説明

面ファスナーを利用した相互に着脱自在な複数物品の組み合わせ

【課題】異種の物品と組み合わせる構造において、面ファスナーを用いて当該物品の取付けの自由度と利便性を高め、或いは装飾具として飽きのこないデザインを提供できる大小の物品の組み合わせ及び鞄を提供する。
【解決手段】物を収納するため、或いは体に装着するための第1の物品と、第1の物品より小さく、独立した機能と用途とを有する第2の物品との組み合わせであって、第1の物品2は、その外表面のうち少なくとも半分の面積を占める外側付着面8を有し、 かつ第2の物品10Aは、その外側付着面の任意の一部に取り付けられる程度の大きさとし、上記第1の物品2の外側付着面は、面ファスナーの雌材で、第2の物品10Aの外表面の一部を面ファスナーの雄材で形成して、この外側付着面8上に第2の物品10Aを仮止めできるようにするとともに、第2の物品を剥がしたときに剥離音を生ずる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面ファスナーを利用した相互に着脱自在な複数物品の組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、向かい合う2つの板材の一方にフック状又はマッシュルーム状の係合部(雄部)を、他方にループ状の被係合部(雌部)を植設してなる面ファスナーが知られている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
こうした面ファスナーの利用方法として、物を拘束するためのバンド状(又はテープ状)の連結具であって、両端部の対応箇所にそれぞれ雄部及び雌部を形成したものが知られている(特許文献3)。また、こうしたバンド状の連結具を、靴紐の代わりに靴の構造に取り入れたり(特許文献4)、リュックサックの外表面に設けた小袋の口を塞ぐ蓋を固定すること(特許文献5)が知られている。
【0004】
また釣り人の指に嵌めるフィンガープロテクターに付設した帯状のリストバンドの片面のうち先端部を雄部で、残りの部分を雌部で形成し、このバンドを手首に巻いて雌雄材を連結して固定すること行われている(特許文献6)。
【0005】
更にまた、ループ状の毛で形成された布地で出来た動物のぬいぐるみに、その動物の肢や胴などを覆うように形成した装飾用の植毛パーツを着脱自在に取り付けることができるように設けた玩具(特許文献7)も提案されている。
【特許文献1】米国特許第7052638号
【特許文献2】特開平6−189809号
【特許文献3】特開2003−226356
【特許文献4】特開2000−152805
【特許文献5】特開2001−190329
【特許文献6】特開2001−045938
【特許文献7】特開2005−270269
【特許文献8】特開2006−034872
【特許文献9】特開平5−154009
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献4の靴、特許文献5のリュックサック、及び特許文献6のフィンガープロテクターでは、一つの物品の特定の部位同士を連結するために面ファスナーを利用しているだけであり、また、特許文献7のぬいぐるみも、物品の特定部分に対応した装飾パーツを提案しているに過ぎない。
【0007】
しかしながら、現代人のライフスタイルは昔に比べてせわしなくなっており、そうしたスタイルにあった、より使い勝手のよいものが求められている。
【0008】
例えば鞄を持って外出する途中で、携帯電話・小銭入れ・定期入れ・旅行用のガイドブックなどの小物類を使用することが少なくないが、そうした小物類を鞄の中や鞄の小袋に入れていると、取り出しが不便である。これらの小物類を上着の内ポケットに入れておければよいが、Tシャツなどの軽装で出かけるときには、服に内ポケットそのものがないこともある。こうした場合に、鞄や衣服の外面に一時的にそれら小物類などを仮止めできると便利である。
【0009】
また近年では機能性とともに、装飾性にも優れていることが需要者から要求されている。このために設計デザイナーは鞄や衣類などのデザインに創意・工夫を施しているが、それにしても同じデザインでは飽きられ易い。そこで面ファスナーを利用して意匠に変化をつけることができれば好適である。
【0010】
