説明

非水電解質電池

導電材としてカーボンブラックのみを用いる場合よりも、正極活物質層の体積当りの容量を高くすることが可能な非水電解質電池が得られる。この非水電解質電池は、正極活物質層を含む正極(1)と、負極活物質層を含む負極(2)と、非水電解質(5)と、正極活物質層に含有され、1m/g以上800m/g未満の比表面積を有するカーボンブラックと、チッ化物、炭化物およびホウ化物からなるグループより選択される少なくとも1つの材料とを含む導電材とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、非水電解質電池に関し、特に、正極活物質層に導電材が含有された非水電解質電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高容量の非水電解質電池として、リチウム二次電池が知られている。このようなリチウム二次電池は、たとえば、特開平10−83818号公報に開示されている。この従来のリチウム二次電池では、正極活物質層の充填密度(正極活物質層の体積当りの質量(集電体の質量は除く))を高くすることによって、リチウム二次電池の高容量化を図っていた。具体的には、正極活物質層を構成する正極活物質として、真密度の高い層状岩塩型の材料を用いることによって、正極活物質層の体積当りの容量を高くしていた。また、従来では、正極活物質層に含有される導電材として、40×10−6Ωcm〜70×10−6Ωcmの比抵抗率を有するカーボンブラックのみを用いていた。
【0003】
しかしながら、上記した従来の非水電解質電池としてのリチウム二次電池では、正極活物質層に含有される導電材としてのカーボンブラックの真密度(2.2g/ml)が低いので、正極活物質層の充填密度をより高くするのが困難であるという不都合があった。その結果、リチウム二次電池(非水電解質電池)の容量をより高くするのが困難であるという問題点があった。また、リチウム金属の溶解析出電位を基準電位(0Vvs.Li/Li)とした場合、基準電位に対して4V以上になると、カーボンブラックを触媒とした非水電解質の分解や、電解質のアニオン(陰イオン)がカーボンブラックにドープされるという不都合があった。すなわち、高電圧(4V以上)下において、カーボンブラックと非水電解質および正極活物質との界面で発生する化学反応に起因して、リチウム二次電池(非水電解質電池)の容量が低下するという問題点があった。
【発明の開示】
【0004】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、導電材としてカーボンブラックのみを用いる場合よりも、正極活物質層の体積当りの容量を高くすることが可能な非水電解質電池を提供することである。
【0005】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による非水電解質電池は、正極活物質層を含む正極と、負極活物質層を含む負極と、非水電解質と、正極活物質層に含有され、1m/g以上800m/g未満の比表面積を有するカーボンブラックと、チッ化物、炭化物およびホウ化物からなるグループより選択される少なくとも1つの材料とを含む導電材とを備えている。
【0006】
この第1の局面による非水電解質電池では、上記のように、カーボンブラックと、チッ化物、炭化物およびホウ化物からなるグループより選択される少なくとも1つの材料とを含む導電材を用いることによって、カーボンブラックのみを含む導電材を用いる場合よりも、正極活物質層の充填密度(正極活物質層の体積当りの質量(集電体の質量は除く))を高くすることができる。この理由は、チッ化物、炭化物およびホウ化物からなるグループより選択される少なくとも1つの材料は、カーボンブラックよりも高い真密度を有するためである。これにより、正極活物質層の体積当りの容量を高くすることができる。さらに、チッ化物、炭化物およびホウ化物からなるグループより選択される少なくとも1つの材料のみを含む導電材を用いる場合よりも、充放電サイクル特性(容量維持率)を向上させることができる。また、チッ化物、炭化物およびホウ化物からなるグループより選択される少なくとも1つの材料は、カーボンブラックと比べて、高電圧(4V以上)下において、非水電解質および正極活物質層を構成する正極活物質との化学反応が生じ難い材料であるので、チッ化物、炭化物およびホウ化物からなるグループより選択される少なくとも1つの材料の化学反応に起因する容量の低下を抑制することができる。また、カーボンブラックの比表面積を、1m/g以上800m/g未満にすることによって、カーボンブラックと、非水電解質および正極活物質層を構成する正極活物質との界面での接触面積を小さくすることができるので、カーボンブラックと、非水電解質および正極活物質との界面で発生する化学反応を抑制することができ、その結果、容量が低下するのを抑制することができる。このように、第1の局面では、カーボンブラックと、チッ化物、炭化物およびホウ化物からなるグループより選択される少なくとも1つの材料とを含む導電材を用いるとともに、カーボンブラックの比表面積を、1m/g以上800m/g未満にすることによって、導電材の化学反応に起因する容量の低下を抑制しながら、非水電解質電池の容量を高くすることができるとともに、充放電サイクル特性を向上させることができる。
【0007】
