説明

非水電解質二次電池

【課題】層状構造を有し、遷移金属の主成分がニッケル及びマンガンの2元素から構成されるリチウム含有遷移金属酸化物を正極活物質として用いた非水電解質二次電池において、出力特性に優れ、かつ低コストな非水電解質二次電池を得る。
【解決手段】正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、リチウムイオン伝導性を有する非水電解質とを備える非水電解質二次電池において、正極活物質が、層状構造を有し、一般式Li1+x(NiMnCo)O2+α(x+a+b+c=1,0.7≦a+b,0<x≦0.1,0≦c/(a+b)<0.35,0.7≦a/b≦2.0,−0.1≦α≦0.1)で表わされるリチウム含有遷移金属複合酸化物であり、かつ非水電解質に、オキサレート錯体をアニオンとするリチウム塩が含まれていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は小型、軽量、大容量の電池として、携帯機器の電源として広く利用されている。さらに最近ではハイブリッド電気自動車の電源用としても注目が高まっており、さらなる用途拡大が見込まれている。
【0003】
現在一般に用いられている正極活物質にはLiCoOがあるが、Coは高価であり、また埋蔵量が少ないことから、今後の用途拡大に伴う使用量の増大を考えると、Coを使用しない正極活物質が求められている。
【0004】
候補となる正極活物質としては、スピネル型LiMnや層状型LiNiOが挙げられているが、LiMnは高温時のMn溶出に伴う劣化が問題となっており、LiNiOについては熱安定性が低い点や、その合成及び取り扱いが困難であるという点が問題となっている。
【0005】
最近、層状リチウムニッケルマンガン複合酸化物であるLiNi1/2Mn1/2が特許文献1で報告されており、良好な容量や熱安定性が注目されている。しかしイオン伝導度が低く、ハイレート特性や出力特性などの特性が悪いという問題点があった。
【0006】
これまで、この材料の放電特性を改善するためにいくつかの試みがなされてきた。例えば、特許文献2では層状構造を有し、少なくともニッケル及びマンガンを含有するリチウム含有遷移金属酸化物において、上記ニッケル及びマンガンの一部をコバルトで一定量置換した非水電解質二次電池を開示している。しかしながら、コバルトによる元素置換は材料のコスト増となるため、コバルトの置換量が多いとコスト低減の効果が薄れる。一方、コバルト置換量が低い領域、すなわち、具体的には、層状構造を有し、かつ一般式Li1+x(NiMnCo)O2+α(x+a+b+c=1,0.7≦a+b,0<x≦0.1,0≦c/(a+b)<0.35,0.7≦a/b≦2.0,−0.1≦α≦0.1)で表されるリチウム含有遷移金属複合酸化物を正極活物質とする場合、十分な出力特性が得られず、こうした正極材料での出力特性を改善する方策が求められていた。
【0007】
特許文献3では、NiとMnを含むものの、Coの含有量が上記一般式の範囲を超えるリチウム遷移金属複合酸化物(LiNi0.4Co0.3Mn0.3)とスピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(Li1.1Mn1.9)の混合物を正極活物質に用いた電池の高温保存特性を改善するために、オキサレート錯体をアニオンとするリチウム塩を用いることが開示されている。
【0008】
また、特許文献4では、同じくNiとMnを含むものの、Coの含有量が上記一般式の範囲を超えるリチウム遷移金属複合酸化物(LiNi0.4Co0.3Mn0.3)を正極活物質に用い、かつ正極の導電剤に繊維状炭素を含有させた正極を用いた電池において、オキサレート錯体をアニオンとするリチウム塩を電解液に添加することで、安定した低温特性が得られることを開示している。
【0009】
しかしながら、遷移金属の主成分がニッケル及びマンガンの2元素から構成されるリチウム含有遷移金属酸化物を正極活物質として用い、出力特性に優れた非水電解質二次電池が得られていないのが現状である。
【特許文献1】特開2002−428135号公報
【特許文献2】特開2002−110167号公報
【特許文献3】特開2006−196250号公報
【特許文献4】特開2007−250440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、層状構造を有し、遷移金属の主成分がニッケル及びマンガンの2元素から構成されるリチウム含有遷移金属酸化物を正極活物質として用いた非水電解質二次電池において、出力特性に優れ、かつ低コストな非水電解質二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、リチウムイオン伝導性を有する非水電解質とを備える非水電解質二次電池において、正極活物質が、層状構造を有し、一般式Li1+x(NiMnCo)O2+α(x+a+b+c=1,0.7≦a+b,0<x≦0.1,0≦c/(a+b)<0.35,0.7≦a/b≦2.0,−0.1≦α≦0.1)で表わされるリチウム含有遷移金属複合酸化物であり、かつ非水電解質に、オキサレート錯体をアニオンとするリチウム塩が含まれていることを特徴としている。
【0012】
また、本発明においては、上記リチウム含有遷移金属複合酸化物の表面にチタン含有酸化物を付着させたものを正極活物質として用いてもよい。
【0013】
