説明

非粘着性表面を有する粘着シートおよびその製造方法

【課題】優れた表面非粘着性ならびに粘着シートの剥離防止のための優れた粘着性を長期間維持された耐久性に優れた粘着シートを提供する。
【解決手段】粘着剤層2、バリア層3、パターン形成材層4および表面層として非粘着性層5を含んでなり、前記パターン形成材層4が、その表面に凹凸からなる空間パターンを有し、前記非粘着性層5が、前記パターン形成材層の前記空間パターン上に非粘着性材料を被覆して形成されたものであって、その表面に前記パターン形成材層の前記空間パターンに対応した凹凸を有し、かつ、前記バリア層3が、前記粘着剤層と前記パターン形成材層との間に介在するように形成されたことを特徴とする、非粘着性表面を有する粘着シート1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非粘着性表面を有する粘着シートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着物質は、設備や装置の表面に付着しやすく、また付着すると剥離することが困難である。このため、粘着物質を取り扱う設備や装置においては、装置や設備の表面に、粘着物質が付着して、装置や設備を汚すという問題がある。
【0003】
そこで、従来、設備や装置の表面に、シリコーンオイルを塗布したり、シリコーン樹脂やフッ素樹脂をコーティングしたりすることで、設備や装置の表面に粘着物質が付着したり、付着した粘着物質が剥離しやすいという非粘着性を高めていた。
【0004】
また、特許文献1には、所定の中心線表面粗さと所定のロックウェル硬度をもつ無機材料層に非粘着性樹脂の被膜を形成してなる非粘着性コーティング層が開示されている。
【0005】
特許文献2には、凹凸部の表面に、凹凸形状が表れるように固着された非粘着性高重合体からなる非粘着性層を形成することが開示されている。
【0006】
特許文献3には、基材の表面にプライマー処理を施し、その表面にフッ素樹脂からなり所定の輪郭曲線の算術平均高さをもつ表層を形成することが開示されている。
【0007】
上記特許文献1〜3は、凹凸表面を非粘着性材料で被覆することで、表面の非粘着性を向上させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−228423号公報
【特許文献2】特開平4−217491号公報
【特許文献3】特開平2007−54749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1〜3では、凹凸表面の非粘着性が不十分であった。そこで、本願発明者は鋭意探求をし、凹凸表面の凹凸構造を改良することで凹凸表面の非粘着性を均一化することに着目した。
【0010】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、非粘着性に優れた凹凸表面をもつ非粘着性表面を有する粘着シートおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【0011】
このような非粘着性表面を有する粘着シートは、これを対象物の表面に貼り付けることによって対象物に非粘着性を付与するものである。この粘着シートには、その表面の非粘着性および粘着シートの剥離が生じないような高度の耐久性を備えていることが好ましい。 本発明は、優れた表面非粘着性ならびに粘着シートの剥離防止のための優れた粘着性を長期間維持された耐久性に優れた粘着シートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による非粘着性表面を有する粘着シートは、粘着剤層、バリア層、パターン形成材層および表面層として非粘着性層を含んでなり、前記パターン形成材層が、その表面に凹凸からなる空間パターンを有し、前記非粘着性層が、前記パターン形成材層の前記空間パターン上に非粘着性材料を被覆して形成されたものであって、その表面に前記パターン形成材層の前記空間パターンに対応した凹凸を有し、かつ、前記バリア層が、前記粘着剤層と前記パターン形成材層との間に介在するように形成されたこと、を特徴とする。
【0013】
このような本発明による非粘着性表面を有する粘着シートは、好ましくは、前記バリア層の片面あるいは両面にプライマー層が形成されているもの、を包含する。
【0014】
このような本発明による非粘着性表面を有する粘着シートは、好ましくは、前記パターン形成材層の空間パターンが、開口幅0.2mm以上、深さ30μm以上の凹部を有するもの、を包含する。
【0015】
このような本発明による非粘着性表面を有する粘着シートは、好ましくは、前記パターン形成材層が、織布、編物、レースおよび網のいずれかからなるもの、を包含する。