上記第1の局面による非水電解質電池において、導電材は、カーボンブラックと、チッ化物とを含むことが好ましい。チッ化物の真密度は、カーボンブラックの真密度よりも高いので、正極活物質層の体積当りの容量を容易に高くすることができる。また、チッ化物は、カーボンブラックと比べて、高電圧(4V以上)下において、非水電解質および正極活物質層を構成する正極活物質との化学反応が生じ難い材料であるので、チッ化物の化学反応に起因する容量の低下を容易に抑制することができる。
【0008】
上記第1の局面による非水電解質電池において、チッ化物は、金属チッ化物を含むことが好ましい。金属チッ化物の真密度(3g/ml〜17g/ml)は、カーボンブラックの真密度(2.2g/ml)よりも高いので、金属チッ化物を含むように導電材を構成すれば、容易に、正極活物質層の充填密度を高くすることができる。また、カーボンブラックの比抵抗率(40×10−6Ωcm〜70×10−6Ωcm)に近い比抵抗率を有する金属チッ化物を用いれば、容易に、良好な導電性を確保することができる。
【0009】
この場合、金属チッ化物は、チッ化ジルコニウム(ZrNまたはZr)を含むことが好ましい。チッ化ジルコニウムは、7g/mlの真密度と、13.6×10−6Ωcmの比抵抗率とを有するので、容易に、良好な導電性を確保しながら、正極活物質層の充填密度を高くすることができる。なお、チッ化ジルコニウムの化学式は、一義的に決め難く、ZrNまたはZrとする両説がある。
【0010】
上記第1の局面による非水電解質電池において、チッ化物、炭化物およびホウ化物からなるグループより選択される少なくとも1つの材料は、平均粒径が0.2μm以上5μm以下の正極活物質層中に分散し易い粒子を有することが好ましい。このように構成すれば、正極活物質層中のチッ化物、炭化物およびホウ化物からなるグループより選択される少なくとも1つの材料の分散性が向上するので、より良好な導電性を確保することができる。
【0011】
この発明の第2の局面による非水電解質電池は、正極活物質層を含む正極と、負極活物質層を含む負極と、非水電解質と、正極活物質層に含有され、カーボンブラックと、平均粒径が0.2μm以上5μm以下の正極活物質層中に分散し易い粒子を有するチッ化物、炭化物およびホウ化物からなるグループより選択される少なくとも1つの材料とを含む導電材とを備えている。
【0012】
この第2の局面による非水電解質電池では、上記のように、カーボンブラックと、チッ化物、炭化物およびホウ化物からなるグループより選択される少なくとも1つの材料とを含む導電材を用いることによって、カーボンブラックのみを含む導電材を用いる場合よりも、正極活物質層の充填密度(正極活物質層の体積当りの質量(集電体の質量は除く))を高くすることができる。この理由は、チッ化物、炭化物およびホウ化物からなるグループより選択される少なくとも1つの材料は、カーボンブラックよりも高い真密度を有するためである。これにより、正極活物質層の体積当りの容量を高くすることができる。さらに、チッ化物、炭化物およびホウ化物からなるグループより選択される少なくとも1つの材料のみを含む導電材を用いる場合よりも、充放電サイクル特性(容量維持率)を向上させることができる。また、チッ化物、炭化物およびホウ化物からなるグループより選択される少なくとも1つの材料は、カーボンブラックと比べて、高電圧(4V以上)下において、非水電解質および正極活物質層を構成する正極活物質との化学反応が生じ難い材料であるので、チッ化物、炭化物およびホウ化物からなるグループより選択される少なくとも1つの材料の化学反応に起因する容量の低下を抑制することができる。また、チッ化物、炭化物およびホウ化物からなるグループより選択される少なくとも1つの材料を、平均粒径が0.2μm以上5μm以下の正極活物質層中に分散し易い粒子を有するように構成することによって、正極活物質層中のチッ化物、炭化物およびホウ化物からなるグループより選択される少なくとも1つの材料の分散性が向上するので、良好な導電性を確保することができる。このように、第2の局面では、カーボンブラックと、チッ化物、炭化物およびホウ化物からなるグループより選択される少なくとも1つの材料とを含む導電材を用いるとともに、チッ化物、炭化物およびホウ化物からなるグループより選択される少なくとも1つの材料を、平均粒径が0.2μm以上5μm以下の正極活物質層中に分散し易い粒子を有するように構成することによって、正極活物質層の導電性の低下および導電材の化学反応に起因する容量の低下を抑制しながら、非水電解質電池の容量を高くすることができるとともに、充放電サイクル特性を向上させることができる。
【0013】
上記第2の局面による非水電解質電池において、導電材は、カーボンブラックと、チッ化物とを含むことが好ましい。チッ化物の真密度は、カーボンブラックの真密度よりも高いので、正極活物質層の体積当りの容量を容易に高くすることができる。また、チッ化物は、カーボンブラックと比べて、高電圧(4V以上)下において、非水電解質および正極活物質層を構成する正極活物質との化学反応が生じ難い材料であるので、チッ化物の化学反応に起因する容量の低下を容易に抑制することができる。
【0014】
上記第2の局面による非水電解質電池において、チッ化物は、金属チッ化物を含むことが好ましい。金属チッ化物の真密度(3g/ml〜17g/ml)は、カーボンブラックの真密度(2.2g/ml)よりも高いので、金属チッ化物を含むように導電材を構成すれば、容易に、正極活物質層の充填密度を高くすることができる。また、カーボンブラックの比抵抗率(40×10−6Ωcm〜70×10−6Ωcm)に近い比抵抗率を有する金属チッ化物を用いれば、容易に、良好な導電性を確保することができる。
