説明

非環状オレフィンのテロメリゼーションの方法

元素周期系第8、9又は10族の金属を有する触媒の使用下での、少なくとも2つの共役二重結合を有する非環状オレフィンと少なくとも1種の求核剤とのテロメリゼーションの方法において、テロメリゼーションの全工程の少なくとも1つの方法工程において水素源を介して水素をこの工程に供給することを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの共役二重結合を有する非環状オレフィンのテロメリゼーションの方法、特に1,3−ブタジエン含有炭化水素混合物、特に分解C4と求核剤とを反応させることにより1−オクタ−2,7−ジエニル誘導体を製造する方法に関する。
【0002】
この場合に、2モルの1,3−ブタジエンと1モルの求核剤とから生ずるテロメリゼーション生成物(不飽和アミン、不飽和アルコール並びにそのエステル及びエーテル)は、有機合成のための出発物質である。この酸素含有誘導体は直鎖状C8−アルコール及びC8−オレフィン、特に1ーオクタノール及び1−オクテンの製造のための前駆物質である。他方では1−オクタノールは例えば可塑剤の製造に使用される。1−オクテンは、ポリエチレン及びポリプロピレンの変性に需要のあるコモノマーである。
【0003】
求核剤を用いてブタジエンからオクタジエニル誘導体を得るテロメリゼーションは、金属錯体、特にパラジウム化合物により触媒される。
【0004】
テロメリゼーション反応の例は、とりわけ、E. J. Smutny, J. Am. Chem. Soc. 1967, 89, 6793; S. Takahashi, T. Shibano, N. Hagihara, Tetrahedron Lett.1967, 2451;EP−A−0561779、US3499042、US3530187、GB1178812、NL6816008、GB1248593、US3670029、US3670032、US3769352、US3887627、GB1354507、DE2040708、US4142060、US4146738、US4196135、GB1535718、US4104471、DE2161750及びEP−A−0218100に記載されている。
【0005】
オクタジエニル誘導体の製造のための原料としては、純粋な1,3−ブタジエン又は1,3−ブタジエン含有炭化水素混合物、例えば分解C4を使用することができる。
【0006】
1,3ーブタジエンは、その分離法にコストがかさむために比較的高価な原料である。従って、大抵は経済的な1,3−ブタジエン含有炭化水素混合物がテロメリゼーションのための原料として選択される。このことは可能である。それというのも、大抵の随伴物質、例えば飽和炭化水素、例えばn−ブタン若しくはイソブタン、又はモノオレフィン、例えばイソブテン及び直鎖状ブテンは、テロメリゼーション反応において不活性に挙動するからである。阻害物質、すなわち空時収率又は選択性を減らすか又は触媒消費を高める物質のみを予め分離することが望ましい。
【0007】
DE19523335によれば、ナフサクラッカーからのC4留分を1,3−ブタジエン含有原料として使用する場合には、この出発物中のアセチレン系化合物及びアレンの濃度をテロメリゼーションのために制限することが適切である。アセチレン系及びアレン系不飽和化合物の合計は、1,3−ブタジエンに対して1質量%を超過しないことが望ましい。この妨害成分の除去のために、公知の方法が指摘されているが、但し特定の方法の提示又は引用はなされていない。
【0008】
DE10149348、DE10229290及びDE10329042は、この特許文献(DE19523335)を引き合いに出して、アセチレン系及びアレン系化合物をテロメリゼーション前に除去することが有利であることを示しているが、但し濃度限界を記述していない。
【0009】
WO91−09822においては、ナフサ、ガスオイル又はLPGの分解工程の際に得られたC4混合物から、テロメリゼーション前に、アセチレン系不飽和化合物を、それらが存在する限り選択的水素化により除去することが適切であることが記載されている。この場合に使用される水素化法は、該文献では開示されていない。この例においては、60ppm未満のアセチレン全含有量を有する原料を使用し、これはアレン分を含有することは示されていない。
【0010】
このアセチレン系化合物の分離は、これらの化合物の抽出又は水素化により実施することができる。このアセチレン系化合物(メチルアセチレン(プロピン)、エチルアセチレン(ブチン)、ビニルアセチレン(ブテニン))の水素化による除去の際に、高選択性で、主として1,3−ブタジエン及びモノオレフィンを水素化せずにこれらのアセチレン系化合物を水素化する方法を選択する。触媒としては、銅、銅と卑金属との組合せ、銅と貴金属との組合せ、又は元素周期系のVIII副族の金属の金属触媒、例えばパラジウム触媒(Kontakt)を有する水素化触媒を使用する。これに対応する方法は、とりわけ以下の特許文献に記載されている:US6576588、US6417419、US6225515、US6015933、US6194626、US6040489、US4493906、US4440956、US4101451、US3912789、US3751508、US3541178、US3327013、US3218268、EP1217060、EP1151790、EP1070695、EP0273900、NL6613942。
【0011】
アレン、例えば1,2−ブタジエンの水素化による除去は、アセチレン系化合物の選択的除去と比べて顕著に困難である。この水素化の際の1,2−ブタジエンの反応性は、1,3−ブタジエンと比べてわずかに大きいにすぎない。従って、1,2−ブタジエンを1,3−ブタジエン含有炭化水素混合物から水素化により除去する場合には、1,3−ブタジエン損失が避けられない。
【0012】
例えば、WO98/12160においては、アセチレン系化合物及び1,2−ブタジエンを1,3−ブタジエン含有炭化水素流からパラジウム接触触媒上で水素化により反応蒸留塔中において同時に除去する方法が説明されている。該文献に挙げられた例1において、この銅生成物においては、アセチレン系化合物の含有率は約60%だけ、かつ1,2−ブタジエンは32%だけ減るにすぎないにもかかわらず、1,3−ブタジエンは水素化により既に3%失われた。
【0013】
Jeroen W. Sprengersらは、Angew. Chem. 2005, 117, 2062-2065において、配位子としてN−複素環状化合物配位子を有するPd錯体触媒が、水素化、特に1−フェニル−1−プロピンから1−フェニル−1−プロペン及び1−フェニル−1−プロパンの水素化用の触媒として好適であることを報告している。
【0014】
2,7−オクタジエニル誘導体を分解C4から、技術水準によるテロメリゼーションにより製造する場合、阻害物質、例えばアルキンをこの原料混合物から分離するために、特に装置コストのためにコストがかさむ方法が必要とされる。この方法は特に、この原料混合物中のアルキン含有率を検出限界未満で得ることを試みる際に1,3−ブタジエンの一部がこの阻害物質の除去の際に失われるという欠点を有する。1,3−ブタジエン損失の回避のために、阻害物質の十分に完全な除去を断念するのであれば、テロメリゼーションの際により小さい空時収率若しくは選択性、又は、より大きい触媒負荷を甘受しなければならない。
【0015】
本発明の課題は、好ましくは単一又は全ての公知の技術水準の欠点を回避する代替的なテロメリゼーションの方法を提供することであった。
【0016】
驚くべきことに、テロメリゼーションの全工程の少なくとも1つの部分工程に水素源を介して水素を添加することにより、このテロメリゼーション触媒の阻害を回避することができるか若しくはこの触媒の阻害の際にこれらを再び活性化させることができることを目下見出した。
【0017】
従って本発明の対象は、元素周期系第8〜10族の金属を含有する触媒の使用下での、少なくとも2つの共役二重結合を有する非環状オレフィン(VI)と少なくとも1種の求核剤(VII)とのテロメリゼーションの方法において、テロメリゼーションの全工程に少なくとも1つの部分工程が存在し、該部分工程において、水素を有するガスから選択された水素源を介してこの部分工程中に存在する工程混合物に水素を添加することを特徴とする方法である。
【0018】
同様に、本発明の対象は、本発明にかかる方法により製造された、2,7−オクタジエニル誘導体を有する混合物、並びにこの混合物を1−オクテンの製造に用いる使用である。
【0019】
本発明にかかる方法は、全種の阻害物質、特に全種のアルキンの、原料混合物からの極めてコストがかさむ分離を省くことができるという利点を有する。本方法は更に、装置コストが減ることの他に、コストの大きい水素化触媒の使用を回避することもできるという利点を有する。
【0020】
本発明にかかる方法は更に、このテロメリゼーション触媒は不活性化するにしても非常にゆっくりと不活性化するので、テロメリゼーション触媒を節約できるという利点を有する。
【0021】
本発明に係る方法は更に、有機合成にとって重要な出発物質であるアレン若しくはクムレン、すなわち累積二重結合を有する化合物、例えば1,2−ブタジエンがあまり分解されず、この炭化水素流中に存在したまま、かつ第2の方法工程、テロメリゼーションの後に、テロメリゼーション生成物の後処理の際に分離されることができるという利点を有する。
【0022】
以下に、本発明を例示的に記載するが、本発明は、特許請求の範囲及び明細書からその特許保護範囲が生ずるものであり、この例示的な記載に制限されるものではない。特許請求の範囲自体も本発明の開示内容に含まれる。以下に、範囲、一般式又は化合物種を示すときに、これらは詳細に挙げられている化合物の相応の範囲又は群のみが明示されるだけではなく、幾つかの値(範囲)又は化合物を省いて得られる化合物の全ての部分範囲及び部分群も明示していることが望ましい。
【0023】
本発明は、元素周期系第8、9又は10族の金属を含有する触媒の使用下での、少なくとも2つの共役二重結合を有する非環状オレフィン(VI)と少なくとも1種の求核剤(VII)とのテロメリゼーションの方法において、テロメリゼーションの全工程に少なくとも1つの部分工程が存在し、該部分工程において、水素を有するガスから選択された水素源を介してこの部分工程中に存在する工程混合物に水素を添加することを特徴とする方法である。この水素を有するガスは、例えば現場でヒドラジンから得ることができる。
【0024】
水素源としては、特に水素を有するガス、好ましくは水素ガスを単独で又はテロメリゼーションに不活性なガス、例えば窒素、メタン若しくは1種以上の希ガスとの混合物として使用してよい。
【0025】
好ましくは、この水素源の添加を相応の部分工程の初期に既に実施する。この水素源は、好ましくはこの水素源を可能な限り微細に分布させるのに好適である装置を介して、部分工程中に供給する。この水素源がガスであるなら、装置、例えば混合ノズルであってよい。この混合物中でのガスの特に良好な均質化のために、この工程段階中の圧力は少なくとも2MPa、好ましくは4MPaである場合に有利であり得る。水素源が液状で存在するなら、例えばスタティックミキサの使用により可能な限り微細な分布を達成することができる。
【0026】
原料としては、純粋な共役二重結合を有する非環状オレフィン、種々のかかるオレフィンの混合物又は1種以上の上述のオレフィンと他の炭化水素との混合物を使用することができる。好ましくは、原料として、少なくとも2つの共役二重結合を有する1種以上の、好ましくは1種の非環状オレフィンを他の炭化水素との混合物として有する炭化水素混合物を使用する。
【0027】
特に好ましい原料は、共役二重結合を有する非環状オレフィンとして、1,3−ブタジエン及び/又はイソプレンを、それぞれ純粋物質として、これらの純粋物質の混合物として、又はこの1種若しくは両方のオレフィンと他の炭化水素との混合物として有する。殊に好ましくは、原料として、C4炭化水素、好ましくは1,3−ブタジエンを、90質量%を上回るまで含有する混合物を使用する。
【0028】
本発明にかかる方法のための原料としては、特に好ましくは、1,3−ブタジエンリッチの炭化水素流が好適である。炭化水素流としては、特にC4炭化水素留分を使用することができる。この炭化水素流は、好ましくは、例えば、1,3−ブタジエンと他のC4−及びC3−又はC5炭化水素との混合物であってよい。かかる混合物は、例えば、精製ガス、ナフサ、ガスオイル、LPG(液化石油ガス)、NGL(天然ガス液)等を反応させるエチレン及びプロピレンの製造の開裂(分解)工程の際に生ずる。この工程の際に副生物として生ずるC4留分は、1,3−ブタジエンの他に、モノオレフィン(1−ブテン、シス−ブト−2−エン、トランス−ブト−2−エン、イソブテン)、飽和炭化水素(n−ブタン、イソブタン)、アセチレン系不飽和化合物(エチルアセチレン(ブチン)、ビニルアセチレン(ブテニン)、メチルアセチレン(プロピン))並びにアレン系不飽和化合物(主として1,2−ブタジエン)を含有し得る。更にこの留分は、少量のC3−及びC5炭化水素を含有してよい。このC4留分の組成は、それぞれの開裂法、作業パラメータ及び原料に依存する。個々の成分の濃度は、スチームクラッカーの場合に一般には以下の範囲内で存在する。
【0029】
【表1】

