説明

非接触型情報記録媒体

【課題】ベース基材上に、導電性のアンテナが形成されるとともに、アンテナと接続され
ることにより非接触状態にて情報の書き込みや読み出しが可能なICチップが配置された
非接触型情報記録媒体において、アンテナの一部を断線させてスイッチング機能を新たに
設けることなく、ICチップに書き込まれた情報が不用意に読み出されてしまうことを回
避する。
【解決手段】ICチップ10を、バンプ11がアンテナパターン20a,20bに対向す
るような位置に配置し、ベース基材30上にてICチップ10をバンプ11がアンテナパ
ターン20a,20bに対して非接触状態となるように保持し、外力によってバンプ11
がアンテナパターン20a,20bに接する方向に変形可能でかつ、外力が加わらなくな
ると元の形状に復元する被覆膜50を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触状態にて情報の書き込みや読み出しが可能な非接触型ICカードや非
接触型ICラベル等の非接触型情報記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、情報化社会の進展に伴って、情報をカードに記録し、該カードを用いた情報管理
や決済等が行われている。また、商品等に貼付されるラベルやタグに情報を記録し、この
ラベルやタグを用いての商品等の管理も行われている。このようなカードやラベル、ある
いはタグを用いた情報管理においては、カードやラベル、あるいはタグに対して非接触状
態にて情報の書き込みや読み出しを行うことが可能なICチップが搭載された非接触型I
Cカードや非接触型ICラベル、あるいは非接触型ICタグがその優れた利便性から急速
な普及が進みつつある。
【0003】
このような非接触型ICカードや非接触型ICラベル、あるいは非接触型ICタグとい
った非接触型情報記録媒体においては、ベース基材上に導電性のアンテナが形成されると
ともに、このアンテナに接続されるようにICチップが搭載されて構成され、非接触型情
報記録媒体に対して情報の書き込みや読み出しを行う装置を近接させることによって、ア
ンテナが電波に共振したり、電磁誘導によってアンテナに電流が流れたりし、ICチップ
に対して情報の書き込みや読み出しが行われることになる。
【0004】
ところが、このように非接触型情報記録媒体に対して情報の書き込みや読み出しを行う
装置を近接させるだけで、ICチップに対して情報の書き込みや読み出しが行われること
になるため、ICチップに書き込まれた情報が不用意に読み出されてしまう可能性があり
、セキュリティ上好ましくない。
【0005】
ここで、コイル状のアンテナの一部を断線させ、その断線した部分にスイッチング機能
を設けることにより導通状態を切り換え可能とする非接触型ICカードが考えられている
(例えば、特許文献1参照。)。このようにコイル状のアンテナの一部を断線させて導通
状態を切り換える構成を設けることにより、ICチップに書き込まれた情報が不用意に読
み出されてしまうことを回避することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−67447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したようにコイル状のアンテナの一部を断線させ、その断線した部
分にスイッチング機能を設けることにより導通状態を切り換え可能とするものにおいては
、アンテナの一部を断線させる必要があるため、アンテナの通信特性が変わってしまう虞
れがある。また、そのようなスイッチング機能を新たに設けることとなるため、非接触型
情報記録媒体において新たな設計部分が生じてしまい、その部分についても不良対策等を
施さなければならなくなってしまうという問題点がある。
【0008】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、
ベース基材上に、導電性のアンテナが形成されるとともに、アンテナと接続されることに
より非接触状態にて情報の書き込みや読み出しが可能なICチップが配置された非接触型
情報記録媒体において、アンテナの一部を断線させてスイッチング機能を新たに設けるこ
となく、ICチップに書き込まれた情報が不用意に読み出されてしまうことを回避するこ
とができる非接触型情報記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、
ベース基材上に、導電性のアンテナが形成されるとともに、前記アンテナと接続される
ことにより非接触状態にて情報の書き込み及び/または読み出しが可能なICチップが配
置された非接触型情報記録媒体において、
前記ICチップは、前記アンテナに接続される端子が前記アンテナに対向するような位
置に配置され、