本発明においては、Ni及びMnを主成分として含有し、Coの含有量が少ない、上記一般式で表わされるリチウム含有遷移金属複合酸化物または該リチウム含有遷移金属複合酸化物の表面にチタン含有酸化物を付着させたものを正極活物質として用い、かつ非水電解質にオキサレート錯体をアニオンとするリチウム塩が含まれることにより、出力特性に優れ、かつ低コストな非水電解質二次電池とすることができる。
【0014】
本発明におけるオキサレート錯体をアニオンとするリチウム塩の作用効果の詳細については明らかでないが、初回充電時にオキサレート錯体のアニオンが分解することによって、正極活物質の表面に被膜が形成され、これによって正極活物質の表面でのリチウムイオンの挿入・脱離の反応抵抗が低減され、IV抵抗が低減され、良好な出力特性が得られるものと考えられる。
【0015】
本発明において用いるリチウム含有遷移金属酸化物は、層状構造を有し、遷移金属の主成分がニッケルとマンガンであり、一般式Li1+x(NiMnCo)O2+α(x+a+b+c=1,0.7≦a+b,0<x≦0.1,0≦c/(a+b)<0.35,0.7≦a/b≦2.0,−0.1≦α≦0.1)で表わされる。一般式において、x+a+b+c=1であり、このことは、1より過剰のLiが遷移金属サイドに入っていることを示している。ニッケルとマンガンの組成比であるa/bは、0.7≦a/b≦2.0の範囲である。a/bが2.0を越えると、後述の参考実験に示すように、Niの組成割合が大きくなり、熱安定性が低下する。また、a/bが0.7未満であると、Mn組成割合が大きくなり、不純物相が生じて、容量の低下を招く。熱安定性及び容量のバランスを考慮した場合、0.9≦a/b≦1.1の範囲であることがさらに好ましい。
【0016】
また、1より過剰なLiの量を示すxは、0<x≦0.1の範囲である。0<xであることにより、出力特性を高めることができる。しかしながら、x>0.1であると、活物質表面の残留アルカリが多くなるため、電池作製工程において、スラリーのゲル化が生じるとともに、酸化還元反応を行う遷移金属量が低下し、容量が低下する。xは、さらに好ましくは0.05≦x≦0.1の範囲である。
【0017】
また、a及びbは、0.7≦a+bを満たす。a+bが、0.7より少ないと、ニッケル及びマンガンの含有量が低下し、コバルトの含有量が増加するため、低コストな非水電解質二次電池とすることができない。
【0018】
また、上記一般式において、a、b及びcは、0≦c/(a+b)<0.35の関係を満たす。c/(a+b)が、0.35以上となると、ニッケル及びマンガンの含有量が低下し、コバルトの含有量が増加するため、低コストな非水電解質二次電池とすることができない。
【0019】
特に、上記一般式において、cが0であることが好ましい。すなわち、リチウム含有遷移金属複合酸化物は、Coを含まないものであることが好ましい。これによれば、高価で埋蔵量の少ないCoを使用しないで済むばかりか、より大きなIV抵抗の低減効果が得られる。また、上記一般式において、cが0であると共に、a=bであることがより好ましい。これによれば、さらに大きなIV抵抗の低減効果を得ることができる。
【0020】
上記一般式において、酸素欠損量及び酸素過剰量を表わすαは、−0.1≦α≦0.1の範囲である。本発明におけるリチウム含有遷移金属複合酸化物は、酸素欠損あるいは酸素過剰であっても、本発明の効果を十分に得ることができる。しかしながら、αが、上記の範囲外であると、酸素欠損あるいは酸素過剰により、結晶構造を損ない、本発明の効果が十分に得られなくなる場合がある。
【0021】
本発明におけるリチウム含有遷移金属酸化物の二次粒子径は、5〜15μmの範囲であることが好ましい。また、リチウム含有遷移金属酸化物の一次粒子径は、0.5〜2μmの範囲であることが好ましい。二次粒子径及び一次粒子径が、上記範囲より大きくなると、放電性能が低下する場合がある。また上記範囲より小さくなると、非水電解質との反応性が高くなり、保存特性の低下等を招く場合がある。
【0022】
また、上述のように、本発明においては、上記リチウム含有遷移金属酸化物の表面にチタン含有酸化物を付着させたものを正極活物質として用いることができる。表面にチタン含有酸化物を付着させることにより、リチウム含有遷移金属酸化物へのリチウムの挿入及び脱離の反応抵抗を低減させることができ、出力特性をさらに向上させることができる。この正極活物質中におけるチタン含有酸化物の含有量は、チタンの含有量として、0.05重量%以上、1.0重量%以下であることが好ましく、0.05重量%以上、0.5重量%以下であることがさらに好ましい。0.05重量%未満であると、チタン含有酸化物付着による効果が十分に得られない場合がある。また、1.0重量%を越えると、特性の低下をもたらす場合がある。
【0023】
リチウム含有遷移金属酸化物の表面に付着するチタン含有酸化物の種類は、特に限定されるものではないが、リチウムチタン酸化物あるいはチタン酸化物が好ましく、例えば、LiTiO、LiTi12、TiO等の化合物あるいはこれらの混合物であることが好ましい。
【0024】
リチウム含有遷移金属酸化物の表面に、チタン含有酸化物を付着させる方法は、特に限定されるものではないが、例えば、所定量のリチウム含有遷移金属酸化物とチタン含有酸化物とをメカノフュージョン等の方法を用いて混合し、チタン含有酸化物をリチウム含有遷移金属酸化物の表面に付着する方法が挙げられる。この場合、チタン含有酸化物を付着させた後、熱処理を行うことが好ましい。熱処理を行うことにより、より強固にチタン含有酸化物をリチウム含有遷移金属酸化物の表面に付着させることができる。この際の焼成温度としては、リチウム含有遷移金属酸化物の分解温度以下であることが好ましく、さらに好ましくは、300〜900℃の範囲である。
