説明

非水電解液二次電池及び非水電解液二次電池パック

【課題】正極、負極、非水電解液および電池内部に電池の内圧上昇により作動する電流遮断機構を備えてなる非水電解液二次電池であって、充放電サイクル特性に優れ、且つ電池を高温条件下に一定時間放置しても電流遮断機構が誤作動を起こさない非水電解液二次電池を提供する。
【解決手段】正極が一般式:Lia(Co1-x-yMgxybc(Mは、Mn、Ni、Y、Yb、Ca、Al、Ti、Cu、Zn、SrおよびBaからなる群より選択される少なくとも一種、0≦a≦1.05、0.005≦x≦0.15、0≦y≦0.25、0.85≦b≦1.1、1.8≦c≦2.1)で表されるリチウム含有遷移金属酸化物からなり、前記負極が炭素材料からなり、前記非水電解液が、(A)環状カルボン酸エステルを含有する非水溶媒と、前記非水溶媒に溶解された溶質からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池及び非水電解液二次電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコンおよび携帯電話等の電子機器の小型軽量化、コードレス化が急速に進んでおり、これらの駆動用電源として高エネルギー密度を有する二次電池が要求されている。中でもリチウムを活物質とする非水電解液二次電池は、高電圧、高エネルギー密度を有する電池として期待が大きい。
【0003】
リチウムイオン二次電池の正極活物質には、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn24などのリチウム含有複合酸化物が用いられている。これらの正極活物質は、充放電を行うことにより膨張・収縮を繰り返す。この際に結晶構造の破壊や粒子の割れ等が発生するため、充放電サイクルに伴う容量低下や内部抵抗の増加を生じる。このような問題に対し、コバルトまたはニッケルの一部を他の元素で置換することにより、結晶構造の安定化を図るという報告がある。例えば、正極活物質のコバルトの一部をマグネシウムなどの元素と置換することにより、サイクル特性や安全性を向上させるという報告がある(例えば、特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特許第3162437号公報
【特許文献2】特開平5−242891号公報
【特許文献3】特開平6−168722号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような従来の技術では、充放電サイクル特性の劣化を抑制することができる反面、例えば、充電状態の電池を高温状態で保存した場合には、電池内におけるガス発生量が比較的多くなることが確認されている。特に、電池内部に電池の内圧上昇により作動する電流遮断機構を有する電池の場合、高温保存時のガス発生による誤作動が生じることがある。ガス発生量が増加する原因は現在のところ確かではないが、コバルトの一部をマグネシウムで置換した正極活物質は、電子伝導性が高く、活物質表面が活性なため、非水電解液との反応性が高まり、非水電解液の分解が促進されるためと考えられている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、正極、負極、非水電解液および電池内部に電池の内圧上昇により作動する電流遮断機構を備えてなる非水電解液二次電池であって、前記正極が一般式:Lia(Co1-x-yMgxybc(Mは、Mn、Ni、Y、Yb、Ca、Al、Ti、Cu、Zn、SrおよびBaからなる群より選択される少なくとも一種、0≦a≦1.05、0.005≦x≦0.15、0≦y≦0.25、0.85≦b≦1.1、1.8≦c≦2.1)で表されるリチウム含有遷移金属酸化物、前記負極が炭素材料、前記非水電解液が、(A)環状カルボン酸エステルを含有する非水溶媒ならびに前記非水溶媒に溶解させた溶質からなる非水電解液二次電池に関する。
【0006】
さらに、前記非水溶媒は、(A)環状カルボン酸エステル、(B)炭素−炭素不飽和結合を少なくとも一つ有する環状炭酸エステルおよび(C)炭素−炭素不飽和結合を有しない環状炭酸エステルを含有する非水溶媒ならびに前記非水溶媒に溶解させた溶質からなることがより好ましい。
【0007】
前記環状カルボン酸エステル(A)が、γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン(GVL)、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−メチル−γ−ブチロラクトン、α−アンゲリカラクトン、α−メチレン−γ−ブチロラクトン、γ−ヘキサノラクトン、γ−ノナノラクトン、γ−オクタノラクトン、γ−メチル−γ−デカノラクトンからなる群より選択される少なくとも一種であり、前記炭素−炭素不飽和結合を少なくとも一つ有する環状炭酸エステル(B)が、ビニレンカーボネート(VC)を始めとして、3−メチルビニレンカーボネート、3,4−ジメチルビニレンカーボネート、3−エチルビニレンカーボネート、3,4−ジエチルビニレンカーボネート、3−プロピルビニレンカーボネート、3,4−ジプロピルビニレンカーボネート、3−フェニルビニレンカーボネート、3,4−ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、ジビニルエチレンカーボネート(DVEC)からなる群より選択される少なくとも一種であり、前記炭素−炭素不飽和結合を有しない環状炭酸エステル(C)が、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0008】
