説明

非接触型リライトサーマルラベルの使用方法

【課題】被着体に貼付した状態で、非接触方式により繰り返し情報の記録及び消去を行うことができる上、被着体と共にリサイクルが可能な非接触型リライトサーマルラベルの使用方法を提供する。
【解決手段】基材1の一方の面に、基材側から順に、染料前駆体および可逆性顕色剤を含む感熱発色層3が積層され、基材の他方の面に粘着剤層5が施された非接触型リライトサーマルラベルを、被着体に貼付した状態で非接触方式にて情報の記録及び消去を繰り返し行うことに用いる非接触型リライトサーマルラベルの使用方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触型リライトサーマルラベルに関する。さらに詳しくは、本発明は、被着体に貼付した状態で、非接触方式により繰り返し情報の記録及び消去を行うことができ、かつ耐溶剤性に乏しい基材も使用し得る上、被着体と共にリサイクルが可能な非接触型リライトサーマルラベルの使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、物品の管理に使用されているラベル、例えば食品を輸送するプラスチックコンテナ(通い箱)に貼るラベル、電子部品の管理に用いるラベル、段ボールなどに貼る物流管理ラベルなどは、感熱記録材料(ダイレクトサーマル紙など)を表面基材に用いたものが主流となっている。この感熱記録材料は、支持体上に電子供与性の通常無色ないし淡色の染料前駆体と電子受容性の顕色剤とを主成分とする感熱記録層が設けられており、熱ヘッド、熱ペン等で加熱することにより、染料前駆体と顕色剤とが瞬時に反応し記録画像が得られるものである。このような感熱記録材料は、一般に一度画像を形成すると、その部分を消去して再び画像形成前の状態に戻すことは不可能である。
これまで、前記の物品管理に使用されるラベルにおいては、表面基材として、このような感熱記録材料が主として使用され、接触型のサーマルプリンタなどを用いて、宛先、送り主、品名、数量、ロット番号などの情報や、それらをバーコード化したものを印字し、被着体に貼付していた。そして、ラベルとしての役目が終了すると、被着体であるコンテナや段ボールなどを再利用するために、ラベルを人手で剥がすのに多くの時間と手間を要していた。また、ラベルが剥がされた被着体は、接触型のサーマルプリンタなどで印字された別のラベルが再度貼付され、繰り返し利用される。
このように、被着体が繰り返し利用される度に、ラベルの剥離及び貼付が行われているのが実状であり、ラベルを被着体からその都度剥がすことなく、被着体に貼付した状態で繰り返し情報の記録及び消去が可能なリライトサーマルラベルが期待されている。
一方、近年、画像の形成及び消去が可能な可逆性感熱記録材料、例えば(1)支持体上に温度に依存して透明度が可逆的に変化する有機低分子物質と樹脂からなる感熱層を設けてなる可逆性感熱記録材料、(2)支持体上に染料前駆体と可逆性顕色剤を含む感熱発色層を設けてなる可逆性感熱記録材料などが開発されている。
このような可逆性感熱記録材料を前記リライトサーマルラベルに適用する場合、被着体に該ラベルを貼付した状態で情報の記録、消去を行うために、非接触方式による情報の記録、消去が要求されることから、可逆性感熱記録材料としては、前記(2)のものが好ましい。
しかしながら、この(2)の可逆性感熱記録材料においては、感熱発色層を形成するのに、通常テトラヒドロフランなどの溶剤中に染料前駆体と可逆性顕色剤及び必要に応じて用いられる他の添加成分を溶解又は分散してなる塗工液が用いられる。したがって、ラベルの基材としては、現在、主流で用いられているポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリカーボネートフィルムなどは耐溶剤性に乏しいために使用が困難であり、耐溶剤性のあるポリエチレンテレフタレートやポリプロピレンフィルムなどしか使用することができず、種類が制限されるのを免れないという問題が生じる。現在主流で用いられている前記樹脂フィルムをラベルの基材として用いるためには、溶剤に対する耐性を向上させるための対策を講じることが必要となる。
また、前記(2)の可逆性感熱記録材料を適用して、非接触方式を採用する場合、情報の記録には、通常レーザー光が用いられるため、レーザー光を吸収して効率よく熱交換する機能を付与することが重要となる。
さらに、近年、資源循環型社会の構築のために、使用ずみの被着体であるプラスチックコンテナなどはリサイクルすることが要求されている。プラスチックコンテナなどをリサイクルする場合、該リライトサーマルラベルとしては、被着体に貼付したまま、被着体と共にリサイクルし得るものが好ましい。
