説明

非接触給電装置

【課題】送電コイルや受電コイルを複数の仕様の非接触給電トランスで共用できる非接触給電装置を提供する。
【解決手段】給電電力1.5kW、ギャップ長70mmの仕様の送電コイル(C1NS)に給電電力10kW、ギャップ長70mmの仕様の受電コイル(C2RS)が対向したり、給電電力1.5kW、ギャップ長140mmの仕様の送電コイル(C1NL)に給電電力1.5kW、ギャップ長70mmの仕様の受電コイル(C2NS)が対向したりできる。送電コイルと受電コイルの給電電力の仕様が異なるときは、小さい方の給電電力で給電が行われ、送電コイルと受電コイルのギャップ長の仕様が異なるときは、送電コイルの仕様であるギャップ長で給電が行われる。仕様の異なる送電コイルと受電コイルとの間の給電が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車などの移動体に非接触で給電する非接触給電装置に関し、仕様の異なる送電コイル/受電コイル間での給電を可能にするものである。
【背景技術】
【0002】
非接触給電装置は、送電コイル(一次コイル)と受電コイル(二次コイル)との間の電磁誘導を利用して送電コイルから受電コイルに電力を供給する。この非接触給電装置は、電気自動車やプラグインハイブリッド車に搭載された二次電池の充電に利用することができ、車両充電用の非接触給電装置に対する需要は、今後、拡大するものと見られている。
車両充電用の非接触給電装置の場合、受電コイルを床の下面に搭載した自動車が、地面に設置された送電コイルの真上に受電コイルが来るように停車して非接触給電が行われるが、送電コイルと受電コイルとの水平方向の位置ずれや上下方向のギャップ長変動により、送電コイルと受電コイルとの間の結合係数が変化する。
この送電コイル/受電コイル間の位置ずれやギャップ長変動に伴う受電効率の低下を抑えるためには、コイル間の広い対向面積を確保する必要があり、コイル形状の大型化が避けられない。
【0003】
しかし、図9(a)に示すように、矩形状のコア70の中央部分に電線50を巻回したコイル(両側巻コイル)を用いると、下記特許文献1に記載されているように、コアの片面に巻線を配置したコイル(片側巻コイル)よりも小型化が可能になる。図9(a)の上側は巻線を備えるコアを示し、下側はコアのみを示している。電線50が巻回されないコア70の両端71、72は、磁束が進入し、または出て行く磁極部となる。
また、本発明者等は、先に、図9(b)に示すように、小型化が可能で、コア材の量が節約できるH字形状のコア80を提案している(特願2009−199425)。このH型コアの場合、Hの字の横棒部分83に電線50が巻回され、平行する縦棒部分81、82が磁極部となる。
【0004】
両側巻コイルの送電コイルと受電コイルとが対向する場合、図10に示すように、送電コイルのコア61の磁極部から出た主磁束67は、受電コイルのコア63の磁極部に進入し、電線64が巻回されたコア部分を通り、他方の磁極部から出て送電コイルのコア61の磁極部に進入し、電線62が巻回されたコア部分を通り、他方の磁極部に達する。
なお、両側巻コイルを用いる非接触給電装置では、漏洩磁束を磁気遮蔽するため、コイルの背面にアルミ板65、66を配置する。
【0005】
また、図11は、下記特許文献2に記載された非接触給電システムの回路図を示している。この回路は、商用電源VACの交流を整流器5で整流した後、インバータ4で高周波を生成して出力する高周波電源3と、送電コイル1と、高周波電源3及び送電コイル1間に直列接続された一次側直列コンデンサCSと、送電コイル1に対向する受電コイル2と、受電コイル2に並列接続された二次側共振コンデンサCPと、負荷RLとを備えている。
この等価回路は図12のように表すことができ、一次側直列コンデンサの値CS及び二次側並列共振コンデンサの値CPは、共振条件から次式のように設定する。
ω0=2πf0
1/ω0P=ω02=xP=x0’+x2
1/ω0S=xS’={(x0’・x2)/(x0’+x2)}+x1
ここでf0は高周波電源3の周波数、L2は受電コイルの自己インダクタンスである。
