説明

非接触通信装置

【課題】非接触通信装置において、検知手段の数を増やすことなく当該装置の開封を確実に検知することができる構成を提供することを目的とする。
【解決手段】非接触通信装置1は、気体を注入した状態で密封可能な収容部材2内に回路基板10を備えている。この収容部材2の少なくとも一部には、収容部材2内の気圧に応じて撓み変形可能な撓み変形部4が形成されており、収容部材2内の内部気圧が外部よりも高い所定状態のときに第1位置となり、所定状態のときよりも内部気圧が低下したときに第2位置となるように構成されている。そして、撓み変形部4が第2位置になったことを検知部13により検知するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、利便性等の面から従来の接触式の磁気カードに代わり非接触式のICカードなどの非接触通信媒体が広く普及しており、それに伴い非接触通信装置が用いられている。非接触通信装置では、例えばユーザ情報や商品情報などの機密情報が取り扱われることが多いため、セキュリティ性を確保するために、不正に開封されたことを検知する検知手段が設けられることがある。このような、セキュリティ性を必要とする装置等の不正開封を検知する技術として、例えば、下記特許文献1に示すものが知られている。
【0003】
特許文献1には、板状の基材(四角い平面状の周囲(30))の一方の面に、アイテム(金融取引システムの構成要素等)が配置されており、アイテム(14、16)が配置されている部分(基材の一方の面の一部分)をカバーリング部材で覆う構成が記載されている。そして、この特許文献1のカバーリング部材には、電気的特性を有する非金属検出エレメントが配置されており、この非金属検出エレメントへのダメージが電気的特性の変動として検出されることで、カバーリング部材の開封を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007―533129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のような構成では、板状の基材の一部分(一方の面)のみしかカバーリング部材で覆われていないため、例えば、基材の裏側から不正に穴を開けられて開封された場合には、検出できないといった問題があった。また、検知手段(非金属検出エレメント)を基材の裏側(他方の面)にも設けることも考えられるが、それに伴いコストが増大するといった問題があった。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、非接触通信装置において、検知手段の数を増やすことなく重要部分の開封を確実に検知することができる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、電磁波を媒介として非接触通信媒体と非接触通信を行う非接触通信手段と、前記非接触通信に基づく制御を行う制御手段及びデータを記憶する記憶手段の少なくともいずれかが実装された回路基板と、前記回路基板を収容すると共に、気体を注入した状態で密封可能な収容部材と、前記収容部材の所定位置の変位を検知する検知手段と、を備え、前記収容部材の少なくとも一部には、前記収容部材内の気圧に応じて撓み変形可能な撓み変形部が形成され、前記撓み変形部は、前記収容部材内の内部気圧が外部よりも高い所定状態のときに第1位置となり、前記所定状態のときよりも内部気圧が低下したときに第2位置となるように構成されており、前記検知手段は、前記撓み変形部が前記第2位置になったことを検知することを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の非接触通信装置において、前記検知手段は、前記回路基板に実装されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の非接触通信装置において、前記撓み変形部の内壁面には、前記検知手段と対向する位置に突起部が形成されており、前記検知手段は、前記収容部材内の減圧に応じて前記突起部が所定位置に達したことを検知することを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3に記載の非接触通信装置において、前記突起部は、前記収容部材の長手方向及び短手方向の中央部に設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の非接触通信装置において、前記撓み変形部は前記収容部材の一部として構成されると共に、当該撓み変形部に隣接する前記隣接部よりも薄く構成された肉薄部からなることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項5に記載の非接触通信装置において、前記肉薄部の外壁面は、前記収容部材内の気圧が所定の高圧状態となるときに、前記隣接部の外壁面と面一で揃うように構成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明は、請求項5に記載の非接触通信装置において、前記肉薄部は、前記収容部材内の気圧が所定の高圧状態となるときに外方へ膨出するように構成されており、前記収容部材における前記肉薄部以外の外壁部には、前記所定の高圧状態のときに外方へ膨出する前記肉薄部と外形が略同一となる複数の膨出部が形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項8の発明は、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の非接触通信装置において、前記記憶手段は、前記回路基板に実装されると共に、前記非接触通信手段と前記非接触通信媒体との間で行われる非接触通信に応じて生成された情報を記憶する構成をなしており、更に、前記検知手段により前記撓み変形部が前記第2位置になったことを検知された場合に前記記憶手段に記憶される情報の少なくとも一部を消去する消去手段が設けられていること特徴とする。
【0015】