【特許文献1】特開2001−88443号公報
【特許文献2】特開2001−71543号公報
【特許文献3】特開平11−58963号公報
【特許文献4】特開平7−172054号公報
【特許文献5】特開2000−309169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、このような事情のもとで、被着体に貼付した状態で、非接触方式により繰り返し情報の記録及び消去を行うことができ、かつ耐溶剤性に乏しい基材を使用し得る上、被着体と共にリサイクルが可能な非接触型リライトサーマルラベルの使用方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、前記の優れた機能を有する非接触型リライトサーマルラベルを開発すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の積層構造のラベルにより、その目的を達成し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)基材の一方の面に、基材側から順に、染料前駆体および可逆性顕色剤を含む感熱発色層が積層され、基材の他方の面に粘着剤層が施された非接触型リライトサーマルラベルを、被着体に貼付した状態で非接触方式にて情報の記録及び消去を繰り返し行うことに用いる非接触型リライトサーマルラベルの使用方法、
(2)基材の一方の面に、基材側から順に、アンカーコート層、染料前駆体および可逆性顕色剤を含む感熱発色層が積層され、基材の他方の面に粘着剤層が施された非接触型リライトサーマルラベルを、被着体に貼付した状態で非接触方式にて情報の記録及び消去を繰り返し行うことに用いる非接触型リライトサーマルラベルの使用方法、
(3)非接触型記録時の手段として、記録時にレーザー光を用いて可視情報の記録又は書き換えを行う(1)又は(2)項記載の非接触型リライトサーマルラベルの使用方法、
(4)レーザー光の発振波長が700〜1500nmである(1)、(2)又は(3)項記載の非接触型リライトサーマルラベルの使用方法、
(5)光吸収熱変換剤が感熱発色層中に含有またはその上層に積層された(1)〜(4)項のいずれかに記載の非接触型リライトサーマルラベルの使用方法、及び
(6)情報の書き換えを行う際の消去手段が熱風送風である非接触型加熱方法で情報の消去を行う(1)〜(5)項のいずれかに記載の非接触型リライトサーマルラベルの使用方法、
を提供するものである。
好ましい態様として、
(7)アンカーコート層における架橋化樹脂が、ゲル分率30%以上の架橋度を有する(1)項記載の非接触型リライトサーマルラベルの使用方法、
(8)感熱発色層が、染料前駆体と可逆性顕色剤を含む(1)又は(2)項記載の非接触型リライトサーマルラベルの使用方法、
(9)光吸収熱交換層が、有機染料及び/又は有機金属系色素からなる光吸収剤を含む(1)〜(3)項のいずれかに記載の非接触型リライトサーマルラベルの使用方法、及び
(10)基材が、被着体の材質と同材質のものである(1)〜(4)項のいずれかに記載の非接触型リライトサーマルラベルの使用方法、
を挙げることができる。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、被着体に貼付した状態で、非接触方式により繰り返し情報の記録及び消去を行うことができ、かつ耐溶剤性に乏しい基材も使用し得る上、被着体と共にリサイクルが可能な非接触型リライトサーマルラベルの使用方法を提供することができる。
本発明の非接触型リライトサーマルラベルは、例えば食品を輸送するプラスチックコンテナ(通い箱)に貼るラベル、電子部品の管理に用いるラベル、段ボールなどに貼る物流管理ラベルなどとして好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の非接触型リライトサーマルラベルにおける基材としては、特に制限はなく、耐溶剤性に優れるものや耐溶剤性に乏しいものなど、いずれも用いることができる。具体的には、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリプロプレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどのプラスチックフィルム、合成紙、不織布、紙などが挙げられる。この基材としては、被着体と共にリサイクルが可能な点から、該被着体の材質と同材質系のものが好ましい。基材の厚さとしては特に制限はないが、通常10〜500μm、好ましくは20〜200μmの範囲である。
