説明

非接触通信装置

【課題】非接触通信媒体を捕捉した後の通信処理において通信不良が生じにくい非接触通信装置を提供する
【解決手段】ICカードリーダ(非接触通信装置)は、ICカード(非接触通信媒体)と非接触通信を行う通信手段と、ICカードの捕捉を検出する捕捉検出手段と、ICカードの捕捉が検出される前に通信手段の出力を第1レベルに設定する出力設定手段と、ICカードの捕捉が検出された後に認証を行う認証手段とを備えており、捕捉検出手段は、第1レベルで信号が出力されたときのICカードからの応答結果に基づいて、ICカードの捕捉を検出している。更に、出力設定手段は、ICカードの捕捉が検出されたときに、通信手段の出力を第1レベルよりも大きい第2レベルに設定変更しており、認証手段は、この第2レベルで信号が出力されたときのICカードからの応答結果に基づいて、ICカードの認証を行っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、クレジットカード、キャッシュカード、運転免許証カード、自治体カード等、様々なICカードが提供されており、これらICカードを認証するためのカード処理端末(非接触通信装置)も様々に提供されている。この種のカード処理端末では、一般的に、一定間隔でコマンド信号(例えばリクエストコマンド)を発信して通信エリア内に存在するICカードを探索し、その探索処理によって捕捉されたICカードを認証対象として認証処理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−184467公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ICカードリーダのような非接触通信装置でICカードを読み取る場合、一般的には、図7のように、読み取り対象となるICカード101が使用者によってICカードリーダ100付近に翳されることでICカード101の読み取りが行われ、その読み取りの初期段階では、まずICカード101の捕捉が行われる。具体的には、ICカード101がICカードリーダ100の通信エリア内に進入したICカード101がICカードリーダ100からの捕捉用のコマンドに応じた応答を返信し、その応答信号をICカードリーダ100が認識することでICカードリーダ100が読取対象となるICカード101を特定できるようになる。
【0005】
従来技術では、上記のように捕捉処理を行った後に、捕捉されたICカードの認証や読み取りや書き込みなどの通信処理を行っていたが、捕捉後の通信処理を良好に行えない場合があった。例えば、図7のように、ICカード101が捕捉された位置がICカードリーダ100の通信エリアの境界付近の場合、電波強度が不安定であり必要な電波強度が捕捉後に維持されない可能性があるため、仮に捕捉が成功したとしても、その後の通信処理の際に通信不良が生じやすいという問題があった。
【0006】
特に、処理時間の短縮化を図るべく、捕捉後に迅速に認証処理に移行させる場合、通信エリアの境界付近で捕捉されると、認証処理もその捕捉位置付近(即ち通信エリアの境界付近)で行われてしまうため、上記のような問題がより生じやすくなる。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、非接触通信媒体を捕捉した後の通信処理において通信不良が生じにくい非接触通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、非接触通信媒体と非接触通信を行う通信手段と、前記非接触通信媒体の捕捉を検出する捕捉検出手段と、前記捕捉検出手段によって前記非接触通信媒体の捕捉が検出される前に、前記通信手段の出力を第1レベルに設定する出力設定手段と
、前記捕捉検出手段によって前記非接触通信媒体の捕捉が検出された後に、その検出された前記非接触通信媒体の認証を行う認証手段と、を備えた非接触通信装置において、前記捕捉検出手段は、前記通信手段により前記第1レベルで信号が出力されたときの前記非接触通信媒体からの応答結果に基づいて、前記非接触通信媒体の捕捉を検出し、前記出力設定手段は、前記捕捉検出手段によって前記非接触通信媒体の捕捉が検出された場合に、前記通信手段の出力を前記第1レベルよりも大きい第2レベルに設定変更し、前記認証手段は、前記通信手段により前記第2レベルで信号が出力されたときの前記非接触通信媒体からの応答結果に基づいて、前記非接触通信媒体の認証を行っている。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の非接触通信装置において、前記捕捉検出手段が、前記非接触通信媒体の種別を検出する種別検出手段を備えており、前記捕捉検出手段によって前記非接触通信媒体の捕捉が検出された場合に、前記出力設定手段が、前記通信手段の出力を、前記第1レベルよりも大きい出力であって、且つ規定の一定出力又は前記種別検出手段によって検出された前記種別に応じた出力に設定変更することを特徴としている。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2に記載の非接触通信装置において、前記通信手段が、前記非接触通信媒体の種別毎に定められた各捕捉用コマンドを前記第1レベルで順次送信する捕捉用コマンド送信手段を備えており、前記種別検出手段が、前記捕捉用コマンド送信手段による各捕捉用コマンドの送信に応じた前記非接触通信媒体からの応答結果に基づいて、前記非接触通信媒体の前記種別を検出することを特徴としている。
【0011】
請求項4の発明は、請求項2又は請求項3のいずれか一項に記載の非接触通信装置において、更に、前記非接触通信媒体の種別毎のコマンド手順を記憶する記憶手段と、前記種別検出手段によって前記非接触通信媒体の前記種別が検出された場合に、その検出された前記種別に対応する前記コマンド手順を前記記憶手段から読み出し、その読み出された前記コマンド手順に従ってコマンドを実行するコマンド実行手段と、が設けられていることを特徴としている。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の非接触通信装置において、前記通信手段が、前記捕捉検出手段によって検出された前記非接触通信媒体に対し、認証用コマンドを前記第2レベルで送信する認証用コマンド送信手段を備えており、更に、前記捕捉検出手段によって検出された前記非接触通信媒体が、前記認証用コマンド送信手段によって送信された前記認証用コマンドに対して適正な応答を行わない場合に、前記非接触通信媒体の応答を停止させる処理を行う応答停止手段が設けられていることを特徴としている。
