説明

非破壊検査方法及びシステム

【課題】合成材料をはじめとする材料の異常の非破壊検査及び評価を行う。
【解決手段】材料と参照基準に対してコンピュータ断層スキャン等の三次元撮像スキャンを実施し、スキャニングによって生成された複数の二次元走査画面において材料の試験画像と参照基準の参照画像とを表示するステップが含まれる。参照画像は、走査画面中に配された後、正規化され、参照画像それぞれの画素値データの少なくとも平均値が算出される。試験画像の画素値データは、走査画面ごとに算出される。この試験画像の画素値データと、参照画像の画素データとの比較に基づいて、試験画像内の異常が検出される。次に、走査画面の試験画像の1つ以上において検出された異常と、材料の要求基準との比較が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、非破壊検査方法及びシステムに関する。本発明は、特に、セラミックス基複合(CMC)材料等の複合材料をはじめとする材料の異常レベルを、破壊を伴わずに検出して評価するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
合成材料には、基本的に、ポリマー又はセラミックス材料等のマトリックス材料に繊維強化材料が添加されている。強化材料は、複合材料の荷重支持成分として機能し、マトリックス材料は強化材料を保護しつつ、繊維の配向を維持し、強化材料への荷重を分散させる。CMC材料では、連続繊維状又は短繊維(フィラメント)状である強化材料が、窒化ホウ素(BN)又は炭素等の離型剤で被覆されており、繊維とセラミックス基材料間の滑りを抑制・制御する薄い界面又は剥離コーティングを形成している。CMC材料に亀裂が生じると、1つ又は複数の繊維が亀裂を跨いでいることにより、隣接する繊維及びマトリックス材料の領域への荷重を再分散させ、亀裂伝播がマトリックス材料全体に拡大しないようにしたり、少なくとも亀裂伝播を遅らせたりしている。このように、CMC及びその他の複合材料に細孔が存在すると、マトリックス材料の強度が低下するだけでなく、荷重を複合材料内で移動させ、分散させる強化材料の特性が劣化してしまう。
【0003】
連続繊維強化セラミックス複合材料(CFCC)と称されることが多い連続繊維で強化されたCMC材料は、軽量で強度に優れ、しかも剛性が高いので、シュラウド、燃焼器ライナ、羽根、ブレード、及び、ガスタービンエンジンのその他の高温部品をはじめとする、様々な高温、荷重支持部品に重用されている。繊維の配列は、連続的な単方向配列であっても、トウ状に束ねた単方向のトウ配列であっても、トウ状に束ねた繊維を二次元的に織ったものであっても、三次元的に織ったり編んだりしたものであってもよい。高温用途で特に注目を集めている更なる例としては、マトリックス材料及び/又は強化材料として炭化ケイ素(SiC)を使用したケイ素系CFCCが挙げられる。注目すべきケイ素系CFCCとしては、例えば、炭化ケイ素及び元素ケイ素又はケイ素合金のマトリックスに炭化ケイ素の連続繊維を含んでいる、ゼネラルエレクトリック社が開発したHiPerComp(R)が挙げられる。SiC/Si−SiC(繊維/マトリックス)CFCC材料及びプロセスは、例えば、同一譲受人に譲渡された米国特許第5,015,540号、5,330,854号、5,336,350号、5,628,938号、6,024,898号、6,258,737号、6,403,158号、及び6,503,441号、並びに、同一譲受人に譲渡された米国特許出願公開第2004/0067316号に開示されている。このようなプロセスの1つは、「プリプレグ(prepreg)」溶融溶浸法(MI)として周知であり、このプロセスには概して、任意の強化材料、CMCマトリックス材料の先駆物質、及び、1つ又は複数の結合剤を各々が含むテープ状構造を有する複数のプリプレグ層を用いて、CMCを製造することが含まれている。この場合、複数のプリプレグ層を積層し、デバルク処理して、「レイアップ(lay-up)」と称されるプロセスでラミネート基材を形成し、次いで、オートクレーブ等を用いて高温圧力下で硬化する。次いで、ラミネート基材を真空又は不活性雰囲気で加熱して(燃焼させて)、先駆物質を所望のセラミックス材料に転換し、結合剤を分解して有孔基材を作製する。有孔基材を更に、同一又は後続の加熱ステップの間に溶融ケイ素又はその他の適宜の溶浸材で溶融溶浸させてもよい。溶浸材によって細孔が埋まり、その成分によっては、反応により追加のマトリックス材料が形成される。
【0004】
