説明

非晶質のポリマーまたは結晶度が非常に低いポリマーのコンストラクトからの埋込式医療機器(デバイス)の製造方法

アニーリング、核形成剤、またはその両者によって改良された破壊靭性を有するポリマーの埋込式機器を製造する方法が本明細書で開示される。完全に非晶質のポリマーまたは結晶度が非常に低いポリマーのコンストラクトを、結晶成長なしにまたは実質的になしにアニーリングして、核形成密度を増加させる。あるいは、ポリマーコンストラクトは核形成剤を含む。ポリマーコンストラクトの結晶度は、温度の上昇、変形、またはその両者を介する高い核形成密度により増加される。ステント等の埋込式医療機器は、結晶度を増加させたポリマーコンストラクトから製造できる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー製の医療器機(デバイス)、詳細にはポリマー製のステントを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、体内の管腔への埋込みに適した、ラジアル方向に拡張可能な内部人工器官に関する。「内部人工器官」は、体内に設置される人工の機器を指す。「管腔」とは、血管などの管状器官の空洞を指す。ステントはそのような内部人工器官の一例である。ステントは、一般的に円柱状の形状をした機器で、血管、または、尿路や胆管といった他の解剖学的管腔の一部分(セグメント)を開いた状態に保持し、時には拡張するよう機能する。ステントは、血管中のアテローム硬化型狭窄の治療によく使用される。「狭窄」は、体内の導管または開口部が、狭小化または収縮することを指す。そのような治療においてステントは、身体の血管を補強し、血管系における血管形成の後の再狭窄を阻止する。「再狭窄」は、(例えば、バルーン血管形成、ステントによる治療または弁形成によって)一見して成功裏に治療を受けた後の、血管内または心臓弁における狭窄の再発を指す。
【0003】
ステントは、典型的に、構造要素またはストラットを相互に接続してできるパターンまたはネットワーク(網目)から成り、ワイヤ、チューブ、または円筒形に巻いたシート材料で形成される。このスキャフォールドは物理的に開いた状態を保ち、必要に応じて通路の壁を拡張するので、この名称が付けられている。典型的には、ステントを治療部位まで送ってそこで展開させることができるように、カテーテル上へ圧縮したり、または加締めたりすることができる。
【0004】
送りは、カテーテルを使用してステントを小さな内腔を介し挿入すること、および治療部位へそれを運ぶことを含む。展開は、ステントが所望位置にあるとき、より大きな直径へステントを拡張することを含む。ステントによる機械的介入は、バルーン血管形成と比較して、再狭窄率を減少させる。にもかかわらず、再狭窄は重要な問題として残る。ステントが装着された体節で再狭窄が生じた場合、臨床上の選択肢がバルーン単独で治療した病変の場合よりも限定的であるので、治療が難しい可能性がある。
【0005】
ステントは機械的介入だけでなく生物学的療法を提供するビヒクル(媒体)として用いられる。生物学的療法では、薬剤入ステントを利用して治療用物質を局所的に投与する。治療部位で有効濃度とするには、有害作用または毒性副作用を生ずることが多い全身性の薬物投与が必要となる。局所送りで投与される総薬剤レベルは全身性の方法よりも少ないが、特異的部位に薬物を集中させるので、局的送りは好ましい治療法である。このように局所送りは副作用が少なく、優れた結果を達成する。
【0006】
薬剤入ステントは、金属またはポリマーのスキャフォールドの表面を、活性または生物活性のある薬剤または薬物を含むポリマーの担体でコーティングして製造できる。ポリマーのスキャフォールドを、活性のある薬剤または薬物の担体として提供してもよい。
【0007】
ステントは、いくつかの機械的要件を満たすことができなければならない。ステントは、構造上の負荷、すなわちステントが血管の壁を支えることによりステントにかけられるラジアル方向の圧縮力に耐えることができなければならない。したがって、ステントには適切なラジアル方向の強度がなくてはならない。ラジアル方向の強度は、ラジアル方向の圧縮力に耐えるステントの性能であり、ステントの周方向の強度および剛性に起因する。それ故、ラジアル方向の強度および剛性は、フープ強度および剛性、または、周方向強度および剛性ということもできる。
【0008】
鼓動する心臓が誘発する周期的な負荷を含む、様々な荷重がステントにかかることになるが、ステントは、一度拡張されれば、そのサイズおよび形状を耐用年数の間十分に維持しなくてはならない。例えば、ラジアル方向の荷重は、ステントを内向きに後退させてしまうことがある。加えて、ステントは、圧着、拡張、および周期的負荷を許容するのに十分な可撓性を持っていなくてはならない。
【0009】
埋込式医療機器を用いる治療によっては、限られた期間にだけ機器が必要となる。生体構造組織の支持および/または薬物送りを伴う治療が完了すると、ステントは治療位置から取り除かれる、または消滅させることが望ましい。機器を消滅させる一の方法は、体内条件へ曝露することにより侵食されるまたは崩壊する材料で機器の全体または一部を製造することである。したがって、治療レジメンの完了後、機器の侵食可能な各部を埋込領域から消滅または実質的に消滅させることができる。崩壊プロセスの完了後、機器のあらゆる部分、または機器の侵食可能部分が残存することはない。実施の形態によっては、無視し得るほど微量の痕跡または残渣が残されてもよい。生体吸収性ポリマー等の生体分解性、生体吸収性、および/または生体侵食性の材料から製造したステントを、その臨床上の必要性を終えた後に限って完全に侵食されるように設計できる。
【発明の概要】
【0010】
本発明の様々な実施の形態はステントを製造する方法を含み、その方法は、核の周囲の結晶子の成長なしに、または実質的に成長なしに、ポリマー中での核の形成を許容する温度範囲でポリマーチューブをアニーリングするステップであって、アニーリングステップ前のポリマーのコンストラクトの結晶度が5%未満である、ポリマーチューブをアニーリングするステップと;所望の結晶度を得るために、アニーリングステップ後に核の周囲で結晶子を成長させるステップと;所望の結晶度を得た後にチューブからステントを製造するステップを備える。
【0011】
本発明のさらなる実施の形態はステントを製造する方法を含み、その方法は、ポリマー中に分散させた核形成剤粒子を含むポリマーチューブを形成するステップであって、形成されたチューブのポリマーの結晶度が5%未満であるように、チューブを形成する間の結晶成長を最小限にするかまたは阻止する、ポリマーチューブを形成するステップと;所望の結晶度を得るために、ポリマーチューブを形成するステップ後に、ポリマーチューブ内に分散させた核形成剤粒子の周囲で結晶成長を誘起し、結晶成長を許容するステップと;結晶を成長させた後にチューブからステントを製造するステップを備える。
【0012】
本発明のさらなる実施の形態はステントを製造する方法を含み、その方法は、ポリマーのTg未満の温度で押出プロセスにより結晶度5%未満のポリマーチューブを製造するステップと;製造したポリマーチューブをラジアル方向に変形させるステップであって、ラジアル方向の変形によりポリマーチューブの結晶度を15乃至50%まで増加させる、ラジアル方向に変形させるステップと;変形させたチューブからステントを製造するステップを備える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ステントを示す図である。
【図2】ポリマーについての結晶核形成率および結晶成長率のプロット図である。
【図3A】アニーリングせずに製造したポリマーステントのストラットを示す図である。