また、基材としてプラスチックフィルムを用いる場合には、その表面に設けられるアンカーコート層や粘着剤層との密着性を向上させる目的で、所望により酸化法や凹凸化法などにより表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は基材の種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から、好ましく用いられる。
また、レーザー光による情報の記録を行う際の変換熱を効果的に利用するために、断熱効果の高い発泡フィルムを基材として用いることも有効である。さらに、基材としては、プラスチックフィルムが好ましいが、紙基材も繰り返し使用回数が少なければ、好適に使用することができる。
【0007】
本発明のリライトサーマルラベルにおいては、前記基材の一方の面にアンカーコート層が設けられる。このアンカーコート層は、次工程の感熱発色層を設ける際に用いられる塗工液中の溶剤から基材を保護するためのものであり、このアンカーコート層を設けることにより、耐溶剤性の乏しい基材も使用が可能となる。
該アンカーコート層を構成する樹脂としては、特に制限はなく、各種のものが使用可能であるが、本発明においては、耐溶剤性に優れる架橋化樹脂が用いられる。この架橋化樹脂としては、例えば架橋化されたアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。基材として、耐溶剤性に劣るものを用いる場合には、アンカーコート層の形成に有機溶剤型でない塗工液、例えば水溶液型や水分散型塗工液の使用が好ましい。また、架橋方法としては特に制限はなく、従来公知の様々な方法の中から、使用する樹脂の種類に応じて適宜選択することができる。
さらに、無溶媒型として、紫外線や電子線などの電離放射線で架橋硬化する樹脂の使用も有効である。この電離放射線硬化型樹脂は、照射線量を変えることにより、架橋度を容易に調整することができる上、架橋密度の高い架橋化樹脂を形成することができる。
本発明においては、このアンカーコート層を形成する架橋化樹脂の架橋度は、下記の方法で測定したゲル分率で30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましい。このゲル分率が30%未満では耐溶剤性が不十分であって、次工程の感熱発色層を形成する際に、塗工液中の溶剤から、基材を十分に保護することができなくなるおそれがある。
【0008】
<ゲル分率の測定方法>
剥離フィルム上に、アンカーコート層形成用塗工液を塗工し、本発明におけるアンカーコート層形成時と同一条件で架橋化させたのち、剥離フィルムから架橋化樹脂(50mm×100mm)を剥ぎ取る。次いで、100×130mmサイズの200メッシュの金鋼上に、上記架橋化樹脂2枚(合計重量Ag)を金網で包み込み、これをソックスレー抽出器にセットし、テトラヒドロフランの還流下で5時間抽出処理する。次に、抽出処理後、金網上に残存する樹脂を100℃で24時間乾燥させ、23℃、50%RHの雰囲気下で3時間以上調湿後、該樹脂の重量を測定し(Bg)、次式
ゲル分率(%)=(B/A)×100
により、ゲル分率を算出する。
該アンカーコート層の厚さは、通常0.1〜30μm、好ましくは1〜15μmの範囲である。
【0009】
本発明のリライトサーマルラベルにおいては、このようにして形成されたアンカーコート層上に、感熱発色層が設けられる。この感熱発色層は、一般に無色ないし淡色の染料前駆体、可逆性顕色剤及び必要に応じて用いられるバインダー、消色促進剤、無機顔料、各種添加剤などから構成されている。
前記染料前駆体としては特に制限はなく、従来感熱記録材料において、染料前駆体として用いられている公知の化合物の中から、任意のものを適宜選択して使用することができる。例えば3,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリドなどのトリアリールメタン系化合物、ローダミンBアニリノラクタム、3−(N−エチル−N−トリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオランなどのキサンテン系化合物、4,4'−ビス(ジメチルアミノフェニル)ベンズヒドリルベンジルエーテル、N−クロロフェニルロイコオーラミンなどのジフェニルメタン系化合物、3−メチルスピロジナフトピラン、3−エチルスピロジナフトピランなどのスピロ系化合物、ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンゾイルロイコメチレンブルーなどのチアジン系化合物などの中から1種を選び用いてもよく、2種以上を選び組み合わせて用いてもよい。
【0010】
