説明

非線形用途向けの改良された2光子吸光度を有する化合物

改良した供与体−受容体−供与体化合物として働くスチルベン誘導体に基づく式(I)の共役系、および3次元光メモリの発色団光学媒体を含めての非線形光学素子におけるその使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光誘起異性化プロセスを受ける強い2光子吸光度を有する改良された発色団に関する。
【背景技術】
【0002】
電子光学応用分野における最近の発展は、強い2光子吸光度を有する発色団の開発に基づくものである。強い2光子吸光度を有する発色団の利用から恩恵を受ける用途として、光リミッティング、データ記憶、3D微細加工およびテレコミュニケーションが挙げられる。「供与体−受容体−供与体」(DAD)構造からなる一般構造式を有する発色団は、強い2光子吸光度を有する傾向がある。こうした化合物は、従来3次元光メモリの活性媒体として使用された(国際公開第03/070,689号)。
【0003】
スチルベン、詳細にはビス供与体二置換スチルベンは、該供与体から該分子の中心、すなわち二重結合への強い電荷移動を特徴とする励起状態を有する。ジアミノスチルベン化合物において「電子を押す」ことにより創り出すことができる共鳴形態により、計算することができる励起状態に対応する構造が与えられる(Wang et al.J Mater.Chem.(2001)11,1600)。
【0004】
【化1】

【0005】
この電荷移動により、該分子に強い3次非線形光学活性が与えられる。というのはこの活性が、変動する電界との相互作用により発色団電子の摂動における有意な第二高調波成分を発生させるからである。加えて、該電荷移動形態では、該中心二重結合は弱まる、または存在しないことに留意されたい。こうした観察により、該分子の効率的な光異性化、およびより強い電荷移動供与体ほど異性化が速やかである理由が説明される。
【0006】
スチルベン二重結合上の水素と、より強い電子受容体である化学基との置換には十分注意すべきであることを留意されたい。というのは完全な共役系である置換スチルベンの全電子配置では、エネルギーを吸収するとスチルベンが分解し得るからである。強さの小さい供与体およびより強い受容体を使用することにより該系の供与体クセプター特徴を増加することが望ましい場合、バランスのよい手法をとるべきである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、強い2光子吸光度を有する新規な化合物、および多様な電子光学用途におけるその使用が提供される。
【0008】
従って、本発明は、式(1)の化合物:
【0009】
【化2】

【0010】
[式中、nは、独立に0、1または2であり;X、X、XおよびXは、共役基であり、それぞれ独立に、(i)N、OまたはSから選択される1、2または3個のヘテロ原子を含み得る5または6員芳香族部分、および(ii)C〜CアルケニレンもしくはC〜Cアルキニレン、或いは鎖中にN、OまたはS原子を必要に応じて含み得るそれらのヘテロ原子鎖アナログから選択され;前記XおよびXの一方または両方は、フェニル環の3、4または5位に結合していてもよい、あるいは前記XおよびXの一方または両方は、3〜4または4〜5位においてフェニル環と縮合環を形成していてもよく;DおよびDは、−C1〜4アルキル、−OC1〜4アルキル、−SC1〜4アルキルおよび−C1〜4OH、チオールおよびその塩、NR’R’’(R’およびR’’が、独立に、水素またはC1〜4アルキルである)、ビフェニル、ならびにN、OまたはSから選択される1または2個のヘテロ原子を有する5および6員環から選択されるヘテロ芳香族から独立に選択される電子供与体部分であり;Aは、ピリジニウム、アンモニウム塩、C2〜5アルケニルもしくはC2〜5アルキニル基、アゾベンゼン、C1〜4CN、ハライド、C1〜6COOHもしくはそのC1〜6エステル、またはC1〜4NO化合物から独立に選択される電子受容体部分である]。
を提供する
供与体系におけるDおよびD基が、それぞれ独立に、NR’R’’からなることができ、R’およびR’’は、それぞれ独立に、水素またはC1〜4アルキル、−C1〜4OH、−OC1〜4アルキル基であり;XおよびX基が、好ましくは、−C1〜4アルキル、−OC1〜4アルキルである置換基によりそれぞれ独立に必要に応じて置換されているフェニル、ピリジン、ピロール、イミダゾール、トリアゾール、チオフェンまたはフランである化合物が好ましい。
【0011】
受容体系のA基は、好ましくは独立にシアノまたはニトロであり;XおよびXが、好ましくはそれぞれ独立に、C2〜5アルケニルまたはC2〜5アルキニル、あるいは該鎖中にN、OまたはS原子を必要に応じて含み得るそれらのヘテロ原子鎖アナログである。
【0012】
受容体系(A−(X−またはA−(X)、あるいは供与体系(D−(X−またはD−(X)が、唯一の共役、例えば、各系においてn=0であるものを有することが可能であることを理解されたい。
【0013】
従って、本発明は、式(2)の化合物:
【0014】
【化3】

【0015】
[式中、nは、独立に0、1または2であり;X、Xは、共役基であり、それぞれ独立に、(i)N、OまたはSから選択される1、2または3個のヘテロ原子を含み得る5または6員芳香族部分、および(ii)C〜CアルケニレンまたはC〜Cアルキニレン、または該鎖中にN、OまたはS原子を必要に応じて含み得るそれらのヘテロ原子鎖アナログから選択され;前記XおよびXの一方または両方は、フェニル環の3、4または5位に結合していてもよい、あるいは前記XおよびXの一方または両方は、3〜4または4〜5位において縮合環を形成していてもよく;DおよびDは、−C1〜4アルキル、−OC1〜4アルキル、−SC1〜4アルキルおよび−C1〜4OH、チオールおよびその塩、NR’R’’(R’およびR’’が、独立に、水素またはC1〜4アルキルである)、ビフェニル、およびヘテロ芳香族から独立に選択される電子供与体部分であり;Aは、ピリジニウム、アンモニウム塩、C2〜5アルケニルもしくはC2〜5アルキニル基、アゾベンゼン、C1〜4CN、ハライド、C1〜6COOHもしくはそのC1〜6エステル、またはC1〜4NO化合物から独立に選択される電子受容体部分である]
を提供する。
【0016】
およびXが、独立に、N、OまたはSから選択される1、2または3個のヘテロ原子を含み得る5または6員芳香族部分から選択される共役基であり;前記部分が、フェニル環と縮合または結合していてもよく;DおよびDが、独立に、アルコール、アルコキシまたはアミノであり;Aが、シアノまたはニトロである、式(1)の化合物が好ましい。
【0017】
従って、本発明は、さらに式(3)の化合物:
【0018】
【化4】