【図3B】図3Aのストラットの断面の微細構造の概略図である。
【図4A】アニーリングして製造したポリマーステントのストラットを示す図である。
【図4B】図4Aのストラットの断面の微細構造の概略図である。
【図5】マンドレルの外径と同じまたは実質的に同じ内径を持つポリマーチューブをマンドレルに被せて配置した状態の軸方向断面を示す図である。
【図6A】マンドレルの外径を超える内径を持つポリマーチューブをマンドレルに被せて配置した状態の軸方向断面を示す図である。
【図6B】図6Aチューブの直径を加熱により減少させたチューブを示す図である。
【図7A】型内に位置決めしたポリマーチューブの軸方向断面を示す図である。
【図7B】ラジアル方向に変形した状態の図7Aのポリマーチューブを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の様々な実施の形態は、ポリマー製の埋込式医療機器の製造に関する。詳細には、これらの実施の形態は、非晶質のポリマーまたは結晶度が非常に低いポリマーのコンストラクトからの埋込式医療機器の製造を含む。本明細書に記載する方法は、一般的にはポリマーの埋込式医療機器のいずれにも適用可能である。詳細には、本方法は、自己拡張式ステント、バルーン拡張式ステント、およびステントグラフト等のチューブ状埋込式医療機器に適用できる。
【0015】
ステントは、構造要素またはストラットを相互に接続してできるパターンまたはネットワークを含むことができる。図1はステント100を示す。実施の形態によっては、ステントは、構造要素105を相互に接続してできるパターンまたはネットワークを有するボディ、バックボーン、またはスキャフォールドを含むことができる。ステント100をチューブ(図示せず)から形成してもよい。機器の構造パターンは、事実上任意のデザインであってよい。本明細書に開示する実施の形態は、ステント、または図1に示すステントパターンに限定されない。これらの実施の形態は、他のパターンおよび他のデバイスへ容易に適用できる。パターンの構造のバリエーションは事実上無限である。ステント100等のステントを、レーザーカッティングまたは化学エッチング等の技法を用いてパターンを形成することにより、チューブから製造してもよい。
【0016】
ステント100等のステントは、ポリマーチューブや、巻いて接合するようにしてチューブを形成するシートから製造できる。チューブまたはシートを押出または射出成形によって形成できる。図1に描いたような一のステントパターンを、レーザーカッティングまたは化学エッチング等の技法により、チューブまたはシートに形成できる。そして、ステントは、身体の内腔へ送り込めるように、バルーンまたはカテーテル上へ加締めることができる。
【0017】
埋込式医療機器は、その一部をまたは全体を、生体分解性ポリマー、生体吸収性ポリマー、または生体安定性ポリマーから作製できる。埋込式医療機器の製造に用いるポリマーは、生体安定性、生体吸収性、生体分解性、または生体侵食性であってよい。生体安定性とは、生体分解性ではないポリマーを指す。生体分解性、生体吸収性、および生体侵食性という用語は互換的に用いられ、血液等の体液に曝露されると、完全に分解および/または侵食され、徐々に体に再吸収、吸収および/または除去されるポリマーのことである。ポリマーの分解および吸収プロセスは、例えば加水分解および代謝プロセスによって引き起こされる。
【0018】
生体分解性ポリマーから作られるステントは、血管開通の維持および/または薬物送り等の意図された機能を完遂するまでは体内にとどまるようになされている。分解、侵食、吸収、および/または再吸収のプロセスが完了した後、生体分解性ステントはそのいずれの部分も残らない、またはステントの生体分解性部分は残らない。実施の形態によっては、無視し得るほど微量の痕跡または残渣が残されてもよい。
【0019】
治療期間は治療中の身体の病気に依存する。疾患のある管中でのステントの使用を含む冠性心疾患の治療では、およそ数か月から数年に及ぶ。この期間は、典型的にはおよそ6か月、12か月、18か月、または2年までである。状況によっては、治療期間が延びて2年を超えることもある。
【0020】
上記のように、ステントの特定の機械的要件は、高いラジアル方向強度、高い弾性率、および高い破壊靭性などである。こうした要件を満たすステントは、送り、展開、および疾患のある管の治療を大幅に促進する。ラジアル方向強度に関し、ステントは管壁を支持するので、その上に課される構造的負荷(すなわちラジアル方向圧縮力)に抗するのに十分なラジアル方向強度を持たねばならない。加えて、ステントは、加締め、拡張、および周期的負荷を許容できるように十分な可撓性を持たねばならない。ラジアル方向強度が不適切なポリマーステントは、管内への埋込後に機械的破損または内向きの跳ね返り(後退)をもたらす。
【0021】
ポリマーの強度対重量比は、金属のそれよりも通常は小さい。これを補うために、ポリマーステントは金属ステントよりも著しく厚いストラットが必要になり、その厚さは望ましくないほど大きい。ポリマーの強度不足に対処する一方策は、変形させたポリマーコンストラクトからステントを製造することである。ポリマーを変形させると、変形方向に沿って強度を増加させる傾向があり、それは変形方向に沿って誘起されるポリマー鎖配向に起因すると考えられる。例えば、チューブをラジアル方向に拡張することにより、チューブ中のポリマー鎖の好ましい周方向配向が得られる。さらに、チューブを延伸することにより、チューブ中のポリマー鎖の好ましいアキシャル方向配向が得られる。したがって、ステントの製造プロセスは、ラジアル方向にポリマーチューブを変形させ、変形したチューブからステントを切断することを含むことができる。
【0022】
靭性に関係して、ポリマーステントは高い耐破壊性も有するべきである。ステント材料として好適なポリ(L−ラクチド)(PLLA)等の半結晶性ポリマーは、生物学的条件または人体内の条件の下で脆い傾向がある。具体的には、かかるポリマーのガラス転移温度(Tg)は、約37℃である人の体温を超える。これらのポリマー系は、破損前に塑性変形がほとんどまたは全くない脆性破壊メカニズムを呈する。その結果、このようなポリマーから製造したステントの靭性は、ステントの使用範囲に対して不十分である。特に、ステントの使用範囲全体、すなわち加締め、送り、展開、にわたって、および所望の治療期間にわたって破壊に抗することがステントには重要である。
【0023】
PLLA等の半結晶性ポリマーの破壊靭性を改良するために様々な方策を採ることができる。例えば、ゴム相(または強化剤)を、化学反応または物理的ブレンドを介して、ポリカプロラクトンまたはポリトリメチルカルボナート等の硬質ポリマー中へ入れ込むことができる。しかし、これは強度および弾性率の低下をもたらす。あるいは、ポリマー結晶のサイズを小さくしたり、結晶を成長させる核の密度を高めたりすることにより破壊靭性を改良できる。
【0024】
一般に、ポリマーの結晶化では2つの個別の事象が発生する。第1の事象は、ポリマーマトリックス中での核の形成である。第2の事象は、これらの核の周囲での結晶子の成長である。従って、ポリマーの結晶化の全体速度は、ポリマーマトリックス中の核の平衡濃度と、これらの核の周囲の結晶子の成長速度とに依存する。
【0025】
半結晶性ポリマーは、融点未満の温度で非晶質ドメインおよび結晶性ドメインの両方を含有できる。非晶質領域は、ポリマー鎖が相対的に不規則な構成の領域である。結晶性ドメインまたは結晶子は、ポリマー鎖のセグメントが相互に本質的に平行である規則的な構成の領域である。
【0026】
