説明

非水電解液二次電池用の正極導電材ペースト、及び、非水電解液二次電池

【課題】非水電解液二次電池の直流抵抗を小さくすることが可能な非水電解液二次電池用の正極導電材ペースト、及び、直流抵抗の小さい非水電解液二次電池を提供する。
【解決手段】非水電解液二次電池用の正極導電材ペースト20は、正極導電材ペースト20に含まれる導電材26の粒径と体積頻度(%)との関係を示す粒度分布曲線上に現れるピークのうち最も粒径の値が小さい第1ピークP1の粒径Aを有する導電材20の体積頻度の値F1と、第1ピークP1における導電材20の粒径の値の7.5倍の粒径Bを有する導電材20の体積頻度F2との比の値であるF1/F2が、1<(F1/F2)<2の関係を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池用の正極導電材ペースト、及び、これを用いて作製した正極を有する非水電解液二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の非水電解液二次電池は、携帯機器の電源として、また、電気自動車やハイブリッド自動車などの電源として注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−281096号公報
【0004】
特許文献1には、リチウムイオン二次電池用の正極、及び、この正極を用いたリチウムイオン二次電池が開示されている。特許文献1の正極は、以下のようにして作製する。具体的には、まず、分散剤(ポリビニルピロリドン)と導電材(カーボンブラック)と溶剤とを混合して、導電材含有分散液(正極導電材ペースト)を作製する。次いで、この正極導電材ペーストに、正極活物質を混合して、正極塗膜形成用塗料(正極合材ペースト)を作製する。その後、この正極合材ペーストを正極集電部材(例えば、正極集電箔)に塗布し、乾燥させることで、正極を作製する。さらに、この正極を用いて、リチウムイオン二次電池を作製する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、導電材(カーボンブラックなど)は、正極(正極合材層)中の導電パスを良好にして、正極(正極合材層)の導電性を良好にし、その結果、非水電解液二次電池の直流抵抗を小さくする目的で添加している。
ところが、正極導電材ペースト中における導電材の分散状態によって、非水電解液二次電池の直流抵抗の値が大きく変わることが判明した。特許文献1では、正極導電材ペースト中における導電材の分散状態が不明であるため、電池の直流抵抗が十分に小さくなっていない虞があった。なお、正極導電材ペースト中における導電材の分散状態は、正極導電材ペーストに含まれる導電材の粒度分布に基づいて把握することができる。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、非水電解液二次電池の直流抵抗を小さくすることが可能な非水電解液二次電池用の正極導電材ペースト、及び、直流抵抗の小さい非水電解液二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、非水電解液二次電池用の正極導電材ペーストにおいて、上記ペーストに含まれる上記導電材の粒径と体積頻度(%)との関係を示す粒度分布曲線上に現れるピークのうち最も粒径の値が小さい第1ピークの粒径を有する上記導電材の体積頻度の値F1と、上記第1ピークにおける上記導電材の粒径の値の7.5倍の粒径を有する上記導電材の体積頻度F2との比の値であるF1/F2が、1<(F1/F2)<2 の関係を満たす非水電解液二次電池用の正極導電材ペーストである。
【0008】
上述の非水電解液二次電池用の正極導電材ペーストは、1<(F1/F2)<2 の関係を満たす。(F1/F2)の値は、正極導電材ペーストに含まれる導電材の分散状態を表す指標となる。ここで、F1とは、正極導電材ペーストに含まれる導電材の粒度分布曲線上に現れる第1ピークにおける粒径を有する導電材の体積頻度の値(%)である。上記粒度分布曲線は、正極導電材ペーストに含まれる導電材の粒径(μm)と、その体積頻度(%)との関係を表す曲線(相関図)である。上記第1ピークとは、上記粒度分布曲線上に現れるピークのうち、最も粒径の値が小さいピークである。
【0009】
1<(F1/F2)<2 の関係を満たす正極導電材ペーストを用いて作製した正極は、正極合材層中の導電パスが良好となり、導電性が良好となる。その結果、非水電解液二次電池の直流抵抗を小さくすることができ、ひいては、電池の出力特性を良好にすることができる。
【0010】
