説明

非晶質アルミノシリケート粒子、絶縁性向上剤組成物及び絶縁性樹脂組成物

【解決課題】 絶縁性樹脂の安定剤として非鉛系安定剤を用いる場合に、該絶縁性樹脂に高い絶縁性能を付与することができる絶縁性向上剤及び絶縁性向上剤組成物、並びに絶縁性に優れる絶縁性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 比表面積が1〜50m/g、水分の含有量が5重量%以下、平均粒径が0.1〜10μmである非晶質アルミノシリケート粒子であって、絶縁性向上剤として用いることを特徴とする非晶質アルミノシリケート粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線被覆用の絶縁性樹脂等に用いられる絶縁性向上剤及び絶縁性向上剤組成物、並びにこれらを配合した絶縁性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電線被覆用の絶縁性樹脂としては、電気絶縁性が高く耐熱性や耐候性に優れた塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のオレフィン類の共重合体樹脂に、安定剤として鉛系化合物を添加したものが広く用いられてきた。しかし、近年、環境問題が注目される中で、該安定剤については、鉛系安定剤から非鉛系安定剤への移行が急速に進行している。該非鉛系安定剤の主流は、カルシウム−亜鉛系の複合安定剤であり、具体的にはステアリン酸カルシウム及びステアリン酸亜鉛が多く使用されている。また、それに加え、安定助剤としてハイドロタルサイトが併用使用されることが多い。
【0003】
ところが、安定剤としてカルシウム−亜鉛系複合安定剤が使用されている塩化ビニル系樹脂は、熱安定性については実用レベルに達しているものの、絶縁性能が低いという問題があった。具体的には、従来の鉛系安定剤が使用されている樹脂と比較して、非鉛系安定剤が使用されている樹脂は、体積固有抵抗率が低いという問題が発生している。鉛系安定剤が使用されている樹脂の場合は、鉛系安定剤が、樹脂の混練・加工の際に、熱により樹脂が分解して生成する塩素や塩化水素を、塩化鉛として捕捉して、樹脂中に固定化させることができるので、塩化物イオンが樹脂中を移動することを防止できる。すなわち、該鉛系安定剤は、絶縁性向上剤としても作用する。一方、カルシウム−亜鉛系複合安定剤が使用されている樹脂の場合は、カルシウム−亜鉛系複合安定剤は、該塩化物イオンと反応して塩化亜鉛又は塩化カルシウムを生成させることはできるが、生成した該塩化亜鉛又は塩化カルシウムから該塩化物イオンが遊離し、再びイオン化して比較的自由に樹脂中を移動するため、導電性を示し、該樹脂の絶縁性が低くなると考えられている。すなわち、カルシウム−亜鉛系複合安定剤では、樹脂中に該塩化物イオンを固定化することができないため、樹脂の絶縁性が不十分となる。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂の場合は、同様に熱により樹脂が分解して生成する酢酸イオンが、カルシウム−亜鉛系複合安定剤によっては固定化されず、再イオン化した酢酸イオンが樹脂中を移動するため、やはり導電性を示し、絶縁性能が低くなると考えられている。
【0004】
そこで、近年、非鉛系安定剤を用いる電線被覆用の樹脂の絶縁性を向上させる検討が行われてきた。特許文献1には、塩化ビニル系樹脂にハイドロタルサイト及びアルミノシリケートを配合した、電線被覆用塩化ビニル系樹脂が開示されている。
【特許文献1】特開平8−109298号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特開平8−109298号公報に記載されている電線被覆用塩化ビニル系樹脂であっても、その体積固有抵抗値は、鉛系安定剤が使用されている樹脂のものと比較すると、はるかに低いレベルであった。
【0006】
従って、本発明の課題は、絶縁性樹脂の安定剤として非鉛系安定剤を用いる場合に、該絶縁性樹脂に高い絶縁性能を付与することができる絶縁性向上剤及び絶縁性向上剤組成物、並びに絶縁性に優れる絶縁性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記従来技術における課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、特定の範囲の比表面積を有する非晶質アルミノシリケート粒子は、(1)樹脂と直接接触している表層部において、絶縁性樹脂の製造時に生成するイオンを良好に捕捉及び固定でき、(2)絶縁性樹脂の製造時等に空気中の水分を吸水し難く、吸湿による絶縁性の低下が小さいので、絶縁性樹脂に高い絶縁性能を付与できること等を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明(1)は、比表面積が1〜50m/g、水分の含有量が5重量%以下、平均粒径が0.1〜10μmである非晶質アルミノシリケート粒子であって、絶縁性向上剤として用いる非晶質アルミノシリケート粒子を提供するものである。