一方、可逆性顕色剤としては、加熱後の冷却速度の違いにより、前記染料前駆体に可逆的な色調変化を生じさせるものであればよく、特に制限はないが、発色濃度、消色性、繰り返しの耐久性などの点から、長鎖アルキル基を有するフェノール誘導体からなる電子受容性化合物が好ましい。
前記フェノール誘導体は、分子中に酸素、硫黄などの原子やアミド結合を有していてもよい。アルキル基の長さや数は、消色性と発色性のバランスなどを考慮して選定されるが、アルキル基としては、炭素数8以上のものが好ましく、特に8〜24程度のものが好ましい。また、長鎖アルキル基を側鎖にもつヒドラジン化合物、アニリド化合物、尿素化合物なども使用することができる。
このような長鎖アルキル基を有するフェノール誘導体としては、例えば4−(N−メチル−N−オクタデシルスルホニルアミノ)フェノール、N−(4−ヒドロキシフェニル)−N'−n−オクタデシルチオ尿素、N−(4−ヒドロキシフェニル)−N'−n−オクタデシル尿素、N−(4−ヒドロキシフェニル)−N'−n−オクタデシルチオアミド、N−[3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオノ]−N'−オクタデカノヒドラジド、4'−ヒドロキシ−4−オクタデシルベンズアニリドなどを挙げることができる。
このような可逆性顕色剤の結晶性を利用して、情報を記録する際には、加熱後急冷することにより、一方消去する際には、加熱後徐冷を行うことにより、繰り返し情報の記録及び消去が可能となる。
【0011】
また、感熱発色層を構成する各成分の保持、均一分散性を維持するなどの目的で、必要に応じて用いられるバインダーとしては、例えばポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコールなどの重合体やそれらの共重合体を挙げることができる。
さらに、必要に応じて用いられる消色促進剤としては、例えばアンモニウム塩などが、無機顔料としては、例えばタルク、カオリン、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウムなどが、その他添加剤としては、例えば公知のレベリング剤や分散剤などが挙げられる。
【0012】
感熱発色層を形成するには、まず適当な有機溶剤中に、前記の染料前駆体、可逆性顕色剤及び必要に応じて用いられる各種添加成分を溶解又は分散させて塗工液を調製する。この際、有機溶剤としては、例えばアルコール系、エーテル系、エステル系、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系などを用いることができるが、特にテトラヒドロフランが分散性などに優れ、好適である。染料前駆体と可逆性顕色剤の割合については特に制限はないが、染料前駆体100重量部に対し、可逆性顕色剤が、通常50〜700重量部、好ましくは100〜500重量部の範囲で用いられる。
次に、このようにして調製された塗工液を、前記アンダーコート層上に、従来公知の手段で塗工し、乾燥処理することにより、感熱発色層を形成する。乾燥処理温度については特に制限はないが、染料前駆体が発色しないように低温で乾燥するのが望ましい。このようにして形成された感熱発色層の厚さは、通常1〜10μm、好ましくは2〜7μmの範囲である。
本発明のリライトサーマルラベルにおいては、このようにして形成された感熱発色層上に、光吸収熱変換層が設けられる。この光吸収熱変換層は、一般に光吸収剤、バインダー及び必要に応じて用いられる無機顔料、帯電防止剤、その他添加剤などから構成されている。
前記光吸収剤は、照射するレーザー光を吸収して熱に変換する作用を有するものであって、使用するレーザー光によって、適宜選択される。レーザー光としては、装置の簡便性や走査性などの面から、発振波長が700〜1500nmの範囲にあるものを選定するのがよく、例えば半導体レーザー光及びYAGレーザー光が好適である。
該光吸収剤は、このような近赤外のレーザー光を吸収し、発熱するものであって、可視光域の光はあまり吸収しないものが好ましい。可視光を吸収すると視認性やバーコード読み取り性が低下する。このような要求性能を満たす光吸収剤としては、有機染料及び/又は有機金属系色素を挙げることができる。具体的には、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、アントラキノン系色素、アズレン系色素、スクワリリウム系色素、金属錯体系色素、トリフェニルメタン系色素、インドレニン系色素などの中から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの中で、高い光熱交換性を有することから、インドレニン系色素が好適である。
【0013】
