説明

非接触型データ受送信体

【課題】種類の多い物品や、部品点数の多い製造装置の部品などの管理用途に適用した場合、容易に物品や部品を判別することができる非接触型データ受送信体を提供する。
【解決手段】ベース基材13とその一方の面13aに設けられ互いに接続されたアンテナ14およびICチップ15とからなるインレット11と、インレット11を覆うように設けられた被覆体12とを備え、断面形状が略垂直状に形成された凹部に嵌め込まれる非接触型データ受送信体10において、非接触型データ受送信体10はベース基材13の一方の面13aに設けられたアンテナ14に対して垂直な断面の形状が、凹部の底部から、対象物品の外表面に向かって次第に径が大きくなるテーパ状をなしているものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID(Radio Frequency IDentification)用途の情報記録メディアのように、電磁波を媒体として外部から情報を受信し、また外部に情報を送信できるようにした非接触型データ受送信体に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触型データ受送信体の一例であるICラベルは、ベース基材と、その一方の面に設けられ、互いに接続されたアンテナおよびICチップとから構成されるインレットを備えており、リーダ/ライタからの電磁波を受信すると共振作用によりアンテナに起電力が発生し、この起電力によりICラベル内のICチップが起動し、このICチップ内の情報を信号化し、この信号がICラベルのアンテナから発信される。
ICラベルから発信された信号は、リーダ/ライタのアンテナで受信され、コントローラーを介してデータ処理装置へ送られ、識別などのデータ処理が行われる。
【0003】
このようなICラベルなどの非接触型データ受送信体は、例えば、物品管理の用途などに用いられる。特に、非接触型データ受送信体を、種類の多い物品や、部品点数の多い製造装置の部品などの管理に適用すれば、物品自体を目視することなしに識別することができるため、物品の選定作業や在庫管理などの効率を上げることができるので、非常に有効である。
【0004】
しかしながら、従来、粘着剤を用いて、粘着剤の粘着力のみで、タグやシールなどを粘着するなどしていた(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−342727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
粘着剤の粘着力のみで、タグやシールなどを貼着する方法は、剥がれ無いように貼着力を強くすると正式に剥がす際に剥がし難く、また、反対に剥がれやすいように貼着力を弱くすると、剥がれては困る時に剥がれてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、種類の多い物品や、部品点数の多い製造装置の部品などの管理用途に適用した場合、容易にかつ必要なときに着脱することができる非接触型データ受送信体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る非接触型データ受送信体は、アンテナを搭載して非接触にて通信するインレットと、該インレットを覆うように設けられた被覆体とを備え、断面形状が略垂直状に形成された凹部に嵌め込まれる非接触型データ受送信体であって、前記非接触型データ受送信体は前記アンテナに対して垂直な断面の形状が、前記凹部の底部から外表面に向かって次第に径が大きくなるテーパ状をなしていることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2に係る非接触型データ受送信体は、前記非接触型データ受送信体の外側面には、前記凹部の底部に接する面から反対の面に渡る溝が少なくとも1つ設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の非接触型データ受送信体は、アンテナを搭載して非接触にて通信するインレットと、該インレットを覆うように設けられた被覆体とを備え、断面形状が略垂直状に形成された凹部に嵌め込まれる非接触型データ受送信体であって、前記非接触型データ受送信体は前記アンテナに対して垂直な断面の形状が、前記凹部の底部から外表面に向かって次第に径が大きくなるテーパ状をなしているので、非接触型データ受送信体を対象物品の凹部に容易に嵌め込むことができるとともに、一旦、非接触型データ受送信体が凹部に嵌め込まれると、外部から力が加えられても脱落し難い。
