説明

非水電解液

【課題】フッ酸が発生しても非水電解液の分解が抑制され、二次電池に用いた場合には、電池の膨れや電池性能の低下が起こりにくい非水電解液を提供する。
【解決手段】(I)フッ素化鎖状スルホン、及び、フッ素化鎖状スルホン酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物、及び、(II)電解質塩を含むことを特徴とする非水電解液である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池などの電気化学デバイス用の非水電解液としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネートなど非水系溶媒に、LiPF、LiBF等の電解質塩を溶解させたものが一般に使用されている。
【0003】
しかし、上記のようなフッ素を含む電解質塩を用いた場合、非水系溶媒や、各電極、セパレータ等の電気化学デバイス部材に僅かに含有されている微量の水分が、フッ素を含む溶質と反応してフッ酸が生じることがある。フッ酸が生じると、これが電解液中の溶媒を攻撃してガスが発生することによって、例えば、リチウムイオン二次電池の場合には、電池が膨れたり、電極間にガスが溜まりリチウムイオンの移動を阻害して電池性能を低下させたりする。
【0004】
特許文献1には、初期の電池容量やサイクル特性に優れたリチウム二次電池用電解液とするために、少なくとも一つのフッ素原子とスルホン酸エステル構造を有したベンゼンスルホン酸エステルを非水電解液に添加することが開示されている。
【0005】
特許文献2には、電解液の分解ガスによる電池の膨れが起り難く、電池の充放電性能に優れた電解液を提供することを目的として、分子構造中に少なくとも一つの炭素―炭素結合不飽和結合基を有する、炭素、フッ素及び水素からなる化合物であって、炭素に結合する水素のうち少なくとも一つがフッ素で置換されてなる、炭素数6〜16の不飽和炭化水素を使用することが開示されている。
【0006】
また、特許文献1や2に記載されているスルホン酸エステルは、負極上で還元分解することにより皮膜を作るということが知られているが、正極側では耐酸化性が低いため分解されガス発生する可能性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−93839号公報
【特許文献2】特開2004−172101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、耐酸化性が高く、フッ酸が発生しても非水電解液の分解が抑制され、二次電池に用いた場合には、電池の膨れや電池性能の低下が起こりにくい非水電解液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、(I)フッ素化鎖状スルホン、及び、フッ素化鎖状スルホン酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物、及び、(II)電解質塩を含むことを特徴とする非水電解液である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の非水電解液は、上記の構成よりなるため、非水電解液の分解が起こりにくい。従って、本発明の非水電解液を二次電池に使用すると、電池の膨れや電池性能の低下も起こりにくく、長期の使用に耐えうる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の非水電解液は、(I)フッ素化鎖状スルホン、及び、フッ素化鎖状スルホン酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物、及び、(II)電解質塩を含むことを特徴とする。
【0012】
(II)電解質塩
電解質塩(II)としては、本発明の非水電解液を用いる用途に応じて適宜選択することができ、その使用量も適宜設定することができるが、本発明の効果が顕著に発揮されることになるという観点からは、後述するようなフッ素を含む電解質塩であることが好ましい。特に、本発明の非水電解液をリチウムイオン二次電池に使用する場合、使用可能な電解質塩(II)としては、例えば、LiClO、LiAsF、LiPF及びLiBF等の無機リチウム塩;LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiC(CFSO、LiPF(CF、LiPF(C、LiPF(CFSO、LiPF(CSO、LiBF(CF、LiBF(C、LiBF(CFSO、LiBF(CSO、リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレート、リチウムビス(オキサレート)ボレート、及び、式:LiPF(C2n+16−a(式中、aは0〜5の整数であり、nは1〜6の整数である)で表される塩等の含フッ素有機酸リチウム塩等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
これらのなかでも、電解質塩(II)としては、非水電解液を高温保存した後の劣化を抑制することができる点で、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレート、リチウムビス(オキサレート)ボレート、及び、式:LiPF(C2n+16−a(式中、aは0〜5の整数であり、nは1〜6の整数である)で表される塩からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0014】
式:LiPF(C2n+16−aで表される塩としては、例えば、LiPF(CF、LiPF(C、LiPF(C、LiPF(C、LiPF(CF、LiPF(C、LiPF(C、LiPF(C(ただし、式中のC、Cで表されるアルキル基は、直鎖、分岐構造のいずれであってもよい。)等が挙げられる。
【0015】
非水電解液中の電解質塩(II)の濃度は、0.5〜3モル/リットルが好ましい。この範囲外では、電解液の電気伝導率が低くなり、電池性能が低下してしまう傾向がある。
上記電解質塩の濃度は、0.9モル/リットル以上がより好ましく、1.5モル/リットル以下がより好ましい。
【0016】
また、本発明の非水電解液を電気二重層キャパシタに使用する場合、使用可能な電解質塩(II)としては、従来公知のアンモニウム塩、金属塩のほか、液体状の塩(イオン性液体)、無機高分子型の塩、有機高分子型の塩などがあげられ、アンモニウム塩が好ましい。しかしながら、アンモニウム塩を含め、例示した具体例に限定されるものではない。
【0017】
つぎにアンモニウム塩を例示する。
【0018】
(IIA)テトラアルキル4級アンモニウム塩
一般式(IIA):
【0019】
【化1】

【0020】
(式中、R1a、R2a、R3aおよびR4aは同じかまたは異なり、いずれも炭素数1〜6のエーテル結合を含んでいてもよいアルキル基;Xはアニオン)で示されるテトラアルキル4級アンモニウム塩が好ましく例示できる。また、このアンモニウム塩の水素原子の一部または全部がフッ素原子および/または炭素数1〜4の含フッ素アルキル基で置換されているものも、耐酸化性が向上する点から好ましい。
【0021】
具体例としては、
一般式(IIA−1):
【0022】
【化2】

【0023】
(式中、R1a、R2aおよびXは前記と同じ;xおよびyは同じかまたは異なり0〜4の整数で、かつx+y=4)で示されるテトラアルキル4級アンモニウム塩、
一般式(IIA−2):
【0024】
【化3】

【0025】
(式中、R5aは炭素数1〜6のアルキル基;R6aは炭素数1〜6の2価の炭化水素基;R7aは炭素数1〜4のアルキル基;zは1または2;Xはアニオン)で示されるアルキルエーテル基含有トリアルキルアンモニウム塩、
などがあげられる。
【0026】
アニオンXとしては、無機アニオンでも有機アニオンでもよい。無機アニオンとしては、たとえばAlCl、BF、PF、AsF、TaF、I、SbFがあげられる。有機アニオンとしては、たとえばCFCOO、CFSO、(CFSO、(CSOなどがあげられる。
【0027】
これらのうち、耐酸化性やイオン解離性が良好な点から、BF、PF、AsF、SbFが好ましい。
【0028】
テトラアルキル4級アンモニウム塩の好適な具体例としては、EtNBF、EtNClO、EtNPF、EtNAsF、EtNSbF、EtNCFSO、EtN(CFSON、EtNCSO、EtMeNBF、EtMeNClO、EtMeNPF、EtMeNAsF、EtMeNSbF、EtMeNCFSO、EtMeN(CFSON、EtMeNCSOを用いればよく、特に、EtNBF、EtNPF、EtNSbF、EtNAsF、EtMeNBF、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム塩などがあげられる。
【0029】
(IIB)スピロビピリジニウム塩
一般式(IIB):
【0030】
【化4】

【0031】
(式中、R8aおよびR9aは同じかまたは異なり、いずれも炭素数1〜4のアルキル基;Xはアニオン;n1は0〜5の整数;n2は0〜5の整数)で示されるスピロビピリジニウム塩が好ましく例示できる。また、このスピロビピリジニウム塩の水素原子の一部または全部がフッ素原子および/または炭素数1〜4の含フッ素アルキル基で置換されているものも、耐酸化性が向上する点から好ましい。
【0032】
アニオンXの好ましい具体例は、(IIA)と同じである。
【0033】
好ましい具体例としては、たとえば
【0034】
【化5】

【0035】
などがあげられる。
【0036】
このスピロビピリジニウム塩は溶解性、耐酸化性、イオン伝導性の点で優れている。
【0037】
(IIC)イミダゾリウム塩
一般式(IIC):
【0038】
【化6】

【0039】
(式中、R10aおよびR11aは同じかまたは異なり、いずれも炭素数1〜6のアルキル基;Xはアニオン)で示されるイミダゾリウム塩が好ましく例示できる。また、このイミダゾリウム塩の水素原子の一部または全部がフッ素原子および/または炭素数1〜4の含フッ素アルキル基で置換されているものも、耐酸化性が向上する点から好ましい。
【0040】
アニオンXの好ましい具体例は、(IIA)と同じである。
【0041】
好ましい具体例としては、たとえば
【0042】
【化7】

【0043】
などがあげられる。
【0044】
このイミダゾリウム塩は粘性が低く、また溶解性が良好な点で優れている。
【0045】
(IID)N−アルキルピリジニウム塩
一般式(IID):
【0046】
【化8】

【0047】
(式中、R12aは炭素数1〜6のアルキル基;Xはアニオン)で示されるN−アルキルピリジニウム塩が好ましく例示できる。また、このN−アルキルピリジニウム塩の水素原子の一部または全部がフッ素原子および/または炭素数1〜4の含フッ素アルキル基で置換されているものも、耐酸化性が向上する点から好ましい。
【0048】
アニオンXの好ましい具体例は、(IIA)と同じである。
【0049】
好ましい具体例としては、たとえば
【0050】
【化9】

【0051】
などがあげられる。
【0052】
このN−アルキルピリジニウム塩は粘性が低く、また溶解性が良好な点で優れている。
【0053】
(IIE)N,N−ジアルキルピロリジニウム塩
【0054】
【化10】

【0055】
(式中、R13aおよびR14aは同じかまたは異なり、いずれも炭素数1〜6のアルキル基;Xはアニオン)で示されるN,N−ジアルキルピロリジニウム塩が好ましく例示できる。また、このN,N−ジアルキルピロリジニウム塩の水素原子の一部または全部がフッ素原子および/または炭素数1〜4の含フッ素アルキル基で置換されているものも、耐酸化性が向上する点から好ましい。
【0056】
アニオンXの好ましい具体例は、(IIA)と同じである。
【0057】
好ましい具体例としては、たとえば
【0058】
【化11】

【0059】
【化12】

【0060】
などがあげられる。
【0061】
このN,N−ジアルキルピロリジニウム塩は粘性が低く、また溶解性が良好な点で優れている。
【0062】
これらのアンモニウム塩のうち、(IIA)、(IIB)および(IIC)が溶解性、耐酸化性、イオン伝導性が良好な点で好ましく、さらには
【0063】
【化13】

