説明

非水電解質電池

【課題】高容量のSiの酸化物を負極に備え、安全性の高い非水電解質電池を提供する。
【解決手段】互いに組成の異なる中核と表面層とを備えた負極活物質を備えた非水電解質二次電池において、前記中核はSiを含む酸化物を備え、前記表面層はB、N、P、Sのなかから選択したすくなくとも1種類の元素とLiとを含む化合物を備え、前記負極活物質層をDSC(示差走査熱量分析)において200℃以下で発熱ピークがない非水電解質二次電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非水電解質電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、モバイル、デジタルカメラ等携帯電子機器の電源には、リチウムイオン電池などの非水電解質電池が広く用いられている。これらの機器の高性能化に伴い、その電源には高容量化および高出力化が求められており、非水電解質電池の高性能化が必要である。現在のリチウムイオン電池の負極活物質にはグラファイト等の炭素材料が、正極活物質にはリチウムコバルト酸化物等が用いられている。これらの活物質の高性能化とともに、新規な活物質の探索も広くおこなわれている。
【0003】
新規な負極活物質には、Liと合金化するSi、Sn、Al、Pb、Zn等の金属およびその酸化物等がある(たとえば、N.Li, C.R.Martin, and B.Scrosati, Electrochemical and Solid−State Letters,,316(2000))。
【0004】
その中で、Siの酸化物は1000mAh/g以上の大きい容量を示すので、次世代リチウムイオン電池用負極活物質としてとくに注目されている(特許文献1、特許文献2など)。
【0005】
しかしながら、リチウムイオン電池などの非水電解質電池は電解液に可燃性の有機溶媒を用いているので、電池の誤使用によって安全性に不良を生じる可能性がある。Siの酸化物の容量はグラファイトのそれよりも大きいので、その可能性が増大する。
【0006】
【特許文献1】特開平6−325765
【特許文献2】特表2000−515672
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、Siの酸化物は1000mAh/g以上の大きい容量を示すので、次世代リチウムイオン電池用負極活物質として有望である。しかしながら、リチウムイオン電池などの非水電解質電池は電解液に可燃性の有機溶媒を用いているので、電池の誤使用などによって、安全性に不良を生じる可能性がある。誤使用などがおこっても不良が生じないようにすること、すなわち安全性を向上させることは、実用上重要な課題である。
【0008】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、高容量のSiの酸化物を備え、さらに安全性の高い非水電解質電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質を含む正極と、リチウムイオンを吸蔵放出可能で且つ互いに組成の異なる中核と表面層とを備えた負極活物質を備えた負極と、非水電解質からなる非水電解質二次電池において、前記負極活物質の前記中核はSiを含む酸化物を備え、前記表面層はB、N、P、Sのなかから選択したすくなくとも1種類の元素とLi元素とを含む化合物を備え、かつ負極活物質層のDSC(示差走査熱量分析)を測定したときに200℃以下で発熱ピークがないことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1記載の非水電解質二次電池において、前記物質がCまたはFのなかから選択したすくなくとも1種類の元素を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の非水電解質電池において、請求項1の発明においては、互いに組成の異なる中核と表面層とを備えた負極活物質を負極に備え、前記負極活物質の前記中核はSiを含む酸化物を備え、前記表面層はB、N、P、Sのなかから選択した1種類の元素とLiとを含む化合物をすくなくとも1種類備え、かつ負極活物質層のDSC(示差走査熱量分析)を測定したときに200℃以下で発熱ピークがないので、高容量であるとともに良好な安全性を有する。
【0012】
請求項2の発明においては、前記の化合物がCまたはFのなかから選択したすくなくとも1種類の元素を含むことはとくに好ましく、高容量であるとともに良好な安全性を有する。
【0013】
したがって、本発明のこのような構成の非水電解質電池は、安全性を保ったまま、高エネルギー密度化を達成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の非水電解質電池の負極は、互いに組成の異なる中核と表面層とを備えた負極活物質を備え、前記中核はSiを含む酸化物を備え、前記表面層はB、N、P、Sからなる群から選ばれた1種類の元素とLiとを含む化合物をすくなくとも1種類備え、前記負極活物質層のDSC(示差走査熱量分析)において200℃以下で発熱ピークがないことを特徴とする。また前記負極活物質は必ずしも中核と表面層の2層のみで形成される必要はなく、3層以上であってもよい。