ポリマー結晶化に対する古典的な見方は、熱力学的に「妨げられた」核の形成と成長のプロセスである。柔軟な鎖がランダムコイル配座を採る不規則なゴム様状態から硬い規則的な3次元状態への移行は、古典的一次転移として形式的に扱われている。結晶子は安定した核のところで形成し、ランダムコイル鎖を折りたたみ鎖結晶ラメラ(厚さは約10nmであるが、実際の厚さはポリマーおよび結晶化条件に依存する)へ再編成することによって成長する。折りたたみ鎖結晶子は静止条件下で(under quiescent conditions)形成する。歪み誘起性結晶化はより複雑であり、折りたたみ鎖結晶と伸びきり鎖結晶との混合物が存在してもよい。しかしながら、多くの場合、ポリマー分子の個別のセグメントは、隣接するセグメントが結晶する前に結晶化のために必要な熱力学的に望ましい配座状態を採ることができず、非平衡非晶質構造でロックされる。したがって、半結晶性ポリマーは、規則的な結晶性領域および不規則な非晶質領域の混合物を形成する。さらに、結晶領域は、結果的に融点分布を与える結晶子サイズの分布を示す。融点分布が広いほど、結晶領域における結晶子サイズの分布は広い。これは、結晶子サイズがより一様であるため鋭い溶融ピークを呈する金属の場合と異なる。結晶性ラメラは束様のスタックを形成し、少数のラメラ(厚さ約50〜100nm)は外向きに成長するにつれて広がって分岐し、サブミクロンからミリメートルのサイズの様々な球晶を形成する。個々の球晶の成長は、隣り合う球晶にぶつかって終わる。平衡溶融温度での無限時間の理論的限界においてのみ、半結晶性ポリマーは熱力学的な理想単結晶構造を形成できる。
【0027】
したがって、あらゆる実際の状況については、半結晶性ポリマーは、固体状態において速度論的に進む非平衡形態を想定する。全体的な結晶化速度は、わずかな改質だけを伴う相変化の速度論のために開発された一般的な数学的公式に従う。ポリマー結晶化における核形成プロセスの重要性は広く認識されており、非常に一般的な考察に基づく。この概念はポリマー結晶化の速度論の解析に適用されてきた。
【0028】
一般に、結晶化は、ポリマーのTgとTm間の温度でポリマーに起こる傾向がある。図2は、静止条件下でのガラス転移温度(Tg)と溶融温度(Tm)との間の温度に対する、核形成率(A)および結晶成長率(B)の依存性の概略図である。結晶子成長のプロセスはなお一層の伸びきり鎖モビリティを必要とするので、ポリマー鎖モビリティが限定されるようなTgを超えTmを大きく下回る温度では、実質的に、成長よりも核形成が起こりやすい。時間を経て温度がTmを超えるまで、これらの核はポリマー中に存在し続ける。図2に示す挙動により、高温では比較的少数の大きな結晶子が形成される一方、低温では比較的多数の小さな結晶子が形成される。
【0029】
本発明の様々な実施の形態は、高い破壊靭性と強度とを提供するために、高い核形成密度、小さな結晶子サイズ、および特定の結晶度を有するポリマーの埋込式医療機器の製造を含む。高い破壊靭性および強度を有する機器の製造は、プロセスステップの相乗的な組み合わせを介して達成される。
【0030】
これらの実施の形態において、プロセスステップは、完全に非晶質(100%非晶質、0%結晶度)であるポリマーコンストラクトまたは結晶度が5%未満であるような非常に低い結晶度のポリマーコンストラクトを得るかまたは製造することを含む。例示の実施の形態において、コンストラクトの結晶度は1〜2%、3〜4%、または4〜5%である。他の実施の形態によっては、コンストラクトの結晶度は5%超、例えば5〜10%であるが、5%未満が好ましく、コンストラクトから製造された機器の優れた機械的特性をもたらすことが期待される。
【0031】
機器の製造は、高い核形成密度と小さくて一様な結晶子サイズ分布とをもたらすように制御された様式で、ポリマーコンストラクトを加工して所望レベルまで結晶度を高めることを含む。非晶質または非常に低い結晶度のコンストラクトの結晶度は、ポリマーのTg未満からポリマーの結晶化温度範囲にコンストラクトの温度を高めることによって、またはコンストラクトを変形させることによって、またはその両者によって増加する。
【0032】
温度の上昇および変形は、ポリマーコンストラクト中の結晶成長を誘起する。変形プロセスにおいて、結晶子成長は同様に温度誘起性もあり得るが、歪みまたは応力によって誘起された結晶化は静止結晶化よりもはるかに迅速なプロセスである。
【0033】
変形(それには温度の上昇が伴う可能性がある)は、特にステント等の機器の製造において、結晶成長の好ましい方法である。変形は、チューブのラジアル方向の拡張(それはチューブにおいてポリマー鎖の好ましい1軸性の周方向の配向を誘起する)、またはラジアル方向の拡張およびアキシャル方向の伸長(鎖の2軸性の配向を誘起する)の両方を含むことができる。1軸性/2軸性の配向は、ステントの適切な機能に必要な高い強度と破壊靭性をステントに提供する。1軸性/2軸性の配向は、1軸性/2軸性の配向の非存在下での結晶度によっては得られない高い強度と破壊靭性を提供できる。
【0034】
変形は、結晶度の増加と配向の誘起という2重の目的に役立つ。本発明の実施の形態は、単一プロセスステップで、または同時に、所望の結晶度および1軸性/2軸性配向を所望部または重要部に付与する方法を提供するが、この方法は著しく有利である。配向の誘起が結晶度を増加させるので、同じプロセスステップで実行した場合、この2つの特徴を極めて容易に制御できる。
【0035】
結晶度を増加させるこの加工ステップは、高い核形成密度ならびに小さな結晶および比較的一様なサイズ分布を持つ結晶子の制御された成長を達成できるので、この加工ステップをコンストラクトの形成後に実行する。加えて、変形を利用して、結晶度を増加させるだけでなく、コンストラクト中のポリマー鎖に制御可能な1軸性または2軸性の配向を与える。配向は、ステント等の機器が適切に機能するために不可欠なラジアル方向の強度および破壊靭性を改良する。押出または射出成形などの従来の溶融加工法でコンストラクトを形成する場合、小さな結晶サイズおよび比較的一様な分布をともなう高い核形成密度ならびに制御可能な2軸性の鎖配向の達成は困難である。
【0036】
特定の実施の形態において、結晶度およびポリマー鎖配向を増加させるように加工する場合、ポリマーコンストラクト中にある核形成剤を介して高い核形成密度を達成できる。他の実施の形態において、加工前に実行されるアニーリングステップ(下記に説明)を介して高い核形成密度が達成されて、結晶度およびポリマー鎖配向が増加する。さらに、実施の形態によっては、核形成剤およびアニーリングステップの両方を用いて高い核形成密度を達成できる。
【0037】
ポリマーコンストラクトは、チューブおよびシート等の幾何形状に形成されたポリマーまたはポリマー材料であり得る。その形状は、さらなる加工を行って埋込式医療機器を形成できるように選択される。例えば、ポリマーコンストラクトをチューブにすることができ、ステントパターンをチューブに切り込んでステントを形成できる。ポリマーコンストラクトは、押出または射出成形等の溶融加工法を用いて形成できる。あるいは、チューブ状に巻いて接着したシートからポリマーチューブを形成してもよい。チューブの事例における変形は、ラジアル方向の拡張、アキシャル方向の伸長、またはその両者を含むことができる。
【0038】