また、非接触型データ受送信体の外側面に、対象物品の凹部の底部に接する面から反対の面に渡る溝が設けられていれば、非接触型データ受送信体を対象物品の凹部に嵌め込む際に、非接触型データ受送信体と凹部との間に存在する空気などの気体を、溝を通して凹部の外部に排出することができる。したがって、非接触型データ受送信体を容易に対象物品の凹部に嵌め込むことができる。また、溝が設けられていれば、被覆体は撓みやすくなり、非接触型データ受送信体を容易に対象物品の凹部に嵌め込むことができる。さらに、対象物の凹部から非接触型データ受送信体を取り外す際には、溝に鉤状の物を引っ掛けることにより、非接触型データ受送信体を容易に取り外すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施した非接触型データ受送信体について詳細に説明する。
【0011】
(1)第一の実施形態
図1は、本発明に係る非接触型データ受送信体の第一の実施形態を示す概略断面図である。図2は、本発明に係る非接触型データ受送信体の使用方法を示す概略断面図である。
図1および2中、符号10は非接触型データ受送信体、11はインレット、12は被覆体、13はベース基材、14はアンテナ、15はICチップ、16は第一の被覆体、17は第二の被覆体をそれぞれ示し、図2中、符号20は対象物品、21は凹部を示している。
【0012】
この実施形態の非接触型データ受送信体10は、インレット11と、このインレット11を覆うように設けられた被覆体12とから概略構成されている。また、インレット11は、ベース基材13と、その一方の面13aに設けられ互いに接続されたアンテナ14およびICチップ15とから構成されている。また、被覆体12は、インレット11を収納するための収容部16aが設けられた第一の被覆体16と、この収容部16aに嵌合し、収容部16aに収納したインレット11を覆う第二の被覆体17とから構成されている。なお、また、第一の被覆体16は、接着剤(図示略)を介して、第二の被覆体17に接着固定されている。
【0013】
この非接触型データ受送信体10は、製造装置の部品などからなる対象物品20の外表面20aに形成され、この外表面20aと垂直な断面形状が略垂直状の凹部21に嵌め込まれて用いられる。そして、非接触型データ受送信体10はベース基材13の一方の面13aに設けられたアンテナ14に対して垂直な断面の形状が、凹部21の底部21aから、対象物品20(凹部21)の外表面20aに向かって次第に径が大きくなるテーパ状をなしている。すなわち、非接触型データ受送信体10は、ベース基材13の一方の面13aに設けられたアンテナ14に対して垂直な断面の形状が、一方の面10aから、一方の面10aとは反対の面10bに向かって次第に径が大きくなるテーパ状をなしている。
【0014】
さらに、この非接触型データ受送信体10では、面10bの外径をα、上記の凹部21の底部21aの内径をβ、面10aの外径をγとすると、α>β≧γとなっている。これにより、非接触型データ受送信体10を対象物品20の凹部21に容易に嵌め込むことができるとともに、一旦、非接触型データ受送信体10が凹部21に嵌め込まれると、外部から力が加えられても脱落し難い。
【0015】
インレット11において、アンテナ14は、ベース基材13の一方の面13aに所定の間隔をおいてICチップ15を介してコイル状に設けられている。さらに、ICチップ15の厚みは、アンテナ14の厚みよりも厚くなっている。
また、インレット11において、インレット11を構成するアンテナ14とICチップ15が互いに接続されるとは、アンテナ14の端部がICチップ15の両極端子にそれぞれ接続されることである。
【0016】
ベース基材13としては、少なくとも表層部には、ガラス繊維、アルミナ繊維などの無機繊維からなる織布、不織布、マット、紙などまたはこれらを組み合わせたもの、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの有機繊維からなる織布、不織布、マット、紙などまたはこれを組み合わせたものや、あるいはこれらに樹脂ワニスを含浸させて成形した複合基材や、ポリアミド系樹脂基材、ポリエステル系樹脂基材、ポリオレフィン系樹脂基材、ポリイミド系樹脂基材、エチレン−ビニルアルコール共重合体基材、ポリビニルアルコール系樹脂基材、ポリ塩化ビニル系樹脂基材、ポリ塩化ビニリデン系樹脂基材、ポリスチレン系樹脂基材、ポリカーボネート系樹脂基材、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体系樹脂基材、ポリエーテルスルホン系樹脂基材などのプラスチック基材や、あるいはこれらにマット処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、フレームプラズマ処理、オゾン処理、または各種易接着処理などの表面処理を施したものなどの公知のものから選択して用いられる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレートまたはポリイミドからなる電気絶縁性のフィルムまたはシートが好適に用いられる。
