説明

非接触ICカード

【課題】 電源がメモリの通常動作に必要な電圧レベル以下に低下した場合、データ保護のため、メモリアクセスを禁止していた。このため、メモリへアクセス(読出し/書込み)ができず、処理時間が長くなる課題があった。
【解決手段】 電源が不揮発性メモリ103の動作に必要な電圧レベル以下に低下した状態で、主制御部101が不揮発性メモリ103へのアクセス(読出し/書込み)を要求した場合、不揮発性メモリ103の動作用クロックの周波数を低減するメモリ低速クロック動作制御部112を備える。これにより、メモリ103の動作は抑制されるが、停止はしない。このため、主制御部101は、メモリ103へアクセスできるため、処理時間を短縮できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波によって電力供給され、情報を不揮発性メモリに記憶する非接触ICカードに関するものである。
【背景技術】
【0002】

従来の非接触ICカードについて説明する。図7は従来の非接触ICカードシステムの構成図である。
【0003】
非接触ICカードシステムは、図7のようにリーダライタ(R/W)1とICカード2から構成され、無線でデータをやりとりするシステムである。
【0004】
リーダライタ1は、ICカード2との間で情報の送受信を行うアンテナ部3、通信動作を制御する通信部4、受信した情報に従って処理を実行する処理部5、外部の制御装置との間での通信を行うインターフェース(I/F)部6から構成される。
【0005】
ICカード2は、リーダライタ1との間で情報および電力の伝送を行うアンテナ部7、搬送波を整流してICカード動作用の電力を得る整流部8、通信動作を制御する通信部9、受信した情報に従って処理を実行する処理部10から構成される。
【0006】
処理部10は、命令を実行する主制御部11、主制御部11を初期化するリセット部12、カード情報を記憶する不揮発性メモリ13、不揮発性メモリ13の動作を制御するメモリ制御部14から構成される。
【0007】
以上のように構成された非接触ICカードについて、以下にその動作を説明する。図8は従来の非接触ICカードの処理部の構成図である。
【0008】
従来の非接触ICカードの処理部は、図8のように、命令を実行する主制御部21、主制御部21を初期化するリセット部22、カード情報を記憶する不揮発性メモリ23、不揮発性メモリ23の動作を制御するメモリ制御部24から構成される。
【0009】
不揮発性メモリ23は、データを記憶するメモリ本体25、メモリ本体25からデータを読み出す際にデータの誤りを検出するメモリ誤り検出部26、メモリ本体25の動作クロックを生成するクロック生成部27から構成される。不揮発性メモリ23は、動作に必要な電圧レベル以下で、読出し/書込み(アクセス)禁止である。動作に必要な電圧レベル以下で、不揮発性メモリ23に対してアクセスを行うと、動作が不安定のため、誤ったデータに書き換わり、データの保証ができない。
【0010】
リセット部22は、ICカードの動作用電源電圧レベルを監視する電源電圧レベル監視部28、主制御部21を初期化するリセット発生部29から構成され、ICカード2の電源が不揮発性メモリ23の動作に必要な電圧レベル以下に低下した場合、メモリ制御部24へ連絡する。
【0011】
メモリ制御部24は、主制御部21と不揮発性メモリ23との間のインターフェースを制御するメモリI/F部30、主制御部21の不揮発性メモリ23へのアクセス要求を検出するメモリアクセス要求検出部31、主制御部21の不揮発性メモリ23へのアクセスをキャンセルするメモリアクセスキャンセル部32から構成される。リセット部22から電源電圧レベル低下の連絡を受けたメモリ制御部24は、不揮発性メモリ24のデータ保護のため、メモリアクセスを禁止状態にする(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−23366号公報(第2−3頁、第一図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の非接触ICカードの課題について説明する。図9は従来の非接触ICカードの動作を示すタイムチャートである。
【0013】
