説明

非水電解質電池用電極箔の製造方法、及び非水電解質電池用電極体の製造方法

【課題】 金属箔の表面にフッ化物、酸化物からなる膜の発生を防止し、活物質層と金属箔との間に生じる抵抗を低くした非水電解質電池用電極箔の製造方法を提供する。
【解決手段】 金属箔30と、金属箔の箔表面31,32上に配置され、アモルファスカーボン膜41にグラファイト構造を有するカーボン粒子部42が散点状に分散して配置された被覆層40と、を備える非水電解質電池用電極箔20の製造方法は、表面及び内部に多数の空孔BHを分散して含むポーラスカーボンからなるターゲット110を用いて、スパッタ法により、金属箔の箔表面上に、アモルファスカーボン膜を成長させると共にカーボン粒子部を分散して配置して、被覆層を形成する被覆層形成工程を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質電池用電極箔の製造方法、及び、この電極箔を用いた非水電解質電池用電極体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ノート型パソコン、ビデオカムコーダなどのポータブル電子機器やハイブリッド電気自動車等の車両の普及により、これらの駆動用電源に用いられる電池の需要は増大している。このような電池として、エネルギ密度の高い非水電解質電池が挙げられる。この非水電解質電池は、非水電解液を含浸させた状態のセパレータを介して正極及び負極を積層または捲回した発電要素を電池ケース内に収容した構造である。
【0003】
ところで、この非水電解質電池の製造時や充放電時には、正極のまたは負極を構成している電極箔(例えば、アルミニウム箔や銅箔)と非水電解液とが反応して、例えば、フッ化物、酸化物等の膜が電極箔の表面上に生じてしまう。すると、電極箔とこの表面に配置した活物質層との間の抵抗が増大するため、この非水電解質電池の内部抵抗が増大してしまう虞がある。
そこで、例えば、特許文献1では、集電体(金属箔)の表面に導電助剤及び活物質を含む組成物層を配置した非水電解質電池用集電体(金属箔)が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−286344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の非水電解質電池用集電体(金属箔)では、導電助剤によって金属箔と組成物層との間の抵抗を低減させることができるが、この導電助剤は活物質と共に金属箔上に配置されているため、金属箔に非水電解液が接触することを防止できるわけではない。このため、非水電解液によって、フッ化物、酸化物等の膜が金属箔に発生する虞がある。このようにして発生した膜が金属箔と組成物層との間の導通における抵抗体となるため、両者間の導電性を低下させてしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、金属箔の表面にフッ化物、酸化物からなる膜の発生を防止し、活物質層と金属箔との間に生じる抵抗を低くした非水電解質電池用電極箔の製造方法を提供することを目的とする。また、このような電極箔を用いた非水電解質電池用電極体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、その解決手段は、金属箔と、上記金属箔の箔表面上に配置され、アモルファスカーボン膜にグラファイト構造を有する粒子状のカーボン粒子部が散点状に分散して配置された被覆層と、を備える非水電解質電池用電極箔の製造方法であって、表面及び内部に多数の空孔を分散して含むとともに、グラファイト構造を有するポーラスカーボンからなるターゲットを用いて、スパッタ法により、上記金属箔の上記箔表面上に、上記アモルファスカーボン膜を成長させると共に上記カーボン粒子部を分散して配置して、上記被覆層を形成する被覆層形成工程を備える非水電解質電池用電極箔の製造方法である。
【0008】