上記のように、実施の形態によっては、コンストラクトの加工はポリマーコンストラクト中に核形成剤を含めることによって達成できる。核形成剤は、不均一な結晶化のための核を提供することによりポリマー中の核形成密度を増加させる、低分子量の不溶性添加剤である。この添加剤は核形成密度を増加させるので、より小さくより多くの結晶子または球晶を生成する。核形成剤は、例えば、金属塩、有機酸、および無機フィラーである。具体的な例は、エチレンビス(12−ヒドロキシステアリルアミド)、シクロヘキサンジカルボン酸ジアニリド、およびテトラメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジドである。総合的なリストとして、例えば、Performance of Plastics:Witold Brostow著,Hanser Publishers(2000年4月)を参照されたい。
【0039】
これらの実施の形態において、核形成剤粒子をポリマーコンストラクト内で混合または分散させることができる。核形成剤はポリマーとの相溶性が悪い場合があるので、十分に高い濃度では機械的特性が結果として劣り、それはステント等の機器の性能にとって不利である。例示の実施の形態では、核形成剤の濃度は約2重量%未満であることが好ましい。より好ましい実施の形態では、濃度は0.01〜0.5重量%の間である。実施の形態によっては、ポリマーコンストラクトを押出または射出成形等の溶融加工法で形成する場合、核形成剤をポリマーコンストラクトへ入れ込むことができる。例えば、核形成剤を押出機へ送り込んで、ポリマーと混合する。非晶質ポリマーまたは結晶度が非常に低いポリマーのコンストラクトを作製するプロセスは、以下に記載するように、核形成剤を用いるコンストラクトの作製または核形成剤を用いないコンストラクトの作製を含む。
【0040】
本発明の他の実施の形態において、ポリマー機器の製造は、結晶成長なしにまたは実質的になしに、非晶質ポリマーまたは結晶度が非常に低いポリマーのコンストラクトをアニーリングして、核形成密度を増加させるステップを含むことができる。この方法は、アニーリングステップ後に形成された核の周囲で結晶子を成長させることによって、結晶度を増加させるステップをさらに含んでいる。より詳細に以下に記載するように、結晶子成長ステップは、コンストラクトの温度を上昇させること、コンストラクトを変形させること、またはその両者によって実行できる。
【0041】
図3Aは、アニーリングまたは核形成剤を用いずに製造したポリマーステントのストラットを示し、図3Bは、非晶質領域320内に分散させた少量の大きな結晶310を示す、ストラットの断面110の模式的な微細構造300である。図4Aは、アニーリング、核形成剤、または両者を用いて製造したポリマーステントのストラットを示す。図4Bは、非晶質領域420内に分散させた多量のより小さな結晶410を示す、ストラットの断面110の模式的な微細構造400を示す。
【0042】
アニーリングの実施の形態において、アニーリングステップは、核の周囲で結晶子の成長なしにまたは実質的になしにポリマー内の核形成を許容する温度または温度範囲で、選択されたアニーリング時間にわたり、ポリマーコンストラクトのアニーリングを含むことができる。アニーリングによりポリマーコンストラクトの全体にわたって核が播かれる。アニーリング温度の範囲はTg〜Tg+25℃が好ましく、特定の量の核を得る一方で結晶成長を阻止するにはTg+15℃〜Tg+5℃がより好ましい。アニーリングではなく核形成剤を用いることは、核形成剤がポリマーコンストラクトの全体にわたって播かれるという点で類似する。
【0043】
本発明の複数の実施の形態で用いてもよい例示の半結晶性ポリマーは、PLLA、ポリ(D−ラクチド)(PDLA)、ポリグリコリド(PGA)、(ポリ(L−ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)、(ポリ(L−ラクチド−コ−カプロラクトン)(PLCL)、およびPLLA−b−ポリ(エチレンオキシド)(PLLA−b−PEO)である。PLLAおよびPGAのTgおよびTmの範囲の文献値を表1に示す。
【表1】

【0044】
アニーリング時間は、5分、10分、30分、1時間、または1時間以上までである。アニーリング時間を選択して所望の核形成密度を得ることができる。
【0045】
上記のように、この方法の実施の形態は、アニーリング時間終了後に、核形成剤なしにポリマーコンストラクト中に所望の結晶度とポリマー鎖配向とを得るように核の周囲で結晶子を成長させる結晶成長ステップ(それは鎖配向を与えるために好ましくは変形を含む)をさらに含む。代替として、この方法は、事前のアニーリングステップなしに核形成剤を用いるポリマーコンストラクトのための結晶成長ステップ(それはポリマー鎖配向を与えるために好ましくは変形も含む)を含む。別の代替の実施の形態において、核形成剤を用いるポリマーコンストラクトは、結晶成長およびポリマー鎖配向をもたらす変形に先立ってアニーリングステップを行うことができる。この最後の実施の形態において、ポリマーコンストラクトは、結晶子の成長のための種(種晶)である核と核形成剤粒子の両方を含む。
【0046】
コンストラクトの望ましい最終結晶度は、少なくとも10%、10〜20%、20〜30%、30〜40%、40〜50%、または50%以上であってよい。しかしながら、50%を超える結晶度は、非常に低い破壊靭性、すなわち、ステントを加締める間、展開させる間、および展開後、に破壊をもたらす可能性のある脆性挙動をもたらす可能性がある。15〜50%の結晶度は、PLLAステントスキャフォールドに、適正である以上の優れた強度および破壊靭性を提供することが期待される。
【0047】
アニーリングステップを行うものの核形成剤を用いないコンストラクトの結晶度は、アニーリングにより形成された核の周囲で成長した結晶子からの寄与、ならびにアニーリング前からコンストラクト中に存在する結晶子および核から成長した結晶子からの寄与を含み得る。核形成剤を用いるコンストラクトの結晶度は、核形成剤の周囲で成長した結晶子からの寄与、ならびにコンストラクト形成後にコンストラクト中に存在する結晶子および核から成長した結晶子からの寄与を含み得る。核形成剤を用いてアニーリングステップを行うコンストラクトの結晶度は、核の周囲で成長した結晶子からの寄与、核形成剤の周囲で成長した結晶子からの寄与、ならびにアニーリングの前にコンストラクト中に存在する結晶子および核から成長した結晶子からの寄与を含み得る。
【0048】
配向を与えるために好ましくは変形を含む、結晶子の成長ステップ後に、続いてコンストラクトに、機器製造プロセスの加工ステップをさらに行える。例えば、ステントパターンをチューブに切り込むことができる。
【0049】
特定の実施の形態において、変形の間のポリマーコンストラクトの温度をアニーリング温度範囲よりも高く、Tmよりも低くすることができる。かかる実施の形態では、結晶子は変形および温度の上昇の両方に起因して成長することができる(変形の方に優位に起因する)。PLLAについては、温度範囲は例えばTgより10〜90℃高くできる。より小さな結晶子が形成されることから、より低い温度(例えばTgより10〜30℃高い)が好ましい。
【0050】
他の実施の形態において、変形の間のポリマーコンストラクトの温度を、アニーリングステップ中の温度と同じにすることができる。変形プロセスは、核形成剤粒子の周囲の結晶子およびアニーリングステップ中に形成された核の周囲の結晶子の成長を誘起することができる。変形の間、静止条件で結晶子成長がほとんどまたは全くない温度であっても、結晶子は成長することができる。上記のように、図2の結晶成長率に関する模式曲線(B)は静止条件に対応しており、したがって変形の間の結晶子成長には適用されない。以下に記載するように、Tgはガラス状態から変形可能な固体または展性のある状態への移行を示すので、ポリマーコンストラクトの温度は変形の間にTgを超えることが望ましい。それゆえに、Tgを超える温度はポリマーの変形を促進する。
【0051】