上述のように、少しでも細孔が残っているだけで、CMC材料の特性が大きく損なわれるので、細孔の問題は深刻である。空孔が原因の剥離等その他の欠陥もまた、CMCやその他の複合材料の強度を損なうことも理解されたい。そこで、溶融溶浸プロセス直後を含むがそれに限らない時点で、CMC材料の空孔レベルを判定するために、非破壊検査(DNE)及び非破壊試験(NDT)が様々に考案されてきた。CMC材料の特性は、空孔の容積の影響を受け易いだけでなく、分離、全体的な細孔、又は、剥離といった空孔の系統によってその影響が異なることがある。従って、空孔の状態を検出し、評価することができるNDT方法が求められている。現在、複合材料に適用されているNDT方法としては、例えば、ラジオグラフィー(RT)超音波(UT)、コンピュータ断層撮影(CT)、及び、フラッシュ赤外線サーモグラフィ(フラッシュIR)、透過サーモグラフィ(TT IR)等の赤外線(IR)サーモグラフィを用いた方法がある。このようなNDT方法による結果の解析には、通常、熟練した技術者が必要である。
【0005】
周知のように、フラッシュIR撮像技術は、細孔の近表面を精密に表示する際に好適である。しかし、フラッシュIRで二次元(2D)画像を生成する場合、部品の厚さが増したり、細孔寸法や有孔率が低くなったりすると、検出能力に劣る。このように、フラッシュIRを用いる場合、有孔率を予測することはできても、細孔寸法(深さ及び厚さ)又はその他の空孔指標を検出することは困難である。このような情報がなければ、材料特性に及ぼす空孔の影響を完全に把握することはできない。
【0006】
UT及びRT(X線)技術はそれぞれに、様々な複合材料系の検査において利点と欠点を有するが、両方とも2D撮像技術であるので、IR技術の場合と同様、検出された空孔の深さや厚さを完全に評価することができない。これに対して、CTスキャンを用いると、単一の回転軸を中心に撮影される一連の二次元X線画像をデジタル形状処理することにより、試験片の完全な三次元(3D)画像を生成することができる。しかし、生成される3Dデータセットは極めて膨大なものになるので、熟練した技術者による評価が必要である。正確な有孔率を求めるには、技術者が長時間を費やして、CTデータセットを解析し、細孔を示す指標を評価しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,503,441号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、複合材料の空孔領域を迅速且つ正確に検出及び計測して、材料の状態を確認できる非破壊試験方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係り、マトリックス材料に繊維強化材料を含む複合材料や、鋳造法、鍛造法、押し出し法により一体成形された材料、並びに、材料表面以外の部位に異常が生じ得るその他の材料から成る一体型の構成部品を、破壊を伴うことなく検査するための方法及びシステムを開示する。本発明はまた、一体型の構成部品及び複合材料の(細孔、剥離、その他の空孔等の)異常検出及び解析に好適である。非破壊検査が可能な主な構成要素としては、例えば、シュラウド、燃焼器ライナ、羽根、ブレード及びガスタービンエンジンのその他の高温部品を含めた高温、荷重を受ける部品に適したポリマー基複合材料(PMC)、及びCMC部品等のセラミックス基複合材料(CMC)から成る部品があるが、それ以外の構成要素にも本発明を適用可能である。
【0010】
本発明の第1実施形態として、上記の方法に、既知の材料密度を含めた参照基準を用いる。この方法では、材料と参照基準に対して、コンピュータ断層スキャン等の三次元撮像スキャンを実施し、スキャニングによって生成された複数の二次元走査画面に、材料の試験画像と参照基準の参照画像とを表示する。参照画像と試験画像は、参照基準及び材料の二次元断面で吸収される走査エネルギの量に対応する画素値データを有する。参照基準の参照画像を走査画面に重ねた後、参照画像を正規化し、各参照画像の画素値データの少なくとも平均値を算出する。画素値データは、各走査画面の試験画像の画素データ毎に算出される。次いで、各走査画面の試験画像の画素値データと、参照画像の画素値データの少なくとも平均値との比較に基づいて、試験画像内の異常を検出する。走査画面の試験画像の1つ以上において異常が検出された場合、この異常と材料の要求基準との比較が行われる。
【0011】
本発明の第2実施形態として、好ましくは上記の方法を実施するシステムを開示する。このシステムは、参照基準と、材料及び参照基準の三次元撮像スキャンを実施する手段と、二次元走査画面に参照基準の参照画像を重ねる手段と、走査画面の参照基準の参照画像を正規化して基準画像の画素値データの少なくとも平均値を算出する手段と、各走査画面の試験画像の画素値データを算出する手段と、各走査画面の試験画像の画素値データと参照画像の画素値データの少なくとも平均値との比較に基づいて、試験画像内の異常を検出する手段と、走査画面の試験画像の1つ以上において検出された異常を材料の要求基準と比較する手段とを備える。
