説明

非腐敗性スラッジとエネルギーを生成する方法およびプラント

本発明は、非腐敗性スラッジおよびエネルギーを生成する方法に関する。この方法は、(i)スラッジの一次消化によって、消化スラッジを生じるステップと、(ii)ステップ(i)において生じた消化スラッジの第1の固液分離によって、少なくとも部分的に脱水された消化スラッジおよび第1の廃液を生じるステップと、(iii)ステップ(ii)において生じた少なくとも部分的に脱水された消化スラッジの熱加水分解によって、少なくとも部分的に脱水および加水分解された消化スラッジを生じるステップと、(iv)ステップ(iii)において生じた少なくとも部分的に脱水および加水分解された消化スラッジを消化するステップを含む。この方法は、前記一次消化ステップおよび前記消化ステップで生成したバイオガスを回収するステップと、このバイオガスからエネルギーを生成するステップであって、前記熱加水分解を実施するために必要なエネルギーを生成するサブステップと、余剰エネルギーを生成するサブステップを含むステップとを更に含む。バイオガスは、その全てが電気を生成するために用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、有機廃棄物、特に、水処理中に生じる有機廃棄物の処理に関する技術分野である。
【0002】
さらに詳細には、本発明は、特に、エネルギー、例えば、電気を生成することを目的として、都市用水および工業用水の処理によって生じるスラッジを処理するプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
都市汚水または工業汚水は、可溶性有機汚染物質および粒状有機汚染物質をある割合で含んでいる。
【0004】
汚染物質の粒状部分は、単純な上澄み流出(デカンテーション)によって部分的に除去されることが可能である。この水の上澄み流出に伴って、有機廃棄物を構成する粒子と水との混合物からなる「一次スラッジ」として知られているスラッジが生じることになる
【0005】
汚染物質の可溶性有機部分は、その少なくとも大部分が生物学的処理プロセスを用いることによって処理されることが可能である。
【0006】
水の生物学的処理は、被処理水を微生物に接触させることからなっており、この処理において、微生物は、その成長を確保するために、この水に溶解している有機汚染物質を消費する。
【0007】
水の生物学的処理に伴って、有機廃棄物を構成する「生物学的スラッジ」または「二次スラッジ」として知られているスラッジが生じることになる。
【0008】
一次スラッジと二次スラッジとの混合物は、「混合スラッジ」を構成する。これらの混合スラッジを分解し、非腐敗性でかつ無害なものとすることを目的とし、この混合スラッジを処理するために、種々の技術が提案されている。
【0009】
有機廃棄物の消化またはメタン生成は、有機廃棄物を嫌気性発酵させることによってこの有機廃棄物を生物学的に分解する自然作用である。
【0010】
消化は、
・一種または複数種のエネルギーに変換可能なガス(バイオガス)と、
・例えば、施肥材として使用可能な消化残渣(有機化合物の消化の残留物)と、
・比較的限定的な量の溶解した低生分解性または非生分解性の化合物と
の複合生成物をもたらすという点において、特に有効である。
【0011】
しかし、このようにして得られた消化残渣は、難生分解成分、すなわち、生物学的に分解し難い成分を含んでいる。
【0012】
この欠点を解消するために、消化を実施する前にスラッジの熱加水分解を実施する技術が開発されてきている。
【0013】
この技術は、熱加水分解がスラッジの難発酵性(すなわち、発酵し難い)成分を少なくとも大幅に分解することができるので、特に有利である。
【0014】
[背景技術の欠点]
しかし、熱加水分解は、スラッジの難発酵成分を排除する上でかなりの改良をもたらしているが、その見返りとして、旧来の消化におけるよりも多くの(高COD、すなわち、高化学的酸素要求量を有する)低分解性または非分解性の可溶性化合物の生成を伴うことになる。これは、効率的な消化を確実なものとするために、消化槽内に入るスラッジの量が制限されることを意味している。
【0015】
一方、効率的な熱加水分解を得るのに必要な条件として、高エネルギー消費が必要になる。
【0016】
このエネルギー消費に関して、加水分解に必要な蒸気を生成するために、消化によってもたらされるバイオガスの半分が旧来のボイラーに供給されるようになっている。バイオガスの残りは、電気を生成するために、交流発電機に接続された熱電併給モータに供給されるようになっている。バイオガスの残りは、例えば、建物を直接暖房するために用いられることもある。
【0017】
従って、この技術は、確かに比較的低濃度の難発酵性成分を含む消化残渣の生成を可能にするが、以下の欠点、すなわち、
・低生分解性または非生分解性の可溶性化合物を生じさせ、
・効率的な消化を確実なものとするために、消化槽の大型化を必要とし、および
・加水分解に必要な蒸気を直接生成するために、バイオガスの大半を消費する必要があり、その結果、スラッジ処理プロセス自体を実施する目的以外の目的に使用可能な電気、熱、などの形態にある余剰エネルギーをわずかな量しか生成することができない
という欠点をもたらすことになる。
[発明が解決しようとする課題]
【0018】
特に、従来技術のこれらの欠点を解消することが、本発明の目的である。
【0019】
さらに具体的には、少なくとも一実施形態において、低エネルギー消費しか必要としないこの種の技術を提供することが、本発明の目的である。
【0020】
特に、少なくとも一実施形態において、本発明は、加水分解の条件を達成するのに必要なバイオガスの消費を制限し、スラッジ処理プロセスを実施する目的以外の目的に使用可能な余剰エネルギーを生成するのに用いられるバイオガスの割合を高めるために実施されるこの種の技術を提供することを目的としている。
【0021】
少なくとも一実施形態において、少なくともかなりの量の難発酵成分を排除することができる、水処理から生じるスラッジを処理するための技術を提供することが、本発明の他の目的である。
【0022】
特に、本発明の少なくとも一実施形態において、従来技術と比較して低減された難発酵性残滓成分を含む廃棄物を生じさせることができるように、この種の技術を実施することが、本発明の目的である。
【0023】
また、本発明の少なくとも一実施形態において、本発明は、低生分解性または非生分解性の可溶性化合物の生成を制限することを目的としている。
【0024】
本発明の少なくとも一実施形態において、多量のスラッジを処理するためのこの種の技術を提供することが、本発明のさらに他の目的である。
【0025】
また、本発明の少なくとも一実施形態において、本発明は、確実かつ容易に実施することができ、かつ比較的経済的であるこの種の技術を提供することを目的としている。
【発明の概要】
【0026】
これらの目的および以下に述べる他の目的は、実質的に非腐敗性のスラッジおよびエネルギーを生成する方法であって、
(i)スラッジの一次消化によって、消化スラッジを得るステップと、
(ii)前記ステップ(i)において得られた前記消化スラッジに対して第1の固液分離を行うことによって、少なくとも部分的に脱水された消化スラッジおよび第1の廃液を得るステップと、
