面光源装置、光学部材、該光学部材を用いた原稿読取装置及び面光源装置
【課題】2枚のプリズムシートに入射する光のうち、当該プリズムシートから正面方向に出射される光の割合を多くし、正面方向の輝度を従来装置よりも高めることができる面光源装置を提供する。
【解決手段】発光部23と、頂角90°のプリズムが所定ピッチで平行に形成された2枚のプリズムシート22とを備える面光源装置10において、発光部23は有機EL素子12と、仮想底面が矩形である立体形状の複数の光学素子18を有する光学素子シート17とを備えている。2枚のプリズムシート22は、面光源装置10の光取り出し側に、プリズムの延びる方向が互いに直交する状態となるように配置されており、光学素子シート17は発光部23の光出射面側に設けられている。そして、発光部23は、プリズムシート22のプリズムの延びる方向に対して方位角で45°をなす4方向の平均光度について、極角が30°〜70°にピークを持つ。
【解決手段】発光部23と、頂角90°のプリズムが所定ピッチで平行に形成された2枚のプリズムシート22とを備える面光源装置10において、発光部23は有機EL素子12と、仮想底面が矩形である立体形状の複数の光学素子18を有する光学素子シート17とを備えている。2枚のプリズムシート22は、面光源装置10の光取り出し側に、プリズムの延びる方向が互いに直交する状態となるように配置されており、光学素子シート17は発光部23の光出射面側に設けられている。そして、発光部23は、プリズムシート22のプリズムの延びる方向に対して方位角で45°をなす4方向の平均光度について、極角が30°〜70°にピークを持つ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面光源装置に関する。また、本発明は、光学部材、該光学部材を用いた原稿読取装置及び面光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置のバックライトとしてエレクトロルミネッセンス素子(以下、エレクトロルミネッセンス素子をEL素子と記載する場合もある。)を備えた照明装置が提案されている。EL素子から発せられた光はあらゆる方向に向かって放射される。従って、透明基板上にEL素子が形成された照明装置において、EL素子から透明基板に入射する光の角度は様々であり、透明基板に入射された光のうちの一部は透明基板の出射面で全反射して透明基板から出射できない。即ち、EL素子から透明基板に入射された光の透明基板からの取り出し効率が低いという問題がある。
【0003】
この問題を改善する技術として、透明基板の光出射面に微小レンズアレイ素子を設けたEL素子が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。図7に示すように、このEL素子50は、透明基板51と、透明基板51の下面に形成された透明電極52と、透明電極52の下面に形成されたEL発光層53と、EL発光層53の下面に形成された裏面電極54とから構成され、透明基板51の出射面に微小レンズアレイ素子55が設けられている。微小レンズアレイ素子55は、隣接して形成された多数の円錐状あるいは四角錐状のレンズ素子55aで構成されている。
【0004】
また、液晶パネル及び照明装置を備えた液晶装置であって、前記照明装置がEL素子を光源とした発光部と、該発光部上に配設されたプリズムシートとを備え、前記発光部を構成するEL素子の発光面側に、光を散乱させるための散乱手段が設けられた液晶装置が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。前記プリズムシートは、少なくとも一面側が、前記発光部から出射された光を集光するためのプリズム形状を有するプリズム面とされ、該プリズムの頂角が95°以上125°以下とされている。
【0005】
また、ファクシミリ、コピー、スキャナなどは、原稿に記載されている情報を読み取る原稿読取装置を有する。原稿読取装置においては、光源からの光を原稿に照射し、原稿で反射される光をセンサで受光する。そして、受光した光の強弱により原稿に記載されている情報を読み取る。
【0006】
近年、ファクシミリ等の装置にも小型化の要求が強まり、それに従い、ファクシミリ等に用いられる原稿読取装置も小型化する必要性が生じてきた。同時に、原稿を読み取る時間の短縮や読取画質の向上の要求も強く、原稿読取装置に用いられる光源からの光を強くする必要もある。
【0007】
これらの要求を同時に満たすために、たとえば特許文献1に記載の原稿読取装置では、原稿読取装置において、照明光源として長尺のEL(エレクトロルミネッセンス)素子を用いるとともに、このEL素子からの光をその幅方向に斜めに導いて読取部分に集光させるためのライトガイドとして多数の長尺の微小プリズムを前記EL素子と平行に配列して平板状に集積してなるプリズムアレイを用い、EL素子上に前記プリズムアレイを重ねたものをガラス板の直下にこれと平行に配設している。これにより、装置の小型化と読取画質の向上をはかっている。
【特許文献1】特開2003-59641号公報(明細書の段落[0008]、図1,3)
【特許文献2】特開2003-75834号公報(明細書の段落[0009]、図1)
【特許文献3】特開平6−217083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の構成では、規則正しく配列された微小レンズアレイ素子55により、特定の入射角度の光のみが透明基板51から正面方向(図7の上方)に出射することとなり、特定の入射角度以外の光は、光出射面での全反射と裏面電極54(金属電極)での反射とを繰り返したり、正面方向以外に出射したりする。従って、正面方向以外に出射する光も多く存在するため、高輝度化が難しい。
【0009】
また、特許文献2の構成の照明装置では、散乱手段がEL素子の発光面側に設けられており、散乱手段によって光の取り出し効率を向上させてから、その取り出された光をプリズムシートで集光している。このため、特許文献1の構成に比較して高輝度化が容易である。しかし、特許文献2ではプリズムシートは1枚しか使用していない。
【0010】
特許文献2に記載されているような、側面三角波状の周期的な凹凸が形成されたプリズムシートを使用して照明装置の正面輝度をさらに高くする方法として、発光部の光出射面に対して2枚のプリズムシートをプリズムの延びる方向が直交する状態となるように配置するという構成が考えられる。この構成を用いた場合、各プリズムシートのプリズムの頂角が90°の時に最も正面輝度が高くなる。一方で、この構成を持つ照明装置では、発光部の光出射面から出射される光のうち、極角で50°付近の方向に出射した光をプリズムシートで集光して正面方向に出射している。従って、さらなる高輝度化のためには、発光部から出射される光のうち、極角で50°付近の方向に出射する光を多くする必要がある。しかし、特許文献2に記載の、光取り出し面に設けられる散乱手段では、発光部は様々な方向に光を出射することになるため、極角で50°付近の方向に出射される光を多くすることはできない。従って、さらなる高輝度化が困難である。
【0011】
本発明は、前記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は2枚のプリズムシートに入射する光のうち、当該プリズムシートから正面方向に出射される光の割合を多くし、正面方向の輝度を従来装置よりも高めることができる面光源装置を提供することにある。
【0012】
また、特許文献3に記載されているような、EL素子からの光を集光するためのプリズムアレイ等の光学部材を用いると、確かに集光方向の輝度を向上させることができるが、照明対象である原稿の読取部分での照度は逆に低下する場合もある。これは、EL素子からの光が光学部材を透過する間に減衰してしまうからである。
【0013】
また、EL素子からの光を取り出すための拡散シート等の光学部材を用いると、確かに光を効率良く取り出すことができ、光の利用効率を向上させることができるが、特定方向に光を取り出すことができない。これは、EL素子からの光が拡散シートによって拡散されてしまい、特定方向(原稿読取装置においては、原稿の読取部分)のみに多くの光を取り出せないからである。
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、特定方向に光を取り出すことのできる光学部材を提供することであり、また、そのような光学部材を用いた原稿読取装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、発光部と、頂角90°のプリズムが所定ピッチで平行に形成された2枚のプリズムシートとを備える面光源装置である。発光部は、エレクトロルミネッセンス素子と、発光部の光出射面側に設けられた立体形状の複数の光学素子とを備えており、エレクトロルミネッセンス素子は、陽極と、発光層と、陰極とを備えている。2枚のプリズムシートは、面光源装置の光取り出し側に、プリズムの延びる方向が互いに直交する状態となるように配置されており、発光部は、プリズムシートのプリズムの延びる方向に対して方位角で45°をなす4方向の平均光度について、極角が30°〜70°にピークを持つ。ここで、「極角」とは、発光部の光出射面に対する垂直方向と成す角度を意味しており、例えば、光出射面から垂直に出射する光は極角0°である。
【0015】
この発明では、発光部から出射される光において、極角50°付近の方向に出射する光を多くすることができ、2枚のプリズムシートを使用した場合の面光源装置の正面方向の輝度を従来装置よりも高めることができる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、発光部と、頂角90°のプリズムが所定ピッチで平行に形成された2枚のプリズムシートとを備える面光源装置である。発光部は、エレクトロルミネッセンス素子と、発光部の光出射面側に設けられた仮想底面が矩形である立体形状の複数の光学素子とを備えており、エレクトロルミネッセンス素子は、陽極と、発光層と、陰極とを備えている。2枚のプリズムシートは、面光源装置の光取り出し側に、プリズムの延びる方向が互いに直交する状態となるように配置されており、発光部は、光学素子の仮想底面の一つの辺が延びる方向に対して方位角で45°をなす4方向の平均光度について、極角が30°〜70°にピークを持つ。
【0017】
この発明でも、発光部から出射される光において、極角50°付近の方向に出射する光を多くすることができ、2枚のプリズムシートを使用した場合の面光源装置の正面方向の輝度を従来装置よりも高めることができる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、光学素子は、仮想底面が矩形状で、対向する二つの三角形状側面と、対向する二つの非対称な台形状側面とを備えた五面体で構成されている。二つの台形状側面の接合線を含み仮想底面に垂直な断面における台形の一方の底角を角度θ1、他方の底角を角度θ2、台形状側面の接合線と直交し、仮想底面に垂直な断面における三角形の一方の底角を角度θ3、他方の底角を角度θ4とした場合、角度θ1,θ2,θ3,θ4が次の関係を満足する。10°≦角度θ3≦25°、45°≦角度θ4≦85°、60°≦角度θ1+角度θ2≦130°。
【0019】
この発明では、仮想底面が矩形で特定の条件を満たす五面体で光学素子を構成することにより、発光部から出射される光において、極角50°付近の方向に出射する光を多くすることができ、2枚のプリズムシートを使用した場合の面光源装置の正面方向の輝度を従来装置よりも高めることができる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、光学素子の仮想底面は正方形である。
【0021】
また、上記の目的を達成するために鋭意研究開発した結果、本願の発明者らは、光学部材として、立体形状の複数の光学素子を備えることを想到するに至り、本願発明を完成させた。すなわち、請求項5に記載の発明は、複数の光学素子の少なくとも一部は、仮想底面が矩形状で、対向する二つの三角形状側面と、対向する二つの非対称な台形状側面とを備えた仮想底面を含む五面体で構成されている光学部材である。
【0022】
この発明によれば、二つの三角形状側面と、二つの台形状側面の四面から光を取り出すことができるため、特定方向に光を取り出すことができる。ここで、本発明における「光学部材」とは、この光学部材を設けない場合には、有機EL素子と空気との屈折率との差により有機EL素子の内部に全反射を繰り返してしてしまい有機EL素子の外部に取り出すことができない光を、外部に取り出すための光学部材を指す。このような機能を有する光学部材を光源の光出射側に設けることにより、光源内部で発生する光を効率的に照明対象に照射することが可能となる。
【0023】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、複数の光学素子の少なくとも一部は、二つの台形状側面の接合線を含み仮想底面に垂直な平面による断面における台形の一方の底角を角度θ1、他方の底角を角度θ2、台形状側面の接合線と直交し、仮想底面に垂直な断面における三角形の一方の底角を角度θ3、他方の底角を角度θ4とした場合、角度θ3とθ4とが次の関係を満足する。角度θ3<角度θ4。
【0024】
この発明においても、仮想底面が矩形で特定の条件を満たす五面体で光学素子を構成することにより、特定方向に光を取り出すことができる。即ち、角度θ1〜角度θ4の角度を、角度θ3<角度θ4を満たす範囲内で、それぞれ任意の角度に選択することにより、取り出したい方向に光を出射することができる。
【0025】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は請求項6に記載の発明において、光学素子は全て同一形状である。
【0026】
請求項8に記載の発明は、請求項5〜7のいずれか一項に記載の発明において、光学素子の仮想底面は正方形である。
【0027】
請求項9に記載の発明は、請求項5〜8のいずれか一項に記載の発明において、複数の光学素子はマトリクス状に配置されている。
【0028】
本願の別の発明である請求項10に記載の発明は、照明装置と、センサと、原稿を載置する透明板とを有する原稿読取装置である。この発明で、照明装置は、線状に形成された有機EL素子よりなる光源と、この光源に対して光が出射される側に設けられた請求項6〜9のいずれか一項に記載された光学部材とを有しており、光源からの光を光学部材により原稿の読取対象部分の方向へ出射し、照明装置を透明板に沿って走査して、原稿で反射された光をセンサで読み取る。光学部材の光学素子は、台形状側面の接合線が、光源の長手方向と平行になるように配置されており、仮想底面に垂直な断面における三角形の底角のうち、読取対象部分に近い方の角度をθ4、他方の底角をθ3とすることを特徴とする。