【0012】
このように、本発明に係る方法及びシステムは、複合材料から成る部品又はその他のスキャン可能な材料の非破壊試験に用いられる。従って、試験後、対象部品をそのまま動作させることができる。本発明による利点は、部品全体の内部における(細孔及びその他の空孔を含む)異常を検出できることである。本発明による更なる利点は、異常の数値化、特に、検出対象の空孔の寸法(深さ及び厚さ)計測をはじめとする異常の数値化を行い、部品の状態をより精密に評価できることである。
【0013】
以下に、本発明によるその他の態様及び利点を更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る、試験片及び参照基準のコンピュータ断層撮影(CT)スキャンによる画像である。
【図2】図1と同様にCTスキャンにより撮像された、試験片の低密度領域を示す試験片の第1の部分拡大画像と、第1の拡大画像の低密度領域を強調した第2の部分拡大画像である。
【図3】試験片の単一のCT画像から得られた画素値データに基づく統計を示す、ソフトウエアを用いて生成された画面である。
【図4】試験片の全てのCT画像からコンパイルされた画素値データに基づくバルク統計結果を示す、ソフトウエアを用いて生成された画面である。
【図5】試験片の全てのCT画像からコンパイルされた画素値データの、平均画素値を示すグラフである。
【図6】試験片の全てのCT画像からコンパイルされた画素値データに基づいて、「低密度(low density)」であると認識された断面領域の密度を百分率で示すグラフである。
【図7】本発明の一実施形態に係る、空孔検出プロセスにおいて実行されるステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
これより、本発明に係り、一体型部品や合成材料をはじめとする材料の異常を検出して数値化する、3D撮像技術を用いた材料の非破壊試験(NDT)方法及びシステムについて説明する。この方法及びシステムでは、材料の異常を検出すると、一連の二次元画像にデジタル形状処理を施して、完全な3D画像を生成する。それぞれの画像には、材料が吸収する走査エネルギの量に対応した、材料密度を直接反映している画素値データが含まれている。3D撮像技術としては、CTスキャンが好ましいが、磁気共鳴撮像(MRI)、超音波(UT)スキャンをはじめとするその他の3D撮像技術を用いても本発明を実施することができる。図7は、この方法を実施するためのステップを示したフローチャートである。本発明に係る方法及びシステムの実施にあたり、好ましくは試験片及び参照基準の複数の二次元走査画面の比較に基づいて、試験片の空孔を検出して解析し、空孔寸法を数値化して材料の評価を行う。
【0016】
特にCFCC部品を含むCMC部品に関連して、本発明による方法及びシステムについて説明する。ここには、例えば強化材料及び/又はマトリックス材料として炭化ケイ素を含有するCMC材料や、SiC、炭化チタン(TiC)、窒化ケイ素(Si)及びアルミナ(Al)をはじめとする、マトリックス材料を強化するために使用されるSiC繊維及びその他の繊維材料を含めたその他のCMC材料、並びに、その他の複合材料(例えばポリマー基複合(PMC)材料)も含まれるが、本発明を適用できるものはこれらに限られない。本発明は更に、米国特許第5,015,540号、5,330,854号、5,336,350号、5,628,938号、6,024,898号、6,258,737号、6,403,158号、6,503,441号、並びに、同一譲受人に譲渡された米国特許出願公開第2004/0067316号に開示されているように、溶融溶浸ステップを含むプロセスを経て形成されるCMC材料に特に好適である。なお、その他のプロセスにより製造された合成材料にも、本発明を適用することができる。以下に記載の方法で検査可能な複合材料は、特に、ガスタービンの燃焼器ライナ、ブレード、羽根及びシュラウド等のガスタービンエンジン部品をはじめとする、様々な用途に用いられる。
【0017】