(iii)前記ステップ(ii)において得られた前記少なくとも部分的に脱水された消化スラッジを熱加水分解することによって、少なくとも部分的に脱水され及び加水分解された消化スラッジを得るステップと、
(iv)前記ステップ(iii)において得られた前記少なくとも部分的に脱水され及び加水分解された消化スラッジを消化するステップと
を含むとともに、更に、
前記一次消化ステップおよび前記消化ステップにおいて生成したバイオガスを回収するステップと、
前記バイオガスからエネルギーを生成するステップであって、前記熱加水分解を実施するために必要なエネルギーを生成するサブステップと、余剰エネルギーを生成するサブステップとを含むステップと
を含み、前記バイオガスの全てが電気を生成するために用いられる方法によって、達成される。
【0027】
本発明において理解されるように、「熱加水分解」という用語は、明確に非生物学的である加水分解の手法を意味すると理解されるべきであることに留意されたい。
【0028】
従って、本発明は、スラッジの第1の消化、スラッジの(非生物学的な)熱加水分解、およびスラッジの第2の消化を連続的に組み合わせて実施する独自の方法に基づいている。
【0029】
第1の消化(または一次消化)は、スラッジの易発酵成分の少なくとも大半を分解し、難分解性消化残渣を生じさせるのに用いられる。
【0030】
分離ステップを実施することによって、消化中に生じた低生分解性または非生分解性の有機物質を含む廃液を排出することができる。従って、加水分解ステップの入口における低生分解性または非生分解性の有機物質の量が低下する。これによって、最終的に、加水分解中に生じる低生分解性または非生分解性の有機物質の量が減少する。加えて、これによって、下流に配置される機器の大きさを縮小することができ、熱加水分解を行うのに必要なエネルギー消費を少なくすることができる。
【0031】
熱加水分解は、スラッジの難発酵成分のみを処理するために行われる。その結果、本発明に係る熱加水分解を実施するのに必要なエネルギーは、従来技術における熱加水分解に必要なエネルギーよりも少なくなる。実際、従来技術では、熱加水分解は、全てのスラッジ、すなわち、その発酵性部分および難発酵性部分の両方を処理するために行われている。これは、大きなエネルギー入力を必要とする。
【0032】
熱加水分解によって、難発酵性消化残渣を加水分解された易発酵性消化残渣に分解することができる。
【0033】
次いで、これらの発酵性スラッジは、第2の消化中に消化され、これによって、その少なくとも大半が発酵性成分を含んでいない消化残渣を生じることになるが、この消化残渣は、難分解性(refractory)または難反応性(hard)成分とも呼ばれる極めて発酵し難い部分を含んでいる。
【0034】
さらに、熱加水分解は、スラッジの難発酵性成分に対してのみ行われるので、その実施によって、従来技術におけるよりも少量の低生分解性または非生分解性の可溶性化合物しか生じさせないことになる。
【0035】
本発明に係るプロセスは、多量のバイオガスを生成することができる。加えて、加水分解がスラッジの難発酵性部分に対してのみ行われているので、加水分解を行うのに必要なエネルギーが比較的少ない。従って、本発明の技術を用いることによって、第1に、特に加水分解の圧力および温度の条件を達成するのに必要なエネルギー、第2に、スラッジを処理するプロセス自体を実施する目的以外の目的に使用可能な余剰エネルギーのかなりの部分(例えば、プラントなどに電力を供給されるために電力会社に転売される電気、建物を暖房する熱(加熱流体(液体または気体)など)を生成することができる。
【0036】
1つの有利な特徴によれば、本発明に係るプロセスは、前記バイオガスを再変換するステップを含んでいる。前記再変換ステップは、前記加水分解ステップを実施するのに必要なエネルギーを生成するために、および余剰エネルギーを生成するために、熱電併給システムにバイオガスを送給するステップを含んでいる。
【0037】
従って、熱電併給システムにバイオガスを送給することによって、第1に、特に加水分解の圧力および温度の条件を達成するのに必要なエネルギー、第2に、スラッジ処理プロセス自体を実施する目的以外の目的に使用可能な余剰エネルギーの大部分(例えば、プラントなどに電力を供給するために電力会社に転売される電気、建物を暖房する熱(加熱流体(液体または気体)など)を生成することができる。
【0038】
他の有利な特徴によれば、前記再変換ステップは、電気生成手段に連結されたモータにバイオガスを送給するためのステップと、前記加水分解ステップの温度および圧力の条件を得るために、前記モータによって放出された熱を再変換するステップと、を含んでいる。
【0039】
消化中に生成されたバイオガスの全体が、交流発電機のような電気生成手段に接続された熱電併給モータに送給されるようになっている。モータによって放出された熱の回収(例えば、排気ガスおよび/または油および/または冷却流体)からの熱の回収)によって、熱加水分解を行うのに必要な熱流体の全てを生成することができる。従って、本発明によれば、(バイオガスの少なくとも50%が熱電併給モータの作動によって電気を生成するのに用いられ、残りのガスの大部分が加水分解を行うのに必要な圧力および温度の条件を得るために用いられる熱流体を生成するために旧来のボイラーに送給される)従来技術と違って、バイオガスの全体が電気を生成するのに用いられることになる。
【0040】
好ましくは、本発明に係るプロセスは、前記ステップ(iv)において得られたスラッジの第2の固液分離によって、第2の廃液および処理スラッジを得るためのステップを含んでいる。
【0041】
この分離ステップを実施することによって、消化中に生じた低生分解性または非生分解性の有機物質を含む廃液と、易発酵性有機物質を含んでいない脱水された消化スラッジと、を排出することができる。
【0042】
有利には、前記熱加水分解は、20〜120分間、1〜20バールの圧力および50℃〜200℃、好ましくは、120℃〜180℃の温度で行われる。
【0043】
これらの範囲内において選択された熱加水分解の条件によって、スラッジの難発酵性部分を効率的に低減させることができる。
【0044】
1つの有益な変更形態によれば、前記熱加水分解は、30分間、飽和蒸気圧と等しい圧力および165℃の温度で行われる。
【0045】
熱加水分解のこれらの特定の条件によって、スラッジの難発酵性部分の最適な低減が可能になる。
【0046】
1つの有利な特徴によれば、前記一次消化および/または前記消化は、中温嫌気性消化である。
【0047】
この場合、1つまたは複数の消化過程が、5日〜15日の間、32℃〜38℃の範囲内の温度で行われる。
【0048】
他の有利な特徴によれば、前記一次消化および/または前記消化は、高温嫌気性消化である。
【0049】
この場合、1つまたは複数の消化過程が、5日〜15日の間、52℃〜58℃の範囲内の温度で行われる。
【0050】
一次消化過程の入口における懸濁物質の濃度は、25〜26gのMIS(懸濁物質)/1リットルのスラッジの範囲内にある。
【0051】
消化過程の入口における懸濁物質の濃度は、100g〜150gのMIS/1リットルのスラッジの範囲内にある。