本発明は、そうした観点から、物を収納して持ち運ぶため、或いは体に装着するための物品と、他用途の物品と組み合わせる構造において、面ファスナーを用いて当該物品の取付けの自由度と利便性を高め、或いは装飾具として飽きのこないデザインを提供できる複数物品の組み合わせ、及び鞄を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の手段は、物を収納して持ち運ぶため、或いは体に装着するための第1の物品と、この第1の物品から独立した機能と用途とを有する第2の物品との組み合わせであって、
第1の物品は、その外表面のうち少なくとも半分の面積を占める外側付着面を有し、
かつ第2の物品は、その外側付着面の任意の一部に取り付けられる程度の大きさとし、
上記第1の物品の外側付着面を、面ファスナーの雌部で、第2の物品の外表面の一部である被付着面を面ファスナーの雄部でそれぞれ形成して、
この外側付着面上に第2の物品を仮止めできるようにするとともに、第2の物品を剥がしたときに剥離音を生ずるようにしている。
【0012】
本手段では、利用者の所持品を、鞄や衣服のように、人が直接手に持って或いは身に付けて運ぶもの(第1の物品)と、携帯電話のように間接的に保持することが多いもの(第2の物品)とに分け、その第1の物品の外表面に形成した外側付着面に、第2の物品を一時的に仮止めできるようにしたものである。いわばこの外側付着面が鞄などのポケットの代わりの役目を果たすことになる。取付けの手段としては、雌雄の面ファスナーを用いる。第2の物品は、第1の物品よりも小さなものを主として想定しているが、必ずしもそうとは限らない。
【0013】
「第1の物品」は、物を持ち運ぶため、或いは体に装着するためのものである。前者の機能を有するものとして、鞄(バックを含む)、リュックサック、ランドセル、手足(特に手首や足首)を通して装着する手足バンドなどがある。後者の機能を有するものとして、ズボン、ジャケットやジャンバーなどの上着、コート、帽子などがある。
【0014】
「第2の物品」は、面ファスナーの雄部を付設するに十分な面(以下被付着面という)を有する物品なら何でもよい。この被付着面は平坦であることが望ましく、また、第2の物品は、この被付着面に対して直角な方向に背の低い、全体としてやや偏平な形状であると、より確実に取り付けることができる。好適な物品としては、携帯電話、小銭入れ、キーホルダー、小型の本(ガイドブックや地図の本など)である。
【0015】
第2の物品に関して、本手段において、「第1物品から独立した機能と用途を有する」という限定を加えたのは、袋状のもの(被拘束物)に対してその口を縛る紐(拘束物)の如く、機能的に見て第1の物品に不可欠なものや当該物品に付随するもの(部品や付属品)を除外する意味である。前述の如く一つの物品の各部分同士を拘束するために面ファスナーを用いることは従来知られていることだからである。
【0016】
「面ファスナー」とは、互いに向き合う2面にそれぞれ多数の係合部(雄部)及び被係合部(雌部)が植え付けられており、これら係合部と被係合部とが相互に着脱自在に結合できるように設けたものである。一般に雌部としては、ループ状のものを、雄部としてはフックのもの、又はマッシュルーム状のものを用いることが多いが、これと同等の機能を有すればどんなものでも構わない。
【0017】
いろいろな種類の係合手段のうち、特に雄部及び雌部からなる面ファスナーを選択したのは、外側付着面のどこにでも付着する自在性の他に、係合部分を剥離させる際に固有の剥離音を生ずることを考慮したものである。この剥離音により、第2の物品が外側付着面から不正に剥離することを防止できる。この剥離音は、雄部を雌部から強制的に引き剥がすことに生ずるものであり、剥離音を生ずることは面ファスナーの一般的な特性である。近年では、雌部及び雄部に柔らかい素材を用いて剥離音を小さくした面ファスナーも提案されているが(特許文献8参照)、こうした特殊な構造としても音が無くなるわけではない。特許文献8から理解できるように、剥離音は、素材の剛性に、換言すれば雄部及び雌部の係合力に応じて大となり、従って携帯電話やキーホルダーを確実に外側付着面に保持できるように面ファスナーを設計すれば必然的に所要の大きさの剥離音を生ずる。
【0018】