【0019】
[式中、nは、独立に0、1または2であり;X、Xは、共役基であり、独立に、(i)N、OまたはSから選択される1、2または3個のヘテロ原子を含み得る5または6員芳香族部分、および(ii)C〜CアルケニレンもしくはC〜Cアルキニレン、または該鎖中にN、OまたはS原子を必要に応じて含み得るそれらのヘテロ原子鎖アナログから選択され;DおよびDは、−C1〜4アルキル、−OC1〜4アルキル、−SC1〜4アルキルおよび−C1〜4OH、チオールおよびその塩、NR’R’’(R’およびR’’が、独立に、水素またはC1〜4アルキルである)、ビフェニル、およびヘテロ芳香族から独立に選択される電子供与体部分であり;Aは、ピリジニウム、アンモニウム塩、C2〜5アルケニルもしくはC2〜5アルキニル基、アゾベンゼン、C1〜4CN、ハライド、C1〜6COOHもしくはそのC1〜6エステル、またはC1〜4NO化合物から独立に選択される電子受容体部分である]
を提供する。
【0020】
およびDが、独立に、アルコールまたはアミノであり、Aが、シアノまたはニトロであり;X、Xが、N、OまたはS原子から選択される1、2または3個のヘテロ原子を必要に応じて有するC〜CアルケニレンまたはC〜Cアルキニレンであり、n=1である、式(3)の化合物が好ましい。
【0021】
本発明による具体的な好ましい化合物は、以下:
2−(4’−メトキシ−ビフェニル−4−イル)−3−(4−メトキシメチル−フェニル)−ブト−2−エンジニトリル
2−(4’−ホルミル−ビフェニル−4−イル)−3−(4−メトキシメチル−フェニル)−ブト−2−エンジニトリル
2−(4’−ジメチルアミノ−ビフェニル−4−イル)−3−(4−メトキシメチル−フェニル)−ブト−2−エンジニトリル
2,3−ビス−(4’−メトキシ−ビフェニル−4−イル)−ブト−2−エンジニトリル
2,3−ビス−(4’−メチル−ビフェニル−4−イル)−ブト−2−エンジニトリルである。
【0022】
本発明は、例えば、特殊染料、参照標準、光リミッタとしての、微細加工システムにおけるコンポーネントとしての、ナノテクノロジーデバイス向けの、および標的化医療用途向けの非線形光学において用いる上記の式(1)〜(3)の化合物をさらに対象とする。特に、このような化合物は、3次元光メモリの活性媒体として用い得る。
【0023】
本発明は、化合物(1)〜(3)のいずれか1つを含むデバイスまたは製剤をさらに対象とする。例として、特殊染料、参照標準、光リミッタ、微細加工システム、ナノテクノロジーデバイスまたは標的化医療用途において使用するためのデバイスまたは医薬組成物がある。特に、参照により本明細書に組み込まれている国際公開第01/73,769号および国際公開第03/070,689号に開示された種類の、本発明の化合物を含む3次元光メモリデバイスが提供される。
【0024】
本発明は、式(1)〜(3)のいずれか1つの化合物を調製するための方法をも対象とする。
【0025】
本発明を理解し、実際にそれを如何に実施するかを知ることを目的として、ここで好ましい実施形態を、非限定実施例のみを用いて、添付図面を参照しながら説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
上記のように、本発明は、式(1)〜(3)の化合物における拡張共役系を介しての電荷移動のために強力な2光子吸光度を有する化合物を対象とする。式(1)〜(3)の化合物は、該化合物の中心における供与体から受容体への強い電荷移動を特徴とする励起状態を有する。この強い電荷移動の結果として、こうした化合物では、拡張共役系を有しない化合物に比較して照射したときの異性化がより大きい速度で行われる。この拡張共役系は、縮合していても、既存のπ電子が豊富な系に直接結合していてもよい5または6員の芳香族、任意にヘテロ芳香族であるか、あるいは、π電子が豊富な系に共役なアルキニレンまたはアルケニレン基でもよい。
【0027】
一般に、電子供与体(D)として働く置換芳香族基を有するアリール置換エテンは、DAD系を形成する。というのは、「エテン性」結合、つまりπ電子は、受容体(A)部分として働き得るからである。こうした系では、簡単な電子的考察により、系の効率が決定される。アミン置換芳香族環は、アルコキシ置換芳香族基より良好な供与体基である。しかし、「エテン性」二重結合上の水素が受容体部分によって置換される場合、修飾DAD系が生成し、その系では、アルコキシなどのより弱い供与体部分を用いることが可能であり、受容体は、ニトリルまたはニトロ基である。従って、α,α’−ジメトキシ−スチルベン−ジシアノ(DMSDC)は、α,α’−ジアミノスチルベンに類似の電荷移動特性を有する。というのは芳香族基上のアルコキシ基のより弱い供与体特性は、二重結合上のシアノ置換基の存在により補償されるからである。しかし、DMSDCにおける受容体は、該共役に参加し得るので、この点のために該系がより複雑になることになる。これはDMSDCに関する図1において観察することができる。この図では、DMSDC10は、遷移状態20で存在してもよく、この状態は2つの両性イオン構造30を取り得る。この後者の構造30は、2つの遷移状態40および50をさらにとることができ、これらの構造が、それぞれ2つの共鳴イオン構造60および70の形成に進むこともある。構造60では、シアニドイオンの喪失が存在し、構造70では、スチルベンの再配列によりn異性体形が形成される可能性が存在する。
【0028】
発色団を最適化し、2光子断面を増大することにより異性化速度を増加させる1つの方式は、共役の長さを増加することである。拡張共役系を有する発色団と呼称することもあるこうした共役の増加は、同じ発色団内の供与体系と受容体系の両方で実施してもよく、あるいは改良した発色団は、より多く共役された供与体でも、より多く共役された受容体を含んでもよい。これは、以下の例示用スキームAにおいて理解し得るが、このスキームでは、より多く共役された供与体系が示され、その共役供与体系は、アルコキシ基により置換されたフェニルではなくてアルコキシ基により置換されたビフェニルである。
スキームA:
【0029】
【化5】