【0052】
1つの有利な特徴によれば、一次消化の後、前記スラッジを解繊するためのステップが前記固液分離ステップに先立って行われる。
【0053】
1つの変形形態では、解繊ステップは、一次消化ステップの前に行われてもよい。
【0054】
解繊によって、特に、
・従来技術では不可能であると当業者によって見なされていたスラッジを処理し、
・上流または下流に配置される消化槽の大きさを縮小し、
・スラッジの他の有機成分の滞留時間を増大させる
ことが可能になる。
【0055】
本発明は、本発明に係る方法を実施するスラッジ処理プラントも対象としている。このプラントは、入口および出口を有する熱加水分解手段と、前記スラッジを消化するための手段と、を備えている。
【0056】
本発明によれば、前記消化手段は、スラッジを取り込むための手段に連通しており、前記加水分解手段の前記入口および前記出口は、前記消化手段に連通している。また、前記プラントは、前記消化手段の出口に位置する第1の固液分離手段と、前記消化手段からもたらされるバイオガスを回収するための手段と、を備えている。
【0057】
本発明によれば、前記消化手段は、蒸気および電気を生成するための手段に連結された収集器を備えるバイオガス回収手段に接続されている。蒸気および電気を生成するための手段は、電気を生成する交流発電機に連結された熱電併給モータを備えている。熱電併給モータの排気ラインは、蒸気を生成する空気/水熱交換器の入口と、前記熱加水分解手段に蒸気を移送するために用いられる配管と、に通じている。
【0058】
このようなプラントによれば、スラッジの第1の消化、スラッジの熱加水分解、およびスラッジの第2の消化を組み合わせて実施することを原理とする本発明に係るプロセスを実施することができる。
【0059】
分離手段の実施によって、消化中に生じた低生分解性または非生分解性の有機物質を含む廃液を放出することができる。従って、加水分解ステップの入口における低生分解性または非生分解性の可溶性有機物の量が低減し、これによって、最終的に、この加水分解中に生じる低生分解性または非生分解性の有機物質の量を低減させる傾向にある。
【0060】
本発明に係るプラントは、熱電併給システムを備えており、前記バイオガス回収手段が、前記熱電併給システムに連通している。
【0061】
熱電併給システムにバイオガスを送給することによって、特に加水分解の圧力および温度の条件を達成するのに必要なエネルギーおよびスラッジ処理プロセス自体を実施する目的以外の目的に使用可能な(例えば、電気および/または熱(高温流体(空気および/または水))の形態にある)余剰エネルギーのかなりの部分を生成することができる。
【0062】
好ましくは、前記熱電併給システムは、熱電併給モータを備えており、前記バイオガス回収手段が前記モータに通じており、前記熱電併給モータは、電気生成手段に連結されており、かつ蒸気を生成するために前記モータによって放出された熱を水に伝達する手段を有している。
【0063】
消化過程中に生じたバイオガスの全体が、交流発電機のような電気生成手段に連結された熱電併給モータに送給されるようになっている。モータによって放出された熱の回収(例えば、排気ガスおよび/または油および/または冷却流体からの熱の回収)によって、熱加水分解を行うのに必要な熱流体(例えば、蒸気)の全てを生成することができる。従って、本発明によれば、(バイオガスの少なくとも50%が、熱電併給モータの実施によって電気を生成するために用いられ、残りのバイオガスが、加水分解を行うのに必要な圧力および温度の条件を得るために用いられる熱流体の大部分を生成するために、旧来のボイラーに送給される)従来技術と違って、バイオガスの全体が、電気を生成するのに用いられるようになっている。
【0064】
有利な特徴によれば、前記消化手段は、少なくとも1つの入口および1つの出口を有する消化槽を備えており、前記出口は、前記加水分解手段の前記入口に連通しており、前記入口は、前記加水分解手段の前記出口に連通している
【0065】
他の有利な特徴によれば、前記消化手段は、一次消化槽および二次消化槽を備えており、 前記一次消化槽および前記二次消化槽は、各々、入口および出口を有している。前記一次消化槽の前記入口は、スラッジを取り込むための前記手段に連通しており、前記一次消化槽の前記出口は、前記加水分解手段の入口に連通している。前記二次消化槽の前記入口は、前記加水分解手段の出口に連通している。
【0066】
好ましくは、前記第1の固液分離手段は、12%以上の乾燥度レベルを達成することが可能になるように構成されている。
【0067】
有利には、本発明に係るプラントは、前記二次消化槽の出口に位置する第2の固液分離手段を備えておる。
【0068】
これらの第2の分離手段を実施することによって、消化中に生じた低生分解性または非生分解性の可溶性有機物質を含む廃液と、発酵性有機物質を含まない脱水された消化スラッジと、を排出することができる。
【0069】
好ましい特徴によれば、本発明に係るプラントは、前記消化槽と前記分離手段との間または前記一次消化槽と前記第1の分離手段との間に位置する解繊手段を備えている。
【0070】
一変更形態では、解繊手段は、前記消化槽または一次消化槽の上流に配置されている。
【0071】
このような解繊手段を実施することによって、特に、
・従来技術では不可能であると当業者によって見なされていたスラッジを処理し、
・上流または下流に配置された消化槽の大きさを縮小し、
・または、スラッジの他の有機成分の滞留時間を増大させる
ことが可能になる。
【0072】
有利には、前記熱電併給モータは、前記熱加水分解手段に接続された蒸気排出口を有する空気−水熱交換器に通じている排気ラインを有している。
【0073】
この実施によって、熱加水分解を行うのに必要な蒸気を単純かつ効率的に生成することができる。
【0074】
本発明の他の特徴および他の利点は、簡単な例示的かつ非制限的実施例によって提示される以下の好ましい実施形態の説明および添付の図面から、さらに明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に係るプラントの第1の実施形態を示す図である。
【図2】本発明に係るプラントの第2の実施形態を示す図である。
【図3】第1の消化の前後のスラッジ内の糖類含量を示すグラフである。
【図4】第1の消化の前後のスラッジ内の糖類含量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0076】
[1.発明の原理の確認]
本発明は、スラッジ処理のプロセスに関する。本発明において理解されるように、「スラッジ」という用語は、一次スラッジ、二次スラッジ、さらに、混合されたスラッジを含んでいる。
【0077】
本発明の一般原理は、スラッジの第1の消化、スラッジの熱加水分解、およびスラッジの第2の消化を組み合わせて実施することに基づいている。
【0078】
第1の消化は、スラッジの易発酵性成分の少なくとも大半を分解し、難発酵性消化残渣を生じさせることができる。
【0079】
次いで、スラッジのこの難発酵性成分を処理するためにのみ、熱加水分解が実施されるようになっている。
【0080】
