説明

非水系二次電池

【課題】ガス排出経路が確実に確保された安全性の高い二次電池を提供する。
【解決手段】本発明の非水系二次電池は、正極活物質を備えた正極板2、負極活物質を備えた負極板1及び正極板と負極板との間に配置される多孔質絶縁体3を有する極板群4と、非水電解質と、極板群と非水電解質とを収容する有底筒形の電池ケース7と、電池ケースの開口部を閉じる封口板とを備え、電池ケースは、開口部から収容された極板群の上端までの間に、内側且つ下方に窪んでいる凹部18を有し、凹部と極板群との間に絶縁板19が配置されており、絶縁板には、電池ケース内において、電池ケース内壁と凹部との間に形成された溝部20に係合する係合部19aが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子技術の進歩に伴い、カメラ一体型VTR、携帯電話、デジタルカメラ、ラップトップコンピューター等の小型のポータブル電子機器が開発され、それらに使用するためのポータブル電源として、小型且つ軽量で高エネルギー密度の二次電池が開発されてきている。
【0003】
このような二次電池としては、ニッケルカドミウム二次電池、ニッケル水素電池、あるいは理論上高電圧を発生でき、且つ高エネルギー密度を有するリチウム、ナトリウム等の軽金属を負極活物質として用いる非水電解液二次電池を挙げることができる。中でも、リチウムイオンの挿入・脱離を、非水系電解液を介して行うリチウムイオン二次電池は、水溶液系電解液二次電池であるニッケル・カドミウム電池、ニッケル・水素電池、鉛蓄電池と比較して、高出力及び高エネルギー密度を実現できるものとして実用化されているが、電池特性の高い電池を求めて、さらに活発に研究開発が進められている。
【0004】
上記の二次電池においては、内在するエネルギーが大きいため、内部短絡・外部短絡などの異常時において高い安全性を有していることが求められている。またこれらの電池では、何らかの原因で電解液からガスが発生することがあり、ガスにより電池内部圧が高くなると電池が破裂するおそれがあるため、そのガスを電池外に逃がすための工夫が種々検討されている(例えば特許文献1)。
【0005】
特許文献1に開示されているのは、一端部を縮径してなる首部を有する円筒型の容器と、前記容器内に収容され、正極、セパレータ、負極および電解液からなる渦巻状電極群と、前記電極群の端面部に当接するように前記電極群と前記首部との間に設けられた絶縁板と、前記絶縁板よりも外側に配置され、前記絶縁板を介して前記電極群に連通するガス抜き孔を有する封口板と、前記ガス抜き孔を封止するように前記封口板上に載置された安全弁と、前記絶縁板を貫通し、一端部が前記正極に接続され、他端部が前記封口板の内面に接続されたリード片と、を有する円筒密閉型電池において、前記絶縁板は前記首部の内径と同等か又はそれよりも大きいことを特徴とする円筒密閉型電池である。このような構成より、絶縁板を容器の首部の内径と同等か又はそれよりも大きくするので、電池に衝撃力が加わったとしても、容器内での絶縁板の移動が抑制され、渦巻状電極群が容器内で適正に拘束され、渦巻状電極群が変位したり、螺旋状に変形したりすることを抑制できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−100343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されている円筒密閉型電池では、衝撃力による電極群の変形や移動を絶縁板によって抑制できるとしている。しかしながら、電池内部にガスが発生した場合、絶縁板の下側の内部圧力が衝撃力よりも大きい力で絶縁板を封口板の方に押し上げることになる。絶縁板は容器の首部に単に引っかかって上方への移動が抑制されているだけであるので、大きな内部ガス圧がかかった場合や異常時に高温になって絶縁板が変形した場合に、絶縁板の首部への引っかかりが外れて絶縁板が封口板に接触してしまうという問題があった。この場合、絶縁板が封口板のガス抜き穴を塞いでしまい、発生したガスが電池の外に逃げられなくなり、電池内圧が高くなってしまうという問題も発生した。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ガス排出経路が確実に確保された安全性の高い二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の非水系二次電池は、正極活物質を備えた正極板、負極活物質を備えた負極板及び前記正極板と前記負極板との間に配置される多孔質絶縁体を有する極板群と、非水電解質と、前記極板群と前記非水電解質とを収容する有底筒形の電池ケースと、前記電池ケースの開口部を閉じる封口板とを備え、前記電池ケースは、前記開口部から収容された前記極板群の上端までの間に、内側且つ下方に窪んでいる凹部を有し、前記凹部と前記極板群との間に絶縁板が配置されており、前記絶縁板には、前記電池ケース内において、前記電池ケース内壁と前記凹部との間に形成された溝部に係合する係合部が設けられている構成を有している。