一次側直列コンデンサCS及び二次側並列共振コンデンサCPを備える非接触給電装置は、このようにCP及びCSを設定すると、非接触給電トランス(送電コイル+受電コイル)が理想トランスと等価になるので、その設計が容易になる。また、負荷RLが抵抗負荷の場合は、高周波電源3の力率が常に1になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−172084号公報
【特許文献2】WO2007−029438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
車両充電用の非接触給電装置の利用形態として、自宅で小容量の非接触給電トランスにより普通充電(長時間充電)を行う場合と、駐車場等で大容量の非接触給電トランスにより急速充電を行う場合とが考えられる。
小容量の非接触給電トランスと大容量の非接触給電トランスでは、給電電力に関する仕様が相違する。
また、駐車場等では、送電コイルの表面のみが地表に現れるように送電コイルを地中に埋設する形態が主流になり、自宅では、送電コイルを地表に据え置きする簡便な形態が主流になると考えられる。この場合、非接触給電トランスのギャップ長は、送電コイルを地中に埋設した方が長くなる。そのため、非接触給電トランスにより、ギャップ長に関する仕様が異なる場合が有り得る。
【0008】
しかし、従来は、同一仕様の送電コイルと受電コイルとの間での給電しか考慮されていない。
図13は、従来の給電の形態を模式的に示している。ここでは、送電コイルをC1、受電コイルをC2で表している。また、給電能力の仕様が1.5kWのコイルをNで、10kWのコイルをRで表している。また、ギャップ長の仕様が70mmのコイルをSで、140mmのコイルをLで表している。
従来の非接触給電装置では、C2NSの受電コイルは、C1NSの送電コイルのみから受電するように設定され、同様に、C2RSの受電コイルはC1RSの送電コイルから、C2NLの受電コイルはC1NLの送電コイルから、また、C2RLの受電コイルはC1RLの送電コイルから受電するように設定されている。
【0009】
このように、非接触給電トランスに複数種類の仕様が存在する場合に、車両に搭載した受電コイルの仕様と一致する送電コイルからの受電のみが可能で、それ以外の送電コイルから受電できない、と言うのは、極めて不便である。
また、複数種類の仕様の送電コイルから受電が受けられるように、車両に複数種類の仕様の受電コイルを搭載するのでは、車両の重量が増え、コストの上昇をもたらすと言う不都合がある。
【0010】
本発明は、こうした事情を考慮して創案したものであり、仕様の異なる送電コイルと受電コイルとの間の給電を可能にし、送電コイルや受電コイルを複数の仕様の非接触給電トランスで共用できる非接触給電装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の非接触給電装置は、送電コイルと、送電コイルに直列または並列に接続する一次側コンデンサと、送電コイルにギャップを介して対向する受電コイルと、受電コイルに並列に接続する二次側共振コンデンサとを備え、送電コイルから受電コイルに給電が行われる非接触給電装置であって、送電コイル及び受電コイルは、両端に磁極部を有する矩形状またはH字状のコアと、磁極部の間のコア部分に巻回された電線とを備え、送電コイルの電源周波数の仕様と受電コイルの共振周波数の仕様とが等しく、送電コイルの給電電力及びギャップ長の少なくとも一方の仕様が、受電コイルの対応する仕様と相違し、給電電力の仕様が送電コイルと受電コイルとで相違するとき、それらの給電電力の内で小さい方の給電電力を給電可能な最大電力として送電コイルから受電コイルへの給電が行われ、ギャップ長の仕様が送電コイルと受電コイルとで相違するとき、送電コイルの仕様であるギャップ長を介して送電コイルと受電コイルとが対向し、給電が行われることを特徴とする。
【0012】
非接触給電トランスの送電コイルと受電コイルとの仕様が異なる場合でも、給電を可能にするために、各仕様の非接触給電トランスは、