【0015】
ここで、前記表面層は、B、N、P、Sのなかから選択した1種類の元素とLiとを含み、種々の塩、有機または無機の化合物のようなLiの化合物として存在することが好ましい。具体的には、前記化合物を生成するためのB源としては、LiBF、LiBC、三フッ化ホウ素(BF)、HBOなどが挙げられ、N源として、LiN(SOCF、ホスファゼン(N)、テトラメチルアンモニウム−ヘキサフルオロリン酸((CHNPF)、アンモニアガス、窒素ガス、N−(メトキシ)−N−メチル−2−(トリフェニルホスホアニリデン)アセトアミドなどが挙げられ、P源としては、LiPF6、ホスファゼン(N)、テトラメチルアンモニウム−ヘキサフルオロリン酸((CHNPF)、三フッ化リン(PF)、五フッ化リン(PF)、リン酸(HPO)、N−(メトキシ)−N−メチル−2−(トリフェニルホスホアニリデン)アセトアミドなどが挙げられ、さらに、S源としては、LiCFSO、LiN(SOCF、硫化水素(HS)などが挙げられる。
【0016】
また前記化合物がCまたは(および)Fのなかから選択したすくなくとも1種類の元素を含むことがより好ましい。
【0017】
前記化合物を生成するためのC源としては、エタン(C)などの他電解質あるいは負極の利用率向上に用いる添加剤でCを含むもの、具体的には、LiCBO、LiSCN、LiCFCO、LiCFSO、LiN(SOCF、LiN(SOCFCF、LiN(COCFおよびLiN(COCFCFなどの塩、およびこれらの混合物、テトラメチルアンモニウム−ヘキサフルオロリン酸((CHNPF)、N−(メトキシ)−N−メチル−2−(トリフェニルホスホアニリデン)アセトアミドなどが挙げられる。また非水電解液に用いるものでCを含むものでもよい。具体的にはエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1、2−ジメトキシエタン、1、2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、メチルアセテート、酢酸メチルなどの溶媒、およびこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0018】
F源としては、三フッ化ホウ素(BF)、三フッ化リン(PF)、五フッ化リン(PF)などの他、電解質あるいは負極の利用率向上に用いる添加剤でFを含むもの、具体的には、LiPF、LiBF、、LiCFCO、LiCFSO、LiN(SOCF、LiN(SOCFCF、LiN(COCFおよびLiN(COCFCF、フッ化水素(HF)、フッ素含有エステル系溶媒、テトラエチルアンモニウムフルオライドのフッ化水素錯体(TEAFHF)、またはこれらの誘導体、ホスファゼンなどの化合物、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0019】
また、前記化合物は種々の方法で負極活物質の表面に備えることができる。具体的な方法には、電気化学的手法、CVD法、浸漬法、スパッタリング法などがあるが、それ以外のものでもよい。
【0020】
これらの元素を酸化物の表面に含むことにより、短絡などの大電流を流しても酸化物と電解液との反応が抑制されると推測される。
【0021】
前記負極活物質層のDSC(示差走査熱量分析)を測定することにより、電池の安全性を知ることができる。測定条件を以下に述べる。
【0022】
充電状態の電池をドライルーム内で分解して、負極を取り出す。負極の活物質層を集電体から削り落として、この活物質層と電池に用いる電解液とを1:1の質量比で秤量して示差走査熱量計用容器に密封する。この容器をすみやかに示差走査熱量計(SII製、DSC220C)にセットして、10℃/minの昇温速度で、室温から200℃までの範囲でDSC測定をおこなう。その結果から、酸化物の発熱速度(単位:W/g・℃)を求める。ここで、DSC測定結果から計算した発熱速度が0.1W/g・℃以下であるものを発熱ピークがないものとした場合、前記活物質層をDSC測定したときに、200℃以下で発熱ピークがないことを特徴とする。
【0023】
このような負極活物質を負極に備えた電池は、誤使用によって高温になっても発熱を生じないので、安全性を向上させる。前記負極活物質層のDSCは、非水電解液であるリチウム塩を含む有機溶媒と混合して測定することができる(たとえば、GS News Technical Report,55,21(1996)参照)。また、DSCは、負極活物質に700mAh/g以上の電気量を通電した状態で測定することが好ましい。なぜならば、充電されることで負極は還元性が増加して、より危険な状態になる。より危険な状態で測定して安全性を確認できるからである。
【0024】
Siを含む酸化物は、その組成式がSiOであるものが好ましい。とくにSiに対するOの原子比xが0<x<2であるものは、放電容量が大きく充放電サイクル性能が良好なので、より好ましい。