【0010】
前記係合部は、前記絶縁板の外縁部分に設けられた凸状の部分であることが好ましい。前記係合部は、前記絶縁板の外縁部分が折り曲げられて凸状となった部分であるとより好ましい。
【0011】
前記係合部は、前記絶縁板の外縁部分の全周に亘って設けられているであることが好ましい。
【0012】
前記電池ケースは有底円筒形であってもよい。
【0013】
前記電池ケースは鉄からなっていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
電池ケースの凹部の下方に窪んでいる部分に絶縁板の係合部が係合しているので、絶縁板が凹部に確実に固定される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係る電池の模式的な断面図である。
【図2】比較例の電池の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。
【0017】
(実施形態1)
<電池の構造>
図1は、実施形態1における電池100の構成を模式的に示した断面図である。
【0018】
本実施形態の電池100は、図1に示すように円柱形の二次電池であり、具体的にはリチウムイオン二次電池である。このリチウムイオン二次電池は、内部短絡等の発生により電池内の圧力が上昇したとき、ガスを電池外に放出する安全機構を備えている。以下、図1を参照しながら、本実施形態の電池100の具体的な構成を説明する。
【0019】
図1に示すように、電池100においては、正極(正極板)2と負極(負極板)1とがセパレータ3を介して捲回された極板群4が、非水電解質の液とともに、有底円筒形の電池ケース7に収容されている。なお非水電解質の大半は極板群4にしみ込んでいる状態であるため、図示を省略している。正極2は、シート状の正極集電体の表面に正極活物質層を載せた構成を有しており、正極活物質層には正極活物質が含まれている。負極1は、シート状の負極集電体の表面に負極活物質層を載せた構成を有しており、負極活物質層には負極活物質が含まれている。そしてセパレータ3は多孔質絶縁体からなっている。
【0020】
極板群4の上下には、それぞれ上部絶縁板(絶縁板)19と下部絶縁板10が配置され、正極2は、正極リード5を介してフィルタ12に接合され、負極1は、負極リード6を介して負極端子を兼ねる電池ケース7の底部に接合されている。このとき、正極リード5は上部絶縁板19に設けられた孔16を通ってフィルタ12に達している。
【0021】
フィルタ12は、インナーキャップ13に接続され、インナーキャップ13の突起部は、金属製の弁板14に接合されている。さらに、弁板14は、正極端子を兼ねる端子板8に接続されている。そして、端子板8、弁板14、インナーキャップ13、及びフィルタ12が一体となって封口板になり、ガスケット11を介して、電池ケース7の開口部を封口している。図1においては、円筒形の上面側に正極端子が、下面側に負極端子が配置されている。
【0022】
本実施形態の電池100では、極板群4が電池ケース7の内部で上下に移動しないように上部絶縁板19で極板群4を押さえ、その上部絶縁板19を固定するための凹部18が電池ケース7の上部に設けられている。この凹部18は電池100を外側から見たときに窪んでいる部分であり、電池ケース7の内側且つ下方に窪んでいる。すなわち、凹部18は図1において、電池ケース7の内部へ斜め下側に窪んだ形状となっている。電池100の内部において、凹部18の下部は斜め下に垂れ下がった状態になっており、この溝状となった部分(溝部20)に上部絶縁板19の係合部19aが係合している。溝部20というのは、電池ケース7内において、電池ケース7内壁と凹部18との間に形成された上向きの溝状部分である。
【0023】
凹部18は、極板群4が電池ケース7内に収められた状態で、極板群4のやや上方に設けられている。つまり、凹部18は電池ケース7の開口部から収容された極板群4の上端までの間に設けられている。
【0024】
上部絶縁板19は円形であり、周縁部分に係合部19aが設けられている。係合部19aは上部絶縁板19の外周縁を略垂直に折り曲げて形成された凸状の部分であり、上部絶縁板19の外周の全周に設けられている。
【0025】
次に電池100内部にガスが発生した場合のことを説明する。
【0026】
