説明

非晶質CDDO−MEを含有する遅延放出性経口投薬組成物

非晶質バルドキソロンメチルの粒子を純粋な形態または固体分散物の形態で、親水性結合剤の粒子と混合して含有する医薬製剤は、いくつかある特性の中で、低いCmaxを望ましく示す。かかる製剤は、バルドキソロンメチルの結晶形態をベースとする製剤に比べ、経口バイオアベイラビリティが高いという利点を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年2月13日に出願した米国仮出願第61/152,608号(その内容は、参照によりその全体を本明細書へ組み入れるものとする)の35 U.S.C. § 119(e)下の優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
合成トリテルペノイドバルドキソロンメチルは、CDDO-Meおよび「RTA 402」としても知られており、前臨床研究およびヒト臨床試験において有効な抗炎症特性および抗腫瘍特性が明らかになっている。特に、バルドキソロンメチルは進行癌の患者で有意な抗癌性活性を示し、また、2型糖尿病による慢性腎疾患の罹患患者における腎臓機能、インシュリン抵抗性、血糖コントロールの測定値、および全身性循環器疾患を改善する能力を示した。
【0003】
これらの研究では、バルドキソロンメチルは、様々な用量で、1日1回、結晶形態(「形態A」)で経口投与された。これらの研究で注目された臨床上の有意な効果に加えて、形態Aのバルドキソロンメチルには優れた忍容性プロファイルが確認され、同時に注意すべき薬剤関連の副作用はほとんどなかった。
【0004】
しかし、これらの研究から得られた薬物動態データからは、形態Aのバルドキソロンメチルは、経口バイオアベイラビリティが相対的に低いことが示唆された。折よく、バルドキソロンメチルの非晶質形態(「形態B」)も確認されたが、これは形態Aに比べると経口バイオアベイラビリティが顕著に優れていた。
【0005】
改善された経口バイオアベイラビリティが製剤の望まれる特性であることは十分に理解されよう。なぜなら、それによって、活性物質の投与当たりのコストが削減され、また、所望の効果を得るための既知の薬剤最小用量を投与するという一般的な医療原則と一致しているからである。逆に、有望な候補薬剤の経口バイオアベイラビリティが不十分となる原因の低水溶解性は、医薬品業界が直面している重要な課題として認識されている。
【0006】
実際、初期開発時の化合物の推定25〜30%は、溶解性が低いためにバイオアベイラビリティが不十分である。米国食品医薬品局は、溶解性および膜透過性に従って、経口投与を目的とする薬剤を分類する生物医薬品分類システム(BCS:biopharmaceutics classification system)を導入した。溶解性は不十分であるが膜浸透性には優れる薬剤は候補薬剤の大部分を占めており、BCS第2類薬剤と呼ばれる。経口投与を目的としたこの分類の薬剤に関して、有効なバイオアベイラビリティの改善は、製剤物質の溶解性プロファイルを、単独で、あるいは適切な医薬組成物中の機能性添加剤の使用を介して変更することにより、場合によっては対処することができる。
【0007】
いくつかの技術が考案され、安全かつ有効な能性を有する特定の候補薬剤の溶解性が改善された。探索されたこうした技術の1つは、単独で、またはポリマーマトリクス中で、製剤物質の非晶質形態を使用して薬剤を製剤化するものである。対応する製剤物質の結晶形態の水溶解性よりも優れた非晶質形態の水溶解性の改善が既に報告されているが、こうした系は本質的に不安定であり、より熱力学的に安定したそれらの結晶状態に戻る場合がある。その結果、許容の品質保持を有する製剤を生産することができる製剤系を設定するためには、大掛かりな研究や実験作業を実施することが多い。
【0008】
一般に、生理学的溶液中の溶解速度および溶解性は上部消化管系で高いので、非晶質製剤物質を含有する製剤は、開発可能であるならば、対応する薬剤を含有する結晶形態の製剤と比べると、in vivoで異なって作用をする場合が多い。非晶質製剤物質を含有する製剤では、バイオアベイラビリティ増強が得られるとともに、血中濃度曲線下面積(AUC)値が対応する結晶形態の製剤物質を含有する製剤よりも相当用量基準で数倍高いことが報告されている。一度全身循環に吸収された非晶質形態の薬剤が類似の代謝、分布および排出プロファイルを示すことは珍しいことではないが、最高血漿濃度までの時間(Tmax)および確認された最高血中濃度(Cmax)は、それらの結晶性相当薬剤と比べると、非晶質薬剤を含有する製剤では著しく変化していることが多い。