【0013】
請求項6の発明は、請求項5に記載の非接触通信装置において、更に、前記認証用コマンド送信手段によって前記認証用コマンドが送信された場合に、前記捕捉検出手段によって検出された前記非接触通信媒体の無応答時間を検出する時間検出手段が設けられており、前記時間検出手段によって検出される前記無応答時間が所定時間を経過した場合に、前記応答停止手段が前記非接触通信媒体の応答を停止させる処理を行うことを特徴としている。
【0014】
請求項7の発明は、請求項5又は請求項6に記載の非接触通信装置において、前記捕捉検出手段が、通信対象となる前記非接触通信媒体が複数存在する場合に、前記通信手段による前記第1レベルでの信号出力に対するいずれかの前記非接触通信媒体からの応答結果に基づいて、当該非接触通信媒体を選択的に捕捉している。
また、前記認証用コマンド送信手段が、前記捕捉検出手段によって選択的に捕捉された前記非接触通信媒体に対し、前記第2レベルで前記認証用コマンドを送信しており、前記応答停止手段は、前記捕捉検出手段によって選択的に捕捉された前記非接触通信媒体が、前記認証用コマンドに対して適正な応答を行わない場合に、前記非接触通信媒体の応答を停止させる処理を行っている。
更に、前記出力設定手段は、前記応答停止手段によって前記非接触通信媒体の応答停止処理がなされた場合に、前記通信手段の出力を前記第2レベルに維持し、前記通信手段は、前記応答停止手段によって応答停止処理がなされた場合、その維持された前記第2レベルで捕捉用信号を出力し、前記捕捉検出手段は、前記通信手段から前記第2レベルで捕捉用信号が出力された場合に、応答停止処理がなされた前記非接触通信媒体以外の他の非接触通信媒体からの応答結果に基づいて、当該他の非接触通信媒体の捕捉を検出している。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明では、通信手段により第1レベルで信号が出力されたときの非接触通信媒体からの応答結果に基づいて非接触通信媒体の捕捉を検出しており、非接触通信媒体の捕捉が検出された場合には、通信手段の出力を第1レベルよりも大きい第2レベルに設定変更している。そして、第2レベルで信号が出力されたときの非接触通信媒体からの応答結果に基づいて非接触通信媒体の認証を行っている。
このようにすると、非接触通信媒体を認証する際の通信エリアを、捕捉時の通信エリアよりも拡げることができる。従って、捕捉時の通信エリアの境界に近い位置で非接触通信媒体が捕捉された場合であっても、認証時には通信エリアが拡大されて非接触通信媒体が通信エリアの境界から離れた内側に位置した状態で通信が行われることとなり、通信エリアから外れにくい位置でより安定した通信処理を行うことができる。
【0016】
請求項2の発明では、捕捉検出手段によって非接触通信媒体の捕捉が検出された場合に、通信手段の出力を、第1レベルよりも大きい出力であって且つ規定の一定出力又は種別検出手段によって検出された種別に応じた出力に設定変更している。
このようにすると、認証時の通信エリアを、捕捉時よりも大きい一定サイズ、若しくは、通信対象の種別を考慮したサイズに設定できるようになる。
【0017】
請求項3の発明では、非接触通信媒体の種別毎に定められた各捕捉用コマンドを第1レベルで順次送信する捕捉用コマンド送信手段を備えており、捕捉用コマンド送信手段による各捕捉用コマンドの送信に応じた非接触通信媒体からの応答結果に基づいて、非接触通信媒体の種別を検出している。
このようにすると、非接触通信媒体の存在を迅速に確認しやすく、また捕捉時に通信対象(非接触通信媒体)の種別を迅速かつ確実に把握できるようになる。
【0018】
請求項4の発明では、非接触通信媒体の種別毎のコマンド手順を記憶する記憶手段が設けられており、種別検出手段によって非接触通信媒体の種別が検出された場合、その検出された種別に対応するコマンド手順を記憶手段から読み出し、その読み出されたコマンド手順に従ってコマンドを実行している。
このようにすると、複数種別の非接触通信媒体を捕捉対象とすることができると共に、いずれかの種別の非接触通信媒体が捕捉された場合に、その捕捉された非接触通信媒体の種別に応じた適切なコマンドを実行できるようになる。
【0019】
請求項5の発明では、捕捉検出手段によって検出された非接触通信媒体に対し、認証用コマンドを第2レベルで送信しており、更に、その検出された非接触通信媒体が、送信された認証用コマンドに対して適正な応答を行わない場合には、非接触通信媒体の応答を停止させる処理を行っている。
このようにすると、捕捉された非接触通信媒体の認証処理を安定した通信環境下で行うことができる。
従来の方式(捕捉時と認証時で出力を変更しない方式)では、通信エリアの境界付近等の不安定な位置で認証処理が行われることが多かったため、ある非接触通信媒体を捕捉した後の認証処理において無応答となった場合、捕捉された非接触通信媒体が通信エリアを外れたことによる無応答であるのか、認証エラーによる無応答であるのかが区別できないという問題があった。そして、通信エリアを外れたことによる無応答のときには、使用者による再度の翳し操作等が必要となるため、処理時間や検出性能の点で問題があった。
これに対し、本発明によれば、第1レベルで捕捉した非接触通信媒体を認証する際に、通信不良による認証の失敗の可能性を極力排除できる。従って、認証が失敗したときには、捕捉された非接触通信媒体が認証対象ではない可能性が高く、このような非接触通信媒体の応答を停止させることで、他の処理(他の非接触通信媒体の捕捉・認証処理等)に適切且つ迅速に移行しやすくなる。
【0020】
請求項6の発明では、認証用コマンド送信手段によって認証用コマンドが送信された場合に、捕捉検出手段によって検出された非接触通信媒体の無応答時間を検出し、その無応答時間が所定時間を経過した場合に、非接触通信媒体の応答を停止させる処理を行っている。
このようにすると、認証が失敗したか否かを、所定時間を基準としてより一層適切に判断でき、且つ認証が失敗した可能性の高い非接触通信媒体からの応答をより確実に停止させることができるようになる。
【0021】