請求項9の発明は、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の非接触通信装置において、前記収容部材は、前記非接触通信装置の外殻をなす筐体として構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明に係る非接触通信装置では、気体を注入した状態で密封可能な収容部材に回路基板が収容されている。この収容部材の少なくとも一部には、収容部材内の気圧に応じて撓み変形可能な撓み変形部が形成されており、収容部材内の内部気圧が外部よりも高い所定状態のときに第1位置となり、所定状態のときよりも内部気圧が低下したときに第2位置となるように構成されている。そして、撓み変形部が第2位置になったことを検知手段により検知するようにしている。
この構成によれば、気体を注入した状態で密封された収容部材に、不正に穴が開けられるなどして当該収容部材が開封されると、この収容部材に開けられた開封穴から収容部材内の気体が収容部材の外部へ流出して収容部材内の内部気圧が低下し、撓み変形部が第1位置から第2位置へ変位する。この撓み変形部の変位を検知手段により検知することで、重要部分(回路基板を収容した収容部材)の開封を確実に検知することができる。また、この構成により、回路基板の一方の面からの開封だけでなく、他方の面からの開封の検知も1つの検知手段で検知することができるので、検知手段の数を増やすことなく重要部分の開封を確実に検知でき製造コストを抑えることができる。
【0017】
請求項2の発明では、検知手段が回路基板に実装されて構成されている。この構成により、検知手段を回路基板と共に収容部材内に収容することができ、組み立て作業の容易化を図ることができる。また、検知手段を固定するための固定構造を別途収容部材に設ける必要がなく部品点数の削減や製造コストの低減を図ることができる。さらに、検知手段が収容部材内に収容される構成のため、検知手段を収容部材外部からの衝撃から保護することができるため、検知手段が不正に破壊されるなどの虞がなく、当該装置のセキュリティ性を一層高めることができる。
【0018】
請求項3の発明では、撓み変形部の内壁面において、検知手段と対向する位置に突起部が形成されている。そして、検知手段は、収容部材内の減圧に応じて突起部が所定位置に達したことを検知することで、収容部材の開封を検知している。このようにすることで、収容部材内の気圧の低下(すなわち、収容部材の開封)を検知手段により確実に検知することができる。
【0019】
請求項4の発明では、撓み変形部の突起部は、収容部材の長手方向及び短手方向の中央部に設けられている。この構成では、収容部材内の内部気圧が低下して撓み変形部の突起部が検知手段側へ変位する(撓む)ときに、中央部から外れた位置に設けられている場合と比較して、倒れたり傾いたりすることが抑えられる。このため、検知手段によって、当該突起部の変位をより確実に検知することができる。
【0020】
請求項5の発明では、撓み変形部が収容部材の一部として構成されると共に、当該撓み変形部に隣接する隣接部よりも薄い肉薄部によって構成されている。このように、撓み変形部が設けられる収容部材の所定箇所を、当該撓み変形部の周囲よりも薄くすることで、収容部材内の気圧に応じて、撓み変形部がより撓み易くなる。すなわち、撓み変形部が肉薄部から構成されていない場合(例えば、収容部材全体が均一の厚さで構成されている場合等)と比較して、撓み変形部をより大きく撓ませることができるので、収容部材内の減圧が比較的少ない量であっても、収容部材の開封を検知し易くなる。したがって、撓み変形部が肉薄部によって構成されていない場合と比較して、収容部材内に注入する気体の量を小さく抑えることができる。
【0021】
請求項6の発明では、撓み変形部が肉薄部よりなる構成において、収容部材内の気圧が所定の高圧状態となるときに、肉薄部の外壁面が、撓み変形部に隣接する隣接部の外壁面と面一で揃うように構成されている。この構成によれば、気体が注入されて密封された収容部材において、撓み変形部が形成されている部位が収容部材の外部から特定し難くなる(即ち、撓み変形部が形成されている部位が他の部位と見分けが付き難くなる)。従って、収容部材の外部から検知手段の位置を特定されて当該検知手段を不正に破壊されるといった問題が生じにくく、当該装置のセキュリティ性をより一層高めることができる。
【0022】
請求項7の発明では、撓み変形部が肉薄部よりなる構成において、収容部材内の気圧が所定の高圧状態(すなわち、気体が注入されて収容部材が密封された状態)となるときに、肉薄部が外方へ膨出するように構成されており、収容部材における肉薄部以外の外壁部には、所定の高圧状態のときに外方へ膨出する肉薄部と外形が略同一となる複数の膨出部が形成されている。この構成によれば、気体が注入されて密封された収容部材において、撓み変形部が形成されている部位が収容部材の外部から特定し難くなる(即ち、撓み変形部が形成されている部位が膨出部と見分けが付き難くなる)。従って、収容部材の外部から検知手段の位置を特定されて当該検知手段を不正に破壊されるといった問題が生じにくく、当該装置のセキュリティ性をより一層高めることができる。
【0023】
請求項8の発明では、記憶手段は、回路基板に実装されると共に、非接触通信手段と非接触通信媒体との間で行われる非接触通信に応じて生成された情報を記憶するように構成されている。そして、検知手段により撓み変形部が第2位置になった(収容部材内の内部気圧が低下した)ことが検知された場合に、消去手段により記憶手段に記憶される情報の少なくとも一部が消去されるようになっている。この構成により、万が一収容部材に不正に穴が開けられるなどして当該収容部材が不正に開封されても、記憶手段に記憶される情報の少なくとも一部(例えば、ユーザ情報や商品情報などの機密情報)の漏洩を防止でき、当該装置のセキュリティ性を一層高めることができる。
【0024】
請求項9の発明では、収容部材は、非接触通信装置の外殻をなす筐体として構成されている。このように、収容部材を当該装置の筐体に兼用することで、部品点数を削減でき、製造コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、第1実施形態に係る非接触通信装置における保護ユニットの構成を概略的に説明する説明図であり、図1(A)は収容部材内に気体を注入する前の状態を示す図であり、図1(B)は収容部材内に気体を注入している状態を示す図であり、図1(C)は収容部材内に気体が注入されて密封されている状態を示す図である。