前記非水溶媒が、さらに鎖状炭酸エステル(D)を含有することが好ましく、鎖状炭酸エステル(D)は、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートからなる群より選択される少なくとも一種であることがより好ましい。前記溶質は、LiPF6とLiBF4との混合物であることが好ましい。さらに前記非水溶媒が、フェニル基および前記フェニル基に隣接する環状化合物基からなるベンゼン誘導体を含有することが好ましい。本発明によれば、電流遮断機構を備えた高い安全性を有する非水電解液二次電池において、充放電サイクルに伴う容量低下を抑制するとともに、高温保存時に電流遮断機構の誤作動のない非水電解液二次電池を提供することができる。
【0009】
また、本発明の非水電解液二次電池は電流遮断機構に併せて、感熱性の保護素子を取り付けることにより、異常充電時の安全性をより高めることができる。感熱性の保護素子としては、PTC、温度ヒューズ、サーミスタ、サーモスタットを上げることができ、これらを単独で用いてもよく、組み合わせて用いても良い。
【0010】
さらに、本発明の非水電解液二次電池を単数または複数使用した電池パックに、感熱性の保護素子として、PTC、温度ヒューズ、サーミスタ、サーモスタットを単独や、組み合わせて取り付けることにより異常充電時の安全性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明では、正極、負極、非水電解液および電池内部に電池の内圧上昇により作動する電流遮断機構を備えてなる非水電解液二次電池において、前記正極が一般式:Lia(Co1-x-yMgxybc(Mは、Mn、Ni、Y、Yb、Ca、Al、Ti、Cu、Zn、SrおよびBaからなる群より選択される少なくとも一種、0≦a≦1.05、0.005≦x≦0.15、0≦y≦0.25、0.85≦b≦1.1、1.8≦c≦2.1)で表されるリチウム含有遷移金属酸化物からなり、前記負極が炭素材料からなり、前記非水電解液が、(A)環状カルボン酸エステルを含有する非水溶媒ならびに前記非水溶媒に溶解させた溶質からなることにより、充放電サイクル特性に優れ、且つ電池を高温条件下に一定時間放置しても電流遮断機構が誤作動を起こさない非水電解液二次電池を提供することができる。
【0012】
そして、電流遮断機構に併せて、感熱性の保護素子を取り付けることにより、異常充電時の安全性をより高めた非水電解液二次電池を提供することができる。
【0013】
さらに、本発明の非水電解液二次電池を単数または複数使用した電池パックに、感熱性の保護素子を取り付けることにより異常充電時の安全性をより高めた非水電解液二次電池パックを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明では、一般式:Lia(Co1-x-yMgxybc(Mは、Mn、Ni、Y、Yb、Ca、Al、Ti、Cu、Zn、SrおよびBaからなる群より選択される少なくとも一種、0≦a≦1.05、0.005≦x≦0.15、0≦y≦0.25、0.85≦b≦1.1、1.8≦c≦2.1)で表されるリチウム含有複合酸化物からなる正極活物質を用いる。前記複合酸化物の結晶においては、マグネシウムでコバルトの一部が置換されているため、結晶構造が安定であり、充放電サイクルに伴う結晶構造の破壊や粒子の割れが発生しにくい。従って、電池の容量低下が抑制され、サイクル寿命が向上する。
【0015】
マグネシウムの含有率xが0.005未満の場合、複合酸化物の結晶構造の安定化が不十分となる。従って、充放電を繰り返すと、内部抵抗が増大し、サイクル特性が大きく劣化する。一方、含有率xが0.15をこえると、正極活物質の充放電容量が低下する。このことから、Mgの含有率xは、0.005≦x≦0.15を満たす必要がある。
【0016】
また、前記複合酸化物は、元素Mを含むことにより耐熱性の向上やサイクル特性のさらなる改善が実現できる。ただし、元素Mの含有率yが、0.25より大きくなると、高温保存時のガス発生量が増加したり、活物質の充放電容量が低下したりする。このことから、Mの含有率yは、0≦y≦0.25を満たす必要がある。
【0017】
aが1.05を超えると、LiOやLiCOなどが生成し、これが分解して、OやCOなどのガスが発生する。
【0018】
bが0.85未満では、結晶構造の安定化が不十分となり、サイクル特性が低下する。逆に、bが1.1を超えると、CoCOが生成し、COなどのガスが発生する。
【0019】
cが1.8未満では、酸素欠損型の結晶構造になり、結晶構造の安定化が不十分となり、サイクル特性が低下する。逆に、cが2.1を超えるとOガスが発生する。
【0020】
本発明の非水電解液二次電池は、電池内のガス圧力が所定値以上になると作動する電流遮断機構を備えることにより、異常充電時の安全性を大幅に向上させることができる。
【0021】
電流遮断機構は、電池が異常充電されると電池内で電解液が分解してガスが発生し、電池内の圧力が上昇することにより充電電流を遮断する機構である。
