説明

非水電解質二次電池

【課題】非水電解質二次電池の寿命を長くすることが可能で、かつ、負極での電気抵抗が増大するのを抑制することが可能な非水電解質二次電池を提供する。
【解決手段】この電池1(非水電解質二次電池)は、非晶質炭素により表面が被覆されるとともに3μm以上10μm以下の平均粒径を有する黒鉛からなる負極活物質と、黒鉛の平均粒径以下の平均粒径を有する炭素とを含む負極4を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、非水電解質二次電池に関し、特に、黒鉛からなる負極活物質を含む負極を備える非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池では、負極活物質として黒鉛が用いられている。しかしながら、負極活物質として黒鉛を用いた場合には、黒鉛が非水電解質と反応しやすいため、非水電解質二次電池の寿命が短くなるという不都合があった。そこで、従来、黒鉛よりも非水電解質との反応性が低い非晶質炭素によって、黒鉛粒子の表面を被覆することが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1では、難黒鉛化性炭素や易黒鉛化性炭素などの非晶質炭素により表面が被覆された黒鉛からなる負極活物質を用いたリチウムイオン電池が提案されている。この提案されたリチウムイオン電池では、略均一の厚みを有する非晶質炭素により表面が被覆された黒鉛からなる負極活物質と、ポリフッ化ビニリデンからなるバインダと、N−メチルピロリドンからなる溶媒とをスラリー状に混合した混合物を、銅集電体に塗布することによって負極板が形成されている。なお、負極板に含まれる負極活物質としての黒鉛粒子は、6μm以上50μm以下の平均粒径を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−329436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、本願発明者は、種々検討した結果、非晶質炭素により表面が被覆された黒鉛(負極活物質)を用いた負極において、上記特許文献1に開示されている黒鉛粒子の平均粒径(6μm以上50μm以下)のうち、負極活物質の黒鉛粒子の平均粒径が大きい場合には、非水電解質との反応性が低い非晶質炭素により黒鉛粒子の表面を被覆したとしても、非水電解質二次電池の寿命が短くなるという問題点があることを見出した。一方、本願発明者は、負極活物質の黒鉛粒子の平均粒径が小さい場合には、充放電により負極での電気抵抗が増大するという問題点があることも見出した。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、非水電解質二次電池の寿命を長くすることが可能で、かつ、負極での電気抵抗が増大するのを抑制することが可能な非水電解質二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
上記目的を達成するために本願発明者が鋭意検討した結果、上記課題を解決するために以下のような構成を見出した。すなわち、この発明の一の局面による非水電解質二次電池は、非晶質炭素により表面が被覆されるとともに3μm以上10μm以下の平均粒径を有する黒鉛からなる負極活物質と、黒鉛の平均粒径以下の平均粒径を有する炭素とを含む負極を備える。
【0008】
この発明の一の局面による非水電解質二次電池では、上記のように、非晶質炭素により表面が被覆されるとともに3μm以上10μm以下の平均粒径を有する黒鉛からなる負極活物質を含むようにして負極を構成することによって、充放電による不可逆容量が大きくなるのを抑制することができるので、リチウムイオン電池の寿命を長くすることができる。
【0009】
また、この発明の一の局面による非水電解質二次電池では、負極が、非晶質炭素により表面が被覆される黒鉛からなる負極活物質と、黒鉛の平均粒径以下の平均粒径を有する炭素とを含むことによって、黒鉛の平均粒径以下の平均粒径を有する微細な炭素を、黒鉛の粒子同士の間に効果的に入り込ませることができる。これにより、黒鉛の粒子同士間における電気抵抗が増大することを抑制することができるので、負極での電気抵抗が増大するのを抑制することができる。
【0010】