【0017】
アンテナ14は、ベース基材13の一方の面13aにポリマー型導電インクを用いて所定のパターン状にスクリーン印刷により形成されてなるものか、もしくは、導電性箔をエッチングしてなるものである。
【0018】
本発明におけるポリマー型導電インクとしては、例えば、銀粉末、金粉末、白金粉末、アルミニウム粉末、パラジウム粉末、ロジウム粉末、カーボン粉末(カーボンブラック、カーボンナノチューブなど)などの導電微粒子が樹脂組成物に配合されたものが挙げられる。
【0019】
樹脂組成物として熱硬化型樹脂を用いれば、ポリマー型インクは、200℃以下、例えば、100〜150℃程度でアンテナをなす塗膜を形成することができる熱硬化型となる。アンテナをなす塗膜の電気の流れる経路は、塗膜をなす導電微粒子が互いに接触することにより形成され、この塗膜の抵抗値は10−5Ω・cmオーダーである。
【0020】
また、本発明におけるポリマー型導電インクとしては、熱硬化型の他にも、光硬化型、浸透乾燥型、溶剤揮発型といった公知のものが用いられる。
【0021】
光硬化型のポリマー型導電インクは、光硬化性樹脂を樹脂組成物に含むものであり、硬化時間が短いので、製造効率を向上させることができる。光硬化型のポリマー型導電インクとしては、例えば、熱可塑性樹脂のみ、あるいは熱可塑性樹脂と架橋性樹脂(特にポリエステルとイソシアネートによる架橋系樹脂など)とのブレンド樹脂組成物に、導電粒子が60質量%以上配合され、ポリエステル樹脂が10質量%以上配合されたもの、すなわち、溶剤揮発型かあるいは架橋/熱可塑併用型(ただし熱可塑型が50質量%以上である)のものや熱可塑性樹脂のみ、あるいは熱可塑性樹脂と架橋性樹脂(特にポリエステルとイソシアネートによる架橋系樹脂など)とのブレンド樹脂組成物に、ポリエステル樹脂が10質量%以上配合されたもの、すなわち、架橋型かあるいは架橋/熱可塑併用型のものなどが好適に用いられる。
【0022】
一方、アンテナ14をなす導電性箔としては、銅箔、銀箔、金箔、白金箔、アルミニウム箔などが挙げられる。
【0023】
ICチップ15としては、特に限定されず、アンテナ14を介して非接触状態にて情報の書き込みおよび読み出しが可能なものであれば、非接触型ICタグや非接触型ICラベル、あるいは非接触型ICカードなどのRFIDメディアに適用可能なものであればいかなるものでも用いられる。
【0024】
被覆体12を構成する第一の被覆体16および第二の被覆体17は、各種樹脂材からなり、この樹脂材としては特に限定されるものではないが、中でも弾性材が好ましい。この弾性材の材質としては、例えば、クロロプレンゴム;フッ化ビニリデン系(FKM)、テトラフルオロエチレン−プロピレン系(FEPM)、テトラフルオロエチレン−パープルオロビニルエーテル系(FFKM)などのフッ素系ゴム;フッ素化シリコーンゴム(フロロシリコーンゴム、FVMQ)などのシリコーンゴム;エステル結合を有するポリエステルウレタンゴム(AU);エーテル結合を有するポリエーテルウレタンゴム(EU)などのウレタンゴムなどが挙げられる。これらの中でも、機械的強度、耐候性、耐薬品性、耐熱性、耐寒性、耐油性などのバランスに優れることから、クロロプレンゴムが好ましい。
【0025】
この実施形態の非接触型データ受送信体10は、ベース基材13の一方の面13aに設けられたアンテナ14に対して垂直な断面の形状が、一方の面10aから、一方の面10aとは反対の面10bに向かって次第に径が大きくなるテーパ状をなしているから、非接触型データ受送信体10を、対象物品20の凹部21に容易に嵌め込むことができるとともに、一旦、非接触型データ受送信体10が凹部21に嵌め込まれると、外部から力が加えられても脱落し難い。また、被覆体12を弾性材で形成すれば、外部から力が加えられてもインレット11が損傷して、その機能が損なわれることはない。さらに、被覆体12をなす弾性材がクロロプレンゴムであれば、対象物品20を強酸性の薬品などを用いる環境下で使用しても、インレット11の機能が損なわれることはない。したがって、非接触型データ受送信体10によれば、非接触で容易に、種類の多い物品や、部品点数の多い製造装置の部品などの管理を行うことができる。
【0026】
なお、この実施形態では、被覆体12を、第一の被覆体16と第二の被覆体17から構成されるものとしたが、本発明の非接触型データ受送信体はこれに限定されない。本発明の非接触型データ受送信体にあっては、インレットを覆う被覆体は、1つの部材であってもよい。被覆体を1つの部材で形成すれば、インレットが薬品や水分により劣化することを確実に防止することができる。
