説明

非接触情報記録媒体管理装置、非接触情報記録媒体管理方法、プログラム及び記録媒体

【課題】 非接触ICタグの電波強度が所定時間以上一定の状態を保っている場合、その非接触ICタグが管理する対象物が存在しないように認識し、その管理情報を更新する非接触情報記録媒体管理装置を提供する。
【解決手段】 この非接触ICタグ管理装置100は、非接触ICタグ200(以下、単にICタグと記す)と電気的に非接触の形で通信してICタグ200上に記録してある情報(ID情報など)を読み取るアンテナから構成する非接触ICタグ受信部1と、受信するICタグ200のID情報と状態とタイプと対応するデータおよび入退室時刻を記録する対象物管理テーブル部5と、ICタグ200と非接触ICタグ受信部1での受信時の電波強度を一定時間測定し記録する電波強度測定部2と、電波強度測定部2で記録した電波強度の時間的な変化を計測する電波強度変化測定部3と、電波強度変化測定部3の変化の仕方によってICタグ200のID情報と関連付けられた情報とを管理する対象物管理テーブル部5の情報を更新するデータ処理部4とを備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触情報記録媒体管理装置に関し、さらに詳しくは、非接触情報記録媒体の電波強度が所定時間以上一定の場合、その非接触ICタグが管理する対象物が存在しないように管理する非接触情報記録媒体管理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ICカードと呼ばれる情報記録媒体が市場に広く出回っている。ICカードは、クレジットカード、銀行カード、ポイントカード等のカード状、あるいはシート状の形状を備え、カード内にIC(Integrated Circuit)が組み込まれているものを総称した名称である。最近では、ICカードと同様の原理で情報を記録する非接触ICタグ(無線ICタグ)が、各種物品に付されて物品の種別や内容の判別、分類整理、在庫管理等の多様な分野において効率化に貢献している。また産業界においてバーコードに代わる商品識別・管理技術として研究が進められてきたが、それに留まらず社会のIT化・自動化を推進する上での基盤技術として注目が高まっている。無線ICタグは対環境性に優れた数cm程度の大きさで、電波や電磁波で読み取り器と交信する。形状は、ラベル型、カード型、コイン型、スティック型など様々であり、用途に応じて選択する。また通信距離は数mm程度のものから数mのものがあり、これも用途に応じて使い分けられる。将来的にはすべての商品に微小な無線ICタグが添付され、世界的な流通インフラとなる可能性がある。例えば食品を買ってきて冷蔵庫に入れると自動的に識別し、保持している食品のリストを作ったり賞味期限を知らせたりするインテリジェント冷蔵庫などのIT家電が構想されている。
このような非接触ICタグを利用した人物や物品の監視・管理システムは従来技術として数多く提案されている。例えば、特許文献1では、物品および人員が建物内を移動する時にそれらを継続的に追跡するように設計されたシステムについて開示している。
【特許文献1】特許第3147306号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に開示されている従来技術では、特に人物に関して非接触ICタグにより部屋の在室状況や不在状況を管理する場合に、人物のように対象が移動すると、非接触ICタグを例えば机の上に置いたまま部屋を出て行った場合でも、その人物は在室であると認識してしまう。これでは、非接触ICタグによる人物や物品の管理の信頼性を著しく低下させてしまうといった問題がある。
本発明は、かかる課題に鑑み、非接触ICタグの電波強度が所定時間以上一定の状態を保っている場合、その非接触ICタグが管理する対象物が存在しないように認識し、その管理情報を更新する非接触情報記録媒体管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、移動体が所持する非接触情報記録媒体との交信状態に基づいて当該移動体の状態を管理する非接触情報記録媒体管理装置において、前記非接触情報記録媒体に記録されている関連情報を受信する受信手段と、該受信手段により受信した当該非接触情報記録媒体に関する前記関連情報を記録する対象物管理テーブル手段と、前記受信手段により受信した電波強度を時系列に記録する電波強度測定手段と、該電波強度測定手段により記録した電波強度の変化を計算する電波強度変化測定手段と、前記対象物管理テーブル手段に記録した非接触情報記録媒体に対応する前記関連情報を更新するデータ処理手段と、を備えたことを特徴とする。