上記一の局面による非水電解質二次電池において、好ましくは、炭素は、黒鉛の平均粒径以下の平均粒径を有するアセチレンブラックである。このように構成すれば、黒鉛の平均粒径以下の平均粒径を有する微細なアセチレンブラックを、黒鉛の粒子同士間に容易に入り込ませることができる。これにより、黒鉛の粒子同士の電気的な接触を確実に維持することができる。
【0011】
上記炭素が黒鉛の平均粒径以下の平均粒径を有するアセチレンブラックである非水電解質二次電池において、好ましくは、負極は、カルボキシメチルセルロースを含む。このように構成すれば、カルボキシメチルセルロースにより微細なアセチレンブラックが均一に分散されて、アセチレンブラックを黒鉛の粒子同士間に効果的に入り込ませることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態による電池の全体構成を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態による電池1の構成について説明する。なお、電池1は、本発明の「非水電解質二次電池」の一例である。
【0015】
本発明の一実施形態による電池1は、図1に示すように、発電要素2を備えている。この発電要素2は、正極3と負極4とセパレータ5とが巻回されることによって形成されている。また、正極3では、アルミニウム箔またはアルミニウム合金箔からなる正極集電体の両面に正極活物質を含有する正極合剤が塗布されている。また、負極4では、銅箔からなる負極集電体の両面に負極活物質を含有する負極合剤が塗布されている。
【0016】
また、発電要素2は、電池ケース6の内部に収納されているとともに、発電要素2が電池ケース6の内部に収納された状態で電池ケース6の開口部を塞ぐように、電池蓋7が電池ケース6にレーザ溶接により取り付けられている。また、発電要素2の正極3は電池蓋7に接続されているとともに、発電要素2の負極4は電池蓋7の負極端子8に接続されている。また、電池ケース6には、図示しない注液口が形成されている。その注液口を介して電池ケース6の内部に非水電解質を注入した後に、注液口を封止することによって、電池1が形成されている。
【0017】
ここで、本実施形態では、負極4の負極合剤は、負極活物質と、負極板導電助剤と、増粘剤とを含有している。負極活物質は、表面が非晶質炭素によって被覆された黒鉛粒子からなる。黒鉛粒子は、天然の黒鉛および人造黒鉛の少なくともいずれか一方からなるとともに、平均粒径が約3μm以上約10μm以下になるように調整されている。なお、黒鉛粒子の平均粒径は、約3μm以上約5μm以下であるのが好ましい。さらに、黒鉛粒子の平均粒径は、5μm程度であるのがより好ましい。
【0018】
黒鉛粒子を被覆する非晶質炭素は、炭素結晶子が秩序立った配列で殆ど並んでいない難黒鉛化性炭素(HC)、または、炭素結晶子がある程度秩序立った配列で並ぶ易黒鉛化性炭素(SC)からなる。難黒鉛化炭素とは、常圧下あるいは減圧下で3300K付近の超高温まで加熱しても黒鉛に変換し得ない非晶質炭素であり、易黒鉛炭素とは、3300K前後の高温処理により黒鉛に変換しうる非晶質炭素である。黒鉛粒子を被覆する非晶質炭素としては、d002が3.45Å(0.345nm)以上の非晶質炭素が好ましく、さらには、d002が3.70Å(0.370nm)以上の難黒鉛化炭素がより好ましい。非晶質炭素の原料としては、フェノール樹脂、フラン樹脂およびフルフリルアルコールなどを用いることが可能である。
【0019】
ここで、黒鉛粒子を被覆する非晶質炭素の厚みは、黒鉛粒子の平均粒径に対して非常に小さい。このため、非晶質炭素により表面が被覆された後の黒鉛粒子の平均粒径は、非晶質炭素により表面が被覆される前の黒鉛粒子の平均粒径と殆ど変わらない。
【0020】
また、本実施形態では、負極合剤に含まれる負極板導電助剤は、負極活物質の黒鉛粒子の平均粒径(約3μm以上約10μm以下)以下の平均粒径を有する炭素からなる。この負極板導電助剤の炭素は、導電性を有しており、負極4の電子導電性を向上させる機能を有している。また、負極板導電助剤は、負極活物質の黒鉛粒子の平均粒径の約1/3以下の平均粒径を有するのが好ましい。
【0021】