【図2】図2は、図1の非接触通信装置における無線リーダ部の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】図3(A)は、第1実施形態に係る非接触通信装置を携帯端末に適用した例を概略的に例示する平面図であり、図3(B)は、図3(A)の携帯端末の左側面図である。
【図4】図4は、図3の携帯端末の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、図3の携帯端末における決済処理の流れを説明する図である。
【図6】図6は、図3の携帯端末における開封検知動作を説明する図である。
【図7】図7は、第2実施形態に係る非接触通信装置における保護ユニットの構成を概略的に示す説明図であり、図7(A)は収容部材内に気体を注入する前の状態を示す図であり、図7(B)は収容部材内に気体を注入している状態を示す図であり、図7(C)は収容部材内に気体が注入されて密封されている状態を示す図である。
【図8】図8は、第3実施形態に係る非接触通信装置における保護ユニットの構成を概略的に示す説明図であり、図8(A)は収容部材内に気体を注入する前の状態を示す図であり、図8(B)は収容部材内に気体を注入している状態を示す図であり、図8(C)は収容部材内に気体が注入されて密封されている状態を示す図である。
【図9】図9は、他の実施形態の変形例1に係る保護ユニットの構成を概略的に示す説明図である。
【図10】図10は、他の実施形態の変形例2に係る非接触通信装置を説明する図である。
【図11】図11は、図10の非接触通信装置の電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る非接触通信装置について説明する。
図1は、第1実施形態に係る非接触通信装置における保護ユニットの構成を概略的に説明する説明図であり、図1(A)は収容部材内に気体を注入する前の状態を示す図であり、図1(B)は収容部材内に気体を注入している状態を示す図であり、図1(C)は収容部材内に気体が注入されて密封されている状態を示す図である。図2は、図1の非接触通信装置の無線リーダ部の電気的構成を示すブロック図である。図3(A)は、第1実施形態に係る非接触通信装置を携帯端末に適用した例を概略的に例示する平面図であり、図3(B)は、図3(A)の携帯端末の左側面図である。図4は、図3の携帯端末の電気的構成を示すブロック図である。
【0027】
(携帯端末の全体構成)
まず、本発明の第1実施形態に係る非接触通信装置について概説する。
本発明に係る非接触通信装置は、ICカード等の非接触通信媒体と非接触通信を行い得るものであり、図1、図2のような保護ユニットを備えたことを特徴としている。このような保護ユニットを内蔵し得るものであれば、例えば携帯型の非接触通信端末として構成されていてもよく、店舗等で用いられる据置型の非接触通信端末として構成されていてもよい。或いは、自動販売機などに内蔵される内蔵型の非接触通信端末として構成されていてもよい。以下では、代表例として、図3、図4等に示す携帯端末30として構成される例について詳述する。
【0028】
図3、図4に示す携帯端末は、決済機能を備えた決済端末として構成されており、様々な場所へ携帯して使用可能とされている。携帯端末30は、長手状のケース38によって外郭が構成されている。ケース38は、後述する保護ユニット1のほか、各種部品(各種電気部品等)を収容しており、例えば樹脂材料などからなる複数のケース体(例えば、上ケース及び下ケースの2つのケース体)によって構成され、これらが結合した箱状形態をなしている。
【0029】
携帯端末30の上面側にはLED表示部や所定の配列でそれぞれ配置された数字キーや機能キー等の入力キーを複数有するキー操作部33(以下、キー33とも称する)が設けられている。さらに、携帯端末30の上面側には、各種情報を表示する表示器35が設けられている。また、表示器35の周囲にはアンテナ部14が設けられており、非接触通信媒体と通信可能に構成されている。
【0030】
次に、携帯端末30の電気的構成について説明する。
図4に示すように、携帯端末30のケース38内には、携帯端末30全体を制御する制御部32が設けられている。この制御部32は、マイコンを主体として構成されるものであり、CPU、システムバス、入出力インタフェース等を有しており、メモリ41とともに情報処理装置を構成し得るもので情報処理機能を有している。また、制御部32には、無線リーダ部31、キー操作部33、プリンタ34、表示器35、外部インタフェース36などが接続されている。
【0031】
キー操作部33は、制御部32に対して操作信号を与える構成をなしており、制御部32は、これらからの操作信号を受けて操作信号の内容に応じた動作を行うようになっている。プリンタ34は、制御部32からの指令に応じて決済処理の結果等を印刷するものであり、例えば、商品等の購入に応じたレシートを発行するように構成されている。また、表示器35は、制御部32によって表示内容が制御されるように構成されている。外部インタフェース36は、外部(例えばホスト装置)との間でのデータ通信を行うためのインタフェースとして構成されており、制御部32と協働して通信処理を行う構成をなしている。また、ケース38内には、電源となるバッテリや電源部(図示略)なども設けられており、これらによって制御部32や各種電気部品に電力が供給されるようになっている。
【0032】
無線リーダ部31は、制御部32からの指令に応じてICカード等の非接触通信媒体と非接触通信を行うものである。この無線リーダ部31は、図2に示すように、非接触通信媒体との間で行われる非接触通信に関する制御等を行う制御回路11と、制御回路11の制御に応じて非接触通信媒体と非接触通信を行う通信回路15と、非接触通信に応じて生成された情報などを記憶するメモリ12と、後述する保護ユニット1の開封を検知する検知部13とを備えている。