【0025】
リチウム含有遷移金属酸化物に混合させるチタン含有酸化物としては、例えば、酸化チタン(TiO)等が挙げられる。このような酸化チタンなどとしては、平均粒子径30nm〜500nmの範囲内のものが好ましく用いられる。
【0026】
また、本発明においては、正極活物質が、上記のリチウム含有遷移金属複合酸化物に加えて、スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物をさらに含んでいることが好ましい。この場合は、出力特性をさらに向上させることができる。
【0027】
スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物は、B,F,Mg,Al,Ti,Cr,V,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Nb及びZrからなる群から選ばれた1種類または複数種類の元素を含んでいてもよい。特にこれらの中でも、Mg及びAlのうちの少なくとも一方が含まれていることが好ましい。Mg及びAlのうちの少なくとも一方を含ませることにより、より高いサイクル特性及び高温保存特性を実現することができる。
【0028】
本発明において好ましいスピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物は、具体的には、一般式Li1+yMn4+β、(ここで、AはMg及びAlのうちの少なくとも1種、y+d+e=2,0<e,0<y+e<0.3,−0.1≦β≦0.1)で表わされる。
【0029】
正極活物質中におけるリチウム含有遷移金属複合酸化物とスピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物との重量比(リチウム含有遷移金属複合酸化物:スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物)は、特に限定されないが、90:10〜30:70程度であることが好ましく、70:30〜50:50程度であることがより好ましい。
【0030】
なお、正極活物質として、スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物のみを用いた場合は、オキサレート錯体塩が含まれる電解液を用いても出力特性は十分には向上されない。
【0031】
本発明において、オキサレート錯体をアニオンとするリチウム塩(以下、「オキサレート錯体塩」という)は、非水電解質中に0.05〜0.3モル/リットルの濃度で含有されていることが好ましい。0.05モル/リットルより少ないと、十分な出力特性改善の効果が得られない場合がある。また、0.3モル/リットルを越えると、電池の定格放電容量の低下が大きくなる場合がある。オキサレート錯体塩の非水電解質中の濃度のさらに好ましい範囲は、0.1〜0.2モル/リットルである。このような範囲とすることにより、より良好な出力特性を得ることができる。
【0032】
また、本発明におけるオキサレート錯体塩は、中心原子にC2−が配位したアニオンを有するリチウム塩である。例えば、Li〔M(C〕(式中、Mは遷移金属、周期律表のIIIb族、IVb族、Vb族から選択される元素、Rはハロゲン、アルキル基、ハロゲン置換アルキル基から選択される基、xは正の整数、yは0または正の整数である。)で表わされるものを用いることができる。具体的には、Li〔B(C〕、Li〔B(C)F〕、Li〔P(C)F〕、Li〔P(C〕等を用いることができる。特に、負極表面に高温環境下においても安定な被膜を形成するために、リチウム−ビスオキサレートボレート(Li〔B(C〕)を用いることが望ましい。
【0033】
本発明に用いる負極活物質は、リチウムを可逆的に吸蔵・放出できるものである限り、特に限定されるものではなく、炭素、合金、金属酸化物等を用いることが可能である。特にコストの観点から炭素材料を用いることが好ましく、例えば天然黒鉛、人造黒鉛、メソフェーズピッチ系炭素繊維(MCF)、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス、ハードカーボン、フラーレン、カーボンナノチューブ等を用いることができる。また、これらの中でも、黒鉛材料を、非晶質炭素で被覆した非晶質炭素被覆黒鉛が、出入力特性の観点から好ましく用いられる。
【0034】
本発明に用いる非水電解質のリチウム塩としては、一般に非水電解質二次電池の電解質として用いられるリチウム塩を用いることができる。このようなリチウム塩には、P、B、F、O、S、N、Clのうち、一種類以上の元素が含まれることが好ましい。具体的には、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiC(CSO、LiAsF、LiClOなど及びそれらの混合物を用いることができる。特に、電池の出力特性と耐久性を両立するためにLiPFを用いることが好ましい。
【0035】