一方、バインダーとしては、前述の感熱発色層におけるバインダーとして例示したものと同じものを用いることができるが、この光吸収熱変換層は、ラベルの最表層となることから、下層の発色を有視化させるための透明性と表面のハードコート性(耐擦過性)が要求される。したがって、バインダーとしては、架橋タイプの樹脂が好ましく、特に紫外線や電子線などの電離放射線硬化型樹脂が好適である。
この光吸収熱変換層を形成するには、まず、前記の光吸収剤、バインダー及び必要に応じて用いられる各種添加剤を含む塗工液を調製する。この際、バインダーの種類によっては、必要に応じ適当な有機溶剤を用いてもよい。バインダーと光吸収剤の割合については特に制限はないが、バインダー100重量部に対し、光吸収剤が、通常0.01〜50重量部、好ましくは0.03〜10重量部の範囲で用いられる。しかし、前記光吸収剤は、可視光域の光も吸収する場合があるため、光吸収剤の配合量が多いと表面が着色されるおそれがある。表面が着色すると、ラベルの外観のみでなく、情報の視認性、バーコードの読み取り性などを低下させるために、発熱による発色感度とのバランスを考慮し、光吸収剤の配合量を少なく抑えることが好ましい。
【0014】
次に、このようにして調製された塗工液を、前記感熱発色層上に従来公知の手段により塗工し、乾燥処理後、加熱や電離放射線の照射などにより架橋化することによって、光吸収熱変換層を形成する。このようにして形成された光吸収熱変換層の厚さとしては、通常0.05〜10μm、好ましくは0.1〜3μmの範囲である。
本発明のリライトサーマルラベルにおいては、基材の前記各層とは反対側の面に、粘着剤層が設けられる。この粘着剤層を構成する粘着剤は、プラスチックからなる被着体に対して良好な接着性を示し、かつ該被着体とラベルを共にリサイクルする場合、このリサイクルを阻害しない樹脂組成のものが好ましく、特に樹脂成分として、アクリル酸エステル系共重合体を含む粘着剤は、リサイクル性に優れ好適である。その他、ゴム系、ポリエステル系、ポリウレタン系粘着剤なども使用することができる。また、耐熱性に優れるシリコーン系粘着剤も使用可能であるが、リサイクル工程において、被着体との相溶性が悪いために、リサイクル樹脂が不均一になりやすく、強度低下や外観不良の原因となることがある。
また、この粘着剤はエマルション型、溶剤型、無溶剤型のいずれでもよいが、架橋タイプである方が、被着体を繰り返し使用するために施される洗浄工程での耐水性に優れ、ラベル保持の耐久性も向上するために好ましい。該粘着剤層の厚さは、通常5〜60μm、好ましくは15〜40μmの範囲である。
【0015】
本発明のリライトサーマルラベルにおいては、前記粘着剤層上に、必要に応じて剥離シートを設けることができる。この剥離シートとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、発泡PET、ポリプロピレンなどのプラスチックフィルムや、ポリエチレンラミネート紙、グラシン紙、クレーコート紙などに、離型剤を塗布したものが用いられる。該離型剤としては、シリコーン系のものが好ましく、その他フッ素系、長鎖アルキル基含有カーバメイト系のものなども使用することができる。離型剤の塗布厚さは、通常0.1〜2.0μm、好ましくは0.5〜1.5μmの範囲である。また、剥離シートの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
本発明のリライトサーマルラベルにおける各層の形成順序としては、基材の一方の面に、アンカーコート層、感熱発色層及び光吸収熱変換層の順に設けたのち、該基材の反対側の面に、粘着剤層を設けるのが好ましい。
前記アンカーコート層、感熱発色層及び光吸収熱変換層は、それぞれの塗工液を、ダイレクトグラビア、グラビアリバース、マイクログラビア、マイヤーバー、エアーナイフ、ブレード、ダイ、ロールナイフ、リバース、カーテンコートなどのコート法や、フレキソ、レタープレス、スクリーンなどの印刷方法で塗工、乾燥し、必要ならばさらに加熱することにより、形成することができる。特に、感熱発色層は、発色しないように低温で乾燥するのが望ましい。また、電離放射線硬化型の場合は、電離放射線を照射して硬化させる。
【0016】
一方、粘着剤層は、粘着剤をロールナイフコーター、リバースコーター、ダイコーター、グラビアコーター、マイヤーバーなどの公知の方法で、基材表面に直接塗布、乾燥して形成してもよいし、あるいは剥離シートの離型面に粘着剤を前記方法で塗布、乾燥して粘着剤層を設けたのち、これを基材に貼着し、該粘着剤層を転写してもよい。後者の転写方法は、基材に設けられている感熱発色層を発色させることなく、粘着剤の乾燥効率を上げることができるので、好ましい。