【0064】
(式中、Meはメチル基;Etはエチル基;Xは、一般式(IIA)と同じ;x、yは一般式(IIA−1)と同じ)が好ましい。
【0065】
また、電解質塩としてリチウム塩を用いてもよい。リチウム塩としては、たとえばLiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF、LiN(SOが好ましい。
【0066】
さらに容量を向上させるためにマグネシウム塩を用いてもよい。マグネシウム塩としては、たとえばMg(ClO、Mg(OOCなどが好ましい。
【0067】
これらのなかでも、低温特性の維持の点から、スピロビピリジニウムテトラボレート、トリエチルメチルアンモニウムテトラボレートまたはテトラエチルアンモニウムテトラボレートが好ましい。
【0068】
本発明の非水電解液を電気二重層キャパシタに使用する場合における、電解質塩(II)の非水電解液中の濃度は要求される電流密度、用途、電解質塩の種類などによって異なるが、0.3モル/リットル以上、さらには0.5モル/リットル以上、特に0.8モル/リットル以上であることが好ましく、3.6モル/リットル以下、さらには2.0モル/リットル以下、特に1.6モル/リットル以下とすることが好ましい。
【0069】
(I)化合物
化合物(I)は、フッ素化鎖状スルホン、及び、フッ素化鎖状スルホン酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であり、非水電解液用溶媒成分として用いられる。化合物(I)としては、一般式(1):
【0070】
【化14】

【0071】
(式中、mは0又は1であり、R及びRは同じかまたは異なり、炭素数1〜7のアルキル基又はフルオロアルキル基である。R及びRのうち、少なくとも一方はフルオロアルキル基である。)で表される化合物であることが好ましい。
なお、一般式(1)において、mが1の場合とは、硫黄原子と、Rとが酸素原子を介して結合していることを表し、mが0の場合とは、硫黄原子と、Rとが直接結合していることを表す。
【0072】
及びRとしては、炭素数1〜6の鎖状又は分岐鎖状アルキル基、炭素数1〜4の鎖状又は分岐鎖状フルオロアルキル基が好ましく、より好ましくは、−CH、−C、−C、−C、−C11、−C13、−CF、−C、−CHCF、−CFCFH、−CHCFCF、−CHCFCFH、−CHCFCFH、−CFCHCF3、−CFCHFCF、−CFCFCF、−CFCFCFH、−CHCFCF、−CHCFCFH、−CHCFCFH、−CHCFCH、−CHCFHCFH、−CHCFHCFH、−CHCFHCHである。更に好ましくは、−CH、−C、−C、−CHCF、−CFCHFCF、−CHCFCF、−CHCFCFHである。
【0073】
一般式(1)で表される化合物のうち、一般式(1’):
【0074】
【化15】

【0075】
(式中、mは0又は1であり、Rは炭素数1〜7のアルキル基であり、Rfは炭素数1〜7のフルオロアルキル基である。)で表される化合物が好ましい形態として挙げられる。
【0076】
一般式(1’)における、Rの好ましい形態としては、上述した一般式(1)におけるR及びRが炭素数1〜7のアルキル基である場合の好ましい形態と同様である。また、Rfの好ましい形態としては、上述した一般式(1)におけるR及びRが炭素数1〜7のフルオロアルキル基である場合の好ましい形態と同様である。
【0077】
一般式(1)で表される化合物の好ましい具体例としては、例えば、HCFCFCHOSOCH、HCFCFCHOSOCHCH、CFCHOSOCH、CFCHOSOCHCH、CFCFCHOSOCH、CFCFCHOSOCHCH等を挙げることができる。
また、一般式(1)で表される化合物としては、
【0078】
【化16】

【0079】
等も具体的に挙げることができる。
これら化合物(I)としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0080】
一般式(1)で表される化合物のうちmが1である化合物、すなわち、下記一般式(1−1):
【0081】
【化17】

【0082】
(式中、R及びRは一般式(1)におけるR及びRと同様である。)で表される化合物は、通常、下記一般式(2−1):
−OH (2−1)
(式中、Rは、一般式(1)におけるRと同様である。)で表される水酸基含有化合物(化合物(A))と、下記一般式(2−2):
SOCl (2−2)
(式中、Rは、一般式(1)におけるRと同様である。)で表される化合物との反応により合成することができる。このように、一般式(2−1)で表される水酸基含有化合物と、一般式(2−2)で表される化合物とを反応させることにより一般式(1)で表される化合物を合成する工程を含む一般式(1)で表される化合物の製造方法もまた、本発明の1つである。
なお、上記合成工程において、一般式(2−1)で表される水酸基含有化合物、及び、一般式(2−2)で表される化合物はそれぞれ、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0083】
上記合成工程において、一般式(2−1)で表される水酸基含有化合物と一般式(2−2)で表される化合物との配合割合は、それぞれの化合物の種類の組合せに応じて適宜設定することができるが、一般式(2−1)で表される水酸基含有化合物と一般式(2−2)で表される化合物とのモル比が、1/1〜1.2/1であることが好ましい。より好ましくは、1/1〜1.06/1である。
【0084】
上記合成工程において、反応温度は、0〜25℃であることが好ましい。反応温度が0℃より低いと、反応速度が遅くなる場合がある。一方、反応温度が25℃より高いと、反応速度は速くなるが、安全性において危険性が増すおそれがある。
【0085】
上記合成工程は、溶媒を用いて行ってもよいし、用いずに行ってもよいが、後述するように合成された一般式(1)で表される化合物を精製して用いる場合、当該精製工程を考慮して、溶媒を用いずに無溶媒系で行うことが好ましい。このように、本発明の一般式(1)で表される化合物の製造方法が、無溶媒系で行われることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
ここで、本発明において、無溶媒系とは、溶媒としての機能を発揮することができる化合物(溶媒成分)が溶媒としての機能を発揮することができる程度の量反応系中に存在しない場合、すなわち、溶媒成分が実質的に存在しない場合だけでなく、溶媒としての機能を発揮することができる化合物であって、後述する中和剤のように、溶媒としての機能に加え、反応系中に存在する物質と反応する(反応系中において不活性でない)化合物が反応系中に含まれる場合も含むものである。すなわち、本発明において、無溶媒系とは、溶媒としての機能のみしか有さない(反応系中において不活性である)化合物が反応系中に実質的に含まれていないことを意味する。
具体的には、溶媒としての機能のみしか有さない化合物の含有量が、一般式(2−1)で表される水酸基含有化合物100質量%に対して、1質量%以下であることを表している。更に本発明においては、後述するように、合成工程を中和剤を添加して行うこともまた、好適な実施形態の1つであるが、合成工程を中和剤を添加して無溶媒系で行う場合には、中和剤以外の溶媒成分の含有量が一般式(2−1)で表される水酸基含有化合物100質量%に対して、1質量%以下で行うことが好ましい。
【0086】
上記溶媒としての機能のみしか有さない(反応系中において不活性である)化合物としては、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジグライム、トリグライム、テトラグライムなどが挙げられる。
【0087】
上記合成工程は、一般式(2−1)で表される水酸基含有化合物と、一般式(2−2)で表される化合物とを反応させるため、副生成物として塩酸等が発生することから、該塩酸等を中和するための中和剤を用いることが好ましい。中和剤を用いて反応系中の塩酸等を中和することにより、目的生成物や反応原料が分解してしまうのを防ぐことができる。
【0088】
上記中和剤としては、副生する塩酸等を中和することができれば特に制限されず、1級アミン、2級アミン、3級アミンなどが挙げられる。これらの中でも、ピリジン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどが好ましい。
これら中和剤としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0089】
上記中和剤の使用量としては、一般式(2−1)で表される水酸基含有化合物のモル数に対して、1〜1.2当量であることが好ましい。中和剤の使用量がこのような範囲であると、目的生成物や反応原料の分解を充分に抑制することが可能である。より好ましくは、1〜1.16当量である。
【0090】
上述したように、本発明の一般式(1)で表される化合物の製造方法は、一般式(2−1)で表される水酸基含有化合物と、一般式(2−2)で表される化合物とを反応させることにより一般式(1)で表される化合物を合成する工程を含むものである。そのため、精製の仕方によっては原料物質である化合物(A)や、一般式(2−2)で表される化合物がプロトンと反応して生成される、下記一般式(2−3):
SOH (2−3)
(式中、Rは、一般式(1)におけるRと同様である。)で表されるスルホ基含有化合物(化合物(B))が不純物として残る場合がある。
このように、化合物(A)、(B)は、一般式(1−1)で表される化合物の合成の際に生じる不純物であるため、一般式(2−1)のRは一般式(1−1)のRと同じものになる。また、一般式(2−2)、(2−3)のRと一般式(1−1)のRも同じものになる。
【0091】
例えば、一般式(1)で表される化合物の好ましい具体例であるHCFCFCHOSOCHは、HCFCFCHOHとCHSOClとの反応により合成することができる。そのため、精製の仕方によっては原料物質であるHCFCFCHOH(化合物(A−1))やCHSOClがプロトンと反応して生成されるCHSOH(化合物(B−1))が不純物として残る場合がある。
【0092】
このように、化合物(A)と(B)の構造は、一般式(1)で表される化合物の構造により決まるものである。従って、一般式(1)で表される化合物が以下のものである場合の不純物は以下のようになる。
【0093】
(一般式(1)で表される化合物がHCFCFCHOSOCHCHである場合)
化合物(A−1)及びCHCHSOH(化合物(B−2))が不純物として残る場合がある。
【0094】
(一般式(1)で表される化合物がCFCHOSOCHである場合)
CFCHOH(化合物(A−2))及び化合物(B−1)が不純物として残る場合がある。
【0095】
(一般式(1)で表される化合物がCFCHOSOCHCHである場合)
化合物(A−2)及び化合物(B−2)が不純物として残る場合がある。
【0096】
(一般式(1)で表される化合物がCFCFCHOSOCHである場合)
CFCFCHOH(化合物(A−3))及び化合物(B−1)が不純物として残る場合がある。
【0097】
(一般式(1)で表される化合物がCFCFCHOSOCHCHである場合)
化合物(A−3)及び化合物(B−2)が不純物として残る場合がある。
【0098】
化合物(A)、(B)は、一般式(1)で表される化合物を合成する際に残存し得る不純物であるが、それらの含有量としては、非水電解液中、一般式(1)で表される化合物に対して化合物(A)及び(B)の合計で5000ppm以下であることが好ましい。一般式(1)で表される化合物に対して化合物(A)及び(B)の合計量が5000ppmよりも多いと、高温保存後の放電特性が低下したり、高電圧化した場合にサイクル劣化が大きくなったりする傾向がある。特に化合物(A)が残っている場合、化合物(A)はLiと容易に反応してしまうため、容量が低下する傾向がある。また、化合物(B)は、強酸であるため電解液を分解してしまう。また、分子起動計算により求めた化合物(A)、(B)のHOMOエネルギーは、一般式(1)で表される化合物よりも高いため耐酸化性が弱い。そのため、高電圧化した場合に分解してしまい、劣化の要因になると考えられる。これらのことから非水電解液中の化合物(A)、(B)の含有量が少ないほど、電池の保存特性の低下は少ないと考えられる。
化合物(A)、(B)の含有量としては、非水電解液中、一般式(1)で表される化合物に対して化合物(A)及び(B)の合計で3500ppm以下であることがより好ましい。更に好ましくは、2500ppm以下である。
なお、一般式(1)で表される化合物を予め精製することにより、非水電解液中の化合物(A)、(B)の含有量を上記範囲内とすることができる。
ここで、ppmは、重量基準であり、例えば、一般式(1)で表される化合物に対して5000ppm以下とは、一般式(1)で表される化合物100重量部に対して、0.5重量部以下であることを表している。
【0099】
本発明の一般式(1)で表される化合物の製造方法は、一般式(1)で表される化合物を合成する合成工程の後、一般式(1)で表される化合物を精製する精製工程を含むことが好ましい。上記精製工程としては、分液、蒸留、分留、濾過等の通常化合物の精製工程として用いられるものを用いることができる。好ましい精製方法としては、例えば、分液した後、一般式(1)で表される化合物を含む層を理論段数5段以上の蒸留塔を用いて精留する方法が挙げられる。
【0100】
また、一般式(1)で表される化合物のうち、下記一般式(3):
【0101】
【化18】