請求項7の発明では、通信対象となる非接触通信媒体が複数存在する場合に、通信手段による第1レベルでの信号出力に対するいずれかの非接触通信媒体からの応答結果に基づいて、当該非接触通信媒体を選択的に捕捉している。そして、その選択的に捕捉された非接触通信媒体に対して第2レベルで認証用コマンドを送信し、当該非接触通信媒体が認証用コマンドに対して適正な応答を行わない場合に、当該非接触通信媒体の応答を停止させる処理を行っている。
このようにすると、非接触通信媒体が複数存在する環境下においていずれかの非接触通信媒体を選択的に捕捉し、その捕捉した非接触通信媒体の認証処理を安定した通信環境下で行うことができる。そして、認証が失敗した場合には、認証対象ではない可能性が高い当該非接触通信媒体の応答を停止させて、他の非接触通信媒体の捕捉・認証処理に迅速に移行することができる。
また、請求項7の発明では、非接触通信媒体の応答停止処理がなされた場合、通信手段の出力を第2レベルに維持し、その維持された第2レベルで次の捕捉用信号を出力している。そして、前記応答停止処理がなされた非接触通信媒体以外の他の非接触通信媒体からの応答結果に基づいて、当該他の非接触通信媒体の捕捉を検出している。
このようにすると、いずれかの非接触通信媒体が捕捉され、当該非接触通信媒体の認証が失敗したときに、他の非接触通信媒体を捕捉しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る非接触通信装置を概念的に例示するブロック図である。
【図2】図2は、図1の非接触通信装置で読み取られるICカードを概念的に例示するブロック図である。
【図3】図3は、図1の非接触通信装置で行われる捕捉・認証処理を例示するフローチャートである。
【図4】図4(a)は、図1の非接触通信装置でICカードを捕捉するときの様子を説明する説明図であり、図4(b)は、捕捉後にICカードと非接触通信処理を行うときの様子を説明する説明図である。
【図5】図5は、第2実施形態に係る非接触通信装置で行われる捕捉・認証処理を例示するフローチャートである。
【図6】図6(a)は、第2実施形態に係る非接触通信装置で複数のICカードを捕捉するときの様子を説明する説明図であり、図6(b)は、捕捉後にICカードと非接触通信処理を行うときの様子を説明する説明図である。
【図7】図7は、従来におけるICカードの捕捉の様子を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る非接触通信装置について図面を参照しつつ説明する。
図1は、第1実施形態に係る非接触通信装置を概念的に例示するブロック図であり、図2は、図1の非接触通信装置で読み取られるICカードを概念的に例示するブロック図である。また、図3は、図1の非接触通信装置で行われる捕捉・認証処理を例示するフローチャートであり、図4(a)は、図1の非接触通信装置でICカードを捕捉するときの様子を説明する説明図であり、図4(b)は、捕捉後にICカードと非接触通信処理を行うときの様子を説明する説明図である。なお、図4(a)では、捕捉前のICカードの状態を一点鎖線20'で示し、捕捉時の状態を実線で示している。また、図4(b)では、ICカードが捕捉されるまでの通信エリアを一点鎖線にて概念的に示しており、捕捉後の通信エリアを実線にて概念的に示している。
【0024】
(非接触通信装置の概要)
まず、図1を参照してICカードリーダ1の概要について説明する。図1に示すICカードリーダ1は、ハードウェア的には公知のICカードリーダとして構成されており、送受信部10、制御回路13、メモリ14などを備えている。また、テンキーなどの操作部18や図示しない表示部なども設けられている。なお、本実施形態では、ICカードリーダ1が「非接触通信装置」の一例に相当する。
【0025】
制御回路13は、ICカードリーダ1の全体的な制御を司るものであり、例えばマイクロコンピュータ等で構成されており、メモリに記憶された制御プログラムに従いICカードリーダ1全体を制御している。例えば、データ送信時には制御回路13から送信回路11に対してICカード20に送信するべき送信データが出力されるようになっており、データ受信時には受信回路12にて生成された受信データが制御回路13に入力されるようになっている。
【0026】
送受信部10は、送信回路11、受信回路12、アンテナ16などによって構成されている。送信回路11は、例えば、キャリア発振器、符号化部、変調部、増幅器、などによって構成されており、キャリア発振器は、所定周波数のキャリア(搬送波)を出力しており、符号化部は、制御回路13に接続され、制御回路13より出力される送信データを符号化して変調部に出力している。変調部は、キャリア発振器からのキャリア(搬送波)及び符号化部からの送信データが入力されるものであり、キャリア発振器より出力されるキャリア(搬送波)に対し、通信対象へのコマンド送信時に符号化部より出力される符号化された送信符号(変調信号)によってASK(Amplitude Shift Keying)変調された被変調信号を生成し、増幅器に出力している。また、増幅器は、入力信号(変調部によって変調された被変調信号)を設定された増幅率で増幅しており、その増幅信号が送信信号としてアンテナ16に出力されるようになっている。なお、アンテナ16を構成するコイルには共振コンデンサ17が並列に接続されており、送信回路11からの被変調信号は、アンテナ16より電波信号として外部に送信されるようになっている。
【0027】
また、アンテナ16には、受信回路12の入力端子が接続されており、アンテナ16によって受信された電波信号(受信信号)は、受信回路12に入力されるようになっている。受信回路12は、例えば、増幅器、復調部、二値化処理部、複号化部などによって構成されており、アンテナ16によって受信された受信信号を増幅器によって増幅し、その増幅信号を復調部によって復調している。更に、その復調された信号波形を二値化処理部によって二値化すると共に、復号化部にて復号化し、その復号化された信号を受信データとして制御回路13に出力している。
なお、本実施形態では、送受信部10及び制御回路13が「通信手段」を構成しており、後述のICカード20(非接触通信媒体)と非接触通信を行うように機能する。
【0028】