具体的には、負極板導電助剤の炭素としては、約1.5μm以上約2.0μm以下の平均粒径を有するアセチレンブラック(AB)、または、約1.2μm以上約3.5μm以下の平均粒径を有する黒鉛などを用いることが可能である。なお、約3.0μm以上約3.5μm以下の平均粒径を有する黒鉛を負極板導電助剤として用いる場合、負極板導電助剤の黒鉛の平均粒径は、負極活物質の黒鉛粒子の平均粒径以下である必要がある。
【0022】
また、負極合剤に含まれる増粘剤は、負極4を製造する際に、負極活物質や負極板導電助剤などを均一に分散させる機能を有する。この増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、ポリアクリロニトリルなどを単独または混合して用いることが可能である。ここで、負極板導電助剤としてアセチレンブラック(AB)を用いる場合には、増粘剤としてCMCを用いるのが好ましい。
【0023】
また、必要に応じて、負極合剤に負極バインダなどを含有させてもよい。なお、負極バインダとしては、スチレン−ブタジエン共重合体ゴムの粒子などを用いることが可能である。
【0024】
また、正極3の正極合剤には、正極活物質が含有されている。正極活物質は、特に限定されるものではなく、種々の正極活物質を用いることが可能である。たとえば、正極活物質としては、リチウムおよび遷移金属の複合酸化物を用いることが可能である。具体的には、一般式LiM1(2−δ)(式中、M1はCo、NiまたはMnからなる少なくとも1種の金属であり、xは0.4≦x≦1.2である。また、pは、0.8≦p≦1.2であり、δは0≦δ≦0.5である)や、一般式LiM2(4−δ)(式中、M2はCo、NiまたはMnからなる少なくとも1種の金属であり、xは0.4≦x≦1.2である。また、qは1.5≦q≦2.2であり、δは0≦δ≦0.5である)で表される正極活物質を用いることが可能である。また、これらの複合酸化物にAl、Fe、Cr、Ti、Zn、PおよびBからなる群の少なくとも1種の元素を含有した化合物を用いることも可能である。
【0025】
さらに、一般式LiM3PO(式中、M3は3d軌道に空位の軌道を有する3d遷移金属である。また、xは0≦x≦2であり、uは0.8≦u≦1.2である)で表されるオリビン構造を有するリン酸化合物を正極活物質として用いることが可能である。また、導電性を確保するために、このリン酸化合物に非晶質炭素を被覆したものを用いることも可能である。また、正極活物質として、上記した複合酸化物およびリン酸化合物を2種以上含有するように構成してもよい。
【0026】
また、必要に応じて、正極合剤に正極板導電助剤、結着剤および粘度調整剤などを含有させてもよい。正極板導電助剤としては、アセチレンブラック(AB)、カーボンブラックまたは黒鉛などを用いることが可能である。また、結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ポリアクリロニトリルなどを単独または混合して用いることが可能である。また、粘度調整剤としては、N−メチルピロリドン(NMP)などを用いることが可能である。
【0027】
発電要素2のセパレータ5としては、不織布および合成樹脂微多孔膜などを用いることが可能である。なお、加工のしやすさおよび耐久性向上の観点から、合成樹脂微多孔膜を用いることが好ましい。特に、ポリエチレンやポリプロピレンなどからなるポリオレフィン系微多孔膜を用いることがより好ましい。また、ポリオレフィン系微多孔膜の表面にアラミド層などを形成することによって、セパレータ5の耐熱性を向上させてもよい。
【0028】
また、発電要素2と共に電池ケース6の内部に配置される非水電解質として、電解質塩を非水溶媒に溶解させたものを用いる。非水電解質の電解質塩としては、LiClO、LiPF、LiBF、LiAsF、LiCFCO、LiC(CF、LiC(C、LiCFSO、LiCFCFSO、LiCFCFCFSO、LiN(SOCF、LiN(SOCFCF、LiN(COCF、LiN(COCFCFおよびLiPF(CFCFなどを用いることが可能である。また、上記電解質塩を単独または2種以上混合して用いることも可能である。なお、導電性向上の観点から、電解質塩としてLiPFを用いることが好ましい。また、電解質塩として、LiPFを主成分とするとともに、LiBFなどのLiPF以外の上記電解質塩が混合された混合物を用いてもよい。
【0029】