【0102】
(式中、Rは炭素数1〜7のアルキル基であり、Yは炭素数1〜5のアルキル基あるいはフルオロアルキル基である。)で表される化合物は、新規化合物であり、以下の製造方法により製造することができる。
【0103】
下記一般式(3−1):
−SH (3−1)
(式中、Rは上記同様である。)で表されるチオールと、下記一般式:
CF=CYF
(式中、Yは上記同様である。)で表されるフルオロオレフィンとを塩基の存在下に反応させて、下記一般式(3−2):
【化19】

【0104】
(式中、R、Yは上記同様である。)で表される含フッ素チオエーテルを得る工程、及び、
前記含フッ素チオエーテルを酸化剤と反応させて、下記一般式(3−3):
【化20】

【0105】
(式中、R、Yは上記同様である。)で表される含フッ素スルホンを得る工程、を含む製造方法である。
【0106】
前記製造方法で使用する塩基は、水酸化アルカリ金属、及び、水酸化アルカリ土類金属からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、酸化剤は、有機過酸化物、過ハロゲン酸化物、過マンガン酸塩、クロム酸塩、トリフルオロ酢酸、及び、酢酸からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0107】
本発明の非水電解液は、化合物(I)、及び、電解質塩(II)を含むものであるが、さらに、非水電解液用溶媒成分として、化合物(I)以外の溶媒を含んでいてもよい。本発明の非水電解液が非水電解液用溶媒成分として化合物(I)以外の溶媒を含む場合、非水電解液用溶媒(化合物(I)及び化合物(I)以外の溶媒)中、化合物(I)の配合量は、0.01〜20体積%であることが好ましい。非水電解液用溶媒中の化合物(I)(成分(I))の配合量が多くなると放電容量が低下する傾向にあり、その許容できる上限が20体積%である。成分(I)は比較的少ない量でその効果を発揮できる。より好ましくは10体積%以下である。より好ましい下限値は、0.1体積%、更に好ましい下限値は0.5体積%である。
【0108】
また、化合物(I)、特にはHCFCFCHOSOCH、は、特に負極に良質な被膜を形成し、その結果、抵抗を低減するものと考えられる。したがって、黒鉛などの炭素質材料を負極に用いた場合、化合物(I)の配合量は非水電解液用溶媒中特に5体積%以下が好ましい。また、合金系の材料を負極に用いた場合は、膨張、収縮が大きいため炭素質材料系よりも安定な被膜が必要なため、化合物(I)の配合量は非水電解液用溶媒中20体積%以下が好ましい。化合物(I)の配合量が、非水電解液用溶媒中0.01体積%未満であると、量が少なすぎるためガス発生を止める効果が見られない傾向がある。一方、20体積%を超えると伝導度が悪くなり放電容量が低下する傾向にある。
【0109】
本発明の非水電解液としては中でも、上記化合物(I)以外の溶媒として、非フッ素環状カーボネート(III)、及び、非フッ素鎖状カーボネート(IV)を含むことが好ましい。
すなわち、後述する本発明の非水電解液用溶媒、及び、電解質塩(II)を含む非水電解液もまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0110】
(III)非フッ素環状カーボネート
非フッ素環状カーボネートのなかでも、エチレンカーボネート(EC)、ビニレンカーボネート(VC)、プロピレンカーボネート(PC)は誘電率が高く、また、電解質塩の溶解性に特に優れているため、本発明の非水電解液用溶媒成分として好ましい。また、黒鉛系材料を負極に用いる場合には、安定な被膜を負極に形成させることもできる。また、ブチレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートなどを使用することもできる。これらの中でも、特に、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、及び、ブチレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種であることが、誘電率、粘度の点からより好ましい。更に好ましくは、エチレンカーボネート、及び、プロピレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種である。これら非フッ素環状カーボネートは、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0111】
(IV)非フッ素鎖状カーボネート
非フッ素鎖状カーボネートとしては、たとえば、CHCHOCOOCHCH(ジエチルカーボネート:DEC)、CHCHOCOOCH(エチルメチルカーボネート:EMC)、CHOCOOCH(ジメチルカーボネート:DMC)、CHOCOOCHCHCH(メチルプロピルカーボネート)、CHCHCHOCOOCHCHCH(ジ−n−プロピルカーボネート)などの炭化水素系鎖状カーボネートなどの1種または2種以上があげられる。これらのうち沸点が高く、粘性が低く、かつ低温特性が良好なことから、DEC、EMC、DMCが好ましい。すなわち、非フッ素鎖状カーボネート(IV)が、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及び、ジエチルカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。これら非フッ素鎖状カーボネートは、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0112】
非フッ素鎖状カーボネートを含有させることにより、低温特性、粘性低下により負荷特性向上といった効果が得られる。
【0113】
前記非フッ素環状カーボネート(III)を配合する場合は、その含有量が多くなりすぎると、他の成分との相溶性が低下し、特に冬季の外気温や冷凍庫の室温といった低温雰囲気下(たとえば−30〜−20℃)において、他の成分と層分離を起こしてしまうことがある。この観点から、好ましい上限は、非水電解液用溶媒中50体積%であり、より好ましくは40体積%であり、更に好ましくは35体積%、特に好ましくは30体積%である。一方、少なすぎると溶媒全体の電解質塩の溶解性が低下し、所望の電解質濃度(0.8モル/リットル以上)が達成できない傾向があり、さらにリチウム二次電池の負荷特性、サイクル特性を向上させる点から、下限値としては、5体積%であることが好ましく、より好ましくは10体積%である。
【0114】
また、前記非フッ素鎖状カーボネート(IV)を配合する場合は、その配合量の好ましい上限は、非水電解液用溶媒中94.9体積%であり、さらには89.9体積%である。上記配合量にすることで、粘度、誘電率の点から好ましい。一方、下限値としては、44.9体積%であることが好ましい。
【0115】
以上の観点から、本発明の非水電解液に用いる非水電解液用溶媒としては、成分(III)、(IV)、及び、(I)を含み、成分(III)と(IV)と(I)の合計を100体積%としたときに、(III)が5〜50体積%、(IV)が44.9〜94.9体積%、及び、(I)が0.1〜20体積%である溶媒が好ましく、(III)が5〜40体積%、(IV)が44.9.9〜89.9体積%、及び、化合物(I)が0.1〜10体積%の溶媒がより好ましい。
【0116】
また、本発明は、上記非水電解液用溶媒に関するものでもある。すなわち、フッ素化鎖状スルホン及びフッ素化鎖状スルホン酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物(I)、非フッ素環状カーボネート(III)、及び、非フッ素鎖状カーボネート(IV)を含み、(III)と(IV)と(I)の合計を100体積%としたときに、(III)が5〜50体積%、(IV)が44.9〜94.9体積%、及び、(I)が0.1〜20体積%である非水電解液用溶媒もまた、本発明の1つである。
【0117】
前記非水電解液用溶媒は、成分(III)と(IV)と(I)のみで本発明の課題を解決できるが、非水電解液用溶媒として周知の他の溶媒を成分(III)と(IV)と(I)に加えて配合してもよい。その種類および配合量は本発明の課題の解決を損なわない範囲とする必要がある。
【0118】
前記他の溶媒としては、含フッ素カーボネート、含フッ素エーテル、含フッ素エステル、含フッ素ラクトン、フルオロアミド、非フッ素エーテル、及び、非フッ素エステルよりなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒を挙げることができる。また、これらの中でも、耐酸化性の観点から含フッ素エーテル、及び、含フッ素カーボネートからなる群より選択される少なくとも1種の溶媒を含むことが好ましい。
【0119】
(含フッ素カーボネート)
含フッ素カーボネートとしては、含フッ素鎖状カーボネートと含フッ素環状カーボネートが例示できる。
【0120】
含フッ素鎖状カーボネートとしては、たとえば下記一般式(4):
RfOCOORf (4)
(式中、Rf、Rfは同じかまたは異なり、炭素数1〜4の含フッ素アルキル基)で示される含フッ素カーボネートが、難燃性が高く、かつレート特性や耐酸化性が良好な点から好ましい。
【0121】
RfおよびRfとしては、たとえば−CF、−CFCF、−CH(CF、CFCH−、CCH−、HCFCFCH−、CFCFHCFCH−などが例示でき、なかでもCFCH−、CCH−が、難燃性が高く、レート特性や耐酸化性が良好な点から特に好ましい。
【0122】
含フッ素鎖状カーボネートの具体例としては、たとえばCFCHOCOOCHCF、CFCFCHOCOOCHCFCF、CFCFCHOCOOCH、CFCHOCOOCHなどの含フッ素鎖状カーボネートの1種または2種以上が例示でき、なかでもCFCHOCOOCHCF、CFCFCHOCOOCHCFCFが、粘性が適切で、難燃性、他溶媒との相溶性およびレート特性が良好な点から特に好ましい。また、たとえば特開平06−21992号公報、特開2000−327634号公報、特開2001−256983号公報などに記載された化合物も例示できる。
【0123】
含フッ素鎖状カーボネートを配合するときは、耐酸化性向上という効果が期待できる。
【0124】
含フッ素環状カーボネートは、たとえば下記一般式(5):
【化21】