なお、上記正極導電材ペーストとしては、例えば、粒状の導電材と、分散剤と、結着剤と、溶媒とを混練したものを挙げることができる。導電材としては、例えば、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどのカーボンブラックを挙げることができる。また、分散剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)を挙げることができる。また、結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を挙げることができる。溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を挙げることができる。
【0011】
また、第1ピークの粒径を有する導電材は、導電材の一次粒子に相当する。また、第1ピークの粒径の7.5倍の粒径を有する導電材は、導電材の一次粒子が凝集した二次粒子に相当する。従って、上記正極導電材ペーストにおける導電材の分散状態は、一次粒子と二次粒子(粒径が一次粒子の7.5倍)とが1<(F1/F2)<2 の関係を満たす分散状態であるといえる。換言すれば、上記正極導電材ペーストは、一次粒子と二次粒子(粒径が一次粒子の7.5倍)とが、1<(F1/F2)<2 の関係を満たすように混在したものといえる。
【0012】
また、上記正極導電材ペーストに正極活物質を混合することで、正極合材ペーストを作製し、この正極合材ペーストを正極集電部材(例えば、正極集電箔)に塗布し、乾燥させることで、正極を作製することができる。
また、(F1/F2)の値は、ペーストの混練条件(例えば、混練時間)を調整することで、適宜調整することができる。
【0013】
さらに、上記の非水電解液二次電池用の正極導電材ペーストであって、前記粒度分布曲線は、レーザー回折式粒度分布測定によって測定した前記導電材の粒度分布を表す曲線である非水電解液二次電池用の正極導電材ペーストとすると良い。
【0014】
レーザー回折式粒度分布測定により、正極導電材ペーストに含まれる導電材の粒度分布曲線(相関図)を適切に得ることができる。
【0015】
さらに、上記いずれかの非水電解液二次電池用の正極導電材ペーストであって、上記ペーストは、前記導電材と結着剤と分散材とを含有する非水電解液二次電池用の正極導電材ペーストとすると良い。
さらに、上記ペーストであって、溶剤(溶媒)を含有するペーストが好ましい。
【0016】
さらに、上記いずれかの非水電解液二次電池用の正極導電材ペーストであって、前記導電材は、粒状のアセチレンブラックである非水電解液二次電池用の正極導電材ペーストとすると良い。
【0017】
導電材として、粒状のアセチレンブラックを用いることで、正極(正極合材層)中の導電パスが良好となり、導電性が良好となる。その結果、非水電解液二次電池の直流抵抗を小さくすることができ、ひいては、電池の出力特性を良好にすることができる。
【0018】
本発明の他の態様は、上記いずれかの非水電解液二次電池用の正極導電材ペーストを用いて作製した正極を有する非水電解液二次電池である。
【0019】
上述の非水電解液二次電池は、1<(F1/F2)<2 の関係を満たす正極導電材ペーストを用いて作製した正極を有している。このため、前述のように、正極(正極合材層)中の導電パスが良好となり、導電性が良好となる。従って、上述の非水電解液二次電池では、直流抵抗が小さくなり、ひいては、出力特性が良好となる。
【0020】
なお、正極は、例えば、上記正極導電材ペーストに正極活物質を混合することで、正極合材ペーストを作製し、この正極合材ペーストを正極集電部材(例えば、正極集電箔)に塗布し、乾燥させることによって、作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態にかかるリチウムイオン二次電池の構成を示す図である。
【図2】同リチウムイオン二次電池の正極の構成を示す図である。
【図3】同リチウムイオン二次電池の負極の構成を示す図である。
【図4】実施形態の正極導電材ペーストを示す図である。
【図5】正極導電材ペーストに含まれる導電材の粒径(μm)と体積頻度(%)との関係を示す粒度分布曲線(相関図)である。
【図6】F1/F2の値と電池の直流抵抗値との相関図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施形態)
まず、本実施形態の非水電解液二次電池1について説明する。
非水電解液二次電池1は、18650型(直径18mm×長さ65mm)の円筒状のリチウムイオン二次電池である。この非水電解液二次電池1は、図1に示すように、電極体5と、非水電解液8と、これらを収容する電池ケース6とを備えている。電池ケース6は、円筒状の電池ケースであり、キャップ63及び外装缶65を有する。電池ケース6のキャップ63の内側には、ガスケット59が配置されている。