【0029】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の発明において、複数の光学素子は、読取対象部分に近い側から遠い側へ配置されるに従い、角度θ3が大きくなる。
【0030】
請求項12に記載の発明は、請求項10又は請求項11に記載の発明において、照明装置をセンサに対して対称に2つ設ける。照明装置をセンサに対して対称に2つ設けることにより、原稿上の照度を更に上げることができる。
【0031】
また、請求項13に記載の発明は、発光部と、頂角90°のプリズムが所定ピッチで平行に形成された2枚のプリズムシートとを備える面光源装置である。発光部は、エレクトロルミネッセンス素子と、発光部の光出射面側に設けられた請求項7〜9のいずれか一項に記載の光学部材とを備えており、エレクトロルミネッセンス素子は、陽極と、発光層と、陰極とを備えている。2枚のプリズムシートは、面光源装置の光取り出し側に、プリズムの延びる方向が互いに直交する状態となるように配置されており、発光部は、プリズムシートのプリズムの延びる方向に対して方位角で45°をなす4方向の平均光度について、極角が30°〜70°にピークを持つ。ここで、「極角」とは、発光部の光出射面に対する垂直方向と成す角度を意味しており、例えば、光出射面から垂直に出射する光は極角0°である。光学部材の光学素子は、仮想底面が矩形状で、対向する二つの三角形状側面と、対向する二つの非対称な台形状側面とを備えた五面体で構成されている。二つの台形状側面の接合線を含み仮想底面に垂直な断面における台形の一方の底角を角度θ1、他方の底角を角度θ2、台形状側面の接合線と直交し、仮想底面に垂直な断面における三角形の一方の底角を角度θ3、他方の底角を角度θ4とした場合、角度θ1,θ2,θ3,θ4が次の関係を満足する。10°≦角度θ3≦25°、45°≦角度θ4≦85°、60°≦角度θ1+角度θ2≦130°。
【0032】
この発明では、仮想底面が矩形で特定の条件を満たす五面体で光学素子を構成することにより、発光部から出射される光において、極角50°付近の方向に出射する光を多くすることができ、2枚のプリズムシートを使用した場合の面光源装置の正面方向の輝度を従来装置よりも高めることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、2枚のプリズムシートに入射する光のうち、当該プリズムシートから正面方向に出射される光の割合を多くし、正面方向の輝度を従来装置よりも高めることができる。
【0034】
更に、本願発明によれば、特定方向に光を取り出すことができる光学部材、そのような光学部材を用いた原稿読取装置及び面光源装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図6に従って説明する。図1(a)は面光源装置の模式図、(b)は(a)の部分模式斜視図、図2(a)は光学素子の平面図、(b)は(a)のB-B線断面図、(c)は(a)のC-C線断面図である。なお、図1(a)は面光源装置の構成を模式的に示したものであり、図示の都合上、一部の寸法を誇張して分かり易くしているために、それぞれの部分の幅、長さ、厚さ等の寸法の比は実際の比と異なっている。また、図2(b),(c)ではハッチングを省略している。
【0036】
図1(a)に示すように、面光源装置10は、発光部23と、2枚のプリズムシート22とを備えている。
発光部23は、基板11と、基板11の光出射側と反対側の面に設けられたエレクトロルミネッセンス素子としての有機EL素子12とを備えている。この実施形態では基板11として透明なガラス基板が使用されている。
【0037】
有機EL素子12は、基板11側から第1電極13、発光層を含む有機EL層14及び第2電極15、保護部16が順に積層されて形成されている。有機EL素子12は、有機EL層14からの光が基板11側から取り出される(出射される)所謂ボトムエミッション型の有機EL素子を構成している。第1電極13及び第2電極15は、例えば、ベタ電極で構成され、この実施形態では第1電極13が陽極を構成し、第2電極15が陰極を構成する。
【0038】
第1電極13は公知の透明な導電性材料で形成されており、例えば、ITO(インジウム錫酸化物)や、IZO(インジウム亜鉛酸化物)、ZnO(酸化亜鉛)、SnO2(酸化錫)等を用いることができる。
【0039】
有機EL層14は、公知の有機EL材料を用いて単層又は多層状に形成され、有機EL素子12の目的とする発光色に応じて構成されている。
第2電極15は、従来用いられている公知の陰極材料や第1電極13と同様の材料等が使用でき、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、クロム等の金属やこれらの合金が用いられる。この実施形態では光反射性を有するアルミニウムが使用されている。
【0040】
有機EL素子12には、有機EL層14を酸素及び水分から保護するための保護部16が設けられており、この実施形態では保護部16は、公知のパッシベーション膜、例えば、窒化ケイ素膜で構成されている。
【0041】
また、図1(a)に示すように、発光部23は、基板11の光出射側の面に光学部材としての光学素子シート17を備えている。光学素子シート17は、図1(b)に示すように、複数の光学素子18がマトリックス状に設けられている。
【0042】
光学素子シート17は、透明な材質で形成されるとともに、光学素子18が形成された面と反対側の面において接着剤(図示せず)を介して基板11に接着されている。この実施形態では光学素子シート17は、透明な樹脂、例えば、アクリル、ポリエチレン、ポリカーボネイト等で形成されるとともに、型によって各光学素子18が作製されている。接着剤には、光学素子シート17の屈折率と同じ又は近い屈折率を有する紫外線硬化型接着剤や高分子系接着剤等が使用されている。「近い屈折率」とは、屈折率の差が数%以内であることを意味する。
【0043】
図2(a),(b),(c)に示すように、各光学素子18は、仮想底面が矩形状で、対向する二つの三角形状側面19a,19bと、対向する二つの台形状側面20a,20bとを備えた五面体で構成されている。この実施形態では仮想底面は正方形に形成されている。
【0044】
光学素子18は、二つの台形状側面20a,20bが非対称となるように形成されている。台形状側面20a,20bの接合線21を含み仮想底面に垂直な断面における台形の一方の底角を角度θ1、他方の底角を角度θ2、台形状側面20a,20bの接合線21と直交し、前記仮想底面に垂直な断面における三角形の一方の底角を角度θ3、他方の底角を角度θ4とした場合、角度θ1,θ2,θ3,θ4が次の関係を満足する。
【0045】
10°≦角度θ3≦25°
45°≦角度θ4≦85°
60°≦角度θ1+角度θ2≦130°
光学素子18の大きさは、使用する光の波長の数倍(例えば、5倍)以上で、200μm以下の範囲が好ましい。光の波長の数倍未満だと光の干渉の影響を受けて好ましくなく、200μmより大きいと光学素子18一つ一つの明暗が視認されるようになる可能性があるため好ましくない。
【0046】
面光源装置10を構成する2枚のプリズムシートは、図1(a)に示すように、発光部23の光出射面を形成する光学素子シート17と対向するように、面光源装置10の光取り出し側に配置される。2枚のプリズムシート22は頂角が90°のプリズムを備え、プリズムの延びる方向が互いに直交するように配置される。2枚のプリズムシート22のうち、光学素子シート17と対向するように(図1(a)における下側に)配置されるプリズムシート22は、そのプリズムの延びる方向が光学素子18の接合線21と平行になるように配置される。
【0047】
次に前記のように構成された面光源装置10の作用を説明する。
面光源装置10は、例えば、液晶表示装置のバックライトとして使用される。
有機EL素子12の第1電極13及び第2電極15間に直流駆動電圧が印加されると、有機EL層14が発光する。有機EL層14が発した光は、第1電極13を介して基板11に入射する。基板11に入射した光のうち光学素子シート17に向かって進んだ光の大部分が光学素子シート17から出射する。
【0048】
発光部23の光出射面に光学素子シート17に代えて拡散シートを設けた場合は、発光部23から出射される光については、極角が0°付近の方向に出射される光が最も多くなり、極角が50°付近の方向に出射する光は少ない。一方、この実施形態では、特定の形状の五面体構造の光学素子18がマトリックス状に配置された光学素子シート17が発光部23の光出射面に設けられているため、極角が50°付近の方向に出射する光の割合が多くなる。ここで「極角」とは、図3に示すように、出射面P1に対して垂直な線と成す角度を意味する。また、方位角とは、出射面P1内において基準線と成す角度を意味する。この実施形態では、出射面P1は各側面19a,19b,20a,20bではなく、基板11と平行な仮想的な面として説明している。
【0049】
また、極角が50°付近の方向に出射する光の割合は、光学素子18の各側面19a,19b,20a,20bにおいて同じではなく、台形状側面20aにおいて最も大きくなる。三角形状側面19a,19bから極角が50°付近の方向に出射する光は台形状側面20a,20bから出射される光より少ない。三角形状側面19a,19bは光学素子シート17全体から出射される光を増加させる役割を果たす。
【0050】
1辺の長さが50μmである正方形の仮想底面を持つ光学素子18が複数形成された20mm×30mmの大きさの光学素子シート17及び2枚のプリズムシート22を備える面光源装置10の正面輝度について、光学素子18の角度θ1,θ2,θ3,θ4を種々変更してシミュレーションによる解析を行った。その中で最も良い結果の角度条件について光学素子シート17を作製した。そして、作製した光学素子シート17及びプリズムシート22を備える面光源装置10について、発光部23からの取り出し光量(A)、プリズムシート22からの取り出し光量(B)、プリズムシート22からの正面光の(極角15°以内の光)取り出し光量(C)、基板11側面からの漏れ光量(D)等について測定を行った。また、光学素子シート17に代えて市販の拡散シートを備えた面光源装置についても同様の測定を行った。光量A,B,C,Dは図1(a)の各矢印に相当する。
【0051】
図4に、発光部23の光出射面に実施形態の光学素子シート17を設けた場合と、入手できた最良の拡散シートを設けた場合の、発光部23からの各極角における光度について示す。ここで、縦軸は、最良の拡散シートを備える発光部23の極角0°方向における光度を1とした場合の相対値である。また、入手できた幾つかの拡散シートを使用して同様の測定を行い、全ての測定値の平均値についても合わせて図示した。実施形態の光学素子シート17の角度条件は、角度θ1=50°、角度θ2=40°、角度θ3=25°、角度θ4=75°の場合である。
【0052】
なお、図4において、各測定点を結ぶ線は、同じ条件の測定点をグループ化するために描かれたものであり、測定点間の値を示すものではない。
表1に図4に示す実施形態の面光源装置10及び最良の拡散シートを使用した面光源装置10についての前記各光量等の値を示す。なお、各光量の値は光源の光量の値を100とした場合の相対値である。(ここで「光源」とは、光を発する部分を示し、例えばこの実施形態では、有機EL素子12を示す。)
【0053】
【表1】
表1から、発光部23の光出射面に実施形態の光学素子シート17を設けた場合は、最良の拡散シートを設けた場合よりも、面光源装置10のプリズムシート22からの正面光の取り出し光量は約1割増加することが確認できる。
【0054】
また、図4から、実施形態の光学素子シート17を設けた発光部23では、極角23°〜70°の範囲において、各極角における光度が、最良の拡散シートを設けた発光部23の光度よりも大きくなっていることが確認される。そして、極角25°〜50°の範囲における実施形態の光学素子シート17を設けた発光部23の光度は、最良の拡散シートを設けた発光部23の極角0°における光度よりも大きくなっていることが確認される。従って、拡散シートを使用した従来構成に比較して、光学素子シート17を使用した場合は、プリズムシート22から取り出される正面光の光量が増加することが裏付けられる。
【0055】
次に、角度θ1,θ2をそれぞれ37.5°とし、角度θ3,θ4を変化させた場合の輝度上昇度についてのシミュレーションによる解析結果を、図5及び表2に示す。また、角度θ1,θ2を等しい値とし、角度θ1と角度θ2の合計値を変化させるとともに、角度θ3を25°で一定として、角度θ4を変化させた場合の輝度上昇度についてのシミュレーションによる解析結果を、図6及び表3に示す。ここで「輝度上昇度」とは、最良の拡散シートが設けられた発光部23及び2枚のプリズムシート22を備える面光源装置10の正面輝度を1とした場合の、拡散シートに代えて光学素子シート17を配置した面光源装置10の正面輝度の相対値を意味する。
【0056】
なお、図5及び図6において、各解析点を結ぶ線は、同じ条件の解析点をグループ化するために描かれたものであり、解析点間の値を示すものではない。
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
図5及び表2から、10°≦角度θ3≦25°のときに、光学素子シート17を備えた面光源装置10が、最良の拡散シートを備えたものより正面輝度が大きくなることが確認される。また、図6及び表3から、45°≦角度θ4≦85°かつ60°≦角度θ1+角度θ2≦130°のときに、光学素子シート17を備えた面光源装置10が、最良の拡散シートを備えたものより正面輝度が大きくなることが確認される。
【0059】
前記の例ではいずれも角度θ1及び角度θ2が同じ角度であったが、角度θ1及び角度θ2は同じに限らず異なる場合でも、最良の拡散シートに代えて光学素子シート17を配置することにより、面光源装置10の正面輝度が最良の拡散シートを備える場合より大きくなることがシミュレーション解析により確認された。この解析結果を表4及び表5に示す。なお、表4は、角度θ3=15°、角度θ4=65°の条件で角度θ1及び角度θ2を変更した場合の例を示し、表5は、角度θ3=15°、角度θ4=75°の条件で角度θ1及び角度θ2を変更した場合の例を示す。
【0060】
【表4】
【0061】
【表5】