一方、従来技術では、熱加水分解は、スラッジの全て、すなわち、発酵性部分および難発酵性部分の両方を処理するために行われている。
【0081】
その結果、本発明に係る熱加水分解を実施するのに必要なエネルギーは、従来技術による熱加水分解を行うのに必要なエネルギーよりも少なくなる。
【0082】
熱加水分解は、スラッジの難発酵性成分から構成された一次消化残渣に基づく消化残渣を分解し、易発酵性スラッジからなる脱水された消化残渣を生じさせることができる。
【0083】
次いで、第2の消化が、これらの発酵性スラッジを消化し、どのような発酵性成分も少なくともその大半を含むことなく、わずかな量の難分解性の非発酵性部分のみを含んでいる消化残渣を生じさせることができる。
【0084】
[2.本発明に係るプラントの第1の実施形態の例]
図1に、本発明に係るスラッジ処理プラントの一実施の形態を示す。
【0085】
図1に示すように、このプラントは、一次消化槽10と二次消化槽11とを具備する消化手段を備える。
【0086】
一次消化槽10は、入口および出口を有している。入口は、被処理スラッジを導入するためのスラッジ移送手段に接続されており、このスラッジ移送手段は、配管12によって構成されている。出口は、第1の固液分離手段13に通じており、第1の消化残渣がこの固液分離手段13内に注入されることを可能にしている。
【0087】
第1の固液分離手段13は、12%以上の乾燥度を得るために用いられる遠心分離機を備えている。一変形形態では、この目的のために、どのような他の同等の手段、例えば、薄膜が用いられてもよい。これらの第1の分離手段13は、配管14を備える第1の廃液を排出するための手段と、配管15を備える第1の脱水された消化残渣を排出するための手段と、を有している。この配管15は、熱加水分解手段16に通じている。
【0088】
熱加水分解手段16は、熱加水分解を行うための条件を達成するために、圧力および温度が制御された条件下で稼働する反応器を備えている。用いられる熱加水分解手段は、本出願人によって出願された国際特許公開第02/064516号パンフレットに記載されているものとすることができる。
【0089】
熱加水分解手段16は、加水分解された消化残渣を排出するための出口を有しており、この出口は、二次消化槽11に通じている
【0090】
二次消化槽11は、入口および出口を有している。入口は、熱加水分解手段16の出口に接続されている。出口は、第2の固液分離手段17に通じており、加水分解された消化残渣がこの分離手段17内に注入されることを可能にしている。
【0091】
第2の分離手段17は、有利には、第1の分離手段13と同様である。第2の分離手段17は、配管18を備える第2の廃液を排出するための手段と、配管19を備える脱水された消化残渣を排出するための手段と、を有している。
【0092】
一変形形態では、これらの第2の分離手段は、スラッジを処理するための手段、例えば、湿式酸化によって置き換えられていてもよい。
【0093】
他の変形形態では、第1の分離手段および第2の分離手段は、必ずしも同じでなくてもよく、ベルトフィルター、フィルター薄膜、電気浸透手段、などによって構成されていてもよい。
【0094】
一次消化槽10および二次消化槽11は、バイオガス回収手段に連結されている。これらのバイオガス回収手段は、収集器20を備えている。収集器20は、蒸気および電気を生成する手段に接続されている。
【0095】
蒸気生成手段は、熱電併給モータ21を備えている。このモータは、電気を生成するためにモータを駆動することができる交流発電機に連結されている。
【0096】
このモータは、空気−水熱交換器23の入口に通じている排気ライン22を有している。
【0097】
熱交換器23は、2つの入口として、
・熱電併給機21によって生じた熱が配管22を通って到達する1つの入口と、
・水パイプ24が通じている1つの入口と
を有している。
【0098】
また、熱交換器23は、2つの出口として、
・蒸気の排出用の1つの出口25と、
・煙の排出用の1つの出口26と
を有している。
【0099】
蒸気排出用出口25は、配管27を介して熱加水分解手段16に接続されている。
【0100】
一変形形態では、この設備は、一次消化槽10と第1の固液分離手段13との間に位置する解繊手段28を備えている。これらの解繊手段28は、機械的なクラッシャーを備えている。一変形形態では、解繊手段28は、第1の消化槽10によってもたらされる第1の消化残渣を機械的に分解する(すなわち、この消化残渣の非生分解性繊維成分を除去する)ためのどのような他の同等の手段を備えていてもよい。当業者に知られている解繊手段は、米国特許出願公開第2007/0051677号明細書に記載されている。他の変形態様では、解繊手段28は、一次消化槽の上流に配置されていてもよい。
【0101】
一変形形態では、二次消化に必要な温度条件を得ることを目的として、加水分解手段から排出されるスラッジを冷却するために、交換器が加水分解手段16と二次消化槽11との間に設けられている。
【0102】
[3.本発明に係る設備の第2の実施形態の例]
図2に、本発明に係るスラッジ処理プラントの第2の実施形態を示す。
【0103】
図2に示すように、このようなプラントは、単一の消化槽30を備えている。この消化槽30は、被処理スラッジを取り入れるための配管31に接続された第1の入口を有している。また、消化槽30は、消化残渣を排出するための出口を有しており、この出口は、配管32に接続されている。配管32は、固液分離手段33に通じている。
【0104】
固液分離手段33は、第1の実施形態に用いられた固液分離手段の構造と同じ構造を有している。これらの分離手段33は、配管34を備える廃液を排出するための手段と、配管35を備える脱水された消化残渣を排出するための手段と、を有している。この配管35は、熱加水分解手段36に通じている。
【0105】
熱加水分解手段36は、第1の実施形態に用いられた加水分解手段と同様である。熱加水分解手段36は、加水分解された消化残渣を排出するための出口を有しており、この出口は、配管37によって、消化槽30の第2の入口に接続されている。
【0106】
消化槽30は、バイオガス回収手段に接続されている。これらのバイオガス回収手段は、配管38を備えている。この配管38は、蒸気および電気を生成するための手段に接続されている。
【0107】
配管35は、処理されたスラッジを排出する配管47に連通している。
【0108】
蒸気生成手段は、熱電併給モータ39を備えている。このモータは、電気を生成するためにモータを駆動することができる交流発電機に連結されている。
【0109】
このモータは、空気−水熱交換器41の入口に通じている排気ライン40を有している。
【0110】
熱交換器41は、2つの入口:
−熱電併給機39によって生じた熱が配管40を通って到達する1つの入口と、
−水パイプ42が通じている入口と、
を有している。
【0111】
また、熱交換器41は、2つの出口として、
・蒸気を排出するための出口43と、
・煙を排出するための出口44と、
を有している。
【0112】
蒸気排出出口43は、配管45を介して熱加水分解手段36に接続されている。
【0113】