本発明の非接触情報記録媒体管理装置は、この非接触情報記録媒体に記録されている関連情報を受信する受信手段と、受信した関連情報をテーブルに記録する対象物管理テーブル手段と、受信信号の電波強度を時系列に記録する電波強度測定手段と、その電波強度の変化度合いを計算する電波強度変化測定手段と、関連情報を更新するデータ処理手段とを備えている。
請求項2は、前記関連情報には、少なくとも前記非接触情報記録媒体のID情報、当該非接触情報記録媒体が移動体であるか否かを示す種類情報、当該非接触情報記録媒体の持ち主が在室か否かを示す状態情報、及び対応するデータが記録されていることを特徴とする。
関連情報として、非接触情報記録媒体を識別するID情報と、人物が持ち歩いて移動するものか、或いは移動しない物に備えたものかを示す種類情報と、非接触情報記録媒体の持ち主が実際にその非接触情報記録媒体を所持して在室しているか否かを示す状態情報と、対応するデータが記録されている。
【0005】
請求項3は、前記データ処理手段は、前記対象物管理テーブル手段に記録した関連情報中の前記種類情報が移動体で、且つ前記状態情報が在室状態を示している場合にも、前記電波強度変化測定手段による測定結果に基づいて前記状態情報を不在として更新することを特徴とする。
非接触情報記録媒体の電波強度は人物に付けているだけでその強度は変化する。従って、電波強度変化測定手段の測定結果が所定のレベルで一定となった場合、非接触情報記録媒体を取り外して席を離れたとみなすことができる。即ち、このようなときは状態情報を不在として更新しても誤りではない。
請求項4は、移動体が所持する非接触情報記録媒体との交信状態に基づいて当該移動体の状態を管理する非接触情報記録媒体管理方法において、前記非接触情報記録媒体に記録されている関連情報を受信する受信ステップと、該受信ステップにより受信した当該非接触情報記録媒体に関する前記関連情報を記録する対象物管理テーブルステップと、前記受信ステップにより受信した電波強度を時系列に記録する電波強度測定ステップと、該電波強度測定ステップにより記録した電波強度の変化を計算する電波強度変化測定ステップと、前記対象物管理テーブルステップに記録した非接触情報記録媒体に対応する前記関連情報を更新するデータ処理ステップと、を備えたことを特徴とする。
本発明は請求項1と同様の作用効果を奏する。
【0006】
請求項5は、前記関連情報には、少なくとも前記非接触情報記録媒体のID情報、当該非接触情報記録媒体が移動体であるか否かを示す種類情報、当該非接触情報記録媒体が存在しているか否かを示す状態情報、及び対応するデータが記録されていることを特徴とする。
本発明は請求項2と同様の作用効果を奏する。
請求項6は、前記データ処理ステップは、前記対象物管理テーブルステップに記録した関連情報中の前記種類情報が移動体で、且つ前記状態情報が在室状態を示している場合にも、前記電波強度変化測定ステップによる測定結果に基づいて前記状態情報を不在として更新することを特徴とする。
本発明は請求項3と同様の作用効果を奏する。
請求項7は、請求項4乃至6に記載の非接触情報記録媒体管理方法の各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。
請求項8は、請求項7に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の効果】
【0007】
請求項1、4の発明によれば、非接触情報記録媒体に記録されている関連情報を受信する受信手段と、受信した関連情報をテーブルに記録する対象物管理テーブル手段と、受信信号の電波強度を時系列に記録する電波強度測定手段と、その電波強度の変化度合いを計算する電波強度変化測定手段と、関連情報を更新するデータ処理手段とを備えているので、人物の在室管理を非接触情報記録媒体で行なう場合に、実際には人物が不在であるにも関わらず、非接触情報記録媒体を机上などに放置して部屋を出て行った場合に、間違って在室と認識せずに、不在状態として認識できるようになるため、非接触情報記録媒体による人物や物品の管理を行なう場合の信頼性を向上することができる。
また請求項2、5では、関連情報として、少なくとも非接触情報記録媒体を識別するID情報と、人物が持ち歩いて移動するものか、或いは移動しない物に備えたものかを示す種類情報と、非接触情報記録媒体の持ち主が実際にその非接触情報記録媒体を所持して在室しているか否かを示す状態情報と、対応するデータが記録されているので、関連情報を認識して電波の強弱のデータから正確に人物や物品の管理を行なうことができる。
また請求項3、6では、電波強度変化測定手段の測定結果が所定のレベルで一定となった場合、非接触情報記録媒体を取り外して席を離れたとみなすことができるので、このようなときは状態情報を不在として更新することができる。