【0025】
さらに、SiとSiO(1<x≦2)との両相を含む物質であることが好ましく,その物質のCuKα線を用いたX線回折測定において,Si(111)面とSi(220)面の回折ピークの半価幅のうちすくなくとも一方が3°未満であることが好ましい。
【0026】
また、前記の酸化物は、B、C、N、P、F、Br、Iなどの典型非金属元素、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Geなどの典型金属元素、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuなどの遷移金属元素を含んでもよい。
【0027】
また、電子伝導性を向上させるために、前記の酸化物と炭素材料などの電子伝導材料とを混合したり、複合化したり、その表面を電子伝導材料で被覆したものを用いることができる。
【0028】
また、前記酸化物は、単独で用いてもよいし、リチウムイオンを吸蔵・放出することが可能なもの、または金属リチウムのなかのすくなくとも一種と混合してもよい。
【0029】
リチウムイオンを吸蔵・放出することが可能なものは、炭素材料、酸化物、Li3−PN(ただし、Mは遷移金属、0≦P≦0.8)などの窒化物およびリチウム合金が例示される。炭素材料には、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソフェーズピッチ系炭素繊維、熱分解気相成長炭素繊維などの易黒鉛化性炭素、フェノール樹脂焼成体、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、擬等方性炭素、フルフリルアルコール樹脂焼成体などの難黒鉛化性炭素、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化MCMB、黒鉛化メソフェーズピッチ系炭素繊維、黒鉛ウイスカーなどの黒鉛質材料、さらに、これらの混合物を用いることができる。リチウム合金には、リチウムと、アルミニウム、亜鉛、ビスマス、カドミウム、アンチモン、鉛、錫、ガリウム、ゲルマニウム、またはインジウムとの合金を用いることができる。酸化物には、前記リチウム合金の酸化物を用いることができる。
【0030】
本発明の非水電解質電池に用いる負極は、負極活物質を含む合剤層と集電体とを備える。合剤層には、活物質の他に導電剤が含まれてもよい。負極は、負極活物質および結着剤を溶媒あるいは溶液中で混合したスラリーを、集電体に塗布した後に乾燥して製造することができる。
【0031】
負極の集電体には、鉄、銅、ステンレス、ニッケルなどを用いることができる。また、その形状は、シート、発泡体、焼結多孔体、エキスパンド格子が例示される。さらに、任意の形状で穴を開けた集電体を用いてもよい。
【0032】
負極に用いられる導電剤には、種々の炭素材料を用いることができる。炭素材料は、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、およびニードルコークスなどの無定形炭素が例示される。
【0033】
負極の結着剤は、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(P(VdF/HFP))、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、フッ素ゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ニトロセルロース、またはこれらの誘導体を単独でまたは混合して用いることができる。
【0034】
負極活物質と結着剤とを混合する溶媒あるいは溶液は、結着剤を溶解または分散するものであり、非水溶媒または水溶液を用いることができる。非水溶媒には、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N−N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどがある。一方、水溶液には、水、またはこれに分散剤、増粘剤などを加えたものを用いることができる。水溶液にSBRなどのラテックスを加えると、スラリーを作ることができる。
【0035】
また、本発明の非水電解質電池の正極は、正極活物質を含む合剤層と集電体とを備える。正極は、活物質、導電剤および結着剤を溶媒あるいは溶液中で混合したスラリーを、集電体に塗布した後に乾燥して製造することができる。
【0036】
本発明の非水電解質電池の正極活物質には、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuのなかから選ばれたすくなくとも一種類の元素を含む遷移金属酸化物、またはこの遷移金属酸化物とリチウムとの複合酸化物を用いることができる。これらの遷移金属酸化物または複合酸化物は、典型非金属元素や典型金属元素を含んでもよい。とくに、組成式がLiNiMn2−z(0≦y≦1.1、0.45≦z≦0.6)である金属酸化物は、好ましい活物質である。なぜなら、LiNiMn2−zを適用した正極の平均放電電位は約4.7V(vs.Li/Li)、従来の代表的な正極活物質であるLiCoOのそれは約3.9V(vs.Li/Li)であり、前者の方が貴であるからである。すなわち、前者の正極と本発明の負極活物質を備えた負極とを組み合わせた電池は、後者を用いたものより端子電圧が高くなるので、高エネルギー密度になるからである。