図1は、試験片と、密度が既知である参照基準にCTスキャンを実施して得られた二次元デジタル画像である。ここでは、試験片をガスタービンエンジンのタービン区画に用いる羽根とし、参照基準をアルミニウムシリンダとする。なお、その他の材料及び形状のものを参照基準として用いてもよい。基本的に、円形、正方形、長方形といった比較的単純な断面形状は、スキャン時に認識及び評価が容易であるので、参照基準に適していると思われる。図示のCTスキャンにおいて、参照基準の密度は、試験基準の最適な密度の約90%であった。試験片と参照基準との両方を、試験片の複数の二次元CTスキャン表示画面のそれぞれに表示されるように固定し、図1の視覚的なデジタル画像を生成した。図1のCTスキャン及び図示のその他のCT画像生成に使用したCT装置は、ゼネラルエレクトリック社製の3D X線撮像(3DXR)システムである。図1は、同一の試験片と参照基準とから生成された複数の二次元走査画面(スライス)の1つである。これらの走査画面をバルクしたものは、CTスライスのスタックと称される。CTスライスはそれぞれ、試験片及び参照基準の平行な二次元断面における画像である。所望の検査レベルに応じて、例えば数分の1ミリメートル又はそれ以上の間隔毎に画像を生成することができる。それぞれのCT画像において、画素値データは、試験片及び参照基準の断面で吸収されるX線量に対応し、且つ、材料密度に直接的に関係している。これらのCT画像を基に、自動撮像アルゴリズムを正規化したCT画素値データを処理して、試験片内の空孔検出に役立つ統計を作成し、試験片内の空孔を数値化する。このように、本発明による方法には、試験片と参照基準とをCT画像スタックのそれぞれに配置し、CT画像内の参照基準画像(参照画像)と試験片画像(試験画像)を数値化して解析する、撮像ルーチンが含まれる。
【0018】
CT画像内の参照画像の画素値を求めるには、標準的な画像処理技術が用いられる。その際、基準画像の画素データを統計解析することにより、それぞれのCT画像による平均値と標準偏差とが得られる。図1の試験片及び参照基準等の寸法形状の表示には、例えば当該技術分野において周知の、ヒットオアミス(hit-or-miss)法を用いた撮像アルゴリズムが好適と思われる。この技術により作成した参照基準のバイナリ画像(マスク)を、オリジナルのCT画像に重ねて、参照画像の画素値を求めることができる。このとき、参照基準の概ねの位置は判明しているが、更に、取り付けと固定の反復に備えて、誤差を考慮に入れてもよい。いずれにせよ、参照基準の概ねの位置が判明している分、参照画像の探索領域が縮小するので、処理時間を短縮することができる。
【0019】
参照画像から収集した統計を用いて、CT画像全体を拡大・縮小し、試験片の画像を正規化することができる。このとき、試験片画像から得られた各CTデータセットの縮尺を、同一のCT画像中の参照基準のCTデータの縮尺に合わせる。画像の縮尺の決定は、参照基準の密度と望ましい試験片密度との関係に応じて行われることが好ましい。
【0020】
上記のプロセスには、更に、各CT画像の試験画像から画素データを収集するステップが含まれる。その際、撮像ルーチンにおいて、試験片をCT画像内に配置して、好ましくは、評価対象外の背景ノイズ及び又は固定部品の値を除去する。このステップには、例えば、閾値フィルタ又はバンドパスフィルタを用いて、所定の閾値又はバンドパス領域から外れている背景ノイズ及び固定部品をCT画像から除去することが含まれる。
【0021】
CT試験画像から背景ノイズを除去した後、好ましくは、画像中の試験片部分を膨張及び収縮フィルタにかけて、試験片に含まれる解析対象領域を示したマスク画像を生成する。膨張フィルタを用いると、画像中で試験片に含まれる部分には好適であるが、試験画像中の背景ノイズや評価対象外の固定部品を示す値も反映されてしまうことがある。しかも、膨張フィルタを用いると、試験画像の境界が不自然に増大してしまう。従って、試験画像のどの部分をも除去することなく、試験画像領域の不自然な増大をトリミングする又は刈り込むためには、収縮フィルタを用いることが好ましい。フィルタリングにより膨張又は収縮された要素の質量又は寸法は、基本的に、試験片ごとに、特にその特性によって異なる。試験片の画像を修正するために必要な要素は、検出された空孔領域の寸法によって異なる。
【0022】
上記のように、閾値フィルタ及び/又はバンドパスフィルタ等を用いたフィルタリングの結果、試験片に正確に対応した画素値が得られ、この画素値を参照画像の画素データに正規化する。各CT画像の画素値を自動的に求めるには、参照基準の場合と同様、周知の画像処理技術を試験画像に適用する。多くの場合、閾値フィルタを用いて、画素密度が所定閾値を下回る試験片の領域を特定することが効果的であると思われる。
【0023】
本発明の好適な一実施形態として、閾値を参照画像の平均画素値に設定し、これを試験片の必要基準に応じて調節することができる。例えば、閾値を、参照画像について算出された平均画素値の50%の値に設定してもよい。既知である参照基準密度に基づいた閾値フィルタを用いることにより、試験片の材料密度を数値的に評価することができる。
【0024】