この実施形態では以下の効果を有する。
【0062】
(1)面光源装置10は、発光部23と、頂角90°のプリズムが所定ピッチで平行に形成された2枚のプリズムシート22とを備えている。発光部23は、有機EL素子12と、該発光部23の光出射面側に設けられた仮想底面が矩形である立体形状の複数の光学素子18とを備えており、有機EL素子12は、陽極としての第1電極13、発光層を含む有機EL層14、陰極としての第2電極15とを備えている。そして、2枚のプリズムシート22は、面光源装置10の光取り出し側に、プリズムの延びる方向が互いに直交する状態となるように配置されており、発光部23は、プリズムシート22のプリズムの延びる方向に対して方位角で45°をなす4方向の平均光度について、極角が30°〜70°にピークを持つ。従って、発光部23から出射される光のうち、極角50°付近の方向に出射する光を多くすることができ、2枚のプリズムシート22を使用した場合の面光源装置10の正面方向の輝度を従来装置よりも高めることができる。
【0063】
(2)面光源装置10は、発光部23と、頂角90°のプリズムが所定ピッチで平行に形成された2枚のプリズムシート22とを備えている。発光部23は、有機EL素子12と、該発光部23の光出射面側に設けられた仮想底面が矩形である立体形状の複数の光学素子18とを備えている。有機EL素子12は、陽極としての第1電極13、発光層を含む有機EL層14、陰極としての第2電極15とを備えている。そして、2枚のプリズムシート22は、面光源装置10の光取り出し側に、プリズムの延びる方向が互いに直交する状態となるように配置されており、発光部23は、光学素子18の仮想底面の一つの辺が延びる方向に対して方位角で45°をなす4方向の平均光度について、極角が30°〜70°にピークを持つ。従って、発光部23から出射される光のうち、極角50°付近の方向に出射する光を多くすることができ、2枚のプリズムシート22を使用した場合の面光源装置10の正面方向の輝度を従来装置よりも高めることができる。
【0064】
(3)光学素子18は、仮想底面が矩形状で、対向する二つの三角形状側面19a,19bと、対向する二つの台形状側面20a,20bとを備えた五面体で構成されている。二つの台形状側面の接合線21を含み仮想底面に垂直な断面における台形の一方の底角を角度θ1、他方の底角を角度θ2とし、台形状側面の接合線21と直交し仮想底面に垂直な断面における三角形の一方の底角を角度θ3、他方の底角を角度θ4とした場合、角度θ1,θ2,θ3,θ4が次の関係を満足する。10°≦角度θ3≦25°、45°≦角度θ4≦85°、60°≦角度θ1+角度θ2≦130°。従って、発光部23から出射される光のうち、極角50°付近の方向に出射する光を多くすることができ、2枚のプリズムシート22を使用した場合の面光源装置10の正面方向の輝度を従来装置よりも高めることができる。
【0065】
(4)光学素子18は、光学素子18を複数備える光学素子シート17を基板11に貼付することにより有機EL素子12に設けられている。従って、光学素子18を基板11に直接形成する場合に比較して、光学素子18の形成(加工)が容易になる。
【0066】
(5)面光源装置10の発光部は有機EL素子12で構成されている。従って、無機EL素子を使用する場合に比較して低電圧で駆動することができる。
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように構成してもよい。
【0067】
○ 発光部23の光出射面に設けられる光学素子18の形状は、頂角が90°のプリズムが所定ピッチで平行に形成された2枚のプリズムシートをプリズムの延びる方向が互いに直交する状態で発光部の光出射側に配置した状態において、プリズムの延びる方向に対して方位角で45°をなす4方向の発光部の平均光度について、極角が30°〜70°にピークを持つような形状であればよい。例えば、矩形の仮想底面と、対向する2つの三角形と、対向する2つの四角形とから構成される立体形状としてもよい。
【0068】
○ 光学素子18の仮想底面は、矩形であればよく、正方形に限らず長方形であってもよい。
【0069】
○ 面光源装置10は、発光部23の光出射面側に光学素子18が設けられていればよく、光学素子18を備える光学素子シート17は接着剤を介して貼付された構成に限らず、他の固定手段で発光部23の光出射側に固定された構成としてもよい。
【0070】
○ 基板11の光出射側の面に光学素子18が直接形成された構成としてもよい。
【0071】
○ 基板11は、ガラス製に限らず樹脂製であってもよい。樹脂製の場合は、光学素子18を基板11に直接形成する場合において、ガラス製の基板よりも加工が容易となる。
【0072】
○ 有機EL素子12はボトムエミッション型に限らず、トップエミッション型に形成されていてもよい。例えば、有機EL素子12は、基板上に第1電極13、有機EL層14及び第2電極15が順に形成されており、有機EL層14からの光が第2電極15から取り出される。この場合、基板及び第1電極13は光に対する透過性があってもなくてもよい。しかし、第2電極15は透明である必要がある。第2電極15をITO等の非金属製の透明電極で形成する場合は、第2電極15を陽極とし、第1電極13を陰極とするのが好ましい。しかし、第2電極15を極薄い(50nm以下)金属層で透明に形成した場合は、第2電極15を陰極としてもよい。
【0073】
○ EL素子として有機EL素子12に代えて無機EL素子を用いてもよい。
【0074】
(第2の実施形態)
以下、本発明を、スキャナの原稿読取装置に具体化した第2の実施形態を、図8〜図11にしたがって説明する。図8はスキャナの模式断面図、図9は照明装置およびセンサの模式平面図、図10は図9のA−A線における照明装置の模式断面図、図11(a)は光学素子の平面図、(b)は(a)のB−B線断面図、(c)は(a)のC−C線断面図である。なお、図示の都合上、一部の寸法を誇張して分かり易くしているために、それぞれの部分の幅、長さ、厚さ等の寸法の比は実際の比と異なっている。また、図11(b)、(c)ではハッチングを省略している。
【0075】
図8に示すように、原稿読取装置としてのスキャナ装置101は、透明板であるガラス板102とそのガラス板102の下方に配置され、ガラス板102上に載せられた原稿103に光を照射するための照明装置104と、原稿103で反射した光を受光するセンサ105とを有する。そして、照明装置104から照射される光で原稿103の一部(読取対象部分R)を照明し、当該原稿103の読取対象部分Rから反射される光をセンサ105で受光し、反射される光の強弱によって、原稿103の読取対象部分Rに記載された情報を読み取る。照明装置104とセンサ105とを一体的にガラス板102に沿って(図8中の矢印Dの方向)走査することにより、原稿103の全体を読み取る。
【0076】
照明装置104は、光源である有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)106と複数の光学素子107(図10参照)がマトリクス状に配置された光学部材108とを有する。この実施形態では、図8,9に示すように、照明装置104はセンサ105に対して対称に2つ設けられており、両照明装置104ともガラス板102と平行に配置されている。
【0077】
図9に示すように、有機EL素子106は矩形状で長辺が短辺に比べて著しく長い線状であり、2つある長辺のうちセンサ105側に位置する長辺に沿って発光部109が設けられている。そして、光学部材108は、発光部109の全長にわたり有機EL素子106の光出射側の全域に設けられている。また、有機EL素子106は、発光部109に対してセンサ105とは反対側に、有機EL素子106に電力を供給するための2つの電極端子110、111を有している。
【0078】
有機EL素子106は、図10に示すように、基板120上に、第一電極121、発光層を含む有機層122、第二電極123および保護膜124をこの順に積層した構造を有する。
【0079】
基板120は、有機EL素子106を支えるための板状の部材であり、取り出す光に対して高い透過率を示す透明基板が用いられる。例えば、可視光領域で高い透過率を示すガラスや、透明なアクリル樹脂等を用いることができる。
【0080】
第一電極121には、公知の透明電極材料が用いられ、例えば、ITO(インジウム錫酸化物)や、IZO(酸化インジウム亜鉛)、ZnO(酸化亜鉛)等を用いることができる。
【0081】
第二電極123には、有機層122から出射された光に対する反射性を有する電極材料が用いられる。電極材料としては、公知の金属電極や合金電極を用いることができ、例えば、AgやAl等が用いられる。
【0082】
上記の第一電極121と第二電極123との間に設けられる有機層122は、発光層を含む有機層より構成され、例えば、発光層1層から構成される場合や、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層、バッファー層等のうちの1層以上と発光層との組み合わせにより構成される場合等がある。本実施形態では、有機層122は白色発光を示すように構成されている。
【0083】
保護膜124は、第一電極121、有機層122および第二電極123を外部の水分や酸素等から保護するためのものであり、公知のパッシベーション膜で構成される。保護膜としては、酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸窒化珪素膜等の無機化合物膜や、樹脂膜等の有機化合物膜等を採用することができる。
【0084】
なお、透明電極121は、保護膜124の外部に延出しており、保護膜124の外側の部分が一方の電極端子110を構成している。また、この有機EL素子106では、有機層122と第二電極123とが重なる部分が発光部109を構成する。
【0085】
有機EL素子106の光出射側には、光学部材108が設けられている。光学部材108は、複数の光学素子107がマトリックス状に設けられている。光学部材108は、透明な材質で形成されるとともに、光学素子107が形成された面と反対側の面において接着剤(図示せず)を介してガラス基板120に接着されている。この実施形態では光学部材108は、透明な樹脂、例えば、アクリル、ポリエチレン、ポリカーボネイト等で形成されるとともに、型によって各光学素子107が作製されている。接着剤には、光学部材108の屈折率と同じ、又は近い屈折率を有する紫外線硬化型接着剤や高分子系接着剤等が使用されている。「近い屈折率」とは、屈折率の差が数%以内であることを意味する。
【0086】
図11(a),(b),(c)に示すように、各光学素子107は、仮想底面が矩形状で、対向する二つの三角形状側面125a,125bと、対向する二つの台形状側面126a,126bとを備えた仮想底面を含む五面体で構成されている。この実施形態では、各光学素子107は同一形状で形成され、仮想底面は正方形に形成されている。
【0087】
光学素子107は、二つの三角形状側面125a,125bが対称となるように形成されており、二つの台形状側面126a,126bの少なくとも一部が非対称となるように形成されている。台形状側面126a,126bの接合線127を含み仮想底面に垂直な断面における台形の一方の底角を角度θ1、他方の底角を角度θ2、台形状側面126a,126bの接合線127と直交し、前記仮想底面に垂直な断面における三角形の底角のうち、読取対象部分Rに近い方の底角を角度θ4、他方の底角を角度θ3とした場合、角度θ3,θ4が次の関係を満足する。
【0088】
角度θ3<角度θ4
光学素子107の大きさは、使用する光の波長の数倍(例えば、5倍)以上で、200μm以下の範囲が好ましい。光の波長の数倍未満だと光の干渉の影響を受けて好ましくなく、200μmより大きいと光学素子107一つ一つの明暗が画像情報に影響を与える可能性があるため好ましくない。
【0089】
センサ105は、原稿103で反射した光の強弱を検知するためのもので、公知のイメージセンサを用いることができる。必要に応じて、原稿103とセンサ105との間に、反射した光を集光するレンズ等を設けてもよい。
【0090】
このように構成された照明装置104およびスキャナ装置101の動作を説明する。
【0091】
有機EL素子106の両電極端子110、111間に電圧が印加されると、有機層122中の発光層が発光する。この光のうち一部は直接ガラス基板120を通り、残りの一部は第二電極123で反射された後ガラス基板120を通って光学部材108に入射する。そして、光学部材108に入射した光の大部分が光学部材108から出射する。
【0092】
ここで、有機EL素子106の光出射面に光学部材108に代えて拡散シートを設けた場合は、拡散シートから出射された光のうちの一部が、直接原稿103の読取対象部分Rに到達する。しかし、有機EL素子106の光出射特性は等方性であり、拡散シートによって拡散されているため、他の大部分の光は直接原稿103の読取対象部分Rには向かわない。
【0093】
一方、この実施形態では、特定形状の五面体構造の光学素子107がマトリクス状に配置された光学部材108が有機EL素子106の光出射面に設けられている。この光学部材108は、特定方向に光を取り出すことができるため、光学部材108から出射された光の大部分は、直接原稿103の読取対象部分Rに到達し、読取対象部分Rの照度が向上する。
【0094】
原稿103の読取対象部分Rに到達した光は、この部分で反射されてセンサ105に向かう。このとき、読取対象部分Rの状態、すなわち、どんな色かによって反射する光が変わる。有機EL素子106は白色の光を発しているため、読取対象部分Rで反射される光の状態は、自然光下で人間の目に認識される色の状態に近いものとなる。このように反射された光をセンサ105で受光して、その受光した光の状態を電気信号に変換して、画像として読み込む。
【0095】
このようにして原稿103の読取対象部分Rに記載されている情報を読み取った後、センサ105と照明装置107とを一体的にガラス板102に沿って移動させて、原稿103上の読取対象部分Rを変える。そして、上記のようにこの新たな読取対象部分Rに記載されている情報を読み取る。このような読取動作を原稿103全体にわたって行う(走査する)ことにより、原稿103に記載されている情報の全部を読み取る。
【0096】
この実施の形態では以下の効果を有する。