【0015】
この場合、金属チッ化物は、チッ化ジルコニウム(ZrNまたはZr)を含むことが好ましい。チッ化ジルコニウムは、7g/mlの真密度と、13.6×10−6Ωcmの比抵抗率とを有するので、容易に、良好な導電性を確保しながら、正極活物質層の充填密度を高くすることができる。なお、チッ化ジルコニウムの化学式は、一義的に決め難く、ZrNまたはZrとする両説がある。
【0016】
上記第2の局面による非水電解質電池において、カーボンブラックは、1m/g以上800m/g未満の比表面積を有することが好ましい。このように構成すれば、カーボンブラックと、非水電解質および正極活物質層を構成する正極活物質との界面での接触面積を小さくすることができるので、カーボンブラックと、非水電解質および正極活物質との界面で発生する化学反応を抑制することがでる。これにより、容量が低下するのをより抑制することができる。
【0017】
この発明の第3の局面による非水電解質電池は、正極活物質層を含む正極と、負極活物質層を含む負極と、非水電解質と、正極活物質層に含有され、1m/g以上800m/g未満の比表面積を有するカーボンブラックと、平均粒径が0.2μm以上5μm以下の正極活物質層中に分散し易い粒子を有するチッ化ジルコニウム(ZrNまたはZr)とを含む導電材とを備えている。
【0018】
この第3の局面による非水電解質電池では、上記のように、カーボンブラックと、チッ化ジルコニウムとを含む導電材を用いることによって、カーボンブラックのみを含む導電材を用いる場合よりも、正極活物質層の充填密度(正極活物質層の体積当りの質量(集電体の質量は除く))を高くすることができる。この理由は、チッ化ジルコニウムは、カーボンブラックよりも高い真密度を有するためである。これにより、正極活物質層の体積当りの容量を高くすることができる。さらに、チッ化ジルコニウムのみを含む導電材を用いる場合よりも、充放電サイクル特性(容量維持率)を向上させることができる。また、チッ化ジルコニウムは、カーボンブラックと比べて、高電圧(4V以上)下において、非水電解質および正極活物質層を構成する正極活物質との化学反応が生じ難い材料であるので、チッ化ジルコニウムの化学反応に起因する容量の低下を抑制することができる。また、チッ化ジルコニウムを、平均粒径が0.2μm以上5μm以下の正極活物質層中に分散し易い粒子を有するように構成することによって、正極活物質層中のチッ化ジルコニウムの分散性が向上するので、良好な導電性を確保することができる。また、カーボンブラックの比表面積を、1m/g以上800m/g未満にすることによって、カーボンブラックと、非水電解質および正極活物質層を構成する正極活物質との界面での接触面積を小さくすることができるので、カーボンブラックと、非水電解質および正極活物質との界面で発生する化学反応を抑制することができ、その結果、容量が低下するのを抑制することができる。このように、第3の局面では、比表面積が1m/g以上800m/g未満のカーボンブラックと、平均粒径が0.2μm以上5μm以下の正極活物質層中に分散し易い粒子を有するチッ化ジルコニウムとを含む導電材を用いることによって、正極活物質層の導電性の低下および導電材の化学反応に起因する容量の低下を抑制しながら、非水電解質電池の容量を高くすることができるとともに、充放電サイクル特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、実施例1で用いた導電材を構成するチッ化ジルコニウムの粒度分布を示したグラフである。
【図2】図2は、実施例1で用いた導電材を構成するチッ化ジルコニウムのSEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)写真である。
【図3】図3は、実施例1〜実施例3、比較例1および比較例2によるリチウム二次電池(非水電解質電池)の正極の特性を調べるために作製した試験セルを示した斜視図である。
【図4】図4は、実施例1に対応する試験セルについて行った充放電試験の結果を示したグラフである。
【図5】図5は、実施例2に対応する試験セルについて行った充放電試験の結果を示したグラフである。
【図6】図6は、実施例3に対応する試験セルについて行った充放電試験の結果を示したグラフである。
【図7】図7は、比較例1に対応する試験セルについて行った充放電試験の結果を示したグラフである。
【図8】図8は、比較例2に対応する試験セルについて行った充放電試験の結果を示したグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
【実施例1】
【0021】
[正極の作製]
この実施例1では、正極活物質層を構成する導電材として、12m/gの比表面積を有するカーボンブラックと、平均粒径が0.2μm以上5μm以下の正極活物質層中に分散し易い粒子を有するチッ化ジルコニウムとを含む導電材を用いた。なお、カーボンブラックは、2.2g/mlの真密度と、40×10−6Ωcm〜70×10−6Ωcmの比抵抗率とを有するとともに、チッ化ジルコニウムは、7g/mlの真密度と、13.6×10−6Ωcmの比抵抗率とを有している。また、正極活物質層を構成する正極活物質および結着材としては、それぞれ、コバルト酸リチウム(LiCoO)およびポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いた。なお、コバルト酸リチウムは、層状岩塩型構造を有するとともに、5g/mlの真密度を有している。