前記ベース基材上にて前記ICチップを該ICチップの前記端子が前記アンテナに対し
て非接触状態となるように保持し、外力によって前記端子が前記アンテナに接する方向に
変形可能でかつ、外力が加わらなくなると元の形状に復元する保持部材を有する。
【0010】
上記のように構成された本発明においては、外力が加わっていない状態においては、I
Cチップの端子は、アンテナに対向するような位置に配置されているものの、ICチップ
が、その端子がアンテナに対して非接触状態となるように保持部材によって保持されてい
るので、アンテナにはICチップの端子が接触しておらず、そのため、ICチップとアン
テナとが導通していない。この状態において、ICチップに対して情報の書き込みや読み
出しを行う装置を近接させても、ICチップに対して情報の書き込みや読み出しは行われ
ない。保持部材の上方から外力が加わると、保持部材が外力によってICチップの端子が
アンテナに接する方向に変形し、ICチップの端子とアンテナとが接触し、それにより、
ICチップとアンテナとが導通する。この状態において、ICチップに対して情報の書き
込みや読み出しを行う装置を近接させると、アンテナに電流が流れてこの電流がICチッ
プに供給され、ICチップに対して情報の書き込みや読み出しが行われる。その後、外力
が加わらなくなると、保持部材が元の形状に復元し、ICチップの端子がアンテナと接触
していない状態に戻り、ICチップに対して情報の書き込みや読み出しを行う装置を近接
させても、ICチップに対して情報の書き込みや読み出しは行われなくなる。
【0011】
また、アンテナが電波に共振するアンテナであり、ICチップが、アンテナが電波に共
振することにより、情報の書き込み及び/または読み出しが行われるものである場合は、
アンテナの一部を断線させて導通状態を切り換える構成としても、実際には通信が可能な
状態となっており、ICチップに対して情報の書き込みや読み出しを行う装置を近接させ
た場合、ICチップに対して情報の書き込みや読み出しが行われてしまう虞れがある。本
発明においては、外力が加わっていない状態においては、ICチップとアンテナとが導通
していないため、ICチップに対して情報の書き込みや読み出しを行う装置を近接させて
も、ICチップに対して情報の書き込みや読み出しは行われない。
【0012】
また、アンテナ上に配置された非硬化樹脂を有し、ICチップを非硬化樹脂上に配置さ
れ、保持部材をICチップ及び非硬化樹脂を覆うようにベース基材上に配置された塗膜と
することも考えられ、それにより、薄型化を実現することができる。
【0013】
このような非接触型情報記録媒体は、
前記ベース基材上に前記アンテナを形成する工程と、
前記アンテナ上に前記非硬化樹脂を配置する工程と、
前記非硬化樹脂上に前記ICチップを前記端子が前記アンテナに対向するように配置す
る工程と、
前記ICチップを前記ベース基材に向かって押し付けることにより、前記端子と前記ア
ンテナとの間隔を所定の間隔に設定する工程と、
前記ベース基材の前記ICチップ及び前記アンテナを含む領域に硬化型樹脂を塗工する
ことにより、前記ICチップ及び前記非硬化樹脂を覆うように前記ベース基材上に前記保
持部材を配置する工程とを有する製造方法によって製造することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明においては、ICチップの端子がアンテナに対向するような
位置に配置され、ベース基材上にてICチップをICチップの端子がアンテナに対して非
接触状態となるように保持し、外力によって端子がアンテナに接する方向に変形可能でか
つ、外力が加わらなくなると元の形状に復元する保持部材を有し、外力が加わっていない
状態においては、ICチップとアンテナとが導通せず、外力が加わるとICチップとアン
テナとが導通し、その後、外力が加わらなくなるとICチップとアンテナとが導通しない
状態となる構成としたため、アンテナの一部を断線させてスイッチング機能を新たに設け
ることなく、ICチップに書き込まれた情報が不用意に読み出されてしまうことを回避す
ることができる。
【0015】
また、アンテナが電波に共振するアンテナであり、ICチップが、アンテナが電波に共
振することにより、情報の書き込み及び/または読み出しが行われるものにおいては、上
記のような構成とすることにより、ICチップに対して情報の書き込みや読み出しを行う
装置を近接させても、ICチップに対して情報の書き込みや読み出しを確実に行われなく
することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の非接触型情報記録媒体の第1の実施の形態に用いられるインレットの構成を示す図であり、(a)は表面図、(b)は(a)に示したA−A’断面図、(c)は(b)に示したB部拡大図である。