なお、さらなる実施の形態において、温度誘起性の結晶子成長ステップ、および変形ステップを連続して実行することができる。例えば、温度を上昇させて結晶子を成長させ、続いて選択された温度で変形ステップを行うことができる。あるいは、変形ステップを実行し、続いて結晶子の成長を可能にする上昇した温度で変形したコンストラクトを平衡化することができる。
【0052】
ポリマーコンストラクトの温度を、アニーリング温度または結晶子成長温度まで加熱して維持することは様々な方法で実行できる。例えば、コンストラクトを真空オーブン中で加熱できる。あるいは、例えば窒素、酸素、空気、アルゴンその他の気体を暖めて、コンストラクトに吹きつけることができる。コンストラクトの温度は公知の制御方法により維持することができる。
【0053】
ポリマーコンストラクトは加熱されると、その形状を変える傾向にある。詳細には、ポリマーチューブは加熱されると縮径したり収縮したりする傾向にある。実施の形態によっては、アニーリングステップまたは温度誘起性の結晶成長ステップの間のポリマーチューブの縮径を小さくしたり阻止したりすることができる。加熱時にマンドレルにポリマーチューブを被せることによって、縮径を小さくしたり阻止したりすることができる。チューブの収縮は、マンドレルの外径に限定される。縮径を阻止するために、チューブの内径をマンドレルの外径と同じまたは実質的に同じにすることができる。図5は、それを、マンドレル122に被せたポリマーチューブ120の軸方向の断面図で示す。チューブ120の内径は、マンドレル122の外径Dmと同じまたは実質的に同じである。
【0054】
収縮を小さくするためにマンドレルの外径はポリマーチューブの内径未満である。図6Aはマンドレル132に被せたポリマーチューブ130の軸方向断面図であり、これを表す。チューブ130の内径Dtは、マンドレル132の外径Dmより大きい。図6Bは、チューブ130がアニーリングまたは結晶子成長の間に加熱されるとともに、チューブ130を縮径できるが、その減少はマンドレルの外径Dmに限定されることを示す。
【0055】
さらなる実施の形態では、チューブ内を高めた圧力に維持することによって収縮を小さくしたり阻止したりすることができる。例えば、ポリマーチューブを型(例えばガラス)内に配置し、加熱中にチューブ内へ気体を吹き込むことによって内部圧力を高める。
【0056】
上記のように、ブロー成形を利用してポリマーチューブをラジアル方向に変形させることができる。図7A〜図7Bは、ブロー成形を利用してポリマーチューブを変形させる例示の実施の形態を示す。図7Aは、型160内に配置した外径155を持つポリマーチューブ150の軸方向断面図を示す。型160は、ポリマーチューブ150のラジアル方向の変形を直径165(型160の内径)に限定する。ポリマーチューブ150は、遠位端部170で閉じているが、続いて行なわれる製造ステップでは開いていてもよい。矢印175で示すように、ポリマーチューブ150の開口した近位端部180に流体が送り込まれる。引張力195を、近位端部180および遠位端部170にかけることができる。
【0057】
ポリマーチューブ150へ気体を送り込む前に、周囲温度を超える温度に流体を加熱することによって、ポリマーチューブ150を加熱してもよい。あるいは、暖めた気体を型の上へ吹きつけることで型160の外部から加熱することによってポリマーチューブを加熱できる。型内の発熱素子でチューブを加熱してもよい。
【0058】
矢印185で示すように、ポリマーチューブの温度の上昇によって促進されたポリマーチューブ150の内部圧力の増加は、ポリマーチューブ150のラジアル方向の変形を引き起こす。図7Bは、型160内の外径190を持つ変形した状態のポリマーチューブ150を示す。
【0059】
実施の形態によっては、チューブを、その全軸長に沿って同時にまたはほぼ同時に拡張させてもよい。この事例では、チューブを軸長に沿って一様にまたはほぼ一様に加熱する。次いで、チューブがTg付近またはTgを超える拡張温度に到達すると、チューブはその長さに沿って拡張する。あるいは、チューブを軸長に沿って順次に拡張することができる。この事例において、加熱ノズルを軸長に沿って並進させ、それに伴ってチューブを加熱する。そして、ノズルを並進させ、チューブを加熱するにつれて、チューブが拡張する。
【0060】
さらに、チューブを目標直径まで拡張してもよい。一の実施の形態において、目標直径は、ステントパターンを、チューブのレーザー加工で形成する際の直径であってもよい。目標直径を、加締めの前のステントの直径に対応させることができる。ラジアル方向の変形の程度を、以下のブローアップ比またはラジアル方向延伸比によって定量してもよい:

変形チューブの内径
チューブのもとの内径

実施の形態によっては、ステントの製造に用いるポリマーチューブのラジアル方向延伸比は約1〜10の間、またはより厳密には約2〜6の間である。同様に、アキシャル方向の変形の程度を、以下のアキシャル方向延伸比によって定量してもよい:

変形チューブの長さ
チューブのもとの長さ

【0061】
上記のように、結晶成長は、変形、上昇させた温度、またはその両者を通じて達成できる。
【0062】
非晶質または結晶度の低いコンストラクトからその結晶度を増加させることにより、特に拡張時に、結晶成長を通じて得られる、結晶度と、結晶サイズと、核形成密度との制御をより可能にする。すべてまたは大部分の結晶は、アニーリングに由来する核、または核形成剤から成長するので、すべてまたは大部分の結晶度は、結晶成長ステップの間に調整または制御できる。結果として、すべてまたは大部分の結晶度は、高い核形成密度で一様に分散させた核または核形成剤から形成される。
【0063】
加えて、結晶が核形成剤または核の周囲の成長を通じて形成されるので、すべてまたは大部分の結晶度は、比較的一様な分布の結晶サイズを持つ結晶を含む。ポリマー中の結晶子サイズが完全に一様であることは稀である。むしろ、結果として融点の範囲となるサイズ分布があるが、その融点の範囲では、小さな結晶子が大きな結晶子よりも低い温度で溶融する。最大の結晶子は、その表面積対体積比が最低であるので最高温度で溶融する。
【0064】
さらに、非晶質または結晶度が非常に低いコンストラクトは、最終加工を施したコンストラクトの微細構造および機械的特性に関して、より高い再現性を与える。微細構造は、結晶サイズ、結晶密度、結晶配向、非晶質配向、および結晶形状を含む。押出または射出成形で製造されるポリマーチューブ等のポリマーコンストラクトの結晶度は、典型的には少なくとも10%、20%、または30%以上であり、その結晶度は、結晶成長の間、例えば変形または拡張の間の、形態および微細構造の制御の自由度を制限する。例えば、相対的に遅い核形成速度と比べて結晶成長速度ははるかに速いので、結晶サイズは変形の間に非常に急速に増加する。従って、核または核形成剤があれば、高い核形成密度とより小さな結晶サイズの形成とが著しく促進される。
【0065】
さらに、押出成形と射出成形という異なる成形法で製造したポリマーコンストラクトの結晶度および微細構造の特性は変動する。これは、コンストラクトの結晶度および微細構造が、これらのプロセスの加工パラメータと、加工時のそれらパラメータの不十分な制御とに左右されるからである。
【0066】
本発明の実施の形態は、押出成形条件およびパラメータを制御することにより、非晶質構造または結晶度が非常に低いポリマーコンストラクト(ポリマーチューブ等)を押出成形することをさらに含む。ポリマーコンストラクトは、ポリマーチューブ中に分散させた核形成剤を含んでもよいし、添加の核形成剤を含まなくてもよい。
【0067】