本発明の非水電解質電池用電極箔の製造方法では、ポーラスカーボンからなるターゲットを用い、スパッタ法により、被覆層を形成する被覆層形成工程を備える。ターゲットであるポーラスカーボンに電圧を印加すると、このポーラスカーボンの周囲に形成される電界が、表面に開口する空孔の周囲で集中して、例えば、アルゴンイオン等のイオンが空孔の周囲のカーボンに衝突しやすい。すると、ターゲットから、炭素原子が放出されるほか、グラファイトの結晶状態を維持したカーボン粒子のドロップレットが多数放出され、これらが金属箔の箔表面上に堆積する。かくして、金属箔上には、炭素原子が堆積して成長したアモルファスカーボン膜のほか、カーボン粒子部が散点状に分散して配置された被覆層が形成される。
【0009】
この被覆層のうち、アモルファスカーボン膜は、金属箔の箔表面が酸化したり、腐食したりするのを抑制する耐食膜として機能する。また、カーボン粒子部はグラファイト構造を有するカーボンからなるため、アモルファスカーボン膜に比して導電性が高く、被覆層の導電性を向上させることができる。かくして、金属箔の表面に酸化物あるいはフッ化物などの膜が生じるのを防止して、活物質層と金属箔との間に生じる抵抗の増大を抑制し、逆に両者間の導通をカーボン粒子部により良好とした非水電解質電池用電極箔を製造することができる。
【0010】
なお、アモルファスカーボン膜とは、sp2混成軌道をなして結合する炭素と、sp3混成軌道をなして結合する炭素とが混在した、非晶質の炭素皮膜をいう。
また、スパッタ法としては、例えば、二極スパッタ法、三極(又は四極)スパッタ法、マグネトロンスパッタ法、高周波スパッタ法、バイアススパッタ法が挙げられる。
【0011】
また、ポーラスカーボンとしては、例えば、粒径1〜5mm程度の炭素粒子とスチレン粒子とを、炭素粒子:スチレン粒子=2:1の体積比で混合した後に焼成して、グラファイト構造の結晶構造を有する部分が分散して形成されたものが挙げられる。
【0012】
さらに、上述の非水電解質電池用電極箔の製造方法であって、前記カーボン粒子部は、黒鉛からなる黒鉛粒子部であり、前記被覆層形成工程では、前記ポーラスカーボンに、黒鉛からなるポーラス黒鉛を用いる非水電解質電池用電極箔の製造方法とすると良い。
【0013】
本発明の非水電解質電池用電極箔の製造方法では、ポーラスカーボンに黒鉛からなるポーラス黒鉛を用いるので、金属箔上には、ポーラス黒鉛から多数放出された黒鉛粒子のドロップレットが堆積して、黒鉛粒子部が散点状に分散された被覆層が形成される。前述のカーボン粒子部の中でも黒鉛からなる黒鉛粒子部は、導電性が良好であるため、被覆層の導電性を確実に向上させることができる。
【0014】
なお、ポーラス黒鉛としては、例えば、粒径1〜5mm程度の炭素粒子とスチレン粒子とを、炭素粒子:スチレン粒子=2:1の体積比で混合した後に、2000〜2500℃の焼成温度で焼成した、多数の空孔を含む黒鉛が挙げられる。
【0015】
さらに、他の解決手段は、金属箔と、上記金属箔の箔表面上に配置され、アモルファスカーボン膜にグラファイト構造を有する粒子状のカーボン粒子部が散点状に分散して配置された被覆層と、を有する非水電解質電池用電極箔、及び、活物質を含み、上記被覆層上に担持されてなる活物質層、を備える非水電解質電池用電極体の製造方法であって、表面及び内部に多数の空孔を分散して含むとともに、グラファイト構造を有するポーラスカーボンからなるターゲットを用いて、スパッタ法により、上記金属箔の上記箔表面上に、上記アモルファスカーボン膜を成長させると共に上記カーボン粒子部を分散して配置して、上記被覆層を形成する被覆層形成工程と、上記被覆層上に、上記活物質層を担持させる担持工程と、を備える非水電解質電池用電極体の製造方法である。
【0016】
本発明の非水電解質電池用電極体の製造方法は、被覆層形成工程と担持工程とを備える。このうち、被覆層形成工程では、金属箔上に、炭素原子が堆積して成長したアモルファスカーボン膜のほか、グラファイト構造を有するカーボン粒子部が散点状に分散して配置された被覆層を形成する。このため、電極箔と担持工程で担持させた活物質層との間に生じる抵抗が低く、導通が良好となる。従って、この非水電解質電池用電極体を用いることで、内部抵抗の低い非水電解質電池を製造することができる。