【0016】
このような本発明による非粘着性表面を有する粘着シートは、好ましくは、前記パターン形成材層が、厚さ50〜2000μmのもの、を包含する。
【0017】
このような本発明による非粘着性表面を有する粘着シートは、好ましくは、前記非粘着性層が、その表面に開口幅0.2mm以上、深さ30μm以上の凹部を有するもの、を包含する。
【0018】
このような本発明による非粘着性表面を有する粘着シートは、好ましくは、前記非粘着性層が、シリコーンゴムあるいはシリコーン系樹脂からなるもの、を包含する。
【0019】
このような本発明による非粘着性表面を有する粘着シートは、好ましくは、前記非粘着性層の厚さが、前記パターン形成材層の厚さの1/50〜1/2であるもの、を包含する。
【0020】
このような本発明による非粘着性表面を有する粘着シートは、好ましくは、前記バリア層が、溶解度パラメータ(以下、本明細書において「SP値」と示すことがある)が6.5未満あるいは10.0以上のもの、を包含する。
【0021】
このような本発明による非粘着性表面を有する粘着シートは、好ましくは、前記粘着剤層の表面に剥離シートが設けられてなるもの、を包含する。
【0022】
また、本発明による非粘着性表面を有する粘着シートの製造方法は、粘着剤層、バリア層、パターン形成材層および表面層として非粘着性層を含んでなる非粘着性表面を有する粘着シートを製造する方法であって、前記パターン形成材層として、その表面に凹凸からなる空間パターンを有するパターン形成材層を用い、このパターン形成材層の前記空間パターン上に非粘着性材料を被覆して、前記空間パターンに対応した凹凸を有する非粘着性表面を形成させる工程、および前記バリア層を、前記粘着剤層と前記パターン形成材層との間に介在するように形成させる工程を含むこと、を特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明による非粘着性表面を有する粘着シートは、粘着剤層、バリア層、パターン形成材層および表面層として非粘着性層を含んでなり、前記パターン形成材層が、その表面に凹凸からなる空間パターンを有し、前記非粘着性層が、前記パターン形成材層の前記空間パターン上に非粘着性材料を被覆して形成されたものであって、その表面に前記パターン形成材層の前記空間パターンに対応した凹凸を有し、かつ、前記バリア層が、前記粘着剤層と前記パターン形成材層との間に介在するように形成されたことから、非粘着性に優れた凹凸表面をもつ非粘着性粘着シートが得られる。
【0024】
この本発明による非粘着性表面を有する粘着シートは、仮に加熱等の熱履歴を得たとしても、長期間にわたって、その表面の優れた非粘着性ならびに粘着シートの剥離防止のための優れた粘着性等が良好に維持された、耐久性に優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による非粘着性表面を有する粘着シートの好ましい具体例の断面図。
【図2】本発明におけるパターン形成材を示す斜視説明図。
【図3】本発明におけるパターン形成材を示す斜視説明図。
【図4】実施例1、3による非粘着性表面を有する粘着シートの断面図。
【図5】実施例2による非粘着性表面を有する粘着シートの断面図。
【図6】比較例1の粘着シートの断面図。
【図7】比較例2の粘着シートの断面図。
【図8】実施例1〜3、比較例1のパターン形成材の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明による非粘着性表面を有する粘着シートは、粘着剤層、バリア層、パターン形成材層および表面層として非粘着性層を含んでなり、前記パターン形成材層が、その表面に凹凸からなる空間パターンを有し、前記非粘着性層が、前記パターン形成材層の前記空間パターン上に非粘着性材料を被覆して形成されたものであって、その表面に前記パターン形成材層の前記空間パターンに対応した凹凸を有し、かつ、前記バリア層が、前記粘着剤層と前記パターン形成材層との間のいずれかの位置に介在するように形成されたこと、を特徴とするものである。
【0027】
図1は、このような本発明による非粘着性表面を有する粘着シートの好ましい具体例にについて示すものである。
【0028】
図1に示される本発明の非粘着性表面を有する粘着シート1は、粘着剤層2、バリア層3、パターン形成材層4および表面層として非粘着性層5を含んでなり、前記パターン形成材層4が、その表面に凹凸41からなる空間パターンを有し、前記非粘着性層5が、前記パターン形成材層4の前記空間パターン上に非粘着性材料を被覆して形成されたものであって、その表面に前記パターン形成材層4の前記空間パターンに対応した凹凸51を有し、かつ、前記バリア層3が、前記粘着剤層2と前記パターン形成材層4との間に介在するように形成されたものである。