【0009】
薬剤が毒性を示すか、特定の限界血漿濃度を超過する有害事象の頻度増加に関係しているならば、治療血漿レベルをこうした限界レベル以下に安全に維持することは極めて重要となり得る。したがって、薬剤が広範囲の治療濃度域を有し、それ以外には安全かつ有効であったとしても、その薬剤が長期間投与されることになっているとすれば、CmaxまたはTmaxプロファイルのコントロールがとても重要である。さらにほとんどの場合、特定の血漿濃度プロファイルが安全性および有効性の望ましいプロファイルに関連しているとすると、同様の活性成分を含有する代替製剤が同程度の血漿濃度プロファイルを得るのに有用である。
【発明の概要】
【0010】
上記を鑑みて、本発明は、その態様の1つによれば、非晶質バルドキソロンメチルからなる粒子(A)を、少なくとも1種の親水性結合剤(例えば、セルロース系添加剤)からなる粒子(B)と混合して含んでなる固体剤形であって、粒子(A)が治療上有効な量のバルドキソロンメチルを構成する、固体剤形を提供する。好適なセルロース系添加剤のクラスの例は、C3-C10アルキルヒドロキシメチルセルロース、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび酢酸セルロース;アリールヒドロキシメチルセルロース;ならびに置換アリールヒドロキシメチルセルロースである。あるいは、親水性結合剤は、天然の炭水化物ポリマーまたはアニオン性ポリマーであってもよい。
【0011】
本発明の一実施形態においては、粒子(A)は、本質的には非晶質バルドキソロンメチルから成る。別の実施形態においては、粒子(A)は、ガラス質マトリックス中の非晶質バルドキソロンメチルの固体分散物から成り、これは、例えば、バルドキソロンメチルとメタクリル酸コポリマーの混合物を噴霧乾燥させることを含む方法の生成物として得ることができる。こうした噴霧乾燥は、例えば、バルドキソロンメチルとメタクリル酸コポリマーの4:6混合物を使用することを含む。
【0012】
本発明によれば、本明細書に記載の固体剤形中の親水性結合剤の割合は、全製剤の約1%〜約40%(w/w)、例えば、全製剤の約2%〜約20%(w/w)、約4%〜約10%(w/w)、約5%〜約7.5%(w/w)、または約7%〜約7.5%(w/w)であってもよく、あるいは全製剤の約7%(w/w)であってもよい。
【0013】
本発明の製剤は、親水性結合剤非含有の製剤に比べ、Cmaxプロファイルに変化を示す。より詳しくは、本発明に係る製剤では、非晶質分散物は含有するが親水性結合剤は非含有の比較対照製剤で得られたCmaxよりも有意に低いCmaxが得られる。本発明に係る製剤は、バルドキソロンメチルの結晶形態をベースとした製剤に比べて高い経口バイオアベイラビリティの利点を保持する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】異なるRTA-402製剤をカニクイザルへ単回経口投与することにより得られたバイオアベイラビリティデータのグラフ表示である。
【図2】それぞれ5.0%および7.5%のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する異なるRTA 402製剤で、カニクイザルを使用して得られた相対的な薬物動態データのグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
バルドキソロンメチルの非晶質分散物(形態B)を含有する各種製剤による前臨床試験は、その経口バイオアベイラビリティの改善が形態A物質に対するCmaxの有意な増加、並びに、相当用量における形態Aのものとは顕著に異なる全血漿濃度曲線に関連していたことを示す。臨床試験の形態Aバルドキソロンメチルで得られた有意な効果および優れた忍容性を考慮し、本発明者らは、形態Aに関連したものにより酷似した血漿濃度曲線を生じながら、改善された経口バイオアベイラビリティの利点を保持するバルドキソロンメチルの非晶質分散物を含有する製剤を同定することを試みた。その後の臨床試験におけるこうした製剤の効果および忍容性プロファイルが形態Aの物質を使用する試験で確認されているものと一致していることについて大きな確信がある。
【0016】