図9において、41は電源電圧が低下しない場合の従来の非接触ICカードの動作を示すタイムチャート、42は電源電圧が低下する場合の従来の非接触ICカードの動作を示すタイムチャートである。
【0014】
処理部10の処理A、B、Cは、不揮発性メモリ23のアクセス動作である。
【0015】
電源電圧が低下しない場合のタイムチャート41では、図9のように、不揮発性メモリ23が動作し続けるので、処理部10は、処理A、処理B、処理Cを処理時間T1の間に完了できる。
【0016】
ところが、処理Aの終了後で、電源電圧が低下する場合のタイムチャート42に示すように、不揮発性メモリ23は、動作に必要な電圧レベル以下の期間は動作できない。このため、処理部10は、電源電圧が不揮発性メモリ23の動作に必要な電圧レベルになった後、処理B、処理Cを実行するので、処理Cまで完了するための処理時間T2が処理時間T1より長くなる。
【0017】
以上のように、上記従来の構成では、電源が不揮発性メモリ23の動作に必要な電圧レベル以下に低下している期間、処理部10は、不揮発性メモリ23へアクセスできない。このため、処理部10の処理時間が長くなる課題があった。
【0018】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、不揮発性メモリの動作に必要な電圧レベル以下となっても、処理時間を短縮することができる非接触ICカードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的を達成するため、本発明の非接触ICカードは、リーダライタとの間で情報および電力の伝送を行う手段と、前記手段により受信した搬送波を整流して動作電力を得る電源部と、前記電源部の電源電圧レベルを検出する手段と、受信した前記情報に従って処理を実行する主制御部と、前記情報を記憶する不揮発性メモリ手段を備えた非接触ICカードであって、
前記電源部が前記不揮発性メモリの動作に必要な電圧レベル以下に低下したときに、前記不揮発性メモリを前記電圧レベル以下の電圧で動作可能に消費電力を抑制する抑制手段とを備えたものである。
【0020】
上記構成において、抑制手段は、電源部が不揮発性メモリの動作に必要な電圧レベル以下に低下した状態で、主制御部が前記不揮発性メモリへのアクセスを要求した場合、前記不揮発性メモリの動作用クロックの周波数を低減する手段である。
【0021】
上記構成において、抑制手段は、電源部が不揮発性メモリの動作に必要な電圧レベル以下に低下した状態で、主制御部が前記不揮発性メモリへのアクセスを要求した場合、前記不揮発性メモリの一部の動作を停止する手段である。
【0022】
上記構成において、抑制手段は、主制御部が不揮発性メモリへのアクセスしている状態で、電源部が不揮発性メモリの動作に必要な電圧レベル以下に低下した場合、前記不揮発性メモリへのアクセス状況を保持し、前記不揮発性メモリへの並列処理をシリアル処理に切り替える手段である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、電源が不揮発性メモリの動作に必要な電圧レベル以下に低下した状態で、主制御部が不揮発性メモリへのアクセス(読出し/書込み)を要求した場合など、そのメモリ動作を抑制する手段を設けることにより、電源が不揮発性メモリの通常動作に必要な電圧レベル以下に低下した状態で、不揮発性メモリの動作は抑制されるが停止しないで動作できる。このことにより、処理時間を短縮できる優れた非接触ICカードを実現するものである。
【0024】
電波によって電力供給される非接触ICカードでは、長距離通信時、リーダライタから送信される電力波が弱くなるので、電源電圧が低下する。また、鉄道改札の通過などに使用される非接触ICカード(電子乗車券)では、人間が移動しながら通信するので、通信距離の確保とともに、処理時間内に通信を完了させる必要がある。以上の点から、電源電圧が低下した場合に、処理時間の短縮できる本発明の効果は大きい。
【0025】
第1のメモリ動作抑制手段は、不揮発性メモリの動作クロックを低減させる手段であり、電源が不揮発性メモリの通常動作に必要な電圧レベル以下に低下した状態であっても、不揮発性メモリは低い周波数クロックで動作できるため、電源が不揮発性メモリの通常動作に必要な電圧レベル以下に低下した期間中に不揮発性メモリを停止させる場合より処理時間を短縮できる。
【0026】