【0030】
本発明にかかる方法においては、好ましくは35質量%より大きい1,3−ブタジエン含有率を有する炭化水素混合物を使用する。
【0031】
使用炭化水素は、本発明にかかる方法において妨げになり得る酸素−、窒素−、硫黄−、ハロゲン−、特に塩素−及び重金属化合物を微量で有することがある。従って、これらの物質を最初に分離することが適切である。この妨害化合物は、例えば二酸化炭素又はカルボニル化合物、例えばアセトン又はアセトアルデヒドであってよい。
【0032】
これらの不純物の分離は、例えば特に水若しくは水溶液での洗浄によるか又は吸着剤を介して実施することができる。
【0033】
水洗浄により、親水性成分、例えば窒素成分を炭化水素混合物から完全に又は部分的に除去することができる。
【0034】
窒素成分の例は、アセトニトリル又はN−メチルピロリドン(NMP)である。酸素化合物を水洗浄を介して部分的に除去することもできる。この水洗浄は、水を用いて直接実施することができるが、例えば塩、例えばNaHSO3を有する水溶液を用いて実施してよい(US3682779、US3308201、US4125568、US3336414又はUS5122236)。
【0035】
炭化水素混合物を水洗浄後に乾燥工程に流通させる場合、有利であり得る。この乾燥は、技術水準において公知の方法により実施してよい。溶解した水が存在する場合には、この乾燥は例えば、乾燥剤としての分子ふるいの使用下でか又は共沸蒸留により実施してよい。遊離の水は、例えば凝集を用いて相分離により分離することができる。
【0036】
微量範囲の不純物を除去するために、吸着剤を使用することができる。従ってこのことは特に有利であり得る。それというのも、テロメリゼーション工程においては、微量の不純物にも反応し顕著な活性の減衰を示す貴金属触媒を使用するからである。しばしば、窒素−又は硫黄化合物を、前接続された吸着剤によって除去する。使用可能な吸着剤の例は、酸化アルミニウム、分子ふるい、ゼオライト、活性炭又は金属で含浸されたアルミナである(例えば、US4571445又はWO02/53685)。吸着剤は、種々の会社から、例えばFirma AlcoaからSelexsorb(R)の名称で、UOP又はAxensから、例えば系列製品SAS、MS、AA、TG、TGS又はCMGで市販されている。
【0037】
本発明にかかる方法を用いれば、とりわけアレン系不飽和化合物及び/又は50質量ppm(wppm)以上、好ましくは100質量ppm以上の割合を有するアセチレン系不飽和化合物をも含有する原料混合物を使用することが特に可能である。本発明にかかる方法においては、好ましくは、5質量%まで、好ましくは3質量%まで、特に好ましくは1質量%までのアルキン若しくはアセチレン系不飽和化合物を有する、共役二重結合を有する非環状オレフィンを含有する混合物を使用物質として使用することができる。更に小さい残量のアセチレン系不飽和化合物を有する原料混合物は有用であるから、工業的に生ずる多数の炭化水素混合物、特にC4−又はC5炭化水素混合物を本発明にかかるテロメリゼーションの方法において原料として直接使用することが可能である。顕著により大きい割合のアセチレン系不飽和化合物が考えられる原料混合物中に存在することが望ましいのであれば、この混合物を、0〜5質量%、好ましくは50wppm〜3質量%、特に好ましくは100wppm〜1質量%のアセチレン系不飽和化合物を有する使用物質混合物として使用できるように、この存在するアセチレン系不飽和化合物(アルキン)の少なくとも1部をテロメリゼーションでの使用前に、例えば選択的水素化又は抽出によりこの混合物から除去することが有利であり得る。この抽出又は選択的水素化の方法は、技術水準に従ってよい。
【0038】
このアセチレン系化合物の抽出による分離は長きにわたり公知であり、かつ後処理工程として、1,3−ブタジエンを分解C4から得る大部分の装置の統合構成要素である。アセチレン系不飽和化合物を分解C4から抽出分離する方法は、例えば、Erdoel und Kohle-Erdgas-Petrochemie vereinigt mit Brennstoffchemie Bd. 34, Heft 8, August 1981, Seite 343 - 346 に記載されている。この方法の場合、第1の段階においては、水を含有するNMPでの抽出蒸留により、複数の不飽和炭化水素並びにアセチレン系不飽和化合物と、モノオレフィン及び飽和炭化水素とを分離する。このNMP抽出物から、不飽和炭化水素を蒸留分離する。この炭化水素蒸留物からは、水を含有するNMPでの第2の抽出蒸留により4個のC原子を有するアセチレン系不飽和化合物を分離する。分解C4の後処理の際に、更なる第2の蒸留により純粋な1,3−ブタジエンを分離し、その際、副生物としてメチルアセチレン及び1,2−ブタジエンが生ずる。本発明にかかる方法の範囲においては、本明細書に記載された多段階法を原料混合物のための前処理として実施してよく、その際、1,2−ブタジエンの蒸留分離を省くことができる。
【0039】
場合により、このアセチレン系化合物と1,3−ブタジエン含有流との分離を、例えば抽出剤としての1種以上のイオン性液体の使用下で実施してよい。
【0040】
好ましくは5質量%未満のアセチレン系化合物を含有する、抽出により得られた炭化水素流は、特に好ましくは原料として本発明にかかる方法に直接使用することができる。
【0041】
ジエン及びモノオレフィン存在下でアセチレン系不飽和化合物の選択的水素化によりこのアセチレン系不飽和化合物を使用されるべき炭化水素流から部分的に除去することは、例えば銅含有触媒、パラジウム含有触媒又は混合触媒上で実施することができる。
【0042】
アセチレン系不飽和化合物が存在するのであれば、本発明にかかる方法において使用される原料は、特に1,3−ブタジエンを有するC4炭化水素混合物を使用する場合には、アセチレン系不飽和化合物(アルキン)として、好ましくはビニルアセチレン及び/又は1−ブチンから選択された化合物を含有する。
【0043】
この原料混合物中にアルキンが存在するのであれば、水素源により、好ましくは、全工程に、水素とアルキンとのモル比が少なくとも1:1、好ましくは1:1〜2:1、特に好ましくは1:1〜1.5:1、殊に好ましくは1:1〜1.1:1になるだけの水素を供給する。これらの値の顕著な超過は、共役二重結合を有する非環状オレフィン、例えば1,3−ブタジエンの損失の増大をもたらす。この原料混合物中のアルキンの濃度は、連続的に又は規則的な間隔で、例えばガスクロマトグラフィにより測定してよい。
【0044】
本発明にかかる方法のおいては、テロメリゼーションに好適な全種の触媒を使用してよい。テロメリゼーション用触媒としては、好ましくは、金属のパラジウム(Pd)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)又は白金(Pt)の金属錯体を使用する。配位子としては、例えばリン配位子、例えばホスフィン、ホスフィニン、ホスフィナイト、ホスホナイト又はホスファイト、例えばトリフェニルホスフィン又はカルベン配位子を使用でき、その際、異なる配位子を同時に使用することが有利であり得る。特に好ましくは、金属カルベン錯体を触媒として使用する。
【0045】
殊に好ましくは、パラジウム化合物、特にパラジウムカルベン錯体をテロメリゼーション工程の触媒として使用する。触媒として使用される金属錯体中の配位子は、特に好ましくは3価のリン化合物又はカルベンである。
【0046】
特に好ましくは、ヘテロ原子により安定化された少なくとも1個のカルベンを配位子として有する金属錯体を触媒として使用する。かかる配位子の例は、とりわけ文献DE10128144、DE10149348、DE10148722、DE10062577、EP1308157及びWO01/66248に記載されている。これらの文献及び特に該文献に記載された配位子は、本出願の開示内容に含まれる。更にこの活性錯体は、更なる別の配位子を有していてよい。このカルベン配位子は、開環配位子又は環状配位子であってよい。
【0047】
本発明にかかる方法においては、好ましくは、テロメリゼーション触媒として、一般式(VIII)
【化1】