【0033】
制御回路11は、マイコンやFPGAなどの公知の制御回路を主体として構成されるものであり、通信回路15、メモリ12、検知部13等に接続されている。この制御回路11は、通信回路15と協働して非接触通信媒体を非接触通信を行い得るものであり、更に、非接触通信で扱われる情報をメモリ12に記憶する処理等を行う構成をなしている。また、制御回路11は、検知部13からの信号に基づき、メモリ12内に記憶される情報の少なくとも一部を消去する機能をも有している。
【0034】
通信回路15は、アンテナ部14及び制御回路11と協働して非接触通信媒体(ICカード等)との間で電磁波による通信を行い、非接触通信媒体に記憶されるデータの読み取り、或いは非接触通信媒体へのデータの書き込みを行うように機能している。この通信回路15は、例えば、公知の電波方式で伝送を行う回路として構成されており、送信回路15a、受信回路15bなどを有している。
【0035】
送信回路15aは、キャリア発振器、符号化部、増幅器、送信部フィルタ、変調部などによって構成されており、キャリア発振器から所定周波数のキャリア(搬送波)が出力される構成をなしている。また、符号化部は、制御回路11に接続されており、当該制御回路11より出力される送信データを符号化して変調部に出力している。変調部は、キャリア発振器からのキャリア(搬送波)、及び符号化部からの送信データが入力される部分であり、キャリア発振器より出力されるキャリア(搬送波)に対し、通信対象へのコマンド送信時に符号化部より出力される符号化された送信符号(変調信号)によってASK(Amplitude Shift Keying)変調された被変調信号を生成し、増幅器に出力している。増幅器は、入力信号(変調部によって変調された被変調信号)を所定のゲインで増幅し、その増幅信号を送信部フィルタに出力しており、送信部フィルタは、増幅器からの増幅信号をフィルタリングした送信信号を、整合回路を介してアンテナ部14に出力している。このようにしてアンテナ部14に送信信号が出力されると、その送信信号が電磁波として当該アンテナ部14より外部に放射される。なお、アンテナ部14は、電磁波を送受信可能な公知のアンテナであればよく、例えば導体をループ状にして形成されたループアンテナやパッチアンテナなどによって構成されている。
【0036】
一方、アンテナ部14によって受信された電波信号は、整合回路を介して受信回路15bに入力される。この受信回路15bは、受信部フィルタ、増幅器、復調部、二値化処理部、複号化部などによって構成されており、アンテナ部14を介して受信された信号を受信部フィルタによってフィルタリングした後、増幅器によって増幅し、その増幅信号を復調部によって復調する。そして、その復調された信号波形を二値化処理部によって二値化し、復号化部にて復号化した後、その復号化された信号を受信データとして制御回路11に出力している。
【0037】
メモリ12は、ROM,RAM、不揮発性メモリ等の半導体メモリなどによって構成されており、非接触通信媒体との非接触通信で扱われる決済情報等(例えば、ユーザ情報や商品情報など)を記憶可能に構成されている。なお、検知部13については後に詳述する。
【0038】
本実施形態では、図2に示す制御回路11、通信回路15、メモリ12、検知部13が図1に示す回路基板10に実装されており、この回路基板10が後述する収容部材2に収容された構成で上述のケース38に内蔵されている。なお、図1の例では、制御回路11、通信回路15、メモリ12、検知部13が単一の回路基板10に実装された例を示しているが、回路基板10は複数存在してもよい。例えば、これら複数の回路基板に制御回路11、通信回路15、メモリ12、検知部13等が実装され、これら複数の回路基板が上記収容部材2に収容されていてもよい。
【0039】
なお、本実施形態では、制御回路11、通信回路15、及びアンテナ部14が「非接触通信手段」の一例に相当し、ICカード等の非接触通信媒体を非接触通信を行うように機能する。検知部13が、「検知手段」の一例に相当し、収容部材2の所定位置の変位を検知するように機能する。また、メモリ12が「記憶手段」の一例に相当する。さらに、制御回路11が「制御手段」の一例に相当する。
【0040】
(決済処理)
次に、携帯端末30で実施される決済処理について図5を用いて説明する。なお、図5は、図3の携帯端末における決済処理の流れを説明する図である。
以下では、プリペイド機能付きのICカードを読み取る場合を例に挙げて説明する。図5は、制御回路11とICカードとの間で行われる処理の流れをブロックで示しており、制御回路11では、S1、S2、S5、S6の流れで処理が行われる。また、ICカード側では、S3、S4の処理が行われる。
【0041】
ステップS1の処理は、所定の開始条件の成立(例えば、管理者による所定操作や読み取りなどのトリガ発生等)に伴って制御回路11で実行される。例えば、例えば、管理者等がキー操作部33により商品等の金額を入力したり、或いは、携帯端末30に設けられた図示しないコード読取部等によってバーコード等が読み取られたときに売上げ金額情報が入力され、制御回路11に与えられる。更に、制御回路11では、ICカードに対し、チャージされた金額からステップS1で入力された売上げ金額を減算する指示を与える(ステップS2)。具体的には例えば、ICカードに対して、減算指示のコマンドと共にS1で得られた売上げ金額を送信する。
【0042】
一方、ICカード側では、正規の認証相手から減算指示のコマンドを受け取ったとき、対応して送信されてきた売上げ金額をチャージされた金額から減算する処理を行う(ステップS3)。そして、ステップS3での処理結果を携帯端末30に対して通知する(ステップS4)。例えば、正常に終了した場合には、その旨のコマンドと、減算後の残金情報を携帯端末30に送信する。逆に、正常に終了しなかった場合(例えば、残金不足等の場合)には、その旨を携帯端末30に通知する。制御回路11は、ステップS4での通知を取得したときに、この通知に基づく指示を出力し、売上げ処理の結果を表示器35に表示する処理を行い(ステップS5)、その後、プリンタ34にてレシートを印刷する処理を行う(ステップS6)。