電池100に内部短絡等の異常事態が発生すると、極板群4においてガスが発生する。このガスは、上部絶縁板19に設けられた孔16から上側に抜けていく。さらにフィルタ12の貫通孔12aを通り、それからインナーキャップ13の貫通孔13aを通過して、弁体14を下から押すことになる。こうして、ガスの発生により電池100内の圧力が上昇すると、弁体14が端子板8に向かって膨れ、一定の圧力以上になるとインナーキャップ13と弁体14との接合がはずれる。このようにして、電流経路が遮断される。さらに電池100内の圧力が上昇して所定圧以上になると、弁体14が破断する。これによって、電池100内に発生したガスは、フィルタ12の貫通孔12a、インナーキャップ13の貫通孔13a、弁体14の裂け目、そして、端子板8の開放部8aを介して、外部へ排出される。
【0027】
ここで、図2に示す電池101について、本実施形態の電池100との比較のために考えてみる。図2に示す比較例の電池101は電池ケース7に設けられた凹部17の形状と、上部絶縁板9の形状が本実施形態の電池100とは異なっており、それ以外の構成・形状は本実施形態の電池100と同じである。比較例の電池101の凹部17は、電池ケース7の側壁に対してほぼ垂直に窪んでいる。また、比較例の上部絶縁板9には係合部が存しておらず、円板形状の外周が凹部17に当接しているだけである。
【0028】
電池100,101の内部で異常事態が発生して、ガスの発生が急激となる場合は、本実施形態の上部絶縁板19の孔16又は比較例の上部絶縁板9の孔15からガスが一度に抜けていくことができずに上部絶縁板9,19がガスに押し上げられることがある。あるいはガスが局所的に発生すると、ガス発生場所に近い上部絶縁板9,19の部分にガス流が当たって、上部絶縁板9,19のその部分が押し上げられる。また、ガスの発生とともに電池100,101内部で熱も発生するので、熱によって上部絶縁板9,19が変形して本実施形態の上部絶縁板19の孔16又は比較例の上部絶縁板9の孔15を塞いだり、ガスによって押し上げられやすくなることもある。
【0029】
比較例の電池101の上部絶縁板9が上記のようにガスにより押し上げられたり熱により変形したりすると、上部絶縁板9の外周縁が凹部17から上の方に外れてしまい、上部絶縁板9自体が上方に移動してフィルタ12の貫通孔12aを塞いでしまう場合がある。一方、本実施形態の電池100の上部絶縁板19が上記のようにガスにより押し上げられたり熱により変形したりしても、係合部19aが溝部20にしっかりと係合しているため上部絶縁板19全体は電池100内で移動することはなく、従って貫通孔12aを塞いでしまうことはない。
【0030】
比較例の電池101のように上部絶縁板9がフィルタ12の貫通孔12aを塞いでしまうと、貫通孔12aを塞いでいない場合に弁体14が破断してガスが電池101外に放出される電池内圧になってもガスが外部に出て行けないため、さらに電池内圧が上昇してしまう。従って最終的には、弁体14が破断する場合よりも高圧のガスが電池101の外に出て行くことになり、安全性が低くなる。電池ケース7が鉄からなっている場合、異常事態により電池101内部の温度が上昇すると電池ケース7が柔らかくなり、高圧のガスが電池ケース7の側壁を突き破って出ていってしまう。しかしながら、本実施形態の電池100では係合部19aが溝部20にしっかりと係合しているため上部絶縁板19が貫通孔12aを塞いでしまうことがなく、ガスは比較的低圧で端子板8の開放部8aから放出されるため、安全性が高い。
【0031】
なお、電池100内に発生したガスを外部に排出する安全機構は、図1に示した端子板8、弁板14、インナーキャップ13、及びフィルタ12が一体となって封口板になっていて、弁体14が破断する構造に限定されず、他の構造のものであってもよい。
【0032】
<電池の構成材料>
正極集電体および負極集電体の材料としては、従来からリチウムイオン電池の集電体として用いられているものを用いることができる。具体例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、銅、チタン、またはそれらを主成分とする合金などからなる箔やシートが挙げられる。なお、負極集電体としては銅または銅系合金が、正極集電体としてはアルミニウムまたはアルミニウム系合金が好ましく用いられる。
【0033】
正極活物質層は、例えば、正極活物質、導電材、結着材、必要に応じて用いられる増粘剤等の添加剤を溶媒の存在下で所定の配合比で混合することにより得られる正極合剤ペーストを正極集電体の表面に塗布することにより塗膜を形成し、塗膜を加熱乾燥及び圧延することにより形成される。
【0034】