【0009】
また、本発明(2)は、ゼオライト粒子を、酸を用いてpH4〜6.8の酸性領域で酸処理し、次いで該酸処理により得られる酸処理物を加熱処理して得られる非晶質アルミノシリケート粒子であって、絶縁性向上剤として用いる非晶質アルミノシリケート粒子を提供するものである。
【0010】
また、本発明(3)は、前記本発明(1)又は(2)いずれか記載の非晶質アルミノシリケート粒子を含有する絶縁性向上剤組成物を提供するものである。
【0011】
また、本発明(4)は、前記本発明(1)又は(2)いずれか記載の非晶質アルミノシリケート粒子を含有する絶縁性樹脂組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の非晶質アルミノシリケート粒子及び絶縁性向上剤組成物によれば、絶縁性樹脂の安定剤として非鉛系安定剤を用いる場合に、該絶縁性樹脂に高い絶縁性能を付与することができる。また、本発明の絶縁性樹脂組成物によれば、高い絶縁性を有する電線被覆用等の樹脂を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の非晶質アルミノシリケート粒子は、以下に述べる特定の物性を有することにより、絶縁性樹脂の絶縁性を向上させる絶縁性向上剤として好適に用いられる。
【0014】
該非晶質アルミノシリケート粒子は、一般式(1);
xM・Al・ySiO・zHO (1)
(式中、Mは金属原子を示し、好ましくはナトリウム原子、カリウム原子、コバルト原子、カルシウム原子、マグネシウム原子、バリウム原子、ストロンチウム原子、亜鉛原子である。pの値は、Mが1価の金属原子の場合は2、Mが2価の金属原子の場合は1、Mが3価の金属原子の場合は2、Mが4価の金属原子の場合は1であり、qの値は、Mが1価の金属原子の場合は1、Mが2価の金属原子の場合は1、Mが3価の金属原子の場合は3、Mが4価の金属原子の場合は2である。x、y及びzの値は、Mの種類により異なるが、概ねxの値は0.3以下、yの値は1.8〜5.2、zの値は2以下である。)
で表される組成を有する非晶質の粒子である。なお、本発明において、非晶質の粒子とは、結晶学的に、ゼオライトのような結晶性を有する粒子とは対立する概念のもので、結晶性がなくなっている粒子のことをいう。
【0015】
該非晶質アルミノシリケート粒子が、非晶質であることの確認は、X線回折分析(XRD分析)により行うことができる。該非晶質アルミノシリケート粒子は、該粒子のXRD分析を行って得られるX線回折チャートに、回折ピークが全く認められないか、又は回折ピークが認められたとしても、同程度のSiO/Al比を有し、同じ位置に回折ピークを有するゼオライトの回折ピークに比べ、ピーク高さが概ね1/2以下であり、結晶学的に、実質的に非晶質である。
【0016】
該非晶質アルミノシリケート粒子の比表面積は、1〜50m/g、好ましくは2〜10m/g、特に好ましくは3〜10m/gである。該比表面積が該範囲にあることにより、絶縁性樹脂の製造時に生成するイオンを効率的に捕捉及び固定することができ、且つ該絶縁性樹脂の製造時等に、該非晶質アルミノシリケート粒子が空気中の水分を吸湿し難くなるので、該吸湿による絶縁性樹脂の絶縁性の低下を少なくすることができる。該比表面積が、1m/g未満だと該イオンを効率的に捕捉及び固定することが困難となり、また、50m/gを超えると該非晶質アルミノシリケート粒子の水分の吸湿量が多くなり、絶縁性樹脂の絶縁性が低下する。
【0017】
該非晶質アルミノシリケート粒子と同程度のSiO/Al比を有し、且つ同程度の粒径を有するA型ゼオライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、P型ゼオライト、ソーダライト、アナルサイム等のゼオライト(以下、ゼオライト等とも記載する。)の比表面積は、通常、700〜800m/gである。該ゼオライト等は、粒子の内部に位置し、外部と連通している空隙(以下、粒子内部の空隙と記載する。)を多量に有しているので、このように大きな比表面積を有している。それに対し、該非晶質アルミノシリケート粒子の比表面積は、該ゼオライト等に比べ、極めて小さい。すなわち、このことは、該非晶質アルミノシリケート粒子には、該粒子内部の空隙の量が極めて少ないことを示す。なお、該粒子の内部という語を詳細に説明すると、絶縁性樹脂中で該非晶質アルミノシリケート粒子が、樹脂と直接接触している表層部(以下、単に表層部とも記載する。)より、粒子の中心側に位置する部分が、粒子の内部である。
【0018】