この研究によって、本発明者らは、添加剤として1種または複数の親水性結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース系結合剤)を含有するバルドキソロンメチルの固体分散物の改質製剤が所望の特性を示すことを見出した。これらの親水性結合剤は溶解速度をモジュレートし、形態A物質よりも数倍高い経口バイオアベイラビリティを提供するだけでなく、経口投与後に、従来の形態B製剤よりも低いCmaxをもたらすものと考えられる。従って、本発明の製剤により、形態A物質に関連する全血漿濃度曲線(PCC)により近いPCCが得られる。
【0017】
動物試験において、親水性結合剤と混合した形態Bの微粉末化固体分散物をベースとした製剤は、相当用量の結晶性バルドキソロンメチルを含有する製剤に比べて、Cmax値が有意に高いことが明らかになった。したがって、親水性結合剤を添加することで、結晶形態に対する、バルドキソロンメチルのこうした非晶質形態の優れたバイオアベイラビリティは否定されない。
【0018】
質的に同様の結果は、親水性結合剤の粒子と混合した純粋の形態B粒子の本発明による製剤に同様に適しているはずである。これに関して、「純粋な」とは、薬剤の医薬上の特性に影響を及ぼす可能性のあるあらゆる物質(添加剤を含む)を含まない非晶質バルドキソロンメチルの存在を意味する。この「純粋な」の使用は、完全な純度を示すことを意図するものではなく、むしろ、それは、薬剤に対して許容可能な純度の正常標準と一致する。この点に関する同意語フレーズは、本発明に係る製剤の粒子を形態Bから「本質的に成る」ものとみなす。形態Bからなる固体分散物では、ガラス形成添加剤は、全材料のかなりの割合を構成し、全薬理学的性質の測定において重要である。
【0019】
バルドキソロンメチルの各非晶質形態は、純粋な形態Bでも、ガラス形成添加剤と結合している形態Bを含有する固体分散物であっでも、示差走査熱量測定法を介して測定可能な、単一ガラス転移温度(Tg)を特徴とする。さらにバルドキソロンメチルの各非晶質形態は、非晶質形態の存在を示す、X線粉末回折(XRPD)によって確認される、特徴的な広域ハロピークを有する。
【0020】
本発明の一態様により用いられるバルドキソロンメチルの固体分散物は、添加剤として用いられる、任意の各種ガラス形成物質により製造することができる。したがって、本発明の一実施形態は、バルドキソロンメチルのこうした固体分散物の粒子が、場合により他の添加剤の粒子と一緒に、親水性結合剤の粒子と混合される製剤である。得られた混合物は、経口投与または他の手段によって患者に投与される場合、同量のバルドキソロンメチルの固体分散物を含有するが親水性結合剤を含んでいない製剤に比べ、血漿濃度曲線に変化が生じる。
【0021】
この変化した血漿濃度曲線は、親水性結合剤を含んでない製剤に対し、Cmaxが低いことを特徴とする。同様に、本発明の別の態様によれば、純粋な形態Bのバルドキソロンメチル粒子を親水性結合剤の粒子と混合すると、血漿濃度曲線に同様の効果が生じる。すなわち、親水性結合剤を含まない同等の製剤に対し、Cmaxが低い。
【0022】
本発明によれば、非晶質バルドキソロンメチルの固体分散物を得るためには、様々な分取技術を用いることができる。例えば、これに関して好適であるのは、様々な従来の熱的方法(例えば、ホットメルト押し出し法)、溶媒法、および熱/溶媒法(例えば、粒剤の噴霧乾燥または流動浸漬法)である。
【0023】
また本発明により好ましいのは、バルドキソロンメチル(活性成分)のガラス形成添加剤に対する比が下記に参照として載せた4:6の比以外である。使用するガラス形成添加剤の機能および生産方法に応じて、好適な比は、例えば、約1:19から約2:1の範囲で大いに変わる場合がある。
【0024】
上記のように、所定の添加剤がガラス転移温度(Tg)を有するガラス質固体マトリックスを形成し得る限り、様々な任意のガラス形成添加剤が本発明での使用に適する。こうした添加剤の具体例は、セルロース誘導体(例えばヒドロキシプロピルセルロース)、アクリル酸誘導体および他の合成高分子(例えば、ポリビニルピロリドンおよびコポビドン)、有機酸塩、ならびにタンパク質およびペプチド(例えば、アルブミンおよびポリアラニン)である。
【0025】
本発明の固体剤形は、経口投与以外によって投与することもできる。これらの別の好適な投与経路としては、経鼻投与、経肺投与、口腔粘膜投与および経皮投与の送達が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