【0022】
ここで、実施例1で用いた導電材を構成するチッ化ジルコニウムの具体的な平均粒径を調べるために、粒度分布測定を行った。なお、粒度分布測定には、レーザ回折式粒度分布測定装置(SALD−2000、島津製作所製)を用いた。なお、平均粒径とは、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定したメディアン径である。
【0023】
図1には、実施例1で用いた導電材を構成するチッ化ジルコニウムの粒度分布が示されている。なお、図1の横軸には、粒子径(μm)がとられている。また、図1の左側の縦軸には、相対粒子量(%)がとられており、曲線グラフで示されている。また、図1の右側の縦軸には、頻度分布(%)がとられており、棒グラフで示されている。なお、相対粒子量とは、全体の粒子量に対して、所定の粒子径以下の粒子が占める割合である。また、頻度分布とは、粒子径の範囲を等間隔に分割し、全体の粒子量に対して、それぞれの粒子径範囲内に存在する粒子が占める割合である。また、図1中のモード径とは、被測定物中に最も多く存在する粒子の粒子径である。
【0024】
図1を参照して、実施例1で用いた導電材を構成するチッ化ジルコニウムの平均粒径(メディアン径)は、3.1μmであり、平均粒径が0.2μm以上5μm以下であることが確認できた。また、モード径は、3.8μmであり、0.2μm以上5μm以下の粒子径を有する粒子が最も多く存在することが確認できた。
【0025】
また、図2を参照して、実施例1で用いた導電材を構成するチッ化ジルコニウムは、粒子が全体に渡って均一に分散していることが判明した。この結果から、チッ化ジルコニウムの平均粒径が0.2μm以上5μm以下であれば、粒子の分散性が向上すると考えられる。
【0026】
そして、コバルト酸リチウム(正極活物質)、カーボンブラック(導電材)、チッ化ジルコニウム(導電材)およびポリフッ化ビニリデン(結着材)の質量比が94:1:2:3になるように、上記した正極活物質層を構成する材料を混合した。次に、その混合物にN−メチル−2−ピロリドンを加えて正極活物質層としての正極合剤スラリーを調製した。最後に、集電体としてのアルミニウム箔上に、正極活物質層としての正極合剤スラリーを塗布した後、集電体および正極活物質層を2cm角の正方形に切り出すことによって、実施例1によるリチウム二次電池(非水電解質電池)の正極を作製した。なお、実施例1では、正極を構成する正極活物質層の充填密度(正極活物質層の体積当りの質量)は、4.13g/mlであった。なお、本発明における正極活物質層の充填密度は、集電体としてのアルミニウム箔を除いたものである。
【実施例2】
【0027】
[正極の作製]
この実施例2では、正極活物質層を構成する導電材として、39m/gの比表面積を有するカーボンブラックと、平均粒径が0.2μm以上5μm以下の正極活物質層中に分散し易い粒子を有するチッ化ジルコニウムとを含む導電材を用いた。なお、導電材を構成するチッ化ジルコニウムについて、上記実施例1と同様の粒度分布測定を行った結果、チッ化ジルコニウムの具体的な平均粒径は、3.1μmであった。また、正極活物質層を構成する正極活物質および結着材としては、それぞれ、コバルト酸リチウムおよびポリフッ化ビニリデンを用いた。
【0028】
そして、上記実施例1と同様、コバルト酸リチウム(正極活物質)、カーボンブラック(導電材)、チッ化ジルコニウム(導電材)およびポリフッ化ビニリデン(結着材)の質量比が94:1:2:3になるように、正極活物質層としての正極合剤スラリーを調製した。最後に、集電体としてのアルミニウム箔上に、正極活物質層としての正極合剤スラリーを塗布した後、集電体および正極活物質層を2cm角の正方形に切り出すことによって、実施例2によるリチウム二次電池(非水電解質電池)の正極を作製した。なお、実施例2では、正極を構成する正極活物質層の充填密度は、4.20g/mlであった。
【実施例3】
【0029】
[正極の作製]
この実施例3では、正極活物質層を構成する導電材として、70m/gの比表面積を有するカーボンブラックと、0.2μm以上5μm以下の正極活物質層中に分散し易い粒子を有するチッ化ジルコニウムとを含む導電材を用いた。なお、導電材を構成するチッ化ジルコニウムについて、上記実施例1と同様の粒度分布測定を行った結果、チッ化ジルコニウムの具体的な平均粒径は、3.1μmであった。また、正極活物質層を構成する正極活物質および結着材としては、それぞれ、コバルト酸リチウムおよびポリフッ化ビニリデンを用いた。
【0030】
そして、コバルト酸リチウム(正極活物質)、カーボンブラック(導電材)、チッ化ジルコニウム(導電材)およびポリフッ化ビニリデン(結着材)の質量比が91:1:5:3になるように、上記した正極活物質層を構成する材料を混合した。次に、上記実施例1と同様、その混合物にN−メチル−2−ピロリドンを加えて正極活物質層としての正極合剤スラリーを調製した。最後に、集電体としてのアルミニウム箔上に、正極活物質層としての正極合剤スラリーを塗布した後、集電体および正極活物質層を2cm角の正方形に切り出すことによって、実施例3によるリチウム二次電池(非水電解質電池)の正極を作製した。なお、実施例3では、正極を構成する正極活物質層の充填密度は、4.16g/mlであった。