該比表面積は、例えば、測定装置として島津製作所製のフローソーブ(BET法比表面積測定装置)を用いて求めることができる。該測定装置において、非晶質アルミノシリケート粒子をホルダーに採り、加熱して水分を除去したのち、液体窒素で冷却した状態で窒素ガスを吸着させて、窒素ガス吸着前後の重量変化を測定し、その重量変化から該比表面積を算出することができる。このような窒素ガスを吸着させて比表面積を測定する方法は、一般に窒素吸着法と呼ばれている。
【0019】
なお、該窒素吸着法では、該非晶質アルミノシリケート粒子の粒子内部の空隙が、窒素ガス(N)より小さい場合は、窒素ガスが粒子内部の空隙まで入ることができないので、表層部の比表面積のみが測定されることとなる。このようなことは、前記式(1)中のMがナトリウム原子である非晶質アルミノシリケート粒子に起こる場合がある。従って、このような場合、該非晶質アルミノシリケート粒子を塩化カルシウム水溶液等のカルシウムイオンを含む水溶液に含浸させ、該非晶質アルミノシリケート粒子中のナトリウムイオンをカルシウムイオンにイオン交換し、得られるカルシウムイオン交換非晶質アルミノシリケート粒子を、該窒素吸着法を用いて測定することにより、該比表面積を求めることができる。このようなカルシウムイオンへイオン交換したものを、窒素吸着法を用いて測定し、比表面積を求める方法は、酸点の対イオンがナトリウムであるナトリウムA型ゼオライトの比表面積を、窒素吸着法を用いて測定する時に、一般的に行われている。
【0020】
そして、上記のような場合、すなわち、粒子内部の空隙の大きさが、窒素ガスより小さい該非晶質アルミノシリケート粒子の場合、カルシウムイオンでイオン交換される前の該粒子の窒素吸着法による比表面積の値は、該粒子の表層部の比表面積(以下、表層部比表面積とも記載する。)を示す。また、カルシウムイオンでイオン交換された後の該粒子の窒素吸着法による比表面積の値から、該カルシウムイオンでイオン交換される前の該粒子の窒素吸着法による比表面積の値を減じて得られる値は、該粒子が有する粒子内部の空隙の比表面積(以下、内部比表面積と記載する。)を示す。該内部比表面積は、40m/g以下、好ましくは20m/g以下、特に好ましくは1〜10m/gである。該内部比表面積が40m/gを超えると、絶縁性樹脂の製造時等に、該非晶質アルミノシリケート粒子が空気中の水分を吸湿し易くなるので、該吸湿による絶縁性樹脂の絶縁性の低下が起こり易くなる。
【0021】
該非晶質アルミノシリケート粒子の水分の含有量は、5重量%以下、好ましくは2重量%以下である。該水分の含有量が、5重量%を超えると絶縁性樹脂の絶縁性が低くなる。
【0022】
また、該非晶質アルミノシリケート粒子は、空気中の水分の吸湿が少ない。該非晶質アルミノシリケート粒子の吸湿性は、例えば、次のような方法により吸湿度を求めることにより、把握することができる。(1)先ず、該非晶質アルミノシリケート粒子を、200±5℃に制御がされた乾燥機中で、2時間乾燥する。(2)乾燥後の該非晶質アルミノシリケート粒子を、乾燥機から取り出し、不活性ガスが充填されたデシケーター中で、25℃まで冷却し、ドライボックス中に設置された秤により、該粒子の重量を測定する。このときの重量を乾燥重量Xgとする。(3)次に、乾燥後の該非晶質アルミノシリケート粒子を、25℃、湿度40%に制御された湿潤機中で、24時間放置する。(4)24時間経過後、吸湿後の該非晶質アルミノシリケート粒子の重量を、25℃、湿度40%に制御された室内に設置された秤により測定する。このときの重量を吸湿重量Ygとする。(5)そして、次式により吸湿度を求める。
吸湿度(%)={(Y−X)/X}×100
【0023】
該非晶質アルミノシリケート粒子の吸湿度は、2%以下、好ましくは1.5%以下である。該吸湿度が2%を超えると、絶縁性樹脂の製造時等に、該非晶質アルミノシリケートが空気中の水分を吸湿し易いので、絶縁性が低くなる。前記ゼオライト等の該吸湿度は、通常、19〜23%であるので、該非晶質アルミノシリケート粒子は、該ゼオライトに比べ、極めて吸湿度が低い。これは、上述したように、該非晶質アルミノシリケート粒子は、粒子内部の空隙の量が極めて少ないので、水分が吸着される部分が少ないためである。
【0024】
該非晶質アルミノシリケート粒子の平均粒径は、0.1〜10μm、好ましくは0.5〜10μmである。該平均粒径が該範囲であることにより、該非晶質アルミノシリケート粒子を樹脂に混合させ混練等により、該樹脂に分散させる際に、該非晶質アルミノシリケート粒子が該樹脂に均一に分散し易いので、絶縁性樹脂の絶縁性が高くなり、また、絶縁性樹脂の製造時間を短縮することができる。一方、該平均粒径が、0.1μm未満だと樹脂へ均一に分散し難く、また、10μmを超えると、絶縁性樹脂が被覆された電線の表面にザラツキ感がでて、該電線の商品価値が低くなる。
【0025】
