説明

面材

【課題】ゴム強化樹脂組成物の薄肉体(A)と基材(B)を積層して成り、薄肉体(A)の外観が良好で、各層間の密着性、アンカーコート層の耐溶剤性が優れ、製造が容易な面材を提供する。
【解決手段】基材(B)20の少なくとも一方の表面上に、ゴム強化樹脂組成物を成形して成る薄肉体(A)10を積層して成り、薄肉体(A)10の基材(B)20と反対側の表面に、該表面をコロナ処理して成るコロナ処理層10aを形成し、該コロナ処理層10a上にアンカーコート層13を積層し、該アンカーコート層13上の少なくとも一部に図柄層15を積層して成る面材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種製品において目視される部材として好適に使用される、意匠性に優れた面材に関する。詳しくは、ゴム強化樹脂組成物の薄肉体と基材との積層体から成り、薄肉体には図柄層を有し、各層間の密着性や、アンカーコート層の耐溶剤性にも優れることから、外観が良好であり、且つ、製造が容易な面材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ABS樹脂フィルムの表面に図柄層を積層する方法は、ABSフィルムに、予め表面に図柄層が施されたPETフィルムからなる転写フィルムを熱ラミネートして、該図柄層をABSフィルムに転写し、PETフィルムを剥離することで行われている(特許文献1参照)。しかし、この方法では、図柄層を転写して転写フィルムを剥離する工程を要するため、製造工程が煩雑である上、転写フィルムが廃棄物となり、コストが上昇し、さらには、製造工程で異物が積層体に混入する危険性がある。したがって、ABS樹脂フィルムに直接印刷等の方法で図柄層を形成することが望まれている。
特許文献2には、図柄層を有する面材が記載されている。
【0003】
しかし、ABS、ASA樹脂等のゴム強化樹脂は耐溶剤性が低く、該樹脂の表面に直接印刷することは困難である。また、本発明者の実験によれば、ゴム強化樹脂フィルムに直接印刷を施すと、印刷インク中の溶剤がゴム強化樹脂フィルムに浸透して、印刷裏面に膨れ等の不良が発生し、印刷層の外観が劣ることがあった。また、該印刷面に透明樹脂層を積層した場合、透明樹脂層に気泡が発生するなど、外観を損なう場合があった。
【0004】
【特許文献1】特開2005−178276号公報
【特許文献2】特開2006−034854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、基材(B)とゴム強化樹脂組成物の薄肉体(A)との積層体から成り、薄肉体(A)の表面に図柄層を有する面材であって、各層間の密着性や、アンカーコート層の耐溶剤性にも優れることから図柄層の外観が良好であり、且つ製造が容易な面材の提供を目的とする。さらに、基材(B)と反対側の最上層として透明樹脂層を積層した場合、透明樹脂層に気泡等の発生がなく透明樹脂層の外観が優れた面材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、基材(B)に積層される薄肉体(A)が、該薄肉体(A)の表面をコロナ処理し、該コロナ処理した面にアンカーコート層を形成し、該アンカーコート層に図柄層を施すことにより、図柄層の外観を良好にでき、更には該アンカーコート層を特定の樹脂で形成することにより、各層間の密着性が更に優れ、図柄層の外観を一層良好にできることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明によれば、基材(B)の少なくとも一方の表面上に、ゴム強化樹脂組成物を成形して成る薄肉体(A)を積層して成り、前記薄肉体(A)には、前記基材(B)と反対側の表面に、該表面をコロナ処理して成るコロナ処理層、該コロナ処理層上に積層して成るアンカーコート層、該アンカーコート層上の少なくとも一部に積層して成る図柄層、を順に設けて成る面材が提供される。
この面材の薄肉体(A)の基材(B)と反対側の面には、アンカーコート層に図柄層を直接印刷して形成することができるので、製造が容易であり、転写フィルムなどの廃棄物を生じることもなく、安価に製造できる。
また、本発明の好ましい実施の形態として透明樹脂層を熱ラミネートした際には、図柄層から残留溶剤が薄肉体(A)に浸透して薄肉体(A)に膨れ等が生じて印刷面の外観不良や透明樹脂層に気泡が発生するなどの現象が抑制されるので、外観も良好である。
【0008】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記アンカーコート層は、ウレタン系樹脂(a1)及びポリエステル系樹脂(a2)からなる群より選ばれた少なくとも1種から形成される。
より好ましくは、上記アンカーコート層は、固形物換算で、ウレタン系樹脂(a1)60〜10質量%、及び、ポリエステル系樹脂(a2)40〜90質量%(但し、該成分(a1)と該成分(a2)の合計は100質量%)から形成される。このアンカーコート層はアンカーコート層と他の各層との密着性がより優れる。同時に、図柄層からの残留溶剤が薄肉体(A)に浸透するのが抑制され、その結果、図柄層及び透明樹脂層の外観が良好となる。
【0009】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、上記アンカーコート層は、ウレタン系樹脂(a1)水性分散体及びポリエステル系樹脂(a2)水性分散体からなる群より選ばれた少なくとも1種から形成された塗膜層として形成される。このアンカーコート剤を使用するとアンカーコート層の形成性に優れる。
【0010】
本発明のさらにより好ましい実施形態によれば、上記ウレタン系樹脂(a1)水性分散体、及び、上記ポリエステル系樹脂(a2)水性分散体は、それぞれ、アクリル変性されたウレタン系樹脂水性分散体、及び、アクリル変性されたポリエステル系樹脂水性分散体である。このアンカーコート剤を使用するとアンカーコート層の形成性に優れ、各層間の密着性が一層優れる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の面材は、基材(B)の少なくとも一方の表面上に、ゴム強化樹脂組成物を成形して成る薄肉体(A)を積層して成り、前記薄肉体(A)には、前記基材(B)と反対側の表面に、該表面をコロナ処理して成るコロナ処理層、該コロナ処理層上に積層して成るアンカーコート層、該アンカーコート層上の少なくとも一部に積層して成る図柄層、を順に設けて成るので、アンカーコート層に直接図柄層を印刷して形成でき、製造が容易であり、転写フィルムなどの廃棄物を生じることもなく、安価に製造できる。そして、各層間の密着性及び図柄層の外観が優れる。
また、好ましい実施の形態として該図柄層に透明樹脂層を熱ラミネートにして積層する際にも、図柄層から残留溶剤が薄肉体(A)に浸透するのが抑制され、薄肉体(A)に膨れ等の不良や透明樹脂層に気泡が発生するなどの現象が抑制され、外観に優れる。
さらに、アンカーコート層を特定の樹脂で形成した場合には、薄肉体(A)の基材(B)と反対側の面に設けられる各層間の密着性が一段と優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳しく説明する。尚、本明細書において、「(共)重合」とは、単独重
合および共重合を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを
意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味
する。
【0013】
図1(a)は本発明の実施の形態の面材を示す。図示の面材は、基材(B)20の少なくとも一方の表面上に、ゴム強化樹脂組成物を成形して成る薄肉体(A)10を積層して成る。この薄肉体(A)10には、基材(B)20と反対側の表面に、該表面をコロナ処理して成るコロナ処理層10a、該コロナ処理層10a上に積層して成るアンカーコート層11、該アンカーコート層11上の少なくとも一部に積層して成る図柄層13、を順に設けて成る。さらに、これら各層の最上層として、透明樹脂層15を被覆して成る。また、基材(B)の他方の表面上には、ゴム強化樹脂を含む樹脂組成物から成る第2の薄肉体(C)30が設けられている。
なお、図1(a)は構成例を示すものであり、例えば、透明樹脂層15及び/又は第2の薄肉体(C)を省略した構成も可能である(図1(b)参照)。
以下、各層について詳細に説明する。
【0014】
1.薄肉体(A)10:
薄肉体(A)10は、ゴム強化樹脂組成物を成形して成る。薄肉体(A)10を構成するゴム強化樹脂組成物は、ゴム質重合体(a)の存在下にビニル系単量体(b)を重合して得られるゴム強化ビニル系樹脂(A1)、及び、所望によりゴム質重合体の非存在下にビニル系単量体(b)を重合して得られる(共)重合体(A2)からなるゴム強化樹脂を含有するものである。
【0015】
1−1.ゴム質重合体(a):