【0037】
正極の集電体には、鉄、銅、アルミニウム、ステンレス、ニッケルを用いることができる。また、その形状は、シート、発泡体、焼結多孔体、エキスパンド格子が例示される。さらに、任意の形状で穴を開けた集電体を用いてもよい。
【0038】
正極の導電剤には、種々の炭素材料を用いることができる。炭素材料は、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛や、アセチレンブラック等のカーボンブラック、ニードルコークス等の無定形炭素が例示される。
【0039】
正極の結着剤は、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(P(VdF/HFP))、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、フッ素ゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ニトロセルロース、またはこれらの誘導体を、単独または混合して用いることができる。
【0040】
本発明の非水電解質電池は、これらの負極および正極と、非水電解質およびセパレータから構成される。その非水電解質には、非水電解液、高分子固体電解質、ゲル状電解質、無機固体電解質を用いることができる。電解質には孔があってもよい。
【0041】
非水電解液は、非水溶媒および溶質から構成される。非水溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1、2−ジメトキシエタン、1、2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、メチルアセテート、酢酸メチルなどの溶媒、およびこれらの混合溶媒が例示される。また、溶質には、LiPF、LiBF、LiCBO、LiSCN、LiCFCO、LiCFSO、LiN(SOCF、LiN(SOCFCF、LiN(COCFおよびLiN(COCFCFなどの塩、およびこれらの混合物が例示される。
【0042】
また、負極の利用率向上を目的として、上記溶媒中に、エチレンサルファイド(ES)、フッ化水素(HF)、トリアゾール系環状化合物、フッ素含有エステル系溶媒、テトラエチルアンモニウムフルオライドのフッ化水素錯体(TEAFHF)、またはこれらの誘導体、ホスファゼン、アミド基含有化合物、イミノ基含有化合物、窒素含有化合物、または、CO、NO、CO、SOなどのガスを、添加剤として加えてもよい。
【0043】
高分子固体電解質には、ポリエチレンオキサイド、ポリプロビレンオキサイド、ポリエチレンイミドなどの高分子、またはこれらの混合物に上記の溶質を加えて得られる物質を用いることができる。
【0044】
ゲル状電解質には、上記の高分子に、上記の溶媒および溶質を加えたものを用いることができる。
【0045】
無機固体電解質には、結晶質または非晶質のものを用いることができる。前者には、LiI、LiN、Li1+xTi2−x(PO(M=Al、Sc、Y、La)、Li0.5−3x0.5+xTiO(R=La、Pr、Nd、Sm)、またはLi4−xGe1−xに代表されるLISICONを用いることができ、後者にはLiI−LiO−B系、LiO−SiO系などの酸化物ガラス、またはLiI−LiS−B系、LiI−LiS−SiS系、LiS−SiS−LiPO系などの硫化物ガラスを用いることができる。また、これらの混合物を用いることができる。
【0046】
本発明の非水電解質電池のセパレータには、微多孔性高分子膜を用いることができ、その材質は、ナイロン、セルロースアセテート、ニトロセルロース、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、およびポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテンなどのポリオレフィンが例示される。これらの中では、ポリオレフィンの微多孔性膜がとくに好ましい。または、ポリエチレンとポリプロピレンとを積層した微多孔性膜を用いてもよい。
【実施例】
【0047】
以下に、本発明の非水電解質電池を、実施例にもとづいて、さらに詳細に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0048】
[実施例1]