【0030】
スキームBは、より多く共役された受容体系の別の例を示し、その系では、示すようにニトリルではなくアセチレン−ニトリルである。
スキームB:
【0031】
【化6】

【0032】
より多く共役した受容体および供与体系を含む改良した発色団は、以下のスキームCにおいて概略的に表し得る。
スキームC:
【0033】
【化7】

【0034】
こうした系は、4極DADA系であり、πスペーサが、芳香族、アルケニル、アルキニルまたはその組合せでよい。スキームCでは、異性化の際に起きる4極の大きい変化、すなわち、「E」から「Z」への移行が明らかに示されている。これは、フォトクロミック用途で重要である。こうした系の変化は、スチルベン、あるいは光異性化におけるD−A−D系である置換スチルベンなどの他のフォトクロームで誘起される変化より大きいことがある。
【0035】
本発明の改良された発色団は、X、X、XおよびXが存在しないアナログよりも著しく改良された2光子吸収を提供し、トランス−シス・フォトクロミズムを示すことができる。国際公開第03/070,689号に開示のものに類似の方式では、本発明の式(1)、(2)または(3)の化合物は、フォトクロミックで非線形な光学特性を有するプラスチックの製造が可能であるモノマーをもたらす重合可能な基と共有結合していてもよいことに留意されたい。具体的には、こうした化合物は、化合物(XI)および(X)として図2に示す。このような化合物では、唯一の拡張されたより多く共役した供与体が存在し、メチル(メタ)アクリレート部分が、拡張されたより多く共役した供与体または通常の供与体と結合している。
【0036】
本発明の化合物は、改良した2光子吸収を必要とする用途において利用し得る。このような材料の用途の一例は、データ記憶であり、本発明の化合物が、国際公開第01/73,769号および国際公開第03/070,689号に開示の3次元光データ記憶などのデータ記憶向けのより効率の良い発色団として働き得る。このような分子の蛍光は、その微小環境に強く依存する傾向があり、そのために粘度センサとしても利用し得ることにも留意されたい。
【0037】
本発明の一部の化合物は、図2(詳細経路は以下に示す)において概略を示すように調製し得る。化合物(III)および(IV)の合成は、国際公開第03/070,689号において知ることができる。簡単にいえば、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ)トランス−ジシアノスチルベン(III)のモノアルキル化は、(IV)の形成に導く。2つの化合物(III)および(IV)は、トリフルオロメタンスルホン酸エステル化することにより重要な中間体(V)および(VI)(実施例参照)になる。次いで、ビアリール部分は、Pd触媒でのクロスカップリング(Suzuki)法により形成する。一般構造式(XI)および(XII)は、R=OMeおよびR=NMeの場合について明示した。他の経路は、Suzuki条件下で化合物(V)を4−メトキシフェニルボロン酸と反応させることにより(VII)のアナログを得たことで立証した。提示した実施形態の構造は、NMRおよび質量分析法により立証した。本発明の化合物への他の合成経路は、図3に示す。このような経路は、類似の官能化発色団では一般的であるとみなすことができる。
【実施例】
【0038】
合成スキームおよび以下の実施例中で参照した化合物は、図2および3において知ることができる。
【0039】
実施例1:化合物(V)の合成
オーブンで乾燥し、アルゴンでフラッシュした500mLの反応容器に、化合物(III)(図2参照)10g、トリエチルアミン21.2gを加えた。該混合物を周囲温度で5分間攪拌し、暗赤色になり、次いで、0℃まで冷却した。無水トリフルオロメタンスルホン酸56.4gを30分間にわたり滴下し、次いで、反応温度を周囲温度まで上昇させ、黒褐色の混合物を24時間攪拌した。該混合物をろ過し、該固体を水で洗浄し、次いで乾燥して化合物(V)を収率78%で得た。
【0040】
実施例2:化合物(VI)の合成
凝縮器に連結した三つ口丸底フラスコに、化合物(IV)(10グラム、0.034モル)、ジクロロメタン(200mL)、トリエチルアミン(20mL)および無水トリフルオロメタンスルホン酸(20mL)を加えた。該混合物は、室温で24時間磁気攪拌し、TLC(DCM:PE(2:4))でモニターした。ジクロロメタン(300mL)を加え、該混合物は、希釈水酸化カリウム溶液(300mL)2回、次いで、希釈塩酸溶液(300mL)、最後に水(300mL)で洗浄した。有機相は、硫酸マグネシウム上で乾燥し、ろ過し、溶媒は蒸発させ、粗製材料14グラムを得た。該粗製材料は、シリカおよび溶離液としてDCM:PE(1:1)によりフラッシュクロマトグラフィーで精製し、1.7グラム(0.004モル、収率11.8%)を得た。得られた化合物(VI)は以下のH−NMR(CDCl)スペクトルを有した。
1H-NMR (CDCl3) δ (ppm) = 7.46 (m, 2H), 7.28 (m, 2H), 7.21 (m, 2H), 6.81 (m, 2H), 4.05 (q, 2H), 1.42 (t, 3H).
【0041】
実施例3:化合物(VII)の合成
化合物(V)(255mg)、DMF(3ml、乾燥)、Pd(PH(20mg)および4−ジメチルアミノフェニルボロン酸(111mg)をアルゴンでパージした乾燥反応容器に加えた。NaHCO(281mg)を加え、温度を80℃まで上昇させた。反応は、アルゴン下で攪拌しながら20時間継続した後、冷却し、次いでHCl(3mL)および水(10mL)で停止した。該混合物は、ろ過し、固体を得、該固体は、シリカゲル上でカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:ヘキサン1:1、次いで純クロロホルム)にかけて所望の生成物(55mg、収率20%)を得た。得られた化合物(VII)は以下のH−NMR(CDCl)スペクトルを有した。
1H-NMR (CDCl3) δ (ppm) = 3.09 (6H, s), 6.9 (2H, br) 7.53 (2H, m), 7.64 (2H, m), 7.77 (2H, m), 7.97 (4H, m).
【0042】
実施例4:化合物(VIII)の合成