【0023】
電極体5は、シート状の正極2、負極3、及びセパレータ4を円筒状に捲回してなる捲回体である。このうち、正極2は、図2に示すように、アルミニウム箔からなる正極集電部材22と、その両面に配置された正極合材層21とを有している。正極合材層21は、正極活物質25と、粒状のアセチレンブラックからなる導電材26と、PVdF(結着剤)とを含んでいる。なお、本実施形態では、正極活物質25として、LiNi1/3Mn1/3Co1/32を用いている。
【0024】
負極3は、図3に示すように、銅箔からなる負極集電部材32と、その両面に配置された負極合材層31とを有している。負極合材層31は、負極活物質35とSBR(スチレンブタジエンゴム)とCMC(カルボキシメチルセルロース)とを含んでいる。なお、本実施形態では、負極活物質35として、黒鉛を用いている。
【0025】
非水電解液8は、EC(エチレンカーボネート)とDMC(ジメチルカーボネート)とEMC(エチルメチルカーボネート)とを混合した溶媒に、電解質としてLiPF6 を添加した非水電解液である。なお、非水電解液8中のLiPF6の濃度は、1mol/Lとしている。
【0026】
また、図1に示すように、正極2には、正極集電リード23が溶接されており、負極3には、負極集電リード33が溶接されている。正極集電リード23は、キャップ63側に配置された正極集電タブ235に溶接されている。また、負極集電リード33は、外装缶65の底に配置された負極集電タブ335に溶接されている。
【0027】
次に、本実施形態にかかるリチウムイオン二次電池の製造方法を説明する。
まず、以下のようにして、正極2を作製した。アセチレンブラックからなる導電材26と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)からなる結着剤と、ポリビニルピロリドン(PVP)からなる分散剤と、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)からなる溶媒とを、容器11内で混合(混練)して、正極導電材ペースト20を作製した(図4参照)。
【0028】
なお、本実施形態では、正極導電材ペースト20の混練時間を1時間としている。本実施形態の正極導電材ペースト20に含まれる導電材26の粒径と体積頻度(%)との関係(相関図)は、図5において、サンプル2の粒度分布曲線で表している。図5の粒度分布曲線については、後で詳しく説明する。
【0029】
また、正極活物質25として、LiNi1/3Mn1/3Co1/32を用意する。次いで、正極導電材ペースト20に正極活物質25を混合することで、正極合材ペーストを作製する。その後、この正極合材ペーストを正極集電部材22(アルミニウム箔)の両面に塗布し、乾燥させた後、ロールプレスで圧縮成形した。これにより、正極集電部材22の両面に正極合材層21が積層された、シート状の正極2を得た(図2参照)。
【0030】
また、以下のようにして、負極3を作製した。まず、負極活物質35として、黒鉛を用意した。次いで、この負極活物質35とSBR(スチレンブタジエンゴム)とCMC(カルボキシメチルセルロース)とを水中で混合して、負極合材ペーストを作製した。
【0031】
次いで、この負極合材ペーストを、銅箔からなる負極集電部材32の両面に塗布し、乾燥させた後、ロールプレスで圧縮成形した。これにより、負極集電部材32の両面に負極合材層31が積層された、シート状の負極3を得た(図3参照)。
【0032】
次に、正極2に正極集電リード23を溶接すると共に、負極3に負極集電リード33を溶接した(図1参照)。次いで、正極2と負極3との間に、ポリエチレン製のセパレータ4を挟んで捲回し、円筒状の電極体5を作製した。
【0033】
また、以下のようにして、非水電解液8を作製した。EC(エチレンカーボネート)とDMC(ジメチルカーボネート)とEMC(エチルメチルカーボネート)とを混合した溶媒に、LiPF6 を添加して、非水電解液8を作製した。
なお、非水電解液8中のLiPF6の濃度は、1mol/Lとした。
【0034】
次に、前述のようにして作製した電極体5を、外装缶65内に挿入した。このとき、正極集電タブ235に正極集電リード23を溶接すると共に、外装缶65の底に配置した負極集電タブ335に負極集電リード33を溶接した。その後、電池ケース6内に非水電解液8を注入した。
【0035】