(6)有機EL素子106の光出射側に複数の五面体状の光学素子107が設けられた光学部材108が貼付されている。このため、照明装置104は、有機EL素子106内部で発せられた光を特定方向に取り出すことができる。よって、スキャナ光源101は、有機EL素子106からの光を効率的に読取対象部分Rの方向に取り出すことができる。また、スキャナ装置101において、読取対象部分Rの照度を向上させることができ、同じ照度を得るために必要な有機EL素子106を小型にすることができる。また、同じ照度を得るために必要な有機EL素子106に供給される電力を少なくすることができる。
(7)光学部材108は、発光部109の全長にわたり有機EL素子106の光出射側の全域に設けられている。このため、照明装置104は、有機EL素子106からの光を効率的に外部に取り出すことができる。また、スキャナ装置101において、有機EL素子106からの光を効率的に読取対称部分Rの方向に取り出すことができる。
(8)光学部材108の各光学素子107は同一形状で形成されている。このため、有機EL素子106内部で発せられた光が特定方向に多く取り出される。スキャナ光源101は、有機EL素子106からの光を効率的に読取対象部分Rの方向に取り出すことができる。
(9)センサ105と照明装置104とを一体的にガラス板102に沿って走査する。このため、小型のセンサ105、照明装置104を用いても、大きな原稿に記載された情報を読み取ることが可能となる。
(10)照明装置104をセンサ105に対して対称に2つ設けている。このため、原稿103の読取対象部分R上の照度をさらに上げることができる。
(11)有機EL素子106は白色の光を発するように、有機層122が構成されている。このため、自然光とほぼ同じ状態で原稿103の読取対象部分Rを照明することができ、読取対象部分Rで反射される光の状態を自然光下で肉眼で認識される色の状態に近いものとすることができる。
(12)光源として線状の有機EL素子106を用いている。このため、光源を小型(薄型)にでき、スキャナ装置101も全体として小型(薄型)にできる。
【0097】
以下、本実施例の効果をシミュレーションによって確認した結果を示す。
【0098】
図12に示すような、幅4.5mmのセンサの両側に発光部の幅が8mmの有機EL素子を設けたスキャナ装置において、センサの中央部の上方14mmの位置にある読取対象部分Rの照度を、光学シミュレーションにより計算した。
【0099】
<実施例2>
有機EL素子のガラス基板と同じ長さと幅の光学部材を、有機EL素子の光出射側に設けた。五面体形状の複数の光学素子は、1辺の長さが50μmである正方形の仮想底面を持ち、それぞれが同一形状で形成した。光学素子の角度θ1〜θ2は、角度θ1=角度θ2=65°、角度θ3=20°、角度θ4=60°とした。
【0100】
<比較例1>
比較のため、有機EL素子の光出射側に、光学部材に代えて市販の拡散シートを備えた場合の、読取対象部分Rの照度をシミュレーションにより計算した。シミュレーションにより、最も照度が高かった拡散シート(最良の拡散シート)を備えた場合を比較例1とした。
【0101】
以上のような場合でシミュレーションを行った結果、比較例1の相対照度を1とすると、実施例2の相対照度は1.2となった。すなわち、本実施例の光学部材を設けることにより、読取対象部分Rの照度が約1.2倍になることがわかる。このことから、有機EL素子から発せられた光が、光学部材によって読取対象部分Rの方向に取り出される光量が多くなったことが確認できた。
なお、角度θ1〜角度θ4の最適値は、光源の出射特性や、光源と読取対象部分Rとの相対的な位置関係に依存するので、それぞれの場合において、試作やシミュレーションによって最適値を求める必要がある。
【0102】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、光学部材をいくつかの領域に分け、領域毎に光学素子の形状を変化させた点が、前記第2の実施形態と異なっている。その他の部分については、前記第2の実施形態と同様の構成となっている。
【0103】
本実施形態では、領域毎に光学素子の角度θ3及び角度θ4を任意の角度に変化させており、有機EL素子106内部で発せられた光の取り出される角度が、領域毎に変化する。すなわち、角度θ3及び角度θ4を領域毎に任意の角度に変化させることにより、照射したい特定部分(読取対象部分R)に光を集光する(取り出す)ことができる。
【0104】
この第2の実施形態においては、第2の実施形態の効果(6),(7),(9)〜(12)と同様の効果を有する他に次の効果を有する。
(13)光学部材をいくつかの領域に分け、領域毎に光学素子の形状を変化させた。このため、有機EL素子106内部で発せられた光が領域毎に異なる角度で取り出され、照射したい特定部分に光を集光することができる。よって、スキャナ光源101は、有機EL素子106からの光を効率的に読取対象部分Rの方向に取り出すことができ、読取対象部分Rに光を集光することができる。
【0105】
以下、第3の実施形態の効果についても、シミュレーションによって確認した結果を示す。スキャナ装置は実施例2と同様に図12に示した構成である。
【0106】
<実施例3>
実施例2に示した光学部材において、有機EL素子の幅方向に対して、等しい幅の8つの領域に分け、領域毎に五面体形状の光学素子の角度θ3及び角度θ4を、表6に示すように変化させた。また、角度θ1及び角度θ2は65°とした。なお、表6において、読取対象部分Rに近い方から、領域1、領域2、領域3、…とした。
【0107】
【表6】
以上のような場合でシミュレーションを行った結果、比較例1の相対照度を1とすると、実施例3の相対照度は1.44となった。すなわち、本実施例の光学部材を設けることにより、読取対象部分Rの照度が約1.44倍になることがわかる。このことから、有機EL素子から発せられた光が、光学部材によって読取対象部分Rの方向に取り出される光量が多くなったことが確認できた。
なお、角度θ1〜角度θ4の最適値は、光源の出射特性や、光源と読取対象部分Rとの相対的な位置関係に依存するので、それぞれの場合において、試作やシミュレーションによって最適値を求める必要がある。
【0108】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば次のように構成してもよい。
【0109】
○ 光源として有機EL素子106を用いたが、光源として他の発光装置、例えばLEDや冷陰極管、無機EL素子等も用いることができる。LEDや冷陰極管、無機EL素子等を用いた場合でも、光学部材によって特定方向に光を取り出すことができる。
【0110】
○ 上記実施形態では、有機EL素子106は基板側から光が出射される、いわゆるボトムエミッションタイプであったが、基板とは反対側から光が出射されるトップエミッションタイプであってもよい。トップエミッションタイプの有機EL素子を光源として採用する場合には、第二電極123および保護膜124を透明にする必要があり、基板120および第一電極121は透明である必要はない。また、光学部材108は保護膜124上に設ける。
【0111】
○ 原稿読取装置としてスキャナ装置101を用いたが、スキャナ装置以外にも、ファクシミリ装置やコピー装置にも用いることができる。
【0112】
○ スキャナ装置101において、照明装置104は2つ同時に用いる必要はなく、1つのみであってもよい。
【0113】
○ スキャナ装置101において、センサ105と照明装置104とを一体的に走査する必要はなく、例えば、センサ105をガラス板102に対して固定し、照明装置104のみを走査してもよい。この場合、原稿103からの反射光は別途光学系を用いてセンサ105に導けばよい。
【0114】
○ 光学部材108として、光学素子107をマトリクス状に配置したが、光学素子をマトリクス状に配置せず、ランダムに配置してもよい。
【0115】
○ 光学部材108として、光学素子107の形状を領域毎に徐々に変化させてもよい。例えば、スキャナ装置101においては、読取対象部分Rに近い側から遠い側の領域へ配置されるに従い、光学素子107の角度θ3が徐々に大きくなるように形成してもよい。また、ある特定の領域にある光学素子107のみを変化させてもよい。
【0116】
○ 照明装置104は、ガラス板102と平行に配置したが、ガラス板102に対して傾けて配置してもよい。
【0117】
○ 照明装置104において、光の出射面側である光学部材108上に反射板を設けてもよい。
【0118】
以下の技術的思想(発明)は前記実施の形態から把握できる。
【0119】
(1)請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記EL素子は、有機EL素子である。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】(a)は面光源装置の模式図、(b)は光学素子シートの模式斜視図。
【図2】(a)は光学素子の平面図、(b)は(a)のB-B線断面図、(c)は(a)のC-C線断面図。
【図3】極角及び方位角を示す模式図。
【図4】発光部における極角と光度との関係を示すグラフ。
【図5】光学素子の形状と面光源装置の正面輝度との関係を示すグラフ。
【図6】光学素子の形状と面光源装置の正面輝度との関係を示すグラフ。
【図7】従来技術の模式図。
【図8】スキャナ装置の模式断面図。
【図9】図1のセンサおよび照明装置の模式平面図。
【図10】図2中の有機EL素子のA−A線における模式断面図。
【図11】(a)は光学素子の平面図、(b)は(a)のB−B線断面図、(c)は(a)のC−C線断面図。
【図12】シミュレーションの条件を示す模式図。
【符号の説明】
【0121】
θ1,θ2,θ3,θ4…角度、10…面光源装置、11…基板、12…エレクトロルミネッセンス素子としての有機EL素子、13…陽極としての第1電極、14…有機EL層、15…陰極としての第2電極、17…光学部材としての光学素子シート、18…光学素子、19a,19b…三角形状側面、20a,20b…台形状側面、21…接合線、22…プリズムシート、23…発光部、101…原稿読取装置としてのスキャナ装置、102…透明板としてのガラス板、104…照明装置、105…センサ、106…光源としての有機EL素子、107…光学素子、108…光学部材、R…読取対象部分。
【技術分野】
【0001】
本発明は、面光源装置に関する。また、本発明は、光学部材、該光学部材を用いた原稿読取装置及び面光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置のバックライトとしてエレクトロルミネッセンス素子(以下、エレクトロルミネッセンス素子をEL素子と記載する場合もある。)を備えた照明装置が提案されている。EL素子から発せられた光はあらゆる方向に向かって放射される。従って、透明基板上にEL素子が形成された照明装置において、EL素子から透明基板に入射する光の角度は様々であり、透明基板に入射された光のうちの一部は透明基板の出射面で全反射して透明基板から出射できない。即ち、EL素子から透明基板に入射された光の透明基板からの取り出し効率が低いという問題がある。
【0003】
この問題を改善する技術として、透明基板の光出射面に微小レンズアレイ素子を設けたEL素子が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。図7に示すように、このEL素子50は、透明基板51と、透明基板51の下面に形成された透明電極52と、透明電極52の下面に形成されたEL発光層53と、EL発光層53の下面に形成された裏面電極54とから構成され、透明基板51の出射面に微小レンズアレイ素子55が設けられている。微小レンズアレイ素子55は、隣接して形成された多数の円錐状あるいは四角錐状のレンズ素子55aで構成されている。
【0004】
また、液晶パネル及び照明装置を備えた液晶装置であって、前記照明装置がEL素子を光源とした発光部と、該発光部上に配設されたプリズムシートとを備え、前記発光部を構成するEL素子の発光面側に、光を散乱させるための散乱手段が設けられた液晶装置が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。前記プリズムシートは、少なくとも一面側が、前記発光部から出射された光を集光するためのプリズム形状を有するプリズム面とされ、該プリズムの頂角が95°以上125°以下とされている。
【0005】
また、ファクシミリ、コピー、スキャナなどは、原稿に記載されている情報を読み取る原稿読取装置を有する。原稿読取装置においては、光源からの光を原稿に照射し、原稿で反射される光をセンサで受光する。そして、受光した光の強弱により原稿に記載されている情報を読み取る。
【0006】
近年、ファクシミリ等の装置にも小型化の要求が強まり、それに従い、ファクシミリ等に用いられる原稿読取装置も小型化する必要性が生じてきた。同時に、原稿を読み取る時間の短縮や読取画質の向上の要求も強く、原稿読取装置に用いられる光源からの光を強くする必要もある。
【0007】
これらの要求を同時に満たすために、たとえば特許文献1に記載の原稿読取装置では、原稿読取装置において、照明光源として長尺のEL(エレクトロルミネッセンス)素子を用いるとともに、このEL素子からの光をその幅方向に斜めに導いて読取部分に集光させるためのライトガイドとして多数の長尺の微小プリズムを前記EL素子と平行に配列して平板状に集積してなるプリズムアレイを用い、EL素子上に前記プリズムアレイを重ねたものをガラス板の直下にこれと平行に配設している。これにより、装置の小型化と読取画質の向上をはかっている。
【特許文献1】特開2003-59641号公報(明細書の段落[0008]、図1,3)
【特許文献2】特開2003-75834号公報(明細書の段落[0009]、図1)
【特許文献3】特開平6−217083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の構成では、規則正しく配列された微小レンズアレイ素子55により、特定の入射角度の光のみが透明基板51から正面方向(図7の上方)に出射することとなり、特定の入射角度以外の光は、光出射面での全反射と裏面電極54(金属電極)での反射とを繰り返したり、正面方向以外に出射したりする。従って、正面方向以外に出射する光も多く存在するため、高輝度化が難しい。
【0009】
また、特許文献2の構成の照明装置では、散乱手段がEL素子の発光面側に設けられており、散乱手段によって光の取り出し効率を向上させてから、その取り出された光をプリズムシートで集光している。このため、特許文献1の構成に比較して高輝度化が容易である。しかし、特許文献2ではプリズムシートは1枚しか使用していない。
【0010】