また、該非晶質アルミノシリケート粒子の平均粒径が上記範囲であることに加え、更に該非晶質アルミノシリケート粒子中、平均粒径の0.5倍〜平均粒径の1.5倍の範囲内にある粒子の体積が、全粒子の体積の70%以上であることが、該粒子が樹脂に更に均一に分散し易くなる点で、特に好ましい。
【0026】
該非晶質アルミノシリケート粒子中のアルミニウム及びケイ素以外の金属(前記一般式(1)中のM)の含有量は、6重量%以下、好ましくは5重量%以下である。該金属は該非晶質アルミノシリケート粒子中で、イオンの状態で存在しているため、該金属の含有量が6重量%を超えると、絶縁性樹脂の絶縁性が低くなる。なお、該金属の含有量は、該非晶質アルミノシリケート粒子を無機酸に溶解させ、次いで、適切な希釈倍率になるように水で希釈して測定溶液得、該測定溶液を原子吸光分析装置により分析し、求めることができる。
【0027】
該非晶質アルミノシリケート粒子は、例えば、ゼオライト粒子を、酸を用いてpH4〜6.8の酸性領域で酸処理し、次いで該酸処理により得られる酸処理物を加熱処理して得られる。
【0028】
該酸処理の原料として用いられる該ゼオライトとしては、特に制限されず、A型ゼオライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、P型ゼオライト、ソーダライト、アナルサイム等が挙げられ、下記一般式(2);
aL・Al・bSiO・cHO (2)
(式中、Lは金属原子を示し、好ましくはナトリウム原子、カリウム原子、コバルト原子、カルシウム原子、マグネシウム原子、バリウム原子、ストロンチウム原子、亜鉛原子である。pの値は、Lが1価の金属原子の場合は2、Lが2価の金属原子の場合は1、Lが3価の金属原子の場合は2、Lが4価の金属原子の場合は1であり、qの値は、Lが1価の金属原子の場合は1、Lが2価の金属原子の場合は1、Lが3価の金属原子の場合は3、Lが4価の金属原子の場合は2である。a、b及びcの値は、Lの種類により異なるが、概ねaの値は0.8〜1.2、bの値は1.8〜5.2、cの値は0.8〜10である。)
で表されるゼオライトである。
【0029】
該酸処理及び該加熱処理により、該酸処理前の該ゼオライト粒子は、その外形を保ったまま非晶質化されるので、該ゼオライト粒子の外形を、所望の非晶質アルミノシリケート粒子の外形と同程度にする。従って、該ゼオライトの平均粒径は、0.1〜10μm、好ましくは0.5〜10μmである。また、該ゼオライト粒子中、平均粒径の0.5倍〜平均粒径の1.5倍の範囲内にある粒子の体積が、全粒子の体積の70%以上とすることが好ましい。
【0030】
該酸処理は、pHが4〜6.8の酸性領域、好ましくは5〜6.5の酸性領域で行われる。該pHが、4未満だと該非晶質アルミノシリケート粒子が溶解・消滅し、また、6.8を超えると該非晶質アルミノシリケート粒子が生成しない。
【0031】
また、該酸処理に用いる該酸としては、特に制限されないが、硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸が好ましい。該酸の濃度としては、特に制限されないが、0.5〜1.5当量/Lが好ましい。該酸の濃度が該範囲にあることにより、酸処理時のpHを4〜6.8の酸性領域に調整し易くなる。
【0032】
該酸処理を行う温度は、特に制限されないが、好ましくは40℃以下、特に好ましくは15〜40℃である。該酸処理を行う温度が高すぎると、該ゼオライトが該酸に溶解する。また、該酸処理を行う時間は、特に制限されないが、好ましくは10〜120分、特に好ましくは10〜60分である。
【0033】
該酸処理を行う方法としては、特に制限されないが、例えば、該ゼオライトを水に加えスラリーを調製し、該スラリーに該酸を滴下する方法が挙げられる。該方法では、該ゼオライトを水に加えた直後の該スラリーのpHは、通常10〜11程度のアルカリ性であるが、該酸を滴下して、該スラリーのpHを4〜6.8にする。そして、該スラリーのpHを4〜6.8に維持したまま、所定の時間、該スラリーの攪拌を行なう。
【0034】
そして、該酸処理により得られる粒子を、ろ過、遠心分離等の方法により、酸処理液から分離し、必要に応じて、洗浄、乾燥等を行う。
【0035】
次いで、該酸処理により得られる酸処理物を加熱処理する。該加熱処理を行う温度は、200〜500℃、好ましくは300〜400℃である。また、該加熱処理を行う時間は、1〜5時間、好ましくは2〜3時間である。そして、該加熱処理を行うことにより、該非晶質アルミノシリケート粒子を得ることができる。
【0036】
このようにして該酸処理及び該加熱処理を行って得られる非晶質アルミノシリケート粒子は、該粒子のXRD分析を行って得られるX線回折チャートに、回折ピークが全く認められないか、又は回折ピークが認められたとしても、該酸処理を行う前の該ゼオライト粒子の回折ピークに比べ、ピーク高さが1/2以下であり、実質的に非晶質である。また、他の物性は、前述した非晶質アルミノシリケートの物性と同様である。