ICカード20は、「非接触通信媒体」の一例に相当するものであり、ハードウェア的には公知のICカードとして構成されている。このICカード20は、図2に示すように、アンテナ21,電源回路22,復調回路23,制御回路24,メモリ25,変調回路26,負荷変調回路27などによって構成されている。尚、アンテナ21には、コンデンサ28が並列に接続されている。このICカード20は、ICカードリーダ1より送信された搬送波をアンテナ21を介して受信すると、電源回路22において搬送波を整流して動作用電源を生成し、マイクロコンピュータで構成される制御回路24及びその他の構成要素に供給している。
【0029】
また、ICカード20では、搬送波に重畳されているICカードリーダ1からの送信データが復調回路23によって復調され、制御回路24に出力されるようになっている。制御回路24は、動作用電源が供給されて起動すると、ICカードリーダ1からの送信データを受けてメモリ25に記憶されているデータを読み出し、また、ライトコマンドが送信された場合はデータを書き込んでいる。変調回路26は、受信した搬送波を分周した副搬送波を制御回路24が出力する応答データによって変調している。更に、アンテナ21には、負荷変調回路27を構成する抵抗及びスイッチの直列回路が並列に接続されており、変調回路26より出力される副搬送波の被変調信号により負荷変調回路27のスイッチがオンオフされることで搬送波が負荷変調され、応答(レスポンス)が返信されるようになっている。
【0030】
(捕捉・認証処理)
次に、ICカードリーダ1による捕捉・認証処理について説明する。
本実施形態に係るICカードリーダ1では、制御回路13によって図3に示すような捕捉・認証処理が行われるようになっている。この捕捉・認証処理では、まず、出力レベルを第1のレベルに設定する処理を行う(S1)。本実施形態に係るICカードリーダ1では、例えば、送信回路11に設けられた増幅器の増幅率が制御回路13からの信号に応じて変更できるようになっており、S1では、増幅器の増幅率を所定の低レベルに設定することにより、アンテナ16からの電波の出力レベルを第1レベルに設定している。
【0031】
その後、捕捉用コマンドを送信する処理を行い(S2)、更に、その送信された捕捉用コマンドに対する応答の確認処理を行う(S3)。図3に示す捕捉・認証処理では、例えば、所定間隔で送信回路11から規定の捕捉用コマンドが出力されるようになっており、S3では、この捕捉用コマンドに対してICカードから正常な応答がなされたか否かを判断している。なお、捕捉用コマンドとしては、ICカード20の通信規格で定められた公知の捕捉用コマンドが使用される。例えば、ICカード20がタイプA規格であればタイプA用のリクエストコマンドが使用され、タイプB規格であればタイプB用のリクエストコマンドが使用される。また、FeliCa規格であればFeliCa規格用のpollingコマンドが使用される。
本実施形態では、S3の処理を実行する制御回路13が、「捕捉検出手段」の一例に相当し、上記「通信手段」により第1レベルで信号が出力されたときのICカード20(非接触通信媒体)からの応答結果に基づいて、ICカード20(非接触通信媒体)の捕捉を検出するように機能する。
【0032】
その後、S2で送信された捕捉用コマンドに対してICカード20から正常な応答がなされたか否かを判断する。本実施形態では、S2で送信される捕捉用コマンドに応じた規定の応答信号が定められており、S3ではこの規定の応答信号が受信されたか否かを判断している。そして、規定の応答信号が受信された場合には、S3にてYesに進み、出力レベルを第2レベルに設定変更する。具体的には、例えば上述の増幅器の増幅率を前記低レベルよりも高い高レベルに設定変更することで、アンテナ16からの電波の出力レベルを第2レベルに変更している。
【0033】
なお、本実施形態では、S1、S4の処理を実行する制御回路13が「出力設定手段」の一例に相当し、上記「捕捉検出手段」によってICカード20(非接触通信媒体)の捕捉が検出される前に、上記「通信手段」の出力を第1レベルに設定し、上記「捕捉検出手段」によってICカード20(非接触通信媒体)の捕捉が検出された場合に、上記「通信手段」の出力を第1レベルよりも大きい第2レベルに設定変更するように機能する。
【0034】
そして、S4にて出力レベルを第2レベルに設定変更した後に、認証処理を行っている(S5)。認証処理は、内部認証方式、外部認証方式、相互認証方式のいずれで行ってもよく、この認証処理の際には、S4で設定された出力レベルでICカードリーダ1から送信信号が出力される。
【0035】
例えば、S5にて内部認証を行う場合、ICカードリーダ1から認証対象となるICカード20に対して内部認証用のコマンドを送信すると共に、ICカードリーダ1内で発生させた乱数をそのICカード20に送信する。一方、ICカード20は、その乱数を受信すると共に内部に設けられた暗号化鍵によって暗号化し、その暗号データをICカードリーダ1に送信する。ICカードリーダ1は、この暗号データを受信して復号鍵によって復号し、その復号化されたデータが先に送信した乱数(即ち、ICカードリーダ1の内部で発生させた乱数)と一致しているか否かを判断し、一致している場合にはその認証対象のICカード20を正しいICカードと認証する。この内部認証処理はあくまで一例であるが、このような内部認証処理を行う場合、内部認証用のコマンドや各種データがS4で設定された第2レベルで出力されることとなる。
【0036】
また、S5にて外部認証を行う場合、例えば、ICカードリーダ1から認証対象となるICカード20に対して乱数を要求するコマンドを送信する。一方、ICカード20は、その乱数要求コマンドを受信すると内部で乱数を発生させ、その発生させた乱数を要求元のICカードリーダ1に送信する。このように乱数が送信されると、ICカードリーダ1は、当該乱数を受信すると共に内部に設けられた暗号化鍵によって暗号化し、その暗号データをICカード20に返信する。ICカード20側では、この暗号データを受信し、当該ICカード20の内部に設けられた復号鍵によって暗号データを復号化する。そして、その復号化されたデータが先に送信した乱数(即ち、ICカード20の内部で発生させた乱数)と一致しているかを判断し、一致している場合には、外部認証が成功したことを示す信号をICカードリーダ1に送信する。このような外部認証処理はあくまで一例であるが、このような外部認証処理を行う場合、外部認証用のコマンド(乱数要求コマンド等)や各種データがS4で設定された第2レベルで出力されることとなる。
【0037】