図1は、本発明の非接触型リライトサーマルラベルの構成の1例を示す断面図である。非接触型リライトサーマルラベル10は、基材1の一方の側の面にアンカーコート層2、感熱発色層3及び光吸収熱変換層4が順次積層されていると共に、基材1の反対側の面(裏面)に粘着剤層5及び剥離シート6が順次設けられた構造を有している。
次に、本発明の非接触型リライトサーマルラベルを使用する場合の実施態様の例について説明する。
【0017】
まず、本発明のラベルを被着体に貼付する前に、該ラベルに所望の情報を記録(印字)する。この場合、光吸収熱変換層にサーマルヘッドを接触させて印字する接触方式を採用してもよいし、レーザー光を用いる非接触方式を採用してもよいが、ここでは、非接触方式で印字する方法について説明する。
この非接触方式においては、ラベル表面に非接触の状態でレーザー光が照射され、そのレーザー光をラベル表面の光吸収熱変換層内の光吸収剤が吸収して、熱に変換することにより、下層の感熱発色層中の染料前駆体と可逆性顕色剤とが反応して、該染料前駆体が有色化することにより、印字が行われる。使用するレーザー光としては、前述したように発振波長700〜1500nmである半導体レーザー光及びYAGレーザー光が好ましい。
ラベル表面とレーザー光源の距離は、照射出力によって異なるが、1μmないし30cmの範囲が好ましい。距離は短い方が、レーザー光の出力面や走査面で好ましい。また、レーザー光のビーム径は、ラベル表面で1〜50μm程度に集光させることが、画像形成面で好ましい。走査速度は速いほど記録時間が短くて有利であるが、特に3m/秒以上が望ましい。レーザーの出力としては、50mW以上であればよいが、印字速度を上げるためには300〜10000mW程度が実用上好ましい。ラベルのレーザー光照射側とは反対側の面は、該ラベルを仮固定するために、ドラムロールなどを用い、静電的に仮固定させるか、吸引などにより仮固定する。
【0018】
このようにしてレーザー光を照射した後に、冷却風によって急冷することにより、画像を得ることができる。急冷せずに、自然冷却すると画像濃度が低下したり、消色したりする。この冷却作業は、レーザー光の走査と交互に行ってもよいし、同時に行ってもよい。画像を安定化させるためには、この急冷による表面温度を下げることが肝要である。
このようにして情報を記録したラベルは、被着体に、機械又は人による手作業で貼付される。機械貼りする場合は、グリッドによる圧着方式、ロールで圧着するローラープランジャー方式、エアーによるエアー吹き付け方式などを採用することができる。
このようにしてラベルが貼付された被着体は、物品の輸送などの目的を果たしたのち、再度利用するために、必要に応じて洗浄される。洗浄方法としては、エアーを吹き付けてゴミなどを除去する方法、水洗い方法、アルカリ温水による洗浄方法などが用いられる。
使用済の被着体を再度利用するために、貼付されているラベルの情報を、新しい情報へ書きなおす必要がある。この場合、まず、被着体上のラベルに熱を加える。この熱としては、50〜180℃程度、好ましくは80〜150℃の範囲の温度が有利である。この温度は、感熱発色層における可逆性顕色剤や消色促進剤によって変化させることができる。加熱方法としては、熱ロールなどを接触させる方法、熱風を吹付ける方法、レーザー光の照射による方法などを用いることができる。加熱後、ラベルを自然冷却又は温風などにより、ゆっくり冷却することにより、情報を消去する。
【0019】
次に、このようにして情報を消去したのち、前述で説明した非接触方式により、新しい情報の記録を行う。このように、前記工程を繰り返すことにより、被着体及びラベルを繰り返し利用することができる。
本発明においては、この繰り返し回数は10〜500回程度可能である。所定回数利用した被着体及びラベルは、一緒にリサイクル工程へ送られ、リサイクル処理される。従来、被着体をリサイクルする場合、ラベルが異物となり、リサイクル品の強度低下などが生じるため、ラベルを剥がして除去する必要があった。また、従来の感熱発色剤は熱により発色して汚れとなるため、ラベルを被着体と共にリサイクルすることは不可とされていた。これに対し、本発明のラベルは、従来の感熱発色システムとは異なるものであり、ラベルの基材を、被着体の材質と同材質とすることにより、被着体と共にリサイクルすることが可能となる。
【実施例】
【0020】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、アンカーコート層における樹脂の架橋化度は、明細書本文記載の方法に従って測定したゲル分率で表した。
調製例1 感熱発色層形成用塗工液(A液)の調製