(1)送電コイル及び受電コイルのコアを矩形状またはH字状とする。
(2)送電コイル及び受電コイルは両側巻コイルとする。
(3)電源周波数を共通にする。
(4)受電コイルと並列に二次側共振コンデンサを接続する。
そして、給電電力の仕様が送電コイルと受電コイルとで異なるときは、小さい方の給電電力で給電を行う。また、ギャップ長の仕様が送電コイルと受電コイルとで異なるときは、送電コイルの仕様であるギャップ長で給電を行う。
【0013】
また、本発明の非接触給電装置では、送電コイルと受電コイルとの間の係合係数をKAB、送電コイルの給電電力及びギャップ長の仕様と同一仕様の受電コイルと送電コイルとの間の結合係数をKA、受電コイルの給電電力及びギャップ長の仕様と同一仕様の送電コイルと受電コイルとの間の結合係数をKBとするとき、
0.5KA≦KAB≦2KA、且つ、0.5KB≦KAB≦2KB
とする。
異仕様間の組み合わせの場合に、高効率な給電を行うには送電コイルと受電コイルとの間の結合係数KABが高い必要がある。送電コイルと正規に組合される受電コイルとの結合係数をKA、受電コイルと正規に組合される送電コイルとの結合係数をKBとするとき、上記不等式を満たすように送電コイル及び受電コイルのコア形状や巻数を設計して、正規の組み合わせの場合の結合係数と同程度の結合係数を確保する。
【0014】
また、本発明の非接触給電装置では、受電コイルのコア部分に巻回された電線の巻回数が、送電コイルの正規(給電電力及びギャップ長の仕様が同一)の受電コイルに巻回された電線の巻回数に等しくなるようにする。
送電コイルの巻数と受電コイルの巻数とは、送電コイルと受電コイルとの電圧比を決める重要なパラメータである。ギャップ長が長い仕様の場合、ギャップ長が短いものと比べて、結合係数が下がり、送電コイルの電圧が一定でも受電コイルの電圧が上がる。車載装置にとって、受電コイルの電圧変化は好ましくない。そのため、ギャップ長の仕様が異なる非接触給電トランスの共用化を図る上で、ギャップ長の違いによる受電コイルの電圧変化を抑制する対策が必要になるが、本発明では、受電コイルの巻数は統一し、送電コイルの巻数を変えて、この受電コイルの電圧変化に対応する。
【0015】
また、本発明の非接触給電装置では、送電コイルのギャップ長の仕様が受電コイルのギャップ長の仕様と同一であるとき、送電コイルのコア部分に巻回された電線の巻回数が、受電コイルの正規(給電電力及びギャップ長の仕様が同一)の送電コイルに巻回された電線の巻回数に等しくなるようにする。
ギャップ長の仕様が同一の送電コイルにおける巻線の巻回数は同数に設定する。
【0016】
また、本発明の非接触給電装置では、送電コイルのギャップ長の仕様が受電コイルのギャップ長の仕様より長いとき、送電コイルのコア部分に巻回された電線の巻回数が、受電コイルの正規(給電電力及びギャップ長の仕様が同一)の送電コイルに巻回された電線の巻回数より多く設定する。
ギャップ長の仕様が異なる非接触給電トランス間では、受電コイルの巻数を統一し、ギャップ長の長い送電トランスの巻数N1Lをギャップ長の短いトランスの巻数N1Sよりも多くする(N1L≧N1S)。ギャップ長の仕様が変化するのは、主に、図13に示すように送電コイルを地表に据え置きするか、地中に埋設するかに依る。従って、ギャップ長の違いによる受電コイルの電圧変化を抑制するには、車載の受電コイルの巻数は一定にして、送電コイルの巻数で調整する方が好ましい。
【0017】
また、本発明の非接触給電装置では、送電コイルの磁極部の長さをLA、幅をWA、コアの両端にある磁極部の間の距離をDA、受電コイルの磁極部の長さをLB、幅をWB、コアの両端にある磁極部の間の距離をDBとするとき、
0.5×LB≦LA≦2×LB
B≦DA≦DB+2×WB、または、DA≦DB≦DA+2×WA
とする。
こうすることで、異仕様の送電コイルと受電コイルとを組合わせた非接触給電トランスでも、送電コイル及び受電コイルの磁極部の重なりが得られる。
【0018】