第2のメモリ動作抑制手段は、不揮発性メモリの一部の動作を停止させる手段であり、電源が不揮発性メモリの通常動作に必要な電圧レベル以下に低下した状態であっても、不揮発性メモリの一部は動作できるため、電源が不揮発性メモリの通常動作に必要な電圧レベル以下に低下した期間中に不揮発性メモリ全体を停止させる場合より処理時間を短縮できる。
【0027】
第3のメモリ動作抑制手段は、主制御部が不揮発性メモリへ並列処理でアクセスしている時に、電源が不揮発性メモリの通常動作に必要な電圧レベル以下に低下した場合、不揮発性メモリへのアクセス状況を保持し、不揮発性メモリへの並列処理をシリアル処理に切り替える手段であり、主制御部が不揮発性メモリへ並列処理でアクセスしている時に、電源が不揮発性メモリの通常動作に必要な電圧レベル以下に低下した状態になっても、不揮発性メモリの並列処理がシリアル処理へ切り替わるため、電源電圧の低下を抑えられる。このため、リセット部で主制御部をリセットすることなく処理を続けることができ、リセットしないので処理を初めから再実行する必要がなく、続けて処理実行できるため、処理時間を短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0029】
(実施形態1)
図1は本発明の第1の実施形態における非接触ICカードの処理部の構成を示すものである。
【0030】
本発明の第1の実施形態における非接触ICカードの処理部は、図1のように、命令を実行する主制御部101、主制御部101を初期化するリセット部102、カード情報を記憶する不揮発性メモリ103、不揮発性メモリ103の動作を制御するメモリ制御部104から構成される。
【0031】
不揮発性メモリ103は、データを記憶するメモリ本体105、メモリ本体105からデータを読み出す際にデータの誤りを検出するメモリ誤り検出部106、メモリ本体105の動作クロックを生成するクロック生成部107から構成される。不揮発性メモリ103は、動作に必要な電圧レベル以下で、読出し/書込み(アクセス)禁止である。動作に必要な電圧レベル以下で、不揮発性メモリ103に対してアクセスを行うと、動作が不安定のため、誤ったデータに書き換わり、データの保証ができない。
【0032】
リセット部102は、ICカードの動作用電源電圧レベルを監視する電源電圧レベル監視部108、主制御部101を初期化するリセット発生部109から構成され、ICカードの電源が不揮発性メモリ103の動作に必要な電圧レベル以下に低下した場合、メモリ制御部104へ連絡する。
【0033】
メモリ制御部104は、主制御部101と不揮発性メモリ103との間のインターフェースを制御するメモリI/F部110、主制御部101の不揮発性メモリ103へのアクセス要求を検出するメモリアクセス要求検出部111、メモリ低速クロック動作制御部112から構成される。
【0034】
メモリ低速クロック動作制御部112は、リセット部102から電源電圧レベル低下の連絡を受けると、不揮発性メモリ103の動作クロックを低減させる。
【0035】
以上のように構成された本発明の第1の実施形態における非接触ICカードの処理部について、以下、その動作を説明する。
【0036】
図2は本発明の第1の実施形態における非接触ICカードの処理部の動作を示すタイムチャートである。
【0037】
図2において、120は、従来の場合の動作を示すタイムチャート、121は、本発明の第1の実施形態の動作を示すタイムチャートである。
【0038】
本発明の第1の実施形態の動作を示すタイムチャート121において、122は電源電圧High期間、123は電源電圧Low期間である。
【0039】
電源電圧High期間122において、不揮発性メモリ103は高速動作できる。
【0040】
電源電圧Low期間123において、電源は、不揮発性メモリ103の高速動作に必要な電圧レベル以下だが、不揮発性メモリ103の低速動作に必要な電圧レベル以上である。
【0041】
不揮発性メモリ103は、高速動作に必要な電圧レベル以下で、不揮発性メモリ103に対して高速動作アクセスを行うと、動作が不安定のため、誤ったデータに書き換わり、データの保証ができない。
【0042】