【0125】
(式中、X〜Xは同じかまたは異なり、いずれも−H、−F、−CF、−CFH、−CFH、−CFCF、−CHCFまたは−CHOCHCFCF;ただし、X〜Xの少なくとも1つは−F、−CF、−CFCF、−CHCFまたは−CHOCHCFCFである)で示されるものである。
【0126】
〜Xは、−H、−F、−CF、−CFH、−CFH、−CFCF、−CHCFまたは−CHOCHCFCFであり、誘電率、粘性が良好で、他の溶媒との相溶性に優れる点から−F、−CF、−CHCFが好ましい。
【0127】
一般式(5)において、X〜Xの少なくとも1つが−F、−CF、−CFCF、−CHCFまたは−CHOCHCFCFであれば、−H、−F、−CF、−CFH、−CFH、−CFCF、−CHCFまたは−CHOCHCFCFは、X〜Xの1箇所のみに置換していてもよいし、複数の箇所に置換していてもよい。なかでも、誘電率、耐酸化性が良好な点から、置換箇所は1〜2個が好ましい。
【0128】
含フッ素環状カーボネートを配合する場合は、本発明の非水電解液中に40体積%以下含ませることが好ましい。含フッ素環状カーボネートの含有量が40体積%を超えると、粘度が悪くなるため、レート特性が悪くなる傾向にある。より好ましくはレート特性が良好な点から30体積%以下、さらに好ましくは10体積%以下である。下限は、耐酸化性が良好な点から3体積%、さらに好ましくは5体積%である。
【0129】
含フッ素環状カーボネートのなかでも、高い誘電率、高い耐電圧といった優れた特性がとくに発揮できる点、そのほか電解質塩の溶解性、内部抵抗の低減が良好な点で本発明におけるリチウムイオン二次電池としての特性が向上する点から、次のものが好ましい。
【0130】
耐電圧が高く、電解質塩の溶解性も良好な含フッ素環状カーボネートとしては、たとえば、
【0131】
【化22】

【0132】
などがあげられる。
【0133】
他にも、含フッ素環状カーボネートとしては、
【0134】
【化23】

【0135】
なども使用できる。
【0136】
含フッ素環状カーボネートを含有させることにより、誘電率を上昇させる作用や耐酸化性、イオン伝導度の向上といった効果が得られる。
【0137】
(含フッ素エーテル)
含フッ素エーテルを含有させることにより、高温高電圧での安定性、安全性が向上する。
【0138】
含フッ素エーテルとしては、たとえば下記一般式(6):
Rf−O−Rf (6)
(式中、RfおよびRfは同じかまたは異なり、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のフルオロアルキル基;ただし、少なくとも一方はフルオロアルキル基)で示される化合物が例示できる。ただし、本発明の非水電解液用溶媒は、含フッ素エーテルを含む場合、当該含フッ素エーテルの不純物である、下記(A’)、(B’)で示される化合物の含有量は、前記含フッ素エーテルに対して合計で5000ppm以下であることが好ましい。
(A’)含フッ素不飽和化合物(以下、化合物(A’)ということもある。)
(B’)一般式(6−1):
RfOH (6−1)
(式中、Rfは一般式(6)と同様である。)で示される水酸基含有化合物(以下、化合物(B’)ということもある。)。
【0139】
含フッ素エーテルの具体例としては、たとえば、HCFCFOCHCFCFH、HCFCFCHOCFCFH、CFCFCHOCFCFH、HCFCFCHOCFCFHCF、CFCFCHOCFCFHCF、C13OCH、C13OC、C17OCH、C17OC、CFCFHCFCH(CH)OCFCFHCF、HCFCFOCH(C、HCFCFOC、HCFCFOCHCH(C、HCFCFOCHCH(CHなどがあげられ、特に、HCFCFCHOCFCFH、CFCFCHOCFCFH、HCFCFOCHCFCFH、HCFCFCHOCFCFHCF、CFCFCHOCFCFHCFが、相溶性が高く、電解液に用いた場合の抵抗が小さい点、及び、耐酸化性の点から好ましい。より好ましくは、HCFCFOCHCFCFHである。
【0140】
また、本発明で用いる含フッ素エーテルのフッ素含有率は50質量%以上であることが、耐酸化性、安全性が良好な点から好ましい。特に好ましいフッ素含有率は55〜66質量%である。フッ素含有率は構造式から算出したものである。
【0141】
含フッ素エーテルを配合する場合は、本発明の非水電解液中に60体積%以下含ませることが好ましい。含フッ素エーテルの含有量が60体積%を超えると、相溶性が低くなるほか、レート特性が悪くなる傾向にある。より好ましくは相溶性、レート特性が良好な点から45体積%以下、さらに好ましくは40体積%以下である。下限は、耐酸化性、安全性が良好な点から5体積%、さらに好ましくは10体積%である。
【0142】
上記含フッ素不飽和化合物(A’)は、一般式(6)で示される含フッ素エーテルを合成する際に発生する副生成物に由来するものである。具体的には、一般式(6)で示される含フッ素エーテルからフッ化水素(HF)が脱離して不飽和結合が生じたものである。さらに具体的には、例えば、(A’−1)CF=CFCHOCFCFH、(A’−2)HCFCF=CHOCFCFH、(A’−3)CF=CFCHOCFCFHCF、(A’−4)HCFCFCHOCF=CFCF、(A’−5)HCFCFCHOCFCF=CF、(A’−6)HCFCF=CHOCFCFHCFを挙げることができる。
【0143】
また、水酸基含有化合物(B’)は、一般式(6)で示される含フッ素エーテルを合成する際の原料に由来するものであり、一般式(6−1):
RfOH (6−1)
で示されるものである。ここで、Rfとしては、一般式(6)と同様のものを挙げることができ、水酸基含有化合物(B’)としては、具体的には、(B’−1)HCFCFCHOHを挙げることができる。
【0144】
具体的には、一般式(6)で示される含フッ素エーテルが、HCFCFCHOCFCFHであり、
含フッ素不飽和化合物(A’)が、
(A’−1)CF=CFCHOCFCFH、及び、
(A’−2)HCFCF=CHOCFCF
であり、
水酸基含有化合物(B’)が、
(B’−1)HCFCFCHOH
である組み合わせ、又は、
一般式(6)で示される含フッ素エーテルが、HCFCFCHOCFCFHCFであり、
含フッ素不飽和化合物(A’)が、
(A’−3)CF=CFCHOCFCFHCF
(A’−4)HCFCFCHOCF=CFCF
(A’−5)HCFCFCHOCFCF=CF、及び、
(A’−6)HCFCF=CHOCFCFHCF
であり、
水酸基含有化合物(B’)が、
(B’−1)HCFCFCHOH
である組み合わせが好ましい。
【0145】
化合物(A’)、(B’)は、含フッ素エーテルに含まれる不純物である。従って、一般式(6)で示される含フッ素エーテルを用いる場合は、当該含フッ素エーテルを予め精製して用いることにより、非水電解液中の化合物(A’)、(B’)の含有量を前記範囲内(含フッ素エーテルに対して合計で5000ppm以下)とすることができる。
ここで、ppmは、重量基準であり、含フッ素エーテルに対して5000ppm以下とは、含フッ素エーテル100重量部に対して、0.5重量部以下であることを示す。
【0146】
化合物(A’)、(B’)の含有量の上限値としては、前記含フッ素エーテルに対して合計で3500ppm以下であることがより好ましく、2000ppm以下であることが更に好ましい。化合物(A’)、(B’)の合計量が5000ppmより多いと、高温保存後の放電特性が低下や高電圧化した場合、サイクル劣化が大きくなる傾向がある。化合物(A’)、(B’)の中でも、化合物(B’)はLiと容易に反応をしてしまうため、これが残っている場合、容量が落ちてしまう傾向がある。また、含フッ素不飽和化合物(A’)は二重結合を有するため、これらが多く残っている場合、容易に電解液中の水分等と反応し分解してしまう傾向がある。
【0147】
本発明においては、一般式(1)で示される化合物と一般式(6)で示される化合物を含む非水電解液を用いることで、さらに耐酸化性が高く安全性の高い電池を作製することが可能であるため好ましい。
【0148】
(含フッ素エステル)
含フッ素エステルとしては、下記一般式(7):
RfCOORf (7)
(式中、Rfは炭素数1〜2の含フッ素アルキル基、Rfは炭素数1〜4の含フッ素アルキル基)で示される含フッ素エステルが、難燃性が高く、かつ他溶媒との相溶性や耐酸化性が良好な点から好ましい。
【0149】
Rfとしては、たとえばCF−、CFCF−、HCFCF−、HCF−、CHCF−、CFCH−などが例示でき、なかでもCF−、CFCF−が、レート特性が良好な点から特に好ましい。
【0150】
Rfとしては、たとえば−CF、−CFCF、−CH(CF、−CHCF、−CHCHCF、−CHCFCFHCF、−CH、−CHCFCFH、−CHCH、−CHCFCF、−CHCFCFCFなどが例示でき、なかでも−CHCF、−CH(CF−CH、−CHCFCFHが、他溶媒との相溶性が良好な点から特に好ましい。
【0151】
含フッ素エステルの具体例としては、たとえばCFC(=O)OCHCF、CFC(=O)OCHCHCF、CFC(=O)OCH、CFC(=O)OCHCFCFH、CFC(=O)OCH(CFなどの1種または2種以上が例示でき、なかでもCFC(=O)OCH、CFC(=O)OCHCFCFH、CFC(=O)OCHCF、CFC(=O)OCH(CFが、他溶媒との相溶性およびレート特性が良好な点から特に好ましい。
【0152】
含フッ素エステルを配合するときは、耐酸化性向上という効果が期待できる。
【0153】
(含フッ素ラクトン)
含フッ素ラクトンとしては、たとえば、下記一般式(8):
【0154】
【化24】

【0155】
(式中、X〜X10は同じかまたは異なり、いずれも−H、−F、−Cl、−CHまたは含フッ素アルキル基;ただし、X〜X10の少なくとも1つは含フッ素アルキル基である)で示される含フッ素ラクトンがあげられる。
【0156】
〜X10における含フッ素アルキル基としては、たとえば、−CFH、−CFH、−CF、−CHCF、−CFCF、−CHCFCF、−CF(CFなどがあげられ、耐酸化性が高く、安全性向上効果がある点から−CHCF、−CHCFCFが好ましい。
【0157】
〜X10の少なくとも1つが含フッ素アルキル基であれば、−H、−F、−Cl、−CHまたは含フッ素アルキル基は、X〜X10の1箇所のみに置換していてもよいし、複数の箇所に置換していてもよい。好ましくは、電解質塩の溶解性が良好な点から1〜3箇所、さらには1〜2箇所である。
【0158】
含フッ素アルキル基の置換位置はとくに限定されないが、合成収率が良好なことから、Xおよび/またはXが、特にXまたはXが含フッ素アルキル基、なかでも−CHCF、−CHCFCFであることが好ましい。含フッ素アルキル基以外のX〜X10は、−H、−F、−Clまたは−CHであり、とくに電解質塩の溶解性が良好な点から−Hが好ましい。
【0159】
含フッ素ラクトンとしては、前記一般式(8)で示されるもの以外にも、たとえば、下記一般式(9):
【0160】
【化25】

【0161】
(式中、AおよびBはいずれか一方がCX1617(X16およびX17は同じかまたは異なり、いずれも−H、−F、−Cl、−CF、−CHまたは水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよくヘテロ原子を鎖中に含んでいてもよいアルキレン基)であり、他方は酸素原子;Rfはエーテル結合を有していてもよい含フッ素アルキル基または含フッ素アルコキシ基;X11およびX12は同じかまたは異なり、いずれも−H、−F、−Cl、−CFまたは−CH;X13〜X15は同じかまたは異なり、いずれも−H、−F、−Clまたは水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよくヘテロ原子を鎖中に含んでいてもよいアルキル基;n=0または1)で示される含フッ素ラクトンなどもあげられる。
【0162】
一般式(9)で示される含フッ素ラクトンとしては、下記一般式(10):
【0163】
【化26】