染料前駆体として、トリアリールメタン系化合物である3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド10重量部、可逆性顕色剤として4−(N−メチル−N−オクタデシルスルホニルアミノ)フェノール30重量部、分散剤のポリビニルアセタール1.5重量部及びテトラヒドロフラン2500重量部を、粉砕機及びディスパーにより粉砕、分散させて、感熱発色層形成用塗工液(A液)を調製した。
調製例2 光吸収熱変換層形成用塗工液(B液)の調製
光吸収熱変換剤(インドレニン系色素)[日本発色色素社製、商品名「NK−2014」]5重量部、紫外線硬化型バインダー(ウレタンアクリレート系)[大日精化工業社製、商品名「PU−5(NS)」]100重量部及び無機顔料(シリカ)[日本アエロジル工業社製、商品名「アエロジルR−972」]3重量部を、ディスパーにより分散させて、光吸収熱変換層形成用塗工液(B液)を調製した。
実施例1
アクリル系共重合体エマルション[新中村化学工業社製、商品名「ニューコートTS−1016」]100重量部及びエポキシ系架橋剤[サイデン化学社製、商品名「E−104」]2重量部を含むアクリル系エマルション型架橋タイプのアンカーコート層形成用塗工液(C−1液)を調製した。
厚さ80μmのABSフィルム[信越ポリマー社製、商品名「PSZ980」]からなる基材フィルムの片面に、上記C−1液を乾燥後の厚さが3μmになるようにダイレクトグラビア方式にて塗布し、60℃のオーブンで3分間乾燥させ、アンカーコート層を形成した。このアンカーコート層における架橋化樹脂のゲル分率は52%であった。
このアンカーコート層上に、調製例1で得たA液を、グラビア方式にて乾燥厚さが4μmになるように塗布し、60℃のオーブンで5分間乾燥させ、感熱発色層を形成した。次いで、この感熱発色層上に、調製例2で得たB液を、乾燥後の厚さが1.2μmになるようにフレキソ方式にて塗布し、紫外線を照射して光吸収熱変換層を形成し、ラベル用部材を作製した。
なお、アンカーコート層上にA液を塗布する際に、基材フィルムが塗工液により溶解するかどうかを目視で観察した。
厚さ50μmのPETフィルム[東レ社製、商品名「ルミラーTタイプ」]に、触媒を添加してなるシリコーン樹脂[東レ・ダウコーニング社製、商品名「SRX−211」]を、乾燥後の厚さが0.7μmになるように塗布し、乾燥して剥離シートを作製した。この剥離シートのシリコーン樹脂塗布面に、アクリル系粘着剤[東洋インキ製造社製、商品名「BPS−1109」]100重量部に架橋剤[日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートL」]3重量部を添加してなる粘着剤塗液を、乾燥後の厚さが30μmになるようにロールナイフコーター方式で塗布して、60℃のオーブンで5分間乾燥したのち、ラミネーターで、前記ラベル用部材の裏面と貼り合わせ、巻き取りを行い、ラベルのロール原反を得た。次に、スリッターで100mm幅のロールにスリットを行い、100mm×100mmのラベルを作製し、印字用サンプルとした。
印字は、出力500mWの半導体レーザー(830nm)照射機にて、ビーム径がラベル表面で12μmになるように集光し、かつ印加エネルギーが1300mJ/cmになるように距離100mmでレーザー光を照射することにより行った。印字直後に冷風を送風して印字画像を維持させた。
印字後に、ラベルを被着体であるABSケースに貼付した。7日間放置後、130℃の熱風を20秒間送風したのち、常温環境下で自然放冷して印字の消去を行った。
前記の印字及び消去を10回繰り返したのち、下記のリサイクルテストを行った。
〈リサイクルテスト〉
1%の体積比でラベルが貼付されてある被着体を、240℃の温度で溶融したのち、再度成形して、再生ABSフィルムとして、以下の機械特性の測定と外観評価を行い、リサイクル性を評価した。なお、引張強度はASTM D638、伸び率はASTM D638及びアイゾット衝撃強度はASTM D256に準拠して測定した。
以上の結果を第1表に示す。
実施例2
実施例1において、アンカーコート層形成用塗工液(C−1液)を、下記のC−2液に変えた以外は、実施例1と同様に実施した。結果を第1表に示す。
〈アンカーコート層形成用塗工液(C−2液)の調製〉
ポリエステル系樹脂水溶液[日本合成化学工業社製、商品名「ポリエスターWR−961」]100重量部及びエポキシ系架橋剤[サイデン化学社製、商品名「E−104」]2重量部を含むポリエステル系水溶液型架橋タイプのアンカーコート層形成用塗工液(C−2液)を調製した。
なお、アンカーコート層における架橋化樹脂のゲル分率は42%であった。
実施例3