上記ゴム質重合体(a)としては、特に限定されず、例えば、共役ジエン系ゴム質重合体、非共役ジエン系ゴム質重合体が挙げられる。共役ジエン系ゴム質重合体としては、例えば、ポリブタジエン、ブタジエン・スチレン共重合体、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、及びこれらの水素添加物が挙げられる。非共役ジエン系ゴム質重合体としては、例えば、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、エチレン・ブテン−1共重合体、エチレン・ブテン−1・非共役ジエン共重合体等のエチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム;アクリル系ゴム;シリコーン系ゴム;シリコーン・アクリル系IPNゴム等が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
これらのゴム質重合体(a)のうち、本発明では、各層間の密着性の点から、共役ジエン系ゴム質重合体及びアクリル系ゴムが好ましく、アクリル系ゴムが特に好ましい。本明細書では、アクリル系ゴムを使用したゴム強化樹脂組成物を、「アクリル系ゴム強化樹脂組成物」という。
【0017】
アクリル系ゴムは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体成分として含む重合体であり、好ましくは、アルキル基の炭素数が1〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(m1)の(共)重合体であり、更に好ましくは(メタ)アクリル酸アルキルエステル(m1)及び多官能性ビニル化合物(m2)を単量体成分として含む共重合体である。
【0018】
アルキル基の炭素数が1〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(m1)としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステル(m1)は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができるが、得られる(共)重合体のガラス転移温度が0℃以下、好ましくは−10℃以下となるように選択される。これらの化合物のうち、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。
【0019】
上記多官能性ビニル化合物(m2)とは、分子中に2つ以上の重合性不飽和結合を有する化合物をいう。上記多官能性ビニル化合物(m2)としては、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン等の2官能性芳香族ビニル化合物;1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、アクリル酸アリル、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、3−メチルペンタンジオールジアクリレート、3−メチルペンタンジオールジメタクリレート、メタクリル酸アリル等の2官能性(メタ)アクリル酸エステル;トリメチルロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等の3官能性(メタ)アクリル酸エステル;(ポリ)エチレングリコールジメタクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル;ジアリルマレート、ジアリルフマレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ビスフェノールAのビス(アクリロイロキシエチル)エーテル等が挙げられる。
これらの化合物のうち、メタクリル酸アリル、トリアリルシアヌレートが好ましい。また、これら多官能性ビニル化合物(m2)は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
尚、アクリル系ゴムは、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(m1)及び上記多官能性ビニル化合物(m2)以外に、これらと共重合可能な他の化合物(m3)を単量体成分として含有してもよい。
上記他の化合物(m3)としては、単官能性芳香族ビニル化合物、ジエン化合物等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
上記単官能性芳香族ビニル化合物としては、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。これらのうち、スチレンが好ましい。また、これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
上記アクリル系ゴムにおける(メタ)アクリル酸アルキルエステル(m1)、多官能性ビニル化合物(m2)及び他の化合物(m3)の含有量は、この順に、それぞれ、好ましくは、80〜99.99質量%、0.01〜5質量%及び0〜19.99質量%であり、より好ましくは、90〜99.9質量%、0.1〜2.5質量%及び0〜9.9質量%である(但し、これらの3者の合計を100質量%とする)。
【0023】
上記アクリル系ゴムは、上記単量体を常法に従い乳化重合等の重合方法により製造することができる。
上記アクリル系ゴムの体積平均粒子径は、好ましくは60〜500nm、より好ましく60〜400nm、更に好ましくは60〜200nmである。この体積平均粒子径が上記範囲にあると、膜厚の小さい薄肉体とした場合であっても、形状安定性及び強度に優れる。尚、上記アクリル系ゴムの体積平均粒子径は、動的光散乱法により測定することができる。
上記アクリル系ゴムの体積平均粒子径は、該アクリル系ゴムの製造時において、乳化剤の種類及び使用量、重合開始剤の種類及び使用量、重合速度(重合温度、重合開始剤の添加方法等)、攪拌速度等を適宜、選択することにより調整することができる。
上記アクリル系ゴムは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
上記ゴム質重合体のゲル含率は、好ましくは20〜99%、より好ましくは30〜98%、更に好ましくは40〜98%である。ゲル含率が上記範囲にあると、カレンダー成形加工性及び耐衝撃性の物性バランスに優れる。
尚、上記ゲル含率は、以下の方法により求めることができる。まず、ゴム質重合体の1グラムをアセトン(アクリル系ゴムの場合はアセトニトリル)20mlに投入し、25℃の温度条件下で、攪拌機を用い、1,000rpmで2時間攪拌する。その後、遠心分離機(回転数;22,000rpm)で1時間遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分を秤量(質量をWグラムとする。)し、下記式により算出する。
ゲル含率(%)=〔W(g)/1(g)〕×100
尚、ゲル含率は、ゴム質重合体の製造時に、単量体の種類及び量、分子量調節剤の種類及び量、重合時間、重合温度、重合転化率等を適宜選択することにより調整される。
【0025】
1−2.ビニル系単量体(b):
上記ビニル系単量体(b)としては、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物が好ましく用いられる。
【0026】
上記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、メチル−α−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルナフタレン、メトキシスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、トリブロムスチレン、フルオロスチレン等が挙げられる。これらのうち、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。また、これらの化合物は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
上記シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロ(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。また、これらの化合物は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
尚、上記ビニル系単量体としては、上記の芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物に加えて、これらと共重合可能な他の化合物を用いてもよい。他の化合物としては、(メタ)アクリル酸エステル、マレイミド化合物、及びその他の官能基含有不飽和化合物が挙げられる。当該その他の官能基含有不飽和化合物としては、例えば、不飽和酸、エポキシ基含有不飽和化合物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物、酸無水物基含有不飽和化合物等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、メタクリル酸メチルが好ましい。
不飽和酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