また、本発明に用いられる非水電解質の溶媒としては、従来より非水電解質二次電池の電解質の溶媒として用いられているものを用いることができる。例えば、エチレンカーボネ―ト、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状カーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの鎖状カーボネートを用いることができる。特に、低粘度、低融点でリチウムイオン伝導度の高い環状カーボネ―トと鎖状カーボネートの混合溶媒であることが好ましく、上記混合溶媒における環状カーボネートと鎖状カーボネートの比率は、体積比(環状カーボネート/鎖状カーボネート)で、2/8〜5/5であることが好ましい。また、イオン性液体を電解質の溶媒として用いることもできる。この場合、カチオン種、アニオン種については特に限定されるものではないが、低粘度、電気化学的安定性、疎水性を得る観点から、カチオンとしてはピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、4級アンモニウムカチオンを、アニオンとしてはフッ素含有イミド系アニオンを用いた組み合わせが特に好ましい。
【0036】
また、上記非水電解質の溶媒にビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、エチレンサルファイト、フルオロエチレンカーボネート等の被膜形成剤を添加することができる。特に充放電サイクルを繰り返した後の状態においても安定な被膜を得られるようにするために、ビニレンカーボネートを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、層状構造を有し、遷移金属の主成分がニッケル及びマンガンの2元素から構成されるリチウム含有遷移金属酸化物を正極活物質として用いた非水電解質二次電池において、出力特性に優れ、かつ低コストな非水電解質二次電池とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能なものである。
【0039】
(実施例1)
〔正極の作製〕
正極活物質としてリチウム含有遷移金属複合酸化物を以下のようにして作製した。Ni0.5Mn0.5(OH)及びLiCOを混合し、この混合物を空気雰囲気中900℃で20時間焼成することにより、リチウム含有遷移金属複合酸化物を作製した。ICP分光分析法により測定したところ、得られたリチウム含有遷移金属複合酸化物の組成はLi1.06Ni0.47Mn0.47であった。
【0040】
得られたリチウム含有遷移金属複合酸化物の平均粒子径は6μmであり、比表面積は0.6m/gであった。また、空間群R3mに帰属される結晶構造を有することをX線回折測定により確認した。
【0041】
上記のようにして作製したリチウム含有遷移金属複合酸化物と、導電剤としての黒鉛材料と、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを溶かしたN−メチル−2−ピロリドン溶液とを、活物質と導電剤と結着剤の重量比が92:5:3となるよう混合し、正極スラリーを作製した。作製したスラリーを、集電体としてアルミニウム箔上に塗布した後、乾燥し、その後ローラーを用いて圧縮して、集電タブを取り付けることにより正極を作製した。
【0042】
〔負極の作製〕
負極活物質としての非晶質炭素で表面を被覆した黒鉛と、結着剤としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散液と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)を溶かした水溶液を、活物質と結着剤と増粘剤の重量比が98.9:0.4:0.7になるように混練して負極スラリーを作製した。作製したスラリーを集電体としての銅箔上に塗布した後、乾燥し、その後ローラーを用いて圧縮し、集電タブを取り付けて負極を作製した。
【0043】
〔電解液の作製〕
エチレンカーボネート(EC)と、メチルエチルカーボネート(MEC)と、ジメチルカーボネート(DMC)を体積比3:4:3で混合した溶媒に、溶質としてのLiPFを1M(モル/リットル)になるように溶解した。また、上記電解液に重量比で1%の量のビニレンカーボネート(VC)を加えた。その後、さらにリチウム−ビスオキサレートボレート(LiBOB)を0.1Mになるよう溶解して電解液を作製した。
【0044】
〔非水電解質二次電池の作製〕
上記で作製した正極及び負極を、ポリエチレン製のセパレータを介して対向するように巻き取って巻取体を作製し、アルゴン雰囲気下のドライボックス中にて、この巻取体を電解液とともに電池缶に封入することにより、円筒型18650サイズの非水電解質二次電池A1を作製した。
【0045】
作製した非水電解質二次電池を、1000mAで4.2Vまで定電流充電した後、4.2Vで50mAまで定電圧充電を行い、330mAで2.4Vまで放電し、このときの容量を電池放電容量とした。
【0046】
〔IV特性の測定〕
上記のようにして作製した非水電解質二次電池を、25℃の室温下において、200mAの充電電流で充電深度(SOC)が50%になるまで充電させた状態で、それぞれ0.1A、0.5A、1A、2Aの電流で10秒間充電及び放電を行った。このときのそれぞれの電池電圧を測定し、各電流値と電池電圧とをプロットして充電時及び放電時におけるIV特性を求め、得られた直線の傾きから充電側及び放電側におけるIV抵抗(mΩ)を求めた。
【0047】
(実施例2)