[式中、R2、R"、R‘及びR3は、同じか又は異なっており、水素又は炭化水素基であり、これらの炭化水素基は同じか又は異なっており、1〜50個の炭素原子を有するアルキル基、2〜50個の炭素原子を有するアルケニル基、2〜50個の炭素原子を有するアルキニル基及び6〜30個の炭素原子を有するアリール基の群から選択され、少なくとも1個の水素原子が官能基で置換されていてよい直鎖状、分枝鎖状又は環状基であってよく、
及び/又は、R2及びR"、及び/又は、R‘及びR3は、2〜20個の炭素原子を有する炭素骨格及び式VIIIによる窒素原子を有する同じか又は異なる環系の一部であり、その際、R2及びR"、及び/又は、R‘及びR3の炭素原子は計算に入れず、かつこの環系の少なくとも1個の水素原子は官能基で置換されていてよく、及び/又はこの環系の少なくとも1個の炭素原子は、S、P、O及びNからなる群から選択されたヘテロ原子で置換されていてよく、
及び/又は、R2及び/又はR"、及び/又は、R‘及び/又はR3は、1〜20個の炭素原子からの橋により配位子Lと結合しており、その際、これらの基R2、R"、R‘及びR3の炭素原子は計算に入れず、
及びLは、中性の2電子供与体、環系の一部及び/又はアニオン性配位子である更なる配位子であり、その際、これらの官能基は、例えば:−CN、−COOH、−COO−アルキル−、−COO−アリール−、−OCO−アルキル−、−OCO−アリール−、−OCOO−アルキル−、−OCOO−アリール−、−CHO、−CO−アルキル−、−CO−アリール−、−O−アルキル−、−O−アリール−、−NH2、−NH(アルキル)−、−N(アルキル)2−、−NH(アリール)−、−N(アルキル)2−、−F、−Cl、−Br、−I、−OH、−CF3、−NO2、−フェロセニル、−SO3H及び−PO32の群から選択されてよく、その際、アルキル基は例えば1〜24個の炭素原子を有し、かつアリール基は例えば5〜24個の炭素原子を有してよい]のカルベン配位子を有するパラジウムカルベン錯体を使用する。かかる配位子の製造は、例えばDE10148722に従ってよい。
【0048】
好ましくは、本発明にかかる方法においては、テロメリゼーション触媒として、一般式(VIII)で示され、その式中、
2;R3;は同じか又は異なっており、1〜24個の炭素原子を有する直鎖状、分枝鎖状、置換又は非置換の環状又は非環状アルキル基、又は6〜24個の炭素原子を有する置換又は非置換の単環状又は多環状アリール基、又は、
4〜24個の炭素原子とN、O、Sの群からの少なくとも1個のヘテロ原子とを有する単環状又は多環状の置換又は非置換の複素環であり、
R‘、R":は同じか又は異なっており、
水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、−CN、−COOH、−COO−アルキル−、−COO−アリール−、−OCO−アルキル−、−OCO−アリール−、−OCOO−アルキル−、−OCOO−アリール、−CHO、−CO−アルキル−、−CO−アリール−、−O−アルキル−、−O−アリール−、−NH2、−NH(アルキル)−、−N(アルキル)2−、−NH(アリール)−、−N(アルキル)2−、−F、−Cl、−Br、−I、−OH、−CF3、−NO2、−フェロセニル、−SO3H、−PO32であり、その際、アルキル基は1〜24個の炭素原子を有し、かつアリール−及びヘテロアリール基は5〜24個の炭素原子を有し、かつ基R‘及びR"は架橋する脂肪族環又は芳香族環の一部であってよいカルベン配位子を有するパラジウムカルベン錯体を使用する。
【0049】
殊に好ましくは、5環を有するカルベン配位子を使用する。好ましくは、本発明にかかる方法において使用される5環を有する配位子は、例えば式IX、X、XI及びXII
【化2】