マレイミド化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、共重合樹脂にマレイミド系単量体単位を導入するために、無水マレイン酸を(共)重合させ、後イミド化してもよい。
【0031】
エポキシ基含有不飽和化合物としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
ヒドロキシル基含有不飽和化合物としては、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、ヒドロキシスチレン等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
オキサゾリン基含有不飽和化合物としては、ビニルオキサゾリン等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
酸無水物基含有不飽和化合物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
上記ビニル系単量体(b)としては、目的、用途等に応じてその種類及び使用量が選択されるが、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を主として用いる場合には、これらの化合物の合計量は、ビニル系単量体(b)全量に対して、好ましくは70〜100質量%、更に好ましくは80〜100質量%である。また、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物の使用比率は、これらの合計を100質量%とした場合、それぞれ、好ましくは60〜85質量%及び15〜40質量%、更に好ましくは55〜80質量%及び20〜35質量%である。
【0035】
1−3.ゴム強化樹脂組成物の製造方法:
ゴム強化樹脂組成物は、下記成分(A1)及び所望により下記成分(A2)を含有してなる。
【0036】
成分(A1):ゴム質重合体(a)の存在下にビニル系単量体(b)を重合して得られるゴム強化ビニル系樹脂。
成分(A2):ゴム質重合体(a)の非存在下にビニル系単量体(b)を重合して得られ
る(共)重合体。
【0037】
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)には、通常、ビニル系単量体(b)の(共)重合体がゴム質重合体(a)にグラフトしているグラフト共重合体と、ゴム質重合体(a)にグラフトしていないビニル系単量体(b)の(共)重合体が含まれる。但し、このゴム強化ビニル系樹脂(A1)に、ビニル系単量体(b)の(共)重合体がグラフトしていないゴム質重合体(a)が含まれていてもよい。
【0038】
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の製造方法は、特に限定されず、公知の重合法、例えば、乳化重合、溶液重合、塊状重合、懸濁重合等が挙げられる。これらのうち、乳化重合が好ましい。尚、ゴム質重合体(a)及びビニル系単量体(b)の使用量は、これらの合計を100質量%とした場合、それぞれ、好ましくは5〜70質量%及び30〜95質量%であり、更に好ましくは10〜65質量%及び35〜90質量%である。
【0039】
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)を乳化重合により製造する場合、重合開始剤、乳化剤、連鎖移動剤(分子量調節剤)、電解質、水等が用いられる。尚、乳化剤及び連鎖移動剤は、状況により使用しない場合もあるが、通常は、使用される。
【0040】
重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、過硫酸カリウム、アゾビスイソブチロニトリル、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシモノカーボネート等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記重合開始剤は、反応系に一括して又は連続的に添加することができる。また、上記重合開始剤の使用量は、上記ビニル系単量体の全量を100質量部とした場合、通常、0.1〜5質量部、好ましくは0.5〜2質量部である。
【0041】
乳化剤としては、アルカンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩等のアルキルスルホン酸塩;ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、これらを不均化反応させた不均化ロジン、精製したロジン等のロジン酸(通常、アビエチン酸を主成分とする。)のアルカリ金属塩(ナトリウム塩又はカリウム塩)等のロジン酸塩;高級アルコールの硫酸エステル、高級脂肪族カルボン酸塩、リン酸塩等のアニオン系界面活性剤;ノニオン系界面活性剤等が挙げられる。
上記乳化剤の使用量は、上記ビニル系単量体(b)の全量を100質量部とした場合、通常、0.1〜5質量部、好ましくは0.1〜3質量部である。
【0042】
連鎖移動剤としては、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、テトラエチルチウラムスルフィド、アクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2−エチルヘキシルチオグリコール、ターピノーレン等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記連鎖移動剤の使用量は、上記ビニル系単量体(b)の全量を100質量部とした場合、通常、0.01〜5質量部、好ましくは0.05〜3質量部である。
【0043】
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)を乳化重合により製造する場合の重合温度は、通常、30〜95℃、好ましくは40〜90℃である。乳化重合により得られたラテックスからゴム強化ビニル系樹脂(A1)を回収するには、通常、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等の無機塩;硫酸、塩酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸等の酸等の凝固剤を添加することにより行われる。その後、凝固したゴム強化ビニル系樹脂(A1)は、水洗、乾燥することによって、粉体として得られる。
【0044】
また、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)を溶液重合、塊状重合又は懸濁重合により製造する場合、常法で行うことができる。溶液重合の場合、通常、ビニル系単量体を、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;メチルエチルケトン等のケトン類;アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等の不活性重合溶媒に溶解させ、重合開始剤の存在下に重合してよいし、あるいは、重合開始剤の非存在下に熱重合してもよい。
【0045】
上記の方法で得られたゴム強化ビニル系樹脂(A1)に残存するビニル系単量体の残存量は、通常、10,000ppm以下、好ましくは、5,000ppm以下である。
【0046】
本発明のゴム強化樹脂組成物は、1種類のゴム強化ビニル系樹脂(A1)のみからなるものであっても、2種以上のゴム強化ビニル系樹脂(A1)からなるものであってもよい。
【0047】
また、本発明のゴム強化樹脂組成物は、前述のように、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)のみであってよいし、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)と、ビニル系単量体(b)の重合によって得られた(共)重合体(A2)との混合物であってもよい。
(共)重合体(A2)を構成するビニル系単量体(b)としては、上記に記載したものを全て使用することができる。(共)重合体(A2)を構成するビニル系単量体(b)は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の形成に用いられたビニル系単量体(b)と同じ種類の化合物であってよいし、異なる化合物であってもよい。また、同じ種類の化合物を複数用いる場合は、使用割合が同じでも異なってもよい。
【0048】
上記(共)重合体(A2)は、ゴム質重合体(a)を使用しない以外、上記したゴム強化ビニル系樹脂(A1)の製造方法と同様に製造することができ、具体的には、バルク重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等により得ることができる。
【0049】
1−4.ゴム強化樹脂組成物の物性:
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)のグラフト率は、好ましくは20〜170%であり、より好ましくは20〜150%、更に好ましくは30〜150%である。このグラフト率が低すぎると、シート等の薄肉体を形成した際に、表面にフローマークが発生する場合があり、機械的強度が十分でない場合がある。また、グラフト率が高すぎると、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の粘度が高くなる場合があり、薄肉化が困難な場合がある。
なお、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)のグラフト率は、その製造時に用いる連鎖移動剤の種類及び使用量、重合開始剤の種類及び使用量、重合時の単量体成分の添加方法及び添加時間等を適宜選択することにより調整することができる。
【0050】
なお、上記グラフト率は、下記式(1)により求めることができる。
グラフト率(質量%)={(S−T)/T}×100
(1)
上記式中、Sはゴム強化ビニル系樹脂1グラムをアセトン(ゴム質重合体がアクリル系ゴムの場合はアセトニトリル)20mlに投入し、25℃の温度条件下で、振とう機により2時間振とうした後、5℃の温度条件下で、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で4時間遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(g)であり、Tはゴム強化ビニル系樹脂1グラムに含まれるゴム質重合体の質量(g)である。このゴム質重合体の質量は、重合処方及び重合転化率から算出する方法、赤外線吸収スペクトル(IR)により求める方法等により得ることができる。
【0051】
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)のアセトン(ゴム質重合体がアクリル系ゴムの場合はアセトニトリル)可溶分の極限粘度(溶媒としてメチルエチルケトンを使用し、30℃で測定)は、好ましくは0.2〜1.0dl/gであり、より好ましくは0.4〜0.8dl/g、更に好ましくは0.4〜0.7dl/gである。上記極限粘度がこの範囲にあると、薄肉体の形成が容易となる。
また、上記(共)重合体(A2)の極限粘度(溶媒としてメチルエチルケトンを使用し、30℃で測定)は、好ましくは0.2〜1.2dl/g、より好ましくは0.25〜0.9dl/gである。
【0052】
なお、上記極限粘度[η]の測定は下記方法で行った。まず、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の上記可溶分又は上記(共)重合体(A2)をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度の異なるものを5点作った。ウベローデ粘度管を用い、30℃で各濃度の還元粘度を測定した結果から、極限粘度[η]を求めた。単位は、dl/gである。
上記極限粘度は、製造時に用いる連鎖移動剤の種類及び使用量、重合開始剤の種類及び使用量、重合温度等を適宜選択することにより調整することができる。
【0053】
本発明に係るゴム強化樹脂組成物中のゴム質重合体(a)の含有量は、好ましくは2〜45質量%、より好ましくは3〜40質量%、更に好ましくは5〜35質量%である。ゴム質重合体(a)の含有量がこの範囲にあると、ゴム強化樹脂組成物からなる薄肉体が十分な強度を備える。
【0054】
1−5.好ましいゴム強化樹脂組成物:
本発明のゴム強化樹脂組成物は、好ましくは、アクリル系ゴム(a)の存在下、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体(b)を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂(A1)、又は、このゴム強化ビニル系樹脂(A1)とビニル系単量体(b)の(共)重合体(A2)との混合物からなり、且つ、グラフト率が20〜170%の樹脂である。
【0055】
上記アクリル系ゴム強化樹脂組成物に分散したアクリル系ゴム(a)は、その形状が限定されることなく、定形及び不定形のいずれでもよい。その形状が粒子状である場合、その数平均粒子径は、60〜500nmであり、より好ましくは60〜400nm、更に好ましくは60〜200nmである。この数平均粒子径が上記範囲にあると、フィルム等の薄肉体とした場合、形状安定性及び強度に優れる。尚、上記アクリル系ゴム強化樹脂組成物に分散したアクリル系ゴムの数平均粒子径は、本発明に係る薄肉体(イ)から作製した薄片を、OsO又はRuOの溶液に浸漬することにより染色した後、透過型電子顕微鏡で観察し、例えば、100個のグラフト化アクリル系ゴムの粒子について測定された粒子径の平均値とすることができる。
【0056】
上記アクリル系ゴム強化樹脂組成物のアセトニトリル可溶分の結合シアン化ビニル化合物量(以下、「結合VC量」ともいう。)は、好ましくは3〜40質量%であり、更に好ましくは10〜30質量%である。この結合VC量が上記範囲にあると、アクリル系ゴム強化樹脂組成物の成形加工性に優れ、得られる薄肉体の外観性及び耐薬品性にも優れる。尚、上記結合VC量は、重合時に添加するシアン化ビニル化合物の比率により調整することができ、その値は、グラフト率を求める際の前処理において得られたアセトニトリル可溶分を測定試料とし、液体クロマトグラフィーにより得ることができる。
【0057】
上記アクリル系ゴム強化樹脂組成物は、更に好ましくは、芳香族ビニル化合物からなる単位及びシアン化ビニル化合物からなる単位を含む樹脂であり、そのグラフト率が20〜170%であり、上記アクリル系ゴム強化樹脂組成物に分散したアクリル系ゴムの数平均粒子径が60〜200nmであり、アセトニトリル可溶分の極限粘度が0.4〜0.8dl/gであり、上記アセトニトリル可溶分の結合シアン化ビニル化合物量が3〜40質量%であり、且つ、液体クロマトグラフィーにより測定された上記結合シアン化ビニル化合物量の分布の標準偏差が5以下の樹脂である。上記グラフト率は、好ましくは20〜170%、より好ましくは20〜150%、更に好ましくは30〜150%である。上記数平均粒子径は、好ましくは50〜500nm、より好ましくは60〜180nm、更に好ましくは70〜150nmである。上記極限粘度は、好ましくは0.2〜1.0dl/gであり、より好ましくは0.4〜0.8dl/gであり、更に好ましくは0.4〜0.7dl/gである。
上記結合シアン化ビニル化合物量(結合VC量)は、より好ましくは10〜40質量%、更に好ましくは20〜30質量%である。この結合VC量が上記範囲にあると、薄膜体の外観性に優れる。
【0058】
本発明に係るアクリル系ゴム強化樹脂組成物は、さらに他の成分を含有するものであってもよい。他の成分としては、重合体、添加剤等が挙げられる。
【0059】
上記重合体としては、ABS樹脂、AES樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂(PET、PBT等)、ポリアミド樹脂、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等が挙げられる。これらの重合体は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
上記添加剤としては、紫外線吸収剤、耐候剤、充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、防曇剤、滑剤、抗菌剤、粘着付与剤、可塑剤、着色剤等が挙げられる。
【0061】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、サリチル酸エステル類、金属錯塩類等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記紫外線吸収剤の含有量は、上記アクリル系ゴム強化樹脂組成物全体100質量部に対して、通常、0.05〜5質量部である。
【0062】
耐候剤としては、有機リン系化合物、有機硫黄系化合物、ヒドロキシル基を含有する有機化合物等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記耐候剤の含有量は、上記アクリル系ゴム強化樹脂組成物全体100質量部に対して、通常、0.1〜5質量部である。
【0063】
充填剤としては、タルク、酸化チタン、クレー、炭酸カルシウム等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記充填剤の含有量は、上記アクリル系ゴム強化樹脂組成物全体100質量部に対して、通常、0.05〜20質量部である。
【0064】
1−6.薄肉体(A)10の製造方法:
薄肉体(A)10は、通常、上記ゴム強化樹脂組成物を、カレンダー成形、インフレーション成形、Tダイ押出成形等の各種成形方法により製造することができる。その厚さは、通常、30〜500μm、好ましくは40〜400μm、更に好ましくは50〜400μmである。
また、上記薄肉体(A)10の表面は、平滑面であってよいし、ヘアライン加工、エンボス加工等により、規則模様又は不規則模様を有してもよい。
【0065】
上記薄肉体(A)10の熱収縮率(JIS