正極活物質としては、リチウムイオン二次電池の正極活物質として公知である材料を用いることができる。具体例としては、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウムのようなリチウム含有遷移金属複合酸化物、LiFePOのようなオリビン型リチウム塩、二硫化チタン、二硫化モリブデンのようなカルコゲン化合物、二酸化マンガンなどが挙げられる。リチウム含有遷移金属複合酸化物は、リチウムと遷移金属とを含む金属複合酸化物または該金属複合酸化物中の遷移金属の一部が異種元素によって置換された金属酸化物である。ここで、異種元素としては、たとえば、Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、Bなどが挙げられ、Mn、Al、Co、Ni、Mgなどが好ましい。異種元素は1種でもよくまたは2種以上でもよい。
【0035】
正極活物質の配合割合は、正極活物質層の全体に対して、50〜99.5質量%、さらには80〜99質量%、とくには、90〜99質量%の範囲であることが好ましい。
【0036】
導電材としては、リチウムイオン二次電池の導電材として用いられている公知の材料を用いることができる。具体例としては、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)、人造黒鉛などの黒鉛類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維類、アルミニウム等の金属粉末類、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、ポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料、フッ化カーボンなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
導電材の配合割合は、正極活物質層の全体に含有される正極活物質の量に対して、1〜50質量%、さらには、1〜30質量%、とくには、2〜15質量%の範囲であることが好ましい。
【0038】
正極の結着材としては、リチウムイオン二次電池の正極の結着材として用いられている公知の材料を用いることができる。具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、等が挙げられる。フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
結着材の配合割合は、正極活物質層の全体に対して、1〜10質量%、さらには1〜7質量%、とくには、1〜5質量%の範囲であることが好ましい。
【0040】
また、必要に応じて用いられる増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリエチレンオキシド、可溶性変性アクリロニトリルゴム(日本ゼオン(株)製の「BM−720H(商品名)」など)等が挙げられる。
【0041】
溶媒の具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、エタノール、メタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、脱イオン水、などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
正極合剤ペーストは、上記各成分を混合した後、公知の混練方法により混練することにより調製される。
【0043】
負極活物質層は、例えば、負極活物質、結着材、必要に応じて用いられる導電材、増粘剤等の添加剤を溶媒の存在下で所定の配合比で混合することにより得られる負極合剤ペーストを負極集電体の表面に対して塗布することにより塗膜を形成し、塗膜を加熱乾燥及び圧延することにより形成される。
【0044】
負極活物質としては、リチウムイオン二次電池の負極活物質として用いられている公知の材料を用いることができる。具体例としては、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)や人造黒鉛などの黒鉛系材料、アセチレンブラック,ケッチェンブラック,チャンネルブラック,ファーネスブラック,ランプブラック,及びサーマルブラックなどのカーボンブラック、炭素繊維等の炭素材料;金属リチウム、リチウム合金、金属間化合物、有機化合物、無機化合物、金属錯体、有機高分子化合物などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの材料の中では、黒鉛系材料、特に、表面に非晶質層が形成された黒鉛系材料が好ましい。このような表面に非晶質層が形成された黒鉛系材料は、ベーザル面からのみでなく、種々の方向から結晶中へリチウムが挿入される。従って、固液界面反応が速いために反応が拡散で律則される。そのために空隙vを形成して液周りを向上させて拡散速度を速めることにより、その効果がより顕著に発現する。