【0017】
さらに、上述の水電解質電池用電極体の製造方法であって、前記カーボン粒子部は、黒鉛からなる黒鉛粒子部であり、前記被覆層形成工程では、前記ポーラスカーボンに、黒鉛からなるポーラス黒鉛を用いる水電解質電池用電極体の製造方法とすると良い。
【0018】
本発明の水電解質電池用電極体の製造方法では、ポーラスカーボンに黒鉛からなるポーラス黒鉛を用いるので、金属箔上には、ポーラス黒鉛から多数放出された黒鉛粒子のドロップレットが堆積して、黒鉛粒子部が散点状に分散された被覆層が形成される。前述のカーボン粒子部の中でも黒鉛からなる黒鉛粒子部は、導電性が良好であるため、被覆層の導電性を確実に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(実施形態)
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
まず、本実施形態にかかる正電極板10について説明する。図1に正電極板10の斜視図を、図2に正電極板10の部分拡大断面図(図1中、A部)を示す。
本実施形態にかかる正電極板10は、非水電解液を有するリチウムイオン二次電池(図示しない)に用いられる。
【0020】
この正電極板10は、図1に示すように、長手方向DAに延びた長尺帯板状であり、積層方向DLに見て、正電極箔20の両面に、第1正極活物質層51及び第2正極活物質層52が積層配置されている。詳細には、第1正極活物質層51及び第2正極活物質層52が、正電極箔20の第1電極箔主面21及び第2電極箔主面22上に配置されている。
【0021】
このうち、第1正極活物質層51および第2正極活物質層52はいずれも、LiNiO2からなる正極活物質X、アセチレンブラック(AB、図示しない)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、図示しない)およびカルボキシルメチルセルロース(CMC、図示しない)を含む。なお、正極活物質層51,52内における、これらの重量比は、正極活物質X:AB:PTFE:CMC=100:10:3:1とした。
【0022】
また、正電極箔20は、図3に示すように、長手方向DAに延びた長尺帯板状であり、厚み方向(積層方向DL)に見て、アルミニウムからなる箔本体30の両面に、それぞれ箔本体30を被覆してなる被覆層40が積層されている。詳細には、この被覆層40が、箔本体30の第1箔表面31及び第2箔表面32上にそれぞれ配置されている。
【0023】
このうち被覆層40は、箔表面31,32を被覆してなるアモルファスカーボン膜41と、このアモルファスカーボン膜41に散点状に分散する黒鉛からなる粒子状の黒鉛粒子部42とからなる(図4参照)。このうちアモルファスカーボン膜41は、箔本体30の箔表面31,32が酸化したり、腐食したりするのを抑制する耐食膜として機能する。即ち、この正電極箔20が、例えば、リチウムイオン二次電池に用いる電解液に触れても、アモルファスカーボン膜41が箔本体30の箔表面31,32を覆うため、これら箔表面31,32上に酸化物やフッ化物等の膜が形成されるのを防止できる。
【0024】
但し、アモルファスカーボン膜41は、非晶質の炭素皮膜であり、例えば、同素体の黒鉛よりも導電性が低いことが多い。そこで、本実施形態では、黒鉛からなる多数の黒鉛粒子部42をアモルファスカーボン膜41に分散させて、被覆層40の導電性を確実に向上させている。即ち、被覆層40を介する箔本体30と正極活物質層51,52との間の導電性が高くされている。
【0025】
本実施形態の正電極板10は、図2に示すように、上述の被覆層40を第1正極活物質層51と第1電極箔主面21との間、及び、第2正極活物質層52と第2電極箔主面22との間にそれぞれ有する。従って、正電極箔20と正極活物質層51,52との間に生じる抵抗が低い。
かくして、この正電極板10をリチウムイオン二次電池に用いれば、この二次電池を内部抵抗の低い二次電池とすることができる。
【0026】
次に、本実施形態にかかる正電極板10の製造方法について、図面を参照しつつ説明する。