化合物(VI)(1.73g)、DMF(20ml、乾燥)、Pd(PH(95mg)および4−ヒドロキシフェニルボロン酸(565mg)をアルゴンでパージした乾燥反応容器に加えた。トリエチルアミン(1.7mL)を加え、温度を80℃まで上昇させた。反応は、攪拌しながら20時間継続した後、DMFは、真空下で除去した。粗製生成物は、シリカゲル上でカラムクロマトグラフィー(クロロホルム、次いでクロロホルム中2%MeOH)にかけて所望の生成物(850mg)を得た。
【0043】
実施例5:化合物(IX)の合成
化合物(VII)(25mg)は、DMF(3ml)、MeOH(1.5ml)および3M NaOH(1.5mL)の混合物に溶解して赤色溶液を得た。該混合物は、加熱して、4時間還流し、次いで、冷却し、1M HCl(4.5mL)を加えた。ピリジン(1mL)を加え、次いで、溶媒は、真空下で除去した。残渣は、水で洗浄し、次いで、シリカゲル上でカラムクロマトグラフィー(クロロホルム、次いでクロロホルム中2%MeOHで溶離)にかけて脱保護した生成物を得た。その同定は、質量分析法により確認した。
脱保護した生成物約2mgは、MeCN約3mlに溶解し、炭酸カリウム(約100mg)および3−ブロモプロピルメタクリレート(約100mg)を加えた。該混合物は、周囲温度で20時間攪拌し、次いで、ろ過した。溶媒は、蒸発により除去し、次いで、残渣は、分離用HPLCにより精製してミリグラム未満の橙赤色生成物を得た。得られた化合物(IX)は以下の質量スペクトルを有した:M.S(EI+):530(MK、100%)、515(MNa、19%)、491(M、21%)。
【0044】
実施例6:化合物(X)の合成
化合物(VIII)(850mg)は、DMF(10mL)およびMeCN(20mL)の混合物に溶解し、次いで、炭酸カリウム(1g)および3−ブロモプロピルメタクリレート(1g)を加えた。該反応物は、60℃で5時間加熱し、次いで、冷却し、ろ過し、該固体は、クロロホルムで洗浄した。合わせたろ液は、真空下で濃縮し、次いで、MeOH(30mL)を加え、該混合物は、フリーザ中に2時間置いた。該生成物は、ろ過により集めた(555mg)。得られた化合物(X)は以下のH−NMR(CDCl)スペクトルを有した。
1H-NMR (CDCl3) δ (ppm) = 7.90 (m, 4H), 7.13 (m, 2H), 7.62 (m, 2H), 7.05 (m, 4H), 6.17 (m, H), 5.62 (m, H), 4.42 (t, 2H), 4.16 (m, 4H), 2.25 (tt, 2H), 2.00 (s, 3H), 1.50 (t, 3H).
【0045】
実施例7:(XI)の合成
A.前駆体(4’−メトキシ−ビフェニル−4−イル)−アセトニトリルの調製
4−ブロモフェニルアセトニトリル(2.35g、12.0mmol)、4−メトキシフェニルボロン酸(2.00g,13.2mmol、1.1当量)、KPO(5.08g、23.9mmol、2当量)をDMF(33cc)中でAr雰囲気流下で95℃まで加熱した。20分間で残存水を除去した後、Pd(PPh(0.27g、2%当量)を加え、反応混合物を3.5時間攪拌した。室温まで冷却し、ろ過した。ろ液にクロロホルム(100cc)を加え、水(5×100cc)で洗浄し、乾燥し(MgSO)、ろ過し、蒸発させることにより2.88gの固体生成物(HPLCによる純度85%)を得た。ヘキサン:クロロホルム:2−プロパノール(205:11:9cc)から再結晶した後、明るい淡黄色の粉末0.74g(HPLCによる純度99%)を収率28%で得た。
M.S(EI+):223(M、100%)、208([M−Me]、26%)、180(MeO−Ph−Ph−H、22%)。
【0046】
B.前躯体をカップリングして2,3−ビス−(4’−メトキシ−ビフェニル−4−イル)−ブト−2−エンジニトリルを得る。
(4’−メトキシ−ビフェニル−4−イル)アセトニトリル(0.74g、3.3mmol)およびヨウ素(0.925g、1.1当量)をMTBE(8.4cc)中に部分的に溶解した混合物を、Ar雰囲気下−20℃で3分間攪拌した。ナトリウムメトキシド(25%メタノール溶液、1.7cc、2.2当量)を30分かけて滴下した。橙褐色の反応混合物を30分以上かけて室温に到達させ、さらに30分間攪拌した。反応混合物をろ過し、該固体をMTBEで完全に洗浄した。該固体を0.1Mチオ硫酸ナトリウム溶液に移し、攪拌し、再ろ過し、多量の水で洗浄した。全量で0.53gの2,3−ビス−(4’−メトキシ−ビフェニル−4−イル)−ブト−2−エンジニトリルを、純度約90%(主な不純物は、出発物質)、収率33%で得た。熱P.E.および熱MeOHで処理した後に十分な純度を得ることができる。
M.S(EI+):442(M、100%)、223(MeO−Ph−Ph−CHCN、12%)。
【0047】
実施例8:化合物(XII)(R=OMe)の合成
凝縮器に連結した、アルゴン雰囲気下にある100mlの十分乾燥した三つ口丸底フラスコに、新鮮な蒸留DMF10mLを加えた。次いで、化合物(VI)(0.57g、1.3mmol)、4−アニシルボロン酸(0.21g、1.38mmol)、三塩基性リン酸カリウム(0.42g、2mmol)およびテトラキス−(トリフェニルホスフィン)−パラジウム(0)(0.023g、0.02mmol)を加えた。該混合物を攪拌しながらアルゴンでフラッシュした。該反応混合物を110℃で20時間加熱した。TLC試験により出発材料が残っていることが分かったので、追加の4−アニシルボロン酸(0.1g、0.66mmol)を加え、該混合物を110℃でさらに4時間加熱した。溶媒を真空下で除去し、クロロホルム(10ml)を加えた。有機溶液を希釈HCl(10ml)で2回洗浄し、次いで、硫酸マグネシウム上で乾燥した。粗製材料(0.7g)をシリカおよび溶離液としてDCM:PE(1:1)によるフラッシュクロマトグラフィーにより精製することにより120mg(0.31mmol、収率24.3%)を得た。得られた化合物(XII)は以下のH−NMR(CDCl)スペクトルを有した。
1H-NMR (CDCl3) δ (ppm) = 7.88 (m, 2H), 7.84 (m, 2H), 7.70 (m, 2H), 7.59 (m, 2H), 7.02 (m, 4H), 4.13 (q, 2H), 3.87 (s, 3H), 1.47 (t, 3H).
【0048】
実施例9:(XII)(R=NMe)の合成