[式中、R2;R3;は同じか又は異なっており、
1〜24個の炭素原子を有する直鎖状、分枝鎖状、置換又は非置換の環状又は非環状アルキル基、又は、
6〜24個の炭素原子を有する置換又は非置換の単環状又は多環状アリール基、又は、
4〜24個の炭素原子とN、O、Sの群からの少なくとも1個のヘテロ原子とを有する単環状又は多環状の置換又は非置換の複素環化合物であり、
4、R5、R6、R7:は同じか又は異なっており、
水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、−CN、−COOH、−COO−アルキル−、−COO−アリール−、−OCO−アルキル−、−OCO−アリール−、−OCOO−アルキル−、−OCOO−アリール、−CHO、−CO−アルキル−、−CO−アリール−、−O−アルキル−、−O−アリール−、−NH2、−NH(アルキル)−、−N(アルキル)2−、−NH(アリール)−、−N(アルキル)2−、−F、−Cl、−Br、−I、−OH、−CF3、−NO2、−フェロセニル、−SO3H、−PO32であり、その際、アルキル基は1〜24個の炭素原子を有し、かつアリール−及びヘテロアリール基は5〜24個の炭素原子を有し、かつ基R4、R5、R6及びR7は架橋する脂肪族環又は芳香族環の一部であってよい]の配位子である。
【0050】
一般式IX又はXに相当するカルベン配位子、及びかかる配位子を含有する錯体の例は、専門文献に既に記載されている(W. A. Herrmann, C. Koecher, Angew. Chem. 1997, 109, 2257; Angew. Chem. mt. Ed. Engl. 1997, 36, 2162; V.P.W. Boehm, C.W.K. Gstoettmayr, T. Weskamp, W.A. Herrmann, J. Organomet. Chem. 2000, 595, 186; DE4447066))。
【0051】
基R2及びR3は、特に、窒素、酸素及び硫黄の元素から選択された少なくとも1個のヘテロ原子を含有する単環状又は多環状の環であってよく、かつ場合により、−CN、−COOH、−COO−アルキル−、−COO−アリール−、−OCO−アルキル−、−OCO−アリール−、−OCOO−アルキル−、−OCOO−アリール−、−CHO、−CO−アルキル−、−CO−アリール、−アリール−、−アルキル−、−O−アルキル、−O−アリール、−NH2、−NH(アルキル)−、−N(アルキル)2−、−NH(アリール)−、−N(アルキル)2−、−F、−Cl、−Br、−I、−OH、−CF3、−NO2、−フェロセニル、−SO3H、−PO32の群から選択された更なる置換基を有してよい。これらのアルキル基は、1〜24個の炭素原子を有し、かつアリール基は5〜24個の炭素原子を有する。Pdを周期系第8〜10族の金属として使用する場合、1つ又は両方の配位子R2及びR3が好ましくは上述の意味を有する。
【0052】
基R2、R3、R4、R5、R6及び/又はR7は、それぞれ同じか又は異なっていてよく、かつ、−H、−CN、−COOH、−COO−アルキル、−COO−アリール、−OCO−アルキル、−OCO−アリール、−OCOO−アルキル、−OCOO−アリール、−CHO、−CO−アルキル、−CO−アリール、−アリール、−アルキル、−アルケニル、−アリル、−O−アルキル、−O−アリール、−NH2、−NH(アルキル)、−N(アルキル)2、−NH(アリール)、−N(アルキル)2、−F、−Cl、−Br、−I、−OH、−CF3、−NO2、−フェロセニル、−SO3H、−PO32の群からの少なくとも1個の置換基を有し、その際、アルキル基は1〜24個、好ましくは1〜20個の炭素原子、アルケニル基は2〜24個の炭素原子、アリル基は3〜24個の炭素原子、かつ単環状又は例えば多環状アリール基は5〜24個の炭素原子を有する。
【0053】
基R4〜R6は、例えば(CH2)−又は(CH)−基を介して互いに共有結合していてよい。
【0054】
酸性水素原子を有する置換基の場合、このプロトンは金属−又はアンモニウムイオンで置換されていてよい。
【0055】
基R2及びR3は、特に好ましくは、5−及び6員のヘテロアルカン、ヘテロアルケン及びヘテロ芳香族化合物、例えば1,4−ジオキサン、モルホリン、γ−ピラン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピロール、フラン、チオフェン、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール及びオキサゾールから誘導された基であってよい。以下の第1表に、かかる基R2及びR3の具体例を挙げる。この表において、〜は、それぞれ5員の複素環若しくは式VIIIで示される化合物への結合点を示す。
【0056】
第1表:基R2及び/又はR3の例
【表2】

【0057】
本発明の範囲内では、カルベン配位子は、配位子として機能することができる遊離のカルベン、並びに金属配位させたカルベンと解する。
【0058】
触媒金属、特に反応条件下で活性触媒を形成する触媒金属として使用されるパラジウムは、種々の様式でこの工程中に導入することができる。
【0059】
金属(パラジウム)は、
a)金属(パラジウム)が好ましくは酸化状態(II)又は(0)で存在する金属−カルベン錯体(パラジウム−カルベン錯体)としてか、又は、
b)現場で触媒が形成される金属前駆物質(パラジウム前駆物質)の形で、
この工程中に導入することができる。
【0060】
a)について
この例は、パラジウム(0)カルベン−オレフィン−錯体、パラジウム(0)ジカルベン錯体及びパラジウム(II)ジカルベン錯体、パラジウム(0)カルベン−1,6−ジエン−錯体である。1,6−ジエンとしては、例えば、ジアリルアミン、1,1′−ジビニルテトラメチルジシオキサン、2,7−オクタジエニルエーテル又は2,7−オクタジエニルアミンが機能することができる。以下の式I−a〜I−eは、更なる例を示す。
【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
これらのパラジウムのカルベン錯体は、種々の様式で製造することができる。簡単な手段は、例えばカルベン配位子の付加又はパラジウム錯体上の配位子のカルベン配位子での交換である。例えば、錯体I−f〜I−iは、錯体ビス(トリ−o−トリルホスフィン)パラジウム(0)のリン配位子の交換により得られる(T. Weskamp, W.A. Herrmann, J. Organomet Chem. 2000,595,186)。
【0064】
【化3】

【0065】
b)について
パラジウム前駆物質としては、例えば:酢酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、テトラクロロパラジウム酸リチウム、アセチルアセトナトパラジウム(II)、パラジウム(0)−ジベンジリデンアセトン−錯体、プロピオン酸パラジウム(II)、塩化ビスアセトニトリルパラジウム(II)、二塩化ビストリフェニルホスファンパラジウム(II)、塩化ビスベンゾニトリルパラジウム(II)、ビス(トリ−o−トリルホスフィン)パラジウム(0)及び他のパラジウム(0)−及びパラジウム(II)錯体を使用することができる。
【0066】
一般式IX及びXによるカルベンは、遊離カルベンの形で若しくは金属錯体として使用するか、又はカルベン前駆物質から現場で製造してよい。
【0067】
カルベン前駆物質としては、例えば、一般式XIII及びXIV
【化4】