まず図5(a)に、正電極板10の製造方法のうち、正電極箔20の被覆層形成工程を担う二極スパッタ装置100の概略図を示す。この二極スパッタ装置100は、真空容器120内に、箔本体30の巻出し部101、巻取り部102、ターゲット110、陽極端子131、陰極端子132、電源装置150、複数の補助ローラ140、及び導通補助ローラ140Nを備えている。
【0027】
このうち、真空容器120は、図示しない真空排気ポンプにより容器内を真空に排気することができる。その後、この真空容器120内にはアルゴンガスを少量充填する。
また、箔本体30は、真空装置120内で巻出し部101から巻き出され、複数の補助ローラ140及び導通補助ローラ140Nにより長手方向DAに移動し、巻取り部102で巻き取られる。このうち、導通補助ローラ140Nは金属からなり、箔本体30と導通可能とされている(図5参照)。この導通補助ローラ140Nには、電源装置150の正極端子131が電気的に接続してあるため、電源装置150を用いて電圧を印加すれば、箔本体30全体が正電位となる。
【0028】
また、ターゲット110は、表面及び内部に多数の空孔BHを分散して含むポーラス黒鉛からなる。このポーラス黒鉛は、粒径1〜5mm程度の炭素粒子とスチレン粒子とを、炭素粒子:スチレン粒子=2:1の体積比で混合した後、2000〜2500℃の焼成温度で焼成してできたものである。
このようなポーラス黒鉛をターゲット110に用いて、陰極端子132に接続して、電源装置150で電圧印加すれば、ターゲット110の表面に開口する空孔BHの周縁において電界が集中して、アルゴンイオンが空孔BHの周囲の黒鉛に衝突しやすく、ターゲット110から、炭素原子CAのほか、黒鉛の結晶状態を維持した黒鉛粒子のドロップレットCDが多数放出される。
【0029】
本実施形態の二極スパッタ装置100において、電源装置150を用いて電圧を印加する。すると、箔本体30は正電荷に、ターゲット110は負電荷にそれぞれ帯電し、箔本体30の第1箔表面31(あるいは第2箔表面32)上には、上述の炭素原子CA及びドロップレットCDが堆積して、被覆層40が形成される。この被覆層40では、ドロップレットCDがそのまま黒鉛粒子部42となる。
【0030】
箔本体30の第1箔表面31(あるいは第2箔表面32)に被覆層40が形成された後、箔本体30の第2箔表面32にも同様に被覆層40を形成する。かくして、箔本体30の両箔表面31,32に被覆層40を積層配置した、正電極箔20が作製される。
【0031】
次いで、この正電極板10の製造方法のうち、塗工装置200を用いた担持工程について説明する。
この塗工装置200は、図6に示すように、巻出し部201、ダイ210、乾燥炉220、巻取り部202、及び複数の補助ローラ240を備えている。
このうち、ダイ210は、活物質ペーストAPを内部に保持してなる金属製のペースト保持部211と、このペースト保持部211に保持した活物質ペーストAPを正電極箔20の第1電極箔主面21あるいは第2電極箔主面22に向かって活物質ペーストAPを連続的に吐出する吐出口212とを有する。
この吐出口212はスリット状で、長手方向DAに移動する正電極箔20の箔主面(第1電極箔主面21あるいは第2電極箔主面22)上に、帯状に活物質ペーストAPを吐出するよう、正電極箔20の幅方向(図6中、奥行き方向)に平行に開口している。
【0032】
なお、ダイ210が保持する活物質ペーストAPは、LiNiO2からなる正極活物質Xのほか、アセチレンブラック(AB、図示しない)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、図示しない)およびカルボキシルメチルセルロース(CMC、図示しない)をイオン交換水AQに分散させて混練してなる流動体である。また、この活物質ペーストAPに含まれる、正極活物質X、AB、PTFEおよびCMCの重量比は、前述の通り、正極活物質X:AB:PTFE:CMC=100:10:3:1である。
【0033】