凝縮器に連結した、アルゴン雰囲気下にある50mlの十分乾燥した三つ口丸底フラスコに、新鮮な蒸留DMF10mLを加えた。次いで、化合物(VI)(0.5g、1.18mmol)、4−ジメチルアミノフェニルボロン酸(0.234g、1.42mmol)、三塩基性リン酸カリウム(0.5g、2.35mmol)およびテトラキス−(トリフェニルホスフィン)−パラジウム(0)(0.027g、0.023mmol)を加えた。該混合物を攪拌しながらアルゴンでフラッシュした。該反応混合物を115℃で24時間加熱した。溶媒を真空下で除去し、クロロホルム(10ml)を加えた。有機溶液を水(10ml)で2回洗浄し、次いで、硫酸マグネシウム上で乾燥した。粗製材料(0.6g)をシリカおよび溶離液としてクロロホルム:アセトン:水酸化アンモニウム(25:1:1)によるフラッシュクロマトグラフィーにより精製することにより40mg(0.1mmol、収率8.6%)を得た。得られた化合物(XII)は以下のH−NMR(CDCl)スペクトルを有した。
1H-NMR (CDCl3) δ (ppm) = 7.91 (m, 2H), 7.87 (m, 2H), 7.74 (m, 2H), 7.63 (m, 2H), 7.05 (m, 2H), 6.9 (br m, 2H), 4.16 (q, 2H), 3.09 (s, 6H), 1.50 (t, 3H).
【0049】
実施例10:(XII)(R=CHO)の合成
凝縮器に連結した、アルゴン雰囲気下にある100mlの十分乾燥した三つ口丸底フラスコに、新鮮な蒸留DMF10mLを加えた。次いで、化合物(VI)(0.5g、1.18mmol)、4−ホルミルフェニルボロン酸(0.27g、1.8mmol)、三塩基性リン酸カリウム(0.48g、2.26mmol)およびテトラキス−(トリフェニルホスフィン)−パラジウム(0)(0.027g、0.0235mmol)を加えた。該混合物を攪拌しながらアルゴンでフラッシュした。該赤色反応混合物を100℃で20時間加熱した。溶媒を真空下で除去し、クロロホルム(10ml)を加えた。有機溶液を希釈HCl(10ml)で2回洗浄し、次いで、硫酸マグネシウム上で乾燥した。粗製材料をシリカおよび溶離液としてのDCM:PE(1:1)によるフラッシュクロマトグラフィーにより精製することにより200mg(0.53mmol、収率44.8%)を得た。得られた化合物(XII)は以下のH−NMR(CDCl)スペクトルを有した。
1H-NMR (CDCl3) δ (ppm) = 10.09 (s, H), 8.01 (m, 2H), 7.93 (m, 2H), 7.87 (m, 2H), 7.81 (m, 2H), 7.79 (m, 2H), 7.03 (m, 2H), 4.13 (q, 2H), 1.47 (t, 3H).
【0050】
実施例11:(XIII)の合成
2−ブロモ−7−アセチル−9,9−ジメチル−フルオレン(9g、28mmol)のエタノールを含まないクロロホルム(250mL)攪拌溶液に、固体70%MCPBA(1.3当量、33mmol、8.0g)を一部ずつ加えた(0℃でN下)。該混合物を徐々に周囲温度まで温め、暗所で3日間攪拌した。反応の完了は、HPLCにより確認した。10%NaHCO水溶液(150mL)を加え、該混合物を40分間激しく攪拌した。相を分離し、水層をクロロホルムで再度抽出し、合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、MgSO上で乾燥し、蒸発させた。粗製生成物(9.1g)を次工程向けとし、さらなる精製は行わなかった。得られた生成物は以下のH−NMR(CDCl)スペクトルを有した。
1H-NMR (CDCl3) δ (ppm) = 7.66 (d, 1H, J = 7.5 Hz), 7.55 (d, 1H, J = 2.0 Hz), 7.53 (d, 1H, J = 7.5 Hz), 7.46 (dd, 1H, J1 = 7.5 Hz, J2 = 2.0 Hz), 7.15 (d, 1H, J = 2.5 Hz), 7.07 (dd, 1H, J1= 7.5 Hz, J2 = 2.5 Hz), 2.33 (s, 3H), 1.47 (s, 6H).; 13C-NMR (CDCl3) δ (ppm) = 170.3, 156.4, 155.4, 151.2, 138.1, 136.5, 130.9, 126.8, 122.0, 121.7, 121.4, 121.3, 116.9, 47.9, 27.6, 21.9
【0051】
粗製の2−アセトキシ−7−ブロモ−9,9−ジメチル−フルオレン(9.1g、約27mmol)をEtOH(120mL)に溶解し、固体NaOH(約3当量、3.3g)を分割して使用して処理した。加水分解反応は、周囲温度で2時間以内で完了した(TLC、ヘキサン/EtOAc 4:1およびHPLCによるモニタリング)。MeI(約2.5当量、9.6g)を加え、該混合物を周囲温度で終夜攪拌した。さらなるMeIおよび/またはNaOHを加えることによりアルキル化を完成させた(各材料0.5当量)。フェノールの残留が検出できなくなったら(TLCおよびHPLCモニタリング)、該反応混合物を冷水中にゆっくりと注ぎ、希釈HClで中和した。該混合物をエーテルで3回抽出し、合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、MgSO上で乾燥し、蒸発させた。該純生成物をクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAC 10:1)で単離した。収量は8.0g(26.4mmol、2段精製後92%)であった。得られた化合物(XIII)は以下のH−NMR(CDCl)スペクトルを有した。
1H-NMR (CDCl3) δ (ppm) = 7.59 (d, 1H, J = 8.5 Hz), 7.53 (d, 1H, J = 1.5 Hz), 7.50 (d, 1H, J = 8.0 Hz), 7.46 (dd, 1H, J1 = 8.5 Hz, J2 = 1.5 Hz), 6.96 (d, 1H, J = 2.5 Hz), 6.89 (dd, 1H, J1= 8.0 Hz, J2 = 2.5 Hz), 3.88 (s, 3H), 1.47 (s, 6H).
【0052】
実施例12:(XIV)の合成