一変形形態では、第2の実施形態によるプラントは、消化槽30と固液分離手段33との間に位置する解繊手段46を備えている。これらの解繊手段46は、機械的なクラッシャー、または消化残渣を機械的に分解するためのどのような他の同等の手段を備えていてもよい。他の変形態様では、解繊手段は、一次消化槽の上流に配置されていてもよい。
【0114】
一変形形態では、二次消化に必要な温度の条件を得ることを目的として、加水分解手段から排出されたスラッジを冷却するために、交換器が加水分解手段36と消化槽30との間に設けられている。従って、スラッジを冷却することによって温水を回収することができる。
【0115】
[4.本発明に係るプロセスの第1の実施形態の例]
図1に、本発明に係るスラッジを処理するプロセスの第1の実施形態を示す。
【0116】
このプロセスでは、被処理スラッジは、一次消化槽10内に移送され、一次消化ステップに供される。この実施形態では、この消化の期間は、約10日である。代替的実施形態では、この期間は、5日〜15日の範囲内とすることができる。
【0117】
この消化中、
・スラッジの発酵成分の低減、従って、処理されるべき乾物の低減と、
・(窒素および燐のような)非発酵性無機物の一部の生物学的な加水分解と、
・スラッジに含まれている多量の糖類の排除(この態様は、第1の消化が実施される前および後のそれぞれのスラッジの糖類含量を示す図3,4に明瞭に示されている)と、
・高COD物質および難分解性窒素のような低生分解性または非生分解性の可溶有機物質の生成と、
・揮発性脂肪酸の可溶化と
が生じている。
【0118】
この消化プロセスの終了時には、スラッジの発酵成分が消化されているので、一次消化槽10の出口から排出される第1の消化残渣は、スラッジの非発酵性成分によって実質的に構成されている。
【0119】
この第1の消化残渣は、第1の固液分離手段13に移送される。この分離手段を稼働させることによって、固液分離ステップを実施することができ、これによって、以下の
・配管14内を流れる第1の廃液と、
・12%を超える乾燥度を有する第1の脱水された消化残渣と
が生じることになる。
【0120】
スラッジの乾燥度は、スラッジの湿度の百分率(%)を100%から減算することによって計算される、スラッジの乾物含量に対応している。
【0121】
第1の廃液は、一次消化中に生じた低生分解性または非生分解性の可溶化合物を多く含んでいる。これらの化合物の例として、
・窒素またはリンの溶解によって生じた無機物と、
・高COD化合物のような有機化合物および有機窒素によって生じた化合物(実際、旧来の消化では、消化槽に入る窒素の20%〜50%が、NHの形態で消化槽から排出されている)、
・一次消化中に生じた揮発性脂肪酸を含む化合物と
が挙げられる。
【0122】
固液分離中に達成された乾燥度を考慮に入れると、脱水された消化残渣は、より濃縮されており、これによって、その後続の処理は、より小形の機器を用いることができ、低エネルギー消費をもたらすことになる。これら全てが、スラッジの処理コストを低減させる傾向にある。
【0123】
第1の脱水された消化残渣は、蒸気を用いる熱加水分解ステップに供されるために、熱加水分解手段16内に移送される。熱加水分解は、30分間、165℃の温度および飽和蒸気圧で行われる。他の実施形態では、加水分解は、20分〜120分の間、1バール〜20バールの圧力および120℃〜180℃の温度で行われる。
【0124】
第1の脱水された消化残渣がスラッジの非発酵成分から実質的になっているので(すなわち、発酵成分が一次消化槽10内において予備的に消化されているので)、加水分解手段の容積は、従来技術において用いられている加水分解手段の容積と比較して、約20%〜50%、最も一般的には、約40%小さくなっている。
【0125】
さらに、熱加水分解処理は、非発酵性部分のみに施されている。その結果、熱加水分解を行うのに必要なエネルギー量も、かなり少なくなっている。
【0126】
さらに、第1の消化残渣に施された固液分離によって、一次消化中に生物学的に溶解した低生分解性または非生分解性の生成物が第1の廃液内に排出されているという事実を考慮に入れると、熱加水分解中に処理されるこれらの生成物の量は、低減されていることになる。
【0127】
加水分解されるスラッジ内の糖類の量が、第1の消化ステップによって低減されていることによって、熱加水分解ステップにおいて極めて高いCOD材料をもたらすメイラード化合物の生成が低減されることになる。実際、メイラード反応は、還元糖およびタンパク質が120℃を超える温度で相互作用し、とりわけ、難生分解性の可溶化合物を生じさせる反応である。
【0128】
このように、熱加水分解は、低生分解性または非生分解性の可溶有機化合物を生じさせるが、これらの化合物は、比較的少量である。従って、一次消化、分離、および熱加水分解を好ましく実施することによって、従来技術による熱加水分解および消化を連続的に実施する最中に生じるよりも少量の低生分解性または非生分解性の可溶有機化合物しか生じないことになる。
【0129】
熱加水分解によって発酵可能とされた第1の脱水された消化残渣は、10日間の第2の消化ステップに供されるために、二次消化槽11に移送される。変更形態では、この期間は、7日から15日の間で変更可能である。
【0130】
一次消化中に生じた低生分解性または非生分解性の可溶化合物は、二次消化に対して不利に作用する傾向にある。従って、低生分解性または非生分解性の可溶化合物を予備的に排除し、加水分解中に生じるこれらの生成物の量を制限することによって、一次消化の効率をさらに増大させることができる。
【0131】
二次消化は、第2の消化残渣を生成するが、この第2の消化残渣は、その少なくとも大半が、発酵成分を含んでおらず、作用を受け難い難生分解性部分および少量の低生分解性または非生分解性の可溶化合物を含んでいる。
【0132】
この混合物は、固液分離ステップ17に供せられるために、第2の分離手段に移送され、
・配管18内を流れる第2の廃液と、
・第2の加水分解された消化残渣と
を生じることになる。
【0133】
少なくとも大半がどのような発酵性成分も含んでいない第2の消化残渣は、再利用可能である。
【0134】
例えば、この第2の消化残渣によって構成されている消化スラッジは、脱水され、次いで、湿式酸化ステップのような他の処理ステップに排出または移送されてもよい。
【0135】
熱加水分解の手順が実施されると、予備的な熱処理によって、スラッジの脱水性が改良される。具体的には、第1の消化ステップからもたらされる消化残渣を熱加水分解すると、スラッジの脱水性も改良される。このように、追加的な消化を実施することによって、生スラッジの脱水性と比較して、消化スラッジの脱水性が1%〜2%改良されることになる。従って、脱水のレベルは、
・生スラッジの場合、19%〜25%の範囲内にあり、
・消化スラッジの場合、21%〜30%の範囲内にあり、
・加水分解されたスラッジの場合、29%〜40%の範囲内にある
ことになる。
【0136】
第2の廃液は、第2の消化中に生じた低生分解性または非生分解性の可溶有機化合物を多く含んでいる。
【0137】