図2は、画素値が所定閾値を下回る試験片の領域を示すように処理された試験画像の一部である第1のデジタル画像と、技術者の解析作業を助けるため、第1の画像の低密度領域を視覚的に強調した第2のデジタル画像である。該当する領域を強調するには、一般的な画像処理技術分野に周知の様々な方法を用いることができる。例えば、図2の第2の画像を生成するには、第1の画像にバイナリマスクを施した。画素値が低い領域を強調することにより、技術者は容易に、試験片内で低密度(有孔)領域が存在する場所を特定し、試験片内の空孔の寸法と位置を定量解析及び特性解析することができる。
【0025】
上記のステップの代わりに、又は、上記のステップに追加して、撮像技術及びソフトウエアを用いて、試験画像から得られた画素データを統計的に解析し、画素データの統計サマリを作成してもよい。このような統計の対象としては、例えば、平均及び/又は中間画素値、標準偏差値、最小及び最大画素値、及び、各CT画像において解析された試験片の断面積に対する低密度領域(設定された閾値未満)の百分率が挙げられるが、これらに限定されない。図3は、試験片の単一のCT試験画像から得られた画素データに基づく統計を示す、ソフトウエアを用いて生成された画面である。この統計には、例えば、平均画素値、標準偏差値、最小及び最大画素値、及び、低密度領域が存在する試験片の様々な細孔の(「非溶浸」、「部分溶浸」及び「総数」といった)寸法又は規模の百分率が含まれる。比較のために、図3の画面には、更に、試験片でスキャンされた参照基準の平均画素値が表示されている。
【0026】
用途によっては、試験片の細孔(又はその他の空孔特性)検査には、面積、容積、長さ、密度、位置、又は、他の細孔領域との距離といった特性によって限界がある。そこで、上記の方法に、更に、特定の試験片領域及び区画に対して固有のルーチンを登録するステップを追加することにより、とりわけ検査対象である試験片の領域と、その他の領域又は区画とを差別化することができる。このルーチンでは、検査対象区画から得られた画素データに基づいて、任意の統計を算出し、データ及び統計を区画ごとの検査限界と比較する。
【0027】
上記の各CT画像ルーチンは、CT画像スタックの画像ごとに実施されることが好ましい。これを用いて、技術者が検査対象とする領域を強調した統計サマリ、プロット、及び、チャートを作成することができる。本明細書では、試験片全体のこのような統計処理をバルク処理と称する。図4は、バルク処理による統計サマリであり、平均、最大、及び最小画素値、及び、試験片全体の低密度領域(例えば設定された閾値未満)の百分率を含めた統計データである。図5及び図6はそれぞれ、平均画素値及び試験片全体に対する低密度領域の百分率をバルクした統計プロットである。図4の画面に表示されたデータと、図5及び6のグラフに表示されたデータに基づいて、図4に平均画素値を表示し、必要に応じて図5に、参照画像との数値(定量)比較と視覚的(定性)比較の双方を示すことができる。
【0028】
以上に説明したように、試験片と参照基準に三次元撮像技術を施すことによって、試験画像と参照画像とをスキャン表示画面に表示し、複合材料内の空孔領域をはじめとする材料内の異常検出及び評価を行うことができる。複数のスキャン表示画面の各々が参照基準画像と試験片画像の両方を有することにより、試験片全体にわたって異常の存在を検出するためのデータの生成及び比較が可能である。更に、上記の方法には、処理時間を短縮する要素が多く含まれており、その1つとして、データを自動的に正規化し、スケーリングし、更に、試験片に検出された低密度領域を強調することが挙げられる。このような機能がなければ、検査対象領域が、実際に有孔(低密度)領域であるのか、見かけが有孔領域であるに過ぎないのかについて、CT画像の解析は、単にコントラストの変化やオペレータの判断に委ねられることになる。更に、試験画像データの自動処理、及び、試験片区画に応じた解析、及び/又は、バルク解析が可能なことにより、技術者が迅速且つ容易に、空孔/細孔の寸法及び密度による特性が試験片の設計上の受け入れ基準を満たしているか否かを査定できるようになる。本発明による更なる利点として、上記のステップを実行できるシステムは、既存のCTスキャン装置及び公知の撮像技術による既存の撮像装置にも適用可能であることが挙げられる。この撮像技術は、コンピュータベースのソフトウエアを用いた制御が可能であり、ここに実装され、実行される撮像アルゴリズムは、上述のように、試験画像及び参照画像をスキャン表示画面に表示し、画像内の画素値データを算出して正規化し、画素値データどうしを比較して試験片内の空孔を検出し、数値化するアルゴリズムである。しかも、上記の装置及び方法の動作全体を調節して、NDT解析の速度を最適化することもできる。
【0029】
以上、一部の実施形態に関連して本発明を説明してきたが、明らかなように、その他の実施形態も、当業者には想起可能であろう。本発明の実施形態は、本明細書に記載の形態に限定されることなく、添付の特許請求の範囲に基づいてのみ解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料の非破壊検査方法であって、