【0164】
(式中、A、B、Rf、X11、X12およびX13は一般式(9)と同じである)で示される5員環構造が、合成が容易である点、化学的安定性が良好な点から好ましくあげられ、さらには、AとBの組合せにより、下記一般式(11):
【化27】

【0165】
(式中、Rf、X11、X12、X13、X16およびX17は一般式(9)と同じである)で示される含フッ素ラクトンと、下記一般式(12):
【0166】
【化28】

【0167】
(式中、Rf、X11、X12、X13、X16およびX17は一般式(9)と同じである)で示される含フッ素ラクトンがある。
【0168】
これらのなかでも、高い誘電率、高い耐電圧といった優れた特性が特に発揮できる点、そのほか電解質塩の溶解性、内部抵抗の低減が良好な点で本発明における電解液としての特性が向上する点から、
【0169】
【化29】

【0170】
が好ましい。
【0171】
その他、
【0172】
【化30】

【0173】
なども使用できる。
【0174】
含フッ素ラクトンを含有させることにより、イオン伝導度の向上、安全性の向上、高温時の安定性向上といった効果が得られる。
【0175】
(フルオロアミド)
フルオロアミドは、一般式(13):
【0176】
【化31】

【0177】
(式中、Rfは、−CF、−CFCF、フルオロフェニル基またはフルオロアルキルフェニル基である。RおよびRは同じかまたは異なり、炭素数1〜8のアルキル基である。)で示される化合物である。
【0178】
フルオロフェニル基としてはフッ素原子を1〜5個含むものが好ましく、耐酸化性が良好な点から特に3〜5個含むものがさらに好ましい。また、フルオロアルキルフェニル基のフルオロアルキル基としては、たとえば−CF、−C、−HC(CFなどがあげられ、相溶性が良好な点、粘性が低くできる点から−CF、−Cが好ましい。
【0179】
およびRとしては、具体的には、−CH、−C、−C、−Cなどが例示でき、なかでも粘性が低い点から−CH、−Cが好ましい。
【0180】
フルオロアミドとして特に好ましい化合物は、つぎの化合物である。
【0181】
【化32】

【0182】
フルオロアミドは本発明の非水電解液中に10体積%以下含ませてもよい。フルオロアミドの含有量が10体積%を超えると、粘度が高くなりイオン伝導性が低くなる傾向にある。好ましくは粘度を下げても高温高電圧での安定性が良好な点から6体積%以下、さらに好ましくは高温高電圧での安定性が特に良好な点から3体積%以下である。好ましい下限は、高温高電圧での安定性の点から0.01体積%、さらには0.05体積%である。
【0183】
(非フッ素エーテル)
非フッ素エーテルとしては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル;ジメトキシエタン、ジメトキシメタン等の鎖状エーテルなどが好ましい。
【0184】
(非フッ素エステル)
非フッ素エステルはレート特性を向上させる効果がある。非フッ素エステルとしては、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状カルボン酸エステル化合物;酢酸エステル、プロピオン酸エステル、ブチル酸エステル等の鎖状カルボン酸エステル化合物などが好ましい。添加量としては、30体積%以下、さらには20体積%以下が電解質塩との相溶性を担保するうえで好ましい。レート特性の向上の点から下限は1体積%、さらには3体積%である。
【0185】
上記化合物(I)以外の溶媒の好ましい形態の1つとして、非フッ素環状カーボネート(III)を20〜45体積%、及び、非フッ素鎖状カーボネート(IV)を55〜80体積%含む形態が挙げられる。上記化合物(I)以外の溶媒としてこのような形態の溶媒を用いた場合、電解液の電気伝導率が高くなり、サイクル特性と大電流放電特性が高くなるため好ましい。
【0186】
上記化合物(I)以外の溶媒の好ましい形態の他の1つとして、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン及びγ−バレロラクトンから選ばれる有機溶媒を60体積%以上含有する形態が挙げられる。好ましくは85体積%以上含有するものである。上記化合物(I)以外の溶媒としてこのような形態の溶媒を用い、電解質塩としてリチウム塩を用いた電解液は、高温で使用しても溶媒の蒸発や液漏れが少ない。なかでも、エチレンカーボネート5〜45体積%とγ−ブチロラクトン55〜95体積%を含む形態、またはエチレンカーボネート30〜60体積%とプロピレンカーボネート40〜70体積%を含む形態が、サイクル特性と大電流放電特性等のバランスがよいため、好ましい。
【0187】
その他、上記化合物(I)以外の溶媒の好ましい形態の1つとして、含燐有機溶媒10体積%以上含む形態が挙げられる。含燐有機溶媒としては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸ジメチルエチル、リン酸メチルジエチル、リン酸エチレンメチル及びリン酸エチレンエチル等が挙げられる。このような形態の溶媒を用いることで、電解液の燃焼性を低下させることができる。特に含燐有機溶媒の含有率が10〜80体積%で、他の成分が主として、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、非フッ素環状カーボネート及び非フッ素鎖状カーボネートから選ばれる溶媒を用い、電解質塩としてリチウム塩を用いて電解液とすると、サイクル特性と大電流放電特性とのバランスがよくなるため、好ましい。
【0188】
また、上記化合物(I)以外の溶媒の好ましい形態の1つとして、分子内に炭素−炭素不飽和結合を有する環状炭酸エステルを8体積%以下含有する形態が挙げられる。好ましくは0.01〜8体積%含有するものである。このような範囲で分子内に炭素−炭素不飽和結合を有する環状炭酸エステルを含有させると、化合物(I)の負極での副反応を抑制し、保存特性及び電池のサイクル特性をさらに向上させることができるため、好ましい。環状炭酸エステルの添加量が8体積%を超えると、保存後の電池特性が低下したり、ガス発生により電池の内圧が上昇する場合がある。下限値としては0.1体積%以上、上限値としては3体積%以下がより好ましい。
【0189】
分子内に炭素−炭素不飽和結合を有する環状炭酸エステルとしては、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、4,5−ジエチルビニレンカーボネート、フルオロビニレンカーボネート、トリフルオロメチルビニレンカーボネート等のビニレンカーボネート化合物;4−ビニルエチレンカーボネート、4−メチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4−エチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4−n−プロピル−4−ビニレンエチレンカーボネート、5−メチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4,4−ジメチル−5−メチレンエチレンカーボネート、4,4−ジエチル−5−メチレンエチレンカーボネート等のビニルエチレンカーボネート化合物などが挙げられる。このうち、ビニレンカーボネート、4−ビニルエチレンカーボネート、4−メチル−4−ビニルエチレンカーボネートまたは4,5−ジビニルエチレンカーボネート、特にビニレンカーボネートまたは4−ビニルエチレンカーボネートが好ましい。これらの2種類以上を併用してもよい。
【0190】
さらに、本発明の非水電解液には、本発明の効果を損なわない範囲で、不燃(難燃)化剤、界面活性剤、高誘電化添加剤、サイクル特性およびレート特性改善剤や過充電防止剤、脱水剤、脱酸剤などの他の添加剤を配合してもよい。
【0191】
不燃性や難燃性の向上のため配合する不燃(難燃)化剤としてはリン酸エステルがあげられる。
【0192】
リン酸エステルとしては、含フッ素アルキルリン酸エステル、非フッ素系アルキルリン酸エステル、アリールリン酸エステルなどがあげられるが、含フッ素アルキルリン酸エステルが電解液の不燃化に寄与する程度が高く、少量で不燃効果をあげることから好ましい。
【0193】
含フッ素アルキルリン酸エステルとしては、特開平11−233141号公報に記載された含フッ素ジアルキルリン酸エステル、特開平11−283669号公報に記載された環状のアルキルリン酸エステルのほか、含フッ素トリアルキルリン酸エステルがあげられる。
【0194】
難燃性を向上させることを目的として、(CHO)P=O、(CFCHO)P=Oなどの難燃化剤も添加することができる。
【0195】
また、界面活性剤は、容量特性、レート特性の改善を図るために配合してもよい。
【0196】
界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれでもよいが、含フッ素界面活性剤が、サイクル特性、レート特性が良好な点から好ましい。
【0197】
たとえば、下記一般式(14):
Rf10COO (14)
(式中、Rf10は炭素数3〜10のエーテル結合を含んでいてもよい含フッ素アルキル基;MはLi、Na、KまたはNHR’(R’は同じかまたは異なり、いずれもHまたは炭素数が1〜3のアルキル基)である)で示される含フッ素カルボン酸塩や、下記一般式(15):
Rf11SO (15)
(式中、Rf11は炭素数3〜10のエーテル結合を含んでいてもよい含フッ素アルキル基;MはLi、Na、KまたはNHR’(R’は同じかまたは異なり、いずれもHまたは炭素数が1〜3のアルキル基)である)で示される含フッ素スルホン酸塩などが好ましく例示される。
【0198】
界面活性剤の配合量は、充放電サイクル特性を低下させずに電解液の表面張力を低下させるという点から、本発明の非水電解液の0.01〜2質量%が好ましい。
【0199】
高誘電化添加剤としては、たとえばスルホラン、メチルスルホラン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、アセトニトリル、プロピオニトリルなどが例示できる。
【0200】
過充電防止剤としては、たとえば、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化物、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ベンゾフラン及びジベンゾフラン等の芳香族化合物;2−フルオロビフェニル、ヘキサフルオロベンゼン、フルオロベンゼン等の芳香族化合物の部分又は完全フッ素化物;2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール及び2,6−ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化合物;ジクロロアニリン、トルエンなどが挙げられる。
これら過充電防止剤を非水電解液中に0.1〜5体積%含有させると、過充電等のときに電池の破裂・発火を抑制することができる。
【0201】
サイクル特性およびレート特性改善剤としては、酢酸メチル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどが例示できる。
【0202】
その他、添加剤として、フルオロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート及びエリスリタンカーボネート等のカーボネート化合物;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物及びフェニルコハク酸無水物等のカルボン酸無水物;エチレンサルファイト、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブサルファン、スルホラン、スルホレン、ジメチルスルホン及びテトラメチルチウラムモノスルフィド等の含硫黄化合物;1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン及びN−メチルスクシイミド等の含窒素化合物;へプタン、オクタン、シクロヘプタン等の炭化水素化合物などを用いることもできる。
これら添加剤を非水電解液中に0.1〜5体積%含有させると、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性が良好となる。
【0203】
以上に説明した本発明の非水電解液は、たとえば、電解コンデンサー、電気二重層キャパシタ、イオンの電荷移動により充電/放電される電池、エレクトロルミネッセンスなどの固体表示素子、電流センサーやガスセンサーなどのセンサーなどに使用することができる。これらの中でも、リチウムイオン二次電池用として用いることが好ましい。このように、本発明の非水電解液を備えるリチウムイオン二次電池もまた、本発明の1つである。また、本発明は、本発明の非水電解液を備える電気二重層キャパシタでもある。
【0204】
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極、負極、及び、本発明の非水電解液を備える。
正極は、正極の材料である正極活物質を含む正極合剤と、集電体とから構成される。
【0205】
上記正極活物質としては、特に、高電圧を産み出すリチウム含有遷移金属複合酸化物が好ましい。
上記リチウム含有遷移金属複合酸化物としては、例えば、
式:LiMn2−b(式中、0.9≦a;0≦b≦1.5;MはFe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Sn、Cr、V、Ti、Mg、Ca、Sr、B、Ga、In、Si及びGeよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属)で表されるリチウム・マンガンスピネル複合酸化物、
式:LiNi1−c(式中、0≦c≦0.5;MはFe、Co、Mn、Cu、Zn、Al、Sn、Cr、V、Ti、Mg、Ca、Sr、B、Ga、In、Si及びGeよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属)で表されるリチウム・ニッケル複合酸化物、又は、
式:LiCo1−d(式中、0≦d≦0.5;MはFe、Ni、Mn、Cu、Zn、Al、Sn、Cr、V、Ti、Mg、Ca、Sr、B、Ga、In、Si及びGeよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属)で表されるリチウム・コバルト複合酸化物が挙げられる。
【0206】
なかでも、エネルギー密度が高く、高出力なリチウムイオン二次電池を提供できる点から、LiCoO、LiMnO、LiNiO、LiMn、LiNi0.8Co0.15Al0.05、またはLiNi1/3Co1/3Mn1/3が好ましい。
【0207】
その他の上記正極活物質として、LiFeO、LiFePO、LiNi0.8Co0.2、Li1.2Fe0.4Mn0.4、LiNi0.5Mn0.5、LiV、V等が挙げられる。
【0208】
本発明のリチウムイオン二次電池が、ハイブリッド自動車用や分散電源用の大型リチウムイオン二次電池として使用される場合、高出力が要求されるため、上記正極活物質の粒子は二次粒子が主体となることが好ましい。
上記正極活物質の粒子は、二次粒子の平均粒子径が40μm以下で、かつ、平均一次粒子径が1μm以下の微粒子を、0.5〜7.0体積%含むものであることが好ましい。平均一次粒子径が1μm以下の微粒子を含有させることにより、電解液との接触面積が大きくなり、電極と電解液との間でのリチウムイオンの拡散をより速くすることができ、その結果、電池の出力性能を向上させることができる。
【0209】
上記正極活物質の含有量は、電池容量が高い点で、正極合剤の50〜99質量%が好ましく、80〜99質量%がより好ましい。
【0210】
上記正極合剤は、更に、結着剤、増粘剤、導電材を含むことが好ましい。
上記結着剤としては、電極製造時に使用する溶媒や電解液に対して安全な材料であれば、任意のものを使用することができ、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0211】
上記増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン等が挙げられる。
【0212】
上記導電材としては、グラファイト、カーボンブラック等の炭素材料等が挙げられる。
【0213】
正極用集電体の材質としては、アルミニウム、チタンもしくはタンタル等の金属、又は、その合金が挙げられる。なかでも、アルミニウム又はその合金が好ましい。
【0214】
正極の製造は、常法によればよい。例えば、上記正極活物質に、上述した結着剤、増粘剤、導電材、溶媒等を加えてスラリー状の正極合剤とし、これを集電体に塗布し、乾燥した後にプレスして高密度化する方法が挙げられる。
【0215】
負極は、負極材料を含む負極合剤と、集電体とから構成される。
【0216】
上記負極材料としては、様々な熱分解条件での有機物の熱分解物や人造黒鉛、天然黒鉛、コークス類、メソカーボンマイクロビーズ、炭素ファイバー、活性炭、ピッチ被覆黒鉛等のリチウムを吸蔵・放出可能な炭素質材料;酸化錫、酸化ケイ素等のリチウムを吸蔵・放出可能な金属酸化物材料;Li2.6Co0.4N等のリチウムを吸蔵・放出可能な金属窒化物材料;リチウム金属;種々のリチウム合金等を挙げることができる。これらの負極材料は、2種以上を混合して用いてもよい。
【0217】
リチウムを吸蔵・放出可能な炭素質材料としては、種々の原料から得た易黒鉛性ピッチの高温処理によって製造された人造黒鉛もしくは精製天然黒鉛、又は、これらの黒鉛にピッチその他の有機物で表面処理を施した後炭化して得られるものが好ましい。
【0218】
上記負極合剤は、更に、結着剤、増粘剤、導電材を含むことが好ましい。
上記結着剤としては、上述した、正極に用いることができる結着剤と同様のものが挙げられる。
上記増粘剤としては、上述した、正極に用いることができる増粘剤と同様のものが挙げられる。
【0219】
負極の導電材としては、銅やニッケル等の金属材料;グラファイト、カーボンブラック等の炭素材料等が挙げられる。
【0220】
負極用集電体の材質としては、銅、ニッケルまたはステンレス等が挙げられる。なかでも、薄膜に加工しやすいという点、及び、コストの点から銅箔が好ましい。
【0221】
負極の製造は、常法によればよい。例えば、上記負極材料に、上述した結着剤、増粘剤、導電材、溶媒等を加えてスラリー状とし、集電体に塗布し、乾燥した後にプレスして高密度化する方法が挙げられる。
【0222】
本発明のリチウムイオン二次電池は、更に、セパレータを備えることが好ましい。
上記セパレータの材質や形状は、電解液に安定であり、かつ、保液性に優れていれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。
なかでも、上記セパレータは、電解液の浸透性やシャットダウン効果が良好である点で、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを原料とする多孔性シート又は不織布等であることが好ましい。そのようなセパレータとしては、例えば、微孔性ポリエチレンフィルム、微孔性ポリプロピレンフィルム、微孔性エチレン−プロピレンコポリマーフィルム、微孔性ポリプロピレン/ポリエチレン2層フィルム、微孔性ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン3層フィルムなどがあげられる。
【0223】
本発明のリチウムイオン二次電池の形状は任意であり、例えば、円筒型、角型、ラミネート型、コイン型、大型等の形状が挙げられる。なお、正極、負極、セパレータの形状及び構成は、それぞれの電池の形状に応じて変更して使用することができる。
【0224】
なお、本発明の非水電解液は不燃性であることから、上記のハイブリッド自動車用や分散電源用の大型リチウムイオン二次電池用の電解液として特に有用であるが、そのほか小型のリチウムイオン二次電池などの非水系電解液としても有用である。
【0225】
また、本発明のリチウムイオン二次電池を備えたモジュールも本発明の一つである。
【0226】
このように本発明の非水電解液を用いれば、高温での保存特性、及び、高電圧サイクル特性に優れた電池や、その電池を用いたモジュールを好適に得ることができる。
【実施例】
【0227】
つぎに本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0228】
なお、以下の実施例および比較例で使用した各化合物は以下のとおりである。
【0229】
成分(I)
(IA):
【0230】
【化33】