実施例1において、アンカーコート層形成用塗工液(C−1液)を、ポリウレタン系樹脂水溶液[第一工業製薬社製]、商品名「エラストロンH38」]からなる熱自己架橋型ポリウレタン系水溶液のアンカーコート層形成用塗工液に変えた以外は、実施例1と同様に実施した。結果を第1表に示す。
なお、アンカーコート層における架橋化樹脂のゲル分率は59%であった。
比較例1
実施例1において、アンカーコート層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様に実施した。結果を第1表に示す。
比較例2
実施例1において、アンカーコート層形成用塗工液(C−1液)の調製に、架橋剤を用いなかったこと以外は、実施例1と同様に実施した。その結果を第1表に示す。
比較例3
実施例1において、ラベル用部材として、従来使用していた書き換えが不可であるサーマル紙[日本製紙社製、商品名「TL69KS」]を用い、それ以降は、実施例1と同様に実施した。結果を第1表に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
実施例1〜3は、感熱発色層の形成が良好であり、かつ再記録が可能であると共に、リサイクルのためのラベル剥がし作業が不要であり、しかもリサイクル適性が良好であった。これに対し、比較例1はアンカーコート層が設けられていないため、感熱発色層の形成が不良となった。比較例2は、アンカーコート層が非架橋の樹脂であるため、感熱発色層の形成が不良となった。比較例3は、従来のサーマル紙を用いたラベルを被着体に貼付したままリサイクルを行ったため、リサイクルフィルムの強度低下及び外観不良が生じた。また、比較例3の従来のサーマル紙を用いたラベルは、一度だけの印字しかできない。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、非接触型リライトサーマルラベルの使用方法である。特に、本発明は、被着体に貼付した状態で、非接触方式により繰り返し情報の記録及び消去を行うことができる用途であって、かつ耐溶剤性に乏しい基材を材質とした場合でも使用し得る上に、被着体と共にリサイクルが可能な非接触型リライトサーマルラベルとしての利用可能な点で産業性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の非接触型リライトサーマルラベルの構成の1例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 基材
2 アンカーコート層
3 感熱発色層
4 光吸収熱変換層
5 粘着剤層
6 剥離シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の面に、基材側から順に、染料前駆体および可逆性顕色剤を含む感熱発色層が積層され、基材の他方の面に粘着剤層が施された非接触型リライトサーマルラベルを、被着体に貼付した状態で非接触方式にて情報の記録及び消去を繰り返し行うことに用いる非接触型リライトサーマルラベルの使用方法。
【請求項2】
基材の一方の面に、基材側から順に、アンカーコート層、染料前駆体および可逆性顕色剤を含む感熱発色層が積層され、基材の他方の面に粘着剤層が施された非接触型リライトサーマルラベルを、被着体に貼付した状態で非接触方式にて情報の記録及び消去を繰り返し行うことに用いる非接触型リライトサーマルラベルの使用方法。
【請求項3】
非接触型記録時の手段として、記録時にレーザー光を用いて可視情報の記録又は書き換えを行う請求項1又は2記載の非接触型リライトサーマルラベルの使用方法。
【請求項4】
レーザー光の発振波長が700〜1500nmである請求項1、2又は3記載の非接触型リライトサーマルラベルの使用方法。
【請求項5】
光吸収熱変換剤が感熱発色層中に含有またはその上層に積層された請求項1〜4のいずれかに記載の非接触型リライトサーマルラベルの使用方法。
【請求項6】
情報の書き換えを行う際の消去手段が熱風送風である非接触型加熱方法で情報の消去を行う請求項1〜5のいずれかに記載の非接触型リライトサーマルラベルの使用方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−17997(P2007−17997A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−238733(P2006−238733)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【分割の表示】特願2001−318321(P2001−318321)の分割
【原出願日】平成13年10月16日(2001.10.16)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】