実施例1の電解液の作製において、LiBOBを0.05Mになるよう溶解したこと以外は実施例1と同様にして、非水電解質二次電池A2を作製してIV特性を測定した。
【0048】
(実施例3)
実施例1の電解液の作製において、LiBOBを0.15Mになるよう溶解したこと以外は実施例1と同様にして、非水電解質二次電池A3を作製してIV特性を測定した。
【0049】
(実施例4)
実施例1の電解液の作製において、LiBOBを0.2Mになるよう溶解したこと以外は実施例1と同様にして、非水電解質二次電池A4を作製してIV特性を測定した。
【0050】
(実施例5)
実施例1の電解液の作製において、LiBOBを0.3Mになるよう溶解したこと以外は実施例1と同様にして、非水電解質二次電池A5を作製してIV特性を測定した。
【0051】
(実施例6)
実施例1で作製したリチウム含有遷移金属複合酸化物に、平均粒子径50nmのTiOを所定量秤量し、Li1.06Ni0.47Mn0.47と混合した。その後、Li1.06Ni0.47Mn0.47表面にチタン含有酸化物をより強固に付着するために空気中700℃で焼成し、得られたものを正極活物質とした。このようにして作製した正極活物質中のチタン含有量は0.24重量%であった。このようにして得た、表面にチタン含有酸化物を付着させたリチウム含有遷移金属複合酸化物を正極活物質として使用し、それ以外は実施例1と同様にして、実施例6の非水電解質二次電池A6を作製してIV特性を測定した。
【0052】
なお、図1に実施例6で用いた正極活物質のSEM写真を示した。平均粒子径50nmの微粒子がLi1.06Ni0.47Mn0.47の表面にほぼ均等に分散して付着している様子が確認された。ここで、表面に付着した微粒子は原料のTiO、あるいはLi1.06Ni0.47Mn0.47表面の残留リチウムとTiOが反応して生成したLiTiO、LiTi12等のリチウムチタン酸化物(Li−Ti−O)、または両者の混合物であると考えられる。
【0053】
(実施例7)
本実施例では、Ni0.6Mn0.4(OH)を用いたこと以外は上記実施例1と同様にして正極活物質としてのリチウム含有遷移金属複合酸化物を作製し、正極を作製した。ICP分光分析法により測定したところ、得られたリチウム含有遷移金属複合酸化物の組成は、Li1.07Ni0.56Mn0.37であった。
【0054】
得られたリチウム含有遷移金属複合酸化物の平均粒子径は6μmであり、比表面積は0.5m/gであった。また、得られたリチウム含有遷移金属複合酸化物が空間群R3mに帰属される結晶構造を有することをX線解析測定により確認した。
【0055】
また、本実施例で作製した正極を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして非水電解質二次電池A7を作製し、IV特性を測定した。
【0056】
(実施例8)
本実施例では、Ni0.45Co0.1Mn0.45(OH)を用いたこと以外は上記実施例1と同様にして正極活物質としてのリチウム含有遷移金属複合酸化物を作製し、正極を作製した。ICP分光分析法により測定したところ、得られたリチウム含有遷移金属複合酸化物の組成は、Li1.07Ni0.42Co0.09Mn0.42であった。従って、本実施例では、上記一般式におけるc/(a+b)の値は、0.11であった。
【0057】
得られたリチウム含有遷移金属複合酸化物の平均粒子径は7μmであり、比表面積は0.6m/gであった。また、得られたリチウム含有遷移金属複合酸化物が空間群R3mに帰属される結晶構造を有することをX線解析測定により確認した。
【0058】
また、本実施例で作製した正極を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして非水電解質二次電池A8を作製し、IV特性を測定した。
【0059】
(実施例9)
本実施例では、Li1.07Ni0.42Co0.09Mn0.42と、スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物Li1.06Mn1.89Mg0.05とを、重量比で5:5(Li1.07Ni0.42Co0.09Mn0.42:Li1.06Mn1.89Mg0.05=5:5)となるように混合したものを正極活物質として用いたこと以外は、上記の実施例1と同様にして非水電解質二次電池A9を作製し、IV特性を測定した。
【0060】
(実施例10)
本実施例では、Li1.07Ni0.42Co0.09Mn0.42と、スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物Li1.06Mn1.89Mg0.05との重量比(Li1.07Ni0.42Co0.09Mn0.42:Li1.06Mn1.89Mg0.05)を7:3としたこと以外は、上記の実施例9と同様にして非水電解質二次電池A10を作製し、IV特性を測定した。
【0061】
(実施例11)
本実施例では、Li1.07Ni0.56Mn0.37と、スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物Li1.06Mn1.89Mg0.05とを、重量比で5:5(Li1.07Ni0.56Mn0.37:Li1.06Mn1.89Mg0.05=5:5)となるように混合したものを正極活物質として用いたこと以外は、上記の実施例1と同様にして非水電解質二次電池A11を作製し、IV特性を測定した。
【0062】