「外側付着面」は、第1の物品の表面上に物品を保持する機能を有する。従来の鞄や衣服などには、表面に物品を保持するためのポケットなどの工夫が施されているが、面ファスナーによる外側付着面はポケットなどに代わるものであり、従って、第1の物品の外観をシンプルにすることができる。もっとも後述のように物品表面の面ファスナーの素材の上にポケット(好ましくは同様の素材で出来たポケット)を設けることも可能である。外側付着面は、面ファスナーの雌部を用いて形成され、第2の物品側の雄部と着脱自在になっている。雄部及び雌部のうち特に雌部を用いるのは、雄部を主とした面ファスナーを、鞄や衣類の如く人の皮膚に触れる物品の外表面材とすると肌触りが非常に悪くなるからである。もっとも最近では、この肌触りを改善するため、雄部(フック)と、これよりやや背の高い雌部(ループ)とを半分ずつ一つの面に混在させたフック・ループ混在型の面ファスナーも提案されており(特許文献9参照)、こうしたものを用いても良い。上述の「面ファスナーの雌部を用いて」とは、雌部のみを用いてという意味に限定されるものではなく、雌部の触感がおおよそ実現されていれば良いものとする。
【0019】
面ファスナーに関して、「その外表面のうち少なくとも半分の面積を占める」と限定したのは、第1の物品を見て確認しなくても、利用者が面ファスナーの位置を理解して、第2の物品を取り付けることができるようにしたものである。例えば底面のある袋類であれば、その底面を除く全外面に、またリュックサックやランドセルでは、利用者の背に触れる、物品の背面を除く全外面をそれぞれ面ファスナーとすれば、利用者は外側付着面を直接見ずに第2の物品を取り付けることができ、便利である。この場合には、面ファスナー以外の部分は、その物品に合った素材(例えば鞄であれば革)で形成することができる。もちろん物品の外表面全体を面ファスナーで形成しても良い。また、鞄や袋などの内表面にも面ファスナーを形成しても良い。また、外側付着面は、連続した一つの面(好ましくは第1の物品の全面)とすると、通常の布材に比べてやや高価な面ファスナーの素材を無駄なく利用することができ、好適である。しかしながら、必ずしも一つの面とする必要はなく、例えば前面及び後面が、底面及び左右側面に比べて幅広の偏平な鞄の場合には、その前面及び後面を別々に面ファスナーとすることができる。
【0020】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ
第1の物品を、利用者の手首に嵌める筒状のリストバンドとし、第2の物品をパウチとする請求項1記載の複数物品の組み合わせであって、
上記リストバンドの外表面の全体を上述の外側付着面とするとともに、この外側付着面のうちの一側面を、雌部のみから成る正付着面部分とし、残りの部分を雌雄混在して成る副付着面部分とし、
上記パウチの表裏両面のうちの一方を、上記正付着面部分と接合するために雄部のみで形成した被付着面としている。
【0021】
本手段では、第1の物品を、身体に装着するもののうちリストバンドとし、このリストバンドを介してパウチを持ち運びする場合を提案している。例えば高齢者や子供などのように手の指の力が弱かったり、怪我などの障害により手先の自由が制限される人達にとっては、パウチを手で掴んで持ち運びすることが困難であることが少なくない。また通常の握力がある人にとっても、何かの拍子に手から荷物がすっぽ抜けたり、旅先で長時間歩き回って荷物を持つ手が疲れることがある。そこでリストバンドの表面を前述の外側付着面とし、この面をパウチ側の被付着面として、これら両面を介してパウチを装身できるようにしている。本明細書において「パウチ」とは、小袋や小型の鞄・バックなどであって、内部に日用品(小銭入れ・化粧品・携帯電話など)を入れた状態で面ファスナーの係合力で持ち運びできる程度の大きさのものを言うものとする。面ファスナーの種類としては、雄部・雌部単体からなるものの他、前述の特許文献9の如く雄・雌混合型のものがあるが、これだと多少係合力が低下する。そこで本手段では、リストバンドの外表面のうち、パウチと接合させるための部分(正付着面部分)を、雌部のみで形成している。
【0022】
またパウチを持ち運びしないときには、手首にリストバンドを装着する必要はないので、適当な場所に保管しておくことができると良い。特に旅先などでは、前述の第1の物品として、外表面を面ファスナーの雌部で形成した鞄と一緒にしておけると便利である。そこでリストバンドの外表面の残りの部分を雌雄混成型として形成している。リストバンドは一般に物を収納したパウチよりも軽量であるため、雌雄混成型の係合力でも十分である。
【0023】