【0037】
本発明の絶縁性向上剤組成物は、前記非晶質アルミノシリケート粒子を含有する。該絶縁性向上剤組成物中の該非晶質アルミノシリケート粒子の含有量は、特に制限されないが、通常、2.5〜95重量%、好ましくは5〜85重量%であり、特に好ましくは5〜75重量%である。
【0038】
該絶縁性向上剤組成物は、非鉛系安定剤を含有することができる。該非鉛系安定剤としては、絶縁性樹脂の非鉛系安定剤として通常使用されているものであれば特に制限されず、例えば、非鉛系無機金属化合物、エポキシ化合物、有機ホスファイト化合物、フェノール類等が挙げられる。更に具体的には、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、有機スズマレエート、有機スズメルカプタイド等が挙げられる。また、該非鉛系安定剤は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。これらのうち、ステアリン酸亜鉛及びステアリン酸カルシウムの混合系が好ましい。
【0039】
該絶縁性向上剤組成物中の該非鉛系安定剤の含有量は、特に制限されないが、好ましくは10〜60重量%、特に好ましくは15〜50重量%である。
【0040】
また、本発明の絶縁性向上剤組成物は、必要に応じて、安定化助剤を含有することができる。該安定化助剤としては、特に制限されないが、ハイドロタルサイト、ゼオライト等の無機系安定化助剤、又はβ−ジケトン、ソルビトール、マンニトール、ペンタエリスリトール、エポキシ化大豆油等の有機系安定化助剤が挙げられ、好ましくはハイドロタルサイト、エポキシ化大豆油である。
【0041】
また、該絶縁性向上剤組成物は、該非鉛系安定剤又は該安定化助剤の他に、絶縁性樹脂に用いられる添加剤を、必要に応じて含有することができる。
【0042】
本発明の絶縁性樹脂組成物は、前記非晶質アルミノシリケート粒子を含有する。該非晶質アルミノシリケート粒子が含有される樹脂としては、通常絶縁性樹脂に用いられている樹脂であれば特に制限されず、例えば、塩素含有樹脂、ポリオレフィン樹脂、複数のオレフィン類の共重合体樹脂、塩化ビニル系又はオレフィン系の熱可塑性エストラマー等が挙げられる。それらのうち、塩素含有樹脂及び複数のオレフィン類の共重合体樹脂が好ましい。
【0043】
該非晶質アルミノシリケート粒子が含有される塩素含有樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−ブタジエン重合体、塩化ビニル−イソプレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−ウレタン共重合体等の塩化ビニル系樹脂;複数の該塩化ビニル系樹脂のブレンド品;該塩化ビニル系樹脂と他の樹脂のブレンド品等が挙げられる。該塩化ビニル系樹脂とブレンドされる他の樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ−3−メチルブテン等のα−オレフィン重合体;エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン共重合体;ポリスチレン;スチレンと無水マレイン酸との共重合体、スチレンとブタジエンとの共重合体、スチレンとアクリロニトリルとの共重合体等スチレンと他の単量体との共重合体;アクリル樹脂;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体;メタクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン共重合体;ポリウレタン等が挙げられる。
【0044】
該非晶質アルミノシリケート粒子が含有されるポリオレフィン樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチルペンテン等が挙げられる。
【0045】
該非晶質アルミノシリケート粒子が含有される複数のオレフィン類の共重合体樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。
【0046】
該絶縁性樹脂組成物中の該非晶質アルミノシリケート粒子の含有量は、該非晶質アルミノシリケート粒子が含有される樹脂100重量部に対して0.2〜5重量部、好ましくは0.5〜3である。該含有量が、0.2重量部未満だと絶縁性が十分ではなく、また、5重量部を超えると該非晶質アルミノシリケート粒子による絶縁性向上効果が飽和するため、添加量に見合う効果が得られない。また、該絶縁性樹脂組成物は、前記絶縁性向上剤組成物を該非晶質アルミノシリケート粒子が含有される樹脂に配合することによっても製造できるが、この場合、該絶縁性樹脂組成物中の該非晶質アルミノシリケート粒子の含有量が、所望の含有量となるように、該絶縁性向上剤組成物の配合量を調整する。
