイポールアンテナであるインレット20を例示したが、本発明の非接触型データ受送信体の製造方法はこれに限定されない。本発明の非接触型データ受送信体の製造方法にあっては、アンテナがモノポールアンテナ、クロスダイポールアンテナなどであってもよい。
【0024】
粘着材31としては、特に限定されないが、液体と固体の両方の性質を有し、常に濡れた状態にあり、流動性が低く、それ自体の形状を保持する粘着材が用いられる。このような粘着材としては、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、天然ゴム系粘着材、合成ゴム系粘着材、ホットメルト粘着材などが挙げられる。
【0025】
次いで、図3に示すように、樹脂基材11の凸部13の上面13aに配されたインレット20の外面のほぼ全部を覆うように、接着材32を塗布する。
この工程では、接着材32の塗布量を、インレット20の外面を完全に被覆することができる量以上であるとともに、基材21の一方の面21aに実装されたICチップ22を完全に覆うことができる量以上とする。
【0026】
接着材32としては、液状シリコーンゴムが用いられる。この液状シリコーンゴムは、室温あるいは低温加熱により、ゴム状に硬化するものであり、硬化速度が比較的速いものである。
液状シリコーンとしては、硬化時にICチップ22が劣化するのを防止するために、硬化温度が室温以上、40℃以下のものが好ましく、例えば、東レ・ダウコーニング社製の各種グレードのものが用いられ、製品名としては、例えば、「SE9185」、「SE9186」、「SE9186L」、「SE9206L」などが挙げられる。
【0027】
このような液状シリコーンゴムとしては、液状シリコーンゴムの各種グレードの全般の何れでもよく、例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の各種グレードのものが用いられ、製品名としては、例えば、「TSE392」、「TSE3925」、「TSE3940」、「TSE3941」、「TSE3945」、「TSE3946」、「XE11-B5320」、「XE11-A5133S」、「TSE3944」、「TSE3853-W」、「TSE3971」、「TSE3976-B」、「TSE397」などが挙げられる。
【0028】
次いで、図4に示すように、樹脂基材11とインレット20からなる積層体に、第二基材33を、接着材32を介して重ね合わせて、押圧する。
これにより、樹脂基材11の凸部13と第二基材33との間のインレット20の外面が、接着材32により隙間なく被覆されるとともに、接着材32の余剰分が樹脂基材11の凹部12内に流入する。
なお、樹脂基材11の凹部12、接着材32および第二基材33からなる空間(空隙)は、接着材32の余剰分が流入しても塞がれることなく、後述する接着材32を硬化させる工程にて、接着材32に含まれていた溶媒が揮発して、外部へ放出されるために十分な流路を確保することができるようになっている。
【0029】
第二基材33としては、上記の樹脂基材11と同様のものが用いられる。
また、第二基材33は、無色あるいは有色のいずれであっても、また、透明あるいは不透明のいずれであってもよく、非接触型データ受送信体の用途に応じて、適宜調整される。
【0030】
次いで、樹脂基材11、インレット20、接着材32および第二基材33から構成される積層体を、室温にて30分〜48時間程度放置するか、あるいは、30℃〜60℃にて30分〜24時間程度加熱し、溶媒を揮発させることにより接着材32を硬化させ、図5に示すように、この積層体を一体化させる。
この時、接着材32から揮発した溶媒は、樹脂基材11の凹部12、接着材32および第二基材33からなる空間を流路として、外部へ放出される。
また、樹脂基材11の凹部12内に流入した接着材32の余剰分34は、凹部12内にて硬化する。
【0031】
次いで、樹脂基材11、インレット20、接着材32および第二基材33から構成される積層体を、インレット20の形状に合わせて、この積層体の厚み方向、すなわち、図5のα−α線およびβ−β線に沿って裁断し、例えば、図6に示すような所定の形状の非接触型データ受送信体を得る。
上記の積層体の裁断方法としては、特に限定されないが、打ち抜き加工法、切削加工、油圧式プレス加工、油圧式自動プレス加工、はさみ、カッターを用いた裁断などが用いられる。
また、積層体の裁断と同時、または、裁断後に、樹脂基材11、接着材32および第二基材33の厚み方向に貫通し、インレット20を挟んで一対の取付孔を形成してもよい。この取付孔は、取り付け対象となる物品に非接触型データ受送信体を取り付けるために用いられる。
【0032】
図6は、この実施形態の非接触型データ受送信体の製造方法によって得られた非接触型データ受送信体の一実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のD−D線に沿う断面図である。
この非接触型データ受送信体40は、インレット20と、このインレット20を被覆する接着材32と、この接着材32を介してインレット20を挟む第一基材33および第二基材14とから概略構成されている。
第二基材14は、上記の裁断によって、樹脂基材11を所定の形状および大きさに加工したものである。
【0033】
非接触型データ受送信体40では、インレット20が、第一基材14の一方の面14aに、粘着材31を介して貼着された状態で、接着材32によりその外面が被覆されている。また、インレット20の外面は、接着材32により、隙間なく(インレット20と接着材32の間に隙間なく)被覆されている。
さらに、インレット20、第一基材14および第二基材33が、接着材32を介して接合され、一体化されている。