[式中、R2、R3、R4、R5、R6、R7は、式IX及びXにおける意味と同じ意味を有し、かつYは、1価のアニオン基又は化学量論に応じて部分的に多価のアニオン基である]で示されるカルベンの塩が好適である。
【0068】
Yの例は、ハロゲン化物、硫酸水素塩、硫酸塩、アルキル硫酸塩、アリール硫酸塩、ホウ酸塩、炭酸水素塩、炭酸塩、アルキル炭酸塩、アリール炭酸塩である。
【0069】
このカルベンの塩から、相応のカルベンを例えば塩基との反応により遊離させることができる。
【0070】
この触媒濃度は、その全質量に対する触媒金属、特にパラジウム金属のppm(質量)で示され、本発明にかかる方法においては、有利には0.01〜1000ppm、好ましくは0.5〜100ppm、特に好ましくは1〜50ppmである。反応混合物中の配位子、好ましくはカルベンと金属、特にカルベンとPdとの比[モル/モル]は、0.01〜250:1、好ましくは1:1〜100:1、特に好ましくは1:1〜50:1である。このカルベン配位子の他に、更に別の配位子、例えばリン配位子、例えばトリフェニルホスフィンが反応混合物中に存在してよい。
【0071】
求核剤(VII)としては、好ましくは一般式
1a−O−H(VIIa)、又は(R1a)(R1b)N−H(VIIb)、又はR1a−COOH(VIIc)
[式中、R1a及びR1bは、互いに無関係に、水素、直鎖状、分枝鎖状若しくは環状のC1〜C22−アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、C5〜C18アリール基又は−CO−アルキル−(C1〜C8)−基又はCO−アリール−(C5〜C10)−基から選択され、その際、これらの基は、−CN、−COOH、−COO−アルキル−(C1〜C8)、−CO−アルキル−(C1〜C8)、−アリール−(C5〜C10)、−COO−アリール−(C6〜C10)、−CO−アリール−(C6〜C10)、−O−アルキル−(C1〜C8)、−O−CO−アルキル−(C1〜C8)、−N−アルキル2−(C1〜C8)、−CHO、−SO3H、−NH2、−F、−Cl、−OH、−CF3、−NO2の群から選択された置換基を含有してよく、かつ基R1a及びR1bは、共有結合を介して互いに結合していてよい]の化合物を使用する。好ましくは、求核剤として、基R1a及び場合によりR1bが、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−ブチル、s−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、オクテニル、オクタジエニル、イソノニル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、フェニル、m−、o−、又はp−メチルフェニル、ナフチル、2,4−ジ−t−ブチルフェニル、2,6−ジ−t−ブチルメチルフェニル、水素カルボニル、メチルカルボニル、エチルカルボニル、プロピルカルボニル又はフェニルカルボニルである化合物を使用する。
【0072】
特に好ましくは、求核剤(VII)として、水、アルコール、フェノール、ポリオール、カルボン酸、アンモニア及び/又は第1級又は第2級アミンを使用する。特に:
− 水、アンモニア、
− モノアルコール及びフェノール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、アリルアルコール、n−ブタノール、i−ブタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、イソノナノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール又は2,7−オクタジエン−1−オール、フェノール、
− ジアルコール、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール及び1,3−ブタンジオール、
− ヒドロキシ化合物、例えばα−ヒドロキシ酢酸エステル、
− 第1級アミン、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、2,7−オクタジエニルアミン、ドデシルアミン、エチレンジアミン又はヘキサメチレンジアミン、
− 第2級アミン、例えばジメチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルアニリン、ビス(2,7−オクタジエニル)アミン、ジシクロヘキシルアミン、メチルシクロヘキシルアミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジン又はヘキサメチレンイミン、又は、
− カルボン酸、ギ酸、酢酸、プロパン酸、ブテン酸、イソブテン酸、安息香酸、1,2−ベンゾールジカルボン酸(フタル酸)を利用する。
【0073】
殊に好ましくは、求核剤(VII)として、テロメリゼーション工程において、メタノール、エタノール、2−エチルヘキサノール、オクタノール、オクテノール、オクタジエノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソブタノール、n−ブタノール、イソノナノール、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、n−ブタン酸、イソブタン酸、安息香酸、フタル酸、フェノール、ジメチルアミン、メチルアミン、アンモニア及び/又は水を使用する。有利には、求核剤としてメタノールを使用する。
【0074】
それ自体テロメリゼーション反応を介して得ることができる求核剤を、直接使用するか又は現場で形成させてよい。例えば、2,7−オクタジエン−1−オールを水及びブタジエンから、2,7−オクタジエニルアミンをアンモニア及び1,3−ブタジエンから、テロメリゼーション触媒存在下で現場で形成させることができる。
【0075】
テロメリゼーション反応における求核剤と、少なくとも2つの共役二重結合を有する出発オレフィンとの比のために、このテロゲン中の活性水素原子の数を考慮すべきである。例えば、メタノールは1個の、エチレングリコールは2個の、メチルアミンは2個の活性水素原子を有する。
【0076】
出発オレフィンと反応することができる求核剤の活性水素原子1モル当たり、好ましくは0.001〜10モルの出発オレフィンをテロメリゼーション反応に使用する。液相での反応実施の場合、活性水素1モル当たり0.1〜2モルの出発オレフィンの比が特に好ましい。
【0077】
本発明にかかる方法は、溶剤の存在下で実施すれば有利であり得る。テロメリゼーション反応用の溶剤としては、反応条件下で液体として存在する場合には使用された求核剤、及び/又は不活性有機溶剤を使用する。好ましくは、反応条件下で固体として存在する求核剤を使用する場合、又は反応条件下で固体として堆積する生成物の場合、溶剤の添加が好ましい。好ましい溶剤は、とりわけ、脂肪族、脂環状及び芳香族炭化水素、例えばC3〜C20−アルカン、低級アルカン(C3〜C20)の混合物、シクロヘキサン、シクロオクタン、エチルシクロヘキサン、アルケン及びポリエン、ビニルシクロヘキセン、1,3,7−オクタトリエン、分解C4留分からのC4炭化水素、ベンゼン、トルエン及びキシレン;極性溶剤、例えば第3級及び第2級アルコール、アミド、例えばアセトアミド、ジメチルアセトアミド及びジメチルホルムアミド、ニトリル、例えばアセトニトリル及びベンゾニトリル、ケトン、例えばアセトン、メチルイソブチルケトン及びジエチルケトン;カルボン酸エステル、例えば酢酸エチルエステル、エーテル、例えばジプロピルエーテル、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、メチルオクチルエーテル、メチルターシャルブチルエーテル、エチルターシャルブチルエーテル、3−メトキシオクタン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール及びポリプロピレングリコールのアルキル−及びアリールエーテル及び他の極性溶剤、例えばスルホラン、ジメチルスルホキシド、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及び水である。イオン性液体、例えばイミダゾリウム−又はピリジニウム塩を溶剤として使用することもできる。この溶剤は、単独で又は種々の溶剤の混合物として使用してよい。
【0078】
テロメリゼーション反応を実施する温度は、有利には10〜180℃の範囲内、好ましくは30〜120℃の範囲内、特に好ましくは40〜100℃の範囲内である。反応圧力は、好ましくは1〜300バール、好ましくは1〜120バール、特に好ましくは1〜64バール、殊に好ましくは1〜20バールである。
【0079】
しばしば、テロメリゼーション反応は塩基の存在下で実施することが有利である。好ましくは、7未満のpKb値を有する塩基性成分、特に、アミン、アルコレート、フェノレート、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の群から選択された化合物を使用する。
【0080】
塩基性成分としては、例えば、非環状及び/又は開鎖であってよいアミン、例えばトリアルキルアミン、アミド、脂肪族及び/又は芳香族カルボン酸のアルカリ−及び/又はアルカリ土類塩、例えば酢酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、若しくは相応の炭酸塩、炭酸水素塩、アルカリ−及び/又はアルカリ土類元素のアルコレート、リン酸塩、リン酸水素塩、及び/又は、好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、セシウムの水酸化物、アンモニウム−及びホスホニウム化合物が好適である。添加剤としては、アルカリ−及びアルカリ土類元素の水酸化物及び一般式III、IV又はVによる求核剤の金属塩が好ましい。
【0081】
好ましくは、この塩基性成分を0.01〜10モル%(出発オレフィンに対する)、好ましくは0.1〜5モル%、特に好ましくは0.2〜1モル%で使用する。
【0082】
テロメリゼーションは、連続的に又は不連続的に行ってよく、かつ特定の反応型の使用に限定されることはない。反応を実施することができる反応器の例は、撹拌容器反応器、撹拌容器カスケード、流管及びループ型反応器である。種々の反応の組合せ、例えば流管が後接続された撹拌容器反応器も可能である。
【0083】
テロメリゼーションは、大きい空時収率を得るために、好ましくは、使用オレフィンを完全に変換させずに実施してよい。このことは、使用オレフィンが1,3−ブタジエンである場合に特に当てはまる。この場合、変換率を最大95%に制限することが好ましく、88%に制限することが特に好ましい。
【0084】
本発明による水素源を介する部分工程中に存在する工程混合物への水素の添加は、1つ又は複数の部分工程において実施する。本発明にかかるテロメリゼーションの方法が1つの部分工程、すなわちテロメリゼーション反応それ自体のみを有するのであれば、この水素の添加は、当然にこの(部分)工程への水素源の添加により実施する。好ましくは、本発明にかかる方法においては、更に1つ以上の別の部分工程が存在する。かかる部分工程は、例えば触媒分離の工程及び場合により反応器への触媒返送の部分工程であってよい。水素源はテロメリゼーションの全工程に、好ましくは反応工程において添加する。反応工程における水素源を介する水素の添加は、アセチレン系不飽和化合物によるテロメリゼーションの妨害を反応混合物中において直接減らすことができるという利点を有する。しかし、反応工程における水素の添加の欠点は、出発物又は生成物が不所望な副生物に水素化することがあり、そしてこれは収率損失をもたらしうることである。特にこのことは、テロメリゼーションを、存在するアセチレン系不飽和化合物と比較して過剰の水素を用いて実施する場合である。
【0085】
このテロメリゼーションの全工程が触媒返送工程を有するのであれば、水素源はこのテロメリゼーションの全工程に、好ましくはこの触媒返送の部分工程に添加する。この触媒返送部への水素源の添加は、生成物及び更には出発物が主として前工程において触媒から分離され、ひいては水素源を介して添加された水素が有益な出発物又は生成物を不所望な副生物に水素化せず、従って収率が減少しないという利点を有する。水素源を反応の部分工程にも触媒返送の部分工程にも添加する場合、有利であり得る。
【0086】
本発明にかかる方法は、特に、式II
【化5】

[式中、Xは、基OR1a又はNR1a1bであり、その際、R1a及びR1bは互いに無関係に、水素、直鎖状、分枝鎖状又は環状C1〜C22−アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、C5〜C18アリール基又は−CO−アルキル−(C1〜C8)−基又は−CO−アリール−(C5〜C10)−基から選択され、その際、これらの基は、−CN、−COOH、−COO−アルキル−(C1〜C8)、−CO−アルキル−(C1〜C8)、−アリール−(C5〜C10)、−COO−アリール−(C6〜C10)、−CO−アリール−(C6〜C10)、−O−アルキル−(C1〜C8)、−O−CO−アルキル−(C1〜C8)、−N−アルキル2−(C1〜C8)、−CHO、−SO3H、−NH2、−F、−Cl、−OH、−CF3、−NO2の群から選択された置換基を含有してよく、かつ基R1a及びR1bは、共有結合を介して互いに結合していてよい]で示される化合物を、1,3−ブタジエン含有炭化水素流から製造するために使用することができる。
【0087】
本発明にかかる方法を用いれば、特に、IIIa又はIIIb
【化6】