パウチの一面には、リストバンド側に付着するための被付着面を形成する。更に、これとは別に、パウチ自体を別の物に固定するための支持面(第2の被付着面)を形成しても良い。尚、上述のリストバンドやパウチの保管場所として、住宅の壁や家具に、表面を面ファスナーとした支持手段(支持板)を貼り付けても良い。これらについては実施の形態において更に説明する。
【0024】
第3の手段は、物を収納して持ち運ぶため、或いは体に装着するための第1の物品と、この第1の物品より小さく、その装飾材としての機能を有する第2の物品との組み合わせであって、
第1の物品2は、その外表面のうち少なくとも半分の面積を占める外側付着面を有し、
この外側付着面を面ファスナーの雌部で、第2の物品の外表面の一部である被付着面12を面ファスナーの雄部でそれぞれ形成して、
上記外側付着面内で、第1の物品自体のデザインと装飾材との間、或いは2以上の装飾材相互の間のコーディネートを自由に変更できるようにしている。
【0025】
物品の装飾としては、裏面を糊面とするワッペンやシールが知られているが、糊面にゴミが付いて接着力が低減するため、何度も張り直すことはできない。本手段では、第1の物品の外側付着面の任意位置に、装飾板などの装飾材としての第2の物品を着脱自在に取り付けることのできる構造を提案している。これにより、第1の物品の表面をキャンバスに見立てて、その上に1又は2以上の装飾材の配置をコーディネートして、新たなデザインを作ったり、これを変更することが容易となる。また、装飾材同士のみでなく、第1の手段で述べた他用途物品も第1の物品のデザインの一部として組み込むことができ、これにより、アレンジの巾が広がる。「第1の物品」、「外側付着面」などの意味は第1の手段で述べたものと同じである。
【0026】
「装飾材」は、第1の物品の装飾を第1の機能としているが、それ以外にも、いろいろと役立つ機能を併せ持っている。第2の機能は、面ファスナーを施していない物品を保持することである。例えば旅行先で購入した切符などを鞄と装飾材との間に挟んでおくようにすると、確実に保持できるとともに、直ちに取り出すことができて便利である。その装飾材の裏面の一部には、切符や小銭を入れるためのポケットを付設しても良い。また補助的な機能として、上記装飾材は、光反射板としての機能を兼備するものでも良い。そうすることで、夜間に自動車のヘッドライトを反射するので、利用者の安全性が確保できる。更にまた、前述の通り、第1の物品の雌部でできた表面の上に、雌部でできたポケットを取付けておき、そのポケットの開口部から鞄の表面部分に渡って装着材を張り付けると、ポケットの蓋としての役割を果たすことができる。
【0027】
第4の手段は、第1の手段又は第3の手段を有し、かつ上記第1の物品の外表面の全体を、面ファスナーの雌部である外側付着面としている。
【0028】
このようにすることで、第2の物品の取付け箇所の自由度が広がり、第1の物品を目で見ていなくても、確実に取り付けることができる。
【0029】
第5の手段は、面ファスナーを利用して相互に着脱自在に設けた大小の物品の組み合わせのうち大物品として用いるための鞄であって、
上方に開口する収納口を有し、かつ周壁の前後又は左右の側外面のうち少なくとも最も広い一面を、鞄から独立した機能及び用途を有する小物品又は装飾材である小物品の取付け用の外側付着面として、面ファスナーの雌部で形成している。
【0030】
本手段では、第1の手段から第4の手段にいう第1の物品を鞄にしたものである。そうすることで、例えば携帯電話やガイドブックなどを鞄の中にしまっておく保管方法と、鞄の表面に取り付けておく保管方法とを適宜に選ぶことができ、利便性が高まるからである。本明細書において、「鞄」とは、面ファスナーの雌材(布地に多数雌部を植設してなる素材をいう)を表面材又は基材として用いて、さまざまな物を入れるように形成した携帯用具をいい、リュックサックやランドセルなどを含む。但し特定の物品の表面を覆う布状のカバーや風呂敷などは対象外である。その特定物品を保持する前提として「鞄」自体がある程度の定形性と強度を有することが必要だからである。
【0031】
尚、本手段では、物品の外表面の半分に拘らず、周壁の前後・左右各面のうち最も広い一面(代表面)を外側付着面としている。鞄の代表的な形として、前後面の横巾が左右面及び底面よりも広くした横長の形状としたときには、その前後各面は外表面の面積の半分にやや足りない。しかし前後各面の何れかを外側付着面とすれば、鞄を見なくても物品を取り付けることができる。本手段は、第1、第3の手段と同様の効果を奏する。