形態B(非晶質)バルドキソロンメチルの固体分散物は、純粋な形態Bバルドキソロンメチルを含有する製剤と比べると、優れた経口バイオアベイラビリティを示した(データは示さず)。さらに、両タイプの非晶質物質は、バルドキソロンメチルの結晶形態と比べると、大幅に改良された経口バイオアベイラビリティを示した。したがって、本発明は、その態様の1つに、混合物が下に例示した製剤に類似した全血漿濃度プロファイルを達成するように、1種または複数の親水性結合剤と混合した純粋な形態Bバルドキソロンメチルを含有する製剤を包含する。こうした混合は、親水性結合剤が別の状況においてはガラス形成添加剤として有用であるかどうかにかかわらず、固体分散物を生じない。これは、本発明によるこの混合方法が、固体分散物の形成に必要とされるステップ、例えば、溶媒中への両物質の溶解と、その後の噴霧乾燥を含んでいないことによる。
【0027】
本発明による、純粋な形態Bバルドキソロンメチルを含有する製剤は、所望の血漿濃度プロファイルを達成するために、形態Bの固体分散物を含有する製剤と比較した場合、親水性結合剤と活性剤の異なる比率が必要となり得る。例えば、上記のように、活性成分に対して少量の親水性結合剤は、同等の量の形態B物質を含有する固体分散物に対し、純粋な形態Bの物質の低いバイオアベイラビリティを補完するのに必要となり得る。さらに一般には、活性剤に対する親水性結合剤(群)の比率が高いか低いかは、使用される親水性結合剤(群)の性質および製剤中に存在し得る他の添加剤の効果に応じて、純粋な形態B物質で所望する結果を達成するために必要とされ得る。
【0028】
本発明の剤形は、典型的には、治療上有効な量の非晶質バルドキソロンメチルを含有する。この点に関し、「治療上有効な」量とは、血液細胞を循環させる際にNrf2シグナル経路を活性化するのに十分な量である。Ichikawaら, (2009) PloS One, 4(12):e8391を参照されたい。さらに一般には、治療上有効な量は、患者の臨床パラメーターを参照することにより、経験的に決定することができる。
【0029】
本発明を説明するために、非晶質バルドキソロンメチル含有組成物を噴霧乾燥分散剤(SDD)として調製した。形態Bの固体分散物、SDDの各組成物は、バルドキソロンメチル(形態B)とガラス形成添加剤、メタクリル酸コポリマータイプC、USPを4:6の比で含有している噴霧乾燥溶液により生産した。製剤は、下記の表1に示した、他の添加剤と一緒に、所定のSDDの得られた粒子をヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの親水性結合剤と混合し、続いて混合物のローラー圧縮を行い、粉砕し、このようにして得られた粒剤をカプセル化することにより調製した。
【0030】
大まかに言えば、この具体的な方法の最終生産物は粒状形態の混合物であり、各粒剤は、(i)形態Bのバルドキソロンメチルを含有する非晶質分散剤の粒子、(ii)親水性結合剤(群)の粒子、および(iii)他の添加剤の粒子を含有する。類似の方法を使用し、出発物質の性質を変えて(すなわち、形態Bを含有する固体分散剤よりもむしろ純粋な形態B)、粒状形態の混合物を生産することができる。この実例においては、各粒剤は、(1)純粋な形態Bの粒子、(2)親水性結合剤の粒子(群)、および(3)他の添加剤(群)の粒子を含有し得る。
【0031】
表1に示したように、基準「製剤 #1」(図1には「Eudragit SDD」として明示)はコポビドン(崩壊剤)含有していた。この基準製剤への変更製剤(コポビドンを含有していない各変更製剤)を生産し、0%〜40重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、代表的なセルロース系親水性結合剤サブクラスを含有していた。添加剤ラクトースおよび微結晶性セルロースの割合は適宜下方へ調節した(表1)。
【表1】

【0032】
表2は、50mgの活性成分(微粉末化された結晶性(形態A)バルドキソロンメチル)を含有するカプセルの成分を詳述する。表3では、この製剤は「CTM」と表示している。
【表2】

【0033】
薬物動態試験は、平均体重量が3kgの絶食カニクイザルで実施した。表1に示した製剤で処置した動物に、単一カプセルを経口胃管栄養により投与した。表2に示した微粉末化結晶形態で処置した動物においては、2個のカプセルを経口胃管栄養により投与した。表1に示した基準製剤および変更製剤の投与量は約10.0mg/kgであったが、薬剤の微粉末化結晶形態を含有する製剤組成物の投与量は33.3mg/kgであった。