また、本発明の非接触給電装置では、受電コイルに並列に接続された二次側共振コンデンサの値CPは、受電コイルと同一仕様の送電コイルがギャップ長の位置に開放状態で置かれたときの受電コイルの自己インダクタンスをL2とするとき、電源周波数f0で、L2とCPとが共振するように設定する。
二次側共振コンデンサの値CPは、受電コイルと正規に組合される送電コイルとの非接触給電トランスにおいて共振するように設定する。
【0019】
また、本発明の非接触給電装置では、一次側コンデンサを送電コイルと高周波電源との間に直列に接続し、一次側コンデンサの値CSは、受電コイルに二次側共振コンデンサCPと抵抗負荷RLとが並列接続した状態で、高周波電源の出力力率が1になるように設定する。
【0020】
また、本発明の非接触給電装置では、一次側コンデンサの値CSを調整する調整手段を設け、調整手段が、高周波電源の出力力率が1になるように一次側コンデンサの値CSを調整する。
異仕様の送電コイルと受電コイルとの組合せにより、高周波電源の出力力率が1から大きくずれる場合は、一次側コンデンサの値CSを調整して最適な値に切り替える。
【0021】
また、本発明の非接触給電装置では、送電コイルの給電電力の仕様と、受電コイルの給電電力の仕様とが2倍以上異なる場合でも、送電コイルと受電コイルとの組合わせが可能である。
【0022】
また、本発明の非接触給電装置では、送電コイルのギャップ長の仕様と、受電コイルのギャップ長の仕様とが1.5倍以上異なる場合でも、送電コイルと受電コイルとの組合わせが可能である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の非接触給電装置は、仕様の異なる送電コイルと受電コイルとの間での給電が可能であり、送電コイルや受電コイルを異なる仕様の非接触給電トランスに共用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】車両充電用の非接触給電システムを示す図
【図2】本発明の非接触給電装置の送電コイルと受電コイルの組合せの例を示す図
【図3】異仕様の送電コイルと受電コイルとを組合せた非接触給電装置の給電可能な最大電力と最大ギャップ長を示す図
【図4】本発明の非接触給電装置の送電コイルと受電コイルの磁極部の大きさの関係を示す図
【図5】試作した非接触給電装置の送電コイル及び受電コイルのコアの外形を示す図
【図6】図5の送電コイル及び受電コイルの巻数、巻線並列数、コア厚さを示す図
【図7】異仕様の送電コイルと受電コイルとを組合わせた非接触給電システムの回路図
【図8】異仕様の送電コイルと受電コイルとを組合わせた非接触給電装置の特性を示す図
【図9】矩形状コア及びH型コアを備える非接触給電トランスを示す図
【図10】両側巻の非接触給電トランスの磁束を示す図
【図11】非接触給電システムの回路図
【図12】図11の等価回路
【図13】従来の非接触給電装置の送電コイルと受電コイルの組合せを示す図
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の非接触給電システムをプラグインハイブリッド車の充電に用いたときの形態を模式的に示している。
充電を受けるプラグインハイブリッド車は、エンジン54とともにモータ53を駆動源として搭載し、モータ用の電源である二次電池51と、二次電池の直流を交流に変換してモータに供給するインバータ52とを備えている。
二次電池51への給電を行う非接触給電システムは、地上側に、商用電源の交流を直流に変換するとともに、その電圧を可変する可変電圧整流器10と、直流から高周波交流を生成するインバータ20と、非接触給電トランス30の一方である送電コイル31と、送電コイルに直列接続された一次側直列コンデンサ32とを備えており、車両側に、非接触給電トランス30の他方である受電コイル33と、二次電池のために交流を直流に変換する整流器40と、受電コイルと整流器との間に並列接続された二次側並列共振コンデンサ34とを備えている。
【0026】