特許文献2に記載されているような、側面三角波状の周期的な凹凸が形成されたプリズムシートを使用して照明装置の正面輝度をさらに高くする方法として、発光部の光出射面に対して2枚のプリズムシートをプリズムの延びる方向が直交する状態となるように配置するという構成が考えられる。この構成を用いた場合、各プリズムシートのプリズムの頂角が90°の時に最も正面輝度が高くなる。一方で、この構成を持つ照明装置では、発光部の光出射面から出射される光のうち、極角で50°付近の方向に出射した光をプリズムシートで集光して正面方向に出射している。従って、さらなる高輝度化のためには、発光部から出射される光のうち、極角で50°付近の方向に出射する光を多くする必要がある。しかし、特許文献2に記載の、光取り出し面に設けられる散乱手段では、発光部は様々な方向に光を出射することになるため、極角で50°付近の方向に出射される光を多くすることはできない。従って、さらなる高輝度化が困難である。
【0011】
本発明は、前記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は2枚のプリズムシートに入射する光のうち、当該プリズムシートから正面方向に出射される光の割合を多くし、正面方向の輝度を従来装置よりも高めることができる面光源装置を提供することにある。
【0012】
また、特許文献3に記載されているような、EL素子からの光を集光するためのプリズムアレイ等の光学部材を用いると、確かに集光方向の輝度を向上させることができるが、照明対象である原稿の読取部分での照度は逆に低下する場合もある。これは、EL素子からの光が光学部材を透過する間に減衰してしまうからである。
【0013】
また、EL素子からの光を取り出すための拡散シート等の光学部材を用いると、確かに光を効率良く取り出すことができ、光の利用効率を向上させることができるが、特定方向に光を取り出すことができない。これは、EL素子からの光が拡散シートによって拡散されてしまい、特定方向(原稿読取装置においては、原稿の読取部分)のみに多くの光を取り出せないからである。
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、特定方向に光を取り出すことのできる光学部材を提供することであり、また、そのような光学部材を用いた原稿読取装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、発光部と、頂角90°のプリズムが所定ピッチで平行に形成された2枚のプリズムシートとを備える面光源装置である。発光部は、エレクトロルミネッセンス素子と、発光部の光出射面側に設けられた立体形状の複数の光学素子とを備えており、エレクトロルミネッセンス素子は、陽極と、発光層と、陰極とを備えている。2枚のプリズムシートは、面光源装置の光取り出し側に、プリズムの延びる方向が互いに直交する状態となるように配置されており、発光部は、プリズムシートのプリズムの延びる方向に対して方位角で45°をなす4方向の平均光度について、極角が30°〜70°にピークを持つ。ここで、「極角」とは、発光部の光出射面に対する垂直方向と成す角度を意味しており、例えば、光出射面から垂直に出射する光は極角0°である。
【0015】
この発明では、発光部から出射される光において、極角50°付近の方向に出射する光を多くすることができ、2枚のプリズムシートを使用した場合の面光源装置の正面方向の輝度を従来装置よりも高めることができる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、発光部と、頂角90°のプリズムが所定ピッチで平行に形成された2枚のプリズムシートとを備える面光源装置である。発光部は、エレクトロルミネッセンス素子と、発光部の光出射面側に設けられた仮想底面が矩形である立体形状の複数の光学素子とを備えており、エレクトロルミネッセンス素子は、陽極と、発光層と、陰極とを備えている。2枚のプリズムシートは、面光源装置の光取り出し側に、プリズムの延びる方向が互いに直交する状態となるように配置されており、発光部は、光学素子の仮想底面の一つの辺が延びる方向に対して方位角で45°をなす4方向の平均光度について、極角が30°〜70°にピークを持つ。
【0017】
この発明でも、発光部から出射される光において、極角50°付近の方向に出射する光を多くすることができ、2枚のプリズムシートを使用した場合の面光源装置の正面方向の輝度を従来装置よりも高めることができる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、光学素子は、仮想底面が矩形状で、対向する二つの三角形状側面と、対向する二つの非対称な台形状側面とを備えた五面体で構成されている。二つの台形状側面の接合線を含み仮想底面に垂直な断面における台形の一方の底角を角度θ1、他方の底角を角度θ2、台形状側面の接合線と直交し、仮想底面に垂直な断面における三角形の一方の底角を角度θ3、他方の底角を角度θ4とした場合、角度θ1,θ2,θ3,θ4が次の関係を満足する。10°≦角度θ3≦25°、45°≦角度θ4≦85°、60°≦角度θ1+角度θ2≦130°。
【0019】
この発明では、仮想底面が矩形で特定の条件を満たす五面体で光学素子を構成することにより、発光部から出射される光において、極角50°付近の方向に出射する光を多くすることができ、2枚のプリズムシートを使用した場合の面光源装置の正面方向の輝度を従来装置よりも高めることができる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、光学素子の仮想底面は正方形である。
【0021】
また、上記の目的を達成するために鋭意研究開発した結果、本願の発明者らは、光学部材として、立体形状の複数の光学素子を備えることを想到するに至り、本願発明を完成させた。すなわち、請求項5に記載の発明は、複数の光学素子の少なくとも一部は、仮想底面が矩形状で、対向する二つの三角形状側面と、対向する二つの非対称な台形状側面とを備えた仮想底面を含む五面体で構成されている光学部材である。
【0022】
この発明によれば、二つの三角形状側面と、二つの台形状側面の四面から光を取り出すことができるため、特定方向に光を取り出すことができる。ここで、本発明における「光学部材」とは、この光学部材を設けない場合には、有機EL素子と空気との屈折率との差により有機EL素子の内部に全反射を繰り返してしてしまい有機EL素子の外部に取り出すことができない光を、外部に取り出すための光学部材を指す。このような機能を有する光学部材を光源の光出射側に設けることにより、光源内部で発生する光を効率的に照明対象に照射することが可能となる。
【0023】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、複数の光学素子の少なくとも一部は、二つの台形状側面の接合線を含み仮想底面に垂直な平面による断面における台形の一方の底角を角度θ1、他方の底角を角度θ2、台形状側面の接合線と直交し、仮想底面に垂直な断面における三角形の一方の底角を角度θ3、他方の底角を角度θ4とした場合、角度θ3とθ4とが次の関係を満足する。角度θ3<角度θ4。
【0024】
この発明においても、仮想底面が矩形で特定の条件を満たす五面体で光学素子を構成することにより、特定方向に光を取り出すことができる。即ち、角度θ1〜角度θ4の角度を、角度θ3<角度θ4を満たす範囲内で、それぞれ任意の角度に選択することにより、取り出したい方向に光を出射することができる。
【0025】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は請求項6に記載の発明において、光学素子は全て同一形状である。
【0026】
請求項8に記載の発明は、請求項5〜7のいずれか一項に記載の発明において、光学素子の仮想底面は正方形である。
【0027】
請求項9に記載の発明は、請求項5〜8のいずれか一項に記載の発明において、複数の光学素子はマトリクス状に配置されている。
【0028】
本願の別の発明である請求項10に記載の発明は、照明装置と、センサと、原稿を載置する透明板とを有する原稿読取装置である。この発明で、照明装置は、線状に形成された有機EL素子よりなる光源と、この光源に対して光が出射される側に設けられた請求項6〜9のいずれか一項に記載された光学部材とを有しており、光源からの光を光学部材により原稿の読取対象部分の方向へ出射し、照明装置を透明板に沿って走査して、原稿で反射された光をセンサで読み取る。光学部材の光学素子は、台形状側面の接合線が、光源の長手方向と平行になるように配置されており、仮想底面に垂直な断面における三角形の底角のうち、読取対象部分に近い方の角度をθ4、他方の底角をθ3とすることを特徴とする。
【0029】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の発明において、複数の光学素子は、読取対象部分に近い側から遠い側へ配置されるに従い、角度θ3が大きくなる。
【0030】
請求項12に記載の発明は、請求項10又は請求項11に記載の発明において、照明装置をセンサに対して対称に2つ設ける。照明装置をセンサに対して対称に2つ設けることにより、原稿上の照度を更に上げることができる。
【0031】
また、請求項13に記載の発明は、発光部と、頂角90°のプリズムが所定ピッチで平行に形成された2枚のプリズムシートとを備える面光源装置である。発光部は、エレクトロルミネッセンス素子と、発光部の光出射面側に設けられた請求項7〜9のいずれか一項に記載の光学部材とを備えており、エレクトロルミネッセンス素子は、陽極と、発光層と、陰極とを備えている。2枚のプリズムシートは、面光源装置の光取り出し側に、プリズムの延びる方向が互いに直交する状態となるように配置されており、発光部は、プリズムシートのプリズムの延びる方向に対して方位角で45°をなす4方向の平均光度について、極角が30°〜70°にピークを持つ。ここで、「極角」とは、発光部の光出射面に対する垂直方向と成す角度を意味しており、例えば、光出射面から垂直に出射する光は極角0°である。光学部材の光学素子は、仮想底面が矩形状で、対向する二つの三角形状側面と、対向する二つの非対称な台形状側面とを備えた五面体で構成されている。二つの台形状側面の接合線を含み仮想底面に垂直な断面における台形の一方の底角を角度θ1、他方の底角を角度θ2、台形状側面の接合線と直交し、仮想底面に垂直な断面における三角形の一方の底角を角度θ3、他方の底角を角度θ4とした場合、角度θ1,θ2,θ3,θ4が次の関係を満足する。10°≦角度θ3≦25°、45°≦角度θ4≦85°、60°≦角度θ1+角度θ2≦130°。
【0032】
この発明では、仮想底面が矩形で特定の条件を満たす五面体で光学素子を構成することにより、発光部から出射される光において、極角50°付近の方向に出射する光を多くすることができ、2枚のプリズムシートを使用した場合の面光源装置の正面方向の輝度を従来装置よりも高めることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、2枚のプリズムシートに入射する光のうち、当該プリズムシートから正面方向に出射される光の割合を多くし、正面方向の輝度を従来装置よりも高めることができる。
【0034】
更に、本願発明によれば、特定方向に光を取り出すことができる光学部材、そのような光学部材を用いた原稿読取装置及び面光源装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図6に従って説明する。図1(a)は面光源装置の模式図、(b)は(a)の部分模式斜視図、図2(a)は光学素子の平面図、(b)は(a)のB-B線断面図、(c)は(a)のC-C線断面図である。なお、図1(a)は面光源装置の構成を模式的に示したものであり、図示の都合上、一部の寸法を誇張して分かり易くしているために、それぞれの部分の幅、長さ、厚さ等の寸法の比は実際の比と異なっている。また、図2(b),(c)ではハッチングを省略している。
【0036】
図1(a)に示すように、面光源装置10は、発光部23と、2枚のプリズムシート22とを備えている。
発光部23は、基板11と、基板11の光出射側と反対側の面に設けられたエレクトロルミネッセンス素子としての有機EL素子12とを備えている。この実施形態では基板11として透明なガラス基板が使用されている。
【0037】
有機EL素子12は、基板11側から第1電極13、発光層を含む有機EL層14及び第2電極15、保護部16が順に積層されて形成されている。有機EL素子12は、有機EL層14からの光が基板11側から取り出される(出射される)所謂ボトムエミッション型の有機EL素子を構成している。第1電極13及び第2電極15は、例えば、ベタ電極で構成され、この実施形態では第1電極13が陽極を構成し、第2電極15が陰極を構成する。
【0038】
第1電極13は公知の透明な導電性材料で形成されており、例えば、ITO(インジウム錫酸化物)や、IZO(インジウム亜鉛酸化物)、ZnO(酸化亜鉛)、SnO2(酸化錫)等を用いることができる。
【0039】
有機EL層14は、公知の有機EL材料を用いて単層又は多層状に形成され、有機EL素子12の目的とする発光色に応じて構成されている。
第2電極15は、従来用いられている公知の陰極材料や第1電極13と同様の材料等が使用でき、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、クロム等の金属やこれらの合金が用いられる。この実施形態では光反射性を有するアルミニウムが使用されている。
【0040】
有機EL素子12には、有機EL層14を酸素及び水分から保護するための保護部16が設けられており、この実施形態では保護部16は、公知のパッシベーション膜、例えば、窒化ケイ素膜で構成されている。
【0041】
また、図1(a)に示すように、発光部23は、基板11の光出射側の面に光学部材としての光学素子シート17を備えている。光学素子シート17は、図1(b)に示すように、複数の光学素子18がマトリックス状に設けられている。
【0042】
光学素子シート17は、透明な材質で形成されるとともに、光学素子18が形成された面と反対側の面において接着剤(図示せず)を介して基板11に接着されている。この実施形態では光学素子シート17は、透明な樹脂、例えば、アクリル、ポリエチレン、ポリカーボネイト等で形成されるとともに、型によって各光学素子18が作製されている。接着剤には、光学素子シート17の屈折率と同じ又は近い屈折率を有する紫外線硬化型接着剤や高分子系接着剤等が使用されている。「近い屈折率」とは、屈折率の差が数%以内であることを意味する。
【0043】