【0034】
図1に示した時点で血液を各動物から採取し、有効なLC/MS/MS生物学的分析試験法を使用し、バルドキソロンメチル含有量について各試料を定量した。得られた薬物動態データを表3に示す。
【表3】

【0035】
図1は、形態Bのバルドキソロンメチを含有するSDD(「RTA 402」で表記)にHPMCを使用すると、薬剤のin vivoにおける薬物動態プロファイルが変化することを示す。例えば、HPMCの濃度が高くなると、所与の投与から達するRTA 402の平均血中濃度が低くなる。したがって、20%w/wのHPMC濃度は、コントロールと比較した場合、Cmaxを>50%まで低下させた。
【0036】
上記の5%HPMC製剤の性能に基づいて、in vitro溶解試験は、下記の表に示した2.5%、5.0%または7.5% HPMCを含む形態Bの製剤で行った。これらの試験結果からは、HPMCの割合が高いほど溶解速度が遅くなる関係があることが示唆された。
【表4】

【0037】
これらの結果を考慮して、カニクイザルでの相対的薬物動態試験に5.0%および7.5%のHPMC製剤を、表2で記載した結晶性微粉末化形態Aバルドキソロン製剤の形態のコントロールと共に選択した。それぞれのHPMC/形態B製剤は、30mgまたは10mgのいずれかの用量で経口胃管栄養を介してカプセルで投与した。形態Aのコントロール製剤は、100mgの用量で投与した。結果(RTA 402の血漿濃度vs.時間)を図2に示す。
【0038】
また、形態Bバルドキソロンメチルを含有するHPMC製剤をヒト臨床研究用にも調製した。バルドキソロンメチルカプセルは15mgの濃度で製剤化した。表4は、1つのカプセルベース当たりの使用成分を表す。表5は、パーセンテージベースの組成を示す。
【0039】
上記のように、SDDは40%のバルドキソロンメチル医薬品有効成分(API)を含有していた。その結果、カプセル1個当たりに37.5mgのSDDを使用した場合、カプセル当たりのバルドキソロンメチルは15mgであった。
【0040】
表4および表5において、「SMCC」はケイ酸化微結晶性セルロース(公定添加剤からなる共同加工添加剤)を表す。SMCCは、FDA Inactive Ingredients Guideに記載されている。
【表5】

【表6】

【0041】
本発明の形態B製剤が高いバイオアベイラビリティを維持し、かつヒトにおいて所望のPCCを達成することができることを証明するため、臨床薬物動態試験を健康なボランティアで実施した。ボランティアには、150mgの結晶性バルドキソロンメチル(形態A;3個の50mgカプセル)または30mgの非晶質バルドキソロンメチル(形態B;2個の15mgカプセル)のいずれかを単回投与した。続いて、繰り返しの血液サンプルを得て、薬剤の血漿濃度を分析した。10日間の休薬期間後、それぞれの患者は、最初投与されなかった薬剤の形態が投与された。血漿濃度プロファイルは、第2回の処置後に各患者について再度測定した。
【表7】

【0042】
表6に示したように、48時間AUC値により測定した場合、形態B製剤は、結晶性製剤に似た総合曝露プロファイルを達成しながら、より高いバイオアベイラビリティを示した。
【0043】
上記においては、本発明の具体的な組成物、HPMCはセルロース系結合剤のサブクラス(別のC3-C10アルキルおよびアリール置換セルロース誘導体を含む)を説明しているが、これは本発明での使用に好適である。より大きなカテゴリーの親水性結合剤のこのサブクラスは、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび酢酸セルロースによって同様に説明される。
【0044】
本発明の目的において、結合剤として好ましいのはヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのアルキルセルロース誘導体であり、これは各種分子量範囲で市販されている。また、他の親水性結合剤は、次のようなものが使用できる:(a)天然の炭水化物ポリマー、例えばデンプンおよびα化デンプン;(b)アニオン性ポリマー、例えばアリルスクロースまたはアリルペンタエリトリトールと架橋結合されているアクリル酸ホモポリマー;(c)乳酸のポリマーまたは乳酸およびグルタミン酸のコポリマー;(d)ゼラチンまたは加工ゼラチン;ならびに、(e)アミノ置換炭水化物ポリマー、例えばキトサン。
【0045】
