説明

非接触式ICカードリーダライタ

【課題】 非接触式ICカードリーダライタにおいて、通信部の交信範囲を明確に表示することにより、利用者が非接触式ICカードを正確に交信範囲に近づけられることができるようにするとともに、データ処理結果を利用者に明確に認識させる。
【解決手段】 非接触式ICカードリーダライタ1の電源がONされると、LED表示部4の電源表示灯4aが点灯する(S1)。また、液晶表示部2に受付可能状態を示す画像データが表示された(S3)後、非接触式ICカードが交信範囲5にかざされると(S5−肯定)、該ICカードの保有しているデータのリード/ライトを実行し(S6)、正常に終了すれば(S7−肯定)、LED表示部4のデータ処理識別表示灯4bを緑色に発光させる(S8)。逆に正常に終了しない場合(S7−否定)は、LED表示部4のデータ処理識別表示灯4bを赤色に発光させる(S9)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触式ICカードリーダライタに関する発明であって、鉄道や乗合バス等における非接触式ICカードによる運賃支払いのために使用される非接触式ICカードリーダライタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の非接触式ICカードリーダライタは、例えば特許文献1に示されている。図4〜図6は特許文献1に示されている乗合バスに使用される非接触式ICカードリーダライタ51であって、図6に示されるように、乗務員用料金操作盤52と共に当該非接触式ICカードリーダライタ51を2台を接続して使用され、乗車時に乗客が乗車側に設置された非接触式ICカードリーダライタ51に非接触式ICカードを近づけると、その走行区間内における最高料金が、非接触式ICカードリーダライタ51の正面の上部に設けられた液晶表示部53に表示されて、一旦最高料金相当額が引き落とされる。そして、降車時に降車側に設置された非接触式ICカードリーダライタ51に再度非接触式ICカードを近づけると、実際の利用区間の運賃と最高金額との差額が液晶表示された上、差額分が書き戻されるしくみになっている。あるいは、乗車時に乗客が乗車側に設置された非接触式ICカードリーダライタ51に非接触式ICカードを近づけると、乗車地データを非接触式ICカードに書き込み、降車時に降車側に設置された非接触式ICカードリーダライタ51に再度非接触式ICカードを近づけると、非接触式ICカードに書き込まれている乗車地データと現在地とから運賃を算出し、この運賃が引き落とされ、減算後の残金が非接触式ICカードに書き込まれるしくみのものもある。
【0003】
また、この非接触式ICカードリーダライタ51における透光性を有する一対の矩形上の部分54a、54bの奥には、それぞれ電球が設けられており、上述のカードデータ処理が正常に行われた場合には、左側54aの電球(図示しない)が点灯し、正常に行われなかった場合には右側54bの電球(図示しない)が点灯するようになっている。このように、料金データ等を非接触式ICカードに記憶させておくことにより、乗客は非接触式ICカードリーダライタ51に設けられた通信部の交信範囲55に非接触ICカードを近づけるだけでよく、磁気カードリーダライタと比較すると、定期入れからのカードの出し入れや投入口の投入が不要になり、利用者における乗降車時の煩わしさを解消してのカードリーダライタ利用率を向上することができる。なお、本例では、乗合バスにおける使用例を説明したが、鉄道の自動改札機用としても使用される。
【特許文献1】意匠登録第986375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記非接触式ICカードを介してデータ処理を行う非接触式ICカードリーダライタでは、利用者は非接触式ICカードを通信部の交信部の交信範囲に近づけるだけであるため、磁気カードリーダライタの磁気券の挿入口におけるシャッタのように受付の可否を表示する手段がなく、データ処理の可否、即ち非接触式ICカードの受付状態を利用者に認識させることができず、データ処理が拒否された場合に、券の不良により拒否されたのか又はその改札機が受付中止状態であったのか判断できず、利用者において適当な対応をとることができない問題があった。また、非接触式ICカードリーダライタにおいて通信部が設けられている位置を確実に知らせる手段がないため、非接触式ICカードを位置させるべき交信範囲が明確に認知できず、非接触式ICカードが正確に交信範囲に近づけられない場合があり、処理部において通行データの読取り不良を生じる問題があった。
【0005】
本発明は、非接触式ICカードリーダライタに設けた表示手段により非接触ICカードの受付状態を表示することにより、利用者が受付状態に応じた適当な処置を取ることができる非接触式ICカードリーダライタを提供することを目的としている。
【0006】
また、通信部の交信範囲を明確に表示することにより、利用者において非接触式ICカードを正確に交信範囲に近づけられることができるようにし、処理装置の読取り不良の発生を未然に防止することができる非接触式ICカードリーダライタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明のうちで請求項1に記載の非接触式ICカードリーダライタは、
通信部の交信範囲に近づける非接触式ICカードに対して該非接触式ICカードのデータの書き込みおよび読み込みを行う非接触式ICカードリーダライタにおいて、
非接触式ICカードが受け付け可能か否かの状態を文字言語表示あるいは記号表示する表示手段を設けた、
ことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の非接触式ICカードリーダライタは、