【0031】
(比較例1)
[正極の作製]
この比較例1では、正極活物質層を構成する導電材として、800m/gの比表面積を有するカーボンブラックと、3.1μmの平均粒径を有するチッ化ジルコニウムとを含む導電材を用いた。また、正極活物質層を構成する正極活物質および結着材としては、それぞれ、コバルト酸リチウムおよびポリフッ化ビニリデンを用いた。
【0032】
そして、上記実施例3と同様、コバルト酸リチウム(正極活物質)、カーボンブラック(導電材)、チッ化ジルコニウム(導電材)およびポリフッ化ビニリデン(結着材)の質量比が91:1:5:3になるように、正極活物質層としての正極合剤スラリーを調製した。最後に、集電体としてのアルミニウム箔上に、正極活物質層としての正極合剤スラリーを塗布した後、集電体および正極活物質層を2cm角の正方形に切り出すことによって、比較例1によるリチウム二次電池(非水電解質電池)の正極を作製した。なお、比較例1では、正極を構成する正極活物質層の充填密度は、4.09g/mlであった。
【0033】
(比較例2)
[正極の作製]
この比較例2では、正極活物質層を構成する導電材として、平均粒径が3.1μmのチッ化ジルコニウムのみを含む導電材を用いた。また、正極活物質層を構成する正極活物質および結着材としては、それぞれ、コバルト酸リチウムおよびポリフッ化ビニリデンを用いた。
【0034】
そして、コバルト酸リチウム(正極活物質)、チッ化ジルコニウム(導電材)およびポリフッ化ビニリデン(結着材)の質量比が87:10:3になるように、上記した正極活物質層を構成する材料を混合した。次に、上記実施例1と同様、その混合物にN−メチル−2−ピロリドンを加えて正極活物質層としての正極合剤スラリーを調製した。最後に、集電体としてのアルミニウム箔上に、正極活物質層としての正極合剤スラリーを塗布した後、集電体および正極活物質層を2cm角の正方形に切り出すことによって、比較例2によるリチウム二次電池(非水電解質電池)の正極を作製した。なお、比較例2では、正極を構成する正極活物質層の充填密度は、4.49g/mlであった。
【0035】
(実施例1〜実施例3、比較例1および比較例2共通)
[非水電解質の作製]
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを50:50の体積比で混合した混合溶媒に、電解質(溶質)としての六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1モル/リットル溶解することによって、リチウム二次電池(非水電解質電池)の非水電解質を作製した。
【0036】
[試験セルの作製]
図3を参照して、試験セルの作製プロセスとしては、正極1と負極2とがセパレータ3を挟んで対向するように、正極1および負極2を容器10内に配置するとともに、参照極4も容器10内に配置した。そして、容器10内に非水電解質5を注入することによって、試験セルを作製した。なお、正極1としては、上記のようにして作製した正極を用いるとともに、負極2および参照極3としては、リチウム(Li)金属を用いた。また、非水電解質5としては、上記のようにして作製した非水電解質を用いた。
【0037】
[充放電試験]
上記のようにして作製した実施例1〜実施例3、比較例1および比較例2に対応するそれぞれの試験セルについて、充放電試験を行った。この充放電の条件は、1.5mAの定電流で4.3Vになるまで充電した後、1.5mAの定電流で2.75Vになるまで放電した。そして、この充放電を1サイクルとして、1サイクル目と4サイクル目の放電後の容量を測定した。
【0038】
まず、図4〜図7を参照して、導電材を構成するカーボンブラックの比表面積か1m/g以上800m/g未満である実施例1〜3の方が、カーボンブラックの比表面積が800m/gである比較例1よりも、1サイクル目の放電後の容量が高くなることが判明した。具体的には、カーボンブラックの比表面積が12m/gである実施例1(図4参照)の1サイクル目の放電後の容量は、560mAh/mlであった。また、カーボンブラックの比表面積が39m/gである実施例2(図5参照)の1サイクル目の放電後の容量は、572mAh/mlであった。また、カーボンブラックの比表面積が70m/gである実施例3(図6参照)の1サイクル目の放電後の容量は、557mAh/mlであった。すなわち、実施例1〜3では、1サイクル目の放電後において、高い容量(557mAh/ml以上)を得ることができた。その一方、カーボンブラックの比表面積が800m/gである比較例1(図7参照)の1サイクル目の放電後の容量は、532mAh/mlであった。なお、図4〜図7中に示す容量(mAh/ml)は、正極活物質層の体積当りの容量である。
【0039】
この結果から、実施例1〜3では、導電材を構成するカーボンブラックの比表面積を、1m/g以上800m/g未満にすることにより、容量の低下が抑制されたと考えられる。すなわち、実施例1〜3では、導電材を構成するカーボンブラックの比表面積を、1m/g以上800m/g未満にすることによって、カーボンブラックと、非水電解質および正極活物質との界面での接触面積を小さくすることができるので、カーボンブラックと、非水電解質および正極活物質との界面で発生する化学反応を抑制することができ、その結果、容量が低下するのを抑制することができると考えられる。
