説明

靴下シューズ

【課題】靴下の履き心地やフィット性を維持しつつ、シューズのような着脱の容易性を兼ね備え、軽量でかつ低コストの靴下シューズ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】靴下と前記靴下の底部を覆うソール部とを備え、前記靴下には、前記ソール部を足裏の動きに追従させ、かつ靴下の形状を所望の立体形状に保持するための保形支持部材が含まれており、そして前記靴下とソール部を加熱処理することによって一体成形されていることを特徴とする靴下シューズ及びその製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴下素材を用いた靴下シューズ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、シューズは足の上部を覆う甲被部及び踵部と足の下部を保護するソール部とから構成される。この中で甲被部及び踵部は、平面素材を各サイズ毎に用意された靴型に合わせて裁断し、各部品を糊付け・積層・縫製することなどにより立体的に製作しなければならないため、シューズの製作に手間と時間が掛かり、そのため、シューズの製造コストも高くなる。
【0003】
一方、このような問題点を解決するために、実開昭57−180707号公報や実開昭58−129802号公報の中では、靴下の底部及び周辺部にゴム状のソール部を接着した靴底付き靴下が提案されている。また、特開2004−105323号公報の中では、足とのフィット性をさらに向上させるために靴下の特定の部分に軟化点の低い合成樹脂の繊維を編み込み、これを加熱処理することにより立体形状に成形した低コスト、高フィット性の靴下シューズが提案されている。
【0004】
しかしながら、靴下素材は本質的に伸縮自在な軟体であるのに対し、靴下の底部に装着されるソール部は靴下素材に比べて硬くて伸縮性に劣る可撓性を有する剛体であるため、人が歩行する時には靴下素材だけが伸縮してしまい、足裏の動きに対してソール部が十分に追従して変形することができなかった。このため、このような靴下シューズは歩行時の足へのフィット性が悪く、また、その用途も室内履きに限られるなど、室外での激しい運動に耐えられるものではなかった。
【0005】
また、靴下の特定の部分に軟化点の低い合成樹脂の繊維を配置する場合は、一度完成された靴下素材の上から、さらに軟化点の低い合成樹脂の繊維を縫い込むか、または編み機のセッティングを細かく変更・調整しながら靴下の特定の部分に軟化点の低い合成樹脂の繊維を他の繊維と混ぜて編み込まなければならず、このような靴下の製造にはかなりの手間とコストが必要とされるという問題点があった。
【0006】
さらに、靴下に軟化点の低い合成樹脂繊維が織り込まれる特定の部分や、靴下の表面に取り付けられる補強部材の取り付け領域を不必要に広げてしまうと、軟化点の低い合成樹脂繊維の硬化や補強部材の存在により、通気性や伸縮性、足へのフィット性などといった靴下本来が有する機能のほとんど失われてしまうため、このような靴下の形状を保持したり補強したりする材料の適用部位及びその範囲を適正化することが望まれていた。
【特許文献1】実開昭57−180707号公報
【特許文献2】実開昭58−129802号公報
【特許文献3】特開2004−105323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記の問題点を解決するために製造工程が極めて単純で、かつ伸縮性や通気性などといった靴下素材が有する機能や、肌触りや履き心地の良さ、フィット性、アジャスト性、着脱の容易性などといった靴下が有する機能をほとんど損なうことなく、それでいてシューズのような耐久性や保形性を兼ね備えており、軽量でかつ低コストの靴下シューズ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、靴下の底部にはソール部を設け、さらに前記ソール部を足裏の動きに追従させ、かつ靴下の形状を所望の立体形状に保持するための保形支持部材を靴下素材の表面又は内部の適当な位置に配設し、これらを加熱処理することにより所望の立体形状に成形できる靴下シューズ及びその製造方法を完成するに至った。
【0009】
すなわち、請求項1に記載の靴下シューズの発明では、靴下と前記靴下の底部を覆うソール部とを備え、前記靴下には、前記ソール部を足裏の動きに追従させ、かつ靴下の形状を所望の立体形状に保持し、ホールド性を確保するための保形支持部材が含まれており、そして前記靴下とソール部を加熱処理することによって一体成形できるようにした。
【0010】