図2は、本発明の非接触給電装置での送電コイルと受電コイルとの組合せの例を模式的に示している。ここでは、図13と同様に、送電コイルをC1、受電コイルをC2で表し、給電能力の仕様が1.5kWのコイルをN、10kWのコイルをR、ギャップ長の仕様が70mmのコイルをS、140mmのコイルをLで表している。
本発明の非接触給電装置では、C1NSの送電コイルにC2RSの受電コイルを組み合わせたり、C1RSの送電コイルにC2NSの受電コイルを組み合わせたり、C1NLの送電コイルにC2NSの受電コイルを組み合わせたり、C1NSの送電コイルにC2NLの受電コイルを組み合わせたりすることが可能である。
【0027】
図3の表は、縦に記載した各仕様の送電コイルと、横に記載した各仕様の受電コイルとを組み合わせた非接触給電トランスの給電可能な最大電力と、最大ギャップ長とを示している。(なお、ギャップ長の70mm及び140mmは標準ギャップ長であり、ギャップ長が標準の値からプラス・マイナス40%程度変動しても給電は可能である。)
図3に示すように、仕様の異なる送電コイルと受電コイルとを組み合わせた非接触給電トランスでは、送電コイル及び受電コイルの給電電力の内、小さい方の給電電力を給電可能な最大電力として設定する。
また、この非接触給電トランスの最大ギャップ長は、送電コイルの仕様であるギャップ長とする。
【0028】
このように、送電コイル及び受電コイルが、異なる仕様の非接触給電トランスで共用できるようにするため、各仕様の非接触給電トランスは、次の要件を順守する必要がある。
(a)送電コイル及び受電コイルのコアは、矩形状またはH字状とし、送電コイル及び受電コイルは、両側巻コイルとする。これは、両側巻コイルの方が、片側巻コイルに比べて、送電コイルと受電コイルとの位置ずれを小型形状で補えるためである。
(b)各仕様の非接触給電トランスの電源周波数(インバータ20の出力周波数)を統一する。
(c)受電コイルには並列に二次側共振コンデンサを接続する。また、送電コイルには一次側コンデンサを直列に接続することが望ましい。こうすることで、非接触給電トランスを理想トランスと略等価にすることができ、その設計が容易である。また、受電コイルに並列接続する負荷が抵抗負荷の場合、一次側コンデンサの値を調整して高周波電源3の力率を1に近付けることができる。一次側コンデンサの調整は、例えば、複数の値のコンデンサを用意して、最適なコンデンサに回路を切り替える。
なお、一次側コンデンサは、送電コイルに並列接続しても良いこととする。
【0029】
(d)異なる仕様の送電コイルと受電コイルとを組み合わせた非接触給電トランスで高い効率の給電を行うには、その送電コイルと受電コイルとの間の結合係数が高い必要がある。そのため、異なる仕様の送電コイルC1と受電コイルC2とを組み合わせた非接触給電トランスの結合係数をKAB、送電コイルC1と同一仕様の受電コイルとを組み合わせた正規の非接触給電トランスの結合係数をKA、受電コイルC2と同一仕様の送電コイルとを組み合わせた正規の非接触給電トランスの結合係数をKBとするとき、
0.5KA≦KAB≦2KA、且つ、0.5KB≦KAB≦2KB
となるように設定する。
(e)受電コイルを、ギャップ長の仕様が長い送電コイルに組合わせても、短い送電コイルに組合わせても、受電コイルの電圧変化が生じないように設定する必要がある。ギャップ長が長い仕様の場合、結合係数が下がり、送電コイルの電圧が一定でも受電コイルの電圧が上がる。車載装置にとっては受電コイルの電圧変化は好ましくない。そのため、送電コイルのギャップ長の仕様が違っても、受電コイルの電圧変化を抑制することが必要である。
【0030】
この(d)、(e)の要件を満たすように送電コイル及び受電コイルのコアや巻線の仕様(材料、形状、寸法、巻回数など)を決める。
そのために、図4に示すように、送電コイルの磁極部の長さLAと受電コイルの磁極部の長さLBは略同じに設定する。少なくとも、
0.5×LB≦LA≦2×LB
の条件を満たす必要がある。
また、送電コイルの磁極部の幅をWA、磁極部の間の距離をDA、受電コイルの磁極部の幅をWB、磁極部の間の距離をDBとするとき、
B≦DA≦DB+2×WB、または、DA≦DB≦DA+2×WA