【0040】
次に、図4〜図6および図8を参照して、カーボンブラックとチッ化ジルコニウムとを含む導電材を用いた実施例1〜3の方が、チッ化ジルコニウムのみを含む導電材を用いた比較例2よりも、容量維持率(1サイクル目の放電後の容量に対する4サイクル目の放電後の容量の比率)が向上することが判明した。具体的には、カーボンブラックとチッ化ジルコニウムとを含む導電材を用いた実施例1(図4参照)、実施例2(図5参照)および実施例3(図6参照)の1サイクル目の放電後の容量は、それぞれ、560mAh/ml、572mAh/mlおよび557mAh/mlであり、4サイクル目の放電後の容量は、それぞれ、566mAh/ml、567mAh/mlおよび555mAh/mlであった。すなわち、実施例1、実施例2および実施例3の容量維持率は、それぞれ、100%、99.1%および99.6%であった。その一方、チッ化ジルコニウムのみを含む導電材を用いた比較例2(図8参照)では、1サイクル目および4サイクル目の放電後の容量は、それぞれ、585mAh/mlおよび553mAh/mlであった。すなわち、比較例2の容量維持率は、94.5%であった。なお、図8中に示す容量(mAh/ml)は、正極活物質層の体積当りの容量である。
【0041】
この結果から、実施例1〜3では、カーボンブラックとチッ化ジルコニウムとを含む導電材を用いることにより、容量維持率が向上したと考えられる。すなわち、実施例1〜3では、カーボンブラックとチッ化ジルコニウムとを含む導電材を用いることによって、チッ化ジルコニウムのみを含む導電材を用いる場合よりも、充放電サイクル特性(容量維持率)を向上させることができると考えられる。
【0042】
なお、実施例1〜3では、比較例2に比べて、充放電サイクル特性が向上する一方、1サイクル目の容量が低くなることが判明した。これは、カーボンブラックの真密度(2.2g/ml)よりも高い真密度(7g/ml)を有するチッ化ジルコニウムのみを含む導電材を用いた比較例2の方が、カーボンブラックとチッ化ジルコニウムとを含む導電材を用いた実施例1〜3よりも、正極活物質層の充填密度が高くなったためであると考えられる。
【0043】
実施例1〜3では、上記のように、カーボンブラックとチッ化ジルコニウムとを含む導電材を用いるとともに、カーボンブラックの比表面積を、1m/g以上800m/g未満にすることによって、カーボンブラックと非水電解質および正極活物質との界面で発生する化学反応に起因する容量の低下を抑制しながら、充放電サイクル特性を向上させることができる。
【0044】
また、実施例1〜3では、上記のように、2.2g/mlの真密度を有するカーボンブラックと、7g/mlの真密度を有するチッ化ジルコニウムとを含む導電材を用いることによって、カーボンブラックのみを含む導電材を用いる場合よりも、正極活物質層の充填密度を高くすることができるので、正極活物質層の体積当りの容量を高くすることができる。また、チッ化ジルコニウムは、カーボンブラックと比べて、高電圧(4V以上)下において、非水電解質および正極活物質との化学反応が生じ難い材料であるので、チッ化ジルコニウムの化学反応に起因する容量の低下を抑制することができる。また、チッ化ジルコニウムの平均粒径を、0.2μm以上5μm以下にすることによって、正極活物質層中のチッ化ジルコニウムの分散性を向上させることができるので、良好な導電性を確保することができる。さらに、チッ化ジルコニウムの比抵抗率(13.6×10−6Ωcm)は、カーボンブラックの比抵抗率(40×10−6Ωcm〜70×10−6Ωcm)と近似しているため、カーボンブラックとチッ化ジルコニウムとを含む導電材を用いることに起因して、導電性が低下することはない。
【0045】
なお、今回開示された実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0046】
たとえば、上記実施例では、本発明をリチウム二次電池に適用する例を説明したが、本発明はこれに限らず、リチウム二次電池以外の非水電解質電池にも適用可能である。
【0047】
また、上記実施例では、カーボンブラックと共に導電材を構成する材料として、チッ化ジルコニウムを用いたが、本発明はこれに限らず、チッ化ジルコニウム以外のチッ化物、炭化物およびホウ化物からなるグループより選択される少なくとも1つの材料を用いたとしても、同様の効果を得ることができる。なお、チッ化ジルコニウム以外の金属チッ化物としては、たとえば、NbN、TiN、Ti、VN、CrN、FeN、CuN、GaN、MoN、RuN、TaN、TaN、HfN、ThN、MoN、Mn、Co、Ni、WNおよびOsNからなるグループより選択される少なくとも1つの材料が挙げられる。上記した金属チッ化物のうち、TiN、Ti、TaNおよびTaNは、カーボンブラックの比抵抗率(40×10−6Ωcm〜70×10−6Ωcm)に近い比抵抗率を有するので、TiN、Ti、TaNおよびTaNを用いれば、より良好な導電性を確保することができる。なお、TiN、Tiの比抵抗率は、21.7×10−6Ωcmであり、TaNおよびTaNの比抵抗率は、200×10Ω−6cmである。
【0048】
また、上記実施例では、カーボンブラックと共に導電材を構成する材料として、カーボンブラックの比抵抗率(40×10−6Ωcm〜70×10−6Ωcm)に近い比抵抗率(13.6×10−6Ωcm)を有するチッ化ジルコニウムを用いたが、本発明はこれに限らず、正極活物質層の充填密度を高くすることが可能であれば、カーボンブラックに比べて導電性が劣る材料を用いてもよい。