【0045】
負極活物質の配合割合としては、負極活物質層の全体に対して、50〜99.5質量%、さらには80〜99質量%、とくには、90〜99質量%の範囲であることが好ましい。
【0046】
負極の結着材の具体例としては、リチウムイオン二次電池の負極の結着材として用いられている公知の材料を用いることができる。具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、変性スチレン−ブタジエンゴム等が挙げられる。
【0047】
負極の結着剤の配合割合としては、負極活物質層の全体に対して、1〜10質量%、さらには1〜7質量%、とくには、1〜5質量%の範囲であることが好ましい。
【0048】
必要に応じて用いられる導電材としては、正極で用いる導電材と同様のものが特に限定なく用いられうる。導電材の配合割合は、負極活物質層の全体に含有される負極活物質の量に対して、0〜25質量%、さらには、0〜10質量%、とくには、0〜5質量%の範囲であることが好ましい。
【0049】
負極合剤ペーストも正極合剤ペーストと同様に、上記各成分を混合した後、公知の混練方法により混練することにより調製される。
【0050】
電池ケース7としては、例えば、アルミニウム製のケース、内面がニッケルメッキされた鉄製のケース等を用いることができるが、強度とコストとを考えると鉄製のケースが好ましく、本実施形態では鉄製のケースとしている。本実施形態では電池ケース7は有底円筒形であるが、電池ケースの形状は円筒型、角柱型など、筒型であればいずれの形状であってもよい。極板群の横断面は、電池ケースの形状にあわせて、円形、楕円形等の形状が選択される。
【0051】
非水電解質の液としては、リチウム塩を溶解した非水溶媒が好ましく用いられる。非水溶媒の具体例としては、エチレンカーボネ−ト(EC)、プロピレンカ−ボネ−ト(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などの環状カーボネート類;ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)などの鎖状カーボネート類;ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン類;1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,2−ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)等の鎖状エーテル類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル類;ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、1,3−プロパンサルトン、アニソール、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
非水溶媒に溶解するリチウム塩の具体例としては、LiClO、LiBF、LiPF、LiAlCl、LiSbF、LiSCN、LiCl、LiCFSO、LiCFCO、Li(CFSO、LiAsF、LiN(CFSO、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、四フェニルホウ酸リチウム、リチウムイミド塩等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。リチウム塩の非水溶媒に対する溶解量は、特に限定されないが、0.2〜2mol/L、さらには、0.5〜1.5mol/Lであることが好ましい。
【0053】
また、非水電解質の液には、電池の充放電特性を改良する目的で、種々の添加剤をさらに添加してもよい。このような添加剤の具体例としては、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、フォスファゼンおよびフルオロベンゼン、トリエチルフォスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n−グライム、ピリジン、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、クラウンエーテル類、第四級アンモニウム塩、エチレングリコールジアルキルエーテル等が挙げられる。これらの添加剤は、非水電解液の0.5〜10質量%程度配合されることが好ましい。