第1の廃液および第2の廃液は、その時点で処理が切り上げられてもよいし、または本発明の方法によって処理されるべきスラッジを生成する水処理プラントの出発点に再循環されてもよい。難生分解性の可溶化合物が、従来技術と比較して、プロセスの実施中にわずかな量しか生じていないので、この再循環は、生じた処理水に限定的な影響しか及ぼさない。
【0138】
第1の消化ステップおよび第2の消化ステップの実施に伴って、バイオガスが生成される。加水分解を行うのに必要な蒸気を生成すると共に、電気を生成することを目的とし、バイオガスを変換ステップに供するために、回収ステップによって、これらのバイオガスを収集することができる。この目的のため、バイオガスは、熱電併給モータ21内に移送される。このモータを用いて、このモータが接続された交流発電機を駆動し、電気を生成することになる。このモータからの排気ガスは、熱交換器23に移送され、蒸気を生成するために、水が熱交換器23内に巡回される。このようにして生じた蒸気は、第1の脱水された消化残渣の熱加水分解ステップの実行を可能とするために、配管17を介して、熱加水手段16に移送される。
【0139】
熱交換器23内に生じた煙は、配管26を通って排出される。
【0140】
[5.本発明に係るプロセスの第2の実施形態の例]
図2に、本発明に係るスラッジ処理プロセスの第2の実施形態を示す。
【0141】
このプロセスでは、被処理スラッジは、消化槽30内に移送され、約10日間、一次消化ステップに供される。代替的実施形態では、このステップは、5日〜15日の範囲内とすることができる。
【0142】
この一次消化中、
・スラッジの発酵成分の低減、従って、処理されるべき乾物の低減と、
・(窒素および燐のような)非発酵性無機物の一部の生物学的な加水分解と、
・スラッジに含まれている多量の糖類の排除と、
・高COD物質および難分解性窒素のような低生分解性または非生分解性の有機物質の生成と、
・揮発性脂肪酸の可溶化と
が生じている。
【0143】
この消化プロセスの終了時に、スラッジの発酵成分が消化されているので、消化槽30の出口から排出される消化残渣は、スラッジの非発酵性成分によって実質的に構成されている。
【0144】
次いで、この消化残渣は、固液分離ステップに供されるために、分離手段33に移送される。これらの分離手段を実施することによって、
・配管34内を流れる廃液と、
・加水分解された消化残渣と
を生じさせることができる。
【0145】
廃液は、一次消化中に生じた低生分解性または非生分解性の可溶有機化合物を多く含んでいる。これらの化合物の例として、
・窒素または燐の溶解によって生じた無機物と、
・高COD化合物のような有機化合物または有機窒素によって生じた化合物(実際、旧来の消化では、消化槽に入る窒素の20%〜50%が、NHの形態でこの消化槽から排出されている)と、
・一次消化中に生じた揮発性脂肪酸を含む化合物と
が挙げられる。
【0146】
固液分離中に達成された乾燥度を考慮に入れると、脱水された消化残渣は、より濃縮されており、これによって、その後続の処理は、より小形の機器を用いることができ、低エネルギー消費をもたらすことになる。これら全てが、スラッジの処理コストを低減させる傾向にある。
【0147】
脱水された消化残渣は、蒸気による熱加水分解ステップに供されるために、熱加水分解手段36内に移送される。熱加水分解は、30分間、165℃の温度および飽和蒸気圧で行われる。代替的実施形態では、加水分解は、20分〜120分の間、1バール〜20バールの圧力および120℃〜180℃の温度で行われる。
【0148】
脱水された消化残渣がスラッジの非発酵性成分から実質的になっているので(すなわち、発酵性成分が消化槽30内において予備的に消化されているので)、加水分解手段の容積は、従来技術において用いられている加水分解手段の容積と比較して、約20%〜50%、最も一般的には、約40%小さくなっている。
【0149】
さらに、熱加水分解処理は、初期スラッジの非発酵性部分のみに施されている。その結果、この処理を行うのに必要なエネルギー量も、かなり小さくなっている。
【0150】
さらに、消化残渣に施された固液分離によって、一次消化中に生じた低生分解性または非生分解性の可溶化合物が廃液内に排出されているので、熱加水分解中に処理されるこれらの生成物の量は、低減されている。
【0151】
加水分解されるスラッジ内の糖類の量が、第1の消化ステップによって低減されていることによって、熱加水分解ステップにおいて極めて高いCOD含量をもたらすメイラード化合物の生成が低減されている。実際、メイラード反応は、還元糖およびタンパク質が120℃を超える温度で相互作用し、とりわけ、難生分解性の可溶化合物を生じさせる反応である。
【0152】
このように、熱加水分解は、低生分解性または非生分解性の可溶有機化合物を生じさせるが、これらの化合物は、比較的少量である。従って、一次消化、分離、および熱加水分解を連続的に実施することによって、従来技術による熱加水分解および消化を連続的に実施する最中に生じるよりも少量の低生分解性または非生分解性の可溶有機化合物しか生じないことになる。
【0153】
熱加水分解処理によって発酵可能とされた脱水された消化残渣は、消化槽30に再循環され、この消化槽30において、他の消化ステップを行うために、新しいスラッジと混合される。
【0154】
次に生じる消化は、実際、新しいスラッジの第1の消化が予備的に消化されて加水分解されたスラッジの第2の消化と組み合わされたものである。この組合せによって、スラッジと消化スラッジとの混合物の発酵性部分が低減しているので、その結果、少なくとも大半が発酵性成分を含んでおらず、分解し難い難発酵性成分および少量の低生分解性または非生分解性の有機化合物を含む消化残渣の混合物を生じることになる。
【0155】
加水分解手段に導入される消化残渣の割合は、100%であることに留意されたい。換言すれば、消化槽の出口で得られた消化残渣の全体が、加水分解処理に供されることになる。変更形態では、加水分解手段への消化残渣の再循環率は、30%から300%の間で変更されてもよい。
【0156】
この消化残渣の混合物は、固液分離のステップに供されるために、分離手段33に移送され、前述したように、
・配管34内を流れる廃液と、
・脱水された消化残渣と
を生じることになる。
【0157】
この方法は、少なくとも1つのループを設定することによって、すなわち、予備的に消化され、かつ加水分解されたスラッジの消化を行うことによって、達成される。
【0158】
処理の後、すなわち、少なくとも1つのループの後に得られた消化残渣の一部は、再利用されるために、配管47内に排出される。
【0159】
この消化残渣は、例えば、脱水され、次いで、湿式酸化ステップのような他の処理ステップに排出または送出されてもよい。
【0160】
熱加水分解の手順が実施されると、熱的な前処理によって、スラッジの脱水性が改良される。具体的には、第1の消化ステップからもたらされる消化残渣を熱加水分解すると、スラッジの脱水性も改良される。このように、追加的な消化を実施することによって、生スラッジの脱水性と比較して、消化スラッジの脱水性が1%〜2%改良されることになる。従って、脱水のレベルは、
・生スラッジの場合、19%〜25%の範囲内にあり、
・消化スラッジの場合、21%〜30%の範囲内にあり、
・加水分解されたスラッジの場合、29%〜40%の範囲にあることになる。
【0161】