【0231】
(IB):
【0232】
【化34】

【0233】
(IC):
【0234】
【化35】

【0235】
成分(II)
(IIA):LiPF
(IIB):LiN(CFSO
(IIC):LiN(CSO
(IID):LiBF
【0236】
成分(III)
(IIIA):エチレンカーボネート
(IIIB):プロピレンカーボネート
【0237】
成分(IV)
(IVA):ジメチルカーボネート
(IVB):エチルメチルカーボネート
(IVC):ジエチルカーボネート
【0238】
成分(V)
(VA):メタンスルホン酸プロピル
(VB):ブタンスルホン酸ブチル
(VC):プロピルスルホニルブタン
(VD):スルホラン
【0239】
実施例1
成分(III)としてエチレンカーボネート(IIIA)、成分(IV)としてジメチルカーボネート(IVA)、成分(I)として(IA)を、30/67/3(体積%)となるように混合し、この非水電解液用溶媒にさらに電解質塩(II)としてLiPF(IIA)を1.0モル/リットルの濃度となるように加え、25℃にて充分に撹拌し本発明の非水電解液を調製した。
【0240】
実施例2〜9
成分(II)、成分(III)、成分(IV)、成分(I)として表1に示す種類と量を用いた以外は、実施例1と同様の方法により非水電解液を調製した。
【0241】
実施例10〜14
成分(II)、成分(III)、成分(IV)、成分(I)として表2に示す種類と量を用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
【0242】
比較例1
成分(II)、成分(IV)、成分(III)として表3に示す種類と量を用い、かつ、成分(I)を配合しなかった以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
【0243】
比較例2〜5
成分(II)、成分(IV)、成分(III)、成分(V)として表3に示す種類と量を用い、かつ、成分(I)を配合しなかった以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
【0244】
これらの非水電解液について、以下の試験1を行った。
【0245】
試験1(電池特性の測定)
以下の方法で円筒型二次電池を作製した。
【0246】
LiCoOとカーボンブラックとポリフッ化ビニリデン(呉羽化学(株)製、商品名:KF−1000)を90/3/7(質量%)で混合した正極活物質を、N−メチル−2−ピロリドンに分散してスラリー状としたものを正極集電体(厚さ15μmのアルミニウム箔)上に均一に塗布し、乾燥して正極合剤層を形成した。その後、ローラプレス機により圧縮成形した後、切断し、リード体を溶接して、帯状の正極を作製した。
【0247】
別途、人造黒鉛粉末に、蒸留水で分散させたスチレン−ブタジエンゴムを固形分で6質量%となるように加え、ディスパーザーで混合してスラリー状としたものを負極集電体(厚さ10μmの銅箔)上に均一に塗布し、乾燥し、負極合剤層を形成した。その後、ローラプレス機により圧縮成形し、切断した後、乾燥し、リード体を溶接して、帯状の負極を作製した。
【0248】
帯状の正極を厚さ20μmの微孔性ポリエチレンフィルム(セパレータ)を介して帯状の負極に重ね、渦巻状に巻回して渦巻状巻回構造の積層電極体とした。その際、正極集電材の粗面側が外周側になるようにして巻回した。その後、この電極体を外径18mmの有底円筒状の電池ケース内に充填し、正極および負極のリード体の溶接を行った。
【0249】
ついで、実施例1〜14および比較例1〜5で調製した電解液を電池ケース内に注入し、電解液がセパレータなどに充分に浸透した後、封口し、予備充電、エージングを行い、筒形のリチウム二次電池を作製した。
【0250】
このリチウム二次電池について、以下の手順で放電容量、負荷特性(高温貯蔵特性)およびサイクル特性を調べた。結果を表1〜3に示す。
【0251】
(放電容量)
充放電電流をCで表示した場合、1800mAを1Cとして以下の充放電測定条件で測定を行った。評価は、比較例1の放電容量の結果を100とした指数で行う。
【0252】
充放電条件
充電:1.0C、4.5Vにて充電電流が1/10Cになるまでを保持(CC・CV充電)
放電:1C 3.0Vcut(CC放電)
【0253】
(高温貯蔵特性)
充電については、1.0Cで4.5Vにて充電電流が1/10Cになるまで充電し0.2C相当の電流で3.0Vまで放電し、放電容量を求めた。その後、1.0Cで4.5Vにて充電電流が1/10Cになるまで充電し85℃の恒温槽に二日間入れた。二日後、室温に冷えるまで十分に置き、0.2相当の電流で3.0Vになるまで放電した。その後、1.0Cで4.5Vにて充電電流が1/10Cになるまで充電し、0.2相当の電流で3.0Vになるまで放電し貯蔵後の放電容量を求めた。貯蔵前の放電容量と、貯蔵後充電し0.2Cで放電させた放電容量を、つぎの計算式に代入して高温貯蔵特性を求めた。
【0254】
【数1】