また請求項7では、本発明の非接触情報記録媒体管理方法をコンピュータが制御可能なOSに従ってプログラミングすることにより、そのOSを備えたコンピュータであれば同じ処理方法により制御することができる。
また請求項8では、プログラムをコンピュータが読み取り可能な形式で記録媒体に記録することにより、この記録媒体を持ち運ぶことにより何処でもプログラムを稼動することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
移動体が所持する非接触情報記録媒体との交信状態に基づいて当該移動体の状態を管理する非接触情報記録媒体管理装置において、前記非接触情報記録媒体に記録されている関連情報を受信する受信手段と、該受信手段により受信した当該非接触情報記録媒体に関する前記関連情報を記録する対象物管理テーブル手段と、前記受信手段により受信した電波強度を時系列に記録する電波強度測定手段と、該電波強度測定手段により記録した電波強度の変化を計算する電波強度変化測定手段と、前記対象物管理テーブル手段に記録した非接触情報記録媒体に対応する前記関連情報を更新するデータ処理手段と、を備えた。
【0009】
図1は本発明の一実施形態に係る非接触ICタグ管理装置ブロック図である。この非接触ICタグ管理装置100は、非接触ICタグ(非接触情報記録媒体)200(以下、単にICタグと記す)と電気的に非接触の形で通信してICタグ200上に記録してある情報(ID情報など)を読み取るアンテナから構成する非接触ICタグ受信部(受信手段)1と、受信するICタグ200のID情報と状態とタイプと対応するデータおよび入退室時刻を記録する対象物管理テーブル部(対象物管理テーブル手段)5と、ICタグ200と非接触ICタグ受信部1での受信時の電波強度を一定時間測定し記録する電波強度測定部(電波強度測定手段)2と、電波強度測定部2で記録した電波強度の時間的な変化を計測する電波強度変化測定部(電波強度変化測定手段)3と、電波強度変化測定部3の変化の仕方によってICタグ200のID情報と関連付けられた情報とを管理する対象物管理テーブル部5の情報を更新するデータ処理部(データ処理手段)4とを備えて構成される。
尚、個々のICタグ200は固有のID情報を持ち、ICタグ200が発する電波には、そのID情報が含まれる。ID情報はあらかじめそれぞれのIDが重ならないような数値や文字列を用いて、ICタグに記録しておく。ICタグはある特定の周期でタグに記録されている情報を発振する。例えば市販されているICタグで言えば、0.5秒間隔、1秒間隔、あるいは7秒間隔といった間隔で発振するものがある。さらに、本発明で用いる一つ以上のICタグの情報はあらかじめ対象物管理テーブル部5に記憶しておく。対象物管理テーブル部5には、例えば編集用のテキストエディタなどを用いてID情報とタイプとデータを入力しておく。
【0010】
図2は本発明の非接触ICタグ受信部1の処理の流れを示すフローチャートである。前述したようにICタグとは、微小な無線チップにより人やモノを識別・管理する仕組みで、耐環境性に優れた数cm程度の大きさのタグにデータを記憶し、電波や電磁波で受信機と交信するものである。ユーザがICタグを非接触ICタグ受信部1のアンテナに近づけて、ICタグが認識できた場合(S1でYESのルート)、つまり、ICタグと電波により交信できる状態になると、ICタグ中に記録したID情報を読み出す(S2)。ID情報とは例えば、数値や文字列から構成されたそのタグを特定する固有の情報である。ID情報を読み出して、さらにはICタグとの交信時の電波強度を記録する(S3)。またICタグと交信できない場合は(S1でNOのルート)、この受信処理を繰り返す。
図3は本発明の電波強度測定部の処理の流れを示すフローチャートである。ID情報がID番であるタグの電波強度をp(ID)とする。また、このIDに関する電波強度を記録するための記憶バッファをBuf[ID]とし、そのバッファには入力した電波強度の値を配列としてBuf[ID][0]、Buf[ID][1]、Buf[ID][2]、…、Buf[ID][Max]のように記録するとする。このとき電波強度測定部2の処理としては、電波強度p(ID)を受信すると(S11)、順次Buf[ID]に記録している電波強度のデータを後ろに一つずつ送りながら(S13、S14、S16)、バッファの一番先頭Buf[ID][0]にp(ID)の値を代入する(S15)。
【0011】
図9は電波強度測定部2で測定した電波強度と、それを記憶する記憶バッファの様子を示した模式図である。電波強度は、人体の影響、外部環境の影響などによって逐次変化する。ステータス1とステータス2を例として想定する。この図のように、次々と測定される電波強度の値について、最近のMaxのサイズ分の値を記憶する。