【0043】
本実施形態では、以上のように回路基板10に設けられた制御回路11によって非接触通信処理が行われ、非接触通信で扱われる情報(例えば、カード固有情報(ユーザID、カードID、暗証番号等)、金額情報(購入金額情報、カード残金情報等)、商品情報等)は、制御回路11によって適宜メモリ12に記憶されるようになっている。
【0044】
なお、上記の例では、プリペイド方式のICカードを例に挙げて説明したが、ポストペイ方式のICカードの決済処理を行う構成であってもよく、クレジットカードといった他のICカードの決済処理を行う構成であってもよい。
【0045】
(保護ユニットの全体構成)
次に、携帯端末30の特徴の一つである保護ユニット1について詳述する。
保護ユニット1は、当該保護ユニット1の外殻をなす筐体として構成される収容部材2と、収容部材2内に収容される回路基板10とを備えている。なお、図3等では、無線リーダ部31が保護ユニット1として構成され、保護ユニット1を構成する収容部材2の外部にアンテナ部14が配置された例を示しているが、アンテナ部14は、収容部材2の内部に設けられていてもよい。
【0046】
図1では、収容部材2の長手方向に平行な面に沿って切断した断面の概略を表している。図1(A)に示すように、収容部材2は、ゴムや樹脂等の可撓性部材からなり、板状の回路基板10を覆い包むように箱状に構成されている。また、収容部材2は、回路基板10の形状に合わせて、略直方体形状をなしている。回路基板10は収容部材2内にスナップフィットなどの固定方法(図示略)によって固定されている。そして、収容部材2は、気体を注入可能な逆止弁などからなる封止部3を備えており、気体を注入した状態で封止部3によって密封されるように構成されている。
【0047】
収容部材2の長手方向及び短手方向の中央部には、収容部材2内の気圧に応じて撓み変形可能な撓み変形部4が形成されている。図1(A)に示すように、撓み変形部4は、収容部材の一部として構成されており(撓み変形部4は、収容部材2における他の部分(撓み変形部4以外の部分)と一体的に形成されており)、当該撓み変形部4に隣接する隣接部2aよりも薄く構成された肉薄部4aよりなる。この撓み変形部4は、収容部材2における他部分(撓み変形部4以外の部分)よりも剛性が低くなっており、収容部材2内の気圧の変化に応じて撓み変形部4のみが他部分と比較して大きく変位するようになっている。
【0048】
撓み変形部4の内壁面4bには、収容部材2の内方へ突出する突起部5が形成されている。この突起部5は、後述する検知部13と対向する位置に設けられ、回路基板10における検知部13の実装面側に突出しており(例えば実装面と略直交する方向に沿って突出しており)、収容部材2内の気圧状態に応じた撓み変形部4の変位に応じて、その突出方向に沿って変位するようになっている。そして、図6のように、収容部材2内の減圧に応じて突起部5が所定位置に達した場合に検知部13により検知されるようになっている。なお、突起部5の形状は、検知部13に検知される構成であればよく、棒状のほか、例えば円錐状に形成されていてもよい。また、突起部5は、収容部材2における他部分と一体的に構成することができる。
【0049】
回路基板10は、上述したように、制御回路11、通信回路15、メモリ12、検知部13を実装してなるものである。このうち、検知部13は、突起部5の位置の変位を検知し得るものであり、回路基板10における突起部5側の面に実装されている。この検知部13は、収容部材2内の減圧を検知できる構成(すなわち、突起部5が所定位置(検知可能位置)に達したことを検知することができる構成)であればよく、例えば、歪みゲージ等の圧力センサや、光センサ、赤外線センサ等を用いることができる。
【0050】
次に、上述のように構成される非接触通信装置1の収容部材2内に気体を注入する様子を、図1を用いて説明する。
上述したように、本実施形態では、収容部材2が袋状に形成されており、封止部3から気体を注入可能に構成されている。図1(A)は、収容部材2内に気体を注入する前の状態を示しており、図1(A)の状態から図1(B)に示すように、収容部材2内に封止部3から気体を注入していくと、収容部材2内の内部気圧が収容部材2の外部よりも高くなり、図1(C)に示すように、肉薄部4aからなる撓み変形部4が、外方へ膨出する。
【0051】
このとき、撓み変形部4の内壁面4bに形成されている突起部5も、撓み変形部4の変位と共に、図1(A)に示す位置(第2位置)から図1(C)に示す位置(第1位置)へ変位する。すなわち、収容部材2内に気体が注入されるにつれ、突起部5は検知部13から離れる方向へ変位し、収容部材内の内部気圧が外部よりも高い所定状態では、突起部5は検知部13により検知されない位置(第1位置)に維持される。
【0052】
そして、上記のように収容部材2内に気体が満たされて突起部5が第1位置に維持され、この状態で封止部3が封止されることとなる。なお、図1では、封止部3は逆止弁よりなる構成を例示したが、封止部3は、収容部材2内に気体を注入した後に、熱溶着などによって封着するようにしてもよい。また、収容部材2内に注入する気体は、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス、窒素ガス、空気等を用いることができる。
【0053】
(開封検知動作)
次に、上記保護ユニット1が不正に開封等された場合に実施される開封検知動作について説明する。
保護ユニット1は、不正に開封等されていない状態では、図1(C)に示すように、収容部材2内の内部気圧が外部よりも高い所定状態にあり、収容部材2に形成されている撓み変形部4は外方へ膨出しており、撓み変形部4の内壁面4bに設けられる突起部5は、検知部13から離れた位置であって検知部13によって検知されない位置(第1位置)に維持されている。
【0054】