【図2】図1に示したインレットの製造方法を説明するための図である。
【図3】図1に示したインレットの作用を説明するための図であり、(a)はインレットが内蔵された非接触型ICタグの表面の構成を示す図、(b)は(a)に示した非接触型ICタグの通信ボタンが押下されていない場合のICチップ近傍の状態を示す図、(c)は(a)に示した非接触型ICタグの通信ボタンが押下された場合のICチップ近傍の状態を示す図である。
【図4】本発明の非接触型情報記録媒体の第2の実施の形態を示す図であり、(a)は表面図、(b)は内部構造を示す図、(c)は(a),(b)に示したA−A’断面図、(d)は(c)に示したB部拡大図である。
【図5】図4に示した非接触型ICタグの製造方法を説明するための図である。
【図6】図4に示した非接触型ICタグの作用を説明するための図であり、(a)は非接触型ICタグの通信ボタンが押下されていない場合のICチップ近傍の状態を示す図、(b)は非接触型ICタグの通信ボタンが押下された場合のICチップ近傍の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0018】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の非接触型情報記録媒体の第1の実施の形態に用いられるインレットの
構成を示す図であり、(a)は表面図、(b)は(a)に示したA−A’断面図、(c)
は(b)に示したB部拡大図である。
【0019】
本形態におけるインレットは図1に示すように、PETやPET−GあるいはPP等の
樹脂やコート紙や上質紙等の紙からなるベース基材30上に、導電性材料からなりアンテ
ナを構成する略三角形状の2つのアンテナパターン20a,20bが形成されるとともに
、この2つのアンテナパターン20a,20bに対向する領域にICチップ10が配置さ
れて構成されている。2つのアンテナパターン20a,20bは、略三角形の1つの頂点
が間隙を介して互いに対向しており、この頂点が給電点となっている。ICチップ10は
、アンテナパターン20a,20bと接続されるための端子となるバンプ11を有し、こ
のバンプ11が、アンテナパターン20a,20bの給電点に対向するように配置されて
いる。このICチップ10は、アンテナパターン20a,20bが電波に共振してアンテ
ナパターン20a,20bに電流が流れた場合に、その電流が供給されることにより、情
報の書き込みや読み出しが行われることになる。ICチップ10としては、情報の書き込
みのみが可能なもの、情報の読み出しのみが可能なもの、情報の書き込み及び読み出しが
可能なもののいずれのものでも本形態に用いることができる。また、ベース基材30上に
は、アンテナパターン20a,20bの給電点を跨るように非硬化樹脂40が配置されて
いる。この非硬化樹脂40は、ポリエチレングリコール等からなり、硬化していないこと
によりその形状が変形可能なものとなっている。また、非硬化樹脂40の代わりに、グリ
セリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ドデカノール、プロリレングリコ
ール等からなる粘性液体や、ゼラチン等からなるゲルを用いることも考えられる。ICチ
ップ10は、この非硬化樹脂40上に配置されている。そのため、ICチップ10のバン
プ11は、アンテナパターン20a,20bの給電点に対向しているものの、非硬化樹脂
40を介して対向しているため、アンテナパターン20a,20bとは接していない。ま
た、ベース基材30上には、ICチップ10及び非硬化樹脂40を覆うように保持部材と
なる被覆膜50が配置されており、ICチップ10は、この被覆膜50によっても、端子
11がアンテナパターン20a,20bに対して非接触状態となるように保持されている
。この被覆膜50は、UV硬化樹脂や熱硬化樹脂等の硬化型樹脂からなる塗膜であって、
非硬化樹脂40上にICチップ10が配置された状態で、ICチップ10及び非硬化樹脂
40を含む領域にスプレーディスペンスやコーティングによって塗工されることにより、
ベース基材30上にてICチップ10及び非硬化樹脂40を覆うように配置され、その裾
部がベース基材30に当接した状態となっている。被覆膜50は、UV硬化樹脂や熱硬化
樹脂が硬化したものであるが、スプレーディスペンスやコーティングによって塗工される
ことによって形成されるものであるため、その厚さが薄く、それにより、弾性力を有して
おり、外力によって変形可能でかつ、外力が加わらなくなると元の形状に復元する。IC
チップ10としては、例えば、一辺が600μm、バンプ11の高さが約20μmのもの
が用いられ、その場合、バンプ11とアンテナパターン20a,20bとの間隔を約40
μm、ICチップ10の下面のベース基材30からの高さを約60μmとすることができ