となるように設定して、送電コイルの磁極部と受電コイルの磁極部とが常に重なるようにする。
【0031】
また、送電コイル及び受電コイルの巻回数は、ギャップ長の仕様の違いによる受電コイルの電圧変化を抑制するため、次のように設定する。
ギャップ長の仕様の違いは、主に、図13に示すように送電コイルを地表に据え置きするか、地中に埋設するかに依るため、各仕様において受電コイルの巻回数は統一し、送電コイルの巻回数をギャップ長に応じて調整し、受電コイルの電圧低下を抑える。
即ち、ギャップ長の仕様が異なる非接触給電トランスの送電コイルの巻数は、ギャップ長の長い送電コイルの巻数をN1L、ギャップ長の短い送電コイルの巻数をN1Sとするとき、N1L≧N1Sとなるように決める。また、ギャップ長の仕様が同一の送電コイルの巻数は、同数とする。
【0032】
例えば、図2で送電コイルC1NSの巻数をN1NS、受電コイルC2NSの巻数をN2NSのように、あるコイルの記号“C”を“N”に変えるとそのコイルの巻数を表すとする。また、各コイルのコアの形状と大きさは略同じであるとする。
このとき給電電力の仕様の異なるコイルの巻数をN1NS=N1RS、且つ、N2NS=N2RSとすると、送電コイルC1NSから受電コイルC2RSへC1NSの定格電力での給電が可能となり、同様にC1RSからC2NSへC2NSの定格電力での給電が可能となる。
また、ギャップ長の仕様の異なるコイルの巻数をN1NL≧N1NS、且つ、N2NL=N2NSとすると、送電コイルC1NLから受電コイルC2NSへC1NLのギャップ長の仕様での定格電力給電が可能となり、同様に、C1NSからC2NLへC1NSのギャップ長の仕様での定格電力給電が可能となる。
【0033】
以上のように送電コイル及び受電コイルのコアや巻線の仕様を設定することで、給電電力の仕様が2倍以上異なる送電コイルと受電コイルとを組み合わせたり、ギャップ長の仕様が1.5倍以上異なる送電コイルと受電コイルとを組み合わせたりすることが可能になる。
その結果、送電コイルが設置された非接触給電の地上設備を、各種仕様の受電コイルを搭載した車両が共用できるようになり、非接触給電による車両充電の普及を図ることができる。
また、受電コイルを搭載した車両は、各種仕様の送電コイルを備える非接触給電設備から給電を受けることができるため、利便性が向上する。
【0034】
次に、発明者が試作した、相互の共用が可能な非接触給電装置について説明する。
この装置に用いる非接触給電トランスは、給電電力の仕様が1.5kWの非接触給電トランス(300HA)と、10kWの非接触給電トランス(300HAW)であり、図5(a)に300HAのH型コアの外形を示し、図5(b)に300HAWのH型コアの外形を示している。図6には、これらの非接触給電トランスの巻数、巻線並列数、及び、コア厚さを示している。コア厚さは、図4の被コイル部のコアの厚さである。
【0035】
ここでは、300HA及び300HAWの磁極部の長さ(300mm)を統一している。また、磁極部外端間の寸法は、300HAでは240mm、300HAWでは280mmに設定しており、300HAの送電コイルと300HAWの受電コイルとを組み合わせたときに、また、300HAの受電コイルと300HAWの送電コイルとを組み合わせたときに、互いの磁極部が重なるように決めている。また、300HA及び300HAWの送電コイルの巻数を同一に設定し、受電コイルの巻数を同一に設定している。
【0036】
この300HAと300HAWとの共用化を調べるため、300HAの送電コイルと300HAWの受電コイルとで構成した非接触給電トランス、及び、300HAWの送電コイルと300HAの受電コイルとで構成した非接触給電トランスの特性を測定した。
図7(a)は、300HAの送電コイルと300HAWの受電コイルとで非接触給電トランスを構成した非接触給電システムの回路図を示し、図7(b)は、300HAWの送電コイルと300HAの受電コイルとで非接触給電トランスを構成した非接触給電システムの回路図を示している。図7(a)の回路では、二次側の受電コイルに全波整流器を接続して整流しており、図7(b)の回路では、受電コイルに倍電圧整流器を接続して整流している。