非水電解質の非水溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホラン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピレン酸メチル、プロピレン酸エチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネートおよびジブチルカーボネートなどを用いることが可能である。また、非水溶媒は、非水電解質の導電性や粘度を調整するという観点から、上記した複数の非水溶媒を混合して用いることが好ましい。
【0030】
[実施例]
次に、本発明の効果を確認するために行った電池1の評価試験について説明する。具体的には、上記実施形態に対応する実施例として、以下の実施例1〜5による電池1を作製するとともに、比較例として、以下の比較例1〜4による電池を作製して、評価試験を行った。
【0031】
(実施例1)
(正極の作製)
まず、正極合剤を作製した。具体的には、Li1.1Mn1.8Al0.1からなる正極活物質と、アセチレンブラック(AB)からなる正極板導電助剤と、ポリフッ化ビニリデンからなる結着剤とを混合した。この際、正極活物質(Li1.1Mn1.8Al0.1)、正極板導電助剤(AB)および結着剤(ポリフッ化ビニリデン)の比率を、90質量%、5質量%および5質量%の割合で混合した。そして、この混合物にN−メチルピロリドン(NMP)からなる粘度調整剤を適量加えて粘度を調整することにより、ペースト状の正極合剤を作製した。
【0032】
そして、作製した正極合剤を、20μmの厚みを有するアルミニウム箔(正極集電体)の両面に塗布して乾燥させた。これにより、図1に示す正極合剤が塗布された正極3を作製した。
【0033】
(負極活物質の作製)
また、負極合剤を作製した。具体的には、まず、粉砕された黒鉛の粉と、非晶質炭素である難黒鉛化性炭素(HC)の原料とを混合して乾式攪拌した。この際、難黒鉛化性炭素(HC)の原料としては、フェノール樹脂、フラン樹脂およびフルフリルアルコールなどを用いた。その後、乾式攪拌した混合物を、800℃以上3000℃以下の温度で1時間以上5時間以下の間焼成した。焼成後の微小な粉末を分級除去して、平均粒径が3μmの微小な粉末を選択した。これにより、負極活物質として、HCにより表面が被覆された平均粒径が3μmの黒鉛粒子を得た。
【0034】
(負極の作製)
また、カルボキシメチルセルロース(CMC)からなる増粘剤を溶解させた水溶液中に、1.8μmの平均粒径を有するアセチレンブラック(AB)からなる負極板導電助剤を分散させた。その後、ABを分散させた水溶液に、HCにより表面が被覆された平均粒径が3μmの黒鉛粒子と、スチレン−ブタジエン共重合体ゴムの粒子からなる負極バインダとを所定の割合で混合することにより、ペースト状の負極合剤を作製した。この際、負極活物質(黒鉛粒子)、負極板導電助剤(AB)、増粘剤(CMC)および負極バインダ(スチレン−ブタジエン共重合体ゴムの粒子)の比率を、96質量%、2質量%、1質量%および1質量%の割合で混合した。
【0035】
そして、作製した負極合剤を、15μmの厚みを有する銅箔の両面に塗布して乾燥させた。これにより、図1に示す負極合剤が塗布された負極4を作製した。
【0036】
(未注液電池の作製)
その後、図1に示すように、正極3と負極4との間にセパレータ5を介在させた状態で、正極3、負極4およびセパレータ5を巻回した。これにより、発電要素2を形成した。そして、発電要素2を電池ケース6の内部に配置した状態で、正極3を電池蓋7に接続するとともに、負極4を負極端子8に接続した。その後、電池蓋7を電池ケース6にレーザ溶接により取り付けた。これにより、非水電解質を注入する前の電池1を作製した。
【0037】
(非水電解質の作製および注液)
また、LiPFからなる電解質塩を、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)の体積比が、3:2:5になるように調整した混合溶媒からなる非水溶媒に溶解させた。この際、LiPFの濃度が1mol/Lになるように、LiPFを非水溶媒の混合溶媒内に溶解させて非水電解質を作製した。さらに、非水電解質に、ビニレンカーボネートを含有させた。このビニレンカーボネートは、非水電解質の総重量に対して1.0質量%になるように含有させた。そして、作製した非水電解質を電池ケース6の図示しない注液口から注入した。最後に、注液口を封止することによって、図1に示す実施例1の電池1を作製した。