K7133に準拠、温度80℃で30分間状態調節)は、好ましくは、縦方向(生産時の薄肉体の流れ方向)で1%以下、且つ、横方向(薄肉体の流れ方向の直交方向)で1%以下であり、より好ましくは縦方向で0.8%以下、且つ、横方向で0.8%以下である。従って、アンカーコート層11を積層した後に高温下に放置した場合、あるいは、各種印刷手法において加熱を伴う場合においてしわの発生や変形が抑制され、良好な印刷適性及び外観を維持することができる。尚、この熱収縮率は、コロナ処理層10aを形成した場合も同様である。
【0066】
1−7.コロナ処理:
薄肉体(A)10には、基材(B)20と反対側の表面にコロナ処理を施される。このコロナ処理は、公知のコロナ処理装置を用いて行うことができる。コロナ処理の詳細な方法は、後述の「コロナ処理工程」に記載のとおりである。このコロナ処理された表面10aは、未処理の表面に比べて、>C=O、−COOH等の官能基が増加しており、JIS K6768に準拠するぬれ指数は、通常、40mN/m以上、好ましくは43mN/m以上、より好ましくは45mN/m以上である。このぬれ指数が小さすぎると、アンカーコート層11の剥離をまねく場合がある。
【0067】
上記コロナ処理は、上記薄肉体(A)10のアンカーコート層11が形成されるべき側の表面に施すことが必須であるが、基材(B)20との密着性を向上させるために、他方の面をコロナ処理することもできる。
上記コロナ処理された表面は、ヘアライン加工、エンボス加工等の表面加工が施されて
いてもよい。
【0068】
2.アンカーコート層11:
薄肉体(A)10の基材(B)20と反対側の表面、即ち、コロナ処理された表面10aには、アンカーコート層11が設けられる。このアンカーコート層11は、重合体を主成分とする樹脂層として形成される。また、該アンカーコート層は、強度改良、加飾等の目的で、必要に応じて、充填剤、金属光沢調粒子、分散剤、消泡剤、粘度調整剤、造膜助剤、pH調整剤、防腐剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、耐候剤、酸化防止剤、老化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、防曇剤、滑剤、抗菌剤、粘着付与剤、可塑剤、着色剤等を含むことができる。
【0069】
上記アンカーコート層11を形成する重合体としては、例えば、変性オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、イソシアネート系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、ポリアミド系樹脂、マレイン酸系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、天然ゴム、合成ゴム等が挙げられる。これらの重合体は、1種単独で、または2種以上組み合わせて使用できる。
【0070】
これらの重合体のうち、本発明におけるアンカーコート層11は、ウレタン系樹脂(a1)及びポリエステル系樹脂(a2)からなる群より選ばれた少なくとも1種から形成することが好ましい。これらの樹脂成分を用いると、アンカーコート層11と上記コロナ処理面10a、図柄層13、また、透明樹脂層15を設けた場合は該透明樹脂層15との密着性が優れ、このアンカーコート層11の表面の印刷適性(図柄層の密着性、図柄層の外観等)も優れる。
【0071】
アンカーコート層11は、通常、上記重合体を適当な溶媒に分散した分散体を用いて塗膜層として製造することができ、分散体としては、薄肉体(A)10が溶剤で侵されるのを防止するために、水性分散体を使用することが好ましい。上記ポリエステル系樹脂及び/又はウレタン系樹脂からなるアンカーコート層11は、例えば、ウレタン系樹脂(a1)水性分散体及びポリエステル系樹脂(a2)水性分散体からなる群より選ばれた少なくとも1種から形成された塗膜層として容易に形成することができる。
【0072】
上記ウレタン系樹脂(a1)水性分散体は、アクリル変性されたウレタン系樹脂水性分散体であることが好ましく、アクリル成分をコアとしウレタン成分をシェルとするシェル−コア構造を備えたアクリル変性ウレタン樹脂水性エマルジョンであることがより好ましい。ここで、アクリル変性とは、ウレタン樹脂の側鎖や末端にアクリル系単量体又は重合体が化学的に結合したもの以外に、ウレタン樹脂にアクリル系単量体又は重合体が物理的に結合して混合物または複合体を形成したものを包含する。
【0073】
上記ポリエステル系樹脂(a2)水性分散体は、アクリル変性されたポリエステル系樹脂水性分散体であることが好ましく、ポリエステル−アクリル複合水性分散体であることがより好ましい。該ポリエステル−アクリル複合水性分散体はエマルジョンの形態であってもよい。ここで、アクリル変性とは、ポリエステル系樹脂の側鎖や末端にアクリル系単量体又は重合体が化学的に結合したもの以外に、ポリエステル系樹脂にアクリル系単量体又は重合体が物理的に結合して混合物または複合体を形成したものを包含する。
【0074】
上記ウレタン系樹脂(a1)水性分散体及び上記ポリエステル系樹脂(a2)水性分散体はそれぞれ単独で使用しても良いが、両者を混合した水性分散体として使用することが好ましい。両者を混合して使用した場合、本発明の積層体の各層の密着性及び外観が優れる。両者を混合して使用する際の割合は、固形物換算で、上記ウレタン系樹脂(a1)60〜10質量%及び上記ポリエステル系樹脂(a2)40〜90質量%が好ましく、上記ウレタン系樹脂(a1)50〜10質量%及び上記ポリエステル系樹脂(a2)50〜90質量%がより好ましく、上記ウレタン系樹脂(a1)40〜10質量%及び上記ポリエステル系樹脂(a2)60〜90質量%(但し、該成分(a1)と該成分(a2)の合計は100質量%)が特に好ましい。この混合割合の範囲で、外観及び各層の密着性のバランスに優れた積層体が得られる。
【0075】
アンカーコート層11は、上記分散体を適当な塗布手段または印刷手段を用いて上記薄肉体(A)10のコロナ処理表面10aに塗布し、乾燥させることにより塗膜として形成することができる。アンカーコート層11の形成方法の詳細は、後述の「塗布工程」に記載のとおりである。
【0076】
上記アンカーコート層11の厚さは、好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.02〜8μm、更に好ましくは0.05〜7μm、特に好ましくは0.05〜5μmである。この範囲であれば、本発明の目的を達成することができる。
【0077】
本発明において、コロナ処理された薄肉体(A)10にアンカーコート層11を設けて成る薄肉体の熱収縮率(JIS
K7133に準拠、温度80℃で30分間状態調節)は、好ましくは、縦方向で1%以下、且つ、横方向で1%以下であり、より好ましくは縦方向で0.8%以下、且つ、横方向で0.8%以下である。この熱収縮率の範囲では、アンカーコート層11の表面に形成された図柄層13の画像の変形を良好に抑制することができ、図柄層の表面に透明樹脂層15を熱ラミネートなどの方法で積層した場合にも、形状を安定に維持することができる。
【0078】
3.図柄層13:
薄肉体(A)10のコロナ処理表面10aに形成したアンカーコート層11の表面上には、図柄層13が設けられる。図柄層13は、各種印刷方法によりアンカーコート層に直接印刷(ダイレクト印刷)して形成することができる。印刷方法としては、例えば、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷等の公知の印刷法を挙げることができる。印刷に使用するインクは、水性インクであっても、溶剤系インクなどの非水性インクの何れであってもよい。印刷適性に優れることから、好ましくは溶剤系インクである。
【0079】
本発明では、薄肉体(A)10にアンカーコート層11を形成しているため、インクの溶剤成分が薄肉体(A)10まで浸透するのが防止されるので、溶剤系インクを使用して図柄層13を形成する場合に好都合である。特に、アンカーコート層11を、上記ウレタン系樹脂(a1)及びポリエステル系樹脂(a2)との混合物から形成した場合、この効果は顕著になるため、好ましい。
別法として、特開2005−178276号公報に記載のように、予め図柄が印刷され
たPETフィルムから本発明のアンカーコート層11に図柄を転写させる方法で図柄層を形成することもできる。
【0080】
なお、図1に示されるように、本発明では、薄肉体(A)10において、図柄層13以外の層は連続層として形成されるのに対し、図柄層13は、通常、微視的に見てドット状に分離した層として形成されるが、アンカーコート層11に全面的に印刷された連続層として図柄層13を形成してもよい。
【0081】
4.透明樹脂層15:
薄肉体(A)10の基材20と反対側の面には、必要に応じて、透明樹脂層15が、図柄層13等の表面を被覆するように設けられる。