【0032】
第6の手段は、第5の手段を有し、かつ上記周壁の内面の全部又は一部を、上記小物品の仮止め又は装着のための内側付着面として、面ファスナーの雌部で形成した。
【0033】
本手段では、鞄の内側に内側付着面を形成して、キーホルダーや小銭入れなどの小物類を内側付着面に付着させ、収納品の整理・整頓に役立つようにしたものである。特に外出中に良く使用する物を貼着させておくことで、出し入れを早く行うことができる。
【0034】
第7の手段は、第5の手段を有し、かつ肩掛け用のバンドを有し、上記側外面に代えて、或いはこの側外面とともに、肩掛けバンドの全長に亘って上記外側付着面を形成している。
【0035】
このような構成とすることで、肩掛けバンドに携帯電話を取り付けた状態で通話を行うことができる。
【発明の効果】
【0036】
第1の手段、第3の手段に係る発明によれば、次の効果を奏する。
○第1の物品の外側付着面は、面ファスナーの雌部で形成したから、触り心地が良い。
○外側付着面は、第1の物品の外表面の少なくとも半分を占めるから、およその位置を把握すれば、目で見なくても第2の物品を取り付けることができ、取付けが容易である。
【0037】
また第1の手段に係る発明によれば、次の効果を奏する。
○第1の物品の外側付着面に第2の物品を仮止めして一体的に運べるので便利である。
○外側付着面は鞄のポケットの代わりになるので、構造が簡単にすることができる。
○外側付着面に付した小銭入れをスリが無理に剥がそうとすると、引っ張り感とともに面ファスナーを剥がすときの固有音が生ずるので、容易に盗難に気づくことができる。
【0038】
第2の手段に係る発明によれば、外側付着面のうちの一部を、雌材のみで形成した正付着面部分としたから、この部分を介して比較的重さのあるパウチを確実に支持することができるとともに、外側付着面の残りの部分を、雌雄混成の副付着面部分としたから、この部分を介して、軽量なパウチ自体を、表面を雌部した鞄や衣類などに取り付けることができ、持ち運び及び保管が楽になるので、便利である。
【0039】
第3の手段に係る発明によれば、次の効果を生ずる。
○上記外側付着面で、装飾材である第2の物品を自由に着脱したり、移動できるから、いわば物品の外表面をキャンバスにして新規なデザインをアレンジすることができる。
○外側付着面はポケットの代わりとなり、従って第1の物品の外表面にポケットを作る必要がないので、装飾材の取付けに適した平らな面を広く確保でき、装飾効果が高まる。
○装飾材の裏面の一部と第1の物品の間に、面ファスナーを施していない普通の物品を挟んで装飾材を保持具として利用することができ、利用価値が広がる。
【0040】
第4の手段に係る発明によれば、上記第1の物品の外表面の全体を、面ファスナーの雌部である外側付着面としたから、第2の物品の取付け箇所の自由度が増大する。
【0041】
第5の手段に係る発明によれば、鞄の周壁4の前後又は左右の側外面のうち少なくとも最も広い一面を、面ファスナーの雌部で形成した外側付着面としたから、小銭入れやガイドブックなど外出中に使用する小物を予め外側付着面に貼着しておくことができる。
【0042】
第6の手段に係る発明によれば、上記周壁の内面の全部又は一部を、上記小物品の仮止め又は装着のための内側付着面として、面ファスナーの雌部で形成したから、収納品の整理・整頓に役立つ。
【0043】
第7の手段に係る発明によれば、肩掛け用のバンドを有し、上記側外面に代えて、或いはこの側外面とともに、肩掛けバンドの全長に亘って上記外側付着面を形成したから、この肩掛けバンドに携帯電話を付設し、鞄を肩に掛けた状態で通話をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
図1から図5は、本発明の第1の実施形態に係る第1、第2物品の組み合わせを示している。
【0045】
第1の物品2は、鞄であり、上端開口の周壁4と、この周壁の下面とを閉塞する底壁(図示せず)とを有し、かつ、上記周壁に一対の肩掛け用バンド6を備えている。上記周壁4の上面全体は物品の収納口5に形成する。
【0046】