2−メトキシ−7−ブロモ−9,9−ジメチル−フルオレン(化合物(XIII))(8.0g、26.4mmol)の乾燥攪拌THF(150mL)溶液に、N下、−78℃でn−BuLi(1.6Mヘキサン溶液、1当量)を20分間で滴下した。該混合物のメタル化反応の完了をHPLCにより確認しながら、30分間攪拌した。THF(6mL)を混合した乾燥DMF(1.4当量、37mmol、2.7g)を滴下し、該混合物を−78℃で1時間攪拌し、次いで、周囲温度までゆっくりと温め、さらに1時間攪拌した。反応が完了すると(HPLCモニタリング)、最初に形成したアニオンの赤色が消失した。該反応混合物を0℃まで冷却し、3M HClで反応を停止し、20分間攪拌し、水で希釈し、エーテルで2回抽出した。合わせた有機抽出物を10%NaHCO、ブラインで洗浄し、減圧下で蒸発させた。粗製のアルデヒドをEtOH(100mL)に溶解し、N下、固体NaBH(約2当量、50mmol、1.9g)で一部ずつ(発泡!)処理した。該反応混合物を周囲温度で2時間攪拌し、TLC(ヘキサン/EtOAc 4:1)またはHPLCでモニターした。反応が完了すると、大部分のEtOHは、蒸発し(Rotavapor、浴温<40℃)、次いで、該混合物を10%NaHCO(150mL)にゆっくりと注ぎ、20分間激しく攪拌した。該混合物を水で希釈し、エーテル(3×80ml)で3回抽出し、合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、MgSO上で乾燥し、蒸発した。粗製生成物をフラッシュクロマトグラフィー(所望の生成物をヘキサン/EtOAC 20:1、次いで10:1、最後に4:1で溶離)により精製した。純粋の7−(2−メトキシ−9,9−ジメチル)−フルオレニルカルビノールの収量は4.5gであった。得られた化合物(XIV)は以下のH−NMR(CDCl)スペクトルを有した。
1H-NMR (CDCl3) δ (ppm) = 7.61 (d, 1H, J = 8.0 Hz), 7.60 (d, 1H, J = 8.0 Hz), 7.41 (d, 1H, J = 1.0 Hz), 7.29 (dd, 1H, J1 = 8.0 Hz, J2 = 1.0 Hz), 6.97 (d, 1H, J = 2.5 Hz), 6.88 (dd, 1H, J1= 8.0 Hz, J2 = 2.5 Hz), 4.74 (d, 2H, J = 3.5 Hz), 3.87 (s, 3H), 1.83 (br t, 1 H, J = 3.5 Hz), 1.47 (s, 6H).
【0053】
実施例13:(XV)の合成
7−(2−メトキシ−9,9−ジメチル)−フルオレニルカルビノール(化合物(XIV))(4.5g、17.7mmol)の激しく攪拌したEtO(20mL)溶液に、濃HCl(9ml、約5当量)を0℃で滴下した。該混合物を周囲温度までゆっくりと温め、3時間攪拌した。相を分離し、水層をエーテルで2回洗浄し、合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、減圧下で蒸発させた。粗製の準固体塩化物(4.1g、約15mmol、85%)をDMF(40mL)に溶解し、固体NaCN(1.5g、30mmol、約2当量)を3〜4分割で加えた。該混合物を周囲温度で4時間攪拌し、TLC(ヘキサン/EtOAc 4:1)でモニターした。反応が完了したら、該反応混合物を水で希釈し、エーテル(3×50mL)で抽出した。今度は、合わせた有機抽出物を水で洗浄し、MgSO上で乾燥し、蒸発させた。結晶性残渣をMTBEと共に粉砕し、所望の純ニトリルを白色粉末として得た。得られた化合物(XV)は以下のH−NMR(CDCl)スペクトルを有した。
1H-NMR (CDCl3) δ (ppm) = 7.62 (d, 1H, J = 8.0 Hz), 7.61 (d, 1H, J = 8.0 Hz), 7.35 (d, 1H, J = 1.0 Hz), 7.24 (dd, 1H, J1 = 8.0 Hz, J2 = 1.0 Hz), 6.97 (d, 1H, J = 2.5 Hz)
【0054】
実施例14:(XVI)の合成
NaOMeの25%MeOH溶液(2.4当量、2.46mmol、0.6ml)を、7−(2−メトキシ−9,9−ジメチル)フルオレニル−アセトニトリル(化合物(XV))(270mg、1.03mmol)およびヨウ素(1.2当量、1.23mmol、320mg)の攪拌乾燥冷(−25℃)THF(20ml)溶液に非常にゆっくりと(1%/分)加えた。反応終了時に、所望のスチルベン誘導体の内、2つの異性体のみがTLC(ヘキサン/EtOAc 4:1、R=0.55および0.50)で検出できた。2つの異性体の動力学的な比は、約1:3(未較正のHPLCピーク面積比)であるが、アリコート溶液を光に曝露させた置いた場合、約3:1の平衡比は速やかに実現する(ACNに溶解したHPLC試料で約30分以内)。
該反応混合物を冷水して反応停止させ、ジクロロメタン(3×30mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をNa希釈水溶液、ブラインで洗浄し、MgSO上で乾燥し、蒸発させた。粗製生成物の収率は、82%(220mg)であり、これは、HPLCおよびNMRにより純粋であることが判明した。分析の目的で、EtOと共に粉砕した後、第1の異性体(TLC上で極性がより小さい)の結晶をろ過することにより、該異性体を分離し、ろ液の蒸発残渣のクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc 10:1)によりより可溶性で準固体の第2の異性体を単離した。平衡混合物の形成を避けるために、全ての操作(rotavapor上での分別濃縮、NMRおよびHPLCの試料調製など)は、暗所で行った。得られた化合物(XVI)は以下のH−NMR(CDCl)スペクトルを有した。
第1の異性体:1H-NMR (CDCl3) δ (ppm) = 7.91 (d, 2H, J = 2.0 Hz), 7.83 (dd, 2H, J1 = 8.0 Hz, J2 = 2.0 Hz), 7.75 (d, 2H, J = 8.0 Hz), 7.69 (d, 2H, J = 8.5 Hz), 7.00 (d, 2H, J = 2.0 Hz), 6.93 (dd, 2H, J1 = 8.5 Hz, J2 = 2.0 Hz), 3.91 (s, 6H), 1.54 (s, 12H); 13C-NMR (CDCl3) δ (ppm) = 161.5, 157.3, 154.6, 143.6, 131.4, 130.6, 129.0, 124.9, 123.7, 122.6, 120.3, 118.3, 113.9, 109.2, 56.3, 47.9, 27.7