このため、電源が不揮発性メモリ103の高速動作に必要な電圧レベル以下に低下した状態の電源電圧Low期間123で、主制御部101が不揮発性メモリ103へのアクセスを要求した場合、メモリ制御部104は、データ保護のため、不揮発性メモリ103の動作クロックを低減させる。この場合、低速動作で処理Bを実行する。
【0043】
以上のように動作する本発明の第1の実施形態における非接触ICカードついて、図2を参照して、以下にその効果を説明する。
【0044】
従来のタイムチャート120の場合、電源電圧が低下した状態の電源電圧Low期間124になると、不揮発性メモリ103は動作を停止する。このため、処理部10は、電源電圧レベルがHigh期間125になった後に、処理Bから実行するので、処理Cまで完了するための処理時間T3が必要である。
【0045】
本発明の第1の実施形態のタイムチャート121の場合、電源が不揮発性メモリ103の高速動作に必要な電圧レベル以下だが、不揮発性メモリ103の低速動作に必要な電圧レベル以上の状態123で、主制御部101が不揮発性メモリ103へのアクセスを要求すると、メモリ制御部104は、データ保護のため、不揮発性メモリ103の動作クロックを低減させる。このため、電圧レベル以下に低下した状態であっても、不揮発性メモリ103を停止させることなく、低い周波数クロックで動作できるため、処理時間T4になる。
【0046】
以上のように、本発明の第1の実施形態によれば、電源が不揮発性メモリ103の高速動作に必要な電圧レベル以下に低下した状態で、主制御部101が不揮発性メモリ103へのアクセスを要求した場合、不揮発性メモリ103の動作クロックを低減する構成にしたことにより、電源が不揮発性メモリ103の高速動作に必要な電圧レベル以下に低下した状態であっても、不揮発性メモリ103を停止させることなく、低い周波数クロックで動作できるため、処理時間をT3からT4に短縮できる。
(実施形態2)
図3は、本発明の第2の実施形態における非接触ICカードの処理部の構成を示すものである。
【0047】
本発明の第2の実施形態における非接触ICカードの処理部は、図3のように、命令を実行する主制御部101、主制御部101を初期化するリセット部102、カード情報を記憶する不揮発性メモリ103、不揮発性メモリ103の動作を制御するメモリ制御部104から構成される。
【0048】
不揮発性メモリ103は、データを記憶するメモリ本体105、メモリ本体105からデータを読み出す際にデータの誤りを検出するメモリ誤り検出部106、メモリ本体105の動作クロックを生成するクロック生成部107から構成される。不揮発性メモリ103は、動作に必要な電圧レベル以下で、読出し/書込み(アクセス)禁止である。動作に必要な電圧レベル以下で、不揮発性メモリ103に対してアクセスを行うと、動作が不安定のため、誤ったデータに書き換わり、データの保証ができない。
【0049】
リセット部102は、ICカードの動作用電源電圧レベルを監視する電源電圧レベル監視部108、主制御部101を初期化するリセット発生部109から構成され、ICカードの電源が不揮発性メモリ103の動作に必要な電圧レベル以下に低下した場合、メモリ制御部104へ連絡する。
【0050】
メモリ制御部104は、主制御部101と不揮発性メモリ103との間のインターフェースを制御するメモリI/F部110、主制御部101の不揮発性メモリ103へのアクセス要求を検出するメモリアクセス要求検出部111、メモリ動作一部停止制御部130から構成される。
【0051】
メモリ動作一部停止制御部130は、リセット部102から電源電圧レベル低下の連絡を受けると、不揮発性メモリ103の一部の動作を停止させる。
【0052】
以上のように構成された本発明の第2の実施形態における非接触ICカードの処理部について、以下、その動作を説明する。
【0053】
図4は本発明の第2の実施形態における非接触ICカードの処理部の動作を示すタイムチャートである。
【0054】
図4において、140は、従来の場合の動作を示すタイムチャート、141は、本発明の第2の実施形態の動作を示すタイムチャートである。
【0055】
本発明の第2の実施形態の動作を示すタイムチャート141において、142は電源電圧High期間、143は電源電圧Low期間である。
【0056】
電源電圧High期間142、不揮発性メモリ103は全回路動作できる。
【0057】