【0047】
該絶縁性樹脂組成物は、他に必要に応じて、非鉛系安定剤、可塑剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、架橋剤、充填剤、顔料、発泡剤、帯電防止剤、プレートアウト防止剤、表面処理剤、滑剤、蛍光剤、光劣化剤、防黴剤、殺菌剤、非金属安定剤、加工助剤、離型剤等を含有することができる。
【0048】
例えば、該非晶質アルミノシリケート粒子が含有される樹脂が、該塩素含有樹脂である場合、該絶縁性樹脂組成物は、有機カルボン酸類の金属塩、フェノール類の金属塩又は有機リン酸類の金属塩、非鉛系安定剤、可塑剤等を含有することができる。
【0049】
該有機カルボン酸類の金属塩、フェノール類の金属塩又は有機リン酸類の金属塩を構成する金属としては、特に制限されないが、例えば、リチウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、ストロンチウム、亜鉛、セシウム、アルミニウム、錫等が挙げられる。
【0050】
該有機カルボン酸の金属塩を構成する有機カルボン酸としては、特に制限されないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、2−エチルヘキシル酸、ネオデカン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘニン酸、モンタン酸、安息香酸、モノクロル安息香酸、p−第三ブチル安息香酸、ジメチルヒドロキシ安息香酸、3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、トルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、クミン酸、n−プロピル安息香酸、アミノ安息香酸、N,N−ジメチルアミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸、サリチル酸、p−第三オクチルサリチル酸、エライジン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、オクチルメルカプトプロピオン酸等の一価カルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フタール酸、イソフタール酸、テレフタール酸、ヒドロキシフタール酸、クロルフタール酸、アミノフタール酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、メタコン酸、イタコン酸、アコニット酸、チオジプロピオン酸等の二価カルボン酸、又は該二価カルボン酸のモノエステル若しくはモノアマイド化合物;ブタントリカルボン酸、ヘミメリット酸、トリメリット酸、メロファン酸等の三価カルボン酸、又は該三価カルボン酸のジエステル;ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸等の四価カルボン酸、又は該四価カルボン酸のトリエステル化合物等が挙げられる。
【0051】
該フェノール類の金属塩を構成するフェノール類としては、特に制限されないが、例えば、第三ブチルフェノール、ノニルフェノール、ジノニルフエノール、シクロヘキシルフェノール、フェニルフェノール、オクチルフェノール、フェノール、クレゾール、キシレノール、n−ブチルフェノール、イソアミルフェノール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、イソオクチルフェノール、2−エチルヘキシルフェノール、第三ノニルフェノール、デシルフェノール、第三オクチルフェノール、イソヘキシルフェノール、オクタデシルフェノール、ジイソブチルフェノール、メチルプロピルフェノール、ジアミルフェノール、メチルイソフキシルフェノール、メチル第三オクチルフェノール等が挙げられる。
【0052】
該有機リン酸類の金属塩を構成する有機リン酸類としては、特に制限されないが、例えば、1又は2個の置換基を有するリン酸、ピロリン酸、亜リン酸等の有機リン酸類が挙げられ、該置換基としては、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル等が挙げられる。
【0053】
該絶縁性樹脂組成物に含有される非鉛系安定剤は、前記絶縁性向上剤組成物に含有される非鉛系安定剤と同様である。
【0054】