図1(C)のように収容部材2内に気体が満たされ、突起部5が検知部13によって検知されない位置(第1位置)に維持されている状態では、収容部材2内の気圧が収容部材2外の気圧よりも大きいため、収容部材2の密封状態が解除されると、収容部材2内の気体が外部に流出することになる。例えば、図6に示すように、保護ユニット1の収容部材2に対して外部から穴が開けられるなどすると、穴が開けられた箇所から、収容部材2内の気体が外部へ(図中実線矢印の方向へ)流出する。これに伴い、収容部材2内の内部気圧が低下し、撓み変形部4の突起部5は検知部13と近接する位置(第2位置)に変位する。本実施形態では、図6のように撓み変形部4が弾性変形していない自然状態の時又は弾性変形量の小さい状態の時に、撓み変形部4が回路基板10側に近接し、突起部5が検知部13により検出されるようになっている。そして、このように、検知部13により突起部5を検出することで、保護ユニット1の開封されたことが確実に検知されることとなる。
【0055】
さらに、検知部13は、突起部5を検知したことを制御回路11へ通知する。即ち、検知部13が突起部5を検知したときに、検知部13から制御回路11に対して開封信号が出力されるようになっており、制御回路11は、検知部13からの開封信号に基づき、メモリ12内に記憶される情報(決済情報等)の少なくとも一部を消去する。本実施形態では、非接触通信で扱われる情報(例えば、カード固有情報(ユーザID、カードID、暗証番号等)、金額情報(購入金額情報、カード残金情報等)、商品情報等)が、メモリ12の所定領域に記憶されるようになっており、制御回路11は、検知部13から開封信号を取得したときに、この所定領域の情報を消去している。
【0056】
このように構成されているため、保護ユニット1の収容部材2に不正に穴が開けられ、この開封された穴から収容部材2内に収容されている回路基板10の情報を解析されようとしても、穴が開けられたときに即座に開封を検知することができるため、適切な対応を迅速に行うことができる。特に、開封検知時に、メモリ12に記憶された重要情報(例えば、カード固有情報(ユーザID、カードID、暗証番号等)、金額情報(購入金額情報、カード残金情報等)、商品情報等)が自動的に消去されるため、当該装置にアクセス権限を持たない第三者が回路基板10内の情報を不正に取得することを未然に防止できる。なお、制御回路11が検知部13からの開封信号を検知したときに、制御回路11が図示しないブザーや表示器35を制御して異常を報知するようにしてもよい
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係る携帯端末30では、保護ユニット1内において気体を注入した状態で密封可能な収容部材2に回路基板10が収容されている。この収容部材2の少なくとも一部には、収容部材2内の気圧に応じて撓み変形可能な撓み変形部4が形成されており、収容部材2内の内部気圧が外部よりも高い所定状態のときに第1位置となり、所定状態のときよりも内部気圧が低下したときに第2位置となるように構成されている。そして、撓み変形部4が第2位置になったことを検知部13により検知するようにしている。
この構成によれば、気体を注入した状態で密封された収容部材2に、不正に穴が開けられるなどして当該装置1が開封されると、この収容部材2に開けられた開封穴から収容部材2内の気体が収容部材2の外部へ流出して収容部材2内の内部気圧が低下し、撓み変形部4が第1位置から第2位置へ変位する。この撓み変形部4の変位を検知部13により検知することで、重要部分に相当する保護ユニット1の開封を確実に検知することができる。また、この構成により、回路基板10の一方の面からの開封だけでなく、他方の面からの開封の検知も1つの検知部13で検知することができるので、検知部13の数を増やすことなく重要部分の開封を確実に検知でき製造コストを抑えることができる。
【0058】
また、検知部13が回路基板10に実装されて構成されている。この構成により、検知部13を回路基板10と共に収容部材2内に収容することができ、組み立て作業の容易化を図ることができる。また、検知部13を固定するための固定構造を別途収容部材2に設ける必要がなく部品点数の削減や製造コストの低減を図ることができる。さらに、検知部13が収容部材2内に収容される構成のため、検知部13を収容部材2外部からの衝撃から保護することができるため、検知部13が不正に破壊されるなどの虞がなく、当該装置1のセキュリティ性を一層高めることができる。
【0059】
また、撓み変形部4の内壁面4bにおいて、検知部13と対向する位置に突起部5が形成されている。そして、検知部13は、収容部材2内の減圧に応じて突起部5が所定位置に達したことを検知することで、収容部材2の開封を検知している。このようにすることで、収容部材2内の気圧の低下(すなわち、収容部材2の開封)を検知部13により確実に検知することができる。
【0060】
また、撓み変形部4の突起部5は、収容部材2の長手方向及び短手方向の中央部に設けられている。この構成では、収容部材2内の内部気圧が低下して撓み変形部4の突起部5が検知部13側へ変位する(撓む)ときに、中央部から外れた位置に設けられている場合と比較して、倒れたり傾いたりすることが抑えられる。このため、検知部13によって、当該突起部5の変位をより確実に検知することができる。
【0061】
また、撓み変形部4が収容部材2の一部として構成されると共に、当該撓み変形部4に隣接する隣接部2aよりも薄い肉薄部4aによって構成されている。このように、撓み変形部4が設けられる収容部材2の所定箇所を、当該撓み変形部4の周囲よりも薄くすることで、収容部材2内の気圧に応じて、撓み変形部4がより撓み易くなる。すなわち、撓み変形部4が肉薄部4aから構成されていない場合(例えば、収容部材2全体が均一の厚さで構成されている場合等)と比較して、撓み変形部4をより大きく撓ませることができるので、収容部材2内の減圧が比較的少ない量であっても、収容部材2の開封を検知し易くなる。したがって、撓み変形部4が肉薄部4aによって構成されていない場合と比較して、収容部材2内に注入する気体の量を小さく抑えることができる。
【0062】