この結果、請求項1に記載の発明によれば、伸縮性や通気性などといった靴下素材が有する性質や、肌触りや履き心地の良さ、フィット性、アジャスト性、着脱の容易性などといった靴下が有する機能をほとんど損なうことなく、それでいてシューズのような耐久性や保形性を兼ね備えた軽量でかつ低コストの靴下シューズを提供することができる。
【0011】
そして、請求項1に記載の発明によれば、靴下とソール部および保形支持部材を適度な温度で加熱処理することにより所望の立体形状に成形することができるため、平面素材を各サイズ毎に用意された靴型に合わせて裁断し、各部品を糊付け・積層・縫製するなどといった甲被部及び踵部を立体形状とするための製造工程を大幅に簡略化することが可能となり、その結果、シューズの製造コストを大幅に低減することができる。
【0012】
また、請求項1に記載の発明によれば、靴下素材の表面又は内部の適当な位置に保形支持部材を配設したことにより、足裏の動きに対してソール部を無理なく追従させることができ、かつ靴下の形状を所望の立体形状に保持し、ホールド性を確保することで靴下シューズの着脱の容易性をさらに高めることが可能となる。
【0013】
さらに、請求項1に記載の発明によれば、足と接する部分はすべて靴下素材から作られているのでシューズを履くためにわざわざ靴下を履く必要がなくなり、また、靴下シューズの甲被部、踵部は適度な伸縮性が維持された靴下素材で形成されているため、多少の足のサイズの違いによっても無理なくフィットさせることができる、サイズ兼用靴下シューズを提供することができる。
【0014】
なお、本発明に用いられる靴下は、通常市販されているようなものであれば特に限定されることなく使用することができるが、耐久性を考慮して靴下を2枚重ねて編み込んだ2層構造を有するものを使用してもよく、さらに、靴下の底部を補強するために、底部に伸縮性のあるゴムを配合したものを使用すると、外部から装着されるソール部と密着して靴下シューズ底部の耐久性を格段に高めることができる。
【0015】
また、靴下本来の機能を効果的に引き出すため、靴下の底部のみへ糸径が太いものを使用したり、吸湿性や水分の発散性に優れた糸を使用したりすると、より大きな吸湿性及び水分の発散性を発揮させることができる。さらに、靴下の編み構造を変えることにより、靴下の底部の足裏が当たる面に凹凸を設けて足裏形状に合わせたり、中足骨やアーチ状の補強機構を持たせたりすると、靴下シューズのグリップ性や前ズレを防止する耐スリップ性を格段と向上させることができる。
【0016】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の靴下シューズの靴下に形状記憶樹脂繊維を適用し、これを靴下全体に適当に編み込むか又は部分的に縫い込むことにより保形支持部材としての機能を持たせた。
【0017】
この結果、請求項2に記載の発明によれば、靴下に編み込まれる形状記憶樹脂繊維が加熱成形後の靴下シューズの立体形状を保持する機能を発揮すると共に、人の足型の記憶によりフィット感が高まり、さらには形状記憶樹脂繊維が編み込まれた靴下素材がソール部の周縁部と接合されることによってソール部に効率良く足の動きを伝達することができるようになるため、足裏の動きに対するソール部の追従性が向上される。
【0018】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の靴下シューズの靴下素材中に形状記憶樹脂繊維を30〜80wt%の範囲内となるように配合した。
【0019】
形状記憶繊維が含まれる靴下素材は、人の体温などによってその人の足型形状に復元された時、ある程度硬化することによって伸縮性や足の動きに対する変形性を低下させる場合がある。この場合、大半は靴下素材の編み方や他の繊維との組合せによって解消することができるが、請求項3に記載の発明の場合では靴下素材中に含まれる形状記憶繊維の配合比率に着目し、これを適正化することにより靴下素材が本来有する伸縮性や足の動きに対する変形性が低下することを防止した。
【0020】
すなわち、靴下素材中に含まれる形状記憶繊維の比率が30wt%未満であると加熱処理後の保形性を悪化させてシューズとしての着脱の容易性を損なうこととなり、逆に80wt%より大きくなると、形状記憶樹脂繊維による形状維持機能が大きくなり過ぎて、足の動きの対する変形性を低下させてしまうことになる。したがって、保形支持部材として使用される形状記憶樹脂繊維は、靴下素材中に30〜80wt%の範囲内で配合されることが好ましい。
【0021】