また、この実施形態では、ベース基材13と、その一方の面13aに設けられ互いに接続されたアンテナ14およびICチップ15とから構成されたインレット11を例示したが、本発明の非接触型データ受送信体はこれに限定されない。本発明の非接触型データ受送信体にあっては、ICチップの上にアンテナを搭載したインレットを用いてもよく、あるいは、少なくともアンテナを搭載して非接触にて通信可能なインレットを用いてもよい。さらに、本発明の非接触型データ受送信体にあっては、必ずしもベース基材を用いる必要はなく、例えば、絶縁部材により被覆されたワイヤーコイルを平面コイル状に隙間をほとんど設けないように旋回してアンテナ端子をICチップに接続するようにした、ベース基材レスインレットを形成してもよい。
【0027】
(2)第二の実施形態
図3は、本発明に係る非接触型データ受送信体の第二の実施形態を示す概略図であり、(a)は正面図、(b)は平面図である。
図3において、図1および図2に示した非接触型データ受送信体10と同一の構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
この実施形態の非接触型データ受送信体30が、上述の非接触型データ受送信体10と異なる点は、非接触型データ受送信体30の外側面30cには、対象物品の凹部の底部に接する面30aから、対象物品の凹部の底部に接する面30aとは反対の面30bに渡る溝31が設けられている点である。
【0028】
この実施形態の非接触型データ受送信体30は、図2に示したような対象物品の凹部に嵌め込む際に、非接触型データ受送信体30と凹部との間に存在する空気などの気体を、溝31通して凹部の外部に排出することができる。したがって、非接触型データ受送信体30を、その面30aが対象物品の凹部の底部に接触するように容易に嵌め込むことができる。また、溝31が設けられているので、被覆体12は撓みやすくなり、非接触型データ受送信体30を容易に対象物品の凹部に嵌め込むことができる。さらに、対象物の凹部から非接触型データ受送信体30を取り外す際には、溝31に鉤状の物を引っ掛けることにより、非接触型データ受送信体30を容易に取り外すことができる。
【0029】
なお、この実施形態では、溝31の長手方向に垂直な断面の形状を三角形状とした非接触型データ受送信体30を例示したが、本発明の非接触型データ受送信体はこれに限定されない。本発明の非接触型データ受送信体にあっては、溝の長手方向に垂直な断面の形状を正方形状、矩形状、半円形状などとしてもよい。
【0030】
また、この実施形態では、非接触型データ受送信体30の外側面30cに1つの溝31が設けられた非接触型データ受送信体30を例示したが、本発明の非接触型データ受送信体はこれに限定されない。本発明の非接触型データ受送信体にあっては、非接触型データ受送信体の外側面に2つ以上の溝が設けられていてもよい。
非接触型データ受送信体の外側面に溝が2つ以上設けられる場合には、少なくとも1つの溝が、非接触型データ受送信体における対象物品の凹部の底部に接する面から、対象物品の凹部の底部に接する面とは反対の面に渡るように設けられていればよい。
【0031】
(3)第三の実施形態
図4は、本発明に係る非接触型データ受送信体の第三の実施形態を示す概略平面図である。
図4において、図1に示した非接触型データ受送信体10と同一の構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
この実施形態の非接触型データ受送信体40が、上述の非接触型データ受送信体10と異なる点は、非接触型データ受送信体40の外側面40cに4つの溝41,42,43,44が設けられ、溝41のみが、対象物品の凹部の底部に接する面から、対象物品の凹部の底部に接する面とは反対の面40bに渡るように設けられており、その他の溝42,43,44が、非接触型データ受送信体40における面40bを基端とし、面40bから反対の面に向かう方向に、外側面40cの途中まで設けられている点である。
【0032】
この非接触型データ受送信体40では、4つの溝41,42,43,44が設けられているので、上述の非接触型データ受送信体30よりも、被覆体12が撓み易くなり、非接触型データ受送信体40を、その面(底部)が対象物品の凹部の底部に接触するように容易に嵌め込むことができる。
また、溝41のみ対象物品の凹部の底部に接する面から、対象物品の凹部の底部に接する面とは反対の面40bに渡るように設けたのは、非接触型データ受送信体40を対象物品の凹部に嵌め込む際に、非接触型データ受送信体40と凹部との間に存在する空気などの気体を凹部の外部に排出するには、少なくとも1つの溝があれば十分であるからである。その他の溝42,43,44は、被覆体12を撓み易くするために設けられている。
【0033】
(4)第四の実施形態
図5は、本発明に係る非接触型データ受送信体の第四の実施形態を示す概略平面図である。
図5において、図1に示した非接触型データ受送信体10と同一の構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