【0038】
(実施例2)
負極活物質の黒鉛粒子の平均粒径が5μmである点以外は、実施例1と同様にして、実施例2による電池1を作製した。
【0039】
(実施例3)
負極活物質の黒鉛粒子の表面を被覆する非晶質炭素が、易黒鉛化性炭素(SC)である点、および、黒鉛粒子の平均粒径が5μmである点以外は、実施例1と同様にして、実施例3による電池1を作製した。
【0040】
(実施例4)
負極活物質の黒鉛粒子の平均粒径が8μmである点以外は、実施例1と同様にして、実施例4による電池1を作製した。
【0041】
(実施例5)
負極活物質の黒鉛粒子の平均粒径が10μmである点以外は、実施例1と同様にして、実施例5による電池1を作製した。
【0042】
(比較例1)
負極活物質の黒鉛粒子の表面が非晶質炭素によって被覆されていない点、および、黒鉛粒子の平均粒径が5μmである点以外は、実施例1と同様にして、比較例1による電池を作製した。
【0043】
(比較例2)
負極活物質の黒鉛粒子の平均粒径が5μmである点、および、負極が負極板導電助剤を含有しない点以外は、実施例1と同様にして、比較例2による電池を作製した。
【0044】
(比較例3)
負極活物質の黒鉛粒子の平均粒径が25μmである点以外は、実施例1と同様にして、比較例3による電池を作製した。
【0045】
(比較例4)
負極活物質の黒鉛粒子の表面が非晶質炭素によって被覆されていない点、黒鉛粒子の平均粒径が25μmである点、および、負極が負極板導電助剤を含有しない点以外は、実施例1と同様にして、比較例4による電池を作製した。
【0046】
(評価試験)
まず、作製した実施例1〜5の電池1および比較例1〜4の電池を用いて、初期容量の測定を行った。具体的には、実施例1〜5の電池1および比較例1〜4の電池の各々に対して、25℃の温度条件下で、450mAの一定電流を流して4.1Vの電圧を有するまで充電した(定電流充電)。その後、各々の電池に対して、4.1Vの一定電圧で充電を継続した(定電圧充電)。ここで、定電流充電の経過時間と、定電圧充電の経過時間との合計が3時間になるように充電を行った。その後、各々の電池に対して、初期電圧としての4.1Vから放電終止電圧である2.75Vまで低下するまで、450mAの一定電流で放電させた。そして、放電終止電圧(2.75V)になるまでに放電した容量(放電容量)を「初期容量」として測定した。
【0047】
その後、初期容量を測定した後の実施例1〜5の電池1および比較例1〜4の電池を用いて、電池の内部抵抗を測定した。具体的には、実施例1〜5の電池1および比較例1〜4の電池の各々に対して、25℃の温度条件下で、450mAの一定電流を流して3.8Vの電圧を有するまで充電した(定電流充電)。その後、各々の電池に対して、3.8Vの一定電圧で充電を継続した(定電圧充電)。ここで、定電流充電の経過時間と、定電圧充電の経過時間との合計が3時間になるように充電を行った。これにより、電池の充電状態(State Of Charge:SOC)を50%の状態にした。なお、電池のSOCとは、完全充電時(満充電時)のSOCが100%で、完全放電時(空放電時)のSOCが0%とした場合の電池の充電状態を意味する。
【0048】
そして、電池のSOCが50%の状態で、かつ、25℃の温度条件下で5時間保持させた。その後、各々の電池に対して、90mA(I1)で10秒間放電した際の電圧(E1)と、225mA(I2)で10秒間放電した際の電圧(E2)とをそれぞれ測定した。そして、25℃における電池の内部抵抗の抵抗値(Rx)を、Rx=|(E1−E2)/(I1−I2)|という式を用いて算出した。そして、算出した内部抵抗の抵抗値を「45℃サイクル寿命試験前の抵抗値」とした。
【0049】