【0029】
本発明による非粘着性表面を有する粘着シートは、前記の粘着剤層、バリア層、パターン形成材層および非粘着性層に加えて、必要に応じて、他の層等を有することができる。
【0030】
図4〜5は、そのような他の層を有する、本発明による非粘着性表面を有する粘着シートの好ましい他の具体例について示すものである。
【0031】
これらの各図には、そのような他の層の好ましい具体例として、剥離シート50およびプライマー層60等が示されている。
【0032】
<パターン形成材>
パターン形成材は、少なくともその表面に、凹凸をもつ空間パターンを形成している。 空間パターンに形成された凹凸は、平面方向に規則的に繰り返して配置しているとよい。この場合には、本発明による粘着シートの表面全体の非粘着性が向上する。ゆえに、本発明による粘着シートの非粘着性を、その表面全体で均一に発揮することができる。
【0033】
空間パターンの凹凸表面のうち、凸部は、空間パターンの表面の中で頂部となる部分であり、この部分で粘着物質が接触する。空間パターンの凹凸表面のうち、凹部は、空間パターンの表面の中で、凸部よりも低く窪んだ部分である。
【0034】
凹部は有底穴であっても、貫通穴であってもよい。凹部が有底穴である場合には、凹部の中の最も低い部分は、凹部の底部である。凹部が貫通穴である場合には、凹部の中の最も低い部分は、凹部の他方の開口端である。このような凹部の中の最も低い部分には、粘着物質は接触し難い。
【0035】
空間パターンは、凹部と凸部の規則的な配列で形成された立体パターンである。例えば、図2に示すように、凹部41aは、凸部41bによって囲まれていて隣り合う凹部41aと連続していない独立凹部であってもよい。独立凹部を囲む凸部41bは、空間パターンにおいて連続している連続凸部となる。独立凹部の形状は、例えば、円形、楕円形、三角形、四角形、五角形などの多角形である。または、図3に示すように、凹部41aは、空間パターンにおいて連続していて、凸部41bを囲んで隣り合う凸部41b同士を隔離させる連続凹部であってもよい。連続凹部である場合に、凹部41aで囲まれた凸部41bは、隣合う凸部41bと連続していない独立凸部となる。
【0036】
空間パターンは、0.2mm以上の間口幅をもつ凹部を有することが好ましい。空間パターンには、その形状または/および大きさが異なった凹部を有しても良い。この場合、凹部の中の最も大きい凹部の開口幅が0.2mm以上であればよい。非粘着性層の表面の凹凸に、粘着物質が付着しにくくなり、また剥離しやすくなるからである。凹部の中の最も大きい凹部は、空間パターンの中に形成されている凹部のうち最も開口面積が大きい凹部をいう。
【0037】
更には、空間パターンは、0.5〜20mmの開口幅をもつ凹部を有することが望ましい。この場合には、非粘着性層と付着防止対象物との接触面積を小さくして、付着防止対象物の付着を効果的に抑えることができる。
【0038】
例えば、図2に示すように、空間パターンの凹部41aが独立凹部である場合には、独立凹部のうちの最も大きい独立凹部の開口幅Aは、0.2mm以上であるとよい。独立凹部の開口幅は、例えば、独立凹部が多角形である場合には、独立凹部を囲む多角形の囲み壁のうち最も長い幅をもつ部分の当該幅をいい、独立凹部が楕円形である場合には、この凹部が持つ長径と短径のうちの長径をいい、独立凹部が円形である場合には、この凹部がもつ直径をいう。
【0039】
図3に示すように、空間パターンの凹部41aが連続凹部である場合には、隣り合う2つの凸部41bの間に形成される凹部41aの開口幅のうち最も大きい開口幅をもつ2つの凸部41bの間の連続凹部の間口幅Xが、0.2mm以上であるとよい。即ち、隣り合う2つの凸部41bは、ある凸部41bと、凹部41aを挟んで最も近い他の凸部41bとの間に形成される凹部41aの開口幅のうち、最も大きい間口幅Xが、0.2mmであるとよい。更には、連続凹部の開口幅は、0.5〜10mmであるとよい。この場合には、非粘着性層と付着防止対象物との接触面積を小さくして、付着防止対象物の付着を効果的に抑えることができる。
【0040】
空間パターンの凹部の深さHは、30μm以上であるとよく、また1000μm以下であるとよい。空間パターンが深さの異なる凹部を持つ場合には、最も深い凹部の深さHが30μm以上であるとよい。この場合には、非粘着性層と付着防止対象物との接触面積を小さくして、付着防止対象物の付着を効果的に抑えることができる。
【0041】