【0022】
電流遮断機構としては、電池内の圧力上昇で変形することにより充電電流接点が切れる機構、センサーで電池内の圧力を検知することにより充電を停止する外部回路、センサーで電池の変形を検知することにより充電を停止する外部回路などがあげられるが、電池内の圧力上昇で変形することにより充電電流接点が切れる機構が、最もシンプルで効果が高いので好ましい。
【0023】
本発明の非水電解液二次電池には、(A)環状カルボン酸エステルを含有する非水溶媒に溶質を溶解させた非水電解液を用いることにより、前記正極を用いた電流遮断機構を備える非水電解液二次電池が高温状態に一定時間保存された場合の電池内におけるガス発生を大幅に減少させ、高温保存時に電流遮断機構が誤作動しない非水電解液二次電池を提供することが可能となる。
【0024】
上記非水電解液を用いることで高温保存時のガス発生を大幅に減少させ、電流遮断機構の誤作動を防止することができる理由を以下に示す。前述のようにコバルトの一部をマグネシウムで置換した正極活物質は、電子伝導性が高く、活物質表面が活性なため、電池を高温保存した場合に、非水電解液との反応性が高まり、非水電解液の分解が促進されてガス発生が多くなると考えられている。
【0025】
環状カルボン酸エステル(A)を含有する非水電解液を用いた場合、環状カルボン酸エステルが正極表面で分解して分解生成物が正極表面に緻密な被膜を形成し、電解液と正極との直接の接触を抑制する結果、高温保存時のガス発生を大幅に抑制することができる。また、環状カルボン酸エステル(A)は一部が負極表面で分解されるため、それを抑制するために炭素−炭素不飽和結合を少なくとも一つ有する環状炭酸エステル(B)を併せて非水電解液に含有させることがより好ましい。炭素−炭素不飽和結合を少なくとも一つ有する環状炭酸エステル(B)は、不飽和結合部が非常に重合しやすいため、負極上で連鎖的に重合反応を起こし、迅速に負極上に緻密で強固な被膜を形成する。この負極上に形成された被膜がリチウムイオン周囲の溶媒分子の負極への接触を阻止する物理的バリアーとなる結果、負極での環状カルボン酸エステルの還元分解が抑制される。
【0026】
さらに、環状カルボン酸エステル(A)に炭素−炭素不飽和結合を少なくとも一つ有する環状炭酸エステル(B)を含有させた電解液を用いて作製した電池を高温条件下に一定時間放置した場合、前述のように熱により負極上での環状炭酸エステル(B)の分解が促進されて負極上に過剰の被膜が形成される。その結果、負極へのリチウムイオンの挿入、脱離がスムーズに行われなくなり、電池の充放電特性が低下する傾向にある。
【0027】
そこで、さらに不飽和結合を有しない環状炭酸エステル(C)を電解液に含有させることにより、高温条件下での環状炭酸エステル(B)の過剰の重合反応を抑制することができるため、より好ましい。エチレンカーボネートやプロピレンカーボネート等の炭素−炭素不飽和結合を有しない環状炭酸エステル(C)も、ビニレンカーボネート等の炭素−炭素不飽和結合を有する環状炭酸エステル(B)と同様に負極上で還元分解されて分解生成物による被膜を形成する。ただし、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネートは、炭素−炭素不飽和結合を有しないため、不飽和結合の重合反応で被膜を形成するビニレンカーボネート等に比べて被膜の形成が非常に遅い。
【0028】
ビニレンカーボネートの連鎖的な重合反応の途中において、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネートが重合中間体に結合した場合、その部位の反応が非常に遅くなり、高温条件下でのビニレンカーボネートの過剰な重合反応が抑制される。その結果、高温条件下に一定時間放置した後も良好な充放電特性を有する電池が実現できる。
【0029】
環状カルボン酸エステル(A)としては、γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン(GVL)、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−メチル−γ−ブチロラクトン、α−アンゲリカラクトン、α−メチレン−γ−ブチロラクトン、γ−ヘキサノラクトン、γ−ノナノラクトン、γ−オクタノラクトン、γ−メチル−γ−デカノラクトン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有する環状炭酸エステル(B)としては、ビニレンカーボネート(VC)を始めとして、3−メチルビニレンカーボネート、3,4−ジメチルビニレンカーボネート、3−エチルビニレンカーボネート、3,4−ジエチルビニレンカーボネート、3−プロピルビニレンカーボネート、3,4−ジプロピルビニレンカーボネート、3−フェニルビニレンカーボネート、3,4−ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、ジビニルエチレンカーボネート(DVEC)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの化合物は、その水素原子の一部がフッ素原子で置換されていてもよい。特に、ビニレンカーボネートとビニルエチレンカーボネートとを併用すると、ビニルエチレンカーボネートが高温におけるビニレンカーボネートの反応活性を抑制するため、電池の高温保存特性が向上する点で好ましい。