一般に、押出成形は、押出機を介して溶融ポリマーを搬送し、選択された形状をポリマーに与えるダイを介して溶融ポリマーを押出機から押し出すプロセスを指す。チューブの押出成形の事例において、強制的にダイを通される溶融ポリマー(押出物)がチューブ状の円筒膜を形成する。膜は冷却され、軸方向に引かれて最終的なチューブ品になる。
【0068】
押出機は一般にバレルを含み、溶融ポリマーはバレルを介して入口から出口ポートへ運ばれる。ポリマーは、溶融物として、またはその融点未満の温度の固体形態で、押出機バレルへ供給することができる。固体ポリマーはバレルを通って運ばれるにつれて溶融される。押出機バレル内のポリマーはポリマーの溶融温度(Tm)を超える温度まで加熱され、周囲圧力を超える圧力に曝露される。バレル内のポリマーは、例えば回転スクリューを用いて搬送または圧送される。本発明とともに用いるための押出機の代表例には、単軸スクリュー押出機、かみ合い式の同方向回転および異方向回転2軸スクリュー押出機ならびに他の多軸スクリュー可塑化式押出機がある。
【0069】
ポリマー溶融物は、押出機から押出機バレルの端部に置かれたダイに吐出される。ダイとは、一般的には押出機から圧送されるポリマー溶融物に特定の形状または幾何学的デザインを与えるオリフィスを有する機器を指す。チューブ押出の事例では、ダイは、吐出されるポリマー溶融物に円筒形状を与える円形オリフィスを有する。ダイの機能は、オリフィスにポリマー溶融物を送ることによってポリマー溶融物の形状を制御することである。ポリマー溶融物は、一定の速度、温度、および圧力で送ることができる。
【0070】
ポリマーは、ダイから離れて膨張することにより、加工中に発生した圧縮を補償する。ポリマーはダイを通過するにつれ、冷却される間に、コンベヤーまたはプラーにより延伸され、ドローダウンする。「ドローダウン」は、延伸によってポリマーのサイズが減少することを指す。例えば、チューブを長手方向に延伸すると、チューブの直径は減少する。ドローダウン量は、チューブの最終横断面積に対するダイ開口面積の比である「ドローダウン比(引抜比)」として定義される。ドローダウン比はもとの押出形状の少なくとも3倍になり得る。
【0071】
押出ポリマーのチューブ中の結晶度は、複数の原因に依存する。チューブ押出プロセスにおける複数のパラメータは、押出チューブ中の結晶度を含む特性に影響を及ぼす。複数の実施の形態は、押出プロセスのパラメータを調節してそのような原因、そしてひいては押出チューブ中の結晶度、を減らしたりなくしたりすることを含む。これらのパラメータは、押出機の温度プロフィール、スクリューの幾何形状、スクリュー回転数、チューブ冷却速度、プラー速度、押出機中の空気圧力、および面積ドローダウン比を含むが、これらに限定されない。
【0072】
ダイから吐出されるポリマー溶融物中に溶融されていない結晶があると、形成されたチューブに結晶度をもたらす。非晶質構造または結晶度が非常に低いチューブを形成するプロセスは、押出機へ送り込まれるポリマー樹脂から押出機中の結晶度を完全に除去することを含むことができる。押出機へ送り込まれるポリマー樹脂(典型的には商業的サプライヤから入手)の結晶度は非常に高い(例えば約60〜65%)。このプロセスは、押出機中の樹脂を完全に溶融して結晶相を完全に除去することを含む。これは押出機の1つ以上の加工パラメータを調節することによって達成できる。
【0073】
例えば、樹脂からの結晶相の完全除去は適切に高い押出温度によって達成できる。この温度は、結晶を溶融するには十分高いが、ポリマーを分解させる温度未満でなくてはならない。押出機中の例示の温度は、ポリマーのTmより少なくとも20℃上である。例えば、PLLA押出のための温度範囲はPLLAについては200〜225℃である。この温度範囲未満では、溶融されていない結晶が押出機中に存在する可能性が高く、形成されたチューブ中の結晶度をもたらす。
【0074】
溶融効率は、スクリューの幾何形状を最適化することによって高めることができる。押出機の設計パラメータおよび他のパラメータの両方ともを修正した後、押出物の品質を再調査することができる。修正可能な押出機設計パラメータには、圧縮比、供給長、スクリューL/D、およびねじれ角等のスクリュー設計が含まれる。調節可能なプロセスパラメータには、スクリューrpm、圧力、およびドローダウンが含まれる。
【0075】
溶融効率は、例えば、2軸スクリュー押出機の使用によって、またはより長い滞留時間によって、押出機の混合および溶融ゾーンでの剪断応力を増加させることでさらに高めることができる。
【0076】
押出チューブ中の結晶度の他の要因は、ポリマー溶融物の不十分な均一性、ならびに押出機中のポリマー溶融物および押出機から吐出されるポリマー溶融物における鎖配向である。ポリマー溶融物は均一性を欠損する局在領域を有することができる。溶融物の均一性は、体積要素内で温度が均質であること、鎖伸長がほとんどまたは全くないこと、およびポリマーゲルが存在しないことによって特徴づけることができる。均一性の領域が均質化されない場合、ポリマーの凝固に際して結晶度が発達する可能性がある。
【0077】
ダイからの吐出前/後に任意の鎖配向を形成するためにポリマー鎖を延伸することにより、ポリマーの凝固時に歪み誘起性結晶化が引き起こされる。それゆえ、ポリマー溶融物がダイから吐出される前に、鎖配向を最小限にするかまたは阻止すべきであり、いったんポリマー溶融物がダイから吐出されれば、溶融ステージから最終ステージへの冷却期間の間は、周方向/長手方向の鎖延伸を最小限にするかまたは阻止すべきである。ドローダウン比は1〜4であり、好ましくは1未満である。
【0078】
押出機スクリューの端部またはダイの手前に混合セクションを加えることによって、溶融ポリマーがダイから出る前に、溶融不均質性および鎖延伸の影響を最小限にするか除去することができる。押出機外での鎖延伸は、スクリュー回転数、プラー速度、冷却に用いる吹き付け気体の圧力、およびドローダウン比を調節することにより最小限にするかまたは除去できる。スクリュー回転数、プラー速度、およびドローダウン比を減少させて鎖延伸を最小限にすることができる。吹き付け気体の圧力を低下させることによっても鎖延伸を最小限にすることができる。
【0079】
このプロセスは、ダイから吐出される押出チューブを急冷して、冷却プロセスにおける再結晶を阻止することをさらに含むことができる。チューブの急冷は、ポリマーのTmを超える温度からポリマーのTg未満への、非常に急速な冷却またはポリマー温度の非常に急速な低減を指す。急冷は、冷却水または循環もしくは冷却気体等の冷却した急冷媒質に、吐出されたポリマーを接触させることによって達成できる。急冷は、押出ダイと急冷媒質との間の距離を減少させること、チューブ内側を冷却するために冷却した気体を用いること、またはその組み合わせによって促進できる。核形成剤を用いる場合に低い結晶度によるPLLAチューブ形成を得るには、迅速な冷却ステップが非常に重要である。
【0080】
本発明について、以下の用語および定義を適用する。
【0081】
「ガラス転移温度」(Tg)は、大気圧で脆性のガラス状態から剛性の変形可能または延性状態に、ポリマーの非晶性ドメインが変化する温度である。言いかえれば、Tgは、ポリマーの鎖中のセグメント運動開始が生じる温度に相当する。非晶性ポリマーまたは半結晶性ポリマーを温度上昇に暴露する場合、温度が上昇するにつれて、膨張係数およびポリマーの熱容量は共に増加し、このことは分子運動の増加を示す。温度が上昇してもサンプル中の実際の分子容は一定のままであり、そのためより高い膨張係数は、システムに関連する自由容積の増加、およびそれ故の分子が移動できる増加した自由度を指し示す。熱容量の増加は、運動を介する熱放散の増加に対応する。与えられたポリマーのTgは、加熱速度に依存し、およびポリマーの熱履歴に影響を受け得る。さらに、ポリマーの化学構造は、流動性に影響を与えることによって、ガラス転移に大きな影響を及ぼす。