る。
【0020】
以下に、上記のように構成されたインレット1の製造方法について説明する。
【0021】
図2は、図1に示したインレット1の製造方法を説明するための図である。
【0022】
まず、ベース基材30上に、略三角形状の2つのアンテナパターン20a,20bを、
略三角形状の1つの頂点が間隙を介して互いに対向するように形成する(図2(a))。
このアンテナパターン20a,20bの形成は、樹脂バインダーに銀や銅、あるいはスズ
等の導電性材料が含有した導電性ペーストを用いたスクリーン印刷や、エッチングやめっ
き等によって行うことが考えられる。
【0023】
次に、ベース基材30に対して、上述したような材料からなる非硬化樹脂40をアンテ
ナパターン20a,20bの給電点を跨るように滴下し、ベース基材30上において、ア
ンテナパターン20a,20bの給電点を跨るように非硬化樹脂40を配置する(図2(
b))。
【0024】
次に、ベース基材30上に配置された非硬化樹脂40上にICチップ10を、ICチッ
プ10のバンプ11がアンテナパターン20a,20bの給電点に対向するように配置す
る(図2(c))。この状態においては、ICチップ10は、この非硬化樹脂40上に配
置されているため、ICチップ10のバンプ11は、アンテナパターン20a,20bの
給電点に対向しているものの、非硬化樹脂40を介して対向しているため、アンテナパタ
ーン20a,20bとは接していない。なお、この非硬化樹脂40及びICチップ10の
配置は、ベース基材30上に接着剤を塗布し、その上にICチップ10を載置することに
よりベース基材30上にICチップ10を接着する一般的な工程と同様の装置を用いて行
うことができる。
【0025】
次に、非硬化樹脂40上に配置されたICチップ10をベース基材30に向かって押し
付けることにより、ICチップ10のバンプ11とアンテナパターン20a,20bとの
間隔が上述したように16μmとなるように調整する(図2(d))。
【0026】
その後、非硬化樹脂40上にICチップ10が配置された状態で、ベース基材30のI
Cチップ10及び非硬化樹脂40を含む領域にUV硬化樹脂や熱硬化樹脂を塗工して硬化
させることにより、ICチップ10及び非硬化樹脂40を覆うようにベース基材30上に
被覆膜50を配置する(図2(e))。なお、UV硬化樹脂を用いた場合は、UV硬化樹
脂を塗工した後に紫外線を照射して硬化させ、また、熱硬貨樹脂を用いた場合は、熱硬化
樹脂を塗工した後に熱を加えて硬化させる。
【0027】
以下に、上記のようにして製造されたインレット1の作用について説明する。
【0028】
図3は、図1に示したインレット1の作用を説明するための図であり、(a)はインレ
ット1が内蔵された非接触型ICタグの表面の構成を示す図、(b)は(a)に示した非
接触型ICタグ2の通信ボタン62が押下されていない場合のICチップ10近傍の状態
を示す図、(c)は(a)に示した非接触型ICタグ2の通信ボタン62が押下された場
合のICチップ10近傍の状態を示す図である。
【0029】
図1に示したインレット1は、例えば、図3(a)に示すような非接触型情報記録媒体
である非接触型ICタグ2に内蔵して用いられる。図3(a)に示す非接触型ICタグ2
は、図1に示したインレット1において、ベース基材30のアンテナパターン20a,2
0bが形成されるとともにICチップ10が配置された面に表面シート60が接着されて
構成されている。この表面シート60には、その表面に情報61が表示されているととも
に、ICチップ10に対向する領域に、この非接触型ICタグ2を動作させるための通信
ボタン62が表示されている。この通信ボタン62は、情報61とともに印刷によって表
示されていてもよいし、ラベル等が貼付されることによって表示されていてもよい。
【0030】
このように構成された非接触型ICタグ2に対して通信ボタン62が押下されていない
場合、すなわち外力が加わっていない場合は、図3(b)に示すように、ICチップ10
が非硬化樹脂40上に配置されていることにより、ICチップ10のバンプ11は、アン
テナパターン20a,20bの給電点に対向しているものの、非硬化樹脂40を介して対
向しているため、アンテナパターン20a,20bとは接していない。また、外力が加わ
っていない場合においては、ICチップ10は、被覆膜50によってもアンテナパターン
20a,20bに対して非接触状態となるように保持されている。そのため、この状態に
おいて、ICチップ10に対して情報の書き込みや読み出しを行う装置を近接させ、アン
テナパターン20a,20bがその装置からの電波に共振して電流が流れても、その電流
がICチップ10には供給されることがなく、この状態でICチップ10に対して情報の
書き込みや読み出しが行われることはない。