即ち、人物は例えば部屋の自分の場所に座っている場合でも、微動したり、人体からの電波への影響のため、ICタグの電波強度が変化する。一方、人物が例えばICタグを机の上に置いたまま部屋を出て行った場合、そのICタグはタグとして認識し続けるが、人体などの影響が軽減するため、電波強度がある程度一定な状態となることが予想される。すなわち、ICタグは人間がつけているだけで変化し、その変化はICタグのみの場合に比べて大きい。
例えば、ICタグの電波強度が0から255の値で変換すると、ICタグを身体につけずに放置すると「161、162、161、160、159、158、159、158、159、159」(分散1.35、最小二乗法による傾き−0.35)といった幅で値が変化する。これを身体に着けた状態にすると「141、153、159、134、159、167、155、182、135、155」(分散14.67、最小二乗法による傾き1.13)といった幅で値が変化する。つまり前者の場合は、ICタグを机に置き忘れたような場合を指し、この場合でも電波強度にばらつきは見られるがそのばらつきは小さいことがわかる。また、後者のように身に着けている場合は、電波強度の変化のばらつきが大きいことがわかる。
ICタグのみの場合にも電波強度の値は変化するがその変化が誤差範囲におさまるのである。本発明はこのようなヒューリスティックスに基づいて、人物がICタグを放置したまま不在状態になった場合に、適切に不在であることを検知する技術である。
【0012】
図4は本発明の電波強度変化測定部の処理の流れを示すフローチャートである。図3の処理で計測したBuf[ID]について、最小二乗法による当てはめを行なう(S21)。最小二乗法とは与えられたデータに対して、モデルとなる多項式を当てはめる処理を指す。Buf[ID]には経過時間ごとに順次計測した電波強度の値が記録されている。最小二乗法については、識者にとって自明であるためここでは説明を割愛する。本発明に最小二乗法を適用する場合、図5のように横軸に経過時間、縦軸に電波強度をとった場合、当てはめる直線10とデータ(a〜d)との距離の差を最小とするように直線の成分を計算(回帰直線)することを指している。
図4の説明に戻ると、最小二乗法による当てはめを行い、そこで求めた回帰直線の傾きがなだらかかどうかを判定する(S22)。すなわち傾きがなだらかということは測定した電波強度がある経過時間の間で変化が少なかったことを表している。傾きがなだらかだった場合(S22でYESのルート)、変数jの値を増やす(例えば1とする。jの初期状態は0を代入する)(S23)。傾きがなだらかな状態とは例えば、図5の回帰直線の傾きの大きさが0.5より小さい場合になだらかであると判断し、0.5以上の場合にはそうでないと判断することを指す。この値はあくまで例であって本発明を設置する場所などの状況によって変わるものである。
次に、このjの値がjの最大値Jmaxを超えたかどうかを判定する(S24)。Jmaxとは例えば値を3とするということは、傾きの変化の計算の処理が3回連続してなだらかであると判定するということになる。jがJmaxを超えた場合(S24でYESのルート)、jを0に戻して(S25)、対象物管理テーブル部を更新する(S26、S27)。一方、ステップS22で回帰直線の傾きがなだらかでない場合(S22でNOのルート)、jが正の値であるかをチエックし(S28)、正であれば(S28でYESのルート)、jをデクリメントする。
【0013】
図6は本発明の対象物管理テーブル部のテーブルの一例を示す図である。対象物管理テーブル部5は、理想的にはパソコンのCPUのような記憶装置で実現されており、情報をマトリクス状に管理できるものである。対象物管理テーブル部5には、ICタグを固有に識別するIDを保持する「ID情報」20、該当するICタグのID情報が非接触ICタグ受信部1で受信されたかどうかの受信状態を保持する「受信」21、そのタグの持ち主(人あるいは物)の「状態」22(在室か不在か)、部屋の名前を記録する「部屋名」23、入室した時刻を表す「入室時刻」24、退室した時刻を表す「退室時刻」25、その対象物の「タイプ」(人物か物品かなど)26、その対象物を表す文字列「データ」27(人名「佐藤」、物品名「複写機」など)を持つ。
部屋名23はどの部屋にICタグが存在しているのかを保持し、不在の場合はそれまで最近どの部屋にいたのかを保持するのに利用する。入室時刻24はICタグがその部屋に入ってきた時刻、退室時刻25はそのICタグが部屋から出て行った場合(あるいは本発明で「不在」と判別された場合)の時刻を保持するのに利用する。