S5の認証処理において認証が成功した場合にはS6にてYesに進み、所定の成功処理を行う(S6)。所定の成功処理は、ICカード20に記録されたデータの読取処理であってもよく、ICカード20に対するデータの書込処理であってもよい。或いは、それらの両方であってもよい。一方、S5の認証処理において認証が失敗した場合には、S6にてNoに進み、所定のエラー処理を行う。このエラー処理は、認証が失敗したことをユーザに知らしめる処理であり、例えば、表示部にエラーが発生した旨の情報を表示してもよく、ブザーの鳴動やLEDの点灯などを行うようにしてもよい。
【0038】
なお、本実施形態では、S5の処理を実行する制御回路13が「認証手段」の一例に相当し、上記「捕捉検出手段」によってICカード20(非接触通信媒体)の捕捉が検出された後に、その検出されたICカード20の認証を行うように機能しており、具体的には、上記送受信部10により第2レベルで信号が出力されたときの無線タグからの応答結果に基づいて、当該ICカード20の認証を行っている。
【0039】
(本実施形態の主な効果)
本実施形態に係るICカードリーダ1では、送受信部10(通信手段)により第1レベルで信号が出力されたときのICカード20(非接触通信媒体)からの応答結果に基づいてICカード20の捕捉を検出しており、ICカード20の捕捉が検出された場合には、送受信部10の出力を第1レベルよりも大きい第2レベルに設定変更している。そして、第2レベルで信号が出力されたときのICカード20からの応答結果に基づいてICカード20の認証を行っている。このようにすると、ICカード20を認証する際の通信エリアを、捕捉時の通信エリアよりも拡げることができる。従って、図4(a)のように捕捉時の通信エリアの境界に近い位置でICカード20が捕捉された場合であっても、認証時には図4(b)のように通信エリアが拡大されて非接触通信媒体が通信エリアの境界から離れた内側に位置した状態で通信が行われることとなり、通信エリアから外れにくい位置でより安定した通信処理を行うことができる。また、図4(b)のような状態で、S7の処理(読取処理や書込処理など)を行うことができるため、認証後の通信処理もより良好に行うことができる。
【0040】
[第2実施形態]
次に第2実施形態について説明する。
図5は、第2実施形態に係る非接触通信装置で行われる捕捉・認証処理を例示するフローチャートである。また、図6(a)は、第2実施形態の非接触通信装置でICカードを捕捉するときの様子を説明する説明図であり、図6(b)は、捕捉後にICカードと非接触通信処理を行うときの様子を説明する説明図である。なお、図6(a)では、複数のICカード20(20a、20b、20c)が重ねられて翳される場合を例示しており、捕捉前のICカードの状態を一点鎖線で概念的に示し、捕捉時の状態を実線で示している。また、図6(b)では、ICカード20が捕捉されるまでの通信エリアを一点鎖線にて概念的に示しており、捕捉後の通信エリアを実線にて概念的に示している。なお、第2実施形態は、捕捉・認証処理のみが第1実施形態と異なり、それ以外(例えばハードウェア構成等)は第1実施形態と同様である。よって、捕捉・認証処理以外については詳細な説明を省略し、ハードウェア構成については、図1、図2を参照することとする。
【0041】
本実施形態に係るICカードリーダ1では、図5のような流れで捕捉・認証処理が行われるようになっている。この捕捉・認証処理でも、まず、出力レベルを第1のレベルに設定する処理を行う(S21)。本実施形態に係るICカードリーダ1でも、例えば、送信回路11に設けられた増幅器の増幅率が制御回路13からの信号に応じて変更できるようになっており、S21では、増幅器の増幅率を所定の低レベルに設定することにより、アンテナ16からの電波の出力レベルを第1レベルに設定している。
【0042】
その後、Nを初期値である「1」に設定した後(S22)、N番目の捕捉用コマンドを送信する処理を行う(S23)。本実施形態に係るICカードリーダ1は、複数種類のICカードと通信可能に構成されており、ICカードの種別毎に定められた各捕捉用コマンドを第1レベルで順次送信するように構成されている。例えば、初回のS23の処理では、予定された複数種類の捕捉用コマンドの中から1番目の捕捉用コマンドを送信しており、その後にS23の処理が繰り返される毎に、2番目の捕捉用コマンド、3番目の捕捉用コマンドが順次送信されるようになっている。捕捉用コマンドの種類や順序は様々とすることができ、例えば、1番目の捕捉用コマンドがMifare規格で用いられるリクエストコマンド、2番目の捕捉用コマンドをタイプB規格で用いられるリクエストコマンド、3番目の捕捉用コマンドをFeliCa規格で用いられるpollingコマンドといった設定とすることができる。
【0043】
S23にて捕捉用コマンドを送信した後には、その送信された捕捉用コマンドに対する応答の確認処理を行う(S24)。例えば、S23の処理において、1番目の捕捉用コマンドとしてMifare規格で用いられるリクエストコマンドが送信された場合、S24ではこのリクエストコマンドに対していずれかのICカード20から正常な応答がなされたか否かを判断している。S23で他の種類の捕捉用コマンドが送信された場合も同様であり、この場合もS23で送信された捕捉用コマンドに対応する正常な応答がなされたか否かをS24で判断する。
【0044】
なお、本実施形態でも、制御回路13が、「捕捉検出手段」の一例に相当している。また、本実施形態では、S23の処理を実行する制御回路13が、「捕捉用コマンド送信手段」の一例に相当し、ICカード20(非接触通信媒体)の種別毎に定められた各捕捉用コマンドを第1レベルで順次送信するように機能する。
【0045】
S23で送信された捕捉用コマンドに対する正常な応答がなされない場合(例えば、S23でN番目の捕捉用コマンドを送信した後、一定時間以内にN番目の種類に対応した応答信号を受信しなかった場合)、S24にてNoに進み、Nをインクリメントし(S25)、S23に戻って次の種類の捕捉用コマンドを送信する。例えば、前回のS23の処理において1番目の捕捉用コマンド(例えば、Mifare規格で用いられるリクエストコマンド)が送信されている場合、S25にてNがインクリメントされて「2」となったときには、S23の処理において2番目の捕捉用コマンド(例えば、タイプB規格で用いられるリクエストコマンド)が送信され、この2番目の種類についてS24の判断処理が行われることとなる。なお、Nのインクリメントは予定された種類数Nmaxだけ行われ、Nが最大値NmaxのときにS25の処理を行う場合には、再びN=1に戻すようにすればよい。