【0054】
セパレータとしては、リチウムイオン二次電池に用いられている公知の絶縁性の微多孔性シートを用いることができる。微多孔性薄膜は、一定温度以上で孔を閉塞し、抵抗を上昇させる機能を持つことが好ましい。微多孔性薄膜の材質は、耐有機溶剤性に優れ、疎水性を有するポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィンが好ましく用いられる。また、ガラス繊維などから作製されたシート、不織布、織布なども用いることができる。
【0055】
(その他の実施形態)
上述の実施形態は本願発明の例示であって、本願発明はこれらの例に限定されず、これらの例に周知技術や慣用技術、公知技術を組み合わせたり、一部置き換えたりしてもよい。また当業者であれば容易に思いつく改変発明も本願発明に含まれる。例えば正極板や負極板の構成は、上記の構成以外の構成であっても構わないし、正極活物質や負極活物質もどのような活物質であってもよい。また、電池は、リチウムイオン二次電池以外のニッケルカドミウム二次電池、ニッケル水素電池などでもよい。
【0056】
上部絶縁板の係合部は、外周において1周全てに設けられている必要はない。120度おきに3箇所に係合部が設けられていれば本願の機能が発揮されるが、1周全てに亘って係合部が設けられている方がより確実に上部絶縁板を凹部において固定しておくことができて好ましい。また、係合部は折り曲げることによって形成しても良いし、射出成形等によって最初から形成しておいてもよい。あるいはリング状の部材を接着して係合部を形成してもよい。
【0057】
また、電池を作製する工程において、電池ケース内径よりも大きな径の上部絶縁板を電池ケース内の極板群の上に載せてから電池ケース上部を外から加圧して凹部を形成し、その凹部形成と同時に上部絶縁板外周を折り曲げることによって係合部を形成してもよい。
【0058】
凹部も電池ケースの全周に亘って形成されていてもよいし、周の一部に形成されていてもよい。
【0059】
上部絶縁板は絶縁性のプラスチックで形成されてもよいが、その他の絶縁性の材料、例えばセラミックのような無機物等から形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上説明したように、本発明に係る非水系二次電池は、異常時のガスの排出経路を確保できるので、種々の電源用のリチウムイオン二次電池等として有用である。
【符号の説明】
【0061】
1 負極(負極板)
2 正極(正極板)
3 セパレータ(多孔質絶縁体)
4 極板群
7 電池ケース
8 端子板
9,19 上部絶縁板(絶縁板)
12 フィルタ
13 インナーキャップ
14 弁体
17 凹部
18 凹部
19a 係合部
20 溝部
100,101 電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質を備えた正極板、負極活物質を備えた負極板及び前記正極板と前記負極板との間に配置される多孔質絶縁体を有する極板群と、
非水電解質と、
前記極板群と前記非水電解質とを収容する有底筒形の電池ケースと、
前記電池ケースの開口部を閉じる封口板と
を備え、
前記電池ケースは、前記開口部から収容された前記極板群の上端までの間に、内側且つ下方に窪んでいる凹部を有し、
前記凹部と前記極板群との間に絶縁板が配置されており、
前記絶縁板には、前記電池ケース内において、前記電池ケース内壁と前記凹部との間に形成された溝部に係合する係合部が設けられている、非水系二次電池。
【請求項2】
前記係合部は、前記絶縁板の外縁部分に設けられた凸状の部分である、請求項1に記載されている非水系二次電池。
【請求項3】
前記係合部は、前記絶縁板の外縁部分が折り曲げられて凸状となった部分である、請求項2に記載されている非水系二次電池。
【請求項4】
前記係合部は、前記絶縁板の外縁部分の全周に亘って設けられている、請求項2または3に記載されている非水系二次電池。
【請求項5】
前記電池ケースは有底円筒形である、請求項1から4のいずれか一つに記載されている非水系二次電池。
【請求項6】
前記電池ケースは鉄からなる、請求項1から5のいずれか一つに記載されている非水系二次電池。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−69597(P2013−69597A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208451(P2011−208451)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】