既知の材料密度を含めた参照基準を設けるステップと、
材料の試験画像と前記参照基準の参照画像とが、三次元撮像スキャンを用いて生成された複数の二次元スキャン表示画面に表示されるように、前記材料と前記参照基準とに三次元撮像スキャンを実施するステップであって、前記参照画像と前記試験画像とは、前記参照基準と前記材料の二次元断面で吸収される走査エネルギの量に対応する画素データを有しているステップと、
前記参照基準の前記参照画像を前記スキャン表示画面に重ねるステップと、
前記スキャン表示画面の前記参照基準の前記参照画像を正規化して、前記参照画像の前記画素データの少なくとも平均値を算出するステップと、
前記スキャン表示画面それぞれの前記試験画像の前記画素値データを算出するステップと、
前記スキャン表示画面それぞれの前記試験画像の前記画素値データと、前記参照画像の前記画素値データの少なくとも前記平均値との比較に基づいて、前記スキャン表示画面の前記試験画像の異常を検出するステップと、
前記スキャン表示画面の少なくとも1つの前記試験画像から検出された前記異常を、前記材料の要求基準と比較するステップとを含む方法。
【請求項2】
前記スキャン表示画面それぞれの前記試験画像の前記画素値データを、前記参照画像の前記画素データの少なくとも前記平均値と比較する前に、前記材料の前記試験画像から背景ノイズを除去するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スキャン表示画面それぞれの前記試験画像の前記画素値データを前記参照画像の前記画素データの少なくとも前記平均値と比較する前に、前記試験画像をフィルタリングして、前記材料の断面外側の前記スキャン表示画面の領域をマスキングするステップを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記試験画像をデジタル視覚試験画像として表示するステップと、
所定の閾値を上回る異常が前記材料に存在する場合、前記デジタル視覚試験画像の領域を視覚的に強調するステップとを更に含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
検出された異常を比較する前記ステップが、
前記スキャン表示画面の複数の前記試験画像において検出された異常と前記材料のバルク要求基準との比較に基づいて、バルク評価を実施するステップを含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記材料が、マトリックス材料に繊維強化材料を含む合成材料である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記合成材料が、セラミックス基複合材料である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記セラミックス基複合材料が、溶融溶浸プロセスにより製造される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記セラミックス基合成材料が、ガスタービンエンジンの構成要素である、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法に従って、材料の非破壊検査を行うシステムであって、
材料の試験画像と前記参照基準の参照画像とが、三次元撮像スキャンによって生成された複数の二次元スキャン表示画面に表示されるように、材料と参照基準とに三次元撮像スキャンを実施する手段と、
前記参照基準の前記参照画像を前記スキャン表示画面に重ねる手段と、
前記スキャン表示画面の前記参照基準の前記参照画像を正規化して、前記参照画像の前記画素値データの少なくとも平均値を算出する手段と、
前記スキャン表示画面それぞれの前記試験画像の前記画素値データを算出する手段と、
前記スキャン表示画面それぞれの前記試験画像の前記画素値データを、前記参照画像の前記画素値データの少なくとも前記平均値と比較して、前記スキャン表示画面それぞれの前記試験画像における異常を検出する手段と、
前記スキャン表示画面の少なくとも1つの前記試験画像において検出された前記異常と、前記材料の要求基準とを比較する手段とを含むシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−261933(P2010−261933A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41191(P2010−41191)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】