また、乾燥炉220では、正電極箔20に塗布された活物質ペーストAPに向けて、熱風を送る。これにより、正電極箔20に塗布された活物質ペーストAPは、この乾燥炉220内を移動している間に、徐々に乾燥が進み、乾燥炉220を通過時には、活物質ペーストAPは全乾燥、すなわち、活物質ペーストAP内の水分(イオン交換水AQ)は全て蒸発する。
また、帯状の正電極箔20は、複数の補助ローラ240により、その長手方向DAに移動する。
【0034】
この塗工装置200では、まず、巻出し部201に捲回した帯状の正電極箔20を長手方向DAに移動させ、その正電極箔20の第1電極箔主面21に、ダイ210により活物質ペーストAPを塗布する。その後は、乾燥炉220で正電極箔20と共に活物質ペーストAPを乾燥させて、第1電極箔主面21に未圧縮活物質層(図示しない)を担持させた片面担持電極箔20Kを、巻取り部202に一旦巻き取る。
【0035】
次に、この塗工装置200を再度用いて、上述の片面担持電極箔20Kにおいて、正電極箔20の第2電極箔主面22にも活物質ペーストAPを塗布する。そして、この活物質ペーストAPを乾燥炉220で全乾燥させる。かくして、正電極箔20の両電極箔主面21,22に未圧縮正極活物質層(図示しない)を積層配置した、プレス前の正電極板10Bが作製される。
【0036】
次いで、図7に、正電極板10の製造方法の担持工程のうち、プレス装置300を用いたプレス切断工程を示す。
プレス装置300は、巻出し部301、プレスローラ310、巻取り部302、切断刃330および複数の補助ローラ320を備えている。そして、このプレス装置300では、巻出し部301から上述のプレス前正電極板10Bを、2つのプレスローラ310の間に通すことで、厚み方向に圧縮された上述の正電極板10を得ることができる。その後、切断刃330で中央を切断して2つに分けた後、2つの巻取り部302で正電極板10を巻き取る。かくして、正電極板10の製造ができた(図1,2参照)。
【0037】
上述した正電極箔20及び正電極板10において、被覆層40のうちのアモルファスカーボン膜41は、箔本体30の箔表面31,32が酸化したり、腐食したりするのを抑制する耐食膜として機能する。また、黒鉛粒子部42は黒鉛からなるため、アモルファスカーボン膜41に比して導電性が高く、被覆層40の導電性を確実に向上させることができる。具体的には、正電極箔20において、この被覆層40を介する箔本体30と正極活物質層51,52間の導電性を向上できる。かくして、正電極箔20を用いることで、箔本体30の箔表面31,32に酸化物あるいはフッ化物などの膜が生じるのを防止して、正極活物質層51,52と箔本体30との間に生じる抵抗を低くした正電極板10を製造することができる。
また、この正電極箔20を用いた正電極板10を用いることで、内部抵抗の低いリチウムイオン二次電池を製造することができる。
【0038】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、実施形態では、正電極箔20に、正極活物質層を担持させて正電極板10を形成したが、電極箔に負極活物質層を担持させた負電極板に適用しても良い。その場合、負極活物質層としては、例えば、グラファイトからなる負極活物質、結着剤、導電剤等を混合したものが、負電極板としては、例えば、銅からなる箔本体の両面に前述の被覆層を形成したものが挙げられる。
また、正極活物質層内の正極活物質XをLiNiO2としたが、例えば、LiCoO2、LiMn24、LiFeO2、Li5FeO4、Li2MnO3、LiFePO4、LiV24、および、これらの混合物としても良い。さらに、金属箔の材質をアルミニウムとしたが、例えば、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン等としても良い。
【0039】
また、被覆層形成工程では、スパッタ法として二極スパッタ装置による二極スパッタ法を用いたが、例えば、三極(又は四極)スパッタ法、マグネトロンスパッタ法、高周波スパッタ法、バイアススパッタ法でも良い。