第2の異性体:1H-NMR (CDCl3) δ (ppm) = 7.59 (d, 2H, J = 8.5 Hz), 7.52 (d, 2H, J = 8.0Hz), 7.34 (dd, 2H, J1= 8.0Hz, J2 = 2.0Hz), 7.33 (d, 2H, J = 2.0 Hz), 6.91 (d, 2H, J = 2.5 Hz), 6.89 (dd, 2H, J1 = 8.5 Hz, J2 = 2.5 Hz), 3.87 (s, 6H), 1.31 (s, 12H); 13C-NMR (CDCl3) δ (ppm) = 161.5, 157.1, 154.6, 131.1, 129.6, 129.2, 128.0, 124.3, 122.4, 120.3, 118.6, 113.9, 109.2, 108.3, 56.3, 47.6, 27.6
【0055】
実施例15:(XVII)の合成
4−ブロモアセトニトリル(2.35g、12.0mmol)、4−メトキシフェニルボロン酸(2.00、13.2mmol、1.1当量)、KPO(5.08g、23.9mmol、2当量)をDMF(33cc)中Ar雰囲気流下で95℃まで加熱した。20分間で水の残渣を除去した後、Pd(PPh(0.27g、2%当量)を加え、反応混合物を3.5時間攪拌した。室温まで冷却し、ろ過した。ろ液にクロロホルム(100cc)を加え、水(5×100cc)で洗浄し、乾燥し(MgSO)、ろ過し、蒸発させることにより固体生成物2.88g(HPLCにより純度85%)を得た。ヘキサン:クロロホルム:2−プロパノール(205:11:9cc)からの再結晶させた後、明るい淡黄色の粉末(HPLCにより純度99%)0.74gを収率28%で得た。得られた化合物(XVII)は以下の質量スペクトルを有した。
M.S(EI+):223(M,100%)、208([M−Me]、26%)、180(MeO−Ph−Ph−H、22%)。
【0056】
実施例16:(XVIII)の合成
MTBE(8.4cc)中に部分的に溶解した(4’−メトキシ−ビフェニル−4−イル)−アセトニトリル(化合物(XVII))(0.74g、3.3mmol)およびヨウ素(0.925g、1.1当量)の混合物をAr雰囲気下−20℃で3分間攪拌した。ナトリウムメトキシド(25%メタノール溶液、1.7cc、2.2当量)を30分かけて滴下した。橙褐色の反応混合物を30分かけて室温に到達させ、さらに30分間攪拌した。反応混合物をろ過し、該固体をMTBEで完全に洗浄した。該固体を0.1Mチオ硫酸ナトリウム溶液に移し、攪拌し、再びろ過し、多量の水で洗浄した。全量で0.53gの2,3−ビス−(4’−メトキシ−ビフェニル−4−イル)−ブト−2−エンジニトリルを純度約90%(主な不純物は、出発物質である)、収率33%で得た。熱P.E.および熱MeOHによる処理後、十分な純度を得ることができる。得られた化合物(XVIII)は以下の質量スペクトルを有した。
M.S(EI+):442(M、100%)、223(MeO−Ph−Ph−CHCN、12%)。
【0057】
実施例17:分析
R=OMeおよびNMeである式XIIの化合物(実施例8を参照)の非線形フォトクロミズムを試験した。レーザー光の多様な波長で溶液を照射し、トランス−シス異性体比を追跡した。スチルベンおよび(III)のジメチルエーテルについて同一の実験を実施して比較した。結果を図4に示す。共役系の長い本明細書記載の発色団が共役ブリッジの短い対照発色団より有意に優れている(より大きな異性化速度)ことは明らかである。
【0058】
実施例18:異性化実験
4または6個の石英製キュベット(内寸法10×10mm、栓付)をトラフ内に一列に固定し、2個のキュベットを約1mm離した。キュベット間の隙間を鉱油で満たして、その隙間の充填時のキュベット間の内部反射を最小化した。レーザービームが第1のキュベットの中心に入り、最後のキュベットの中心から出るように、OPO系を出る該レーザービームの経路内にキュベットの列を並べた。
OPOレーザー系は、Nd:YAG(Continuum)ポンプOPO(Panther)に基づき、これにより10Hzにおける16nsパルス列が生成した。OPO系を出るレーザービームから干渉フィルタにより355nmおよび532nmの迷光をフィルタし、レンズおよび絞りを用いて平行化および形状形成を行うことにより直径約2mmのビームを生成した。該レーザーは、波長可変であり、その使用可能な範囲にわたり出力を大きく変更した。通常得られた出力は20mWであり、充填キュベット列を通過することにより、ビームは大きく減衰しないことが判明した。従って、各キュベットは、同一照射量を受光した。
被検化合物の溶液は、適切な溶媒中の濃度3mMで暗所の褐色バイアル中に調製した。可能であれば、純トランス異性体を用い、それがない場合は、最高のトランス:シス比を有する試料を用いた。以後、発色団溶液は全て、暗所において取り扱った。被検溶液10滴を各キュベットに加え、体積が3mLになるまで酢酸エチルを補給した。6個の列の中の最初と最後のキュベットは、両方が「eMMA」を含むことも多く、(a)異なる実験のノーマライゼーションのため、および(b)異なるキュベットが全て、同じ照射量を受光したことを立証するために用いた。キュベット中の試料と同一のものを調製し、キュベットの横に(ビームが通過しない場所)並べた。
【0059】
該レーザービームを約16時間点灯し、その間キュベット中の該溶液を照射し、大小の程度の差こそあれ2光子異性化を行わせた。実験の最後に、キュベット中の該溶液、およびそれに隣接して並べた同一試料を、50:50 MeOH:水で開始し、5分後に100%MeOHに達する溶離液の勾配を用い、C−18逆相カラムにおけるHPLC(高速液体クロマトグラフィー)によって試験した。このような勾配により、化合物のトランスおよびシス異性体の分別が可能になった。NMR分光分析法を用いることにより、各異性体に帰属するピークを検証した。クロマトグラムが各異性体への比を正しく反映することを目的として、2種の異性体が同じ吸収係数を有する波長においてUV検出器による検出を実施した。各発色団の吸光度スペクトルにおける、UV光を照射したときの等吸収点を知ることにより、この波長を見出した。各発色団のこの波長は、異なり、eMMAでは330nmである。HPLCクロマトグラムの結果から、異性体比における%変化を計算し、この値を結果の報告向けに用いた。
eMMAを参照とした実験に加えて、発色団の1つがスチルベンである実験を実施した。スチルベンの異性化の2光子断面積および量子収率はよく知られているので、この実験により準定量的な解析が可能になった。
実験結果の例として以下を挙げる:
【0060】
【表1】