【0255】
(サイクル特性)
サイクル特性については、上記の充放電条件(1.0Cで4.5Vにて充電電流が1/10Cになるまで充電し1C相当の電流で3.0Vまで放電する)で行う充放電サイクルを1サイクルとし、最初のサイクル後の放電容量と100サイクル後の放電容量を測定した。サイクル特性は、つぎの計算式で求められた値をサイクル維持率の値とした。
【0256】
【数2】

【0257】
【表1】

【0258】
【表2】

【0259】
【表3】

【0260】
表1〜3に示す結果より、化合物(I)を添加したものはこれらを加えていない比較例1よりも放電容量、高温貯蔵特性、サイクル特性が向上していることが分かる。また、構造式のフッ素の部分をすべて水素にした場合の比較例2〜5よりも放電容量、高温貯蔵特性、サイクル特性ともに効果が大きいということが分かる。
【0261】
また、電解質塩を変更しても(実施例10〜12)、放電容量、高温貯蔵特性、サイクル特性ともに効果が大きいということが分かる。さらに、化合物(I)の配合量を0.1体積%と少なくしたとき(実施例13)、および20体積%と大きくしたとき(実施例14)は、いずれにおいても放電容量、高温貯蔵特性、サイクル特性はともに低下するが、比較例1との比較からは向上していることが分かる。
【0262】
合成例1 HCFCFCHOSOCHの合成
10Lの四つ口フラスコに還流管と滴下ロートを設置し反応装置を準備した。その後、氷浴下でHCFCFCHOH(445.35g;3.37モル)とピリジン(306.31g;3.88モル)を加え攪拌した。その後、滴下ロートを用いてメタンスルホン酸クロリド(364.15g;3.20モル)を発熱に注意して滴下した。反応溶液が次第にピリジン塩酸塩の生成とともに乳白色へと変化した。終了後、反応溶液を1N HCl水溶液で洗浄した。洗浄後分液した有機層を採取した。
【0263】
有機層を10段の蒸留精製塔により蒸留精製した。初留の約5%を廃棄し、留出順にほぼ等量をサンプリングすることにより、HCFCFCHOH(化合物(A−1))、CHSOH(化合物(B−1))の含有量の異なる精留A、B、Cを得た。
【0264】
精留A〜Cをガスクロマトグラフィー((株)島津製作所製、GC−17A;カラム:DB624(Length60、I.D 0.32、Film1.8μm);50℃から10℃/分で250℃まで昇温;インジェクション、ディテクター(FID)共に250℃)で測定することにより、HCFCFCHOSOCHの純度、及び、化合物(A−1)、(B−1)のHCFCFCHOSOCHに対する含有量を求めた。結果を表4に示す。
【0265】
【表4】

【0266】
合成例2 HCFCFCHOSOCHCHの合成
10Lの四つ口フラスコに還流管と滴下ロートを設置し反応装置を準備した。その後、氷浴下でHCFCFCHOH(445.35g;3.37モル)とピリジン(306.31g;3.88モル)を加え攪拌した。その後、滴下ロートを用いてエタンスルホン酸クロリド(411.4g;3.20モル)を発熱に注意して滴下した。反応溶液が次第にピリジン塩酸塩の生成とともに乳白色へと変化した。終了後、反応溶液を1N HCl水溶液で洗浄した。洗浄後分液した有機層を採取した。
【0267】
有機層を10段の蒸留精製塔により蒸留精製した。初留の約5%を廃棄し、留出順にほぼ等量をサンプリングすることにより、HCFCFCHOH(化合物(A−1))、CHCHSOH(化合物(B−2))の含有量の異なる精留D、E、Fを得た。
【0268】
精留D〜Fをガスクロマトグラフィー((株)島津製作所製、GC−17A;カラム:DB624(Length60、I.D 0.32、Film1.8μm);50℃から10℃/分で250℃まで昇温;インジェクション、ディテクター(FID)共に250℃)で測定することにより、HCFCFCHOSOCHCHの純度、及び、化合物(A−1)、(B−2)のHCFCFCHOSOCHCHに対する含有量を求めた。結果を表5に示す。
【0269】
【表5】

【0270】
合成例3 CFCHOSOCHの合成
10Lの四つ口フラスコに還流管と滴下ロートを設置し反応装置を準備した。その後、氷浴下でCFCHOH(337.1g;3.37モル)とピリジン(306.31g;3.88モル)を加え攪拌した。その後、滴下ロートを用いてメタンスルホン酸クロリド(364.15g;3.20モル)を発熱に注意して滴下した。反応溶液が次第にピリジン塩酸塩の生成とともに乳白色へと変化した。終了後、反応溶液を1N HCl水溶液で洗浄した。洗浄後分液した有機層を採取した。
【0271】
有機層を10段の蒸留精製塔により蒸留精製した。初留の約5%を廃棄し、留出順にほぼ等量をサンプリングすることにより、CFCHOH(化合物(A−2))、CHSOH(化合物(B−1))の含有量の異なる精留G、H、Iを得た。
【0272】
精留G〜Iをガスクロマトグラフィー((株)島津製作所製、GC−17A;カラム:DB624(Length60、I.D 0.32、Film1.8μm);50℃から10℃/分で250℃まで昇温;インジェクション、ディテクター(FID)共に250℃)で測定することにより、CFCHOSOCHの純度、及び、化合物(A−2)、(B−1)のCFCHOSOCHに対する含有量を求めた。結果を表6に示す。
【0273】
【表6】

【0274】
合成例4 CFCHOSOCHCHの合成
10Lの四つ口フラスコに還流管と滴下ロートを設置し反応装置を準備した。その後、氷浴下でCFCHOH(337.1g;3.37モル)とピリジン(306.31g;3.88モル)を加え攪拌した。その後、滴下ロートを用いてエタンスルホン酸クロリド(364.15g;3.20モル)を発熱に注意して滴下した。反応溶液が次第にピリジン塩酸塩の生成とともに乳白色へと変化した。終了後、反応溶液を1N HCl水溶液で洗浄した。洗浄後分液した有機層を採取した。
【0275】
有機層を10段の蒸留精製塔により蒸留精製した。初留の約5%を廃棄し、留出順にほぼ等量をサンプリングすることにより、CFCHOH(化合物(A−2))、CHCHSOH(化合物(B−2))の含有量の異なる精留J、K、Lを得た。
【0276】
精留J〜Lをガスクロマトグラフィー((株)島津製作所製、GC−17A;カラム:DB624(Length60、I.D 0.32、Film1.8μm);50℃から10℃/分で250℃まで昇温;インジェクション、ディテクター(FID)共に250℃)で測定することにより、CFCHOSOCHCHの純度、及び、化合物(A−2)、(B−2)のCFCHOSOCHCHに対する含有量を求めた。結果を表7に示す。
【0277】
【表7】

【0278】
実施例15
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートの混合物(容量比3:7)97重量部に、精留CのHCFCFCHOSOCH 3重量部を添加し、次いで十分に乾燥したLiPFを1モル/リットルの割合となるように溶解して電解液とした。
【0279】
(コイン型電池の作製)
LiNi1/3Mn1/3Co1/3とカーボンブラックとポリフッ化ビニリデン(呉羽化学(株)製、商品名KF−7200)を92/3/5(質量%)で混合した正極活物質をN−メチル−2−ピロリドンに分散してスラリー状とした正極合剤スラリーを準備した。アルミ集電体上に、得られた正極合剤スラリーを均一に塗布し、乾燥して正極合剤層(厚さ50μm)を形成した。その後、ローラプレス機により圧縮成形して、正極積層体を製造した。
【0280】
正極積層体を打ち抜き機で直径1.6mmの大きさに打ち抜き、円状の正極を作製した。
【0281】
別途、人造黒鉛粉末に、蒸留水で分散させたスチレン−ブタジエンゴムを固形分で6質量%となるように加え、ディスパーザーで混合してスラリー状としたものを負極集電体(厚さ10μmの銅箔)上に均一に塗布し、乾燥し、負極合剤層を形成した。その後、ローラプレス機により圧縮成形し、打ち抜き機で直径1.6mmの大きさに打ち抜き円状の負極を作製した。
【0282】
上記の円状の正極を厚さ20μmの微孔性ポリエチレンフィルム(セパレータ)を介して正極と負極を対向させ、電解液を注入し、電解液がセパレータなどに充分に浸透した後、封止し予備充電、エージングを行い、コイン型のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0283】
(電池特性の測定)
コイン型リチウムイオン二次電池について、つぎの要領で高電圧でのサイクル特性と高温保存特性を調べた。
【0284】
充放電条件
充電:0.5C、4.3Vにて充電電流が1/10Cになるまでを保持(CC・CV充電)
放電:0.5C 3.0Vcut(CC放電)
【0285】
(高電圧サイクル特性)
サイクル特性については、上記の充放電条件(1.0Cで所定の電圧にて充電電流が1/10Cになるまで充電し1C相当の電流で3.0Vまで放電する)で行う充放電サイクルを1サイクルとし、5サイクル後の放電容量と100サイクル後の放電容量を測定する。サイクル特性は、つぎの計算式で求められた値を容量維持率の値とする。
【0286】
【数3】