(比較例1)
実施例1の電解液の作製において、LiBOBを溶解しないこと以外は実施例1と同様にして、非水電解質二次電池B1を作製してIV特性を測定した。
【0063】
(比較例2)
〔正極の作製〕
正極活物質としてリチウム含有遷移金属複合酸化物を以下のようにして作製した。Ni0.4Co0.3Mn0.3(OH)及びLiCOを混合し、この混合物を空気雰囲気中900℃で20時間焼成することによりリチウム含有遷移金属複合酸化物を作製した。ICP分光分析法により測定したところ、得られたリチウム含有遷移金属複合酸化物の組成はLi1.07Ni0.37Co0.28Mn0.28であった。従って、この組成についての上記一般式におけるc/a+bの値は0.43である。
【0064】
得られたリチウム含有遷移金属複合酸化物の平均粒子径は13μmであり、比表面積は0.3m/gであった。また、空間群R3mに帰属される結晶構造を有することをX線回折測定により確認した。
【0065】
上記のようにして作製したリチウム含有遷移金属複合酸化物と、導電剤としての黒鉛材料と、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを溶かしたN−メチル−2−ピロリドン溶液とを、活物質と導電剤と結着剤の重量比が92:5:3となるよう混合し、正極スラリーを作製した。作製したスラリーを、集電体としてアルミニウム箔上に塗布した後、乾燥し、その後ローラーを用いて圧縮して、集電タブを取り付けることにより正極を作製した。
【0066】
このように作製した正極を用いた以外は、実施例1と同様にして、非水電解質二次電池B2を作製してIV特性を測定した。
【0067】
(比較例3)
比較例2の電解液の作製において、LiBOBを溶解しないこと以外は比較例2と同様にして、非水電解質二次電池B3を作製してIV特性を測定した。
【0068】
(比較例4)
電解液の作製においてLiBOBを溶解しないこと以外は実施例6と同様にして、非水電解質二次電池B4を作製してIV特性を測定した。
【0069】
(比較例5)
電解液の作製においてLiBOBを溶解しないこと以外は実施例7と同様にして、非水電解質二次電池B5を作製してIV特性を測定した。
【0070】
(比較例6)
電解液の作製においてLiBOBを溶解しないこと以外は実施例8と同様にして、非水電解質二次電池B6を作製してIV特性を測定した。
【0071】
(比較例7)
本比較例では、Ni0.35Co0.35Mn0.3(OH)を用いたこと以外は上記実施例1と同様にして正極活物質としてのリチウム含有遷移金属複合酸化物を作製し、正極を作製した。ICP分光分析法により測定したところ、得られたリチウム含有遷移金属複合酸化物の組成は、Li1.07Ni0.33Co0.33Mn0.28であった。従って、本実施例では、上記一般式におけるc/(a+b)の値は、0.54であった。
【0072】
得られたリチウム含有遷移金属複合酸化物の平均粒子径は12μmであり、比表面積は0.2m/gであった。また、得られたリチウム含有遷移金属複合酸化物が空間群R3mに帰属される結晶構造を有することをX線解析測定により確認した。
【0073】
また、本比較例で作製した正極を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして非水電解質二次電池B7を作製し、IV特性を測定した。
【0074】
(比較例8)
電解液の作製においてLiBOBを溶解しないこと以外は比較例7と同様にして、非水電解質二次電池B8を作製してIV特性を測定した。
【0075】
(比較例9)
正極の作製においてスピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物Li1.06Mn1.89Mg0.05のみを正極活物質として用いたこと以外は上記の実施例1と同様にして非水電解質二次電池B9を作製してIV特性を測定した。
【0076】
(比較例10)
電解液の作製においてLiBOBを溶解しないこと以外は比較例9と同様にして、非水電解質二次電池B10を作製してIV特性を測定した。
【0077】
(比較例11)
電解液の作製においてLiBOBを溶解しないこと以外は実施例9と同様にして、非水電解質二次電池B11を作製してIV特性を測定した。
【0078】
(比較例12)
電解液の作製においてLiBOBを溶解しないこと以外は実施例10と同様にして、非水電解質二次電池B12を作製してIV特性を測定した。
【0079】
(比較例13)
正極の作製においてリチウム含有遷移金属複合酸化物Li1.07Ni0.33Co0.33Mn0.28とスピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物Li1.06Mn1.89Mg0.05とを重量比で5:5(Li1.07Ni0.33Co0.33Mn0.28:Li1.06Mn1.89Mg0.05=5:5)となるように混合したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして、非水電解質二次電池B13を作製してIV特性を測定した。
【0080】
(比較例14)
電解液の作製においてLiBOBを溶解しないこと以外は比較例13と同様にして、非水電解質二次電池B14を作製してIV特性を測定した。
【0081】
(比較例15)
電解液の作製においてLiBOBを溶解しないこと以外は実施例11と同様にして、非水電解質二次電池B15を作製してIV特性を測定した。