これにより、インレット20が、第一基材14の一方の面14aおよび第二基材33の一方の面33aに沿って固定されている。
【0034】
この実施形態の非接触型データ受送信体の製造方法は、断面が凹凸形状をなし、第一基材14となる樹脂基材11のそれぞれの凸部13の上面13aに、インレット20を、粘着材31を介して貼着する工程と、凸部13の上面13aに配されたインレット20を覆うように、接着材32を塗布する工程と、樹脂基材11とインレット20からなる積層体に、第二基材33を、接着材32を介して重ね合わせて、押圧する工程と、接着材32を硬化させる工程と、樹脂基材11、インレット20、接着材32および第二基材33からなる積層体を、インレット20の形状に合わせて裁断する工程と、を有するので、硬化前は液体の液状シリコーンからなる接着材32がインレット20の外形形状に追従し、インレット20の外面を隙間なく被覆するとともに、接着材32から揮発した溶媒が、樹脂基材11の凹部12、接着材32および第二基材33からなる空間を流路として外部へ放出され、接着材32を短時間に十分に硬化させることができるから、インレット20と接着材32との密着度、並びに、接着材32と第一基材14および第二基材33との密着度の高い非接触型データ受送信体40を製造することができる。また、液状シリコーンと親和性の高い固体のシリコーンゴムまたは加硫ゴムからなる第一基材14および第二基材33により、液状シリコーンで被覆したインレット20を挟み込むので、接着材32と第一基材14および第二基材33との密着度を高くすることができる。したがって、この実施形態の非接触型データ受送信体の製造方法によって得られた非接触型データ受送信体40は、曲げを繰り返しても、インレット20と接着材32との界面、並びに、接着材32と第一基材14および第二基材33との界面で剥離するという不具合が生じることがなく、柔軟性に優れている。また、非接触型データ受送信体40は、前記のように構成部材間の密着度が高いから、外部からインレット20に、水、油、薬品などが浸入することが防止され、耐薬品性および耐候性に優れている。さらに、インレット20が、基準面となる第一基材14の一方の面14aおよび第二基材33の一方の面33aに沿って固定されるから、アンテナ21の通信特性が低下することがない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の非接触型データ受送信体の製造方法により得られる非接触型データ受送信体は、非金属物質の他に、金属物品や水分を含む物品へ直接貼付する用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の非接触型データ受送信体の製造方法の一実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図である。
【図2】本発明の非接触型データ受送信体の製造方法の一実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線に沿う断面図である。
【図3】本発明の非接触型データ受送信体の製造方法の一実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のC−C線に沿う断面図である。
【図4】本発明の非接触型データ受送信体の製造方法の一実施形態を示す概略断面図である。
【図5】本発明の非接触型データ受送信体の製造方法の一実施形態を示す概略断面図である。
【図6】本発明の非接触型データ受送信体の製造方法によって得られた非接触型データ受送信体の一実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のD−D線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0037】
11・・・樹脂基材、12・・・凹部、13・・・凸部、14・・・第一基材、20・・・インレット、21・・・基材、22・・・ICチップ、23・・・アンテナ、24,25・・・放射素子、26・・・短絡部、31・・・粘着材、32・・・接着材、33・・・第二基材、40・・・非接触型データ受送信体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インレットと、該インレットを被覆する接着材と、該接着材を介して前記インレットを挟む第一基材および第二基材と、を備えた非接触型データ受送信体の製造方法であって、
凹部と凸部が交互に連続して設けられて断面が凹凸形状をなし、前記第一基材となる樹脂基材のそれぞれの凸部の上面に、前記インレットを、粘着材を介して貼着する工程と、
前記凸部の上面に配されたインレットを覆うように、前記接着材を塗布する工程と、
前記樹脂基材と前記インレットからなる積層体に、第二基材を、前記接着材を介して重ね合わせて、押圧する工程と、
前記接着材を硬化させる工程と、
前記樹脂基材、前記インレット、前記接着材および前記第二基材からなる積層体を、前記インレットの形状に合わせて裁断する工程と、を有することを特徴とする非接触型データ受送信体の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−238023(P2009−238023A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84816(P2008−84816)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【出願人】(507291556)共和工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】