SiO粒子を、アルゴン雰囲気中、870℃で6時間熱処理してから0.5mol/dmのフッ化水素酸溶液中に1時間浸漬した後に、洗浄および乾燥した。このSiOのX線回折パターンはブロードであり、その結晶構造が無定形であることがわかった。このSiO粒子を活物質に用いて、負極を作製した。SiO粒子80質量%と、アセチレンブラック5質量%と、PVdF15質量%とを、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中で分散させてペーストを作製した。このペーストを厚さ15μmの銅箔上に塗布した後、150℃で乾燥してNMPを蒸発させた。この作業を銅箔の両面におこなった。これをロールプレスしてから、幅2.5cm、長さ40cmに切断して、集電体の両面に合剤層を備えた負極1を作製した。銅箔の両面に塗布した負極層の質量は、0.010g/cmであった。SiOの放電容量を1000mAh/gとすると、この負極の容量は約520mAhとなる。
【0049】
つぎに、電気化学的手法を用いてSiO粒子表面にP、CおよびF元素とLi元素とを含む物質を形成させるために、前記負極1を作用極に、Li箔を対極に用いた試験用電池を作製した。非水電解液には、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との体積比1:1の混合溶媒に1mol/dmのLiPFを溶解したものを用いた。25℃で、電池電圧が0.05Vになるまで作用極から対極に40mAを通電し、続いてその値で5時間保持して充電した。つぎに、電池電圧が1.5Vになるまで対極から作用極に40mAを通電して放電してから、負極1を試験セルから取り出した。負極1に残存した電解液は、室温で真空乾燥をおこなって蒸発させた。このようにして、電解質の一部を分解させて、活物質の表面にC、PおよびF元素とLi元素とを含む物質を形成させた。これを負極2とした。
【0050】
LiCoO90質量%と、アセチレンブラック5質量%と、PVdF5質量%とをNMP中で分散させて、ペーストを作製した。このペーストを厚さ20μmのアルミニウム箔上に塗布した後、150℃で乾燥してNMPを蒸発させた。この作業をアルミニウム箔の両面におこなった。これをロールプレスしてから、幅2.5cm、長さ40cmに切断して、正極1を作製した。アルミニウム箔の両面に塗布した正極層の質量は、0.045g/cmであった。LiCoOの放電容量を150mAh/gとすると、この正極の容量は約730mAhとなる。
【0051】
このようにして準備した負極2および正極1を、厚さ20μm、多孔度40%の連通多孔体のポリエチレンセパレータを間に挟んで重ねて巻回した。これを、鉄を主体とする電池ケースに挿入した。最後に、この電池の内部に非水電解液を注入することによって、サイズが高さ48mm、幅30mm、厚さ4.2mmで、定格容量が500mAhの角形の本発明電池(A1)を得た。この非水電解液には、ECとDECとの体積比1:1の混合溶媒に1mol/dmのLiPFを溶解したものを用いた。
【0052】
[実施例2]
電気化学的手法を用いて負極活物質の表面にB、CおよびF元素とLi元素とを含む物質を形成するときに、ECとDECとの体積比1:1の混合溶媒に1mol/dmのLiBFを溶解した非水電解液を用いたことのほかは実施例1と同様にして、本発明電池(A2)を作製した。
【0053】
[実施例3]
電気化学的手法を用いて負極活物質の表面にS、CおよびF元素とLi元素とを含む物質を形成するときに、ECとDECとの体積比1:1の混合溶媒に1mol/dmのLiCFSOを溶解した非水電解液を用いたことのほかは実施例1と同様にして、本発明電池(A3)を作製した。
【0054】
[実施例4]
電気化学的手法を用いて負極活物質の表面にN、S、CおよびF元素とLi元素とを含む物質を形成するときに、ECとDECとの体積比1:1の混合溶媒に1mol/dmのLiN(SOCFを溶解した非水電解液を用いたことのほかは実施例1と同様にして、本発明電池(A4)を作製した。
【0055】
[実施例5]
電気化学的手法を用いて負極活物質の表面にB、N、P、CおよびF元素とLi元素とを含む物質を形成するときに、ECとDECとの体積比1:1の混合溶媒に1mol/dmのLiBFを溶解して、さらに10質量%のホスファゼン(N)を添加した非水電解液を用いたことのほかは実施例1と同様にして、本発明電池(A5)を作製した。
【0056】
[実施例6]
電気化学的手法を用いて負極活物質の表面にBおよびC元素とLi元素とを備えた物質を形成するときに、1,2−ジメトキシエタンに0.5mol/dmのLiBCを溶解した非水電解液を用いたことのほかは実施例1と同様にして、本発明電池(A6)を作製した。
【0057】
[実施例7]
電気化学的手法を用いて負極活物質の表面にN、P、CおよびF元素とLi元素とを含む物質を形成するときに、ECとDECとの体積比1:1の混合溶媒に1mol/dmのLiPFを溶解して、さらに10質量%のホスファゼン(N)を添加した非水電解液を用いたことのほかは実施例1と同様にして、本発明電池(A7)を作製した。
【0058】
[実施例8]
電気化学的手法を用いて負極活物質の表面にN、P、CおよびF元素とLi元素とを含む物質を形成するときに、ECとDECとの体積比1:1の混合溶媒に1mol/dmのLiPFを溶解して、さらに10質量%のテトラメチルアンモニウム−ヘキサフルオロリン酸((CHNPF)を添加した非水電解液を用いたことのほかは実施例1と同様にして、本発明電池(A8)を作製した。