次いで、キャップ63の内側にガスケット59を配置すると共に、このキャップ63を外装缶65の開口部に配置した。続いて、キャップ63にかしめ加工を施すことにより、キャップ63により外装缶65を封止した。このとき、キャップ63と外装缶65とにより、電池ケース6が形成されて、非水電解液二次電池1の組み付けが完了する。
その後、非水電解液二次電池1について、初期充電やエージング等の活性化処理を行うことで、非水電解液二次電池1が完成する。
【0036】
(直流抵抗測定試験)
次に、正極導電材ペーストの混練時間を異ならせて、導電材の粒度分布(分散状態)が異なる正極導電材ペーストを4種類(サンプルペースト1〜4とする)作製した。具体的には、サンプルペースト1は、混練時間を30分として作製した正極導電材ペーストである。また、サンプルペースト2は、混練時間を1時間として作製した正極導電材ペーストである。サンプルペースト3は、混練時間を3時間として作製した正極導電材ペーストである。サンプルペースト4は、混練時間を5時間として作製した正極導電材ペーストである。
【0037】
その後、それぞれの正極導電材ペーストを用いて、前述のようにして、正極を作製した。さらに、前述のようにして、それぞれの正極を用いて、4種類の非水電解液二次電池(サンプル電池1〜4とする)を作製した。
【0038】
ここで、サンプルペースト1〜4に含まれる導電材26の粒度分布を測定した。具体的には、レーザー回折式粒度分布測定により、それぞれの正極導電材ペースト(サンプルペースト1〜4)に含まれる導電材26の粒度分布曲線を得た。なお、レーザー回折式粒度分布測定装置として、日機装株式会社製のMT3300EXを用いている。また、粒度分布曲線として、正極導電材ペーストに含まれる導電材の粒径(μm)と体積頻度(%)との相関図(相関曲線)を得ている。この粒度分布曲線(相関図)を図5に示す。
【0039】
なお、図5では、サンプルペースト1にかかる粒度分布曲線(相関曲線)を、□(四角形)のプロットを結ぶ曲線で示している。また、サンプルペースト2にかかる粒度分布曲線(相関曲線)を、△(三角形)のプロットを結ぶ曲線で示している。また、サンプルペースト3にかかる粒度分布曲線(相関曲線)を、×(バツ印)のプロットを結ぶ曲線で示している。また、サンプルペースト4にかかる粒度分布曲線(相関曲線)を、○(丸印)のプロットを結ぶ曲線で示している。
また、図5の横軸の粒径の値は、対数スケール(対数目盛)となっている。
【0040】
図5に示す各々の粒度分布曲線について、粒度分布曲線上に現れるピークのうち最も粒径の値が小さいピークを、それぞれの第1ピークP1とする。また、第1ピークP1における導電材26の粒径の値をAとする。なお、サンプルペースト1〜4では、いずれも、第1ピークP1における導電材26の粒径Aが0.4μmとなった。また、第1ピークP1における導電材26の粒径Aの7.5倍の大きさの粒径をB(=7.5A)とする。粒径A=0.4μmであるので、粒径B=3.0μmである。
【0041】
第1ピークP1の粒径Aを有する導電材(アセチレンブラック)は、導電材26の一次粒子に相当する。また、第1ピークP1の粒径Aの7.5倍の粒径Bを有する導電材(アセチレンブラック)は、導電材26の一次粒子が凝集した二次粒子に相当する。本発明者は、研究の結果、正極合材層内における導電材26の分散状態を、粒径Aの大きさを有する導電材26の一次粒子と粒径Bの大きさを有する導電材26の二次粒子とが、正極合材層内において所定範囲内の割合で混在する分散状態とすることで、正極合材層中の導電パスが良好となり、その結果、非水電解液二次電池の直流抵抗を小さくすることができることに想到した。
【0042】
従って、正極導電材ペースト中の導電材26の分散状態を、粒径Aの大きさを有する導電材26の一次粒子と粒径Bの大きさを有する導電材26の二次粒子とが、所定範囲内の割合で混在する分散状態とし、この正極導電材ペーストを用いて、正極及び非水電解液二次電池を作製することで、正極合材層中の導電パスが良好となり、その結果、非水電解液二次電池の直流抵抗を小さくすることができると考えた。
【0043】
そこで、前述のように、含有する導電材26の粒度分布が異なる4種類の正極導電材ペースト(サンプルペースト1〜4)を用意した。詳細には、第1ピークP1の粒径Aを有する導電材の体積頻度の値F1と、粒径Aの7.5倍の粒径Bを有する導電材の体積頻度F2との比の値であるF1/F2の値が異なる4種類の正極導電材ペースト(サンプルペースト1〜4)を用意した。(F1/F2)の値は、正極導電材ペーストに含まれる導電材の分散状態を表す指標となる。その後、それぞれのペーストを用いて、正極を作製し、それぞれの正極を用いて非水電解液二次電池(サンプル電池1〜4)を作製した。
【0044】