電源電圧Low期間143、電源は、不揮発性メモリ103の全回路動作に必要な電圧レベル以下だが、不揮発性メモリ103の一部回路動作に必要な電圧レベル以上である。
【0058】
不揮発性メモリ103は、全回路動作に必要な電圧レベル以下で、不揮発性メモリ103に対して全回路動作アクセスを行うと、動作が不安定のため、誤ったデータに書き換わり、データの保証ができない。
【0059】
このため、電源が不揮発性メモリ103の全回路動作に必要な電圧レベル以下に低下した電源電圧Low期間143の状態で、主制御部101が不揮発性メモリ103へのアクセスを要求した場合、メモリ制御部104は、データ保護のため、不揮発性メモリ103の一部動作を停止させる。この場合、誤り検出動作を停止させて、読出し動作144のみを実行し、その後、読出し動作を停止させて、誤り検出動作145を実行する。
【0060】
以上のように動作する本発明の第2の実施形態における非接触ICカードついて、図4を参照して、以下にその効果を説明する。
【0061】
従来のタイムチャート140の場合、電源電圧が低下すると、不揮発性メモリ103は動作を停止する。このため、処理部は、電源電圧レベルが電源電圧High期間146になった後に、読出しと誤り検出の並列処理147を実行するので、処理Cまで完了するための処理時間T5が必要である。
【0062】
本発明の第2の実施形態のタイムチャート141の場合、電源が不揮発性メモリ103の全回路動作に必要な電圧レベル以下だが、不揮発性メモリ103の一部回路動作に必要な電圧レベル以上の状態の電源電圧Low期間143で、主制御部101が不揮発性メモリ103へのアクセスを要求すると、メモリ制御部104は、データ保護のため、不揮発性メモリ103の一部動作を停止させる。この場合、誤り検出動作を停止させて、読出し動作144のみを実行し、その後、読出し動作を停止させて、誤り検出動作145を実行する。このため、電圧レベル以下に低下した状態であっても、不揮発性メモリ103を停止させることなく、一部回路は動作できるため、処理時間T6になる。
【0063】
以上のように、本発明の第2の実施形態によれば、電源が不揮発性メモリ103の全回路動作に必要な電圧レベル以下に低下した状態で、主制御部101が不揮発性メモリ103へのアクセスを要求した場合、不揮発性メモリ103の一部回路動作を停止する構成にしたことにより、電源が不揮発性メモリ103の全回路動作に必要な電圧レベル以下に低下した状態であっても、不揮発性メモリ103を停止させることなく、一部回路は動作できるため、処理時間をT5からT6に短縮できる。
(実施形態3)
図5は、本発明の第3の実施形態における非接触ICカードの処理部の構成を示すものである。
【0064】
本発明の第3の実施形態における非接触ICカードの処理部は、図5のように、命令を実行する主制御部101、主制御部101を初期化するリセット部102、カード情報を記憶する不揮発性メモリ103、不揮発性メモリ103の動作を制御するメモリ制御部104から構成される。
【0065】
不揮発性メモリ103は、データを記憶するメモリ本体105、メモリ本体105からデータ読み出す際にデータの誤りを検出するメモリ誤り検出部106、メモリ本体105の動作クロックを生成するクロック生成部107から構成される。不揮発性メモリ103は、動作に必要な電圧レベル以下で、読出し/書込み(アクセス)禁止である。動作に必要な電圧レベル以下で、不揮発性メモリ103に対してアクセスを行うと、動作が不安定のため、誤ったデータに書き換わり、データの保証ができない。
【0066】
リセット部102は、ICカードの動作用電源電圧レベルを監視する電源電圧レベル監視部108、主制御部101を初期化するリセット発生部109から構成され、ICカード2の電源が不揮発性メモリ103の動作に必要な電圧レベル以下に低下した場合、メモリ制御部104へ連絡する。
【0067】
メモリ制御部104は、主制御部101と不揮発性メモリ103との間のインターフェースを制御するメモリI/F部110、主制御部101の不揮発性メモリ103へのアクセス要求を検出するメモリアクセス要求検出部111、電圧低下時状態保持部151、シリアル処理制御部152から構成される。
【0068】
電圧低下時状態保持部151は、主制御部101が不揮発性メモリ103へ並列処理でアクセスしている時に、電源が不揮発性メモリ103の並列処理動作に必要な電圧レベル以下に低下した場合、不揮発性メモリ103へのアクセス状況を保持する。