その後、内部抵抗を測定した後の実施例1〜5の電池1および比較例1〜4の電池を用いて、45℃サイクル寿命試験を行った。具体的には、実施例1〜5の電池1および比較例1〜4の電池の各々に対して、45℃の温度条件下で、450mAの一定電流を流して4.1Vの電圧を有するまで充電した(定電流充電)。その後、各々の電池に対して、4.1Vの一定電圧で充電を継続した(定電圧充電)。ここで、定電流充電の経過時間と、定電圧充電の経過時間との合計が3時間になるように充電を行った。そして、各々の電池に対して、初期電圧としての4.1Vから放電終止電圧である2.75Vまで低下するまで、450mAの一定電流で放電させた。なお、充電後および放電後に、それぞれ、45℃の温度条件下で10分間だけ休止させた。この一連の充放電サイクルを1サイクルとして、各々の電池に対して、1000サイクル繰り返した。そして、充放電サイクルを1000サイクル行った後に、再度、上記した初期容量の測定と同一条件で充放電を行い、その際の放電容量を「サイクル後容量」とした。また、「サイクル後容量」を「初期容量」で除することによって、45℃サイクル寿命試験前後での放電容量の保持率を「容量保持率」として算出した。
【0050】
その後、45℃サイクル寿命試験後の実施例1〜5の電池1および比較例1〜4の電池を用いて、上記した内部抵抗の測定と同様の測定を行い、電池の内部抵抗の抵抗値(Rx)を算出した。そして、算出した内部抵抗の抵抗値を「45℃サイクル寿命試験後の抵抗値」とした。また、「45℃サイクル寿命試験後の抵抗値」を「45℃サイクル寿命試験前の抵抗値」で除することによって、45℃サイクル寿命試験前後での抵抗率の増減を抵抗値増大率として算出した。
【0051】
実施例1〜5の電池1および比較例1〜4の電池の容量保持率および抵抗値増大率を表1に示す。表1に示した評価試験の結果から、実施例1〜5のように、負極が、平均粒径が3μm以上10μm以下であるとともに、非晶質炭素(HCまたはSC)により表面が被覆された黒鉛粒子からなる負極活物質と、黒鉛粒子の平均粒径よりも小さい平均粒径(1.8μm)を有するアセチレンブラック(AB)からなる負極板導電助剤とを含む場合では、容量保持率を82%以上に維持することができるとともに、抵抗値増大率を125%以下に抑えることができた。一方、負極の黒鉛粒子の表面が非晶質炭素により被覆されていない場合(比較例1および4)、負極の黒鉛粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合(比較例3および4)および負極が負極板導電助剤を含まない場合(比較例1および4)では、容量保持率は70%以下しか得られないとともに、抵抗値増大率は160%を越える結果となった。
【0052】
【表1】

【0053】
上記した評価試験の結果から、負極が、平均粒径が3μm以上10μm以下であるとともに、非晶質炭素(HCまたはSC)により表面が被覆された黒鉛粒子からなる負極活物質と、黒鉛粒子の平均粒径よりも小さい平均粒径(1.8μm)を有するアセチレンブラック(AB)からなる負極板導電助剤とを含むように構成することによって、電池の寿命を長くすることができるとともに、負極活物質での抵抗が増大するのを抑制することができることが判明した。
【0054】
より詳細に考察すると、実施例2および実施例3と、比較例1との結果から、非晶質炭素(HCまたはSC)により表面が被覆された黒鉛粒子を負極活物質として用いる場合の容量保持率(82%、85%)は、非晶質炭素により表面が被覆されていない黒鉛粒子を用いる場合の容量保持率(37%)と比べて、45%以上高くなることが判明した。これは、以下の理由によるものと考えられる。すなわち、黒鉛粒子の粗い表面が非晶質炭素により被覆されることにより、非水電解質と反応する黒鉛粒子の比表面積が小さくなる。これにより、反応性が高い黒鉛粒子を反応性が低い非晶質炭素で被覆したことによる、非水電解質との反応性の低下の効果に加えて、非晶質炭素で被覆した黒鉛粒子の比表面積を減少させて、非水電解質と反応する領域を小さくすることができ、電池の寿命を長くすることができたと考えられる。
【0055】
実施例1〜5のように、黒鉛粒子の平均粒径が3μm以上10μm以下と小さい場合には、黒鉛粒子の非水電解質と接触する表面に凹凸が多く、表面の粗い部分が比較的多いと考えられる。このため、黒鉛粒子の凹凸の多い粗い表面が非晶質炭素により被覆されることにより、粗い表面の凹凸部分が非晶質炭素に埋められて平滑化される。これにより、表面の凹凸部分が減少して非水電解質と反応する黒鉛粒子の比表面積が小さくなったので、充放電による不可逆容量が大きくなるのを抑制することができ、その結果、電池の長寿命化を図ることができたと考えられる。