【0049】
また、上記実施例では、カーボンブラックと共に導電材を構成する材料として、3.1μmの平均粒径を有するチッ化ジルコニウムを用いたが、本発明はこれに限らず、チッ化ジルコニウムの平均粒径が0.2μm以上5μm以下であれば、同様の効果を得ることができる。ここで、チッ化ジルコニウムの平均粒径が5μmを超えると、導電材の分散が不均一になり、分散性が低下すると考えられるので、良好な導電性を確保するのが困難になると考えられる。また、チッ化ジルコニウムの平均粒径が0.2μmよりも小さいと、正極活物質層に含有される導電材同士の接触面積が減少するので、十分な導電性を確保するのが困難になると考えられる。
【0050】
また、上記実施例では、導電材を構成するチッ化ジルコニウムの質量比が2%(実施例1および2)または5%(実施例3)になるように、正極活物質層の構成材料を混合したが、本発明はこれに限らず、チッ化ジルコニウムの質量比が0.1%以上5%以下であればよい。なお、チッ化ジルコニウムの質量比が0.1%以上3%以下であればより好ましく、0.1%以上2%以下であればさらに好ましい。
【0051】
また、上記実施例では、導電材を構成するカーボンブラックの質量比が1%になるように、正極活物質層の構成材料を混合したが、本発明はこれに限らず、カーボンブラックの質量比が3%以下であればよい。なお、カーボンブラックの質量比が2%以下であればより好ましく、1%以下であればさらに好ましい。
【0052】
また、上記実施例では、正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO)を用いたが、本発明はこれに限らず、リチウムを吸蔵および放出することが可能であれば、コバルト酸リチウム以外の材料を正極活物質として用いてもよい。正極活物質として用いることが可能なコバルト酸リチウム以外の材料としては、たとえば、無機化合物であるLiFe、TiO、Vなどのトンネル状の空孔を有する酸化物や、TiSおよびMoSなどの層状構造を有する金属カルコゲン化合物などが挙げられる。また、正極活物質としては、LiMO(0≦x≦1)またはLi(0≦y≦2)で示される組成式を有する複合酸化物を用いるのがより好ましい。なお、組成式中のMは、遷移元素である。上記した組成式を有する複合酸化物としては、たとえば、LiMnO、LiNiO、LiCrO、LiMnなどが挙げられる。また、Liサイトの一部置換体および遷移金属の一部置換体などを用いてもよい。
【0053】
また、上記実施例では、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒を含む非水電解質を用いたが、本発明はこれに限らず、非水電解質電池の溶媒として使用可能であれば、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒以外の溶媒を用いてもよい。なお、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒以外の溶媒としては、たとえば、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、エステル類、環状エーテル類、鎖状エーテル類、ニトリル類およびアミド類などが挙げられる。環状炭酸エステルとしては、たとえば、プロピレンカーボネートおよびブチレンカーボネートなどが挙げられる。また、環状炭酸エステルの水素基の一部または全部がフッ素化されているものも使用可能であり、たとえば、トリフルオロプロピレンカーボネートおよびフルオロエチルカーボネートなどが挙げられる。また、鎖状炭酸エステルとしては、たとえば、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネートおよびメチルイソプロピルカーボネートなどが挙げられる。また、鎖状炭酸エステルの水素基の一部または全部がフッ素化されているものも使用可能である。
【0054】
また、エステル類としては、たとえば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルおよびγ−ブチロラクトンなどが挙げられる。また、環状エーテル類としては、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、1,4−ジオキサン、1,3,5−トリオキサン、フラン、2−メチルフラン、1,8−シネオールおよびクラウンエーテルなどが挙げられる。鎖状エーテル類としては、たとえば、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、メチルフェニルエーテル、エチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、ベンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、0−ジメトキシベンゼン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、1,1−ジメトキシメタン、1,1−ジエトキシエタン、トリエチレングリコールジメチルエーテルおよびテトラエチレングリコールジメチルなどが挙げられる。また、ニトリル類としては、たとえば、アセトニトリルなどが挙げられる。また、アミド類としては、たとえば、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