【0069】
シリアル処理制御部152は、主制御部101が不揮発性メモリ103へ並列処理でアクセスしている時に、電源が不揮発性メモリ103の並列処理動作に必要な電圧レベル以下に低下し、電圧低下時状態保持部151が不揮発性メモリ103へのアクセス状況を保持した後に、不揮発性メモリ103への並列処理をシリアル処理に切り替える。
【0070】
以上のように構成された本発明の第3の実施形態における非接触ICカードの処理部について、以下、その動作を説明する。
【0071】
図6は本発明の第3の実施形態における非接触ICカードの処理部の動作を示すタイムチャートである。
【0072】
図6において、160は、本発明の第2の実施形態の動作を示すタイムチャート、161は、本発明の第3の実施形態の動作を示すタイムチャートである。
【0073】
本発明の第3の実施形態の動作を示すタイムチャート161において、162は電源電圧High期間、163は電源電圧Low期間である。
【0074】
電源電圧High期間162、不揮発性メモリ103は全回路動作できる。
【0075】
電源電圧Low期間163、電源は、不揮発性メモリ103の全回路動作に必要な電圧レベル以下だが、不揮発性メモリ103の一部回路動作に必要な電圧レベル以上である。
【0076】
不揮発性メモリ103は、動作に必要な電圧レベル以下で、読出し/書込み(アクセス)禁止である。全回路動作に必要な電圧レベル以下で、不揮発性メモリ103に対して全回路動作アクセスを行うと、動作が不安定のため、誤ったデータに書き換わり、データの保証ができない。
【0077】
主制御部101が不揮発性メモリ103へ第1の読出しと第1の誤り検出の並列処理164でアクセスしている途中で、電源が不揮発性メモリ103の並列処理に必要な電圧レベル以下に低下した電源電圧Low期間163の場合、メモリ制御部104は、データ保護のため、不揮発性メモリ103へのアクセス状況を保持した後に、不揮発性メモリ103への並列処理をシリアル処理165に切り替える。この場合、第1の誤り検出動作を停止させて、第1の読出しの残り処理166のみを実行し、その後、第1の読出し動作を停止させて、第1の誤り検出の残り処理167を実行する。
【0078】
以上のように動作する本発明の第3の実施形態における非接触ICカードついて、図6を参照して、以下にその効果を説明する。
【0079】
第2の実施の形態のタイムチャート160の場合、主制御部101が不揮発性メモリ103へ第1の読出しと第1の誤り検出の並列処理168でアクセスしている途中で、電源が不揮発性メモリ103の並列処理に必要な電圧レベル以下に低下した電源電圧Low期間169の場合、リセット170が発生し、主制御部101が初期化171される。このため、第1の読出しの全処理172と第1の誤り検出の全処理173を初めから再実行するため、第2の読出しまで完了するための処理時間T7が必要である。
【0080】
本発明の第3の実施形態のタイムチャート161の場合、主制御部101が不揮発性メモリ103へ第1の読出しと第1の誤り検出の並列処理164でアクセスしている途中で、電源が不揮発性メモリ103の並列処理に必要な電圧レベル以下に低下した電源電圧Low期間163の場合、メモリ制御部104は、データ保護のため、不揮発性メモリ103へのアクセス状況を保持した後に、不揮発性メモリ103への並列処理をシリアル処理165に切り替える。このため、リセット部102は、主制御部101をリセットしないので、処理を初めから再実行する必要がなく、続けて処理実行できるため、処理時間T8になる。
【0081】
以上のように、本発明の第3の実施形態によれば、主制御部101が不揮発性メモリ103へ第1の読出しと第1の誤り検出の並列処理164でアクセスしている途中で、電源が不揮発性メモリ103の並列処理に必要な電圧レベル以下に低下した電源電圧Low期間163の場合、メモリ制御部104は、データ保護のため、不揮発性メモリ103へのアクセス状況を保持した後に、不揮発性メモリ103への並列処理をシリアル処理に切り替える構成にしたことにより、リセット部102は、主制御部101をリセットしないので、処理を初めから再実行する必要がなく、続けて処理実行できるため、処理時間をT7からT8に短縮できる。