の化合物を、1,3−ブタジエンと、式VIIa、VIIb又はVIIc
1a−O−H VIIa (R1a)(R1b)N−H VIIb R1a−COOH VIIc
[式中、R1a及びR1bは上述の意味を有する]の求核剤(VII)との反応により製造することができる。
【0088】
特に好ましくは、本発明にかかる方法を用いて、式IIで示され、その式中、XはOR1a又はNR1a1bであり、
1aは、H、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−ブチル、s−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、オクテニル、オクタジエニル、イソノニル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、フェニル、m−、o−、又はp−メチルフェニル、ナフチル、2,4−ジ−t−ブチルフェニル、2,6−ジ−t−ブチルメチルフェニル、水素カルボニル、メチルカルボニル、エチルカルボニル、プロピルカルボニル又はフェニルカルボニルであり、及び/又は、
1bは、H、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−ブチル、s−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、オクテニル、オクタジエニル、イソノニル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、フェニル、m−、o−、又はp−メチルフェニル、ナフチル、2,4−ジ−t−ブチルフェニル、2,6−ジ−t−ブチルメチルフェニル、水素カルボニル、メチルカルボニル、エチルカルボニル、プロピルカルボニル、又はフェニルカルボニルである化合物を製造する。特に好ましくは、本発明にかかる方法を用いて、式IIIaで示され、その式中、R1aは水素、メチル、エチル、フェニル又はメチルカルボニルである化合物を製造する。式IIIa及びIIIbの化合物は、シス形で存在してもトランス形で存在してもよい。
【0089】
テロメリゼーションの反応工程からの搬出物は、例えば、主としてテロメリゼーション生成物、副生物、「不活性炭化水素」、使用オレフィンの残量、求核剤の残量及び触媒系(触媒金属、配位子及び場合により塩基等)若しくはその崩壊生成物及び場合により添加された溶剤を有するか若しくはこれらから構成されていてよい。このテロメリゼーションの反応工程からの搬出物の分離は、特に一般には、公知の技術方法、特に熱分離法、例えば蒸留又は抽出により実施することができる。例えば、以下の留分に蒸留分離することができる:
− n−ブタン、イソブタン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1,3−ブタジエン、1,2−ブタジエン及び場合により完全に又は部分的に求核剤を含有するC4留分、
− 目的生成物(2,7−オクタジエニル誘導体)を有する留分、
− 副生物を有する留分、及び/又は、
− 触媒を有する留分、及び、
− 場合により求核剤を有する留分、及び/又は、
− 場合により溶剤留分。
【0090】
求核剤を有する留分、溶剤を有する留分並びに触媒を有する留分は、それぞれ完全に又は部分的に、一緒に又は別個にこの反応工程に返送するか、しかし又は後処理に供給することができる。好ましくは、これらの留分を反応工程に返送する。
【0091】
しかし、この分離は、2種の留分のみ得られるように実施してもよい。この場合、1種の留分は目的生成物の大部分を含有し、かつ第2の留分は使用された触媒の大部分を含有する。この触媒を含有する留分は、完全に又は部分的に反応工程に再び返送する。
【0092】
目的生成物は、それ自体で使用するか又は他の物質のための前駆物質として利用する。例えば、目的生成物1−メトキシオクタジ−2,7−エンから、両方の二重結合の水素化及び引き続いてのメタノール分解により1−オクテンを製造することができる。従って本発明にかかる方法により、1−メトキシオクタジ−2,7−エンを有する混合物を製造することができる。次いでこれらの混合物を1−オクテンの製造に使用することができる。
【0093】
テロメリゼーションにおける求核剤として、メタノール又はエタノールを使用するのであれば、C4炭化水素流を出発物流(出発オレフィンとしての1,3−ブタジエン)として使用する場合、この求核剤を反応生成物から除去しないという選択がもたらされる。これを除去する代わりに、目的生成物(例えば、1−メトキシオクタジ−2,7−エン)の水素化の搬出物を、求核剤として使用されたアルコールと、C4流中に含まれるイソブテンとをメチル−t−ブチルエーテル若しくはエチル−t−ブチルエーテルに反応させるエーテル化に直接供給する。この反応はまた、当該技術において公知の方法により、大抵はイオン交換体の触媒作用下で実施する。イソブテンの完全な反応のために、場合により付加的なアルコールを添加しなければならない。
【0094】
本発明を図面図1に基づいてより詳細に説明するが、但し本発明を図1に記載された実施態様に限定するものではない。図1に、本発明にかかる方法の可能な実施態様を図示する。図1に記載されたテロメリゼーションの全工程は、3つの部分工程を有する。テロメリゼーション反応工程(Telo)、分離工程(A)及び触媒返送工程(KR)である。反応工程(Telo)には、出発物流を触媒返送流(KR)及び場合により水素源(WQ1)と一緒に流す。反応生成物(P1)として得られた反応混合物を後続の部分工程(A)に流し、ここで触媒及び場合により溶剤とこの反応混合物の残部構成成分とを分離する。触媒から遊離した生成混合物(P2)を、更なる後処理に供給してよい。この分離された触媒を、触媒返送部(KR)を介して出発物流に再び供給する。この触媒返送部において、同様に水素源(WQ2)をこの触媒流に添加してよい。本発明にかかる方法の実施の際には、WQ1又はWQ2の何れかを介して、又はWQ1及びWQ2を介して、水素源をテロメリゼーションの全工程の1つ以上の部分工程に供給してよい。本方法の実施の際に、図1に示される図中に示していないが、場合により、更なる装置、例えばポンプ及び弁等、又は例えば導入された触媒の一部を放出する、及び/又は新鮮な触媒を添加する可能性が存在してよいか又は存在しなければならないことは勿論である。
【0095】
次の例は本発明をより詳細に説明するものであるが、明細書及び特許請求の範囲からもたらされる保護範囲を限定するものではない。
【0096】