また、メモリ12は、回路基板10に実装されると共に、アンテナ部14及び通信回路15(非接触通信手段)と非接触通信媒体との間で行われる非接触通信に応じて生成された情報を記憶するように構成されている。そして、検知部13により撓み変形部4が第2位置になった(収容部材2内の内部気圧が低下した)ことが検知された場合に、制御回路11(消去手段)によりメモリ12に記憶される情報の少なくとも一部が消去されるようになっている。この構成により、万が一収容部材2に不正に穴が開けられるなどして当該収容部材2が不正に開封されても、メモリ12に記憶される情報の少なくとも一部(例えば、ユーザ情報や商品情報などの機密情報)の漏洩を防止することができるため、携帯端末30のセキュリティ性を一層高めることができる。
【0063】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る非接触通信装置1について、図7を参照して説明する。第2実施形態では、収容部材2の形状が上記第1実施形態で用いられる保護ユニット1と主に異なる。したがって、第1実施形態に係る非接触通信装置と実質的に同一の構成部分(即ち、収容部材2以外の部分)については、第1実施形態と同一符号を付し、詳細な説明を省略する。例えば、図2〜図5の部分は第1実施形態と同一であるので、この部分の詳細な説明は省略し、適宜これらの図面を参照して説明する。
【0064】
上記第1実施形態と同様に、本第2実施形態では、図7(A)に示すように、収容部材2の長手方向及び短手方向の中央部に、収容部材2内の気圧に応じて撓み変形可能な撓み変形部4が形成されている。そして、撓み変形部4は、収容部材2の一部として構成されており、当該撓み変形部4に隣接する隣接部2aよりも薄く構成された肉薄部4aよりなる。撓み変形部4の内壁面4bには、収容部材2の内方へ突出する突起部5が形成されており、検知部13と対向する位置に設けられている。なお、撓み変形部4及び突起部5の構成は、第1実施形態で用いられた保護ユニット1と同様である。
【0065】
さらに、本第2実施形態では、図7(A)に示す収容部材2において、肉薄部4a以外の外壁部7に、複数の膨出部6が形成されている。図7に示す保護ユニット1では、第1実施形態と同様、収容部材2における撓み変形部4以外の部分において剛性が高められ、撓み変形部4の剛性が選択的に抑えられているため、撓み変形部4以外の部分が変形しにくく、撓み変形部4のみが変形し易くなっている。従って、図7(B)のように収容部材2内に気体を注入し、収容部材2内の内部気圧が収容部材2の外部よりも高くなったときには、図7(C)に示すように、肉薄部4aからなる撓み変形部4のみが選択的に外方へ膨出する。このとき、撓み変形部4の外面が、他の膨出部6と同様に外側に凸となり、外方へ膨出する肉薄部4aと複数の膨出部6とは外形が略同一となる。
【0066】
このように、本第2実施形態で用いられる保護ユニット1は、撓み変形部4が肉薄部4aよりなる構成において、収容部材2内の気圧が所定の高圧状態(すなわち、気体が注入されて収容部材2が密封された状態)となるときに、肉薄部4aが外方へ膨出するように構成されており、収容部材2における肉薄部4a以外の外壁部7には、所定の高圧状態のときに外方へ膨出する肉薄部4aと外形が略同一となる複数の膨出部6が形成されている。この構成によれば、気体が注入されて密封された収容部材2において、撓み変形部4が形成されている部位が収容部材2の外部から特定し難くなる(即ち、撓み変形部4が形成されている部位が膨出部6と見分けが付き難くなる)。従って、収容部材2の外部から検知部13の位置を特定されて当該検知部13を不正に破壊されるといった問題が生じにくく、携帯端末30のセキュリティ性をより一層高めることができる。
【0067】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る非接触通信装置1について、図8を参照して説明する。第2実施形態では、収容部材2の形状が上記第1実施形態で用いられる保護ユニット1と主に異なる。したがって、第1実施形態に係る非接触通信装置と実質的に同一の構成部分(即ち、収容部材2以外の部分)については、第1実施形態と同一符号を付し、詳細な説明を省略する。例えば、図2〜図5の部分は第1実施形態と同一であるので、この部分の詳細な説明は省略し、適宜これらの図面を参照して説明する。
【0068】
上記第1実施形態と同様に、本第3実施形態では、図8(A)に示すように、収容部材2の長手方向及び短手方向の中央部に、収容部材2内の気圧に応じて撓み変形可能な撓み変形部4が形成されている。そして、撓み変形部4は、収容部材2の一部として構成されており、当該撓み変形部4に隣接する隣接部2aよりも薄く構成された肉薄部4aよりなり、収容部材2内に気体を注入する前の状態(例えば、収容部材2の内外の気圧がほぼ等しい状態)では、肉薄部4aの外壁面8bは、隣接部2aの外壁面8aよりも内方へ圧縮している(内方へ凹んでいる)。
【0069】
この構成では、第1実施形態と同様の方法で収容部材2内に気体を注入すると(図8(B))、収容部材2内の内部気圧が収容部材2の外部よりも高くなり、図8(C)に示すように、肉薄部4aからなる撓み変形部4が外方へ膨出する。そして、このとき、肉薄部4aの外壁面8bは、隣接部2aの外壁面8aと面一で揃うようになる。より具体的には、、図8(C)のように、収容部材2における撓み変形部4が設けられた壁部の外面形状がほぼ平坦となるように構成されている。
【0070】
このように、本第3実施形態で用いられる保護ユニット1では、撓み変形部4が肉薄部4aよりなる構成において、収容部材2内の気圧が所定の高圧状態となるときに、肉薄部4aの外壁面8aが、撓み変形部4に隣接する隣接部2aの外壁面8aと面一で揃うように構成されている。この構成によれば、気体が注入されて密封された収容部材2において、撓み変形部4が形成されている部位が収容部材2の外部から特定し難くなる(即ち、撓み変形部4が形成されている部位が他の部位と見分けが付き難くなる)。従って、収容部材2の外部から検知手段の位置を特定されて当該検知部13を不正に破壊されるといった問題が生じにくく、携帯端末30のセキュリティ性をより一層高めることができる。
【0071】
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