【0082】
「応力」は、平面内の小さい領域を通して作用する力におけるような、単位面積当たりの力を指す。応力は、それぞれ垂直応力および剪断応力と呼ばれる、平面に対し垂直および平行な成分に分割することができる。引張応力は、例えば、加えた応力の法線成分であり、拡張(長さの増加)をもたらす。さらに、圧縮応力は材料(物質)へ加えた応力の法線成分であり、圧縮(長さの減少)をもたらす。応力は材料を変形(長さの変化を指す)させることができる。サンプルが応力を受ける場合、「拡張」および「圧縮」は、それぞれ材料サンプルの長さの増加および減少として定義できる。
【0083】
「歪み」は、与えられた応力または負荷において材料中で生ずる拡張または圧縮の量を指す。歪みは、もとの長さとの割合またはパーセンテージ(すなわちもとの長さで割った長さの変化)として表現できる。従って、歪みは、拡張であれば正であり、圧縮であれば負である。
【0084】
「強さ(強度)」とは、材料が破壊の前に耐えるであろう、軸に沿った最大応力を指す。極限強度は、試験中に加えられる最大負荷を当初の断面積で割って算出する。
【0085】
「弾性率」は、材料に加えられた単位面積当たりの力すなわち応力の成分を、加えられた力により生じる、加えられた力の軸に沿ったひずみで割った比率と定義される。弾性率は、典型的には直線領域における低い歪みでの応力−歪み曲線の初期勾配である。例えば、材料は引張弾性率および圧縮弾性率の両方を有する。
【0086】
材料にかける引張応力を、「引張強度」(材料が破壊する前に耐える最大の引張応力を指す)に到達するまで増加させることができる。極限引張強さは、試験中に加えた最大負荷をもとの断面積で割って算出する。同様に、「圧縮強度」は軸方向の押す力に耐える材料の能力である。圧縮強度が限界に到達すると材料は破壊する。
【0087】
「靭性」は、破壊の前に吸収されるエネルギーの量であり、すなわちある材料を破壊するために必要な仕事量と同等である。靭性の一つの基準は、応力−ひずみ曲線の下の、ひずみゼロから破壊ひずみまでの領域に示される面積である。この事例での靭性の単位は、材料の単位体積当たりのエネルギーで示される。例えば、L. H. Van Vlack、「Elements of Materials Science and Engineering」、pp. 270−271, Addison− Wesley (Reading, PA, 1989)を参照されたい。
【0088】
ステント等の埋込式医療機器の下地構造または基材は、生体分解性ポリマーもしくは複数の生体分解性ポリマーの組み合わせ、生体安定性ポリマーもしくは複数の生体安定性ポリマーの組み合わせ、または生体分解性および生体安定性ポリマーの組み合わせから完全にまたは少なくとも部分的に作ることができる。さらに、機器の表面のためのポリマーベースのコーティングは、生体分解性ポリマーもしくは複数の生体分解性ポリマーの組み合わせ、生体安定性ポリマーもしくは複数の生体安定性ポリマーの組み合わせ、または生体分解性および生体安定性ポリマーの組み合わせであってよい。
【0089】
分解、侵食、吸収、および/または再吸収のプロセスが完了した後、ステントはいずれの部分も残存しないこと、または、生体安定性スキャフォールド上へコーティングを施した事例ではポリマーが機器に残存しないことは言うまでもない。実施の形態によっては、ごくわずかの痕跡または残渣が残されてもよい。生体分解性ポリマーから作られるステントについては、例えば、血管開通の維持および/または薬物送りという意図した機能が完遂されるまでの間は体内に残存するようになされる。
【0090】
埋込式医療機器の製造に用いることができるポリマーの代表例は、ポリ(N‐アセチルグルコサミン(キチン)、キトサン、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート−コ−バレレート)、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリ(グリコール酸)、ポリ(グリコリド)、ポリ(L−乳酸)、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−乳酸)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリエステルアミド、ポリ(グリコール酸−コ−トリメチレンカーボネート)、コ−ポリ(エーテル−エステル)(例えばPEO/PLA)、ポリホスファゼン、生体分子(フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲンおよびヒアルロン酸等)、ポリウレタン、シリコーン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイソブチレンおよびエチレン−アルファオレフィンコポリマー、ポリアクリレート以外のアクリルポリマーおよびコポリマー、ハロゲン化ビニルポリマーおよびコポリマー(ポリ塩化ビニル等)、ポリビニルエーテル(ポリビニルメチルエーテル等)、ポリハロゲン化ビニリデン(ポリ塩化ビニリデン等)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリビニル芳香族化合物(ポリスチレン等)、ポリビニルエステル(ポリ酢酸ビニル等)、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂、ポリアミド(ナイロン66およびポリカプロラクタム等)、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリウレタン、レーヨン、レーヨン−トリアセテート、セルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、セロハン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル、およびカルボキシメチルセルロースを含むが、これらに限定されない。使用することができるポリ(乳酸)ベースの他のタイプのポリマーは、グラフトコポリマー、およびABブロックコポリマー(「ジブロック−コポリマー」)、もしくはABAブロックコポリマー(「トリブロック−コポリマー」)等のブロックコポリマー、またはそれらの混合物を含む。
【0091】
埋込式医療機器の製造またはコーティングで用いるために特に好適なポリマーの更なる代表例は、エチレンビニルアルコールコポリマー(一般名EVOHまたは商標名EVALとして周知)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(フッ化ビニリデン−コ−ヘキサフルオロプロペン)(例えば、ニュージャージ州ThorofareのSolvay Solexis PVDFから入手可能なSOLEF 21508)、ポリフッ化ビニリデン(さもなければ、ペンシルバニア州フィラデルフィアのATOFINA Chemicalsから入手可能なKYNARとして公知)、エチレン酢酸ビニルコポリマー、およびポリエチレングリコールを含む。
【実施例】
【0092】
以下に説明される実施例は説明の目的のみのためのものであり、本発明を限定する意味を一切有しない。以下の実施例は本発明の理解を支援するために示されるが、本発明が特定の実施例に限定されないことを理解されるべきである。以下の実施例は限定ではなく例示のためだけに記載する。パラメータおよびデータが本発明の実施の形態の範囲を限定すると解釈すべきではない。
チューブ拡張前のアニーリングによるPLLA核の増加によるPLLAステントの製造