本発明者らは、いかなる特定のメカニズムまたは理論にとらわれずに、上記で述べた各種の親水性結合剤が、少なくとも3つの方法で非晶質バルドキソロンメチルの薬物動態プロファイルを変化させる(各方法は、溶解の遅延に寄与する)と考えている。第1に、HPMCにより説明した親水性物質(群)は、上記のように、ローラー圧縮法の間の結合剤として機能し、得られた粒子を互いに保持し、それらの主要粒子間により強い結合を形成する。その結果、溶解中、ローラー圧縮により形成された粒剤は、他の方法の場合に比べてよりゆっくりと分解する。第2に、溶解中、1種または複数の結合剤は形態Bを含有する粒子(および粒剤そのもの)を一緒に接着する粘着性ゲルを形成し、それにより分解がさらに遅くなる。第3に、前述の粘着性ゲルは、溶解媒体の存在下で局所粘度を増加させる。局所粘度が増加すると、薬剤の拡散が遅くなり、その結果、同様に溶解が遅くなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質バルドキソロンメチルからなる粒子(A)を、少なくとも1種の親水性結合剤からなる粒子(B)と混合して含んでなる固体剤形であって、前記粒子(A)が治療上有効な量のバルドキソロンメチルを構成する、固体剤形。
【請求項2】
親水性結合剤がセルロース系添加剤である、請求項1に記載の固体剤形。
【請求項3】
前記粒子(A)がガラス質マトリックス中の非晶質バルドキソロンメチルの固体分散物からなる、請求項1に記載の固体剤形。
【請求項4】
前記粒子(A)が、バルドキソロンメチルおよびメタクリル酸コポリマーの混合物を噴霧乾燥することを含む方法の生成物である、請求項3に記載の固体剤形。
【請求項5】
前記方法が、バルドキソロンメチルおよびメタクリル酸コポリマーの4:6混合物を噴霧乾燥することを含む、請求項4に記載の固体剤形。
【請求項6】
セルロース系添加剤が、C3-C10アルキルヒドロキシメチルセルロース、アリールヒドロキシメチルセルロースおよび置換アリールヒドロキシメチルセルロースからなる群から選択される、請求項2に記載の固体剤形。
【請求項7】
セルロース系添加剤が、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび酢酸セルロースからなる群から選択されるC3-C10アルキルヒドロキシメチルセルロースである、請求項5に記載の固体剤形。
【請求項8】
セルロース系添加剤がヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項6に記載の固体剤形。
【請求項9】
親水性結合剤が天然の炭水化物ポリマーである、請求項1に記載の固体剤形。
【請求項10】
親水性結合剤がアニオン性ポリマーである、請求項1に記載の固体剤形。
【請求項11】
前記粒子(A)が本質的に非晶質バルドキソロンメチルからなる、請求項1に記載の固体剤形。
【請求項12】
親水性結合剤の割合が全製剤の約1%〜約40%(w/w)である、請求項1に記載の固体剤形。
【請求項13】
親水性結合剤の割合が全製剤の約2%〜約20%(w/w)である、請求項12に記載の固体剤形。
【請求項14】
親水性結合剤の割合が全製剤の約4%〜約10%(w/w)である、請求項12に記載の固体剤形。
【請求項15】
親水性結合剤の割合が全製剤の約5%〜約7.5%(w/w)である、請求項12に記載の固体剤形。
【請求項16】
親水性結合剤の割合が全製剤の約7%〜約7.5%(w/w)である、請求項12に記載の固体剤形。
【請求項17】
親水性結合剤の割合が全製剤の約7%(w/w)である、請求項12に記載の固体剤形。
【請求項18】
親水性結合剤がヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項12〜17のいずれか1項に記載の固体剤形。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−518008(P2012−518008A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550279(P2011−550279)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/024127
【国際公開番号】WO2010/093944
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(510037891)リアタ ファーマシューティカルズ,インク (3)
【Fターム(参考)】