該絶縁性樹脂組成物に含有される可塑剤としては、特に制限されず、例えば、ジブチルフタレート、ブチルヘキシルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジオクチルテレフタレート等のフタレート系可塑剤;ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジ(ブチルジグリコール)アジペート等のアジペート系可塑剤;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリ(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリ(ブトキシエチル)ホスフェートオクチルジフェニルホスフェート等のホスフェート系可塑剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の多価アルコールと、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フタール酸、イソフタール酸、テレフタール酸等の二塩基酸のポリエステル系可塑剤;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化桐油、エポキシ化魚油、エポキシ化牛脂油、エポキシ化サフラワー油、エポキシ化ステアリン酸のメチルエステル、ブチルエステル又は2−エチルヘキシルエステル、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化トール油脂肪酸エステル、エポキシ化アマニ油脂肪酸エステル等のエポキシ系可塑剤;テトラヒドロフタール酸系可塑剤;アゼライン酸系可塑剤;セバチン酸系可塑剤;ステアリン酸系可塑剤;クエン酸系可塑剤;トリメリット酸系可塑剤等が挙げられる。
【0055】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0056】
(非晶質アルミノシリケート粒子の製造)
500mlのビーカーにNa−A型ゼオライト50gを秤量し、水200gを加えてゼオライト濃度20%のスラリー250gを調製した。なお、このスラリーのpHは11.7であった。スラリーを攪拌しながら、ここに4%硫酸250gを約5分間で徐々に添加し、添加終了後1時間攪拌を継続し、酸処理を行った。酸処理の間、スラリーのpHは常に4〜6.8の範囲内に保持されていた。次いで常法により濾過、水洗、乾燥、粉砕を行い、Na−A型ゼオライトの酸処理品を得た。この酸処理品のXRD分析を行ったところ、回折ピークは全く認められず非晶質であることが確認できた。この酸処理品を300℃で2時間加熱・脱水することにより非晶質アルミノシリケート粒子(A)を得た。該非晶質アルミノシリケート粒子(A)の分析データを表1に示す。また、該Na−A型ゼオライトについても、同様の分析を行った結果を表1に示す。
【0057】
(カルシウムイオンによるイオン交換)
該非晶質アルミノシリケート粒子(A)150gを採取し、水に加え、スラリー濃度が15%のスラリー 1Lを調製した。該スラリーに、塩化カルシウム22.8gを加え、25℃で、2時間攪拌し、イオン交換を行なった。その後、該非晶質アルミノシリケート粒子を、ろ別し、更に水で洗浄し、乾燥して、カルシウムイオンでイオン交換された非晶質アルミノシリケート粒子を得た。
【0058】
(比表面積の測定)
上記カルシウムイオンによるイオン交換を行う前後の該非晶質アルミノシリケート粒子(A)について、窒素吸着法による比表面積の測定を、島津製作所製のフローソーブII2300型を用いて行った。
【0059】
(吸湿度の測定)
先ず、該非晶質アルミノシリケート粒子(A)10.00gを、200±5℃に制御がされた乾燥機中で、2時間乾燥した。乾燥後の該非晶質アルミノシリケート粒子(A)を、乾燥機から取り出し、不活性ガスが充填されたデシケーター中で、25℃まで冷却し、ドライボックス中に設置された秤により、該粒子の重量を測定した。このときの重量(乾燥重量:X)は9.94gであった。次に、乾燥後の該非晶質アルミノシリケート粒子(A)を、25℃、湿度40%に制御された湿潤機中で、24時間放置した。24時間経過後、吸湿後の該非晶質アルミノシリケート粒子(A)の重量を、25℃、湿度40%に制御された室内に設置された秤により測定した。このときの重量(吸湿重量:Y)は10.01gであった。そして、次式により吸湿度を求めた。
吸湿度(%)={(Y−X)/X}×100
【0060】
(Na含有量の測定)
該非晶質アルミノシリケート(A)1.00gを精秤して100mlメスフラスコに入れ、1N−HClを加えて該非晶質アルミノシリケート粒子(A)を溶解したのち、全溶を100mlとした。この試料溶液を更に100倍に希釈したのち、原子吸光分析によりNaを分析した。測定値に希釈倍率を乗じてNa含有量を算出したところ、3.5重量%であった。
【0061】
【表1】

1)平均粒径の0.5倍〜平均粒径の1.5倍の範囲内にある粒子の体積数が、全粒子の体積に占める割合。