図2(a),(b),(c)に示すように、各光学素子18は、仮想底面が矩形状で、対向する二つの三角形状側面19a,19bと、対向する二つの台形状側面20a,20bとを備えた五面体で構成されている。この実施形態では仮想底面は正方形に形成されている。
【0044】
光学素子18は、二つの台形状側面20a,20bが非対称となるように形成されている。台形状側面20a,20bの接合線21を含み仮想底面に垂直な断面における台形の一方の底角を角度θ1、他方の底角を角度θ2、台形状側面20a,20bの接合線21と直交し、前記仮想底面に垂直な断面における三角形の一方の底角を角度θ3、他方の底角を角度θ4とした場合、角度θ1,θ2,θ3,θ4が次の関係を満足する。
【0045】
10°≦角度θ3≦25°
45°≦角度θ4≦85°
60°≦角度θ1+角度θ2≦130°
光学素子18の大きさは、使用する光の波長の数倍(例えば、5倍)以上で、200μm以下の範囲が好ましい。光の波長の数倍未満だと光の干渉の影響を受けて好ましくなく、200μmより大きいと光学素子18一つ一つの明暗が視認されるようになる可能性があるため好ましくない。
【0046】
面光源装置10を構成する2枚のプリズムシートは、図1(a)に示すように、発光部23の光出射面を形成する光学素子シート17と対向するように、面光源装置10の光取り出し側に配置される。2枚のプリズムシート22は頂角が90°のプリズムを備え、プリズムの延びる方向が互いに直交するように配置される。2枚のプリズムシート22のうち、光学素子シート17と対向するように(図1(a)における下側に)配置されるプリズムシート22は、そのプリズムの延びる方向が光学素子18の接合線21と平行になるように配置される。
【0047】
次に前記のように構成された面光源装置10の作用を説明する。
面光源装置10は、例えば、液晶表示装置のバックライトとして使用される。
有機EL素子12の第1電極13及び第2電極15間に直流駆動電圧が印加されると、有機EL層14が発光する。有機EL層14が発した光は、第1電極13を介して基板11に入射する。基板11に入射した光のうち光学素子シート17に向かって進んだ光の大部分が光学素子シート17から出射する。
【0048】
発光部23の光出射面に光学素子シート17に代えて拡散シートを設けた場合は、発光部23から出射される光については、極角が0°付近の方向に出射される光が最も多くなり、極角が50°付近の方向に出射する光は少ない。一方、この実施形態では、特定の形状の五面体構造の光学素子18がマトリックス状に配置された光学素子シート17が発光部23の光出射面に設けられているため、極角が50°付近の方向に出射する光の割合が多くなる。ここで「極角」とは、図3に示すように、出射面P1に対して垂直な線と成す角度を意味する。また、方位角とは、出射面P1内において基準線と成す角度を意味する。この実施形態では、出射面P1は各側面19a,19b,20a,20bではなく、基板11と平行な仮想的な面として説明している。
【0049】
また、極角が50°付近の方向に出射する光の割合は、光学素子18の各側面19a,19b,20a,20bにおいて同じではなく、台形状側面20aにおいて最も大きくなる。三角形状側面19a,19bから極角が50°付近の方向に出射する光は台形状側面20a,20bから出射される光より少ない。三角形状側面19a,19bは光学素子シート17全体から出射される光を増加させる役割を果たす。
【0050】
1辺の長さが50μmである正方形の仮想底面を持つ光学素子18が複数形成された20mm×30mmの大きさの光学素子シート17及び2枚のプリズムシート22を備える面光源装置10の正面輝度について、光学素子18の角度θ1,θ2,θ3,θ4を種々変更してシミュレーションによる解析を行った。その中で最も良い結果の角度条件について光学素子シート17を作製した。そして、作製した光学素子シート17及びプリズムシート22を備える面光源装置10について、発光部23からの取り出し光量(A)、プリズムシート22からの取り出し光量(B)、プリズムシート22からの正面光の(極角15°以内の光)取り出し光量(C)、基板11側面からの漏れ光量(D)等について測定を行った。また、光学素子シート17に代えて市販の拡散シートを備えた面光源装置についても同様の測定を行った。光量A,B,C,Dは図1(a)の各矢印に相当する。
【0051】
図4に、発光部23の光出射面に実施形態の光学素子シート17を設けた場合と、入手できた最良の拡散シートを設けた場合の、発光部23からの各極角における光度について示す。ここで、縦軸は、最良の拡散シートを備える発光部23の極角0°方向における光度を1とした場合の相対値である。また、入手できた幾つかの拡散シートを使用して同様の測定を行い、全ての測定値の平均値についても合わせて図示した。実施形態の光学素子シート17の角度条件は、角度θ1=50°、角度θ2=40°、角度θ3=25°、角度θ4=75°の場合である。
【0052】
なお、図4において、各測定点を結ぶ線は、同じ条件の測定点をグループ化するために描かれたものであり、測定点間の値を示すものではない。
表1に図4に示す実施形態の面光源装置10及び最良の拡散シートを使用した面光源装置10についての前記各光量等の値を示す。なお、各光量の値は光源の光量の値を100とした場合の相対値である。(ここで「光源」とは、光を発する部分を示し、例えばこの実施形態では、有機EL素子12を示す。)
【0053】
【表1】
表1から、発光部23の光出射面に実施形態の光学素子シート17を設けた場合は、最良の拡散シートを設けた場合よりも、面光源装置10のプリズムシート22からの正面光の取り出し光量は約1割増加することが確認できる。
【0054】
また、図4から、実施形態の光学素子シート17を設けた発光部23では、極角23°〜70°の範囲において、各極角における光度が、最良の拡散シートを設けた発光部23の光度よりも大きくなっていることが確認される。そして、極角25°〜50°の範囲における実施形態の光学素子シート17を設けた発光部23の光度は、最良の拡散シートを設けた発光部23の極角0°における光度よりも大きくなっていることが確認される。従って、拡散シートを使用した従来構成に比較して、光学素子シート17を使用した場合は、プリズムシート22から取り出される正面光の光量が増加することが裏付けられる。
【0055】
次に、角度θ1,θ2をそれぞれ37.5°とし、角度θ3,θ4を変化させた場合の輝度上昇度についてのシミュレーションによる解析結果を、図5及び表2に示す。また、角度θ1,θ2を等しい値とし、角度θ1と角度θ2の合計値を変化させるとともに、角度θ3を25°で一定として、角度θ4を変化させた場合の輝度上昇度についてのシミュレーションによる解析結果を、図6及び表3に示す。ここで「輝度上昇度」とは、最良の拡散シートが設けられた発光部23及び2枚のプリズムシート22を備える面光源装置10の正面輝度を1とした場合の、拡散シートに代えて光学素子シート17を配置した面光源装置10の正面輝度の相対値を意味する。
【0056】
なお、図5及び図6において、各解析点を結ぶ線は、同じ条件の解析点をグループ化するために描かれたものであり、解析点間の値を示すものではない。
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
図5及び表2から、10°≦角度θ3≦25°のときに、光学素子シート17を備えた面光源装置10が、最良の拡散シートを備えたものより正面輝度が大きくなることが確認される。また、図6及び表3から、45°≦角度θ4≦85°かつ60°≦角度θ1+角度θ2≦130°のときに、光学素子シート17を備えた面光源装置10が、最良の拡散シートを備えたものより正面輝度が大きくなることが確認される。
【0059】
前記の例ではいずれも角度θ1及び角度θ2が同じ角度であったが、角度θ1及び角度θ2は同じに限らず異なる場合でも、最良の拡散シートに代えて光学素子シート17を配置することにより、面光源装置10の正面輝度が最良の拡散シートを備える場合より大きくなることがシミュレーション解析により確認された。この解析結果を表4及び表5に示す。なお、表4は、角度θ3=15°、角度θ4=65°の条件で角度θ1及び角度θ2を変更した場合の例を示し、表5は、角度θ3=15°、角度θ4=75°の条件で角度θ1及び角度θ2を変更した場合の例を示す。
【0060】
【表4】
【0061】
【表5】
この実施形態では以下の効果を有する。
【0062】
(1)面光源装置10は、発光部23と、頂角90°のプリズムが所定ピッチで平行に形成された2枚のプリズムシート22とを備えている。発光部23は、有機EL素子12と、該発光部23の光出射面側に設けられた仮想底面が矩形である立体形状の複数の光学素子18とを備えており、有機EL素子12は、陽極としての第1電極13、発光層を含む有機EL層14、陰極としての第2電極15とを備えている。そして、2枚のプリズムシート22は、面光源装置10の光取り出し側に、プリズムの延びる方向が互いに直交する状態となるように配置されており、発光部23は、プリズムシート22のプリズムの延びる方向に対して方位角で45°をなす4方向の平均光度について、極角が30°〜70°にピークを持つ。従って、発光部23から出射される光のうち、極角50°付近の方向に出射する光を多くすることができ、2枚のプリズムシート22を使用した場合の面光源装置10の正面方向の輝度を従来装置よりも高めることができる。
【0063】
(2)面光源装置10は、発光部23と、頂角90°のプリズムが所定ピッチで平行に形成された2枚のプリズムシート22とを備えている。発光部23は、有機EL素子12と、該発光部23の光出射面側に設けられた仮想底面が矩形である立体形状の複数の光学素子18とを備えている。有機EL素子12は、陽極としての第1電極13、発光層を含む有機EL層14、陰極としての第2電極15とを備えている。そして、2枚のプリズムシート22は、面光源装置10の光取り出し側に、プリズムの延びる方向が互いに直交する状態となるように配置されており、発光部23は、光学素子18の仮想底面の一つの辺が延びる方向に対して方位角で45°をなす4方向の平均光度について、極角が30°〜70°にピークを持つ。従って、発光部23から出射される光のうち、極角50°付近の方向に出射する光を多くすることができ、2枚のプリズムシート22を使用した場合の面光源装置10の正面方向の輝度を従来装置よりも高めることができる。
【0064】
(3)光学素子18は、仮想底面が矩形状で、対向する二つの三角形状側面19a,19bと、対向する二つの台形状側面20a,20bとを備えた五面体で構成されている。二つの台形状側面の接合線21を含み仮想底面に垂直な断面における台形の一方の底角を角度θ1、他方の底角を角度θ2とし、台形状側面の接合線21と直交し仮想底面に垂直な断面における三角形の一方の底角を角度θ3、他方の底角を角度θ4とした場合、角度θ1,θ2,θ3,θ4が次の関係を満足する。10°≦角度θ3≦25°、45°≦角度θ4≦85°、60°≦角度θ1+角度θ2≦130°。従って、発光部23から出射される光のうち、極角50°付近の方向に出射する光を多くすることができ、2枚のプリズムシート22を使用した場合の面光源装置10の正面方向の輝度を従来装置よりも高めることができる。
【0065】
(4)光学素子18は、光学素子18を複数備える光学素子シート17を基板11に貼付することにより有機EL素子12に設けられている。従って、光学素子18を基板11に直接形成する場合に比較して、光学素子18の形成(加工)が容易になる。
【0066】
(5)面光源装置10の発光部は有機EL素子12で構成されている。従って、無機EL素子を使用する場合に比較して低電圧で駆動することができる。
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように構成してもよい。
【0067】
○ 発光部23の光出射面に設けられる光学素子18の形状は、頂角が90°のプリズムが所定ピッチで平行に形成された2枚のプリズムシートをプリズムの延びる方向が互いに直交する状態で発光部の光出射側に配置した状態において、プリズムの延びる方向に対して方位角で45°をなす4方向の発光部の平均光度について、極角が30°〜70°にピークを持つような形状であればよい。例えば、矩形の仮想底面と、対向する2つの三角形と、対向する2つの四角形とから構成される立体形状としてもよい。
【0068】
○ 光学素子18の仮想底面は、矩形であればよく、正方形に限らず長方形であってもよい。
【0069】
○ 面光源装置10は、発光部23の光出射面側に光学素子18が設けられていればよく、光学素子18を備える光学素子シート17は接着剤を介して貼付された構成に限らず、他の固定手段で発光部23の光出射側に固定された構成としてもよい。
【0070】
○ 基板11の光出射側の面に光学素子18が直接形成された構成としてもよい。
【0071】
○ 基板11は、ガラス製に限らず樹脂製であってもよい。樹脂製の場合は、光学素子18を基板11に直接形成する場合において、ガラス製の基板よりも加工が容易となる。
【0072】
○ 有機EL素子12はボトムエミッション型に限らず、トップエミッション型に形成されていてもよい。例えば、有機EL素子12は、基板上に第1電極13、有機EL層14及び第2電極15が順に形成されており、有機EL層14からの光が第2電極15から取り出される。この場合、基板及び第1電極13は光に対する透過性があってもなくてもよい。しかし、第2電極15は透明である必要がある。第2電極15をITO等の非金属製の透明電極で形成する場合は、第2電極15を陽極とし、第1電極13を陰極とするのが好ましい。しかし、第2電極15を極薄い(50nm以下)金属層で透明に形成した場合は、第2電極15を陰極としてもよい。
【0073】
○ EL素子として有機EL素子12に代えて無機EL素子を用いてもよい。
【0074】
(第2の実施形態)
以下、本発明を、スキャナの原稿読取装置に具体化した第2の実施形態を、図8〜図11にしたがって説明する。図8はスキャナの模式断面図、図9は照明装置およびセンサの模式平面図、図10は図9のA−A線における照明装置の模式断面図、図11(a)は光学素子の平面図、(b)は(a)のB−B線断面図、(c)は(a)のC−C線断面図である。なお、図示の都合上、一部の寸法を誇張して分かり易くしているために、それぞれの部分の幅、長さ、厚さ等の寸法の比は実際の比と異なっている。また、図11(b)、(c)ではハッチングを省略している。
【0075】