例えば、ICタグのID情報の値が1のものとして、そのタグの状態が「在室」、そのICタグのタイプが「人物」、そのタグの表す情報が「佐藤」であり、このようにマトリクス状に情報が記録されている。
【0014】
図7は本発明のデータ処理部の処理の流れを示すフローチャートである。データ処理部4では、電波強度変化測定部3の結果と、認識したICタグの対象物のタイプと状態に応じて、該当するICタグに相当する対象物管理テーブル部5の状態を更新する。ここで、認識したICタグに対応する対象物管理テーブル部5のタイプが「人物」であると判定され、なおかつ状態が「在室」と判定された場合、その状態を「不在」に更新する。その他の場合は、処理を行なわない。
このように処理することにより、例えば実際にはタグを部屋に置いたまま帰宅したような人物がいた場合、本発明により、実際には不在であるのに在室となっている人物について、「不在」状態に更新することができる。つまり、ID情報が送られてきて、なおかつ電波強度が一定の場合に、そのICタグの対象物を「不在」とするという効果を得る。
【0015】
図10にはICタグが非接触ICタグ受信部で受信できなかった場合に、該当するICタグに関して対象物管理テーブル部の状態を「不在」に更新する処理の流れを示すフローチャートである。対象物である人物がICタグを身に着けたまま部屋を退室した場合、非接触ICタグ受信部1は該当するICタグからの電波を受信できなくなる。対象物管理テーブル部5に記憶する各ICタグ(1番から最大値IDMax)の情報に対して、対象物管理テーブル部5に記録されている各ICタグからの情報を受信したかどうかを判断する(S42)。受信した場合は(S42でYESのルート)、該当する非接触ICタグの「受信」を「○」に更新する(S43)。受信しなかった場合は(S42でNOのルート)、該当するICタグの「状態」を「不在」に更新し(S45)、「受信」を「×」に更新する(S46)。本発明の趣旨をこの図において説明するなら、ICタグの「受信」が「○」であるときに、実際には不在であるにもかかわらずICタグを机上などに放置しておいたために「在室」になってしまう問題を解決するものである。
これら全体の処理を具体的なデータを用いて説明する。例えば、あるICタグの電波強度について、図3と図9で説明したように、ある時点の記憶バッファの値が「161、162、161、160、159、158、159、158、159、159」(n=1、2、...、10)であるとする。これらバッファに記憶した値を図4で説明したように最小二乗法によってその直線の傾きを求めると−0.35となる。この傾きの大きさ(絶対値)は0.5よりも小さいため、すなわち回帰直線の傾きがなだらかであると判断する。この場合は、ICタグが認識されたにもかかわらず、その電波強度の変化が小さいため、例えば机に置き忘れたような状況であることが予想される。図7のように対象物管理テーブル部5に記録されている該当ICタグに対応する対象物が「人物」であるかどうかを判断して、人物である場合には、状態を「不在」にする。
【0016】
次に、上述した一連の処理を実行するプログラムをコンピュータにインストールして実行可能な状態とするために用いられる媒体について説明する。プログラムは例えば図8(a)に示すようにコンピュータ50に内蔵されている記録媒体としてのハードディスク51に、あらかじめインストールした状態で提供できる。プログラムは図8(b)に示すように、記録媒体52に一時的あるいは永続的に格納し、コンピュータ53にユニットとして組み込んだり、あるいは着脱式の記録媒体として利用することで、パッケージソフトウェアとして提供できる。記録媒体としては、図8(c)に示すように、例えばフロッピー(登録商標)ディスク54、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)55、MO(Magneto Optical)ディスク56、DVD(Digital Versatile Disc)57、磁気ディスク58、半導体メモリ59などが利用できる。
またプログラムは図8(d)に示すように、ダウンロードサイト60から、LAN(Local Area Network)やインターネットといったネットワーク61を介して、有線または無線でコンピュータ62に転送し、そのコンピュータ62において、内蔵するハードディスクなどにダウンロードさせるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る非接触ICタグ管理装置ブロック図である。