空間パターンの凸部の面積の平滑表面の面積に占める凸部占有面積率は5〜99%であることが好ましく、更には、凸部占有面積率は10〜70%であるとよい。この場合には、非粘着性層の表面の非粘着性が高い。
【0042】
更に、開口幅が0.2mm以上の凹部の面積の平滑表面の面積に占める凹部占有面積率は、1〜95%であることが好ましく、更には30〜90%であるとよい。この場合には、非粘着性層の表面の非粘着性が高くなる。
【0043】
パターン形成材の厚みは、50〜2000μmであることが好ましく、更には100〜1000μmであることが望ましい。この場合には、パターン形成材に、付着防止対象物が付着しない程度に深い凹部を確実に形成することができる。
【0044】
パターン形成材は、織布、編物、レース、および網のいずれかからなるとよい。いずれの場合にも、繊維の織物または編物として作製され、組織図、織り方または編み方等を変更することで、凹凸の大きさや配列を自在に変更することができる。ゆえに、所望の空間パターンを容易に形成することができる。
【0045】
また、織布、編物、レースおよび網は、柔軟性を有するため、本発明による非粘着性表面を有する粘着シートが、設備や装置の表面部材に固定される場合には、表面部材の表面形状に柔軟に追従する。ゆえに、織布、編物、レース、および網は、どのような表面形状にもその表面形状を反映させて固定することができる。また、織布、編物、レース、および網は二次元的に広がり、糸同士が二次元的に拘束されている。このため、これらの二次元方向の弾性率は高く、変形しにくい。ゆえに、パターン形成材自体の弾性率などの強度が高いため、本発明による粘着シート全体の強度を向上させることができる。特に、編物は、立体の内部構造を複雑化できるため、非粘着性材料がこの複雑化された編物構造に入り込み固定化されるため、密着性および耐久性が向上するため、好ましい。
【0046】
パターン形成材が、織布、編物、レース、および網のいずれかからなる場合には、これらの空間パターンの凸部を構成する繊維には、非粘着性層を形成する非粘着性材料が含浸される。
【0047】
パターン形成材に用いられる繊維は、例えば、合成樹脂、金属、天然素材を用いることができる。耐熱性および強度の観点から、繊維は、合成樹脂または金属からなることが好ましい。合成樹脂は、例えば、ナイロン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ウレタン樹脂などを用いる。天然素材は、例えば、麻、木綿、絹などを用いる。耐熱性の高い繊維としては、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、またはアラミド繊維などを用いることができる。
【0048】
パターン形成材は、金属、樹脂、無機物などを、成型、パンティングなどを行うことにより形成することもできる。樹脂としては、例えば、ナイロン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ウレタン樹脂などを用いる。無機物は、例えば、ガラス、カーボン、セラミックなどを用いる。この場合には、型パターンを変更することで、空間パターンを自在に変更することができる。
【0049】
パターン形成材の中でも、織布および編物は柔軟性および強度の点で好ましく、材料としてはナイロン、ポリエステル、アクリル樹脂およびウレタン樹脂が非粘着性材料との接着性および複雑な凹凸形状を形成させるうえで好ましい。
【0050】
<非粘着性層>
本発明による非粘着性表面を有する粘着シートにおける前記非粘着性層は、前記非粘着性層が、前記パターン形成材層の前記空間パターン上に非粘着性材料を被覆して形成されたものであって、その表面に前記パターン形成材層の前記空間パターンに対応した凹凸を有するものである。ここで、「その表面に前記パターン形成材層の前記空間パターンに対応した凹凸を有する」とは、非粘着性層の表面に、パターン形成材層の空間パターンの凹部には凹部を、パターン形成材層の空間パターンの凸部には凸部を、有することを意味する。したがって、パターン形成材層の空間パターンの凹部内部に完全に非粘着性材料が充されたもの、あるいはパターン形成材層の空間パターンの凸部が完全に埋没したもの等のように、非粘着性層の表面にパターン形成材層の空間パターンに対応した凹凸を有さないものは、本発明における非粘着性層には含まれない。
【0051】
本発明における非粘着性層は、その表面に開口幅0.2mm以上、特に0.5mm以上の凹部を有するものが好ましい。また、その表面に深さ30μm以上、特に50μm以上の凹部を有するものが好ましい。開口幅の上限値は20mm、深さの上限値は1000μmである。
【0052】