【0031】
非接触型ICタグ2に対して通信ボタン62が押下されると、すなわち表面シート60
側から外力が加わると、ICチップ10及び非硬化樹脂40を覆うように配置された被覆
膜50が外力によって変形可能であることから、図3(c)に示すように、被覆膜50が
、ICチップ10のバンプ11がアンテナパターン20a,20bに接する方向に変形し
、さらに、ICチップ10とアンテナパターン20a,20bとの間に介在している非硬
化樹脂40も変形し、ICチップ10のバンプ11とアンテナパターン20a,20bと
が接触する。これにより、ICチップ10とアンテナパターン20a,20bとが導通す
る。この状態において、ICチップ10に対して情報の書き込みや読み出しを行う装置を
近接させると、装置からの電波によってアンテナパターン20a,20bに電流が流れた
電流がICチップ10に供給され、ICチップ10に対して情報の書き込みや読み出しが
行われる。
【0032】
その後、非接触型ICタグ2に対して通信ボタン62が押下されなくなると、すなわち
外力が加わらなくなると、被覆膜50が、外力が加わらなくなると元の形状に復元するも
のであるため、図3(b)に示したように、被覆膜50が元の形状に復元し、ICチップ
10のバンプ11とアンテナパターン20a,20bとが非硬化樹脂40を介して対向し
た状態に戻り、ICチップ10のバンプ11がアンテナパターン20a,20bと接して
いない状態となる。
【0033】
このように、被覆膜50によって、外力が加わっていない状態においては、ICチップ
10の端子11とアンテナパターン20a,20bとを非接触状態としてこれらを非導通
状態とし、外力が加わった場合にICチップ10の端子11とアンテナパターン20a,
20bとを接触状態としてこれらを導通状態とするため、アンテナの一部を断線させてス
イッチング機能を新たに設けることなく、ICチップ10に書き込まれた情報が不用意に
読み出されてしまうことを回避することができる。
【0034】
また、本形態のように、情報の書き込みや読み出しを行うためのアンテナ及びICチッ
プ10が、2つのアンテナパターン20a,20bからなるアンテナが電波に共振するア
ンテナであり、ICチップ10が、このアンテナが電波に共振することにより、情報の書
き込みや読み出しが行われるものである場合は、アンテナの一部を断線させて導通状態を
切り換える構成としても、実際には通信が可能な状態となっており、ICチップ10に対
して情報の書き込みや読み出しを行う装置を近接させた場合、ICチップ10に対して情
報の書き込みや読み出しが行われてしまう虞れがある。本形態においては、外力が加わっ
ていない状態においては、ICチップ10とアンテナを構成するアンテナパターン20a
,20bとが導通していないため、ICチップ10に対して情報の書き込みや読み出しを
行う装置を近接させても、ICチップ10に対して情報の書き込みや読み出しは行われな
い。
【0035】
また、ICチップ10を保持する保持部材として、ベース基材30のICチップ10及
び非硬化樹脂40を含む領域にUV硬化樹脂や熱硬化樹脂を塗工して硬化させることによ
り構成される被覆膜50を用いることにより、ICチップ10が配置された領域における
薄型化を実現することができる。
【0036】
(第2の実施の形態)
図4は、本発明の非接触型情報記録媒体の第2の実施の形態を示す図であり、(a)は
表面図、(b)は内部構造を示す図、(c)は(a),(b)に示したA−A’断面図、
(d)は(c)に示したB部拡大図である。
【0037】
本形態は図4に示すように、PETやPET−GあるいはPP等の樹脂やコート紙や上
質紙等の紙からなるベース基材130上に、導電性材料からなりアンテナを構成する略三
角形状の2つのアンテナパターン120a,120bが形成され、このベース基材130
のアンテナパターン120a,120bが形成された面に保持部材となる表面シート16
0がホットメルト等の粘着剤140によって接着されて構成されている。2つのアンテナ
パターン120a,120bは、略三角形の1つの頂点が間隙を介して互いに対向してお
り、この頂点が給電点となっている。表面シート160には、その一方の面に、アンテナ
パターン120a,120bが電波に共振してアンテナパターン120a,120bに電
流が流れた場合に、その電流が供給されることにより、情報の書き込みや読み出しが行わ
れるICチップ110が搭載、接着されており、ICチップ110が搭載、接着された面
を接着面としてベース基材130に接着されている。また、表面シート160の表面、す
なわち、ICチップ110が接着された面とは反対側の面には、情報161が表示されて
いるとともに、ICチップ110に対向する領域に、この非接触型ICタグ102を動作