透明樹脂層15は、通常、熱可塑性樹脂の成形樹脂層からなる。該熱可塑性樹脂は、透明であれば特に限定されず、例えば、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリアミド系樹脂、四フッ化エチレン系樹脂、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合樹脂、四フッ化エチレン−エチレン共重合樹脂、四フッ化エチレン−パーフルオロビニルエーテル共重合樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、塩化ビニル系樹脂等が使用できる。これらの熱可塑性樹脂のうち、図柄層13及びアンカーコート層11への密着性の点から、アクリル系樹脂を使用することが好ましい。アクリル系樹脂としては、メチルメタクリレートを構成単量体成分として含有するものが好ましい。
【0082】
透明樹脂層15は、上記熱可塑性樹脂を予めフィルム状またはシート状に成形したものを、図柄層13を被覆するように熱ラミネートして積層することができる。別法としては、上記薄肉体(A)10にアンカーコート層11及び図柄層13を形成して成るフィルムまたはシートの該アンカーコート層11や図柄層13を被覆するように、上記熱可塑性樹脂を押出ラミネートして積層することもできる。
【0083】
透明樹脂層15の厚さは、20μm〜2000μmが好ましく、50μm〜1500μmがより好ましく、50μm〜1000μm好ましい。この厚さが20μm未満では図柄層13の影響により表面の荒れが発生することがある。この厚さが2000μmを超えると経済的に不利となる。
【0084】
5.薄肉体(A)10の他の詳細:
本発明では、薄肉体(A)10は、基材(B)20と接着させるために、薄肉体(A)10のアンカーコート層11とは逆側の表面に粘着層を備えてもよい。その際、薄肉体(A)10と粘着層との密着性や粘着層の平滑性等を高めるために、粘着層が設けられる薄肉体(A)10の表面を予めコロナ処理又はプライマー処理しておいてもよい。粘着層は、該表面に、高分子、粘着付与剤、固体可塑剤等を含有する粘着層形成用組成物(粘着剤組成物)を直接塗布し乾燥させて形成することができる。粘着層の外面には、剥離紙等を設けてもよいが、粘着層が感熱型粘着層である場合には、剥離紙を設けなくてもよい。
【0085】
6.第2の薄肉体(C)30:
第2の薄肉体(C)30は、意匠性、機械的強度、耐傷性、衛生性等の性能を向上させるために積層される。
第2の薄肉体(C)30の材質としては、特に限定されないが、上記に示されている基材(B)20の成形材料が挙げられ、更に、ゴム状重合体、紙、クロス等が挙げられる。好ましくはABS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂等のゴム強化樹脂であり、上記の性能に優れる。
第2の薄肉体(C)としては、フィルム又はシートが挙げられる。
【0086】
7.薄肉体(A)10への好ましい積層方法:
本発明では、薄肉体(A)10には、少なくとも一方の表面をコロナ処理するコロナ処理工程と、該コロナ処理された表面10aに重合体の水性分散体を塗布してアンカーコート層11を形成する塗布工程と、該アンカーコート層11の表面に直接印刷により図柄層13を形成する加飾工程とが施され、また、必要に応じて該図柄層13やアンカーコート層11の表面に透明樹脂層15を積層する積層工程が施される。
【0087】
この好ましい方法では、アンカーコート層11は、重合体の水性分散体を塗布して塗膜として形成されるので、インク中の溶剤が薄肉体(A)10に侵入して薄肉体(A)10の裏面に膨れを形成することがなく、また、アンカーコート層11の表面に直接図柄層を形成することとしたので、従来の転写法におけるような転写フィルムの廃棄物が生じることがなく環境にやさしく、また、図柄層13の形成に溶剤インクを含めた多種多様の印刷インクや印刷技術を使用することができるので、図柄層13の選択範囲が広がり、多様なデザインが可能となる。
【0088】
上記コロナ処理工程は、通常、接地された誘電体被覆ロール(一般的に、ロール芯は、鉄又はアルミニウムからなり、誘電体は、シリコン、ハイパイロン、EPT、セラミックからなる。)と、それに数mmの間隔で配設された電極との間に高電圧をかけてコロナ放電を発生させ、この放電中の電極−ロール間に、ゴム強化樹脂組成物からなる薄肉体(A)10を通過させることにより実施できる。ここで、コロナ処理は、薄肉体(A)10の片面のみに対して行ってよいし、両面に行ってもよい。
【0089】
コロナ処理は、通常、大気雰囲気で行われるが、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気で行ってもよい。処理条件としての放電量は、適宜設定される。
上記放電量は、放電電極長さをL(m)、薄肉体(イ)の速度をV(m/分)、放電電力をP(W)とした場合、下記式により求められる。
【0090】
放電量=P/(L×V)
【0091】
コロナ処理を大気雰囲気で行う場合、高電圧を印可すると、電極と薄肉体(A)10との間にコロナ放電が生じてオゾンOが発生する。そして、このオゾンOが放電エネルギーを受けて酸素ラジカル(遊離基)O・が発生する。更に、この酸素ラジカルO・が、薄肉体(A)10を構成するゴム強化樹脂組成物に含まれた−CH、−CH−等を酸化してカルボニルC=Oを形成する。
【0092】
本方法に係る塗布工程は、上記コロナ処理工程により形成されたコロナ処理された薄肉体(A)10の表面10aに、重合体の水性分散体を適当な塗布方法を用いて塗布することにより実施できる。
この水性分散体の溶媒としては、水単独、又は、水を主成分とし、必要に応じて、アルコール、エステル、ケトン及びエーテルから選ばれた少なくとも1種の水溶性有機溶媒が添加された混合媒体が使用される。
【0093】
上記重合体としては、変性オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、イソシアネート系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、ポリアミド系樹脂、マレイン酸系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、天然ゴム、合成ゴム等から選ばれた少なくとも1種を使用できる。好ましい重合体は、アンカーコート層について上記したとおりである。
【0094】
上記水性分散体は、必要に応じて、充填剤、金属光沢調粒子、分散剤、消泡剤、粘度調整剤、造膜助剤、pH調整剤、防腐剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、耐候剤、酸化防止剤、老化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、防曇剤、滑剤、抗菌剤、粘着付与剤、可塑剤、着色剤等を含有してもよい。
上記水性分散体の固形分濃度は、通常、0.2〜50質量%、好ましくは0.5〜40質量%である。
【0095】
上記水性分散体の塗布方法は、組成物の種類、粘度等により、グラビアコート法、リバースコート法、ナイフコート法、キスコート法等の一般的な塗布方法から選択できる。
上記塗布工程は、通常、塗膜を加熱等により乾燥させる工程を含むことが好ましい。
また、上記のようにしてアンカーコート層11を形成した後、必要に応じて、カレンダー装置等により、アンカーコート層11の表面に平滑処理、光沢処理等を施してもよい。また、アンカーコート層11の表面に、更にプライマー層等を積層してもよい。
【0096】
上記加飾工程は、アンカーコート層11の基材層(B)20とは反対側の表面に直接印刷により図柄層13を設けることによって実施される。本発明では、アンカーコート層11を設けたことから、図柄層13は、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷等の各種印刷方法により形成することができ、印刷に使用するインクも、水性インクであっても、溶剤系インクなどの非水性インクの何れであってもよい。
【0097】
上記積層工程は、図柄層13のアンカーコート層11とは反対側の表面全域に透明樹脂層15を積層することによって実施される。この積層工程は、例えば、予め成形した透明樹脂フィルムまたはシートを、図柄層13やアンカーコート層11を被覆するように熱ラミネートして積層してもよく、上記薄肉体(A)10にアンカーコート層11及び図柄層13が形成されたフィルムまたはシートの該図柄層13を被覆するように、熱可塑性樹脂を押出ラミネートに積層することができる。
【0098】
8.基材(B)20:
本発明で使用される基材(B)20は、上述の薄肉体(A)10と積層できるものであれば、特に限定されないが、基材(B)20の成形材料として、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、有機質材料、無機質材料等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、EVA、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ乳酸等が挙げられる。これらは、1種単独で、又は、2種以上の組み合わせで使用できる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独で、又は、2種以上の組み合わせで使用できる。