この実施形態の非接触型データ受送信体50が、上述の非接触型データ受送信体10と異なる点は、非接触型データ受送信体50の外側面50cに、連続する多数の突条52を介して、多数の溝51が設けられている点である。
【0034】
この非接触型データ受送信体50では、非接触型データ受送信体50の外側面50cに、連続する多数の突条52を介して、多数の溝51が設けられているので、上述の非接触型データ受送信体40よりも、被覆体12がさらに撓み易くなり、非接触型データ受送信体50をより容易に対象物品の凹部に嵌め込むことができる。
【0035】
(5)第五の実施形態
図6は、本発明に係る非接触型データ受送信体の第五の実施形態を示す概略断面図である。
図6において、図1に示した非接触型データ受送信体10と同一の構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
この実施形態の非接触型データ受送信体60が、上述の非接触型データ受送信体10と異なる点は、基材13の一方の面13aとは反対の面13bに磁性体層61が設けられている点である。
【0036】
磁性体層61は、少なくとも磁性微粒子からなるフィラーを樹脂に含有してなる複合体から構成されている。このような磁性体層61において、非接触型データ受送信体60をベース基材13の一方の面13a側から見て、磁性体層61を構成する多数の磁性微粒子が、少なくともその一部が互いに重なり、連接した1つの磁性体を形成している。
磁性体層61をなす複合体は、磁性微粒子からなるフィラーと、有機樹脂、または、無機化合物からなる無機樹脂とからなるものである。
この複合体は、必要に応じて、添加剤や溶媒を含んだ塗料の形態で、塗布・乾燥といったプロセスで、磁性微粒子が均一に分散されて使用される。
【0037】
磁性微粒子としては、粉末状の磁性体粉末、または、この磁性体粉末をボールミルなどで微細化して粉末を成形した後、この粉末を機械的に扁平化して得られた扁平状のフレークなどからなる磁性体フレークが挙げられる。これらの中でも、磁性微粒子としては、扁平状のものが好ましい。磁性微粒子が扁平状であれば、非接触型データ受送信体60をベース基材13の一方の面13a側から見て、磁性体層61を構成する多数の磁性微粒子が、少なくともその一部が互いに重なり、連接した1つの磁性体を形成しやすい。したがって、より磁束が磁性体層61を通ってアンテナに捕捉され易くなる。
【0038】
さらに、磁性体粉末としては、例えば、センダスト(Fe−Si−Al合金)粉末、カーボニル鉄粉末、パーマロイなどのアトマイズ粉末、還元鉄粉末などが挙げられる。磁性体フレークとしては、例えば、前記磁性体粉末をボールミルなどで微細化して粉末を成形した後、この粉末を機械的に扁平化して得られたフレークや、鉄系またはコバルト系アモルファス合金の溶湯を水冷銅板に衝突させて得られたフレークなどが挙げられる。これらの中でも、磁性微粒子としては、センダストからなる磁性体粉末または磁性体フレークが好ましく、センダストからなる磁性体フレークがより好ましい。磁性微粒子が、センダストからなる磁性体粉末または磁性体フレークであれば、これらを構成要素として含む磁性体層61の飽和磁束密度および透磁率が高くなるので、より磁束が磁性体層61を通ってアンテナに捕捉され易くなる。
【0039】
なお、磁性体層61をなす磁性微粒子の形状は、その全てが粉末状あるいは扁平状のいずれか一方である必要はない。磁性体層61には、粉末状の磁性微粒子と扁平状の磁性微粒子が混在していてもよく、このように形状の異なる磁性微粒子が混在していても、本発明の非接触型データ受送信体は十分に効果を発揮する。
【0040】
磁性体層61をなす複合体を構成する有機樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂などが挙げられる。
【0041】
熱可塑性樹脂としては、例えば、塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、アクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル−塩化ビニル共重合体、メタクリル酸エステル−エチレン共重合体、ポリ弗化ビニル、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体(セルロースアセテートブチレート、セルロースダイアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、ニトロセルロース)、スチレンブタジエン共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、あるいは、スチレン系ゴム、フッ素系ゴム、シリコン系ゴム、エチレン・プロピレン共重合体ゴムなどのポリマー系の合成ゴム材料などが挙げられる。
【0042】