このような表面を有する非粘着性層は、前記したパターン形成材層に被覆する非粘着性材料の特性および量等の条件を適宜定めることによって形成することができる。
【0053】
非粘着性層表面に液体を滴下したときに、その液体をはじくかどうかの指標として、臨界表面張力がある。一般に、臨界表面張力が小さな固体表面ほど液体をはじく能力が高いと考えられる。非粘着性層を形成する非粘着性材料は、付着防止を図る対象物質の表面張力よりも低い臨界表面張力をもつとよい。この場合には、粘着物質の非粘着性層への付着を抑制することができる。
【0054】
非粘着性層は、パターン形成材上の上に1層あるいは複数形成することができる。
【0055】
非粘着性層を形成する非粘着性材料の臨界表面張力は、25mN/m以下であることが好ましい。更に、非粘着性層を形成する非粘着性材料の臨界表面張力は、22mN/m以下であることが望ましい。この場合には、非粘着性層と付着防止対象物との接触面積を小さくして、付着防止対象物の付着を効果的に抑えることができる。
【0056】
非粘着性材料としては、ジメチルシリコーン、トリメチルフェニルシリコーン、フロロシリコーン、フェニルシリコーンなどがあるが、臨界表面張力が25mN/m以下のシリコーンが良く、中でもジメチルシリコーンおよびフロロシリコーンからなるゴムおよび変成ゴムならびにジメチルシリル基、フロロアルキルシリル基を持つモノマーとの共重合体樹脂などが臨界表面張力が25mN/m以下の非粘着性材料として挙げられる。
【0057】
非粘着性層を構成する非粘着性材料は、透明の物でも、非粘着性材料が本来有する色相が特に支障がないならばそのまま用いることができる。また、所望により、着色剤を含有させることができる。この場合には、本発明による粘着シートの外観がよくなる。
【0058】
非粘着性層には、耐摩耗性を向上させるため、高硬度充填剤を添加してもよい。高硬度充填剤としては、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維などの繊維状物質、チタン酸ウィスカ、炭化珪素ウィスカ、チッ化珪素ウィスカなどのウィスカ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭化珪素粉末、グラファイト粉末などの高硬度粉末などがある。
【0059】
また、非粘着性層には、耐摩耗性を向上させるために、充填剤をブレンドした非粘着性材料を用いても良い。非粘着性材料にブレンドされる充填剤は、例えば、グラファイト、導電性カーボン、導電材を蒸着したチタン酸ウィスカ、酸化チタンなどが挙げられる。
【0060】
非粘着性層の厚みは、パターン形成材の厚みの1/50〜1/2であるとよく、例えば、1〜1000μmであることが好ましく、更には5〜500μmであることが望ましい。この場合には、パターン形成材の凹凸を非粘着性層の表面に確実に発現させることができる。
【0061】
<粘着剤層>
本発明による非粘着性表面を有する粘着シートの粘着剤層は、公知の粘着剤を用いることができる。
【0062】
そのような粘着剤の好ましい具体例としては、例えば天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴムなどのゴム材、メチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ヒドロキシアクリレートなどのモノマーを1種以上重合したアクリル系樹脂、低分子オレフィンからなる樹脂、シリコーンゴムなどと軟化剤、粘着付与剤、粘着調整剤からなる粘着剤が挙げられるが、耐熱性の点でシリコーン系粘着剤が好ましい。
【0063】
粘着剤は、透明の物でも、粘着剤が本来有する色相が特に支障がないならばそのまま用いることができる。また、所望により、着色剤を含有させることができる。この場合には、本発明による非粘着性表面を有する粘着シートの外観を良くすることができる。
【0064】
<バリア層>
本発明による非粘着性表面を有する粘着シートにおいて、バリア層は、前記粘着剤層と前記パターン形成材層との間に介在するように形成されている。このバリア層によって、粘着剤層を形成している粘着剤の劣化が有効に防止されて、優れた粘着性を長期間維持できるようになる。
【0065】