させるための通信ボタン162が表示されている。この通信ボタン162は、情報161
とともに印刷によって表示されていてもよいし、ラベル等が貼付されることによって表示
されていてもよい。なお、ベース基材130上において、ICチップ110とその周辺部
に対向する領域には粘着剤140が塗布されておらず、ICチップ110は、表面シート
160のみに固定された状態となっている。このICチップ110は、アンテナパターン
120a,120bと接続されるための端子となるバンプ111を有し、表面シート16
0によって、このバンプ111が、アンテナパターン120a,120bの給電点に非接
触状態で対向するように配置、保持されている。ICチップ110としては、情報の書き
込みのみが可能なもの、情報の読み出しのみが可能なもの、情報の書き込み及び読み出し
が可能なもののいずれのものでも本形態に用いることができる。この表面シート160と
しては、紙や樹脂からなるものが考えられるが、弾性力を有しており、外力が加わってい
ない状態においては、ICチップ110をバンプ111がアンテナパターン120a,1
20bに接しないように保持し、外力が加わった場合に、ICチップ110のバンプ11
1がアンテナパターン120a,120bに接する方向に変形可能でかつ、外力が加わら
なくなると元の形状に復元するものとなっている。
【0038】
以下に、上記のように構成された非接触型ICタグ102の製造方法について説明する

【0039】
図5は、図4に示した非接触型ICタグ102の製造方法を説明するための図である。
【0040】
まず、ベース基材130上に、略三角形状の2つのアンテナパターン120a,120
bを、略三角形状の1つの頂点が間隙を介して互いに対向するように形成する(図5(a
))。このアンテナパターン120a,120bの形成は、樹脂バインダーに銀や銅、あ
るいはスズ等の導電性材料が含有した導電性ペーストを用いたスクリーン印刷や、エッチ
ングやめっき等によって行うことが考えられる。
【0041】
また、表面シート160の一方の面に、ICチップ110のバンプ111と反対側の面
が接着面となるようにICチップ110を接着する(図5(b))。
【0042】
次に、ベース基材130のアンテナパターン120a,120bが形成された面上に、
アンテナパターン120a,120bの給電点及びその給電点間の領域を除いて粘着剤1
40を塗布する(図5(c))。この粘着剤140の塗布厚は、ICチップ110のバン
プ111を合わせた高さよりも厚くなるようにする。
【0043】
その後、ICチップ110が接着された表面シート160と粘着剤140が塗布された
ベース基材130とを、表面シート160のICチップ110が接着された面と、ベース
基材130の粘着剤140が塗布された面とが互いに対向するように重ね合わせ、粘着剤
140によってこれらを接着する(図5(d))。この際、ベース基材130の表面シー
ト160に対向する面のうち、アンテナパターン120a,120bの給電点及びその給
電点間の領域には、粘着剤140が塗布されていないため、ICチップ110は、表面シ
ート160のみに固定された状態となる。また、この粘着剤140の塗布厚を、ICチッ
プ110のバンプ111を合わせた高さよりも厚くなるようにしていることにより、IC
チップ110のバンプ111がアンテナパターン120a,120bと非接触状態となる

【0044】
以下に、上記のようにして製造された非接触型ICタグ102の作用について説明する

【0045】
図6は、図4に示した非接触型ICタグ102の作用を説明するための図であり、(a
)は非接触型ICタグ102の通信ボタン162が押下されていない場合のICチップ1
10近傍の状態を示す図、(b)は非接触型ICタグ102の通信ボタン162が押下さ
れた場合のICチップ110近傍の状態を示す図である。
【0046】
図4に示した非接触型ICタグ102に対して通信ボタン162が押下されていない場
合、すなわち外力が加わっていない場合は、図6(a)に示すように、ICチップ110
が、表面シート160によってバンプ111がアンテナパターン120a,120bに対
して非接触状態に保持されているため、ICチップ110のバンプ111は、アンテナパ
ターン120a,120bの給電点に対向しているものの、アンテナパターン120a,
120bとは接していない。そのため、この状態において、ICチップ110に対して情
報の書き込みや読み出しを行う装置を近接させ、アンテナパターン120a,120bが
その装置からの電波に共振して電流が流れても、その電流がICチップ110には供給さ
れることがなく、この状態でICチップ110に対して情報の書き込みや読み出しが行わ
れることはない。
【0047】
非接触型ICタグ102に対して通信ボタン162が押下されると、すなわち表面シー