【0082】
上記のようにして測定した18650電池の放電容量とIV特性の評価結果を、以下の表1に示す。
【0083】
【表1】

【0084】
表1に示すように、本発明に従うリチウム含有遷移金属複合酸化物を用い、オキサレート錯体塩(LiBOB)が含まれる電解液を用いた実施例の非水電解質二次電池A1〜A6は、オキサレート錯体塩を含まない比較例1の電池B1と比較し、充電側及び放電側のいずれにおいても、IV抵抗が低減していることがわかる。特に、電解液中のLiBOB濃度が0.1M〜0.2Mの範囲である実施例1、実施例3及び実施例4において、放電側及び充電側ともにIV抵抗をより低減できることがわかる。
【0085】
また、比較例2の電池B2と、比較例3の電池B3との比較から、本発明の範囲外であるリチウム含有遷移金属複合酸化物を用いた場合には、オキサレート錯体塩を電解液中に添加しても、出力特性の改善の効果が得られないことがわかる。従って、オキサレート錯体塩の添加による出力特性改善の効果は、本発明のリチウム含有遷移金属複合酸化物を用いた場合において得られる特有の効果であることがわかる。
【0086】
また、実施例6の電池A6と実施例1の電池A1との比較から、リチウム含有遷移金属複合酸化物の粒子表面にチタン含有酸化物を付着させた正極活物質を用いた電池A6の場合、充電側及び放電側のいずれにおいても電池A1よりもIV抵抗がさらに低減していることがわかる。
【0087】
また、実施例6の電池A6と、比較例4の電池B4との比較から、リチウム含有遷移金属複合酸化物の粒子表面にチタン含有酸化物を付着させた正極活物質を用いた場合においても、オキサレート錯体塩が含まれる電解液を用いることにより、充電側及び放電側のIV抵抗を低減できることがわかる。
【0088】
より詳細には、実施例1の電池A1と比較例1の電池B1との比較、実施例7の電池A7と比較例5の電池B5との比較、及び実施例8の電池A8と比較例6の電池B6との比較により、本発明に従うリチウム含有遷移金属複合酸化物を用い、かつオキサレート錯体塩を電解液中に添加することにより、放電側と充電側との両方においてIV抵抗を低減できることがわかる。なかでも、上記一般式におけるcが0である場合には、オキサレート錯体塩が含まれる電解液を用いることにより、より大きなIV抵抗の低減効果が得られることがわかる。さらには、上記一般式におけるcが0であり、かつa=bである場合には、オキサレート錯体塩が含まれる電解液を用いることにより、特に大きなIV抵抗の低減効果が得られることがわかる。
【0089】
一方、比較例7の電池B7と比較例8の電池B8との比較により、本発明の範囲外のリチウム含有遷移金属複合酸化物を用いた場合は、オキサレート錯体塩が含まれる電解液を用いても、IV抵抗の低減効果が得られないことがわかる。
【0090】
また、実施例9の電池A9と比較例11の電池B11との比較、実施例10の電池A10と比較例12の電池B12との比較、実施例11の電池A11と比較例15の電池B15との比較により、本発明に従うリチウム含有遷移金属複合酸化物と共にスピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物を含有する正極活物質を用いた場合にも、オキサレート錯体塩が含まれる電解液を用いることにより、より大きなIV抵抗の低減効果が得られることがわかる。
【0091】
また、実施例7の電池A7と実施例11の電池A11との比較、実施例8の電池A8と実施例9及び10の電池A9及びA10との比較により、本発明に従うリチウム含有遷移金属複合酸化物と共にスピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物を含有する正極活物質を用いた場合には、本発明に従うリチウム含有遷移金属複合酸化物のみを正極活物質として用いた場合よりも、より大きなIV抵抗の低減効果が得られることがわかる。
【0092】
一方、比較例13の電池B13と比較例14の電池B14との比較により、本発明の範囲外のリチウム含有遷移金属複合酸化物を用いた場合は、オキサレート錯体塩が含まれる電解液を用いてもIV抵抗の低減効果が得られないことがわかる。
【0093】
また、比較例9の電池B9と比較例10の電池B10との比較により、正極活物質としてスピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物のみを用いた場合は、オキサレート錯体塩が含まれる電解液を用いてもIV抵抗の低減効果が得られないことがわかる。
【0094】
以上のように、本発明によれば、常温での充電側及び放電側のIV抵抗を小さくすることができ、入出力特性を向上させることができる。
【0095】
(参考実験1)
〔正極の作製〕
リチウム含有遷移金属酸化物としてLi1.06Ni0.47Mn0.47を用い、実施例1と同様にスラリーを作製し、アルミニウム箔上に塗布・乾燥後、圧延した後、所定のサイズにカットし、これにアルミニウムの集電タブを取り付けることにより参考実験1の正極を作製した。
【0096】
〔巻き取り電極体の作製〕
上記のように作製した正極と負極を、ポリエチレン製のセパレータを介して対向させ巻き取ることにより、巻き取り電極体を作製した。
【0097】
〔非水電解質の作製〕
エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)とジメチルカーボネート(DMC)とをそれぞれ体積比3:3:4で混合した溶媒に対し、LiPFを1モル/リットル溶解し、さらにビニレンカーボネート(VC)を1重量%溶解したものを非水電解質として用いた。
【0098】
〔非水電解質二次電池の作製〕
上記のように作製した正極を作用極とし、負極を対極とし、参照極としてリチウム金属を用いて三電極式セルを作製した。三電極式セル内に上記非水電解質を注入することにより、参考実験1の非水電解質二次電池X1を作製した。
【0099】
〔充電正極と電解液の反応性評価〕
作製した非水電解質二次電池X1を、25℃の条件下で0.2mA/cmの電流密度で4.3V(vs.Li/Li)まで定電流充電を行い、4.3V(vs.Li/Li)で定電圧充電を行った。その後、極板から剥離したリチウム含有遷移金属酸化物5mgと電解液3mgをAl容器内に封入し、DSC測定により電解液と正極活物質の反応性を評価した。
【0100】
(参考実験2)
参考実験1において、リチウム含有遷移金属酸化物をLi1.06Ni0.52Mn0.42とした以外は同様の方法でDSC測定を行った。
【0101】
(参考実験3)
参考実験1において、リチウム含有遷移金属酸化物をLi1.06Ni0.56Mn0.38とした以外は同様の方法でDSC測定を行った。
【0102】
(参考実験4)
参考実験1において、リチウム含有遷移金属酸化物をLi1.06Ni0.66Mn0.28とした以外は同様の方法でDSC測定を行った。
【0103】
参考実験の結果を表2に示す。
【0104】
【表2】

【0105】
表2の結果から明らかなように、リチウム含有遷移金属酸化物の組成がa/b>2.0である参考実験4の場合、a/b≦2.0(参考実験1〜3)の場合と比較して発熱ピーク温度が著しく低下し、熱安定性が急激に低下することがわかった。従って、本発明に係るリチウム含有遷移金属酸化物のa/b比は、熱安定性の観点からa/b≦2.0であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明に従う実施例6において用いた正極活物質を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、リチウムイオン伝導性を有する非水電解質とを備える非水電解質二次電池において、前記正極活物質が、層状構造を有し、一般式Li1+x(NiMnCo)O2+α(x+a+b+c=1,0.7≦a+b,0<x≦0.1,0≦c/(a+b)<0.35,0.7≦a/b≦2.0,−0.1≦α≦0.1)で表わされるリチウム含有遷移金属複合酸化物であり、かつ前記非水電解質に、オキサレート錯体をアニオンとするリチウム塩が含まれていることを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項2】
正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、リチウムイオン伝導性を有する非水電解質とを備える非水電解質二次電池において、前記正極活物質が、層状構造を有し、一般式Li1+x(NiMnCo)O2+α(x+a+b+c=1,0.7≦a+b,0<x≦0.1,0≦c/(a+b)<0.35,0.7≦a/b≦2.0,−0.1≦α≦0.1)で表わされるリチウム含有遷移金属複合酸化物の表面にチタン含有酸化物を付着させたものであり、かつ前記非水電解質に、オキサレート錯体をアニオンとするリチウム塩が含まれていることを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記正極活物質が、スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物をさらに含んでいることを特徴とする請求項1または2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記リチウム含有遷移金属複合酸化物は、前記一般式におけるcが0であるリチウム含有遷移金属複合酸化物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記オキサレート錯体を含むリチウム塩が、リチウム−ビスオキサレートボレートであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項6】
前記オキサレート錯体を含むリチウム塩が、前記非水電解質中に0.05〜0.3モル/リットルの濃度で含まれていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項7】
前記負極活物質が、非晶質炭素被覆黒鉛であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項8】
前記非水電解質に、ビニレンカーボネートが含まれていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。

【図1】
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【公開番号】特開2010−50079(P2010−50079A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319939(P2008−319939)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】