バリア層としては、SP値6.5未満の表面を持つ樹脂および10.0以上の極性樹脂およびゴムが好ましい。例えば、SP値6.5未満の表面を持つ樹脂としては、−CF、−CFH、−CF(CH)を末端にもつ樹脂およびゴムで、その具体的例示としては、トリフルオロメタクリ樹脂、ペンタフルオロエチルメタクリレート樹脂、ペプタフルオロプロピルメタクリル樹脂などのフルオロアクリル樹脂およびその共重合体、ビストリフルオロメチルを持つビスフェノールおよびアルキルフルオロ基をもつ化合物から誘導されたフルオロエポキシ樹脂、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基などのパーフルオロアルキル基およびフルオロアルキル基を有するシラン化合物から誘導された樹脂およびゴム並びにテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロビニールエーテルなどのモノマーの単独および2種以上の共重合体などのSP値が5.8〜6.2(ポリテトラフルオロエチレン)の範囲のものが挙げられる。また、SP値10以上の極性樹脂およびゴムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(SP値:10.7)、ポリ塩化ビニリデン(SP値:12.2)、ポリビニールアルコール(SP値:12.6)、ナイロン6,6(SP値:13.5)、アクリロニトリル(SP値:14.8)などのフィルム、および薄い織布、不織布に含浸、塗布されたバリア材などが挙げられるが、SP値10.0以上の極性樹脂およびゴムの方が粘着剤との接着およびシリコーン系非粘着性材料との接着性に優れるため好ましい。
【0066】
SP値が6.5未満の材料は、シリコーンオイルを弾く性質をもっているが、非粘着性材料も弾くため接着するために表面のみをプラズマ処理、コロナ放電処理などでプライマー層を構成し濡れ性を上げたのち接着する必要がある。また、非粘着性材料と比較的濡れ性が良く粘着力によりバリア材の隅々まで入り込む性質により密着性を上げるシリコーン系粘着剤をプライマー層として用いることもできる。
【0067】
また、バリア層の厚みは、5〜100μm、好ましくは10〜50μmの範囲がバリア性および柔軟性の点で好ましい。
【0068】
このバリア層は、前記非粘着性層を形成する非粘着性材料に対するバリア性がSP値6.5未満あるいは10.0以上のものが好ましく、特にSP値10.0以上のものが好ましい。ここで、SP値とは、正則溶液論により定義された2成分系溶液の溶解度の目安となるパラメーターである。
【0069】
このバリア層の形成位置は、粘着剤層とパターン形成材層との間に介在していれば、いずれでもよい。バリア層は、非粘着性層に近い位置に、即ち、非粘着性層に接して、形成することが一般に好ましい。なお、バリア層は、粘着剤層とパターン形成材層との間に介在するように、少なくとも1層設ける必要があるが、複数設けることもできる。
【0070】
バリア層の形成は任意の方法によって行うことができる。例えば、所定のバリア性を有する基材を貼り合わせることによって、あるいは所定のバリア性を有するバリア層が所定の位置に形成されるように液状のバリア材を、パターン形成材層、その他の層に塗布ないし含浸させることによって形成することができる。
【0071】
<プライマー層>
バリア層と粘着剤層および非粘着性材料との密着性を上げるためにエポキシ系、ウレタン系、シリコーン系接着材および上記した粘着剤が好ましく用いられ、特にバリア層とパターン形成材を接着させるのに接着面積を増やしパターン形成材の接着を改良する目的で粘着剤が良く、特に耐熱性、種々のパターン形成材料の浸透性からシリコーン系粘着剤が好ましく用いられる。
【0072】
<剥離シート>
本発明においては、取り扱い性の観点から、粘着剤層の表面には、剥離層を設けることが好ましい。剥離層としては、粘着剤層から離型が容易な、パラフィン系、シリコーン系、フッ素系などの離型材および表面に凹凸形状を有するポリエチレンシートないしフィルムを用いることが好ましい。
【実施例】
【0073】
<実施例1>
本例の非粘着性表面を有する粘着シートは、図4に示すように、粘着剤層10、バリア層20、パターン形成材層30および表面層として非粘着性層40を含んでなり、前記バリア層20を前記粘着剤層10と前記パターン形成材層30との間に介在して形成したものである。以下、非粘着性表面を有する粘着シートの製造方法について説明する。
【0074】
まず、図4に示すように、非粘着性層40のシリコーンゴムを得るために、市販の付加型シリコーンゴム(信越化学社製、KE−1800シリーズ)を使用し、主剤と硬化剤および溶剤(トルエン)で粘度が50000Cpとなるように粘度調整を行い、シリコーンゴム溶液を得た。
【0075】
次に、バリア層20の市販のナイロンフィルム(ユニチカ社製、厚み25μm、SP値13.5)を用意し、その上にパターン形成材30として図8の形状をもつポリエステル繊維製のパターン形成材(H=550μm、D1=400μm、K1=開口幅1600μm(1.6mm)、K2=700μm、開口(K1)占有面積36.2%)を重ね、前記ポリエステル繊維製のパターン形成材面へ前記シリコーンゴム溶液を連続塗工装置で塗工し、80℃×10分間、加熱および硬化させ、巻き取り軸へ巻き取った。この時のシリコーンゴムの厚みは50μmに形成した。