【0046】
一方、S23で送信された捕捉用コマンドに対応する正常な応答がなされた場合、S24にてYesに進み、出力レベルを第2レベルに設定変更する(S26)。具体的には、例えば上述の増幅器の増幅率を前記低レベルよりも高い高レベルに設定変更することで、アンテナ16からの電波の出力レベルを第2レベルに変更している。
【0047】
本実施形態では、S23〜S25の処理を実行する制御回路13が、「種別検出手段」の一例に相当し、ICカード20(非接触通信媒体20)の種別を検出するように機能し、具体的には、「捕捉用コマンド送信手段」による各捕捉用コマンドの送信に応じたICカード20(非接触通信媒体)からの応答結果に基づいて、ICカード20の種別を検出するように機能する。
【0048】
また、本実施形態でも、制御回路13が、「出力設定手段」の一例に相当している。なお、図5の例では、ICカード20の捕捉が検出された場合(即ち、S24にてYesに進む場合)に、「通信手段」の出力を、第1レベルよりも大きい規定の一定出力に設定しており、これを「第2レベル」としているが、第1レベルよりも大きい出力であって且つ「種別検出手段」によって検出された種別(即ち、S24で正常な応答が検出されるときの捕捉用コマンドの種別)に応じた出力に設定変更するようにしてもよい。この場合、種別毎に定められた各出力レベルが「第2レベル」に相当することとなる。
【0049】
そして、S26にて出力レベルを第2レベルに設定変更した後に、認証処理を行う(S27)。S27の認証処理は、上記「種別検出手段」によって検出された種別(即ち、S24で正常な応答が検出されるときの捕捉用コマンドの種別)に対応する方式で行われる。具体的には、メモリ14において、各処理毎に捕捉後に行われるコマンド手順が記録されており、S27では、S24で正常な応答が検出されたときの捕捉用コマンドの種別に応じたコマンド手順を読み出して実行している。
【0050】
なお、本実施形態では、メモリ14が「記憶手段」の一例に相当している。また、S27、S29の処理を実行する制御回路13が「コマンド実行手段」の一例に相当し、ICカード20の種別が検出された場合に、その検出された種別に対応するコマンド手順をメモリ14から読み出し、その読み出されたコマンド手順に従ってコマンドを実行するように機能している。
【0051】
例えば、S23において、1番目の捕捉用コマンドとしてMifare規格で用いられるリクエストコマンドが送信され、このリクエストコマンドに対していずれかのICカード20から正常な応答がなされたとき、S27では、この種別(Mifare規格)用に用意された認証用プログラム(コマンド手順)を読み出して実行する。なお、S27において各種別毎に行われる認証処理は、内部認証方式、外部認証方式、相互認証方式のいずれで行ってもよく、この認証処理の際には、S26で設定された出力レベルでICカードリーダ1から送信信号が出力されることとなる。
【0052】
S27の認証処理を内部認証方式で行う例では、上記「種別検出手段」によって検出された種別(即ち、S24で正常な応答が検出されるときの捕捉用コマンドの種別)のコマンド手順を用いて内部認証を行う。例えば、ICカードリーダ1から認証対象となるICカード20(即ち、捕捉されたICカード20)に対し、当該種別で定められた内部認証用のコマンド(認証用コマンド)を送信すると共に、ICカードリーダ1内で発生させた乱数をそのICカード20に送信する。一方、ICカード20は、その乱数を受信すると共に内部に設けられた暗号化鍵によって暗号化し、その暗号データをICカードリーダ1に送信する。ICカードリーダ1は、この暗号データを受信して復号鍵によって復号し、その復号化されたデータが先に送信した乱数(即ち、ICカードリーダ1の内部で発生させた乱数)と一致しているか否かを判断する。そして、一致している場合には、その認証対象のICカード20を正しいICカードと認証する(即ち、認証成功とする)。一方、一致していない場合には、認証失敗とする。この場合、S27の処理を行う制御回路13が「認証用コマンド送信手段」の一例に相当し、「捕捉検出手段」によって検出されたICカード20(非接触通信媒体)に対し、認証用コマンドを第2レベルで送信するように機能する。
【0053】
S27の認証処理の後には、その認証処理において認証が成功したか否かを判断する(S28)。そして、認証が成功したと判断した場合には、S28にてYesに進んでS29の処理を行い、認証が失敗したと判断した場合にはS28にてNoに進んでS29の処理を行う。例えば、上述の内部認証処理を行う場合において、ICカードリーダ1にて復号化されたデータが先に送信した乱数(即ち、ICカードリーダ1の内部で発生させた乱数)と一致していない場合には認証失敗となるため、このような場合にはS28にてNoに進むことになる。また、S27において上述の内部認証処理を行う場合、上記「認証用コマンド」が送信されてから、認証対象のICカード20からの応答があるまでの無応答時間を検出し、その無応答時間が所定時間を経過した場合にも認証失敗となる。従って、このような場合にも、S28にてNoに進むことになる。なお、本実施形態では、制御回路13が「時間検出手段」の一例に相当する。
【0054】
S28にてNoに進む場合、S27の処理で認証を試みたICカード20の応答を停止する処理を行う(S30)。具体的には、認証対象となっていたICカード20(即ち、直前のS27の処理で認証が失敗したICカード20)に対して応答停止用のコマンドを送信しており、このコマンドを受け取ったICカード20は、例えば一定期間ICカードリーダ1に対して応答処理を停止するようになっている。なお、本実施形態では、S30の処理を行う制御回路13が「応答停止手段」の一例に相当し、「捕捉検出手段」によって検出されたICカード20(非接触通信媒体)が、「認証用コマンド送信手段」によって送信された認証用コマンドに対して適正な応答を行わない場合に、当該ICカード20の応答を停止させる処理を行うように機能する。
【0055】
S30で応答停止処理を行った後には、S22に戻り、S22以降の処理を繰り返すこととなる。S22以降の処理を繰り返す場合、一度認証が失敗したICカードについては、上述のように応答停止処理がなされているため、そのICカードが捕捉されることはなく、それ以外の残ったICカードについてS22〜S28の処理が行われることとなる。