例1:アルキンが存在しないテロメリゼーション
100mlのシュレンク管中において、保護ガス下で、55.9mg(0.18mmol)のアセチルアセトナトパラジウム及び0.390g(0.75mmol)の1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾリウム−o−クレゾレート(Kresolat)−o−クレゾールを51.2g(1.59mol)のメタノール中に溶解させた。Firma Buechi社製の3リットルのオートクレーブ中において、6.72g(0.06mol)のo−クレゾール(水浴中で40℃に加熱)及び3.47g(0.06mol)のナトリウムメタノラートを115g(3.59mol)のメタノール及び100g(0.52mol)のトリプロピレングリコール中に溶解させた。次いで、ガス圧ノズルを用いて536gのC4炭化水素混合物をこのオートクレーブ中に圧力導入した(C4貯蔵容器における質量損失による測量)。このオートクレーブを、撹拌しつつ反応温度(80℃)に加熱し、このパラジウム含有溶液を分けてオートクレーブの内容物に添加し、そしてこの反応をオンラインガスクロマトグラフにより追跡した。反応時間は、14時間であった。炭化水素混合物としては、42.61質量%の1,3−ブタジエン、1.77質量%のi−ブタン、7.05質量%のn−ブタン、5.14質量%のトランス−ブテン、15.05質量%の1−ブテン、24.80質量%のi−ブテン、3.58質量%のシス−ブテン(アルキンは検出不能)を有するアルキン不含のC4炭化水素であった。
【0097】
GC分析:
GC(1.カラム:DB−WAX/Al23、2.カラム:DB−Wax/HP5MS;開始温度:50℃、最大温度:200℃、開始時間:1分、平衡化時間:3分;温度プログラム:50℃から15℃/分で200℃まで、流通時間:11分;注入:220℃、一定流量)保持時間[tR](C4炭化水素)=2.762分、tR(メタノール)=3.152分、tR(1,7−オクタジエン)=3.866分、tR(トランス−1,6−オクタジエン)=3.958分、tR(シス−1,6−オクタジエン)=4.030分、tR(シス−1,3,7−オクタトリエン)=4.291分、tR(トランス−1,3,7−オクタトリエン)=4.292分、tR(ビニルシクロヘキセン)=4.448分、tR(i−ブタン)=4.552分、tR(n−ブタン)=4.822分、tR(3−MODE)=5.523分、tR(トランス−ブテン)=6.116分、tR(1−ブテン)=6.240分、tR(i−ブテン)=6.412分、tR(シス−ブテン)=6.616分、tR(1−MODE)=6.650分、tR(1,2−ブタジエン)=6.900分、tR(1,3−ブタジエン)=7.526分。
2,7−オクタジエニル−1−メチルエーテル(=1−MODE)
1,7−オクタジエン−3−メチルエーテル(=3−MODE)
【0098】
例2:アセチレン2273質量ppmの存在下でテロメリゼーション(比較試験)
100mlのシュレンク管中において、保護ガス下で、56.2mg(0.18mmol)のアセチルアセトナトパラジウム及び0.395g(0.76mmol)の1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾリウム−o−クレゾレート−o−クレゾールを51.2g(1.59mol)のメタノール中に溶解させた。Firma Buechi社製の3リットルのオートクレーブ中において、6.80g(0.062mol)のo−クレゾール(水浴中で40℃に加熱)及び3.80g(0.07mol)のナトリウムメタノラートを115.1g(3.59mol)のメタノール及び101.1g(0.52mol)のトリプロピレングリコール中に溶解させた。次いで、ガス圧ノズルを用いて573gのC4炭化水素混合物をこのオートクレーブ中に圧力導入した(C4貯蔵容器における質量損失による測量)。このオートクレーブを、撹拌しつつ反応温度(80℃)に加熱し、このパラジウム含有溶液をこのオートクレーブの内容物に添加し、そしてこの反応をオンラインガスクロマトグラフにより追跡した。反応時間は、14時間であった。
【0099】
GC(1.カラム:DB−WAX/Al23、2.カラム:DB−Wax/HP−5MS;開始温度:50℃、最大温度:200℃、開始時間:1分、平衡化時間:3分;温度プログラム:50℃から15℃/分で200℃まで、流通時間:11分;注入:220℃、一定流量)、tR(C4炭化水素)=2.762分、tR(メタノール)=3.152分、tR(1,7−オクタジエン)=3.866分、tR(トランス−1,6−オクタジエン)=3.958分、tR(シス−1,6−オクタジエン)=4.030分、tR(シス−1,3,7−オクタトリエン)=4.291分、tR(トランス−1,3,7−オクタトリエン)=4.292分、tR(ビニルシクロヘキセン)=4.448分、tR(i−ブタン)=4.552分、tR(n−ブタン)=4.822分、tR(3−MODE)=5.523分、tR(トランス−ブテン)=6.116分、tR(1−ブテン)=6.240分、tR(i−ブテン)=6.412分、tR(シス−ブテン)=6.616分、tR(1−MODE)=6.650分、tR(1,2−ブタジエン)=6.900分、tR(1,3−ブタジエン)=7.526分。
2,7−オクタジエニル−1−メチルエーテル(=1−MODE)
1,7−オクタジエン−3−メチルエーテル(=3−MODE)
【0100】
この本発明による例においては、45.39質量%の1,3−ブタジエン、1.46質量%のi−ブタン、4.61質量%のn−ブタン、5.20質量%のトランス−ブテン、15.22質量%の1−ブテン、23.85質量%のシス−ブテン、0.1866質量%のビニルアセチレン及び0.0407質量%の1−ブチンを有するC4炭化水素混合物を使用した。
【0101】
例3:水素添加下でのテロメリゼーション(本発明による):
100mlのシュレンク管中において、保護ガス下で、55mg(0.181mmol)のアセチルアセトナトパラジウム及び0.384g(0.96mmol)の1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−イミダゾリウム−o−クレゾレート−o−クレゾールを、50.2g(1.57mol)メタノール中に溶解させた。Firma Buechi社製の3リットルのオートクレーブ中において、6.98g(0.064mol)のo−クレゾール(水浴中で40℃に加熱)及び3.95g(0.070mol)のナトリウムメタノラートを115.2g(3.59mol)のメタノール及び100.7g(0.52mol)のトリプロピレングリコール中に溶解させた。次いで、ガス圧ノズルを用いて526gのC4炭化水素混合物をこのオートクレーブ中に圧力導入した(C4貯蔵容器における質量損失による測量)。
【0102】
このガス混合物を加熱せずに、これを1分後、3時間2分後、22時間35分後、25時間10分後、27時間11分後、29時間50分後及び49時間10分後にそれぞれ0.1MPaの水素を圧力導入し、そしてこのガス形のC4試料中のアルキン濃度をガスクロマトグラフ(GC)により測定した。このオートクレーブを52時間45分後に、撹拌しつつ反応温度(80℃)に加熱した。80℃での反応時間は8.5時間であった。
【0103】
GC(1.カラム:DB−WAX/Al23、2.カラム:DB−Wax/HP−5MS;開始温度:50℃、最大温度:200℃、開始時間:1分、平衡化時間:3分;温度プログラム:50℃から15℃/分で200℃まで、流通時間:11分;注入:220℃、一定流量)、tR(C4炭化水素)=2.762分、tR(メタノール)=3.152分、tR(1,7−オクタジエン)=3.866分、tR(トランス−1,6−オクタジエン)=3.958分、tR(シス−1,6−オクタジエン)=4.030分、tR(シス−1,3,7−オクタトリエン)=4.291分、tR(トランス−1,3,7−オクタトリエン)=4.292分、tR(ビニルシクロヘキセン)=4.448分、tR(i−ブタン)=4.552分、tR(n−ブタン)=4.822分、tR(3−MODE)=5.523分、tR(トランス−ブテン)=6.116分、tR(1−ブテン)=6.240分、tR(i−ブテン)=6.412分、tR(シス−ブテン)=6.616分、tR(1−MODE)=6.650分、tR(1,2−ブタジエン)=6.900分、tR(1,3−ブタジエン)=7.526分。
2,7−オクタジエニル−1−メチルエーテル(=1−MODE)
1,7−オクタジエン−3−メチルエーテル(=3−MODE)
【0104】
この本発明にかかる例においては、43.48質量%の1,3−ブタジエン、3.58質量%のi−ブタン、5.69質量%のn−ブタン、4.00質量%のトランス−ブテン、14.78質量%の1−ブテン、24.9質量%のi−ブテン、2.56質量%のシス−ブテン及び0.005質量%のプロピン、0.6299質量%のビニルアセチレン及び0.1058質量%の1−ブチン(7407質量ppmのアルキン)を有するC4炭化水素混合物を使用した。
【0105】
例4:水素添加下でのテロメリゼーション(本発明による):
100mlのシュレンク管中において、保護ガス下で、57.6mg(0.189mmol)のアセチルアセトナトパラジウム及び0.399g(0.76mmol)の1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾリウム−o−クレゾレート−o−クレゾールを51.3g(1.60mol)のメタノール中に溶解させた。Firma Buechi社製の3リットルのオートクレーブ中において、6.90g(0.064mol)のo−クレゾール(水浴中で40℃に加熱)及び3.80g(0.070mol)のナトリウムメタノラートを115.1g(3.59mol)のメタノール及び102g(0.53mol)のトリプロピレングリコール中に溶解させた。次いで、ガス圧ノズルを用いて495gのC4炭化水素混合物をこのオートクレーブ中に圧力導入した(C4貯蔵容器における質量損失による測量)。このオートクレーブを、撹拌しつつ反応温度(80℃)に加熱し、このパラジウム含有溶液をこのオートクレーブの内容物に添加した。次いで1.4MPaの水素を圧力導入し、そして反応をオンラインガスクロマトグラフにより追跡した。反応時間は、14時間であった。
【0106】
GC(1.カラム:DB−WAX/Al23、2.カラム:DB−Wax/HP−5MS;開始温度:50℃、最大温度:200℃、開始時間:1分、平衡化時間:3分;温度プログラム:50℃から15℃/分で200℃まで、流通時間:11分;注入:220℃、一定流量)、tR(C4炭化水素)=2.762分、tR(メタノール)=3.152分、tR(1,7−オクタジエン)=3.866分、tR(トランス−1,6−オクタジエン)=3.958分、tR(シス−1,6−オクタジエン)=4.030分、tR(シス−1,3,7−オクタトリエン)=4.291分、tR(トランス−1,3,7−オクタトリエン)=4.292分、tR(ビニルシクロヘキセン)=4.448分、tR(i−ブタン)=4.552分、tR(n−ブタン)=4.822分、tR(3−MODE)=5.523分、tR(トランス−ブテン)=6.116分、tR(1−ブテン)=6.240分、tR(i−ブテン)=6.412分、tR(シス−ブテン)=6.616分、tR(1−MODE)=6.650分、tR(1,2−ブタジエン)=6.900分、tR(1,3−ブタジエン)=7.526分。
2,7−オクタジエニル−1−メチルエーテル(=1−MODE)
1,7−オクタジエン−3−メチルエーテル(=3−MODE)
【0107】
この本発明による例においては、44.69質量%の1,3−ブタジエン、2.56質量%のi−ブタン、4.82質量%のn−ブタン、3.96質量%のトランス−ブテン、15.50質量%の1−ブテン、24.68質量%のイソブテン、2.76質量%のシス−ブテン及び0.0415質量%のプロピン、0.4609質量%の1−ビニルアセチレン及び0.2328質量%の1−ブチン(7350質量ppmのアルキン)を有するC4炭化水素混合物を使用した。
【0108】
第2表:例1〜4の結果のまとめ
【表5】