図8に示すように、原稿読取装置としてのスキャナ装置101は、透明板であるガラス板102とそのガラス板102の下方に配置され、ガラス板102上に載せられた原稿103に光を照射するための照明装置104と、原稿103で反射した光を受光するセンサ105とを有する。そして、照明装置104から照射される光で原稿103の一部(読取対象部分R)を照明し、当該原稿103の読取対象部分Rから反射される光をセンサ105で受光し、反射される光の強弱によって、原稿103の読取対象部分Rに記載された情報を読み取る。照明装置104とセンサ105とを一体的にガラス板102に沿って(図8中の矢印Dの方向)走査することにより、原稿103の全体を読み取る。
【0076】
照明装置104は、光源である有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)106と複数の光学素子107(図10参照)がマトリクス状に配置された光学部材108とを有する。この実施形態では、図8,9に示すように、照明装置104はセンサ105に対して対称に2つ設けられており、両照明装置104ともガラス板102と平行に配置されている。
【0077】
図9に示すように、有機EL素子106は矩形状で長辺が短辺に比べて著しく長い線状であり、2つある長辺のうちセンサ105側に位置する長辺に沿って発光部109が設けられている。そして、光学部材108は、発光部109の全長にわたり有機EL素子106の光出射側の全域に設けられている。また、有機EL素子106は、発光部109に対してセンサ105とは反対側に、有機EL素子106に電力を供給するための2つの電極端子110、111を有している。
【0078】
有機EL素子106は、図10に示すように、基板120上に、第一電極121、発光層を含む有機層122、第二電極123および保護膜124をこの順に積層した構造を有する。
【0079】
基板120は、有機EL素子106を支えるための板状の部材であり、取り出す光に対して高い透過率を示す透明基板が用いられる。例えば、可視光領域で高い透過率を示すガラスや、透明なアクリル樹脂等を用いることができる。
【0080】
第一電極121には、公知の透明電極材料が用いられ、例えば、ITO(インジウム錫酸化物)や、IZO(酸化インジウム亜鉛)、ZnO(酸化亜鉛)等を用いることができる。
【0081】
第二電極123には、有機層122から出射された光に対する反射性を有する電極材料が用いられる。電極材料としては、公知の金属電極や合金電極を用いることができ、例えば、AgやAl等が用いられる。
【0082】
上記の第一電極121と第二電極123との間に設けられる有機層122は、発光層を含む有機層より構成され、例えば、発光層1層から構成される場合や、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層、バッファー層等のうちの1層以上と発光層との組み合わせにより構成される場合等がある。本実施形態では、有機層122は白色発光を示すように構成されている。
【0083】
保護膜124は、第一電極121、有機層122および第二電極123を外部の水分や酸素等から保護するためのものであり、公知のパッシベーション膜で構成される。保護膜としては、酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸窒化珪素膜等の無機化合物膜や、樹脂膜等の有機化合物膜等を採用することができる。
【0084】
なお、透明電極121は、保護膜124の外部に延出しており、保護膜124の外側の部分が一方の電極端子110を構成している。また、この有機EL素子106では、有機層122と第二電極123とが重なる部分が発光部109を構成する。
【0085】
有機EL素子106の光出射側には、光学部材108が設けられている。光学部材108は、複数の光学素子107がマトリックス状に設けられている。光学部材108は、透明な材質で形成されるとともに、光学素子107が形成された面と反対側の面において接着剤(図示せず)を介してガラス基板120に接着されている。この実施形態では光学部材108は、透明な樹脂、例えば、アクリル、ポリエチレン、ポリカーボネイト等で形成されるとともに、型によって各光学素子107が作製されている。接着剤には、光学部材108の屈折率と同じ、又は近い屈折率を有する紫外線硬化型接着剤や高分子系接着剤等が使用されている。「近い屈折率」とは、屈折率の差が数%以内であることを意味する。
【0086】
図11(a),(b),(c)に示すように、各光学素子107は、仮想底面が矩形状で、対向する二つの三角形状側面125a,125bと、対向する二つの台形状側面126a,126bとを備えた仮想底面を含む五面体で構成されている。この実施形態では、各光学素子107は同一形状で形成され、仮想底面は正方形に形成されている。
【0087】
光学素子107は、二つの三角形状側面125a,125bが対称となるように形成されており、二つの台形状側面126a,126bの少なくとも一部が非対称となるように形成されている。台形状側面126a,126bの接合線127を含み仮想底面に垂直な断面における台形の一方の底角を角度θ1、他方の底角を角度θ2、台形状側面126a,126bの接合線127と直交し、前記仮想底面に垂直な断面における三角形の底角のうち、読取対象部分Rに近い方の底角を角度θ4、他方の底角を角度θ3とした場合、角度θ3,θ4が次の関係を満足する。
【0088】
角度θ3<角度θ4
光学素子107の大きさは、使用する光の波長の数倍(例えば、5倍)以上で、200μm以下の範囲が好ましい。光の波長の数倍未満だと光の干渉の影響を受けて好ましくなく、200μmより大きいと光学素子107一つ一つの明暗が画像情報に影響を与える可能性があるため好ましくない。
【0089】
センサ105は、原稿103で反射した光の強弱を検知するためのもので、公知のイメージセンサを用いることができる。必要に応じて、原稿103とセンサ105との間に、反射した光を集光するレンズ等を設けてもよい。
【0090】
このように構成された照明装置104およびスキャナ装置101の動作を説明する。
【0091】
有機EL素子106の両電極端子110、111間に電圧が印加されると、有機層122中の発光層が発光する。この光のうち一部は直接ガラス基板120を通り、残りの一部は第二電極123で反射された後ガラス基板120を通って光学部材108に入射する。そして、光学部材108に入射した光の大部分が光学部材108から出射する。
【0092】
ここで、有機EL素子106の光出射面に光学部材108に代えて拡散シートを設けた場合は、拡散シートから出射された光のうちの一部が、直接原稿103の読取対象部分Rに到達する。しかし、有機EL素子106の光出射特性は等方性であり、拡散シートによって拡散されているため、他の大部分の光は直接原稿103の読取対象部分Rには向かわない。
【0093】
一方、この実施形態では、特定形状の五面体構造の光学素子107がマトリクス状に配置された光学部材108が有機EL素子106の光出射面に設けられている。この光学部材108は、特定方向に光を取り出すことができるため、光学部材108から出射された光の大部分は、直接原稿103の読取対象部分Rに到達し、読取対象部分Rの照度が向上する。
【0094】
原稿103の読取対象部分Rに到達した光は、この部分で反射されてセンサ105に向かう。このとき、読取対象部分Rの状態、すなわち、どんな色かによって反射する光が変わる。有機EL素子106は白色の光を発しているため、読取対象部分Rで反射される光の状態は、自然光下で人間の目に認識される色の状態に近いものとなる。このように反射された光をセンサ105で受光して、その受光した光の状態を電気信号に変換して、画像として読み込む。
【0095】
このようにして原稿103の読取対象部分Rに記載されている情報を読み取った後、センサ105と照明装置107とを一体的にガラス板102に沿って移動させて、原稿103上の読取対象部分Rを変える。そして、上記のようにこの新たな読取対象部分Rに記載されている情報を読み取る。このような読取動作を原稿103全体にわたって行う(走査する)ことにより、原稿103に記載されている情報の全部を読み取る。
【0096】
この実施の形態では以下の効果を有する。
(6)有機EL素子106の光出射側に複数の五面体状の光学素子107が設けられた光学部材108が貼付されている。このため、照明装置104は、有機EL素子106内部で発せられた光を特定方向に取り出すことができる。よって、スキャナ光源101は、有機EL素子106からの光を効率的に読取対象部分Rの方向に取り出すことができる。また、スキャナ装置101において、読取対象部分Rの照度を向上させることができ、同じ照度を得るために必要な有機EL素子106を小型にすることができる。また、同じ照度を得るために必要な有機EL素子106に供給される電力を少なくすることができる。
(7)光学部材108は、発光部109の全長にわたり有機EL素子106の光出射側の全域に設けられている。このため、照明装置104は、有機EL素子106からの光を効率的に外部に取り出すことができる。また、スキャナ装置101において、有機EL素子106からの光を効率的に読取対称部分Rの方向に取り出すことができる。
(8)光学部材108の各光学素子107は同一形状で形成されている。このため、有機EL素子106内部で発せられた光が特定方向に多く取り出される。スキャナ光源101は、有機EL素子106からの光を効率的に読取対象部分Rの方向に取り出すことができる。
(9)センサ105と照明装置104とを一体的にガラス板102に沿って走査する。このため、小型のセンサ105、照明装置104を用いても、大きな原稿に記載された情報を読み取ることが可能となる。
(10)照明装置104をセンサ105に対して対称に2つ設けている。このため、原稿103の読取対象部分R上の照度をさらに上げることができる。
(11)有機EL素子106は白色の光を発するように、有機層122が構成されている。このため、自然光とほぼ同じ状態で原稿103の読取対象部分Rを照明することができ、読取対象部分Rで反射される光の状態を自然光下で肉眼で認識される色の状態に近いものとすることができる。
(12)光源として線状の有機EL素子106を用いている。このため、光源を小型(薄型)にでき、スキャナ装置101も全体として小型(薄型)にできる。
【0097】
以下、本実施例の効果をシミュレーションによって確認した結果を示す。
【0098】
図12に示すような、幅4.5mmのセンサの両側に発光部の幅が8mmの有機EL素子を設けたスキャナ装置において、センサの中央部の上方14mmの位置にある読取対象部分Rの照度を、光学シミュレーションにより計算した。
【0099】
<実施例2>
有機EL素子のガラス基板と同じ長さと幅の光学部材を、有機EL素子の光出射側に設けた。五面体形状の複数の光学素子は、1辺の長さが50μmである正方形の仮想底面を持ち、それぞれが同一形状で形成した。光学素子の角度θ1〜θ2は、角度θ1=角度θ2=65°、角度θ3=20°、角度θ4=60°とした。
【0100】
<比較例1>
比較のため、有機EL素子の光出射側に、光学部材に代えて市販の拡散シートを備えた場合の、読取対象部分Rの照度をシミュレーションにより計算した。シミュレーションにより、最も照度が高かった拡散シート(最良の拡散シート)を備えた場合を比較例1とした。
【0101】
以上のような場合でシミュレーションを行った結果、比較例1の相対照度を1とすると、実施例2の相対照度は1.2となった。すなわち、本実施例の光学部材を設けることにより、読取対象部分Rの照度が約1.2倍になることがわかる。このことから、有機EL素子から発せられた光が、光学部材によって読取対象部分Rの方向に取り出される光量が多くなったことが確認できた。
なお、角度θ1〜角度θ4の最適値は、光源の出射特性や、光源と読取対象部分Rとの相対的な位置関係に依存するので、それぞれの場合において、試作やシミュレーションによって最適値を求める必要がある。
【0102】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、光学部材をいくつかの領域に分け、領域毎に光学素子の形状を変化させた点が、前記第2の実施形態と異なっている。その他の部分については、前記第2の実施形態と同様の構成となっている。
【0103】
本実施形態では、領域毎に光学素子の角度θ3及び角度θ4を任意の角度に変化させており、有機EL素子106内部で発せられた光の取り出される角度が、領域毎に変化する。すなわち、角度θ3及び角度θ4を領域毎に任意の角度に変化させることにより、照射したい特定部分(読取対象部分R)に光を集光する(取り出す)ことができる。
【0104】
この第2の実施形態においては、第2の実施形態の効果(6),(7),(9)〜(12)と同様の効果を有する他に次の効果を有する。
(13)光学部材をいくつかの領域に分け、領域毎に光学素子の形状を変化させた。このため、有機EL素子106内部で発せられた光が領域毎に異なる角度で取り出され、照射したい特定部分に光を集光することができる。よって、スキャナ光源101は、有機EL素子106からの光を効率的に読取対象部分Rの方向に取り出すことができ、読取対象部分Rに光を集光することができる。
【0105】
以下、第3の実施形態の効果についても、シミュレーションによって確認した結果を示す。スキャナ装置は実施例2と同様に図12に示した構成である。
【0106】
<実施例3>
実施例2に示した光学部材において、有機EL素子の幅方向に対して、等しい幅の8つの領域に分け、領域毎に五面体形状の光学素子の角度θ3及び角度θ4を、表6に示すように変化させた。また、角度θ1及び角度θ2は65°とした。なお、表6において、読取対象部分Rに近い方から、領域1、領域2、領域3、…とした。
【0107】
【表6】
以上のような場合でシミュレーションを行った結果、比較例1の相対照度を1とすると、実施例3の相対照度は1.44となった。すなわち、本実施例の光学部材を設けることにより、読取対象部分Rの照度が約1.44倍になることがわかる。このことから、有機EL素子から発せられた光が、光学部材によって読取対象部分Rの方向に取り出される光量が多くなったことが確認できた。
なお、角度θ1〜角度θ4の最適値は、光源の出射特性や、光源と読取対象部分Rとの相対的な位置関係に依存するので、それぞれの場合において、試作やシミュレーションによって最適値を求める必要がある。
【0108】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば次のように構成してもよい。
【0109】