【図2】本発明の非接触ICタグ受信部1の処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】本発明の電波強度測定部の処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】本発明の電波強度変化測定部の処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】本発明の電波強度と経過時間の関係を示す図である。
【図6】本発明の対象物管理テーブル部のテーブルの一例を示す図である。
【図7】本発明のデータ処理部の処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】一連の処理を実行するプログラムをコンピュータにインストールして実行可能な状態とするために用いられる媒体について説明する図である。
【図9】電波強度測定部2で測定した電波強度と、それを記憶する記憶バッファの様子を示した模式図である。
【図10】本発明のICタグが非接触ICタグ受信部で受信できなかった場合に、該当するICタグに関して対象物管理テーブル部の状態を「不在」に更新する処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0018】
1 非接触ICタグ受信部、2 電波強度測定部、3 電波強度変化測定部、4 データ処理部、5 対象物管理テーブル部、100 非接触ICタグ管理装置、200 非接触ICタグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体が所持する非接触情報記録媒体との交信状態に基づいて当該移動体の状態を管理する非接触情報記録媒体管理装置において、
前記非接触情報記録媒体に記録されている関連情報を受信する受信手段と、該受信手段により受信した当該非接触情報記録媒体に関する前記関連情報を記録する対象物管理テーブル手段と、前記受信手段により受信した電波強度を時系列に記録する電波強度測定手段と、該電波強度測定手段により記録した電波強度の変化を計算する電波強度変化測定手段と、前記対象物管理テーブル手段に記録した非接触情報記録媒体に対応する前記関連情報を更新するデータ処理手段と、を備えたことを特徴とする非接触情報記録媒体管理装置。
【請求項2】
前記関連情報には、少なくとも前記非接触情報記録媒体のID情報、当該非接触情報記録媒体が移動体であるか否かを示す種類情報、当該非接触情報記録媒体の持ち主が在室か否かを示す状態情報、及び対応するデータが記録されていることを特徴とする請求項1に記載の非接触情報記録媒体管理装置。
【請求項3】
前記データ処理手段は、前記対象物管理テーブル手段に記録した関連情報中の前記種類情報が移動体で、且つ前記状態情報が在室状態を示している場合にも、前記電波強度変化測定手段による測定結果に基づいて前記状態情報を不在として更新することを特徴とする請求項1又は2に記載の非接触情報記録媒体管理装置。
【請求項4】
移動体が所持する非接触情報記録媒体との交信状態に基づいて当該移動体の状態を管理する非接触情報記録媒体管理方法において、
前記非接触情報記録媒体に記録されている関連情報を受信する受信ステップと、該受信ステップにより受信した当該非接触情報記録媒体に関する前記関連情報を記録する対象物管理テーブルステップと、前記受信ステップにより受信した電波強度を時系列に記録する電波強度測定ステップと、該電波強度測定ステップにより記録した電波強度の変化を計算する電波強度変化測定ステップと、前記対象物管理テーブルステップに記録した非接触情報記録媒体に対応する前記関連情報を更新するデータ処理ステップと、を備えたことを特徴とする非接触情報記録媒体管理方法。
【請求項5】
前記関連情報には、少なくとも前記非接触情報記録媒体のID情報、当該非接触情報記録媒体が移動体であるか否かを示す種類情報、当該非接触情報記録媒体の持ち主が在室か否かを示す状態情報、及び対応するデータが記録されていることを特徴とする請求項4に記載の非接触情報記録媒体管理方法。
【請求項6】
前記データ処理ステップは、前記対象物管理テーブルステップに記録した関連情報中の前記種類情報が移動体で、且つ前記状態情報が在室状態を示している場合にも、前記電波強度変化測定ステップによる測定結果に基づいて前記状態情報を不在として更新することを特徴とする請求項4又は5に記載の非接触情報記録媒体管理方法。
【請求項7】
請求項4乃至6に記載の非接触情報記録媒体管理方法の各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−330861(P2006−330861A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−150269(P2005−150269)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】