【0109】
例1及び例2の比較により容易に認識することができるように、使用されるC4炭化水素混合物中にアセチレンが存在すると、触媒阻害がもたされるので、他の点では同じ条件下でテロメリゼーションが生じない。例3では、アルキンの割合が更に大きいC4炭化水素混合物から出発する。この反応混合物に、規則的に水素を添加する。約37時間後に、低温の場合でも反応がゆっくりと開始するのが見られた。後続の温度増大後に、出発C4炭化水素混合物中のアルキンの存在にもかかわらず、テロメリゼーションが見られた。本発明により水素源をこの反応混合物に添加することにより、阻害された触媒を再び活性化することができた。
【0110】
例4によっても、テロメリゼーション反応における水素の存在により、アルキンの阻害作用を中和することができることが確保される。例4では、反応開始前に水素を短時間で計量供給し、そしてこの混合物を直ちに80℃に加熱する。例2と比べてアルキン量が大きいにもかかわらず、例1と比べて反応速度が完全に回復したとは言えないまでも、水素の存在下で、大量の生成物形成が見られる。副反応として、ブタジエンのブテンへの水素化が見られる。
【0111】
例1及び例4と比較して例3の反応開始時の特に大きい変換率は、触媒を不活化するアルキンが、テロメリゼーション触媒存在下での本来の反応開始前に既に水素化により完全に除去され、かつ場合により不活化された触媒が再び活性化されることに起因すると推定される。例3のMODEの収率が例4と比較して大きいことは、例4による1回の水素添加の際に、反応混合物中により大きい過剰の水素が存在するので、アルキンを水素化する競合反応としてのブタジエンのブテンへの水素化が増大して進行することに由来すると推定される。例3においてMODE量が比較可能な保持時間/反応時間の場合に大きい理由は、再生はそれほど迅速には進行しないが、これと並行して水素化及びテロメリゼーションが既に進行し、その結果、わずかに活性を示す触媒が提供されることであり得る。例4による本発明にかかる実施態様の利点は、例3で実施されている時間のかかる予備水素化もしくは予備再生の工程を省略できることである。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明にかかる方法の可能な実施態様を図示する
【符号の説明】
【0113】
Telo テロメリゼーション反応工程、 A 分離工程、 KR 触媒返送工程、 WQ1 水素源、 WQ2 水素源、 P1 反応生成物、 P2 生成混合物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
元素周期系第8、9又は10族の金属を含有する触媒の使用下での、少なくとも2つの共役二重結合を有する非環状オレフィン(VI)と少なくとも1種の求核剤(VII)とのテロメリゼーションの方法において、
テロメリゼーションの全工程に少なくとも1つの部分工程が存在し、該部分工程において、水素を有するガスから選択された水素源を介してこの部分工程中に存在する工程混合物に水素を添加することを特徴とする方法。
【請求項2】
原料として、少なくとも2つの共役二重結合を有する非環状オレフィンを他の炭化水素との混合物として有する炭化水素の混合物を使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
混合物がアルキンを5質量%まで含有することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
混合物が、ビニルアセチレン及び1−ブチンから選択されたアルキンを含有することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
存在するアルキンの一部を、テロメリゼーションに使用する前に選択的に水素化することを特徴とする、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
水素源により、水素とアルキンとのモル比が少なくとも1:1になるだけの水素を全工程に供給することを特徴とする、請求項3から5までの何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
混合物が、C4炭化水素を90質量%を上回るまで含有することを特徴とする、請求項2から6までの何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
非環状オレフィンとして、1,3−ブタジエン又はイソプレンを使用することを特徴とする、請求項1から7までの何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
テロメリゼーション触媒として、一般式VIII:
【化1】

[式中、R2;R3:は同じか又は異なっており、
a)1〜24個の炭素原子を有する直鎖状、分枝鎖状、置換又は非置換の環状又は非環状アルキル基、又は、
b)6〜24個の炭素原子を有する置換又は非置換の単環状又は多環状アリール基、又は、
c)4〜24個の炭素原子とN、O及びSからの少なくとも1個のヘテロ原子とを有する単環状又は多環状の置換又は非置換の複素環であり、
R‘、R":は同じか又は異なっており、
水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、−CN、−COOH、−COO−アルキル−、−COO−アリール−、−OCO−アルキル−、−OCO−アリール−、−OCOO−アルキル−、−OCOO−アリール−、−CHO、−CO−アルキル−、−CO−アリール−、−O−アルキル−、−O−アリール−、−NH2、−NH(アルキル)−、−N(アルキル)2−、−NH(アリール)−、−N(アルキル)2−、−F、−Cl、−Br、−I、−OH、−CF3、−NO2、−フェロセニル、−SO3H、−PO32であり、その際、アルキル基は1〜24個の炭素原子を有し、かつアリール−及びヘテロアリール基は5〜24個の炭素原子を有し、かつ基R‘及びR"は架橋する脂肪族環又は芳香族環の一部であってよい]のカルベン配位子を有するパラジウムカルベン錯体を使用することを特徴とする、請求項1から8までの何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
テロメリゼーション触媒として、一般式IX、X、XI又はXII:
【化2】

[式中、R2;R3:は同じか又は異なっており、
a)1〜24個の炭素原子を有する直鎖状、分枝鎖状、置換又は非置換の環状又は非環状アルキル基、又は、
b)6〜24個の炭素原子を有する置換又は非置換の単環状又は多環状アリール基、又は、
c)4〜24個の炭素原子とN、O及びSの群からの少なくとも1個のヘテロ原子とを有する単環状又は多環状の置換又は非置換の複素環であり、
4、R5、R6、R7:は同じか又は異なっており、
水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、−CN、−COOH、−COO−アルキル−、−COO−アリール−、−OCO−アルキル−、−OCO−アリール−、−OCOO−アルキル−、−OCOO−アリール、−CHO、−CO−アルキル−、−CO−アリール−、−O−アルキル−、−O−アリール−、−NH2、−NH(アルキル)−、−N(アルキル)2−、−NH(アリール)−、−N(アルキル)2−、−F、−Cl、−Br、−I、−OH、−CF3、−NO2、−フェロセニル、−SO3H、−PO32であり、その際、アルキル基は1〜24個の炭素原子を有し、かつアリール−及びヘテロアリール基は5〜24個の炭素原子を有し、かつ基R4、R5、R6及びR7は架橋する脂肪族環又は芳香族環の一部であってもよい]のカルベン配位子を有するパラジウムカルベン錯体を使用することを特徴とする、請求項1から8までの何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
反応混合物中の配位子と金属との比[モル/モル]が0.01:1〜250:1であることを特徴とする、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
求核剤VIIとして、一般式VIIa、VIIb又はVIIc
1a−O−H (R1a)(R1b)N−H R1a−COOH
(VIIa) (VIIb)、 (VIIc)
[式中、R1a及びR1bは、互いに無関係に、水素、直鎖状、分枝鎖状又は環状のC1〜C22−アルキル基、−アルケニル基又は−アルキニル基、C5〜C18アリール基又は−CO−アルキル−(C1〜C8)−基又は−CO−アリール−(C5〜C10)−基から選択され、その際、これらの基は、−CN、−COOH、−COO−アルキル−(C1〜C8)、−CO−アルキル−(C1〜C8)、−アリール−(C5〜C10)、−COO−アリール−(C6〜C10)、−CO−アリール−(C6〜C10)、−O−アルキル−(C1〜C8)、−O−CO−アルキル−(C1〜C8)、−N−アルキル2−(C1〜C8)、−CHO、−SO3H、−NH2、−F、−Cl、−OH、−CF3及び−NO2の群から選択された置換基を含有してよく、かつ基R1a及びR1bは、共有結合を介して互いに結合していてよい]の化合物を使用することを特徴とする、請求項1から11までの何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
求核剤(VII)として、水、アルコール、フェノール、ポリオール、カルボン酸、アンモニア及び/又は第1級若しくは第2級アミンを使用することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
テロメリゼーションを溶剤の存在下で実施することを特徴とする、請求項1から13までの何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
テロメリゼーションを溶剤の存在下で実施し、その際、溶剤として、求核剤(VII)及び/又は不活性有機溶剤を使用することを特徴とする、請求項1から14までの何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
水素源をテロメリゼーションの全工程に、反応工程において添加することを特徴とする、請求項1から15までの何れか1項に記載の方法。
【請求項17】
テロメリゼーションの全工程が触媒返送工程を有し、かつ水素源をテロメリゼーションの全工程に、この触媒返送工程において添加することを特徴とする、請求項1から16までの何れか1項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1から17までの何れか1項に記載の方法により得られる、2,7−オクタジエニル誘導体を有する混合物。
【請求項19】
請求項18に記載の2,7−オクタジエニル誘導体を有する混合物を1−オクテンの製造に用いる使用。

【図1】
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【公表番号】特表2008−511578(P2008−511578A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528843(P2007−528843)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【国際出願番号】PCT/EP2005/054136
【国際公開番号】WO2006/024615
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(398054432)エボニック オクセノ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (63)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Oxeno GmbH
【住所又は居所原語表記】Paul−Baumann−Strasse 1, D−45764 Marl, Germany
【Fターム(参考)】