【0059】
[実施例9]
実施例1で作製した負極1とLi金属箔とを、直流プラズマCVD装置中のチャンバーに挿入した。400℃まで加熱してから、チャンバーの真空度を1×10−6Torrにした。つぎに、PFとOとCとの混合ガスをチャンバー内に供給した。チャンバーの内圧は、0.7Torrに保った。つぎに、400Wの直流電力を負極1に印加して、活物質の表面にP、CおよびF元素とLi元素とを含む物質を形成させた負極3を作製した。
【0060】
このようにCVD法を用いて準備した負極3を用いたほかは実施例1と同様にして、本発明電池(A9)を作製した。
【0061】
[実施例10]
CVD法を用いて負極活物質の表面にP、CおよびF元素とLi元素とを含む物質を形成するときに、PFとOとCとの混合ガスをチャンバー内に供給したことのほかは実施例9と同様にして、本発明電池(A10)を作製した。
【0062】
[実施例11]
CVD法を用いて負極活物質の表面にB、CおよびF元素とLi元素とを含む物質を形成するときに、BFとOとCとの混合ガスをチャンバー内に供給したことのほかは実施例9と同様にして、本発明電池(A11)を作製した。
【0063】
[実施例12]
CVD法を用いて負極活物質の表面にNおよびC元素とLi元素とを含む物質を形成するときに、NHとOとCとの混合ガスをチャンバー内に供給したことのほかは実施例9と同様にして、本発明電池(A12)を作製した。
【0064】
[実施例13]
CVD法を用いて負極活物質の表面にS元素とLi元素とを含む物質を形成するときに、HSをチャンバー内に供給したことのほかは実施例9と同様にして、本発明電池(A13)を作製した。
【0065】
[実施例14]
CVD法を用いて負極活物質の表面にN元素とLi元素とを含む物質を形成するときに、Nをチャンバー内に供給したことのほかは実施例9と同様にして、本発明電池(A14)を作製した。
【0066】
[実施例15]
CVD法を用いて負極活物質の表面にB、N、CおよびF元素とLi元素とを含む物質を形成するときに、BFとNHとOとCとの混合ガスをチャンバー内に供給したことのほかは実施例9と同様にして、本発明電池(A15)を作製した。
【0067】
[実施例16]
CVD法を用いて負極活物質の表面にB、P、CおよびF元素とLi元素とを含む物質を形成するときに、BFとPFとOとCとの混合ガスをチャンバー内に供給したことのほかは実施例9と同様にして、本発明電池(A16)を作製した。
【0068】
[実施例17]
CVD法を用いて負極活物質の表面にB、S、CおよびF元素とLi元素とを含む物質を形成するときに、BFとHSとOとCとの混合ガスをチャンバー内に供給したことのほかは実施例9と同様にして、本発明電池(A17)を作製した。
【0069】
[実施例18]
CVD法を用いて負極活物質の表面にP、S、CおよびF元素とLi元素とを含む物質を形成するときに、PFとHSとOとCとの混合ガスをチャンバー内に供給したことのほかは実施例9と同様にして、本発明電池(A18)を作製した。
【0070】
[実施例19]
CVD法を用いて負極活物質の表面にB、P、S、CおよびF元素とLi元素とを含む物質を形成するときに、BFとPFとHSとOとCとの混合ガスをチャンバー内に供給したことのほかは実施例9と同様にして、本発明電池(A19)を作製した。
【0071】
[実施例20]
CVD法を用いて負極活物質の表面にB、N、S、CおよびF元素とLi元素とを含む物質を形成するときに、BFとNHとHSとOとCとの混合ガスをチャンバー内に供給したことのほかは実施例9と同様にして、本発明電池(A20)を作製した。
【0072】
[実施例21]
CVD法を用いて負極活物質の表面にN、P、S、CおよびF元素とLi元素とを含む物質を形成するときに、NHとPFとHSとOとCとの混合ガスをチャンバー内に供給したことのほかは実施例9と同様にして、本発明電池(A21)を作製した。
【0073】
[実施例22]
CVD法を用いて負極活物質の表面にB、N、P、S、CおよびF元素とLi元素とを含む物質を形成するときに、BFとNHとPFとHSとOとCとの混合ガスをチャンバー内に供給したことのほかは実施例9と同様にして、本発明電池(A22)を作製した。
【0074】
[実施例23]
浸漬法を用いて負極活物質の表面にP元素とLi元素とを含む物質を形成させるために、実施例1で作製した負極1を、LiOH、HPOおよびPVdFを溶解したNMP溶液に浸漬した後、80℃で乾燥してNMPを蒸発させた。これを、負極6とした。
【0075】
このようにして準備した負極6を用いたほかは、実施例1と同様にして本発明電池(A23)を作製した。この非水電解液には、ECとDECとの体積比1:1の混合溶媒に1mol/dmのLiPFを溶解したものを用いた。
【0076】
[実施例24]
浸漬法を用いて負極活物質の表面にB元素およびLi元素を備えた物質を形成させるために、LiOH、HBOおよびPVdFを溶解したNMP溶液に浸漬したほかは実施例23と同様にして、本発明電池(A24)を作製した。