【0031】
炭素−炭素不飽和結合を有しない環状炭酸エステル(C)としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの化合物は、その水素原子の一部がフッ素原子で置換されていてもよい。
【0032】
前記非水溶媒における環状カルボン酸エステル(A)の含有量は、10体積%〜97体積%であることが好ましい。前記非水溶媒における炭素−炭素不飽和結合を少なくとも一つ有する環状炭酸エステル(B)の含有量は、0.5体積%〜20体積%であることが好ましい。前記非水溶媒における炭素−炭素不飽和結合を有しない環状炭酸エステル(C)の含有量は、40体積%以下であることが好ましく、0.1体積%〜30体積%がさらに好ましく、0.1体積%〜20体積%が最も好ましい。
【0033】
前記非水溶媒は、さらに、鎖状炭酸エステル(D)を含有することができる。非水溶媒が鎖状炭酸エステル(D)を含有する場合、非水溶媒の粘度が低下し、低温時の電池の充放電特性をさらに向上させることができる。鎖状炭酸エステル(D)としては、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記非水溶媒における鎖状炭酸エステルの含有量は、50体積%以下であることが好ましく、0.1体積%〜30体積%がさらに好ましく、0.1体積%〜20体積%が最も好ましい。
【0034】
また、過充電時に分解して電極上に被膜を形成し、電池を不活性化する従来からよく知られているベンゼン誘導体(F)を本発明にかかる非水溶媒に添加することも効果的である。ベンゼン誘導体(F)には、フェニル基および前記フェニル基に隣接する環状化合物基からなるベンゼン誘導体を用いることが好ましい。
【0035】
前記環状化合物基としては、フェニル基、環状エーテル基、環状エステル基、シクロアルキル基、フェノキシ基などが好ましい。ベンゼン誘導体(F)の具体例としては、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、ジフェニルエーテルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記非水溶媒におけるベンゼン誘導体(F)の含有量は、10体積%以下であることが好ましい。
【0036】
前記非水溶媒に溶解させる溶質は、本発明では特に限定されず、非水電解液二次電池で通常用いられているいずれの溶質でも使用できる。具体的には、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22、LiN(CF3SO2)(C49SO2)、LiB[C63(CF32−3,5]4、LiPFa(Cb2b+16-a(aは1から5の整数、bは1以上の整数である)、LiPFc(Cd2d+1SO26-c(cは1から5の整数、dは1以上の整数である)、LiBFe(Cf2f+14-e(eは1から3の整数、fは1以上の整数である)、LiBFg(Ch2h+1SO24-g(gは1から3の整数、hは1以上の整数である)等が使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、LiPF6とLiBF4とを併用することが特に好ましい。LiPF6は、電気特性に優れる一方で、フッ酸を生成するため化学的に不安定である。特に、本発明にかかる電解液の成分である環状カルボン酸エステル(A)は、フッ酸により分解しやすいため、例えば電池のサイクル特性が阻害されるおそれがある。一方、LiBF4のみを使用した場合には、LiBF4の解離度が低い、あるいは負極に黒鉛を用いる場合に表面に形成される保護被膜が弱くなるなどの理由により、やはり電池のサイクル特性が阻害される。それに対し、LiBF4をLiPF6と併用すると、電池のサイクル特性が向上する。このLiBF4の添加効果は少量でも得ることができる。LiPF6の量は全溶質量の2モル%以上であることが好ましい。一方、LiBF4の量は、全溶質量の10モル%以上であることが好ましい。前記非水電解液における溶質濃度は、0.8モル/リットル〜2.5モル/リットルが好ましい。
【0037】
前記リチウム含有遷移金属酸化物Lia(Co1-x-yMgxybcは、例えば、リチウム塩と、マグネシウム塩と、Mで表される金属の塩と、コバルト塩とを酸化雰囲気下で高温で焼成することにより、得ることができる。正極活物質を合成するための原料としては、以下のものを用いることができる。リチウム塩としては、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、酸化リチウム等を用いることができる。マグネシウム塩としては、酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、フッ化マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、蓚酸マグネシウム、硫化マグネシウム、水酸化マグネシウムを用いることができる。
【0038】