【0037】
図8には、(1)300HAの送電コイルと300HAWの受電コイルとを組み合わせた非接触給電トランスを備える非接触給電装置、(2)300HAWの送電コイルと300HAの受電コイルとを組み合わせた非接触給電トランスを備える非接触給電装置、(3)正規の300HAを備える非接触給電装置、及び、(4)正規の300HAWを備える非接触給電装置、の結合係数k及びトランス効率(%)の測定結果を示している。
各非接触給電装置の機械的ギャップ(送電コイルと受電コイルとの最接近位置でのギャップ)を70mm、磁気的ギャップ(送電コイル及び受電コイルの磁極部間のギャップ)を80mmに設定した。また、送電コイルの巻数は20に、受電コイルの巻数は6に統一し(ただし、巻線の並列数は、違えている。)、高周波電源の周波数は30kHzに統一している。(1)及び(2)の給電電力は、送電コイル及び受電コイルの給電電力仕様の内で小さい方の給電電力値、即ち、1.5kWに設定している。
【0038】
(1)及び(2)の非接触給電装置の結合係数kは、正規の(3)及び(4)の非接触給電装置に比べて遜色がない。
また、(1)及び(2)の非接触給電装置のトランス効率(%)(図7においてPBに対するPCの比率を表す。)も、正規の(3)及び(4)の非接触給電装置に比べて遜色がない。
この測定結果から、300HAと300HAWとは、給電電力の仕様が6.7倍異なっていても共用できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の非接触給電装置は、仕様の異なる非接触給電トランス間での共用が可能であり、自動車や搬送車や移動ロボットなどの移動体に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 送電コイル
2 受電コイル
3 高周波電源3
4 インバータ
5 整流器
10 可変電圧整流器
20 インバータ
30 非接触給電トランス
31 送電コイル
32 直列コンデンサ
33 受電コイル
34 並列コンデンサ
40 整流器
50 巻線
51 二次電池
52 インバータ
53 モータ
54 エンジン
61 コア
62 巻線
63 コア
64 巻線
65 アルミ板
66 アルミ板
67 主磁束
70 矩形状コア
71 磁極部
72 磁極部
80 H字形状コア
81 縦棒部分
82 縦棒部分
83 横棒部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電コイルと、該送電コイルに直列または並列に接続する一次側コンデンサと、前記送電コイルにギャップを介して対向する受電コイルと、該受電コイルに並列に接続する二次側共振コンデンサとを備え、前記送電コイルから前記受電コイルに給電が行われる非接触給電装置であって、
前記送電コイル及び受電コイルは、両端に磁極部を有する矩形状またはH字状のコアと、該磁極部の間のコア部分に巻回された電線とを備え、
前記送電コイルの電源周波数の仕様と前記受電コイルの共振周波数の仕様とが等しく、
前記送電コイルの給電電力及びギャップ長の少なくとも一方の仕様が、前記受電コイルの対応する仕様と相違し、
給電電力の仕様が前記送電コイルと前記受電コイルとで相違するとき、それらの給電電力の内で小さい方の給電電力を給電可能な最大電力として前記送電コイルから前記受電コイルへの給電が行われ、
ギャップ長の仕様が前記送電コイルと前記受電コイルとで相違するとき、前記送電コイルの仕様であるギャップ長を介して該送電コイルと前記受電コイルとが対向し、給電が行われることを特徴とする非接触給電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の非接触給電装置であって、前記受電コイルのコア部分に巻回された電線の巻回数が、前記送電コイルの正規(給電電力及びギャップ長の仕様が同一)の受電コイルに巻回された電線の巻回数に等しいことを特徴とする非接触給電装置。