熱硬化性樹脂または反応型樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。
【0043】
磁性体層61をなす複合体には、被貼付体に粘着性を付与するために、各種粘着剤が含まれていてもよい。
また、磁性体層61をなす複合体を形成するために用いられる磁性塗料に含まれる添加剤としては、粘度調整剤、消泡剤、レベリング剤などが挙げられる。
さらに、この磁性塗料に含まれる溶媒としては、シクロヘキサノン、アセトン、ベンゼン系、エチル系などの有機溶媒が挙げられる。
【0044】
磁性体層61をなす複合体は、磁性微粒子からなるフィラーと、樹脂と、添加剤と、溶媒とを含む磁性塗料を塗布、乾燥することによって、磁性微粒子がほぼ均一に分散した形態に成形される。
【0045】
この非接触型データ受送信体60は、基材13の面13bに磁性体層61が設けられているので、図2に示したような対象物品が金属からなるものでも、磁束が磁性体層61を通ってアンテナ14に捕捉されるため、アンテナ14にICチップ15を作動させるのに十分な誘導起電力を発生させることができる。
【0046】
(6)第六の実施形態
図7は、本発明に係る非接触型データ受送信体の第六の実施形態を示す概略断面図である。
図7において、図1に示した非接触型データ受送信体10と同一の構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
この実施形態の非接触型データ受送信体70が、上述の非接触型データ受送信体10と異なる点は、被覆体12が、第一の被覆体16と、第二の被覆体71とから構成され、第二の被覆体71が、上述の第五の実施形態と同様に、磁性体層をなしている点である。
【0047】
この非接触型データ受送信体70は、第二の被覆体71が磁性体層をなしているので、図2に示したような対象物品が金属からなるものでも、磁束が第二の被覆体71を通ってアンテナ14に捕捉されるため、アンテナ14にICチップ15を作動させるのに十分な誘導起電力を発生させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の非接触型データ受送信体は、金属金型などの工業用品の物品識別用タグなどにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る非接触型データ受送信体の第一の実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明に係る非接触型データ受送信体の使用方法を示す概略断面図である。
【図3】本発明に係る非接触型データ受送信体の第二の実施形態を示す概略図であり、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図4】本発明に係る非接触型データ受送信体の第三の実施形態を示す概略平面図である。
【図5】本発明に係る非接触型データ受送信体の第四の実施形態を示す概略平面図である。
【図6】本発明に係る非接触型データ受送信体の第五の実施形態を示す概略断面図である。
【図7】本発明に係る非接触型データ受送信体の第六の実施形態を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0050】
10,30,40,50,60,70・・・非接触型データ受送信体、11・・・インレット、12・・・被覆体、13・・・ベース基材、14・・・アンテナ、15・・・ICチップ、16・・・第一の被覆体、17,71・・・第二の被覆体、20・・・対象物品、21・・・凹部、31,41,42,43,44,51・・・溝、52・・・突条、61・・・磁性体層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナを搭載して非接触にて通信するインレットと、該インレットを覆うように設けられた被覆体とを備え、断面形状が略垂直状に形成された凹部に嵌め込まれる非接触型データ受送信体であって、
前記非接触型データ受送信体は前記アンテナに対して垂直な断面の形状が、前記凹部の底部から外表面に向かって次第に径が大きくなるテーパ状をなしていることを特徴とする非接触型データ受送信体。
【請求項2】
前記非接触型データ受送信体の外側面には、前記凹部の底部に接する面から反対の面に渡る溝が少なくとも1つ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の非接触型データ受送信体。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−241951(P2007−241951A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−67375(P2006−67375)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】