【0082】
なお、実施可能な範囲で上記実施の形態の相互の組み合わせが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の非接触ICカードは、電源電圧が低下した場合に、処理時間の短縮できる等の効果があり、移動しながら通信する非接触ICカード等として有用である。また、通信距離の確保とともに、処理時間内に通信を完了させる必要がある電子乗車券等の用途にも応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の第1の実施形態における非接触ICカードの処理部の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における非接触ICカードの処理部の動作を示すタイムチャートである。
【図3】本発明の第2の実施形態における非接触ICカードの処理部の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第2の実施形態における非接触ICカードの処理部の動作を示すタイムチャートである。
【図5】本発明の第3の実施形態における非接触ICカードの処理部の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第3の実施形態における非接触ICカードの処理部の動作を示すタイムチャートである。
【図7】従来の非接触ICカードシステムの構成を示すブロック図である。
【図8】従来の非接触ICカードの処理部の構成を示すブロック図である。
【図9】従来の非接触ICカードの動作を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0085】
1 リーダライタ
2 ICカード
7 アンテナ部
8 整流部
9 通信制御部
10 処理部
11 主制御部
12 リセット部
13 不揮発性メモリ
14 メモリ制御部
25 メモリ本体
26 メモリ誤り検出部
27 クロック生成部
28 電源電圧レベル監視部
29 リセット発生部
30 メモリI/F部
31 メモリアクセス要求検出部
32 メモリアクセスキャンセル部
112 メモリ低速クロック動作制御部
130 メモリ動作一部停止制御部
151 電圧低下時状態保持部
152 シリアル処理制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーダライタとの間で情報および電力の伝送を行う手段と、前記手段により受信した搬送波を整流して動作電力を得る電源部と、前記電源部の電源電圧レベルを検出する手段と、受信した前記情報に従って処理を実行する主制御部と、前記情報を記憶する不揮発性メモリ手段を備えた非接触ICカードであって、
前記電源部が前記不揮発性メモリの動作に必要な電圧レベル以下に低下したときに、前記不揮発性メモリを前記電圧レベル以下の電圧で動作可能に消費電力を抑制する抑制手段とを備えた非接触ICカード。
【請求項2】
抑制手段は、電源部が不揮発性メモリの動作に必要な電圧レベル以下に低下した状態で、主制御部が前記不揮発性メモリへのアクセスを要求した場合、前記不揮発性メモリの動作用クロックの周波数を低減する手段である請求項1記載の非接触ICカード。
【請求項3】
抑制手段は、電源部が不揮発性メモリの動作に必要な電圧レベル以下に低下した状態で、主制御部が前記不揮発性メモリへのアクセスを要求した場合、前記不揮発性メモリの一部の動作を停止する手段である請求項1記載の非接触ICカード。
【請求項4】
抑制手段は、主制御部が不揮発性メモリへのアクセスしている状態で、電源部が不揮発性メモリの動作に必要な電圧レベル以下に低下した場合、前記不揮発性メモリへのアクセス状況を保持し、前記不揮発性メモリへの並列処理をシリアル処理に切り替える手段である請求項1記載の非接触ICカード。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−94954(P2007−94954A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−286473(P2005−286473)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】