ステップ1(チューブ押出):PLLA材料を200℃〜220℃で単軸スクリュー押出機中で押出し、チューブを冷水または他の冷却媒体中で急冷する。押出したチューブのサイズを、内径(ID)約0.02インチおよび外径(OD)約0.06インチに設定する。
ステップ2(チューブアニーリング):押出したチューブを60〜75℃の温度で30分〜3時間アニーリングして、特定の量のPLLA核を生成する。
ステップ3(チューブ拡張):アニーリングしたチューブをガラス型内に置き、約170°F〜200°Fで拡張して、2軸性の配向およびより高い結晶度を得る。最終的なIDおよびODをそれぞれ約0.12インチおよび0.13インチに設定する。
ステップ4(ステント製造):フェムト秒レーザーを用いて拡張されたチューブからステントを切断し、バルーン付カテーテル上で小さなサイズ(0.05インチ)まで加締め、25+/−5kGyの線量の電子線で滅菌した。
【0093】
本発明の特定の実施の形態を示し、記述してきたが、より広い態様での本発明を逸脱しない限り、変更および変形を施すことも可能であることは当業者にとって自明であろう。したがって、添付の請求項はその範囲において本発明の真の精神および範囲に含まれる全ての変更および変形を包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステントを製造する方法であって:
核の周囲で結晶子の成長なしにまたは実質的になしに、ポリマー内の前記核の形成を許容する温度範囲において、ポリマーチューブをアニーリングするステップであって、アニーリングステップ前のポリマーコンストラクトの結晶度が5%未満である、アニーリングステップと;
前記アニーリングステップ後に、所望の結晶度を得るために、前記核の周囲で結晶子を成長させるステップと;
前記所望の結晶度を得た後に、前記チューブからステントを製造するステップを備える;
方法。
【請求項2】
前記ポリマーチューブのポリマーは、PLLA、PDLA、PGA、およびPLGAからなる群から選択される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマーチューブのポリマーは、PLLAである、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマーチューブは、前記アニーリングステップの前に完全に非晶質である、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記核形成の温度範囲は、Tgから約0.15×(Tm−Tg)+Tgである、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記結晶子の成長は、前記ポリマーチューブの温度を前記結晶子の成長を許容する範囲に上昇させることによって誘起される、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ラジアル方向に前記ポリマーチューブを変形させることによって、前記結晶子の成長が誘起されて、前記ポリマーチューブ中に周方向の配向を提供し、前記ステントが前記変形させたポリマーチューブから製造される、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマーチューブのポリマーは、生体吸収性である、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ステントを製造する方法であって:
ポリマー内に分散させた核形成剤粒子を含むポリマーチューブを形成するステップであって、形成されたチューブのポリマーの結晶度が5%未満であるように、前記チューブの形成の間の結晶成長を最小限にするかまたは阻止する、ポリマーチューブを形成するステップと;
前記ポリマーチューブを形成するステップ後に、所望の結晶度を得るために、前記ポリマーチューブ内に分散させた核形成剤粒子の周囲で結晶成長を誘起し結晶成長を許容するステップと;
前記結晶成長の後に、前記チューブからステントを製造するステップを備える;
方法。
【請求項10】
前記ポリマーチューブのポリマーは、PLLA、PDLA、PGA、およびPLGAからなる群から選択される、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリマーチューブのポリマーは、PLLAである、
請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリマーチューブは、結晶子の成長の誘起前に完全にまたはほとんど完全に非晶質である、
請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリマーチューブを形成するステップは、押出成形を用いて、前記チューブの温度を前記ポリマーのTg未満に低下させて、前記ポリマーチューブを製造するステップを有する、
請求項9に記載の方法。
【請求項14】
ポリマーコンストラクトの温度を、前記ポリマーのTg未満から前記ポリマーのTgを超える、結晶子の成長を許容する温度に上昇させることによって、前記結晶子の成長を誘起する、
請求項9に記載の方法。
【請求項15】
ラジアル方向に前記ポリマーチューブを変形させることによって結晶子成長が誘起されて前記ポリマーチューブ中に周方向の配向を提供し、前記ステントが前記変形させたポリマーチューブから製造される、
請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマーチューブのポリマーは、生体吸収性である、
請求項9に記載の方法。
【請求項17】
ステントを製造する方法であって:
ポリマーのTg未満の温度で、結晶度が5%未満のポリマーチューブを押出プロセスにより製造するステップと;
前記製造されたポリマーチューブをラジアル方向に変形させて、ラジアル方向の変形により前記ポリマーチューブの結晶度を15%と50%との間まで増加させるステップと;
前記変形したチューブからステントを製造するステップを備える;
方法。
【請求項18】
前記押出プロセスにより製造した前記ポリマーチューブは、非晶質である、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記チューブのポリマーはPLLAであり、押出機内の温度は200〜220℃である、
請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A−3B】
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【図4A−4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【公表番号】特表2012−526622(P2012−526622A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510882(P2012−510882)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/034077
【国際公開番号】WO2011/002554
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(509268314)アボット カルディオバスキュラー システムズ インコーポレーテッド (16)
【氏名又は名称原語表記】Abbott Cardiovascular Systems Inc.
【住所又は居所原語表記】3200 Lakeside Drive,Santa Clara,California 95054,United States of America
【Fターム(参考)】