収集された廃液は、第2の消化中に生じた低生分解性または非生分解性の可溶有機化合物を多く含んでいる。また、この廃液は、その時点で処理が切り上げられてもよいし、または本発明の方法によって処理されるべきスラッジを生成する水処理プラントの出発点に再循環されてもよい。難生分解性の可溶化合物が、従来技術と比較して、プロセスの実施中にわずかな量しか生じていないので、この再循環は、生じた処理水に限定的な影響しか及ぼさない。
【0162】
第1の消化ステップおよび第2の消化ステップの実施に伴って、バイオガスが生成される。加水分解を行うのに必要な蒸気を生成することを目的とし、かつ電気を生成することを目的とし、バイオガスを変換ステップに供するために、回収ステップによって、これらのバイオガスを収集することができる。この目的のため、バイオガスが熱電併給モータ39内に移送される。このモータを用いて、このモータが接続された交流発電機を駆動し、電気を生成することになる。このモータからの排気ガスは、熱交換器41に移送され、蒸気を生成するために、水が熱交換器41内に巡回される。このようにして生じた蒸気は、第1の脱水された消化残渣の熱加水分解ステップの実行を可能とするために、配管45を介して、熱加水手段36に移送される。
【0163】
熱交換器41に生じた煙は、配管44内に排出される。
【0164】
[6.他の特性]
本発明の技術において実施される消化の手法は、嫌気性消化の手法である。被処理スラッジの特性に依存して、嫌気性消化の手法は、中温性であってもよいし、または高温性であってもよい。中温消化が行われる温度は、32℃〜38℃の範囲内にある。高温消化が行われる温度は、52℃〜58℃の範囲内にある。第1の消化槽の入口の濃度は、有利には、スラッジの1リットル当たり25g〜65gのMIS(懸濁物質)の範囲内にある。第2の消化槽の入口における濃度は、有利には、スラッジの1リットル当たり100g〜150gのMIS(懸濁物質)の範囲内にある。もしこれらの消化過程の両方が異なる消化槽で実施される場合、これらの消化過程の各々の特性が異なっていてもよい。変更形態では、実施される1つまたは複数の消化過程が嫌気性であることが想定されている。変更形態では、実施される消化のいずれもが、嫌気性であってもよい。
【0165】
変更形態では、前述した本発明の方法は、解繊装置28または46を用いることによって、消化槽(第1の消化槽または単一消化槽)内に最初に入る前のスラッジまたは第1の消化残渣に解繊措置を施すためのステップを含んでいてもよい。
【0166】
スラッジは、典型的な嫌気性消化の条件下において極めて生分解し難い繊維成分を含んでいる。消化槽の出口において、この成分は、消化残渣内に存在する有機物質の30%〜60%を占めることもある。この成分は、熱加水分解によって殆ど分解されない。解繊を実施することによって、有利には、解繊後に、とりわけ、スラッジの粘度を30%を超える乾燥度を有する程度まで低減させことができる。
【0167】
従って、解繊によって、
・従来技術では不可能であると当業者によって見なされていたスラッジを処理し、
・上流または下流に配置される消化槽の大きさを縮小し、
・または、スラッジの他の有機成分の滞留時間を増大させる(実際、同一の消化槽の大きさの場合、解繊によって、繊維成分、従って、消化槽に入る乾物の量を低減させ、これによって、滞留時間を増大させる)ことが可能になる。
【0168】
第1の実施形態および第2の実施形態の一変形形態では、第1の固液分離は、熱加水分解と第2の消化との間で実施されてもよい。
【0169】
[7.エネルギー利得]
従来技術の1つの方法によれば、熱加水分解に続く消化中に生じるバイオガスは、以下のように、すなわち、
・生じたバイオガスの少なくとも50%が、加水分解に必要な蒸気を生成するために、ボイラーに送給され、
・残りのバイオガスは、この方法を実施する目的以外の目的に使用可能な電気を生成するために、交流発電機に付随する熱電併給モータ内に送給される
ように、用いられている。
【0170】
熱電併給モータからの排気ガスの熱は、熱加水分解に必要な蒸気の一部を生成するために、回収することができる。これによって、典型的なボイラーによって蒸気を生成するのに用いられるバイオガスの割合が、約35%〜40%に低下する。
【0171】
熱電併給モータから放出した熱も、蒸気を生成するのに必要な水を加熱するために、回収することができる。これによって、典型的なボイラーによってこの蒸気を生成するのに用いられるバイオガスの割合が、30%から35%に低下する。
【0172】
従って、従来技術を最適に実施することによって、消化によって生じたバイオガスの65%〜70%を用いて、スラッジ処理方法を実施する目的以外の目的に使用可能なエネルギーを生成させることが可能である。
【0173】
本発明によれば、一次消化からもたらされる消化残渣は、初期スラッジに含まれる乾物の60%〜80%しか含んでいない。さらに、消化スラッジは、同じ乾物量の生スラッジの粘度よりも低い粘度を有している。これによって、第1の固液分離ステップの後に得られる消化残渣の乾燥度を容易に増大させることができる。その結果、本発明に係る熱加水分解によって処理されるスラッジの量は、従来技術による熱加水分解によって処理されるスラッジの量よりもかなり少ない。加水分解の熱要求が加水分解される乾物量に比例するので、本発明を実施することによって、これらの熱要求が30%から40%低減されることになる。
【0174】
さらに、本発明を用いることによって、取り込まれるスラッジの種類および消化槽内におけるスラッジの滞留時間にもよるが、2つの消化過程中に生じるバイオガスの量を20%まで増大させることができる。
【0175】
さらに、加水分解手段に送給される消化残渣の温度は、この消化残渣をもたらす消化プロセスが中温性であるかまたは高温性であるかによって、約35℃または55℃に等しい温度である。
【0176】
最終的に、本発明を用いることによって、熱加水分解に必要な蒸気の要求が、従来技術と比較して、約40%〜55%低減されることになる。従って、この要求は、熱電併給装置のモータの排気ガスから回収される熱から得られる蒸気によって、完全に満たされることになる。その結果として、消化過程中に生じたバイオガスの殆ど全てによって、スラッジ処理方法を単に稼働する目的以外の目的に使用可能な電気エネルギーを生成することができる。但し、生じたバイオガスの少量が、処理を開始するための蒸気を生成するのに用いられてもよい。
【0177】
しかし、もし蒸気の要件が、第1の実施形態において、このように完全に満たされない場合、
−加水分解反応器内に送給される消化残渣が、分離手段の出口において、(加水分解反応器の出口における加水分解されたスラッジまたは熱電併給装置のモータの冷却流体および油のいずれかまたは両方から回収された熱から生じた)温水と混合されることによって、加熱されてもよいし、
−第1の消化槽に送給されるスラッジが、加水分解反応器の出口における加水分解されたスラッジからの熱の回収によって生じた温水と混合されることによって、加熱されてもよい。
【0178】
さらに、第2の消化槽内に送給されるスラッジが、第2の消化過程の能力を改良することを目的とし、最適な乾燥度を得るために、水と混合されてもよい。
【0179】