同様にMで表される金属の塩も既存のものが適宜使用できる。コバルト塩としては、酸化コバルト、水酸化コバルト等を用いることができる。また、共沈法により、マグネシウムや金属Mを含有する水酸化コバルトを作製した後、その水酸化コバルトとリチウム塩とを混合し、焼成することによっても前記リチウム含有遷移金属酸化物を得ることができる。
負極材料としては、熱分解炭素類、コークス類(ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス等)、グラファイト類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体(フェノール樹脂、フラン樹脂等を適当な温度で焼成し炭素化したもの)、炭素繊維、活性炭素等の炭素材料が挙げられ、(002)面の面間隔が0.340nm以下であるようなグラファイトを用いる場合、電池のエネルギー密度が向上する。
【0039】
正極材料は、例えば結着剤および導電剤と混練され、極板に加工される。また、負極材料は、例えば結着剤と混練され、極板に加工される。前記結着剤および導電剤には、従来公知のものをいずれも使用可能である。本発明の電池の形状等には、円筒型、角型、コイン型、ボタン型、大型等があり、正極、負極の態様をそれに応じて変更すればよい。
【0040】
また、本発明の非水電解液二次電池は電流遮断機構に併せて、感熱性の保護素子が取り付けられていることで、異常充電時の安全性をより高めることが可能である。感熱性の保護素子としては、PTC、温度ヒューズ、サーミスタ、サーモスタットなどがあげられる。
【0041】
これらは単独で用いてもよく、組み合わせて用いても良い。特にPTC、サーミスタ、サーモスタットなどの復帰型の感熱性保護素子を電流遮断機構と併せて用いることが好ましい。この理由は以下の通りである。電流遮断機構のみを有する電池が異常充電された場合、電池の内圧上昇により電流遮断機構が作動するが、何らかの理由で電流遮断機構が作動する内圧に至るまでに時間がかかった場合、長時間に渡って異常充電が継続されることになる。
【0042】
一方、復帰型の感熱性保護素子のみを有する電池が異常充電された場合、温度を感知することにより保護素子が作動し、充電電流は大幅に減少するが、時間が経つと充電電流が復帰するか、もしくは微小電流による充電が永遠と続くことになる。電流遮断機構と復帰型の感熱性保護素子が併せて用いられた電池の場合、異常充電時に何らかの理由で電流遮断機構が作動する内圧に至るまでに時間がかかった場合でも、感熱性保護素子が温度を感知することにより先行して作動し、充電電流は大幅に減少する。その後は微小電流で充電が継続されるために電池内部でのガス発生は継続して起こり、やがては電流遮断機構の作動圧力に到達して電流遮断機構が作動し、完全に充電電流を遮断することができる。
【0043】
また、本発明の非水電解液二次電池を単数または複数使用した電池パックとすることも可能であり、その場合も上記と同様の感熱性の保護素子を取り付けることにより異常充電時の安全性を向上させた電池パックとすることができる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例に基づいて図面を参照しながら説明する。
《実施例1》
図1に本実施例で用いた円筒型非水電解液二次電池(直径18mm、総高65mm)の右半分断面正面図を示す。この電池は以下のように作製した。セパレータ1を介して、帯状正極板2と負極板3とを複数回渦巻状に捲回して、極板群を構成した。正極板2と負極板3にはそれぞれアルミニウム製正極リード4およびニッケル製負極リード5を溶接した。極板群の下にポリエチレン樹脂製底部絶縁板6を装着し、内面をニッケルメッキした鉄製電池ケース7内に収容し、負極リード5の他端を電池ケース7の内定面にスポット溶接した。極板群の上面にポリエチレン樹脂製上部絶縁板8を載置してから電池ケース7の開口部の所定位置に溝入れし、所定量の非水電解液を電池ケース7内に注入し、極板群に含浸させた。ポリプロピレン樹脂製ガスケット9を周縁部に装着させたステンレス鋼製の電流遮断機構内蔵封口板10を準備し、その下面に正極リード4の他端をスポット溶接した。その後、電池ケース7の開口部に封口板10装着し、電池ケース7の上縁部をガスケット9にかしめて開口部を封口し、電池を完成した。
【0045】
正極板2は以下のように作製した。0.95mol/リットルの濃度で硫酸コバルトを含み、0.05mol/リットルの濃度で硫酸マグネシウムを含む水溶液を、反応槽に連続供給し、水のpHが10〜13になるように反応槽に水酸化ナトリウムを滴下しながら、活物質の前駆体を合成した。その結果、Co0.95Mg0.05(OH)2からなる水酸化物を得た。
この前駆体と炭酸リチウムとを、リチウムとコバルトとマグネシウムとのモル比が、1:0.95:0.05になるように混合し、混合物を600℃で10時間仮焼成し、粉砕した。次いで、粉砕された焼成物を900℃で再度10時間焼成し、粉砕、分級し、一般式Li(Co0.95Mg0.05)O2で表される正極活物質を得た。100質量部のLi(Co0.95Mg0.05)O2に、導電剤としてアセチレンブラック1.5質量部、結着剤として分子量300000のポリフッ化ビニリデン(PVdF)のN−メチル−2−ピロリドン溶液を樹脂分で2質量部加え、攪拌・混合してペースト状正極合剤を得た。そして、厚さ15μmのアルミニウム箔製集電体の両面に前記ペースト状正極合剤を塗布し、乾燥後、圧延ローラーを用いて圧延を行い、所定寸法に裁断して正極板2とした。