この第1の物品2の外面には、面ファスナーの雌部で外側付着面8を形成する。この図示例では、上記周壁4の外面全体を外側付着面にしてもよいが、例えば巾狭の左右側面を除いて、周壁の前面及び後面のみを外側付着面にしてもよく、これとは逆に底壁の下面と周壁の全外面とを内側付着面14としても良い。この第1の物品は、鞄の強度を確保するために、底板や前後側板の基材を適当な材料で形成し、その上に、多数の雌部を植え付けてなる面ファスナーを貼着して形成すると良い。もっとも、そうした面ファスナーの素材のみで鞄を形成しても構わない。上記外側付着面8は、鞄のポケットの代わりとしての機能を有し、その結果として、図1に示す如く、鞄の外表面全体を凹凸の少ない、ほぼ平坦な形状とすることができる。そうすると、後述の装飾材を取付け面としての外側付着面を広く確保することができ、従って、第1の物品の外面に、利用者が好むデザインをダイナミックに構成することができる。
【0047】
第2の物品は、上記外側付着面に取り付けられる程度の大きさの物品であり、第1の物品とは用途と機能の異なる物品(以下他用途物品という)10A、10C、10Dと、第1の物品の装飾材10Bとの2種類がある。前者は、携帯電話やキーホルダーなどであり、後者は、ワッペン状の装飾板である。この装飾板同士の間で配置を適宜変更することができるのはもちろんであるが、他用途物品の形態も第1の物品のデザインの一部として、従来にない意匠効果を発揮することができる。例えば図示例では、鞄の前面に、現実の携帯電話と、電話の絵柄のワッペンとを並べて、鞄のデザインを構成している。
【0048】
他用途物品10A、10C、10Dの場合には、図2に示す如く、その物品の外表面のうち、物品の機能に支障を生じない部分であって最も面積の広いものに雄型の面ファスナーを貼着して、被付着面12を形成する。また、装飾材10Bの方は、その裏面全体を雄型の面ファスナーに形成し、表面に模様を形成すればよい。
【0049】
上記構成において、第1の物品2である鞄の表面に他用途物品10A、10C、10Dを取り付けるときには、他用途物品の被付着面12を鞄の側に向けて、この雄部及び外側付着面8の雌部とを接合させればよい。この外側付着面8は、鞄の外周面全体に亘って形成しているので、利用者が鞄の方に目をやらなくても確実に接合することができる。上記雄部と雌部とが接合された後には、これを再び分離させると必ず剥離音を生ずるため、スリなどが他用途物品を不正に剥がそうとすると、直ちに掏り行為が発覚する。本発明の構成では、他用途物品が第1の物品2の表面に剥き出しになっているので、盗難に対して無防備のようであるが、実際には必ずしもそうではない。鞄の内部に物品を入れておいても、鞄の蓋を閉め忘れたり、あるいは図示例の如く蓋がない場合には、スリによって知らずに品物が盗まれる可能性がある。
【0050】
上述の鞄の使い方としては、さまざまであるが、以下に好適な例を挙げる。1番目の例は、他用途物品10A、10C、10Dを一時的に外側付着面8に仮留めする場合である。具体的には、旅行の移動中には旅行鞄の中にガイドブックを入れておき、目的地についたら、片手にガイドブックを、もう一方の手に鞄を持って観光し、その途中で例えば自動販売機等の操作のために片手を開けることが生じたら、一時的にガイドブックを鞄の外側付着面8に仮留めし、操作が終わったら、ガイドブックを再び片手に持ち直せばよい。2番目の例は、他用途物品10Aが外側付着面8に張り付いている状態を常態とする場合である。例えば近所に買い物などに出かけるときには、予め小銭入れや携帯電話を鞄2の外側付着面8に取り付けておき、必要に応じてこれら小物類を使用し、使い終わったら、外側付着面に戻せばよい。どちらの使い方を選ぶかは、個人の好みや場所の雰囲気、或いは服装次第である。鞄に小物類が張り付いていることが違和感のあるようなきっちりした服装ならば一時的にのみ外側付着面を利用すればよい。
【0051】
図3は、本実施形態の一の変形例であり、鞄の周壁4内部に、面ファスナーの雌部で形成する内側付着面14を形成したものである。この構成によれば、他用途物品10Cを鞄の内側に装着することができる。鞄の収納口5付近に他用途物品を付着させておけば出し入れもスムーズに行うことができる。
【0052】
図4は、本発明の更に他の変形例である。この例では、鞄の肩バンドの少なくとも一面全体に面ファスナーの雌材を設けて外側付着面8としたものである。こうすることで肩バンドの任意の場所に携帯電話を取り付けておくことができる。特に肩バンドの長手方向中間部に携帯電話をセットすると、図面に示す如く、セットした状態のままで通話が可能となる。この携帯電話は、図示の如く本体と蓋体とを開閉自在な2つ折りタイプとし、この本体裏面に被付着面12を形成すると、この携帯電話を開いた状態で本体側の送話口を口元に、また蓋体側の受話口を耳に近づけて容易に会話することができる。