【0056】
一方、S28でYesに進む場合(即ち、S27の認証処理において認証が成功した場合)には、所定の成功処理を行う(S29)。この所定の成功処理も、上記「種別検出手段」によって検出された種別(即ち、S24で正常な応答が検出されるときの捕捉用コマンドの種別)に対応するコマンド手順で行われる。なお、この「所定の成功処理」は、S27で認証が成功したICカード20のデータを読み取る処理であってもよく、そのICカード20に対してデータを書き込む処理であってもよい。或いは、それらの両方であってもよい。
【0057】
(第2実施形態の主な効果)
本実施形態でも、第1実施形態と同様に、ICカード20(非接触通信媒体)を認証する際の通信エリアを、捕捉時の通信エリアよりも拡げることができる。従って、図6(a)のように捕捉時の通信エリアの境界に近い位置でICカード20が捕捉された場合であっても、認証時には図6(b)のように通信エリアが拡大されてICカード20が通信エリアの境界から離れた内側に位置した状態で通信が行われることとなり、通信エリアから外れにくい位置でより安定した通信処理を行うことができる。また、図6(b)のような状態で、S29の処理(読取処理や書込処理など)を行うことができるため、認証後の通信処理もより良好に行うことができる。
【0058】
また、本実施形態では、「捕捉検出手段」によってICカード20の捕捉が検出された場合に、「通信手段」の出力を、第1レベルよりも大きい出力であって且つ規定の一定出力に設定変更している。このようにすると、出力レベルの切り替えを迅速且つ簡易に行うことができる。
【0059】
また、本実施形態に係るICカードリーダ1は、ICカード20の種別毎に定められた各捕捉用コマンドを第1レベルで順次送信する「捕捉用コマンド送信手段」を備えており、この「捕捉用コマンド送信手段」による各捕捉用コマンドの送信に応じたICカード20からの応答結果に基づいて、ICカード20の種別を検出している。このようにすると、ICカード20の存在を迅速に確認しやすく、また捕捉時に通信対象(ICカード20)の種別を迅速かつ確実に把握できるようになる。
【0060】
また、本実施形態に係るICカードリーダ1は、ICカード20の種別毎のコマンド手順を記憶するメモリ14(記憶手段)が設けられており、「種別検出手段」によってICカード20の種別が検出された場合、その検出された種別に対応するコマンド手順をメモリ14から読み出し、その読み出されたコマンド手順に従ってコマンドを実行している。このようにすると、複数種別のICカード20を捕捉対象とすることができると共に、いずれかの種別のICカード20が捕捉された場合に、その捕捉されたICカード20の種別に応じた適切なコマンドを実行できるようになる。
【0061】
また、本実施形態では、「捕捉検出手段」によって検出されたICカード20に対し、認証用コマンドを第2レベルで送信しており、更に、その検出されたICカード20が、送信された認証用コマンドに対して適正な応答を行わない場合に、当該ICカード20からの応答を停止させる処理(S30:図5)を行っている。このようにすると、捕捉されたICカード20の認証処理を安定した通信環境下で行うことができる。
従来の方式(捕捉時と認証時で出力を変更しない方式)では、通信エリアの境界付近等の不安定な位置で認証処理が行われることが多かったため、あるICカードを捕捉した後の認証処理において無応答となった場合、捕捉されたICカードが通信エリアを外れたことによる無応答であるのか、認証エラーによる無応答であるのかが区別できないという問題があった。そして、通信エリアを外れたことによる無応答のときには、使用者による再度の翳し操作等が必要となるため、処理時間や検出性能の点で問題があった。
これに対し、本実施形態によれば、第1レベルで捕捉したICカード20を認証する際に、通信不良による認証の失敗の可能性を極力排除できる。従って、認証が失敗したときには、捕捉されたICカード20が認証対象ではない可能性が高く、このようなICカード20の応答を停止させることで、他の処理(他の非接触通信媒体の捕捉・認証処理等)に適切且つ迅速に移行しやすくなる。
【0062】
また、本実施形態では、「認証用コマンド送信手段」によって認証用コマンドが送信された場合に、「捕捉検出手段」によって検出されたICカード20の無応答時間を検出し、その無応答時間が所定時間を経過した場合に、当該ICカード20の応答を停止させる処理(S30:図5)を行っている。このようにすると、認証が失敗したか否かを、「所定時間」を基準としてより一層適切に判断でき、且つ認証が失敗した可能性の高いICカード20らの応答をより確実に停止させることができるようになる。
【0063】
また、本実施形態では、図6のように通信対象となるICカード20が複数存在する場合に、「通信手段」による第1レベルでの信号出力に対するいずれかのICカード20からの応答結果に基づいて、当該ICカード20を選択的に捕捉している。そして、その選択的に捕捉されたICカード20に対して第2レベルで認証用コマンドを送信し(S26、S27)、当該ICカード20が認証用コマンドに対して適正な応答を行わない場合に、当該ICカード20の応答を停止させる処理(S30)を行っている。このようにすると、ICカード20が複数存在する環境下においていずれかのICカード20を選択的に捕捉し、その捕捉したICカード20の認証処理を安定した通信環境下で行うことができる。そして、認証が失敗した場合には、認証対象ではない可能性が高い当該ICカード20の応答を停止させて、他のICカード20の捕捉・認証処理に迅速に移行することができる。
また、本実施形態では、ICカード20の応答停止処理(S30)がなされた場合、「通信手段」の出力を第2レベルに維持し、その維持された第2レベルで次の捕捉用信号を出力している。そして、応答停止処理(S30)がなされたICカード20以外の他のICカード20からの応答結果に基づいて、当該他のICカード20の捕捉を検出している。このようにすると、いずれかのICカード20が捕捉され、そのICカード20の認証が失敗したときに、他のICカード20をより捕捉しやすくなる。
【0064】
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0065】
第2実施形態では複数種類のICカードを読み取る場合を例示したが、同種類の複数のICカードを読み取る場合にも適用できる。