【0062】
上記の結果、該非晶質アルミノシリケート粒子(A)の比表面積(21.2m/g)は、該Na−A型ゼオライトの比表面積(768m/g)に比べ、極めて小さかった。また、該非晶質アルミノシリケート粒子(A)は、表層部比表面積が3.2m/g、内部比表面積が18.0m/g(21.2−3.2=18.0)であり、該Na−A型ゼオライトは、表層部比表面積が3.4m/g、内部比表面積が765m/g(768−3=765)であった。
【0063】
(実施例1及び2、比較例1〜3)
(絶縁性向上剤の製造)
0.5Lの容器に、表2に示す含有量になるように各成分を加え、該容器中で振り混ぜ、絶縁性向上剤組成物を得た。
【0064】
使用した各成分は、以下の通りである。
・ステアリン酸亜鉛(1級試薬、関東化学社製)
・ハイドロタルサイト(アルカマイザー、協和化学社製)
【0065】
【表2】

*含有量は、重量部である。
【0066】
(実施例3及び4、比較例4〜6)
上記絶縁性向上剤組成物、塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)(ZEST100Z、新第一塩ビ社製)、DOP可塑剤(フタル酸ジオクチル、1級試薬、純正化学社製)、及びエポキシ化大豆油(ファインエステルR−2000A、ミヨシ油脂社製)を、表3に示す配合で165℃で5分間ロール混練したのち、1mm厚さにシート化して、絶縁性シートを得た。得られた絶縁シートへの絶縁性向上剤組成物の分散性を目視にて観察した。該分散性は、直径が0.1mm以上の大きさの凝集が、全く確認されなかった場合は「○」、1箇所以上確認された場合は「×」とした。得られた絶縁性シートの体積固有抵抗率を、絶縁抵抗率計(YHP 4329A、横河ヒューレットパッカード社製)を用いて、電圧を500V×60秒印加して測定した。その結果を表3に示す。なお、表3中、体積固有抵抗値は、絶縁性シートの任意の3箇所の測定値の平均値である。
【0067】
【表3】

1)絶縁性向上剤組成物の配合量から、非晶質アルミノシリケート又はNa−A型ゼオライトの含有量を算出した。
【0068】
(実施例5及び6、比較例7〜9)
塩化ビニル樹脂に代えてエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA樹脂)(ノバテックLV540、)とし、各成分の配合を表3に示す配合に代えて表4に示す配合とし、絶縁抵抗率計で印化する電圧を500V×60秒に代えて1000V×10秒とする以外は、実施例3と同様にして行った。その結果を表4に示す。なお、表4中、体積固有抵抗値は、絶縁性シートの任意の3箇所の測定値の平均値である。
【0069】
【表4】

1)絶縁性向上剤組成物の配合量から、非晶質アルミノシリケート又はNa−A型ゼオライトの含有量を算出した。
【0070】
以上の結果より、非晶質アルミノシリケート粒子(A)を含有する絶縁性樹脂組成物は、Na−A型ゼオライトを含有する絶縁性樹脂組成物と比較して、体積固有抵抗値が大きく、本発明の非晶質アルミノシリケート粒子が、絶縁性樹脂に高い絶縁性を付与することができることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
比表面積が1〜50m/g、水分の含有量が5重量%以下、平均粒径が0.1〜10μmである非晶質アルミノシリケート粒子であって、絶縁性向上剤として用いることを特徴とする非晶質アルミノシリケート粒子。
【請求項2】
前記非晶質アルミノシリケート粒子中、平均粒径の0.5倍〜平均粒径の1.5倍の範囲内にある粒子の体積が、全粒子の体積の70%以上であることあることを特徴とする請求項1記載の非晶質アルミノシリケート粒子。
【請求項3】
ゼオライト粒子を、酸を用いてpH4〜6.8の酸性領域で酸処理し、次いで該酸処理により得られる酸処理物を加熱処理して得られる非晶質アルミノシリケート粒子であって、絶縁性向上剤として用いることを特徴とする非晶質アルミノシリケート粒子。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項記載の非晶質アルミノシリケート粒子を含有することを特徴とする絶縁性向上剤組成物。
【請求項5】
請求項1〜3いずれか1項記載の非晶質アルミノシリケート粒子を含有することを特徴とする絶縁性樹脂組成物。



【公開番号】特開2006−8843(P2006−8843A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187651(P2004−187651)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000230593)日本化学工業株式会社 (296)
【Fターム(参考)】