【0053】
肩バンドの長手方向全体に代えて、肩バンドの長手方向中間部にのみ、面ファスナー(外側付着面)を形成することも可能である。
【0054】
尚、図示例では、肩バンドが1本だけであるが、図3に示すように肩バンドを2本としても良く、この場合には、双方の肩バンドの一面に外側付着面8を形成し、2本の肩バンドの両方に跨がって携帯電話を取り付けることができるようにすると、良い。また、各肩バンドの他面の全部又は一部(好ましくは長手方向中間部)に面ファスナーの雄材を設けて被付着面とし、雌雄の面ファスナーを介して、2本の肩バンドを結束できるようにしても良い。
【0055】
図5及び図6は、本発明の第2の実施形態を示している。図5は、第1の物品2を、衣類である半ズボン及びリストバンドにして装着した状態を、また、図6は、前述のリストバンド及びパウチを、これらを保持するための支持板20に取り付けた状態をそれぞれ描いている。尚、支持板は家の壁面などの適所に固定されている。
【0056】
まず半ズボンに関して述べると、その表面全体は、雌部を利用した面ファスナーで形成した外側付着面8とするものである。図示例では、この外側付着面8に、他用途物品である携帯電話10Cと、装飾材10Bである装飾板とを装着している。
半ズボンに装着した装飾材10Bの裏面の中央部分には、小銭などを入れるための上面開口のポケット16を付設している。少なくとも裏面の周辺部分を面ファスナーの雌部で形成している。
また、リストバンドは、その外表面の全体を外側付着面8とするとともに、この外側付着面の一半部を、パウチなどを取り付けるための正付着面部分8Aとして雌部のみで形成し、また他半部を、上記半ズボンに取り付けるための副付着面部分8Bとして、雄・雌半分ずつで形成している。
第2の物品10Aであるパウチは、小型のバック型の形状で、その表面の一側部に雄部のみで形成する被付着面12としている。また、パウチの裏面には、雌雄何れか一方又は双方で形成したパウチ支持面18としている。ここで、パウチの被付着面12全体の係合力(この面に付設された各雄部の係合力の和)は、パウチ支持面18の全体の係合力(この面に付された各雄部の係合力の総和、又は各雌部の係合力の総和)よりも小さく設定するとよく、そうすると、握力の弱い高齢者らにとっても、パウチをリストバンドから支持板20へ移動させるのが容易となる。
上記の構成において、図6に想像線で描くように、第1の物品2であるリストバンドに手を通した状態で、そのリストバンドの正付着面8Aを、第2の物品10Aであるパウチの被付着面12に重ねて接合させ、次にその手をパウチの片面にかけて、そのまま引っ張る。そうすると、パウチ支持面18と支持板20の表面とが剥離して、この支持板からパウチを分離させることができる。それと同時にパウチは被付着面12を介してリストに連係するから、手先の不自由な利用者でもパウチを床に落したりすることなく、保持することができる。尚、利用者の手先の障害の程度に応じて、必要であればもう片方の手をパウチの片面に添えても良い。
また、パウチを支持板20に戻すときには、パウチのパウチ支持面18を支持板20の表面に重ねて接触させた後に、支持板に対して垂直に腕を離せばよい。そうすると、パウチ支持面18の係合力に比べて、被付着面保12の係合力が小さく設定されているため、この被付着面とリストバンドの正付着面部分8Aとが剥離し、容易にパウチをリストバンドから支持面に移動させることができる。尚、支持板20に代えて例えば図1の鞄の表面に対する着脱も同様の手順で行うことができる。
【実施例】
【0057】
図7は、本発明の第1の実施例である。この例では、第1の物品2である鞄の前面を外側付着面8として、この面に、2匹のヒヨコを表す装飾材10B、及び、ハートマークの一半及び他半を表す装飾材10Bを用いて、これを組み合わせることでレイアウトを変更する例を表している。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る物品の組み合わせの斜視図である。
【図2】図1の組み合わせに係る第2の物品の斜視図である。
【図3】図1の組み合わせの変形例を示す図である。
【図4】図1の組み合わせの他の変形例を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る物品の組み合わせの斜視図である。