通信部の交信範囲に近づける非接触式ICカードに対して該非接触式ICカードのデータの書き込みおよび読み込みを行う非接触式ICカードリーダライタにおいて、
前記通信部の交信範囲の外側を囲う発光表示手段を設けた、
ことを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の非接触式ICカードリーダライタは、請求項2に記載の非接触式ICカードリーダライタに加えて、
前記通信部の交信範囲の外側を囲う発光表示手段は、当該非接触式ICカードリーダライタの電源が投入された場合に点灯する電源表示灯である、
ことを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に記載の非接触式ICカードリーダライタは、請求項2に記載の非接触式ICカードリーダライタに加えて、
前記通信部の交信範囲の外側を囲う発光表示手段は、正常にデータ処理が終了した場合と正常にデータ処理が終了しなかった場合とを異なる発光色で点灯するデータ処理識別表示灯である、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の非接触式ICカードリーダライタによれば、
文字表示を可能とする表示手段を設け、そこに非接触式ICカードが受け付け可能か否かの状態を文字言語あるいは記号にて表示することとしたので、利用者は、非接触式ICカードリーダライタが使用可能であるかどうかを明確に察することができる。
【0012】
請求項2に記載の非接触式ICカードリーダライタによれば、
非接触式ICカードに対する通信部の交信範囲の外側を囲うようにして発光表示手段を設けたことにより、その交信範囲の位置を利用者に対して明確に認識させることができる。
【0013】
請求項3に記載の非接触式ICカードリーダライタによれば、
前記発光表示手段として、非接触式ICカードリーダライタの電源が投入されたことを表す電源表示灯を設けた。これによって、当該非接触式ICカードリーダライタの受信が受付状態にあるか否かには無関係に、電源が投入された場合には点灯しているので、その交信範囲の位置を利用者に対して明確に認識させることができる。
【0014】
請求項4に記載の非接触式ICカードリーダライタによれば、
前記発光表示手段として、データ処理識別表示灯を設け、正常にデータ処理が終了した場合と正常にデータ処理が終了しなかった場合とを異なる発光色で点灯するようにした。これによって、交信範囲を明確に認識するとともに、正常にデータ処理されたかどうかを発光色の違いによって利用者は認識できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図1〜3を用いて説明する。
(実施例)
【0016】
図1は本発明の実施例である非接触式ICカードリーダライタの斜視図である。非接触式ICカードリーダライタ1は、本体ケース7に蓋体6が被せられるようにして嵌合しており、蓋体6の正面側には、液晶表示部2、アンテナ部3およびLED表示部4が設置されている。液晶表示部2には、運賃や残額などのカードデータを表示する他、カードの処理結果、カードの受け付け可能か否かの状態を表示する。アンテナ部3は、本体ケース7内部に設けられた図示しない非接触式ICカードの通信部を構成しており、このアンテナ部3が設けられている位置の上部(蓋体6の正面側)の所定範囲が交信範囲5である。この交信範囲5は、LED表示部4に囲まれた内側の領域である。LED表示部4は、電源表示灯4aとデータ処理識別表示灯4bとから構成される。LED表示部4の下部に位置する本体ケース7内部(図示しない)にはLEDが設けられている。
【0017】
図2は、前記非接触式ICカードリーダライタ1の制御部を構成するブロック図である。CPU11は非接触式ICカードリーダライタ1全体の制御を統括する。ROM12には、CPU11の処理プログラムが予め書き込まれている。また、RAM13には、各種データの一時記憶や利用者数のカウント等を行う領域が設けられている。液晶表示部制御回路14は、液晶表示部2の表示を制御する。表示ドライバ15,16は、LED表示部4の電源表示灯4aとデータ処理識別表示灯4bを点灯制御する。リード/ライト制御回路17は、アンテナ部3を介して非接触式ICカードとの間でデータの読み取りまたは書き込みを行う。
【0018】
図3は、前記非接触式ICカードリーダライタ1の制御部の処理手順を示すフローチャートである。非接触式ICカードリーダライタ1の電源がONされると、LED表示部4の電源表示灯4aが点灯する(S1)。その後、非接触式ICカードの受付の可否を判断し(S2)、アンテナ部3が、受付可能状態になった場合には、液晶表示部2に受付可能状態を示す画像データを表示する(S3)。例えば、「カードをかざして下さい。」「カードをタッチさせてください。」等の文字言語表示をすることもできる。また、「○」のような記号表示を単独表示させても良いし、文字言語表示と併用することも可能である。一方、アンテナ部3が、受付不可能状態の場合には、液晶表示部2に受付不可能状態を示す画像データを表示する(S4)。例えば、「処理中止です。」とか、「他の改札機をご利用ください。」等の文字言語表示をすることもできる。また、「×」のような記号表示を単独表示させても良いし、文字言語表示と併用することも可能である。その後、該ICカードの待ち受け状態に戻る(S2)。
【0019】