上記第1実施形態では、制御回路11は、検知部13からの開封信号に基づき、メモリ12内に記憶される情報の少なくとも一部を消去するように構成されているが、制御回路11は、検知部13からの開封信号に基づき、当該装置の内部動作を全て停止するように構成されていてもよい。
【0072】
上記第1実施形態では、撓み変形部4が肉薄部4aより構成される例を示したが、例えば、図9に示すように、撓み変形部4の厚さが他の部位と同じ厚さ(収容部材2全体が均一の厚さ)になるように構成し、収容部材2に気体を注入したときに当該収容部材2全体が風船状に膨らむようにしてもよい。
【0073】
上記各実施形態では、携帯端末として構成される非接触通信装置を例示したが、このような構成に限られない。例えば、本発明に係る非接触通信装置は、店舗等に設けられる据置型の決済端末に適用されてもよく、自動販売機などに内蔵される決済端末に適用されてもよい。
【0074】
上記実施形態では、携帯端末30の内部に保護ユニット1が設けられた例を示したが、図10、図11の変形例2のように、保護ユニット1が携帯端末30そのものであってもよい。図10の例では、収容部材2が、携帯端末30(非接触通信装置)の外殻をなすケース38(筐体)として構成されており、携帯端末30全体が、図1のような構成をなしている。つまり、ケース38が密封状態で構成されており、図1のように収容部材2(ケース38)の端部に設けられた封止部3を介して図1(C)のようにケース38内に気体を注入できるようになっている。この構成では、ケース38の密封状態が解除されたとき(例えば、ケース38に穴が開けられた場合等)に、図6のように開封が検知されるようになっている。このように、収容部材2を携帯端末30のケース38(筐体)に兼用することで、部品点数を削減でき、製造コストを抑えることができる。また、ケース38が開封されたときに即座に開封を検知することができ、より迅速に適切な対応をとることができる。
【符号の説明】
【0075】
1…保護ユニット
2…収容部材
2a…隣接部
3…封止部
4…撓み変形部
4a…肉薄部
4b…内壁面
5…突起部
6…膨出部
7…外壁部
8a…隣接部の外壁面
8b…肉薄部の外壁面
10…回路基板
11…制御回路(非接触通信手段、制御手段、消去手段)
12…メモリ(記憶手段)
13…検知部(検知手段)
15…通信回路(非接触通信手段)
14…アンテナ部(非接触通信手段)
30…携帯端末(非接触通信装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を媒介として非接触通信媒体と非接触通信を行う非接触通信手段と、
前記非接触通信に基づく制御を行う制御手段及びデータを記憶する記憶手段の少なくともいずれかが実装された回路基板と、
前記回路基板を収容すると共に、気体を注入した状態で密封可能な収容部材と、
前記収容部材の所定位置の変位を検知する検知手段と、
を備え、
前記収容部材の少なくとも一部には、前記収容部材内の気圧に応じて撓み変形可能な撓み変形部が形成され、
前記撓み変形部は、前記収容部材内の内部気圧が外部よりも高い所定状態のときに第1位置となり、前記所定状態のときよりも内部気圧が低下したときに第2位置となるように構成されており、
前記検知手段は、前記撓み変形部が前記第2位置になったことを検知することを特徴とする非接触通信装置。
【請求項2】
前記検知手段は、前記回路基板に実装されていることを特徴とする請求項1に記載の非接触通信装置。
【請求項3】
前記撓み変形部の内壁面には、前記検知手段と対向する位置に突起部が形成されており、
前記検知手段は、前記収容部材内の減圧に応じて前記突起部が所定位置に達したことを検知することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の非接触通信装置。
【請求項4】
前記突起部は、前記収容部材の長手方向及び短手方向の中央部に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の非接触通信装置。
【請求項5】
前記撓み変形部は前記収容部材の一部として構成されると共に、当該撓み変形部に隣接する前記隣接部よりも薄く構成された肉薄部からなることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の非接触通信装置。
【請求項6】
前記肉薄部の外壁面は、前記収容部材内の気圧が所定の高圧状態となるときに、前記隣接部の外壁面と面一で揃うように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の非接触通信装置。
【請求項7】
前記肉薄部は、前記収容部材内の気圧が所定の高圧状態となるときに外方へ膨出するように構成されており、
前記収容部材における前記肉薄部以外の外壁部には、前記所定の高圧状態のときに外方へ膨出する前記肉薄部と外形が略同一となる複数の膨出部が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の非接触通信装置。
【請求項8】
前記記憶手段は、前記回路基板に実装されると共に、前記非接触通信手段と前記非接触通信媒体との間で行われる非接触通信に応じて生成された情報を記憶する構成をなしており、
更に、前記検知手段により前記撓み変形部が前記第2位置になったことを検知された場合に前記記憶手段に記憶される情報の少なくとも一部を消去する消去手段が設けられていること特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の非接触通信装置。
【請求項9】
前記収容部材は、前記非接触通信装置の外殻をなす筐体として構成されていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の非接触通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−113475(P2012−113475A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261167(P2010−261167)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】