【0046】
負極板3は以下のように作製した。平均粒径が約20μmになるように粉砕・分級した鱗片状黒鉛100質量部と、結着剤のスチレン−ブタジエンゴム3質量部とを混合した後、1質量%カルボキシメチルセルロース水溶液100質量部を加え、攪拌・混合してペースト状負極合剤を得た。そして、厚さ10μmの銅箔製集電体の両面に前記ペースト状負極合剤を塗布し、乾燥後、圧延ローラーを用いて圧延を行い、所定寸法に裁断して負極板3とした。
【0047】
前述のように作製した帯状の正極板2、負極板3および厚さ25μmの微多孔性ポリエチレン樹脂製セパレータ1を用いて上記極板群を構成した。非水電解液としてγ−ブチロラクトンとビニレンカーボネートとエチレンカーボネートの体積比80:2:18の混合溶媒に1.0mol/リットルの濃度でLiPFを溶解したものを用いた。このようにして作製した電池を本発明の電池1とした。
【0048】
《実施例2》
非水電解液としてγ−ブチロラクトンとビニレンカーボネートとエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの体積比70:2:18:10の混合溶媒に1.0mol/リットルの濃度でLiPFを溶解したものを用いたこと以外実施例1と同様に本発明の電池2を作製した。
【0049】
《実施例3》
非水電解液としてγ−ブチロラクトンとビニレンカーボネートとエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとシクロヘキシルベンゼンの体積比68:2:18:10:2の混合溶媒に1.0mol/リットルの濃度でLiPFを溶解したものを用いたこと以外実施例1と同様に本発明の電池3を作製した。
【0050】
《実施例4》
非水電解液としてγ−ブチロラクトンとビニレンカーボネートとエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとジフェニルエーテルの体積比68:2:18:10:2の混合溶媒に1.0mol/リットルの濃度でLiPFを溶解したものを用いたこと以外実施例1と同様に本発明の電池4を作製した。
【0051】
《実施例5》
非水電解液としてγ−ブチロラクトンとビニレンカーボネートとエチレンカーボネートの体積比80:2:18の混合溶媒に合計1.0mol/リットルの濃度でLiPFとLiBFを1:1の比率で溶解したものを用いたこと以外実施例1と同様に本発明の電池5を作製した。
【0052】
《実施例6》
平均粒径20μmの燐片状黒鉛を、石油ピッチと混合し、800℃で焼成し、燐片状黒鉛の表面の少なくとも一部を非晶質炭素で被覆した。こうして得られた炭素材料(平均粒径22μm)を、鱗片状黒鉛の代わりに用いたこと以外実施例1と同様に本発明の電池6を作製した。
【0053】
《実施例7》
非水電解液としてγ−ブチロラクトンに1.0mol/リットルの濃度でLiPFを溶解したものを用いたこと以外実施例1と同様に本発明の電池7を作製した。
【0054】
《比較例1》
マグネシウムを含まない一般式LiCoO2で示される正極活物質を用いたこと以外実施例1と同様に比較例の電池1を作製した。
【0055】
《比較例2》
非水電解液としてエチルメチルカーボネートとエチレンカーボネートの体積比80:20の混合溶媒に1.0mol/リットルの濃度でLiPFを溶解したものを用いたこと以外実施例1と同様に比較例の電池2を作製した。
【0056】
《比較例3》
実施例1に準じて、前駆体としてCo0.998Mg0.002(OH)2からなる水酸化物を合成した。この前駆体と炭酸リチウムとを、リチウムとコバルトとマグネシウムとのモル比が、1:0.998:0.002になるように混合したこと以外、実施例1と同様の操作を行って、一般式Li(Co0.998Mg0.002)O2で表される正極活物質を得た。次いで、この正極活物質を用いたこと以外、実施例1と同様にして、比較例の電池3を作製した。
【0057】
《比較例4》
実施例1に準じて、前駆体としてCo0.80Mg0.20(OH)2からなる水酸化物を合成した。この前駆体と炭酸リチウムとを、リチウムとコバルトとマグネシウムとのモル比が、1:0.80:0.20になるように混合したこと以外、実施例1と同様の操作を行って、一般式Li(Co0.80Mg0.20)O2で表される正極活物質を得た。次いで、この正極活物質を用いたこと以外、実施例1と同様にして、比較例の電池4を作製した。
【0058】
[電池の評価]
実施例1〜8および比較例1〜4で作製した電池、各10セルを用いて、充放電サイクル特性、低温放電特性、高温保存時の電流遮断機構の作動までの時間測定、過充電特性、高温保存特性を下記の評価方法により評価したときの平均値を算出し、比較を行った。
【0059】
(1)充放電サイクル特性
電池の充放電サイクルを繰り返し、3サイクル目の容量を100%として容量が50%になった時点のサイクル数をサイクル寿命とみなした。なお、充電は、環境温度20℃で、上限電圧を4.2Vに設定して、最大電流1050mAで2時間30分間定電流・定電圧充電を行った。放電は、この充電状態の電池を環境温度20℃で、放電電流1500mA、放電終止電位3.0Vの定電流放電を行った。その結果を表1に示す。
【0060】
(2)低温放電特性