○ 光源として有機EL素子106を用いたが、光源として他の発光装置、例えばLEDや冷陰極管、無機EL素子等も用いることができる。LEDや冷陰極管、無機EL素子等を用いた場合でも、光学部材によって特定方向に光を取り出すことができる。
【0110】
○ 上記実施形態では、有機EL素子106は基板側から光が出射される、いわゆるボトムエミッションタイプであったが、基板とは反対側から光が出射されるトップエミッションタイプであってもよい。トップエミッションタイプの有機EL素子を光源として採用する場合には、第二電極123および保護膜124を透明にする必要があり、基板120および第一電極121は透明である必要はない。また、光学部材108は保護膜124上に設ける。
【0111】
○ 原稿読取装置としてスキャナ装置101を用いたが、スキャナ装置以外にも、ファクシミリ装置やコピー装置にも用いることができる。
【0112】
○ スキャナ装置101において、照明装置104は2つ同時に用いる必要はなく、1つのみであってもよい。
【0113】
○ スキャナ装置101において、センサ105と照明装置104とを一体的に走査する必要はなく、例えば、センサ105をガラス板102に対して固定し、照明装置104のみを走査してもよい。この場合、原稿103からの反射光は別途光学系を用いてセンサ105に導けばよい。
【0114】
○ 光学部材108として、光学素子107をマトリクス状に配置したが、光学素子をマトリクス状に配置せず、ランダムに配置してもよい。
【0115】
○ 光学部材108として、光学素子107の形状を領域毎に徐々に変化させてもよい。例えば、スキャナ装置101においては、読取対象部分Rに近い側から遠い側の領域へ配置されるに従い、光学素子107の角度θ3が徐々に大きくなるように形成してもよい。また、ある特定の領域にある光学素子107のみを変化させてもよい。
【0116】
○ 照明装置104は、ガラス板102と平行に配置したが、ガラス板102に対して傾けて配置してもよい。
【0117】
○ 照明装置104において、光の出射面側である光学部材108上に反射板を設けてもよい。
【0118】
以下の技術的思想(発明)は前記実施の形態から把握できる。
【0119】
(1)請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記EL素子は、有機EL素子である。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】(a)は面光源装置の模式図、(b)は光学素子シートの模式斜視図。
【図2】(a)は光学素子の平面図、(b)は(a)のB-B線断面図、(c)は(a)のC-C線断面図。
【図3】極角及び方位角を示す模式図。
【図4】発光部における極角と光度との関係を示すグラフ。
【図5】光学素子の形状と面光源装置の正面輝度との関係を示すグラフ。
【図6】光学素子の形状と面光源装置の正面輝度との関係を示すグラフ。
【図7】従来技術の模式図。
【図8】スキャナ装置の模式断面図。
【図9】図1のセンサおよび照明装置の模式平面図。
【図10】図2中の有機EL素子のA−A線における模式断面図。
【図11】(a)は光学素子の平面図、(b)は(a)のB−B線断面図、(c)は(a)のC−C線断面図。
【図12】シミュレーションの条件を示す模式図。
【符号の説明】
【0121】
θ1,θ2,θ3,θ4…角度、10…面光源装置、11…基板、12…エレクトロルミネッセンス素子としての有機EL素子、13…陽極としての第1電極、14…有機EL層、15…陰極としての第2電極、17…光学部材としての光学素子シート、18…光学素子、19a,19b…三角形状側面、20a,20b…台形状側面、21…接合線、22…プリズムシート、23…発光部、101…原稿読取装置としてのスキャナ装置、102…透明板としてのガラス板、104…照明装置、105…センサ、106…光源としての有機EL素子、107…光学素子、108…光学部材、R…読取対象部分。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部と、頂角90°のプリズムが所定ピッチで平行に形成された2枚のプリズムシートとを備える面光源装置であって、
前記発光部は、エレクトロルミネッセンス素子と、該発光部の光出射面側に設けられた立体形状の複数の光学素子とを備えており、
前記エレクトロルミネッセンス素子は、陽極と、発光層と、陰極とを備えており、
前記2枚のプリズムシートは、前記面光源装置の光取り出し側に、プリズムの延びる方向が互いに直交する状態となるように配置されており、
前記発光部は、前記プリズムシートのプリズムの延びる方向に対して方位角で45°をなす4方向の平均光度について、極角が30°〜70°にピークを持つ
ことを特徴とする面光源装置。
【請求項2】
発光部と、頂角90°のプリズムが所定ピッチで平行に形成された2枚のプリズムシートとを備える面光源装置であって、
前記発光部は、エレクトロルミネッセンス素子と、該発光部の光出射面側に設けられた仮想底面が矩形である立体形状の複数の光学素子とを備えており、
前記エレクトロルミネッセンス素子は、陽極と、発光層と、陰極とを備えており、
前記2枚のプリズムシートは、前記面光源装置の光取り出し側に、プリズムの延びる方向が互いに直交する状態となるように配置されており、
前記発光部は、前記光学素子の仮想底面の一つの辺が延びる方向に対して方位角で45°をなす4方向の平均光度について、極角が30°〜70°にピークを持つ
ことを特徴とする面光源装置。
【請求項3】
前記光学素子は、仮想底面が矩形状で、対向する二つの三角形状側面と、対向する二つの非対称な台形状側面とを備えた五面体で構成され、前記二つの台形状側面の接合線を含み前記仮想底面に垂直な断面における台形の一方の底角を角度θ1、他方の底角を角度θ2、前記台形状側面の接合線と直交し、前記仮想底面に垂直な断面における三角形の一方の底角を角度θ3、他方の底角を角度θ4とした場合、前記角度θ1,θ2,θ3,θ4が次の関係を満足する請求項1又は請求項2に記載の面光源装置。
10°≦角度θ3≦25°
45°≦角度θ4≦85°
60°≦角度θ1+角度θ2≦130°
【請求項4】
前記光学素子の仮想底面は正方形である請求項3に記載の面光源装置。
【請求項5】
立体形状の複数の光学素子を備え、
前記複数の光学素子の少なくとも一部は、仮想底面が矩形状で、対向する二つの三角形状側面と、対向する二つの非対称な台形状側面とを備えた前記仮想底面を含む五面体で構成されていることを特徴とする光学部材。
【請求項6】
前記複数の光学素子の少なくとも一部は、前記台形状側面の接合線と直交し、前記仮想底面に垂直な断面における三角形の一方の底角を角度θ3、他方の底角を角度θ4とした場合、前記角度θ3とθ4とが次の関係を満足する請求項5に記載の光学部材。
角度θ3<角度θ4
【請求項7】
前記複数の光学素子は、全て同一形状である請求項5又は請求項6に記載の光学部材。
【請求項8】
前記複数の光学素子の仮想底面は正方形である請求項5〜7のいずれか一項に記載の光学部材。
【請求項9】
前記複数の光学素子は、マトリクス状に配置されている請求項5〜8のいずれか一項に記載の光学部材。
【請求項10】
照明装置と、センサと、原稿を載置する透明板とを有し、前記照明装置が前記透明板に沿って走査されるとともに、前記原稿の読取対象部分で反射された光を前記センサで読み取る原稿読取装置であって、
前記照明装置は、線状に形成された有機エレクトロルミネッセンス素子よりなる光源と、該光源の光が出射される側に設けられた請求項6〜9のいずれか一項に記載の光学部材とを有しており、
前記複数の光学素子は、前記台形状側面の接合線が、前記光源の長手方向と平行になるようにそれぞれ配置されており、
前記仮想底面に垂直な断面における三角形の底角のうち、前記読取対象部分に近い方の底角を角度θ4、他方の底角を角度θ3とすることを特徴とする原稿読取装置。
【請求項11】
前記複数の光学素子は、前記読取対象部分に近い側から遠い側へ配置されるに従い、前記角度θ3が大きくなる請求項10に記載の光学部材。
【請求項12】
前記照明装置が前記センサに対して対称に2つ設けられている請求項10又は請求項11に記載の原稿読取装置。
【請求項13】
発光部と、頂角90°のプリズムが所定ピッチで平行に形成された2枚のプリズムシートとを備える面光源装置であって、
前記発光部は、エレクトロルミネッセンス素子と、該発光部の光出射面側に設けられた請求項7〜9のいずれか一項に記載の光学部材とを備えており、
前記エレクトロルミネッセンス素子は、陽極と、発光層と、陰極とを備えており、
前記2枚のプリズムシートは、前記面光源装置の光取り出し側に、プリズムの延びる方向が互いに直交する状態となるように配置されており、
前記発光部は、前記プリズムシートのプリズムの延びる方向に対して方位角で45°をなす4方向の平均光度について、極角が30°〜70°にピークを持ち、
前記角度θ1,θ2,θ3,θ4が次の関係を満足することを特徴とする面光源装置。
10°≦角度θ3≦25°
45°≦角度θ4≦85°
60°≦角度θ1+角度θ2≦130°
【請求項1】
発光部と、頂角90°のプリズムが所定ピッチで平行に形成された2枚のプリズムシートとを備える面光源装置であって、
前記発光部は、エレクトロルミネッセンス素子と、該発光部の光出射面側に設けられた立体形状の複数の光学素子とを備えており、
前記エレクトロルミネッセンス素子は、陽極と、発光層と、陰極とを備えており、
前記2枚のプリズムシートは、前記面光源装置の光取り出し側に、プリズムの延びる方向が互いに直交する状態となるように配置されており、
前記発光部は、前記プリズムシートのプリズムの延びる方向に対して方位角で45°をなす4方向の平均光度について、極角が30°〜70°にピークを持つ
ことを特徴とする面光源装置。
【請求項2】
発光部と、頂角90°のプリズムが所定ピッチで平行に形成された2枚のプリズムシートとを備える面光源装置であって、
前記発光部は、エレクトロルミネッセンス素子と、該発光部の光出射面側に設けられた仮想底面が矩形である立体形状の複数の光学素子とを備えており、
前記エレクトロルミネッセンス素子は、陽極と、発光層と、陰極とを備えており、
前記2枚のプリズムシートは、前記面光源装置の光取り出し側に、プリズムの延びる方向が互いに直交する状態となるように配置されており、
前記発光部は、前記光学素子の仮想底面の一つの辺が延びる方向に対して方位角で45°をなす4方向の平均光度について、極角が30°〜70°にピークを持つ
ことを特徴とする面光源装置。
【請求項3】
前記光学素子は、仮想底面が矩形状で、対向する二つの三角形状側面と、対向する二つの非対称な台形状側面とを備えた五面体で構成され、前記二つの台形状側面の接合線を含み前記仮想底面に垂直な断面における台形の一方の底角を角度θ1、他方の底角を角度θ2、前記台形状側面の接合線と直交し、前記仮想底面に垂直な断面における三角形の一方の底角を角度θ3、他方の底角を角度θ4とした場合、前記角度θ1,θ2,θ3,θ4が次の関係を満足する請求項1又は請求項2に記載の面光源装置。
10°≦角度θ3≦25°
45°≦角度θ4≦85°
60°≦角度θ1+角度θ2≦130°
【請求項4】
前記光学素子の仮想底面は正方形である請求項3に記載の面光源装置。
【請求項5】
立体形状の複数の光学素子を備え、
前記複数の光学素子の少なくとも一部は、仮想底面が矩形状で、対向する二つの三角形状側面と、対向する二つの非対称な台形状側面とを備えた前記仮想底面を含む五面体で構成されていることを特徴とする光学部材。
【請求項6】
前記複数の光学素子の少なくとも一部は、前記台形状側面の接合線と直交し、前記仮想底面に垂直な断面における三角形の一方の底角を角度θ3、他方の底角を角度θ4とした場合、前記角度θ3とθ4とが次の関係を満足する請求項5に記載の光学部材。
角度θ3<角度θ4
【請求項7】
前記複数の光学素子は、全て同一形状である請求項5又は請求項6に記載の光学部材。
【請求項8】
前記複数の光学素子の仮想底面は正方形である請求項5〜7のいずれか一項に記載の光学部材。
【請求項9】
前記複数の光学素子は、マトリクス状に配置されている請求項5〜8のいずれか一項に記載の光学部材。
【請求項10】
照明装置と、センサと、原稿を載置する透明板とを有し、前記照明装置が前記透明板に沿って走査されるとともに、前記原稿の読取対象部分で反射された光を前記センサで読み取る原稿読取装置であって、
前記照明装置は、線状に形成された有機エレクトロルミネッセンス素子よりなる光源と、該光源の光が出射される側に設けられた請求項6〜9のいずれか一項に記載の光学部材とを有しており、
前記複数の光学素子は、前記台形状側面の接合線が、前記光源の長手方向と平行になるようにそれぞれ配置されており、
前記仮想底面に垂直な断面における三角形の底角のうち、前記読取対象部分に近い方の底角を角度θ4、他方の底角を角度θ3とすることを特徴とする原稿読取装置。
【請求項11】
前記複数の光学素子は、前記読取対象部分に近い側から遠い側へ配置されるに従い、前記角度θ3が大きくなる請求項10に記載の光学部材。
【請求項12】
前記照明装置が前記センサに対して対称に2つ設けられている請求項10又は請求項11に記載の原稿読取装置。
【請求項13】
発光部と、頂角90°のプリズムが所定ピッチで平行に形成された2枚のプリズムシートとを備える面光源装置であって、
前記発光部は、エレクトロルミネッセンス素子と、該発光部の光出射面側に設けられた請求項7〜9のいずれか一項に記載の光学部材とを備えており、
前記エレクトロルミネッセンス素子は、陽極と、発光層と、陰極とを備えており、
前記2枚のプリズムシートは、前記面光源装置の光取り出し側に、プリズムの延びる方向が互いに直交する状態となるように配置されており、
前記発光部は、前記プリズムシートのプリズムの延びる方向に対して方位角で45°をなす4方向の平均光度について、極角が30°〜70°にピークを持ち、
前記角度θ1,θ2,θ3,θ4が次の関係を満足することを特徴とする面光源装置。
10°≦角度θ3≦25°
45°≦角度θ4≦85°
60°≦角度θ1+角度θ2≦130°
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−5277(P2007−5277A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−328692(P2005−328692)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】
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