【0056】
さらに、実施例1〜5では、負極活物質の黒鉛の粒子同士の間に、黒鉛粒子の平均粒径よりも小さい平均粒径を有する微細なABが入り込んだので、充放電サイクルに伴う黒鉛粒子の膨張および収縮に起因して黒鉛の粒子同士が離間したとしても、黒鉛の粒子同士の間に入り込んだ微細なABによって、黒鉛の粒子同士の電気的な接触が維持されたと考えられる。これにより、黒鉛の粒子同士間における電気抵抗が増大することを抑制することができ、その結果、負極における電気抵抗が増大するのを抑制できたと考えられる。
【0057】
本願発明者は、負極板導電助剤であるアセチレンブラック(AB)の分散性を向上させてABが凝集するのを抑制するために、増粘剤として種々検討した結果、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を用いるとともに、CMC水溶液にABを加えることによって、CMC水溶液中でABを均一に分散させることができることを見出し、実施例1〜5においても、凝集しやすい微細なABとの組み合わせにおいて、CMCを用いた。このように、増粘剤としてCMCを用いることによって、凝集しやすい微細なABを負極内に均一に分散させることができ、ABを黒鉛の粒子同士の間に効果的に入り込ませることができるので、これによっても、黒鉛の粒子同士の間における電気抵抗が増大することを抑制できたと考えられる。
【0058】
さらに、実施例2および実施例3の結果から、難黒鉛化性炭素(HC)により表面が被覆された黒鉛粒子を負極活物質として用いる場合の容量保持率(85%)は、易黒鉛化性炭素(SC)により表面が被覆された黒鉛粒子を用いる場合の容量保持率(82%)と比べて、高くなることが判明した。また、HCにより表面が被覆された黒鉛粒子を負極活物質として用いる場合の抵抗値増大率(97%)は、SCにより表面が被覆された黒鉛粒子を用いる場合の抵抗値増大率(108%)と比べて、低くなることが判明した。この結果、負極活物質の黒鉛粒子の表面を被覆する非晶質炭素として、難黒鉛化性炭素(HC)を用いることが好ましいことが判明した。
【0059】
また、実施例1、2、4および5の結果から、平均粒径が3μm以上5μm以下の黒鉛粒子を負極活物質として用いる場合の容量保持率(84%、85%)は、平均粒径が5μmよりも大きく10μm以下の黒鉛粒子を負極活物質として用いる場合の容量保持率(82%)と比べて、高くなることが判明した。また、平均粒径が3μm以上5μm以下の黒鉛粒子を負極活物質として用いる場合の抵抗値増大率(97%、108%)は、平均粒径が5μmよりも大きく10μm以下の黒鉛粒子を負極活物質として用いる場合の抵抗値増大率(121%〜125%)と比べて、低くなることが判明した。この結果、負極活物質の黒鉛粒子の平均粒径は、3μm以上5μm以下であるのが好ましいことが判明した。
【0060】
なお、今回開示された実施形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1 電池(非水電解質二次電池)
4 負極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質炭素により表面が被覆されるとともに3μm以上10μm以下の平均粒径を有する黒鉛からなる負極活物質と、前記黒鉛の平均粒径以下の平均粒径を有する炭素とを含む負極を備える、非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記炭素は、前記黒鉛の平均粒径以下の平均粒径を有するアセチレンブラックである、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記負極は、カルボキシメチルセルロースを含む、請求項2に記載の非水電解質二次電池。

【図1】
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【公開番号】特開2013−16353(P2013−16353A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148320(P2011−148320)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】