電池の低温環境下における放電特性を比較した。この試験において、充電は、環境温度20℃で、上限電圧を4.2Vに設定して、最大電流1050mAで2時間30分間定電流・定電圧充電を行った。放電は、この充電状態の電池を環境温度20℃と−20℃で、放電電流1500mA、放電終止電位3.0Vの定電流放電を行った。20℃における放電容量に対する−20℃における放電容量の割合を百分率(%)で求め、低温環境下での容量維持率とした。その結果を表1に示す。
【0061】
(3)高温保存時の電流遮断機構の作動までの時間測定
環境温度20℃で上限電圧を4.2Vに設定して、最大電流1050mAで2時間30分間定電流・定電圧充電を行った電池を、85℃の環境下に保存し、ガス発生により電流遮断機構が誤作動するまでの時間を測定した。最長240時間まで試験を継続した。その結果を表1に示す。
【0062】
(4)過充電特性
環境温度20℃で電流値1500mAの条件で5時間連続して充電を行い、電池表面の最大温度を測定した。その結果を表1に示す。
【0063】
(5)高温保存特性
環境温度20℃で、上限電圧を4.2Vに設定して、最大電流1050mAで2時間30分間定電流・定電圧充電を行った後、電流1500mAh、放電終止電圧3.0Vの放電を行う条件の充放電を2サイクル行い、2サイクル目の放電容量を確認した。その後、充電状態の電池を60℃で3日間保存した。次いで、保存後の電池を再び20℃で、上記と同一条件で2サイクル充放電し、高温保存後の容量維持率を求めた。保存前の放電容量を100とした場合の、高温保存後2サイクル目の放電容量の割合を百分率(%)で求め、それを容量維持率とした。その結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
表1において、本発明の電池1〜7と、比較例の電池1の充放電サイクル特性の比較より、マグネシウムを添加した正極活物質を用いることにより、充放電サイクル特性が大幅に向上することが解る。特にLiPFとLiBFの混合溶質を用いた本発明の電池5はさらなるサイクル特性の改善が認められた。
【0066】
マグネシウムの添加量が過少である比較例の電池3は、マグネシウムを添加しない比較例の電池1と同等のサイクル特性しか得られなかった。また、マグネシウムの添加量が過多の比較例の電池4は、初期の容量が低く、高温保存時の容量維持率も51%と低かった。
【0067】
ジエチルカーボネートを含有する非水電解液を用いた本発明の電池2、3および4は、本発明の電池1に比べて低温放電特性の向上が認められた。非水溶媒中にジエチルカーボネートを含有させることにより非水溶媒の粘度が低下し、低温時の電池の充放電特性が改善されたと考えられる。
【0068】
本発明の電池1〜7と、比較例の電池2の高温保存時の電流遮断機構の作動までの時間測定の比較より、非水電解液中にγ−ブチロラクトンを含有することにより、大幅にガス発生が抑制され、電流遮断機構が作動するまでの時間が大きく伸びていることが解る。これは、γ−ブチロラクトンが正極表面で分解して分解物が正極表面に緻密な被膜を形成し、電解液と正極との直接の接触を抑制する結果、高温保存時のガス発生を大幅に抑制しているためである。また、非水電解液中にγ−ブチロラクトン以外にビニレンカーボネートとエチレンカーボネートを含有しない本発明の電池7に比べて、非水電解液中にγ−ブチロラクトン、ビニレンカーボネート及びエチレンカーボネートを含有する本発明の電池1は、高温保存特性の容量維持率の向上が認められた。これは、本発明の電池1では非水電解液中にγ−ブチロラクトンと併せてビニレンカーボネートとエチレンカーボネートを含有することで、ビニレンカーボネートが負極上で連鎖的に重合反応を起こし、迅速に負極上に緻密で強固な被膜を形成することで、γ−ブチロラクトンの一部が負極表面で分解されるのを抑制し、さらにエチレンカーボネートが、高温環境下でビニレンカーボネートの分解が促進されて負極表面に過剰な被膜が形成されるのを防ぐことにより、高温保存特性の向上が認められたと考えられる。
【0069】
また、非水電解液中にシクロヘキシルベンゼンとジフェニルエーテルを含有する本発明の電池3、4では、過充電試験における最大温度が大幅に低下していることが解る。
【0070】
燐片状黒鉛の表面の少なくとも一部を非晶質炭素で被覆した負極活物質を用いた本発明の電池6では、高温保存特性の容量維持率で向上が認められた。これは負極表面を非晶質炭素で被覆することにより、高温保存時の電解液の分解が抑制されたためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の非水電解液二次電池及び非水電解液二次電池パックは、サイクル特性に優れ、且つ電池を高温条件下に一定時間放置しても電流遮断機構が誤作動を起こさないので、パソコンおよび携帯電話等の電子機器の駆動用電源等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明による円筒型非水電解液二次電池の右半分断面正面図
【符号の説明】
【0073】
1 セパレータ
2 正極板
3 負極板
4 正極リード
5 負極リード
6 底部絶縁板
7 電池ケース
8 上部絶縁板
9 ガスケット