【図6】同実施形態の使用例を示す図である。
【図7】本発明の一の実施例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0059】
2…第1の物品 4…周壁 5…収納口 6…肩掛け用バンド
7…リストバンド 8…外側付着面
10A…第2の物品(収納具)10B…装飾材 10C…携帯電話 10D…本
12…被付着面 14…内側付着面
16…ポケット 18…パウチ支持面 20…支持板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物を収納して持ち運ぶため、或いは体に装着するための第1の物品と、この第1の物品から独立した機能と用途とを有する第2の物品との組み合わせであって、
第1の物品は、その外表面のうち少なくとも半分の面積を占める外側付着面を有し、
この外側付着面を面ファスナーの雌部で、第2の物品の外表面の一部である被付着面を面ファスナーの雄部でそれぞれ形成して、
この外側付着面上に第2の物品を仮止めできるようにするとともに、第2の物品を剥がしたときに剥離音を生ずるようにしたことを特徴とする、
面ファスナーを利用した相互に着脱自在な複数物品の組み合わせ。
【請求項2】
第1の物品2を、利用者の手首に嵌める筒状のリストバンドとし、第2の物品をパウチとする請求項1記載の複数物品の組み合わせであって、
上記リストバンドの外表面の全体を上述の外側付着面とするとともに、この外側付着面のうちの一側面を、雌部のみから成る正付着面部分とし、残りの部分を雌雄混在して成る副付着面部分とし、
上記パウチの表裏両面のうちの一方を、上記正付着面部分と接合するために雄部のみで形成した被付着面としたことを特徴とする、
請求項1記載の面ファスナーを利用した相互に着脱自在な複数物品の組み合わせ。
【請求項3】
物を収納して持ち運ぶため、或いは体に装着するための第1の物品と、この第1の物品より小さく、その装飾材としての機能を有する第2の物品との組み合わせであって、
第1の物品は、その外表面のうち少なくとも半分の面積を占める外側付着面を有し、
かつ第2の物品は、その外側付着面の任意の一部に取り付けられる程度の大きさとし、上記第1の物品2の外側付着面を、面ファスナーの雌部で、第2の物品の外表面の一部である被付着面を面ファスナーの雄部でそれぞれ形成して、
上記外側付着面内で、第1の物品自体のデザインと装飾材との間、或いは2以上の装飾材相互の間のコーディネートを自由に変更できるようにしたことを特徴とする、
面ファスナーを利用した相互に着脱自在な複数物品の組み合わせ。
【請求項4】
上記第1の物品の外表面の全体を、面ファスナーの雌部である外側付着面としたことを特徴とする、請求項1又は請求項3記載の面ファスナーを利用した相互に着脱自在な複数物品の組み合わせ。
【請求項5】
面ファスナーを利用して相互に着脱自在に設けた大小の物品の組み合わせのうち大物品として用いるための鞄であって、
上方に開口する収納口を有し、かつ周壁の前後又は左右の側外面のうち少なくとも最も広い一面を、鞄から独立した機能及び用途を有する小物品又は装飾材である小物品の取付け用の外側付着面として、面ファスナーの雌部で形成したことを特徴とする、鞄。
【請求項6】
上記周壁の内面の全部又は一部を、上記小物品の仮止め又は装着のための内側付着面として、面ファスナーの雌部で形成したことを特徴とする、請求項5記載の鞄。
【請求項7】
肩掛け用のバンドを有し、上記側外面に代えて、或いはこの側外面とともに、肩掛けバンドの全長に亘って上記外側付着面を形成したことを特徴とする、請求項5記載の鞄。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−237918(P2008−237918A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120395(P2008−120395)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【分割の表示】特願2006−250673(P2006−250673)の分割
【原出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(706002005)
【Fターム(参考)】