【0061】
この実験では、(XII)の拡張共役系には発色団活性を増加させる傾向があることが明示されている。R=CHOの場合、例外が存在するが、これはCHO基が強い供与体でないためである。
【0062】
【表2】

【0063】
この場合も、より長い共役系およびより強い供与体を有する化合物は、良好な性能を示す。キュベット6は、より弱い供与体を有するeMMAアナログの例を示すが、予想通りそれは活性がより小さい材料である。
【0064】
【表3】

【0065】
キュベット列において異なる位置の同じ化合物では結果が類似していることは容易に理解できよう。より強い供与体(例えば、OMeではなくOH)は、より速やかな異性化をもたらすことも明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】スチルベンの全部分への連続電荷移動、またはスチルベンの酸化分解をもたらすイオンの喪失をもたらし得る置換スチルベンにおける共役経路を明示する図である。
【図2】本発明による式(1)の化合物の調製方法を例示する図である。
【図3】本発明の化合物を合成するいくつかの他の経路を例示する図である。
【図4】いくつかの式(1)の化合物の紫外スペクトルを比較し、式(1)の化合物における共役が増加した結果として1つの異性形態から他への相互変換の収率が高くなることを明示する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)の化合物:
【化1】

[式中、nは、独立に0、1または2であり;XおよびX、X、Xは、共役基であり、それぞれ独立に、(i)N、OまたはSから選択される1、2または3個のヘテロ原子を含み得る5または6員芳香族部分、および(ii)C2〜5アルケニレンもしくはC2〜5アルキニレン、または該鎖中にN、OまたはS原子を必要に応じて含み得るそれらのヘテロ原子鎖アナログから選択され;前記XおよびXの一方または両方は、フェニル環の3、4または5位に結合していてもよい、あるいは前記XおよびXの一方または両方は、3〜4または4〜5位においてフェニル環と縮合環を形成していてもよく;DおよびDは、C1〜4アルキル、−OC1〜4アルキル、−SC1〜4アルキルおよび−C1〜4OH、チオールおよびその塩、NR’R’’(R’およびR’’が、独立に、水素またはC1〜4アルキルである)、ビフェニル、およびヘテロ芳香族から独立に選択される電子供与体部分であり;Aは、ピリジニウム、アンモニウム塩、C2〜5アルケニルもしくはC2〜5アルキニル基、アゾベンゼン、C1〜4CN、ハライド、C1〜6COOHもしくはそのC1〜6エステル、またはC1〜4NO化合物から独立に選択される電子受容体部分である]。
【請求項2】
およびDが、NR’R’’であり、R’およびR’’は、独立に、水素またはC1〜4アルキル、C1〜4OH、−OC1〜4アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
およびX基が、それぞれ独立に、必要に応じて置換されているフェニル、ピリジン、ピロール、イミダゾール、トリアゾール、チオフェンまたはフランである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
Aが、独立にシアノまたはニトロである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
およびXが、それぞれ独立に、C2〜5アルキニレンまたはC2〜5アルケニレン、あるいは該鎖中にN、OまたはS原子を必要に応じて含み得るそれらのヘテロ原子鎖アナログである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
式(2):
【化2】

を有し、式中、n、D、D、X、XおよびAが、上記で定義した通りである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
およびXが、独立に、N、OまたはSから選択される1、2または3個のヘテロ原子を含み得る5または6員芳香族部分から選択される共役基であり;前記部分が、フェニル環と縮合または結合していてもよく;DおよびDが、独立に、NR’R’’であり、R’およびR’’は、独立に、水素またはC1〜4アルキル、C1〜4OHであり;Aが、独立に、シアノまたはニトロである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
式(3):
【化3】

を有し、式中、n、D、D、X、XおよびAが、上記で定義した通りである、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
およびDが、独立に、NR’R’’であり、R’およびR’’は、独立に、水素またはC1〜4アルキル、C1〜4OHであり;Aが、独立に、シアノまたはニトロであり;X、Xが、C2〜5アルケニレンまたはC2〜5アルキニレン、あるいは該鎖中にN、OまたはS原子を必要に応じて含み得るそれらのヘテロ原子鎖アナログであり;n=1である、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
2−(4’−メトキシ−ビフェニル−4−イル)−3−(4−メトキシメチル−フェニル)−ブト−2−エンジニトリル
2−(4’−ホルミル−ビフェニル−4−イル)−3−(4−メトキシメチル−フェニル)−ブト−2−エンジニトリル
2−(4’−ジメチルアミノ−ビフェニル−4−イル)−3−(4−メトキシメチル−フェニル)−ブト−2−エンジニトリル
2,3−ビス−(4’−メトキシ−ビフェニル−4−イル)−ブト−2−エンジニトリル
2,3−ビス−(4’−メチル−ビフェニル−4−イル)−ブト−2−エンジニトリル
から選択される化合物。
【請求項11】
式(XI)および式(XII)の化合物の調製方法。
【化4】

【請求項12】
式(XVIII)の化合物の調製方法。
【化5】

【請求項13】
式(XI)の化合物の調製方法。
【化6】

【請求項14】
非線形光学において使用するための、請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
染料、参照標準、発色団光学媒体、光リミッタ、微細加工システムにおけるコンポーネント、ナノテクノロジーデバイス、または標的化医療用途として使用するための、請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
3次元光メモリの発色団光学媒体として使用するための、請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物を含むデバイス。
【請求項18】
発色団光学媒体、光リミッタ、微細加工システムにおけるコンポーネント、ナノテクノロジーデバイスから選択される、請求項16に記載のデバイス。
【請求項19】
請求項1〜9、および13のいずれか一項に記載の化合物を含む製剤。
【請求項20】
染料、参照標準または医薬組成物から選択される、請求項19に記載の製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−526832(P2008−526832A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−550019(P2007−550019)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際出願番号】PCT/IL2006/000052
【国際公開番号】WO2006/075328
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(507234003)メンパイル インク. (4)
【Fターム(参考)】