【0076】
次に、粘着剤層10のシリコーン粘着剤を得るために、市販の付加型シリコーン粘着剤(東レ・ダウ社製、SD−4500シリーズ)を使用し、主剤と硬化剤および溶剤(トルエン)で粘度が50000Cpとなるように粘度調整を行い、シリコーン粘着剤溶液を得た。
【0077】
次に、前記バリア層20のナイロンフィルムの前記パターン形成材層30のポリエステル繊維製のパターン形成材と前記非粘着性層40のシリコーンゴムを複合した面の裏面に前記で得たシリコーン粘着剤を連続塗工装置で塗工し、120℃×5分間、加熱および硬化させ、そのシリコーン粘着剤面へ剥離シート50として、市販のエンボス加工された高密度ポリエチレン製フィルム(河原物産社、厚み350μm)を貼り付け、巻き取り軸へ巻き取り、図4の非粘着性表面を有する粘着シートを得た。この時のシリコーン粘着剤の厚みは45μmであった。図4の非粘着性表面を有する粘着シートの前記剥離シート50を含めない厚みは670μmであった。
【0078】
<実施例2>
本例の非粘着性表面を有する粘着シートは、図5に示すように、実施例1のバリア層20の変更と前記バリア層20と前記パターン形成材層30の間にプライマー層60を介在させた以外は、実施例1と同様の構成である。
【0079】
まず、図5に示すように、実施例1のバリア層20で使用したナイロンフィルムから市販のフッ素系撥水撥油処理されたポリエステル織布(北陸加工社製、厚み60μm、SP値6.1)に変更し、そのフッ素系撥水撥油処理されたポリエステル織布への非粘着性層40のシリコーンゴムの接着性をあげるため、プライマー層60として実施例1の粘着剤層10と同じ、シリコーン粘着剤溶液を連続塗工装置で塗工し、120℃×5分間、加熱および硬化させた。この時のシリコーン粘着剤の厚みは45μmであった。前記シリコーン粘着剤は、バリア層20で使用した前記フッ素系撥水撥油処理されたポリエステル織布の隙間に潜り込み、接着力を得ることから前記フッ素系撥水撥油処理されたポリエステル織布と非粘着性層40で使用したシリコーンゴムを接着させるプライマー層60として使用した。
【0080】
次からは、バリア層20がフッ素系撥水撥油処理されたポリエステル織布であること以外は、実施例1と同様の材料、方法、条件にてパターン形成材層30を重ね、非粘着性層40を塗工し、バリア層20へプライマー層60とパターン形成材層30と非粘着性層40を複合した面の裏面へ粘着剤層10を塗工し、剥離シート50を貼り付け、図5の非粘着性表面を有する粘着シートを得た。図5の非粘着性表面を有する粘着シートの前記剥離シート50を含めない厚みは750μmであった。
【0081】
<実施例3>
本例の非粘着性表面を有する粘着シートは、図4に示すように、実施例1のバリア層20の変更以外は実施例1と同様の構成である。
【0082】
まず、図4に示すように、実施例1のバリア層20で使用したナイロンフィルムから市販のフッ素系撥水撥油処理されたポリエステル織布(北陸加工社製、厚み60μm、SP値6.1)に変更した。
【0083】
次からは、バリア層20がフッ素系撥水撥油処理されたポリエステル織布であること以外は、実施例1と同様の材料、方法、条件にてパターン形成材層30を重ね、非粘着性層40を塗工し、バリア層20へパターン形成材層30と非粘着性層40を複合した面の裏面へ粘着剤層10を塗工し、剥離シート50を貼り付け、図4の実施例1とバリア層20が異なる非粘着性表面を有する粘着シートを得た。図4の実施例1とバリア層20が異なる非粘着性表面を有する粘着シートの前記剥離シート50を含めない厚みは705μmであった。
【0084】
<比較例1>
本例は、図6に示すように、実施例1のバリア層20を設けなかったこと以外は実施例1と同様の構成である。
【0085】
<比較例2>
本例は、図7に示すように、実施例1のパターン形成材層30を設けない以外は実施例1と同様の構成である。
【0086】
<評 価>
前記実施例1〜3および比較例1〜2の非粘着性表面を有する粘着シートについて、以下の項目を測定した。
【0087】
1.粘着剤層10の粘着力:
バリア層20の効果の確認である。
JIS Z0237に準拠して、島津製作所製AGS−G型オートグラフを用いて、試験片幅25mmで、被着体SUS304の表面に貼り付け、180°定速剥離、剥離速度300mm/分の条件での引き剥がし粘着力N/25mmを粘着シートの作製直後と30日後に測定した。
【0088】
2.バリア層20とパターン形成材30の接着強度:
島津製作所製AGS−G型オートグラフを用いて、試験片幅20mm、90°定速剥離、剥離速度300mm/分の条件での引き剥がし応力N/10mmを測定した。
【0089】
3.非粘着性:
非粘着性層40の表面の非粘着性である。
市販の日東電工社製布粘着テープ(粘着力7.55N/25mm)を幅25mmで、非粘着性層40の表面に貼り付け、島津製作所製AGS−G型オートグラフを用いて、試験片幅25mm、180°定速剥離、剥離速度300mm/分の条件での引き剥がし粘着力N/25mmを測定した。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の非粘着性表面を有する粘着シートは、設備や装置の表面部材として用いることができる。具体的には、粘着テープの製造設備、接着剤の製造設備、ゴム状物質の取り扱い設備、食品粘着物質取り扱い設備など、粘着および接着剤を使用する容器、攪拌機、ロール、加熱部品、カッティングの刃物および部品、輸送用配管、押出ノズルなど、様々な用途に使用される。
【符号の説明】
【0091】
1:粘着シート1、2:粘着剤層、3:バリア層、4:パターン形成材層、5:非粘着性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層、バリア層、パターン形成材層および表面層として非粘着性層を含んでなり、
前記パターン形成材層が、その表面に凹凸からなる空間パターンを有し、
前記非粘着性層が、前記パターン形成材層の前記空間パターン上に非粘着性材料を被覆して形成されたものであって、その表面に前記パターン形成材層の前記空間パターンに対応した凹凸を有し、かつ、
前記バリア層が、前記粘着剤層と前記パターン形成材層との間に介在するように形成されたことを特徴とする、非粘着性表面を有する粘着シート。
【請求項2】
前記バリア層の片面あるいは両面にプライマー層が形成されている、請求項1に記載の非粘着性表面を有する粘着シート。
【請求項3】
前記パターン形成材層の空間パターンが、開口幅0.2mm以上、深さ30μm以上の凹部を有する、請求項1または2に記載の非粘着性表面を有する粘着シート。
【請求項4】
前記パターン形成材層が、織布、編物、レースおよび網のいずれかからなる、請求項1〜3のいずれ1項に記載の非粘着性表面を有する粘着シート。
【請求項5】
前記パターン形成材層が、厚さ50〜2000μmのものである、請求項1〜4のいずれ1項に記載の非粘着性表面を有する粘着シート。
【請求項6】
前記非粘着性層が、その表面に開口幅0.2mm以上、深さ30μm以上の凹部を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の非粘着性表面を有する粘着シート。
【請求項7】
前記非粘着性層が、シリコーンゴムあるいはシリコーン系樹脂からなる、請求項1〜6のいずれ1項に記載の非粘着性表面を有する粘着シート。
【請求項8】
前記非粘着性層の厚さが、前記パターン形成材層の厚さの1/50〜1/2である、請求項1〜7のいずれ1項に記載の非粘着性表面を有する粘着シート。
【請求項9】
前記バリア層が、溶解度パラメータが6.5未満あるいは10.0以上のものである、請求項1〜8のいずれ1項に記載の非粘着性表面を有する粘着シート。
【請求項10】
前記粘着剤層の表面に剥離シートが設けられてなる、請求項1〜9のいずれ1項に記載の非粘着性表面を有する粘着シート。
【請求項11】
粘着剤層、バリア層、パターン形成材層および表面層として非粘着性層を含んでなる非粘着性表面を有する粘着シートを製造する方法であって、
前記パターン形成材層として、その表面に凹凸からなる空間パターンを有するパターン形成材層を用い、このパターン形成材層の前記空間パターン上に非粘着性材料を被覆して、前記空間パターンに対応した凹凸を有する非粘着性表面を形成させる工程、および
前記バリア層を、前記粘着剤層と前記パターン形成材層との間に介在するように形成させる工程を含むことを特徴とする、非粘着性表面を有する粘着シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−213946(P2011−213946A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85339(P2010−85339)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(592008181)株式会社吉田エス・ケイ・テイ (8)
【出願人】(000243331)本多産業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】