上記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂は、リサイクル樹脂又はリサイクル樹脂と非リサイクル樹脂の混合物であってもよい。
上記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂には、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、ガラスビーズ、ワラストナイト、ガラスのミルドファイバー、ガラスフレーク、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、カオリン、黒鉛、木粉、熱硬化性樹脂の粉砕粒子等の充填剤を、1種単独で又は2種類以上を組み合わせて配合することができる。
上記充填剤の配合量は、上記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂100質量部当たり、通常3〜30質量部である。
上記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂には、上記充填剤以外に、必要に応じて酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、難燃剤、難燃助剤等を添加してもよい。
上記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂は、発泡剤を添加した発泡成形体であってもよく、発泡倍率は、好ましくは1.05〜20倍、さらに好ましくは1.2〜15倍である。
有機質材料としては、例えば、インシュレーションボード、MDF(中質繊維板)、ハードボード、ポーティクルボード、ランバーコア、LVL(単板積層材)、OSB(配向性ボード)、PSL(パララム)、WB(ウェハーボード)、硬質繊維板、軟質繊維板、ランバーコア合板、ボードコア合板、特殊コア−合板、ベニアコア−ベニヤ板、タップ樹脂を含浸させた紙の積層シート・板、(古)紙等を砕いた細かい小片・線状体に接着剤を混合して加熱圧縮したボード、各種の木材等が挙げられる。
無機質材料としては、例えば、ケイ酸カルシウムボード、フレキシブルボード、ホモセメントボード、せっこうボード、シージングせっこうボード、強化せっこうボード、石膏ラスボード、化粧せっこうボード、複合せっこうボード、更に、鉄、アルミニウム、銅、各種の合金等の金属等が挙げられる。
金属が基材(B)20として使用される場合、多くは金属板で使用される。金属板としては、例えば、一般的に樹脂被覆金属板の基材として使用されている金属板が使用され、具体的には、溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、アルミニウム・亜鉛複合メッキ鋼板、アルミニウムメッキ鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム系合金板等が挙げられる。これら金属板は、厚さ、熱処理条件、メッキの厚さ等に関しても特に制限はなく、また、金属板の表面処理も、リン酸塩処理、クロメート処理等が施されていてもよい。
基材(B)20の形状は、本発明の面材の用途に応じて各種の形状をとるが、通常、板状(表面が平面でなくてもよく、丸み、凹凸等の変形があってもよい)、さらには、板状より厚みのある成形体等が挙げられる。
【0099】
9.面材:
本発明の面材は、上記基材(B)20の一方の表面上に、上記薄肉体(A)10にコロナ処理層10a、アンカーコート層11、図柄層13、更に必要に応じて透明樹脂層15を設けたものを積層して得られる。また、必要に応じて、該基材(B)20の他方の表面上に該薄肉体(A)10を積層してもよい。
また、該基材(B)20は、一層又は2層以上で構成されていてもよい。2層以上で構成される場合、各層は同じ材料でもよく、又、異なった材料で構成されてもよい。
該薄肉体(A)10が積層されていない表面は、意匠性を高めるために、図柄及び着色等が施されていてもよい。
該薄肉体(A)10と基材(B)20との積層における接着は、接着剤、粘着剤等を使用する方法、加熱・圧着する方法が挙げられる。
また、接着力を高めるために、接着面の一方又は両方を、必要に応じて、コロナ放電処理、火炎処理、酸化処理、プラズマ処理、UV処理、イオンボンバード処理、電子線処理、溶剤処理、アンカーコート処理等の処理がなされていてもよい。
本発明の面材は、各種製品の部材として使用することにより、製品の意匠性を、従来の方法に比べ低コストで高めることができる。更に、長期使用における図柄の劣化が少なく、耐久性に優れる。
本発明の面材は、建築用製品、電気製品、車両製品、家具製品、厨房用製品、及び、雑貨製品の部材として使用することができる。
具体的部材としては、例えば、床材、壁材、天井材、扉材、タンス部材などの家具部材、各種手摺り、テーブル部材、机部材、本箱、窓枠、瓦、雨樋、デッキ材、木口材、外装材、流し台、システムキッチン、ベッド部材、階段部材、壁パネル、額縁、鉛筆、筆、幅木、回り縁、みきり縁、椅子材、サッシ部材、パラボラアンテナ部材、竹垣、エアコンダクトカバー、浴室部材、パネル水槽部材、看板、表示板、案内板、事務用品関連分野、車両の内・外装、OA・家電各パーツなどに使用できる。
本発明の薄肉体(A)及び薄肉体(C)の図柄としては、着色、大理石模様、木目模様、エンボス調模様、絵画タイトル、文字等が挙げられる。
【実施例】
【0100】
以下に、例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。尚、実施例及び比較例において、部及び%は特に断らない限り質量基準である。
【0101】
1.アクリル系ゴム強化樹脂組成物:
(1)アクリル系ゴム強化樹脂(A1):
反応器に、アクリル酸n−ブチル99部と、メタクリル酸アリル1部とを乳化重合して得られた、体積平均粒子径100nm及びゲル含率90%のアクリル系ゴムを含む固形分濃度40%のラテックス50部(固形分換算)を入れ、更に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部及びイオン交換水150部を入れて希釈した。その後、反応器内を窒素ガスで置換し、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.02部、硫酸第一鉄0.005部及びホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.3部を加え、攪拌しながら60℃で昇温した。
一方、容器に、スチレン37.5部及びアクリロニトリル12.5部の混合物50部に、ターピノーレン1.0部及びクメンハイドロパーオキサイド0.2部を溶解し、その後、容器内を窒素ガスで置換し、単量体組成物を得た。
次いで、上記単量体組成物を、5時間かけて、一定流量で上記反応器に添加しながら70℃で重合を行い、ラテックスを得た。このラテックスに、硫酸マグネシウムを添加し、樹脂成分を凝固させた。その後、水洗、更に乾燥することによりアクリル系ゴム強化ビニル系樹脂を得た。
【0102】
(2)アクリロニトリル・スチレン共重合体(A2):
結合VC量(結合アクリロニトリル量)が24.0%、極限粘度(溶媒としてメチルエチルケトンを使用し、30℃で測定)が0.45dl/gであるアクリロニトリル・スチレン共重合体を用いた。
【0103】
(3)アクリル系ゴム強化樹脂組成物:
上記のゴム強化ビニル系樹脂(A1)45部とアクリロニトリル・スチレン共重合体(A2)55部とをヘンシェルミキサーに投入して混合し、その後、混合物を二軸押出機に供給して温度200〜240℃で溶融混練し、ペレットとして得た。得られた樹脂組成物のグラフト率は85%、グラフト化アクリル系ゴム質重合体の数平均粒子径は110nm、アセトニトリル可溶分の極限粘度は0.45dl/g、結合VC量(結合アクリロニトリル量)は24.0%である。
【0104】
2.実施例1〜4、比較例1:
(1)面材の製造:
上記で調製したアクリル系ゴム強化樹脂組成物のペレットを180〜190℃で溶融し、熱ロールを用いて更に混練した。その後、混練物を、温度190℃に調整されたカレンダーロールを備えるカレンダー装置を用いて圧延し、幅1,000mm及び厚さ100μmの長尺状の薄肉体(A)10を作製した。この薄肉体(A)10を、温度80℃の乾燥機内に30分間静置し、JIS
K7133に準じて熱収縮率を測定したところ、縦方向及び横方向いずれも0.2%であった。
【0105】
その後、クォーツ電極(放電電極長0.28m)を備えるテーブル式処理装置(高周波電源型式「AGI−021S」、春日電機社製)の所定位置に、A4サイズ(縦297mm及び横210mm)の大きさに裁断した薄肉体(A)10を、電極と薄肉体(A)10の間隔が3mmとなるようにセットし、下記条件で、薄肉体(A)10の速度を変化させてコロナ処理を行った。コロナ処理後の各薄肉体(A)10のコロナ処理面におけるぬれ性を判定したところ、54mN/mであった。
【0106】
コロナ処理条件:
コロナ処理密度:51(W・分/m
放電電力:100(W)
フィルム速度:7(m/分)
【0107】