【0287】
(高温保存特性)
高温保存特性については上記の充放電条件(1.0Cで所定の電圧にて充電電流が1/10Cになるまで充電し1C相当の電流で3.0Vまで放電する)により充放電を行い、放電容量を調べた。その後、再度上記の充電条件で充電をし、85℃の恒温槽の中に1日保存した。保存後の電池を25℃において、上記の放電条件で放電終止電圧3Vまで放電させて残存容量を測定し、さらに上記の充電条件で充電した後、上記の放電条件での定電流で、放電終止電圧3Vまで放電を行って回復容量を測定した。保存前の放電容量を100とした場合の回復容量を表8に示す。
【0288】
実施例16
精留CのHCFCFCHOSOCHを精留BのHCFCFCHOSOCHにした以外は実施例15と同様にして電池を作製し試験を行った。
【0289】
実施例17
精留CのHCFCFCHOSOCHを精留FのHCFCFCHOSOCHCHにした以外は実施例15と同様にして電池を作製し試験を行った。
【0290】
実施例18
精留CのHCFCFCHOSOCHを精留EのHCFCFCHOSOCHCHにした以外は実施例15と同様にして電池を作製し試験を行った。
【0291】
実施例19
精留CのHCFCFCHOSOCHを精留IのCFCHOSOCHにした以外は実施例15と同様にして電池を作製し試験を行った。
【0292】
実施例20
精留CのHCFCFCHOSOCHを精留HのCFCHOSOCHにした以外は実施例15と同様にして電池を作製し試験を行った。
【0293】
実施例21
精留CのHCFCFCHOSOCHを精留LのCFCHOSOCHCHにした以外は実施例15と同様にして電池を作製し試験を行った。
【0294】
実施例22
精留CのHCFCFCHOSOCHを精留KのCFCHOSOCHCHにした以外は実施例15と同様にして電池を作製し試験を行った。
【0295】
実施例23
精留CのHCFCFCHOSOCHを精留AのHCFCFCHOSOCHにした以外は実施例15と同様にして電池を作製し試験を行った。
【0296】
実施例24
精留CのHCFCFCHOSOCHを、精留CのHCFCFCHOSOCHにHCFCFCHOH(化合物(A−1))を10000ppmの割合で添加したものにした以外は実施例15と同様にして電池を作製し試験を行った。
【0297】
実施例25
精留CのHCFCFCHOSOCHを、精留CのHCFCFCHOSOCHにCHSOH(化合物(B−1))を10000ppmの割合で添加したものにした以外は実施例15と同様にして電池を作製し試験を行った。
【0298】
比較例26
精留CのHCFCFCHOSOCHを精留DのHCFCFCHOSOCHCHにした以外は実施例15と同様にして電池を作製し試験を行った。
【0299】
実施例27
精留CのHCFCFCHOSOCHを、精留FのHCFCFCHOSOCHCHにCHCHSOH(化合物(B−2))を10000ppmの割合で添加したものにした以外は実施例15と同様にして電池を作製し試験を行った。
【0300】
実施例28
精留CのHCFCFCHOSOCHを精留GのCFCHOSOCHにした以外は実施例15と同様にして電池を作製し試験を行った。
【0301】
実施例29
精留CのHCFCFCHOSOCHを、精留IのCFCHOSOCHにCFCHOH(化合物(A−2))を10000ppmの割合で添加したものにした以外は実施例15と同様にして電池を作製し試験を行った。
【0302】
実施例30
精留CのHCFCFCHOSOCHを精留JのCFCHOSOCHCHにした以外は実施例15と同様にして電池を作製し試験を行った。
【0303】
【表8】

【0304】
実施例15〜22と実施例23〜30との比較より、非水電解液用溶媒中の化合物(A−1)、(A−2)、(B−1)、(B−2)の合計含有量を5000ppm以下にすることで、高温での保存特性、高電圧サイクル特性をより向上させることが可能であることがわかる。特に、実施例15、17、19、21と、実施例16、18、20、22との比較より、非水電解液用溶媒中の上記(A−1)、(A−2)、(B−1)、(B−2)で示される化合物の合計含有量を2500ppm以下にすることで、さらに特性が向上することがわかる。
【0305】
実施例31
攪拌翼の付いた縦型の混合槽を用いて、これにまずエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比がEC/EMC=3/7となるよう混合し、これに、LiPFが1.0モル/リットル、精留CのHCFCFCHOSOCHが1×10−5mol/kg、及び、添加剤として、ポリエチレンオキシドモノオールとポリエチレンオキシドジオールとの混合物(混合比1:1(モル比)、重量平均分子量2000)が2.5×10−5mol/kgとなるようにそれぞれ添加して混合し、非水電解液を得た。得られた非水電解液を用いる以外は、実施例15と同様に、コイン型のリチウムイオン二次電池を作製し、高電圧でのサイクル特性及び高温保存特性を評価した。容量維持率は92.5%であり、回復容量は91.0であった。
【0306】
実施例32
精留CのHCFCFCHOSOCHを精留FのHCFCFCHOSOCHCHにした以外は実施例31と同様にして電池を作製し評価試験を行った。容量維持率は91.0%であり、回復容量は91.5であった。
【0307】
実施例33
精留CのHCFCFCHOSOCHを精留IのCFCHOSOCHにした以外は実施例31と同様にして電池を作製し評価試験を行った。容量維持率は92.4%であり、回復容量は93.3であった。
【0308】
実施例34
攪拌翼の付いた縦型の混合槽を用いて、これにまずエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比がEC/DEC=3/7となるよう混合し、これに、LiPFが1.0モル/リットル、精留CのHCFCFCHOSOCHが1×10−5mol/kg、及び、添加剤として、ポリエチレンオキシドモノオールとポリエチレンオキシドジオールとの混合物(混合比1:1(モル比)、重量平均分子量2000)が2.5×10−5mol/kgとなるようにそれぞれ添加して混合し、非水電解液を得た。得られた非水電解液を用いる以外は、実施例15と同様に、コイン型のリチウムイオン二次電池を作製し、高電圧でのサイクル特性及び高温保存特性を評価した。容量維持率は90.5%であり、回復容量は91.4であった。
【0309】
実施例35
精留CのHCFCFCHOSOCHを精留FのHCFCFCHOSOCHCHにした以外は実施例34と同様にして電池を作製し評価試験を行った。容量維持率は93.1%であり、回復容量は92.5であった。
【0310】
実施例36
精留CのHCFCFCHOSOCHを精留IのCFCHOSOCHにした以外は実施例34と同様にして電池を作製し評価試験を行った。容量維持率は91.7%であり、回復容量は92.3であった。
【0311】
実施例37
攪拌翼の付いた縦型の混合槽を用いて、これにまずエチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比がEC/PC/EMC=2/1/7となるよう混合し、これに、LiPFが1.0モル/リットル、精留CのHCFCFCHOSOCHが1×10−5mol/kg、及び、添加剤として、ポリエチレンオキシドモノオールとポリエチレンオキシドジオールとの混合物(混合比1:1(モル比)、重量平均分子量2000)が2.5×10−5mol/kgとなるようにそれぞれ添加して混合し、非水電解液を得た。得られた非水電解液を用いる以外は、実施例15と同様に、コイン型のリチウムイオン二次電池を作製し、高電圧でのサイクル特性及び高温保存特性を評価した。容量維持率は92.4%であり、回復容量は91.5であった。
【0312】
実施例38
精留CのHCFCFCHOSOCHを精留FのHCFCFCHOSOCHCHにした以外は実施例37と同様にして電池を作製し評価試験を行った。容量維持率は93.4%であり、回復容量は91.5であった。
【0313】
実施例39
精留CのHCFCFCHOSOCHを精留IのCFCHOSOCHにした以外は実施例37と同様にして電池を作製し評価試験を行った。容量維持率は90.7%であり、回復容量は90.4であった。
【0314】
実施例40
攪拌翼の付いた縦型の混合槽を用いて、これにまずエチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比がEC/PC/DEC=2/1/7となるよう混合し、これに、LiPFが1.0モル/リットル、精留CのHCFCFCHOSOCHが1×10−5mol/kg、及び、添加剤として、ポリエチレンオキシドモノオールとポリエチレンオキシドジオールとの混合物(混合比1:1(モル比)、重量平均分子量2000)が2.5×10−5mol/kgとなるようにそれぞれ添加して混合し、非水電解液を得た。得られた非水電解液を用いる以外は、実施例15と同様に、コイン型のリチウムイオン二次電池を作製し、高電圧でのサイクル特性及び高温保存特性を評価した。容量維持率は91.2%であり、回復容量は92.4であった。
【0315】
実施例41
精留CのHCFCFCHOSOCHを精留FのHCFCFCHOSOCHCHにした以外は実施例40と同様にして電池を作製し評価試験を行った。容量維持率は93.5%であり、回復容量は92.0であった。
【0316】
実施例42
精留CのHCFCFCHOSOCHを精留IのCFCHOSOCHにした以外は実施例40と同様にして電池を作製し評価試験を行った。容量維持率は91.0%であり、回復容量は90.7であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)フッ素化鎖状スルホン、及び、フッ素化鎖状スルホン酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物、
(II)電解質塩、並びに、
含フッ素カーボネート、含フッ素エーテル、含フッ素エステル、含フッ素ラクトン、フルオロアミド、非フッ素エーテル、及び、非フッ素エステルよりなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒
を含むことを特徴とする非水電解液。
【請求項2】
化合物(I)は、一般式(1):
【化1】

(但し、mは0又は1であり、R及びRは同じかまたは異なり、炭素数1〜7のアルキル基又はフルオロアルキル基である。R及びRのうち、少なくとも一方はフルオロアルキル基である。)で表される化合物である請求項1記載の非水電解液。
【請求項3】
さらに、
(III)非フッ素環状カーボネート、及び、
(IV)非フッ素鎖状カーボネート
を含む請求項1又は2記載の非水電解液。
【請求項4】
フッ素化鎖状スルホン及びフッ素化鎖状スルホン酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物(I)、非フッ素環状カーボネート(III)、非フッ素鎖状カーボネート(IV)、並びに、含フッ素カーボネート、含フッ素エーテル、含フッ素エステル、含フッ素ラクトン、フルオロアミド、非フッ素エーテル、及び、非フッ素エステルよりなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒を含み、(III)と(IV)と(I)の合計を100体積%としたときに、(III)が5〜50体積%、(IV)が44.9〜94.9体積%、及び、(I)が0.1〜20体積%である非水電解液用溶媒。
【請求項5】
請求項4記載の非水電解液用溶媒、及び、電解質塩(II)を含む非水電解液。
【請求項6】
非フッ素環状カーボネート(III)が、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、及び、ブチレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種である請求項3、又は、5記載の非水電解液。
【請求項7】
非フッ素鎖状カーボネート(IV)が、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及び、ジエチルカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種である請求項3、5、又は、6記載の非水電解液。
【請求項8】
電解質塩(II)は、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレート、リチウムビス(オキサレート)ボレート、及び、式:LiPF(C2n+16−a(式中、aは0〜5の整数であり、nは1〜6の整数である)で表される塩からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1、2、3、5、6、又は、7記載の非水電解液。
【請求項9】
リチウムイオン二次電池用である請求項1、2、3、5、6、7、又は、8記載の非水電解液。
【請求項10】
請求項1、2、3、5、6、7、8、又は、9記載の非水電解液を備えるリチウムイオン二次電池。
【請求項11】
請求項10記載のリチウムイオン二次電池を備えるモジュール。
【請求項12】
請求項1、2、3、5、6、7、又は、8記載の非水電解液を備える電気二重層キャパシタ。

【公開番号】特開2012−216499(P2012−216499A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−22943(P2012−22943)
【出願日】平成24年2月6日(2012.2.6)
【分割の表示】特願2011−223781(P2011−223781)の分割
【原出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】