ト160側から外力が加わると、表面シート160がICチップ110のバンプ111が
アンテナパターン120a,120bに接する方向に変形可能なものであり、かつ、表面
シート160とベース基材130とを接着している粘着剤140がICチップ110の周
辺部には塗布されていないことから、図6(b)に示すように、表面シート160のIC
チップ110が接着された領域が、ICチップ110のバンプ111がアンテナパターン
120a,120bに接する方向に変形し、ICチップ110のバンプ111とアンテナ
パターン120a,120bとが接触する。これにより、ICチップ110とアンテナパ
ターン120a,120bとが導通する。この状態において、ICチップ110に対して
情報の書き込みや読み出しを行う装置を近接させると、装置からの電波によってアンテナ
パターン120a,120bに電流が流れた電流がICチップ110に供給され、ICチ
ップ110に対して情報の書き込みや読み出しが行われる。
【0048】
その後、非接触型ICタグ102に対して通信ボタン162が押下されなくなると、す
なわち外力が加わらなくなると、表面シート160が、外力が加わらなくなると元の形状
に復元するものであるため、図6(a)に示したように、表面シート160が元の形状に
復元し、ICチップ110のバンプ111とアンテナパターン120a,120bとが非
接触状態に戻る。
【0049】
このように、表面シート160によって、外力が加わっていない状態においては、IC
チップ110の端子111とアンテナパターン120a,120bとを非接触状態として
これらを非導通状態とし、外力が加わった場合にICチップ110の端子111とアンテ
ナパターン120a,120bとを接触状態としてこれらを導通状態とするため、アンテ
ナの一部を断線させてスイッチング機能を新たに設けることなく、ICチップ110に書
き込まれた情報が不用意に読み出されてしまうことを回避することができる。
【0050】
なお、上述した2つの実施の形態においては、2つのアンテナパターン20a,20b
,120a,120bからなるダイポール型のアンテナを有するものを例に挙げて説明し
たが、1つのアンテナパターンからなるモノポール形のアンテナを有するものであっても
よい。
【0051】
また、上述した2つの実施の形態においては、アンテナパターン20a,20b,12
0a,120bが電波に共振してアンテナパターン20a,20b,120a,120b
に電流が流れた場合に、その電流がICチップ10,110に供給されることにより、I
Cチップ10,110に対して情報の書き込みや読み出しが行われるものを例に挙げて説
明したが、ベース基材30,130上にコイル状のアンテナが形成されており、このアン
テナに電磁誘導によって電流が流れ、この電流がICチップ10,110に供給されるこ
とにより、ICチップ10,110に対して情報の書き込みや読み出しが行われるもので
あってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 インレット
2,102 非接触型ICタグ
10,110 ICチップ
11,111 バンプ
20a,20b,120a,120b アンテナパターン
30,130 ベース基材
40 非硬化樹脂
50 被覆膜
60,160 表面シート
61,161 情報
62,162 通信ボタン
140 粘着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基材上に、導電性のアンテナが形成されるとともに、前記アンテナと接続される
ことにより非接触状態にて情報の書き込み及び/または読み出しが可能なICチップが配
置された非接触型情報記録媒体において、
前記ICチップは、前記アンテナに接続される端子が前記アンテナに対向するような位
置に配置され、
前記ベース基材上にて前記ICチップを該ICチップの前記端子が前記アンテナに対し
て非接触状態となるように保持し、外力によって前記端子が前記アンテナに接する方向に
変形可能でかつ、外力が加わらなくなると元の形状に復元する保持部材を有する非接触情
報記録媒体。
【請求項2】
請求項1に記載の非接触型情報記録媒体において、
前記アンテナは、電波に共振するアンテナであり、
前記ICチップは、前記アンテナが電波に共振することにより、情報の書き込み及び/
または読み出しが行われる非接触型情報記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−267150(P2010−267150A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119186(P2009−119186)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】