尚、上記ぬれ指数の判定方法は、以下のとおりである。ぬれ張力試験用混合液(エチレングリコールモノエチルエーテルアミド、和光純薬工業社製)を、綿棒(商品名「HUBY−340
CA−002 コットンアプリケーター」、山洋社製)により、各薄肉体(A)10のコロナ処理面10aに塗布し、ぬれ性を、JIS K6768に準じて判定した。
【0108】
次いで、各薄肉体(A)10のコロナ処理面10aに、表1記載の成分からなるアンカーコート用水性分散体をバーコーター#5により塗布し、80℃の乾燥機内で3分間乾燥して、厚さ1.5μmのアンカーコート層11を形成した。
【0109】
得られたアンカーコート層11が形成された薄肉体について、下記のアンカーコート層密着性に関する評価を行った。その結果を表1に示す。
さらに、表1記載の乾燥温度及び印刷速度条件でアンカーコート層11の表面に溶剤系インクを用いて印刷し、その後、温度23℃及び湿度50%RHの恒温恒湿室に24時間静置して図柄層を形成した。この印刷面について、下記の密着性を評価した。
さらに、印刷面に透明樹脂フィルムを150℃、20kg/cm、15分のプレス条件で熱圧着して透明樹脂層15を形成した薄肉体(A)10を得た後、該薄肉体について、下記のとおり外観及び密着性を評価した。なお、透明樹脂フィルムとして、メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/スチレン=81/16/3の割合(質量比、3成分の合計は100)で含有する厚さ125μmのアクリル系樹脂フィルムを用いた。
次に、上記の如くコロナ処理層10a、アンカーコート層11、図柄層13、透明樹脂層15を形成した薄肉体(A)10と、下記に示す基材とを用いて面材を作成した。
図示の基材(B)20と基材(C)30とから成る基材の基材(B)20の表面と、上記薄肉体(A)10の透明樹脂層15等とは反対側の面とを、接着剤として、BA−20/BA−11B=100/2.5(部)[何れも商品名,中央理化工業社製]から成る接着組成物を、塗布量80g/m(ドライ)、室温(25〜30℃)、0.5N/cm×2日圧締の条件で接着させ、面材(システムキッチンの扉)を得た。
上記基材(B)20の材質はMDFであり、サイズは、厚さ15mm、縦297mm、横210mmである。
上記基材(C)30の材質は、バリューテックNSG100(商品名,テクノポリマー社製)である。サイズは、厚さ0.5mm、縦297mm、横210mmである。色調は酸化チタンで着色されて白色である。
基材(B)20と基材(C)30の接着は上記に示した接着条件で行った。
なお、比較例1は、薄肉体(A)10にコロナ処理を施さなかったこと、及び、アンカーコート層11を形成しなかったこと以外は、上記と同様に製造及び評価したものである。
【0110】
(2)評価:
【0111】
(i)印刷面の外観:
印刷面の膨れを目視で観察し、下記基準に従い評価した。
○:異常なし、
△:少し膨れあり、
×:顕著な膨れあり。
【0112】
(ii)アンカーコート層密着性:
アンカーコート層11の表面に、幅18mm及び長さ約75mmの粘着テープ(ニットウ社製)を貼り付け、指圧でしごいて密着させ、その後、一気に剥がした。アンカーコート層11が残存しているかどうかを目視で観察し、下記基準に従って判定した。尚、粘着テープの貼り付け及び引き剥がしは、JIS
K5600−5−6に準じて行った。
○:密着性が良好であり、実用上問題ない、
△:密着性がやや劣る、
×:アンカーコート層11が剥離。
【0113】
(iii)印刷面密着性:
図柄層13の印刷面に、幅18mm及び長さ約75mmの粘着テープ(ニットウ社製)を貼り付け、指圧でしごいて密着させ、その後、一気に剥がした。図柄層13が残存しているかどうかを目視で観察し、下記基準に従って判定した。尚、粘着テープの貼り付け及び引き剥がしは、JIS
K5600−5−6に準じて行った。
○:密着性が良好であり、実用上問題ない、
△:密着性がやや劣る、
×:図柄層が剥離。
【0114】
(iv)透明樹脂層外観:
透明樹脂層15の外観を目視で観察し、下記の基準で評価した。
評価基準
○:透明樹脂層15に気泡が見られない。
×:透明樹脂層15に気泡が見られる。
(v)透明樹脂層密着性
透明樹脂フィルムにカッターで×印の切り込みを入れ、その部分について印刷面と該フ
ィルムとの密着性を下記基準で評価した。
評価基準
○:切り口が剥離せず、密着している。
△:切り口の一部が剥離した。
×:切り口の全面にわたって剥離した。
【0115】
【表1】

【0116】
表1に示された略号は下記の意味である。
A−215GE:ペスレジン A−215GE(商品名;高松油脂株式会社製、ポリエステル−アクリル複合水性分散体)。
SU−100:リカボンド SU−100(商品名;中央理化工業株式会社製、アクリル成分をコアとしウレタン成分をシェルとするシェル−コア構造を備えたアクリル変性ウレタン樹脂水性エマルジョン)。
ES−90:リカボンド ES−90(商品名;中央理化工業株式会社製、水性アクリル粒子エマルジョン)。
【0117】
表1から下記のことがわかる。
アンカーコート層11を設けた実施例1〜4の面材は、印刷面密着性、透明樹脂層外観、透明樹脂層密着性、アンカーコート層密着性、印刷面外観の何れもに優れている。一方、アンカーコート層11を設けなかった比較例1は、透明樹脂層に気泡が生じ、透明樹脂の外観が劣るばかりでなく、印刷面外観にも劣る。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の面材は、各種製品の部材として使用することにより、製品の意匠性を、従来の方法に比べ低コストで高めることができる。更に、長期使用における図柄の劣化が少なく、耐久性に優れる。
本発明の面材は、建築用製品、電気製品、車両製品、家具製品、厨房用製品、及び、雑貨製品の部材として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の面材の一例を示す断面模式図であり、(a)は透明樹脂層15及び第2の薄肉体(C)30を設けた場合、(b)は設けなかった場合を示す。
【符号の説明】
【0120】
10 薄肉体(A)
10a 薄肉体(A)のコロナ処理表面(コロナ処理層)
11 アンカーコート層
13 図柄層
15 透明樹脂層
20 基材(B)
30 第2の薄肉体(C)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(B)の少なくとも一方の表面上に、ゴム強化樹脂組成物を成形して成る薄肉体(A)を積層して成り、
前記薄肉体(A)には、前記基材(B)と反対側の表面に、該表面をコロナ処理して成るコロナ処理層、該コロナ処理層上に積層して成るアンカーコート層、該アンカーコート層上の少なくとも一部に積層して成る図柄層、を順に設けて成る、
ことを特徴とする面材。
【請求項2】
請求項1に於いて、
前記薄肉体(A)には、更に、前記基材(B)と反対側の表面上に形成した各層の最上層として透明樹脂層を被覆して成る、
ことを特徴とする面材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に於いて、
前記薄肉体(A)を成すゴム強化樹脂組成物が、アクリル系ゴム強化樹脂を含むゴム強化樹脂組成物である、
ことを特徴とする面材。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかに於いて、
前記薄肉体(A)に積層するアンカーコート層に、ウレタン系樹脂及びポリエステル系樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種を用いて成る、
ことを特徴とする面材。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れかに於いて、
前記図柄層を、直接印刷法により積層して成る、
ことを特徴とする面材。
【請求項6】
請求項5に於いて、
前記直接印刷法が、溶剤系インクを用いた印刷法である、
ことを特徴とする面材。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れかに於いて、
前記基材(B)の他方の表面上に、ゴム強化樹脂を含む樹脂組成物から成る第2の薄肉体(C)を設けて成る、
ことを特徴とする面材。
【請求項8】
建築製品、電気製品、車両製品、家具製品、厨房用製品及び雑貨製品の面材に使用される請求項1〜請求項7の何れかに記載の面材。
【請求項9】
システムキッチンに使用される請求項1〜請求項8の何れかに記載の面材。

【図1】
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【公開番号】特開2009−226670(P2009−226670A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73050(P2008−73050)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(396021575)テクノポリマー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】