【請求項3】
請求項2に記載の非接触給電装置であって、前記送電コイルのギャップ長の仕様が前記受電コイルのギャップ長の仕様と同一であるとき、前記送電コイルのコア部分に巻回された電線の巻回数が、前記受電コイルの正規(給電電力及びギャップ長の仕様が同一)の送電コイルに巻回された電線の巻回数に等しいことを特徴とする非接触給電装置。
【請求項4】
請求項2に記載の非接触給電装置であって、前記送電コイルのギャップ長の仕様が前記受電コイルのギャップ長の仕様より長いとき、前記送電コイルのコア部分に巻回された電線の巻回数が、前記受電コイルの正規(給電電力及びギャップ長の仕様が同一)の送電コイルに巻回された電線の巻回数より多いことを特徴とする非接触給電装置。
【請求項5】
請求項1に記載の非接触給電装置であって、前記送電コイルと前記受電コイルとの間の結合係数をKAB、前記送電コイルの正規(給電電力及びギャップ長の仕様が同一)の受電コイルと該送電コイルとの間の結合係数をKA、前記受電コイルの正規(給電電力及びギャップ長の仕様が同一)の送電コイルと該受電コイルとの間の結合係数をKBとするとき、
0.5KA≦KAB≦2KA、且つ、0.5KB≦KAB≦2KB
であることを特徴とする非接触給電装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の非接触給電装置であって、前記送電コイルの前記磁極部の長さをLA、幅をWA、コアの両端にある前記磁極部の間の距離をDA、前記受電コイルの前記磁極部の長さをLB、幅をWB、コアの両端にある前記磁極部の間の距離をDBとするとき、
0.5×LB≦LA≦2×LB
B≦DA≦DB+2×WB、または、DA≦DB≦DA+2×WA
であることを特徴とする非接触給電装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の非接触給電装置であって、前記受電コイルに並列に接続された前記二次側共振コンデンサの値CPは、前記受電コイルと同一仕様の送電コイルがギャップ長の位置に開放状態で置かれたときの前記受電コイルの自己インダクタンスをL2として、電源周波数f0で、L2とCPとが共振するように設定されていることを特徴とする非接触給電装置。
【請求項8】
請求項7に記載の非接触給電装置であって、前記一次側コンデンサが前記送電コイルと高周波電源との間に直列に接続され、前記一次側コンデンサの値CSは、前記受電コイルに前記二次側共振コンデンサCPと抵抗負荷RLとを並列接続して、前記高周波電源の出力力率が1になるように設定されていることを特徴とする非接触給電装置。
【請求項9】
請求項8に記載の非接触給電装置であって、前記一次側コンデンサの値CSを調整する調整手段を有し、前記調整手段が、前記高周波電源の出力力率が1になるように前記一次側コンデンサの値CSを調整することを特徴とする非接触給電装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の非接触給電装置であって、前記送電コイルの給電電力の仕様と、前記受電コイルの給電電力の仕様とが2倍以上異なることを特徴とする非接触給電装置。
【請求項11】
請求項1から9のいずれかに記載の非接触給電装置であって、前記送電コイルのギャップ長の仕様と、前記受電コイルのギャップ長の仕様とが1.5倍以上異なることを特徴とする非接触給電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−170195(P2012−170195A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27548(P2011−27548)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(504190548)国立大学法人埼玉大学 (292)
【出願人】(591206887)株式会社テクノバ (20)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】