【0066】
第2実施形態では、第1レベルよりも大きい規定の一定レベルを「第2レベル」としていたが、このような方式に代え、「捕捉検出手段」によってICカード20の捕捉が検出された場合に「通信手段」の出力を、第1レベルよりも大きい出力であって且つ「種別検出手段」によって検出された種別に応じた出力に設定変更することもできる。例えば、図5のS26の設定処理において、第1レベルよりも大きいレベルであって且つ上記「種別検出手段」によって検出された種別(即ち、S24で正常な応答が検出されるときの捕捉用コマンドの種別)に応じた出力レベルに設定することもできる。このようにすると、認証時の通信エリアを、捕捉時よりも大きいサイズであって且つ通信対象の種別に応じたサイズに設定できるため、種別を考慮して適切な通信処理を行いやすくなる。
【符号の説明】
【0067】
1…ICカードリーダ(非接触通信装置)
10…送受信部(通信手段)
13…制御回路(通信手段、捕捉検出手段、出力設定手段、認証手段、種別検出手段、捕捉用コマンド送信手段、コマンド実行手段、認証用コマンド送信手段、応答停止手段、時間検出手段)
14…メモリ(記憶手段)
20…ICカード(非接触通信媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触通信媒体と非接触通信を行う通信手段と、
前記非接触通信媒体の捕捉を検出する捕捉検出手段と、
前記捕捉検出手段によって前記非接触通信媒体の捕捉が検出される前に、前記通信手段の出力を第1レベルに設定する出力設定手段と、
前記捕捉検出手段によって前記非接触通信媒体の捕捉が検出された後に、その検出された前記非接触通信媒体の認証を行う認証手段と、
を備えた非接触通信装置であって、
前記捕捉検出手段は、前記通信手段により前記第1レベルで信号が出力されたときの前記非接触通信媒体からの応答結果に基づいて、前記非接触通信媒体の捕捉を検出し、
前記出力設定手段は、前記捕捉検出手段によって前記非接触通信媒体の捕捉が検出された場合、前記通信手段の出力を前記第1レベルよりも大きい第2レベルに設定変更し、
前記認証手段は、前記通信手段により前記第2レベルで信号が出力されたときの前記非接触通信媒体からの応答結果に基づいて、前記非接触通信媒体の認証を行うことを特徴とする非接触通信装置。
【請求項2】
前記捕捉検出手段は、前記非接触通信媒体の種別を検出する種別検出手段を備え、
前記出力設定手段は、前記捕捉検出手段によって前記非接触通信媒体の捕捉が検出された場合、前記通信手段の出力を、前記第1レベルよりも大きい出力であって且つ規定の一定出力又は前記種別検出手段によって検出された前記種別に応じた出力に設定変更することを特徴とする請求項1に記載の非接触通信装置。
【請求項3】
前記通信手段は、前記非接触通信媒体の種別毎に定められた各捕捉用コマンドを前記第1レベルで順次送信する捕捉用コマンド送信手段を備え、
前記種別検出手段は、前記捕捉用コマンド送信手段による各捕捉用コマンドの送信に応じた前記非接触通信媒体からの応答結果に基づいて、前記非接触通信媒体の前記種別を検出することを特徴とする請求項2に記載の非接触通信装置。
【請求項4】
前記非接触通信媒体の種別毎のコマンド手順を記憶する記憶手段と、
前記種別検出手段によって前記非接触通信媒体の前記種別が検出された場合に、その検出された前記種別に対応する前記コマンド手順を前記記憶手段から読み出し、その読み出された前記コマンド手順に従ってコマンドを実行するコマンド実行手段と、
を備えたことを特徴とする請求項2又は請求項3のいずれか一項に記載の非接触通信装置。
【請求項5】
前記通信手段は、前記捕捉検出手段によって検出された前記非接触通信媒体に対し、認証用コマンドを前記第2レベルで送信する認証用コマンド送信手段を備え、
更に、前記捕捉検出手段によって検出された前記非接触通信媒体が、前記認証用コマンド送信手段によって送信された前記認証用コマンドに対して適正な応答を行わない場合に、前記非接触通信媒体の応答を停止させる処理を行う応答停止手段が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の非接触通信装置。
【請求項6】
前記認証用コマンド送信手段によって前記認証用コマンドが送信された場合に、前記捕捉検出手段によって検出された前記非接触通信媒体の無応答時間を検出する時間検出手段を備え、
前記応答停止手段は、前記時間検出手段によって検出される前記無応答時間が所定時間を経過した場合に、前記非接触通信媒体の応答を停止させる処理を行うことを特徴とする請求項5に記載の非接触通信装置。
【請求項7】
前記捕捉検出手段は、通信対象となる前記非接触通信媒体が複数存在する場合に、前記通信手段による前記第1レベルでの信号出力に対するいずれかの前記非接触通信媒体からの応答結果に基づいて、当該非接触通信媒体を選択的に捕捉し、
前記認証用コマンド送信手段は、前記捕捉検出手段によって選択的に捕捉された前記非接触通信媒体に対し、前記第2レベルで前記認証用コマンドを送信し、
前記応答停止手段は、前記捕捉検出手段によって選択的に捕捉された前記非接触通信媒体が、前記認証用コマンドに対して適正な応答を行わない場合に、前記非接触通信媒体の応答を停止させる処理を行い、
前記出力設定手段は、前記応答停止手段によって前記非接触通信媒体の応答停止処理がなされた場合、前記通信手段の出力を前記第2レベルに維持し、
前記通信手段は、前記応答停止手段によって応答停止処理がなされた場合、その維持された前記第2レベルで捕捉用信号を出力し、
前記捕捉検出手段は、前記通信手段から前記第2レベルで捕捉用信号が出力された場合に、応答停止処理がなされた前記非接触通信媒体以外の他の非接触通信媒体からの応答結果に基づいて、当該他の非接触通信媒体の捕捉を検出することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の非接触通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−113287(P2011−113287A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268908(P2009−268908)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】