従来技術では、消化槽の入口におけるスラッジのMIS濃度は、100g〜140g/Lに制限されている。実際、スラッジ内に存在する窒素は、消化中にNHに変換されるが、NHは、消化に対する阻止化合物である。従って、消化を最適化するために、消化槽の入口におけるスラッジのMIS濃度を制限する必要がある。本発明に係る第1の消化は、スラッジ内に含まれる窒素の量を大幅に低減する。スラッジの熱加水分解が、スラッジの粘度を低下させる傾向にあるので、二次消化槽の入口におけるMIS濃度は、110g〜160g/Lの値まで増大することになる。従って、これらのスラッジは、同様のMIS濃度を得るために、水と混合されてもよい。
【0180】
しかし、もし蒸気の要求が、第2の実施形態において、このように完全に満たされない場合、
−加水分解反応器内に送給される消化残渣が、分離手段の出口において、(加水分解反応器の出口における加水分解されたスラッジまたは熱電併給装置のモータの冷却流体および油のいずれかまたは両方から回収された熱から生じた)温水と混合されることによって、加熱されてもよいし、
−第1の消化槽に送給されるスラッジが、(加水分解反応器の出口における加水分解されたスラッジまたは熱電併給装置のモータの冷却流体および油のいずれかまたは両方から回収された熱から生じた)温水と混合されることによって、加熱されてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に非腐敗性のスラッジおよびエネルギーを生成する方法であって、
(i)スラッジの一次消化によって、消化スラッジを得るステップと、
(ii)前記ステップ(i)において得られた前記消化スラッジに対して第1の固液分離を行うことによって、少なくとも部分的に脱水された消化スラッジおよび第1の廃液を得るステップと、
(iii)前記ステップ(ii)において得られた前記少なくとも部分的に脱水された消化スラッジを熱加水分解することによって、少なくとも部分的に脱水され及び加水分解された消化スラッジを得るステップと、
(iv)前記ステップ(iii)において得られた前記少なくとも部分的に脱水され及び加水分解された消化スラッジを消化するステップと
を含むとともに、更に、
前記一次消化ステップおよび前記消化ステップにおいて生成したバイオガスを回収するステップと、
前記バイオガスからエネルギーを生成するステップであって、前記熱加水分解を実施するために必要なエネルギーを生成するサブステップと、余剰エネルギーを生成するサブステップとを含むステップと
を含み、前記バイオガスの全てが電気を生成するために用いられる方法。
【請求項2】
前記ステップ(iv)において得られたスラッジに対して第2の固液分離を行うことによって、第2の廃液および処理されたスラッジを得るステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記熱加水分解が、20〜120分間にわたって1〜20バールの圧力および120℃〜180℃の温度で行われる請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記熱加水分解が、30分間にわたって飽和蒸気圧と等しい圧力および165℃の温度で行われる請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記一次消化および/または前記消化が、中温嫌気性消化である請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記一次消化および/または前記消化が、高温嫌気性消化である請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記一次消化に先立って、前記スラッジを解繊するステップが行われる請求項1〜6に記載のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法を実施するためのスラッジ処理プラントであって、
入口および出口を有する熱加水分解手段(16,36)と、前記スラッジを消化する手段(10,11,30)とを備えており、
前記消化手段(10,11,30)が、スラッジを取り込む手段(12,31)に連通しており、前記加水分解手段(16,36)の前記入口および前記出口が、前記消化手段(10,11,30)に連通しており、
前記プラントが、前記消化手段(10,11,30)の前記出口に位置する第1の固液分離手段(13,33)と、前記消化手段(10,11,30)によってもたらされるバイオガスを回収する手段(20,28)とを備えており、
前記消化手段が、蒸気および電気を生成する手段に連結された収集器(20,38)を備えるバイオガス回収手段に接続されており、前記蒸気および電気を生成する手段が、電気を生成する交流発電機に連結された熱電併給モータ(21,39)を備えており、前記熱電併給モータ(21,39)の排気ライン(22,40)が、蒸気を生成する空気/水熱交換器(23,41)の入口と、前記熱加水分解手段(16,36)に蒸気を移送するために用いられる配管(27,45)とに通じているプラント。
【請求項9】
前記消化手段が、少なくとも1つの入口および1つの出口を有する消化槽(30)を備えており、前記出口が、前記加水分解手段(36)の前記入口に連通しており、前記入口は、前記加水分解手段(36)の前記出口に連通している請求項8に記載のプラント。
【請求項10】
前記消化手段が一次消化槽(10)および二次消化槽(11)を備えており、前記一次消化槽(10)および前記二次消化槽(11)が各々、入口および出口を有しており、前記一次消化槽(10)の前記入口が、前記スラッジを取り込む手段(12)に連通しており、前記一次消化槽(10)の前記出口が、前記加水分解手段(16)の前記入口に連通しており、前記二次消化槽(11)の前記入口は、前記加水分解手段(16)の前記出口に連通している請求項8に記載のプラント。
【請求項11】
前記第1の固液分離手段(13)が、12%以上の乾燥度レベルを得ることができるものである請求項8〜10のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項12】
前記二次消化層(11)の前記出口に位置する第2の固液分離手段(17)を備える請求項10又は11に記載のプラント。
【請求項13】
前記消化槽(30)または前記一次消化槽(10)の上流に配置された解繊手段(28,46)を備える請求項11又は12に記載のプラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−519578(P2012−519578A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552472(P2011−552472)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052900
【国際公開番号】WO2010/100281
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(503289595)ヴェオリア・ウォーター・ソリューションズ・アンド・テクノロジーズ・サポート (25)
【Fターム(参考)】