図5に示す各々の粒度分布曲線から、サンプルペースト1〜4について、F1/F2の値を算出した。その結果、サンプルペースト1では、F1/F2の値が約0.9となった。また、サンプルペースト2では、F1/F2の値が約1.5となった。サンプルペースト3では、F1/F2の値が約2.2となった。また、サンプルペースト4では、F1/F2の値が約2.7となった。
【0045】
さらに、サンプル電池1〜4の直流抵抗値を測定し、F1/F2の値と電池の直流抵抗値との相関を調査した。サンプル電池1(サンプルペースト1を用いた電池)は、直流抵抗値が15.2mΩであった。また、サンプル電池2(サンプルペースト2を用いた電池)は、直流抵抗値が14.8mΩであった。また、サンプル電池3(サンプルペースト3を用いた電池)は、直流抵抗値が15.4mΩであった。また、サンプル電池4(サンプルペースト4を用いた電池)は、直流抵抗値が15.7mΩであった。
【0046】
なお、各サンプル電池の直流抵抗値は、公知の交流インピーダンス測定によって求めた。具体的には、FRA(周波数応答アナライザ)としてソーラトロン社製の1255B型を用い、ポテンショ/ガルバノスタットとしてソーラトロン社製の1287A型を用いて、以下の条件で測定した。得られたインピーダンス測定結果より、サンプル電池1〜4の直流抵抗値(mΩ)を算出した。
<測定条件>
環境温度=25℃、電池SOC=60%、周波数=0.01Hz〜100kHz
【0047】
以上の結果に基づいて、F1/F2の値と電池の直流抵抗値との相関図(相関曲線)を作成した。これを図6に示す。
【0048】
図6の相関図より、1<(F1/F2)<2 の関係を満たす正極導電材ペーストを用いることで、非水電解液二次電池の直流抵抗を小さくすることができるといえる。その理由は、1<(F1/F2)<2 の関係を満たす正極導電材ペースト20を用いて作製した正極2は、正極合材層21中の導電パスが良好となるからであるといえる。その結果、非水電解液二次電池1の直流抵抗を小さくすることができ、ひいては、非水電解液二次電池1の出力特性を良好にすることができるといえる。
【0049】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0050】
1 非水電解液二次電池(リチウムイオン二次電池)
2 正極
3 負極
4 セパレータ
5 電極体
6 電池ケース
8 非水電解液
20 正極導電材ペースト
21 正極合材層
22 正極集電部材
25 正極活物質
26 導電材(アセチレンブラック)
31 負極合材層
32 負極集電部材
35 負極活物質
P1 第1ピーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水電解液二次電池用の正極導電材ペーストにおいて、
上記ペーストに含まれる導電材の粒径と体積頻度(%)との関係を示す粒度分布曲線上に現れるピークのうち最も粒径の値が小さい第1ピークの粒径を有する上記導電材の体積頻度の値F1と、上記第1ピークにおける上記導電材の粒径の値の7.5倍の粒径を有する上記導電材の体積頻度F2との比の値であるF1/F2が、
1<(F1/F2)<2 の関係を満たす
非水電解液二次電池用の正極導電材ペースト。
【請求項2】
請求項1に記載の非水電解液二次電池用の正極導電材ペーストであって、
前記粒度分布曲線は、レーザー回折式粒度分布測定によって測定した前記導電材の粒度分布を表す曲線である
非水電解液二次電池用の正極導電材ペースト。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の非水電解液二次電池用の正極導電材ペーストであって、
上記ペーストは、前記導電材と結着剤と分散材とを含有する
非水電解液二次電池用の正極導電材ペースト。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の非水電解液二次電池用の正極導電材ペーストであって、
前記導電材は、粒状のアセチレンブラックである
非水電解液二次電池用の正極導電材ペースト。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の非水電解液二次電池用の正極導電材ペーストを用いて作製した正極を有する
非水電解液二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−109852(P2013−109852A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251771(P2011−251771)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】