【0077】
[実施例25]
浸漬法を用いて負極活物質の表面にN、P、C元素およびLi元素を備えた物質を形成させるために、LiOHとN−(メトキシ)−N−メチル−2−(トリフェニルホスホアニリデン)アセトアミドとPVdFとを溶解したNMP溶液に浸漬したほかは実施例23と同様にして、本発明電池(A25)を作製した。
【0078】
[比較例1]
電気化学的手法を用いて負極活物質の表面にClおよびC元素とLi元素とを含む物質を形成するときに、ECとDECとの体積比1:1の混合溶媒に1mol/dmのLiClOを溶解した非水電解液を用いたことのほかは実施例1と同様にして、比較例電池(B1)を作製した。
【0079】
[比較例2]
電気化学的手法を用いて負極活物質の表面にAsおよびC元素とLi元素とを含む物質を形成するときに、ECとDECとの体積比1:1の混合溶媒に1mol/dmのLiAsFを溶解した非水電解液を用いたことのほかは実施例1と同様にして、比較例電池(B2)を作製した。
【0080】
[比較例3]
電気化学的手法を用いて負極活物質の表面にSbおよびC元素とLi元素とを含む物質を形成するときに、ECとDECとの体積比1:1の混合溶媒に1mol/dmのLiSbFを溶解した非水電解液を用いたことのほかは実施例1と同様にして、比較例電池(B3)を作製した。
【0081】
[比較例4]
CVD法を用いて負極活物質の表面にCl元素およびLi元素とを含む物質を形成するときに、ClとOとの混合ガスをチャンバー内に供給したことのほかは実施例9と同様にして、比較例電池(B4)を作製した。
【0082】
[比較例5]
浸漬法を用いて負極活物質の表面にCl元素およびLi元素とを含む物質を形成するときに、KClOとPVdFとを溶解したNMP溶液を用いたことのほかは実施例23と同様にして、比較例電池(B5)を作製した。
【0083】
[比較例6]
浸漬法を用いて負極活物質の表面にC元素およびLi元素とを含む物質を形成するときに、ポリアクリル酸とLiOHとを溶解したNMP溶液を用いたことのほかは実施例23と同様にして、比較例電池(B6)を作製した。
【0084】
これらの実施例および比較例の電池は、25℃で、つぎの条件で充放電をおこなった。充電は、0.1CmA(50mA)の電流で4.0Vまでおこない、続いてその値で5時間の定電圧充電とした。また放電は、同じ電流で3.0Vまでとした。平均放電電圧を3.4Vとするとその体積エネルギー密度は約290Wh/lになる。
【0085】
これらの電池を用いて、以下の試験をおこなった。
【0086】
[1.安全性試験]
つぎに示す釘刺し試験をおこなって、電池の安全性を評価した。2サイクル目の充電後の電池を、25℃で、直径1mmの釘を3cm/secの速度で電池に突き刺した。安全性の判定は、電池の温度が130℃以上になったものあるいは安全弁が作動したものを不良とし、それ以外のものは良とした。
【0087】
[2.XPS測定]
2サイクル目の充電後の電池をグローブボックス内で分解して、負極を取り出した。この負極を真空乾燥して有機溶媒を蒸発させた後、5mm×5mmの大きさに切断した。これを、グローブボックス内で支持台にセットした。トランスファーベッセルを用いて空気を遮断して、この支持台をXPS測定装置(島津/KRATOS製、高性能光電子分光分析装置AXIS−HS)にセットした後、高真空状態でXPS測定をおこなって、物質に含まれる化合物を推定した。Li、B、N、P、S、C、F、Cl、O、AsおよびSbのピークが示す結合エネルギーから、それぞれの化合物に一致することを確認した。たとえばLiPOであれば、Li、P、O、の元素でLiPOにあたる結合エネルギーを確認した。
【0088】
[3.DSC測定]
2サイクル目の充電後の電池をドライルーム内で分解して、負極を取り出した。負極の活物質層を銅箔から削り落として、この活物質層を3mg秤量した。これにECとDECとの体積比1:1の混合溶媒に1mol/dmのLiPFを溶解した電解液を3mg加えてすみやかに示差走査熱量計(SII製、DSC220C)にセットした。10℃/minの昇温速度で、室温から200℃までの範囲でDSC測定をおこなった。その結果から、負極活物質層の発熱速度(単位:W/g・℃)を求めた。一例として、図1に実施例電池A1および比較例電池B1の負極活物質層のDSC曲線を示す。
【0089】
表1〜表5に、各電池の安全性の判定結果、XPS測定による負極表面の化合物、およびDSC測定による各酸化物の発熱速度の最大値を示す。















【0090】
【表1】












【0091】
【表2】


















【0092】
【表3】

















【0093】
【表4】



【0094】
【表5】



【0095】
〈結果〉
実施例の電池A1〜A25は良好な安全性を示したが、比較例の電池B1〜B6は不良であった。この結果は、XPSによって解析した負極表面の物質に含まれる元素との相関を示している。すなわち、安全性が良好であった実施例電池A1〜A25は、負極活物質の表面に存在する物質が、B、N、P、Sのなかから選択したすくなくとも1種類の元素とLi元素とを含むものであることがわかった。一方、安全性が不良であった比較例電池B1〜B6は、前記の物質がこれらの元素を含まないことがわかった。