10 封口板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、非水電解液および電池内部に電池の内圧上昇により作動する電流遮断機構を備えてなる非水電解液二次電池であって、前記正極が一般式:Lia(Co1-x-yMgxybc(Mは、Mn、Ni、Y、Yb、Ca、Al、Ti、Cu、Zn、SrおよびBaからなる群より選択される少なくとも一種、0≦a≦1.05、0.005≦x≦0.15、0≦y≦0.25、0.85≦b≦1.1、1.8≦c≦2.1)で表されるリチウム含有遷移金属酸化物、前記負極が炭素材料、前記非水電解液が、(A)環状カルボン酸エステルを含有する非水溶媒、ならびに前記非水溶媒に溶解させた溶質からなる非水電解液二次電池。
【請求項2】
前記非水電解液が、(A)環状カルボン酸エステル、(B)炭素−炭素不飽和結合を少なくとも一つ有する環状炭酸エステルおよび(C)炭素−炭素不飽和結合を有しない環状炭酸エステルを含有する非水溶媒ならびに前記非水溶媒に溶解させた溶質からなる請求項1記載の非水電解液二次電池。
【請求項3】
前記環状カルボン酸エステル(A)が、γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン(GVL)、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−メチル−γ−ブチロラクトン、α−アンゲリカラクトン、α−メチレン−γ−ブチロラクトン、γ−ヘキサノラクトン、γ−ノナノラクトン、γ−オクタノラクトン、γ−メチル−γ−デカノラクトンからなる群より選択される少なくとも一種である請求項1または請求項2に記載の非水電解液二次電池。
【請求項4】
前記炭素−炭素不飽和結合を少なくとも一つ有する環状炭酸エステル(B)が、ビニレンカーボネート(VC)を始めとして、3−メチルビニレンカーボネート、3,4−ジメチルビニレンカーボネート、3−エチルビニレンカーボネート、3,4−ジエチルビニレンカーボネート、3−プロピルビニレンカーボネート、3,4−ジプロピルビニレンカーボネート、3−フェニルビニレンカーボネート、3,4−ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、ジビニルエチレンカーボネート(DVEC)からなる群より選択される少なくとも一種である請求項2記載の非水電解液二次電池。
【請求項5】
前記炭素−炭素不飽和結合を有しない環状炭酸エステル(C)が、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)からなる群より選択される少なくとも一種である請求項2記載の非水電解液二次電池。
【請求項6】
前記非水溶媒が、さらに鎖状炭酸エステル(D)を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の非水電解液二次電池。
【請求項7】
鎖状炭酸エステル(D)が、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートからなる群より選択される少なくとも一種である請求項6記載の非水電解液二次電池。
【請求項8】
前記溶質が、LiPF6とLiBF4からなる群より選択される少なくとも一種である請求項1〜7のいずれかに記載の非水電解液二次電池。
【請求項9】
前記非水溶媒が、さらにフェニル基および前記フェニル基に隣接する環状化合物基からなるベンゼン誘導体を含有する請求項1〜8のいずれかに記載の非水電解液二次電池。
【請求項10】
感熱性の保護素子が取り付けられていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の非水電解液二次電池。
【請求項11】
前記保護素子がPTCであることを特徴とする請求項10記載の非水電解液二次電池。
【請求項12】
前記保護素子が温度フューズであることを特徴とする請求項10記載の非水電解液二次電池。
【請求項13】
前記保護素子がサーミスタであることを特徴とする請求項10記載の非水電解液二次電池。
【請求項14】
前記保護素子がサーモスタットであることを特徴とする請求項10記載の非水電解液二次電池。
【請求項15】
請求項1〜9のいずれかに記載の非水電解液二次電池を単数又は複数使用した電池パックであって、感熱性の保護素子が取り付けられていることを特徴とする非水電解液二次電池パック。
【請求項16】
前記保護素子がPTCであることを特徴とする請求項15記載の非水電解液二次電池パック。
【請求項17】
前記保護素子が温度フューズであることを特徴とする請求項15記載の非水電解液二次電池パック。
【請求項18】
前記保護素子がサーミスタであることを特徴とする請求項15記載の非水電解液二次電池パック。
【請求項19】
前記保護素子がサーモスタットであることを特徴とする請求項15記載の非水電解液二次電池パック。

【図1】
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【公開番号】特開2006−156268(P2006−156268A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−348090(P2004−348090)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】