【0055】
また、上記実施例では、溶質(電解質塩)としての六フッ化リン酸リチウム(LiPF)が溶解された非水電解質を用いたが、本発明はこれに限らず、六フッ化リン酸リチウム以外の溶質が溶解された非水電解質を用いてもよい。なお、六フッ化リン酸リチウム以外の溶質としては、たとえば、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(以下の化1の化学式によって表わされる物質)、LiAsF、LiBF、LiCFSO、LiN(C2l+1SO)(C2m+1SO)およびLiC(C2p+1SO)(C2q+1SO)(C2r+1SO)などが挙げられる。なお、上記した組成式のl、m、p、qおよびrは、1以上の整数である。また、上記した溶質からなるグループから選択される2つ以上を組み合わせた混合物を溶質として用いてもよい。また、上記した溶質は、0.1M〜1.5Mの濃度で溶媒に溶解するのが好ましい。また、上記した溶質は、0.5M〜1.5Mの濃度で溶媒に溶解するのがより好ましい。
【0056】
【化1】

【0057】
また、上記実施例では、リチウム金属を負極として用いたが、本発明はこれに限らず、リチウムを吸蔵および放出することが可能であれば、リチウム金属以外の材料を負極活物質として用いてもよい。負極活物質として用いることが可能な材料としては、たとえば、リチウム合金、黒鉛などの炭素材料およびケイ素などが挙げられる。ここで、ケイ素は、高い容量を有するので、ケイ素からなる負極活物質を含む負極を用いれば、高エネルギ密度の非水電解質電池を得ることができる。このことは、たとえば、国際公開WO01/29912号公報などに開示されている。なお、集電体上に負極活物質層を形成する際には、粗面化された集電体を用いるのが好ましい。また、負極活物質層が柱状になるように形成するのが好ましい。さらに、負極活物質層中に集電体の成分が拡散されるように形成するのが好ましい。このように負極活物質層を形成すれば、非水電解質電池の充放電特性を向上させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質層を含む正極(1)と、
負極活物質層を含む負極(2)と、
非水電解質(5)と、
前記正極活物質層に含有され、1m/g以上800m/g未満の比表面積を有するカーボンブラックと、チッ化物、炭化物およびホウ化物からなるグループより選択される少なくとも1つの材料とを含む導電材とを備えた、非水電解質電池。
【請求項2】
前記導電材は、前記カーボンブラックと、前記チッ化物とを含む、請求の範囲第1項に記載の非水電解質電池。
【請求項3】
前記チッ化物は、金属チッ化物を含む、請求の範囲第1項または第2項に記載の非水電解質電池。
【請求項4】
前記金属チッ化物は、チッ化ジルコニウム(ZrNまたはZr)を含む、請求の範囲第3項に記載の非水電解質電池。
【請求項5】
前記チッ化物、炭化物およびホウ化物からなるグループより選択される少なくとも1つの材料は、平均粒径が0.2μm以上5μm以下の前記正極活物質層中に分散し易い粒子を有する、請求の範囲第1項〜第4項のいずれか1項に記載の非水電解質電池。
【請求項6】
正極活物質層を含む正極(1)と、
負極活物質層を含む負極(2)と、
非水電解質(5)と、
前記正極活物質層に含有され、カーボンブラックと、平均粒径が0.2μm以上5μm以下の前記正極活物質層中に分散し易い粒子を有するチッ化物、炭化物およびホウ化物からなるグループより選択される少なくとも1つの材料とを含む導電材とを備えた、非水電解質電池。
【請求項7】
前記導電材は、前記カーボンブラックと、前記チッ化物とを含む、請求の範囲第6項に記載の非水電解質電池。
【請求項8】
前記チッ化物は、金属チッ化物を含む、請求の範囲第6項または第7項に記載の非水電解質電池。
【請求項9】
前記金属チッ化物は、チッ化ジルコニウム(ZrNまたはZr)を含む、請求の範囲第8項に記載の非水電解質電池。
【請求項10】
前記カーボンブラックは、1m/g以上800m/g未満の比表面積を有する、請求の範囲第6項〜第9項のいずれか1項に記載の非水電解質電池。
【請求項11】
正極活物質層を含む正極(1)と、
負極活物質層を含む負極(2)と、
非水電解質(5)と、
前記正極活物質層に含有され、1m/g以上800m/g未満の比表面積を有するカーボンブラックと、平均粒径が0.2μm以上5μm以下の前記正極活物質層中に分散し易い粒子を有するチッ化ジルコニウム(ZrNまたはZr)とを含む導電材とを備えた、非水電解質電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【国際公開番号】WO2005/038966
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【発行日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514723(P2005−514723)
【国際出願番号】PCT/JP2004/013425
【国際出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】