【0096】
また、各電池の負極活物質層のDSC測定では、本発明電池のA1〜A25のものは発熱ピークが認められず、その最大発熱速度は0.03〜0.1W/g・℃であった。一方、比較例電池B1〜B7の負極活物質層では、発熱ピークが認められ、その最大発熱速度は0.5W/g・℃以上であった。すなわち、DSCでの発熱ピークのない負極活物質層を備えた本実施例電池は、安全性が良好であった試験結果と一致する。
【0097】
以上の結果から、互いに組成の異なる中核と表面層とを備えた負極活物質を負極に備え、前記負極活物質の前記中核はSiを含む酸化物を備え、前記表面層はB、N、P、Sのなかから選択したすくなくとも1種類の元素とLiを含む化合物を備え、前記負極活物質層のDSC(示差走査熱量分析)を測定したときに200℃以下で発熱ピークがない場合に、良好な安全性を示すことがわかった。
【0098】
これは、本発明電池に用いる負極活物質の表面に形成された化合物が、電解液との反応を抑制して、安全性が向上したためと考えられる。また、実施例A1とA23、実施例A2とA24、実施例A3とA13等の電池のデータを比較すると、CおよびFの元素を含むものの方が、最大発熱速度の値が小さかった。負極活物質の表面に形成された化合物がCおよびFの元素を含むものは、電池の安全性の向上により好ましいことがわかった。
【0099】
なお、実施例の負極活物質には、Siに対するOの原子比xの値がx=1であるSiOを用いたが、これに限定されるものではない。0<x<2の範囲のものは好ましい活物質である。上記の手法によって酸化物の表面に備えた物質はSiに対するOの元素比xに関係ないことがわかった。
【0100】
また、Siを含む酸化物の表面に形成した物質は、表1に記載されたものに限らず、B、N、P、Sのなかから選択したすくなくとも1種類の元素とLiを含む化合物を備えていればよく、そのほかの元素を含んでいてもよい。前記物質の形成方法は、電気化学的手法、直流プラズマCVD法、および浸漬法を示したが、その他の方法も用いることができる。電気化学的手法では、その電解液の塩の種類、濃度、および溶媒の種類および比率はこれらに限らず有効である。また、実施例5、7および8のホスファゼンやテトラメチルアンモニウム−ヘキサフルオロリン酸のような添加剤を加えてもよい。これらは、元素としてNおよびPを含むものであるが、実施例の組成の化合物に限定されず、それらの誘導体も用いることができる。
【0101】
また、必要に応じて、他の添加剤を加えてもよい。また、CVDでは、直流プラズマだけでなく、高周波プラズマ、光、レーザーおよび熱による方法も有効である。供給するガスの種類や組成も、適宜変更が可能である。
【0102】
浸漬法では、負極を浸漬する溶媒は実施例のNMPに限らず、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N−N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどでも有効であり、その乾燥温度は溶媒が蒸発することができる範囲で適当な値に変更できる。
【0103】
実施例の非水電解質電池の電解液にはECとDECとの体積比1:1の混合溶媒に1mol/dmのLiPFを溶解したものを用いたが、塩の種類、濃度、溶媒の種類および混合比率はこれらに限らず適当なものを選択できる。また、必要に応じて、種々の添加剤を加えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】充電状態の本発明電池A1および比較例電池B1から取り出した負極活物質層のDSC測定結果を示した図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに組成の異なる中核と表面層とを備えた負極活物質を負極に備えた非水電解質二次電池において、前記中核はSiを含む酸化物を備え、前記表面層はB、N、P、Sのなかから選択した1種類の元素とLiとを含む化合物をすくなくとも1種類備え、前記負極活物質層のDSC(示差走査熱量分析)において200℃以下で発熱ピークがないことを特徴とする非水電解質二次電池
【請求項2】
前記表面層がCまたは(および)Fを含むことを特徴とする請求項1記載の非水電解質二次電池






















【図1】
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【公開番号】特開2006−4822(P2006−4822A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181257(P2004−181257)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000004282)日本電池株式会社 (48)
【Fターム(参考)】