さらに、被覆層形成工程においてターゲット110として、全体が黒鉛からなるポーラス黒鉛を用いた。しかし、全体が黒鉛でなくとも、表面及び内部に多数の空孔を分散して含むとともに、一部にグラファイト構造の結晶構造を有する部位を分散して含むポーラスカーボンをターゲット110に用いて、アモルファスカーボン膜41のほか、黒鉛粒子部42に代えてグラファイト構造を有するカーボン粒子を分散した被覆層を形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施形態にかかる正電極板の斜視図である。
【図2】実施形態にかかる正電極板の部分拡大端面図(図1のA部)である。
【図3】実施形態にかかる正電極箔の斜視図である。
【図4】実施形態にかかる正電極箔の部分拡大端面図(図3のB部)である。
【図5】実施形態の被覆層形成工程の説明図であり、(a)は二極スパッタ装置の概要図、(b)はターゲットの部分拡大図である。
【図6】実施形態の担持工程のうち、塗工工程の説明図である。
【図7】実施形態の担持工程のうち、プレス切断工程の説明図である。
【符号の説明】
【0041】
10 正電極板(非水電解質電池用電極体)
20 正電極箔(非水電解質電池用電極箔)
30 箔本体(金属箔)
31 第1箔表面(箔表面)
32 第2箔表面(箔表面)
40 被覆層
41 アモルファスカーボン膜
42 黒鉛粒子部
51 第1正極活物質層
52 第2正極活物質層
110 ターゲット
BH 空孔
X 正極活物質(活物質)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔と、
上記金属箔の箔表面上に配置され、アモルファスカーボン膜にグラファイト構造を有する粒子状のカーボン粒子部が散点状に分散して配置された被覆層と、を備える
非水電解質電池用電極箔の製造方法であって、
表面及び内部に多数の空孔を分散して含むとともに、グラファイト構造を有するポーラスカーボンからなるターゲットを用いて、スパッタ法により、上記金属箔の上記箔表面上に、上記アモルファスカーボン膜を成長させると共に上記カーボン粒子部を分散して配置して、上記被覆層を形成する被覆層形成工程を備える
非水電解質電池用電極箔の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の非水電解質電池用電極箔の製造方法であって、
前記カーボン粒子部は、黒鉛からなる黒鉛粒子部であり、
前記被覆層形成工程では、
前記ポーラスカーボンに、黒鉛からなるポーラス黒鉛を用いる
非水電解質電池用電極箔の製造方法。
【請求項3】
金属箔と、上記金属箔の箔表面上に配置され、アモルファスカーボン膜にグラファイト構造を有する粒子状のカーボン粒子部が散点状に分散して配置された被覆層と、を有する非水電解質電池用電極箔、及び、
活物質を含み、上記被覆層上に担持されてなる活物質層、を備える
非水電解質電池用電極体の製造方法であって、
表面及び内部に多数の空孔を分散して含むとともに、グラファイト構造を有するポーラスカーボンからなるターゲットを用いて、スパッタ法により、上記金属箔の上記箔表面上に、上記アモルファスカーボン膜を成長させると共に上記カーボン粒子部を分散して配置して、上記被覆層を形成する被覆層形成工程と、
上記被覆層上に、上記活物質層を担持させる担持工程と、を備える
非水電解質電池用電極体の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の非水電解質電池用電極体の製造方法であって、
前記カーボン粒子部は、黒鉛からなる黒鉛粒子部であり、
前記被覆層形成工程では、
前記ポーラスカーボンに、黒鉛からなるポーラス黒鉛を用いる
非水電解質電池用電極体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−187772(P2009−187772A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26065(P2008−26065)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】