液晶表示部2に受付可能状態を示す画像データが表示された(S3)後、非接触式ICカードが交信範囲5にかざされると(S5−肯定)、該ICカードの保有しているデータのリード/ライトを実行し(S6)、正常に終了すれば(S7−肯定)、LED表示部4のデータ処理識別表示灯4bを緑色に発光させる(S8)。逆に正常に終了しない場合(S7−否定)は、LED表示部4のデータ処理識別表示灯4bを赤色に発光させる(S9)。その後、非接触式ICカードリーダライタの電源がOFFされると(S10−肯定)、LED表示部4の電源表示灯4aが消灯する(S1)が、そうでない場合(S10−否定)は、該ICカードの待ち受け状態に戻る(S2)。なお、ステップS5において、非接触式ICカードが交信範囲5にかざされない場合には(S5−否定)、非接触式ICカードリーダライタの電源がOFFされているかどうかを確認し、OFFされると(S10−肯定)、LED表示部4の電源表示灯4aが消灯する(S1)が、そうでない場合(S10−否定)は、該ICカードの待ち受け状態に戻る(S2)。
【0020】
このようにすることによって、非接触式ICカードリーダライタ1に設けた液晶表示部2より、非接触ICカードの受付状態を文字言語表示あるいは記号表示することにより、利用者が受付状態に応じた適当な処置を取ることができる。
【0021】
また、LED表示部4によって通信部の交信範囲を囲い明確に表示することにより、利用者において非接触式ICカードを正確に交信範囲に近づけられることができるようにし、処理装置の読取り/書き込み不良の発生を未然に防止することができる。
【0022】
図4または図5に示すように、従来は、データ処理結果を識別させるランプを別途設けていたが、本実施例では、通信部の交信範囲にこの機能を有する表示灯を設けたので、利用者に処理結果を認識させることができると同時に、交信範囲を正確に認知させる機能を付加させることができる。
【0023】
また、LED表示部4のデータ処理識別表示灯4bを設け、正常にデータ処理が終了した場合と正常にデータ処理が終了しなかった場合とを異なる発光色で点灯するようにしたので、交信範囲5を明確に認識するとともに、正常にデータ処理されたかどうかを発光色の違いによって利用者は認識できるようになる。
【0024】
(応用例等)
なお、本発明は上記の実施例に限定するものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で様々な実施が可能である。例えば、LED表示部4は、電源表示灯4aとデータ処理識別表示灯4bから構成されているが、いずれか一方で構成しても良い。また、データ処理識別表示灯4bの表示色を種々の発光色とすることができ、赤色や緑色に限定するものではない。また、LED表示部4は発光素子としてLEDが使用されているが、電球等の他の発光素子でも良い。
【0025】
また、液晶表示部2に表示させる言語は、日本語に限定されることはなく、外国語でも良いことは当然のことであり、日本語と外国語を併記しても良い。また、LED表示部4のデータ処理識別表示灯4bの発光と共に、スピーカを設けて音声によってデータ処理の結果を利用者に知らせるようにしても良い。また、上記実施例では、文字表示を液晶表示部2にて実施しているが、これに限定するものではなく、LED表示器、電子ペーパー等、他の表示装置でも実用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施例の非接触式ICカードリーダライタの斜視図である。
【図2】本実施例の非接触式ICカードリーダライタの制御部を構成するブロック図である。
【図3】本実施例の非接触式ICカードリーダライタの制御部の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】従来の非接触式ICカードリーダライタの正面図である。
【図5】従来の非接触式ICカードリーダライタの斜視図である。
【図6】従来の非接触式ICカードリーダライタの使用状態を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1 非接触式ICカードリーダライタ、2 液晶表示部、3 アンテナ部、4 LED表示部、4a 電源表示灯、4b データ処理識別表示灯、5 交信範囲、6 蓋体、7 本体ケース、11 CPU、12 ROM、13 RAM、14 液晶表示部制御回路、15、16 表示ドライバ、17 非接触式ICカードリード/ライト制御回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信部の交信範囲に近づけられる非接触式ICカードに対して該非接触式ICカードのデータの書き込みおよび読み込みを行う非接触式ICカードリーダライタにおいて、
非接触式ICカードが受け付け可能か否かの状態を文字言語表示あるいは記号表示する表示手段を設けた、
ことを特徴とする非接触式ICカードリーダライタ。
【請求項2】
通信部の交信範囲に近づけられる非接触式ICカードに対して該非接触式ICカードのデータの書き込みおよび読み込みを行う非接触式ICカードリーダライタにおいて、
前記通信部の交信範囲の外側を囲う発光表示手段を設けた、
ことを特徴とする非接触式ICカードリーダライタ。
【請求項3】
前記通信部の交信範囲の外側を囲う発光表示手段は、当該非接触式ICカードリーダライタの電源が投入された場合に点灯する電源表示灯である、
ことを特徴とする請求項2に記載の非接触式ICカードリーダライタ。
【請求項4】
前記通信部の交信範囲の外側を囲う発光表示手段は、正常にデータ処理が終了した場合と正常にデータ処理が終了しなかった場合とを異なる発光色で点灯するデータ処理識別表示灯である、
ことを特徴とする請求項2に記載の非接触式ICカードリーダライタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−4205(P2006−4205A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180393(P2004−180393)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000144544)レシップ株式会社 (179)
【Fターム(参考)】