また、形状記憶樹脂繊維は、後述される熱可塑性樹脂シートなどと同じような配置で靴下素材の一部分に編み込んだり縫い込んだりして配置してもよいが、好ましくは靴下素材全体に一様になるように編み込まれる。靴下の特定の部分に形状記憶樹脂繊維を配置する場合は、一度完成された靴下素材の上から、さらに軟化点の低い合成樹脂の繊維を縫い込むか、または編み機のセッティングを細かく変更・調整しながら形状記憶樹脂繊維を他の繊維と混ぜて編み込まなければならず、このような手間が掛からず靴下素材全体に一様になるように編み込む方が製造コストの面などで有利だからである。
【0022】
なお、形状記憶樹脂繊維の靴下素材への配合は、異なる種類の繊維と混合して1本の糸に仕上げてから編み込んでもよいし、また、形状記憶樹脂繊維からなる糸と異なる種類の繊維からなる糸とを混合して編み込んでもよい。
【0023】
請求項4に記載の発明では、請求項1に記載の靴下シューズの靴下表面に形状記憶樹脂からなるシート又は布地を接着することにより保形支持部材としての機能を持たせた。
【0024】
この結果、請求項4に記載の発明によれば、靴下素材が本来有する伸縮性や通気性といった機能をほとんど損なうことなく、これに基づく肌触りや履き心地の良さ、フィット性、アジャスト性、着脱の容易性を維持しながら、シューズに求められる耐久性や保形性などの機能を新たに付与することができる。なお、形状記憶樹脂からなる保形支持部材の通気性を向上させるためには、保形支持部材に複数の孔加工を施して適用してもよく、また、布地の場合は形状記憶樹脂を適用した不織布や合成皮革を使用してもよい。
【0025】
また、請求項4に記載の発明によれば、靴下シューズの靴下表面に配設された形状記憶樹脂シート又は布地からなる保形支持部材は、足の体温などを利用して各個人の足型と一致した形状に容易に復元することから、復元後、靴下と一体となって所望の立体形状を維持し、さらには靴下底部に配設されたソール部とも接合されて足の動きを無駄なくソール部に伝達することができるようになり、この結果、足裏の動きに対するソール部の追従性を向上させる。
【0026】
請求項5に記載の発明では、請求項2ないし4のいずれかに記載の靴下シューズの形状記憶樹脂のガラス転移温度が30〜120℃の範囲内にあるものを選択して使用した。
【0027】
この結果、請求項5に記載の発明によれば、足の体温または外部から加熱することにより、個人差の大きい足型の形状を各個人の足型に合わせて容易に記憶させることが可能となる。また、請求項5に記載の発明によれば、足の体温などを利用して各個人の足型に容易に復元することも可能となるため、足へのフィット性を一段と向上させることができると共に、足の動きを無駄なくソール部に伝達することができるようになり、この結果、足裏の動きに対するソール部の追従性が向上される。
【0028】
さらに、形状記憶樹脂のガラス転移温度が30〜120℃の範囲内にあるものを選択しておけば、靴下素材に編み込み又は縫い込まれた保形支持部材としての形状記憶樹脂繊維、または形状記憶樹脂からなるシート又は布地を形状記憶樹脂のガラス転移温度以上、融点以下の温度で加熱処理することにより所望の立体形状に成形することができる。
【0029】
請求項6に記載の発明では、請求項1に記載の靴下シューズの靴下表面に熱可塑性樹脂からなるシート又は布地を接着するか、または液状の熱可塑性樹脂を靴下素材に含ませて硬化させたもの適用することにより保形支持部材としての機能を持たせた。
【0030】
この結果、請求項6に記載の発明によれば、請求項4に記載された発明と同様に靴下素材が本来有する伸縮性や通気性といった機能をほとんど損なうことなく、これに基づく肌触りや履き心地の良さ、フィット性、アジャスト性、着脱の容易性を維持しながら、シューズに求められる耐久性や保形性などの機能を新たに付与することができる。なお、熱可塑性樹脂からなる保形支持部材の通気性を向上させるためには、保形支持部材に複数の孔加工を施して適用してもよく、また、布地の場合は形状記憶樹脂を適用した不織布や合成皮革などを使用してもよい。
【0031】
さらに、請求項6に記載の発明で使用される熱可塑性樹脂からなるシート又は布地は他の生地によって補強されたものであってもよく、例えば、天然皮革、人工皮革、合成皮革又は超極細繊維などからなる伸縮性のある編物/織物に熱可塑性樹脂を含浸又は/及びコーティングしたものや、塩化ビニール、ポリプロピレン、ポリエチレン、炭素繊維などからなる不織布又は織布に熱可塑性樹脂を含浸又は/及びコーティングしたもの、ウレタンシート、EVAシート、CRシート、ポリエチレンシート、ポリビニールシート、ポリエステルシート、ポリテトラフルオロエチレンフィルムなどに上記の生地又は不織布、織布などを片面又は両面に貼り合わせたもの、または熱可塑性樹脂を射出成形によりダイレクトボンディングしたラバーシートを貼り合わせて加硫成形又は溶剤成形した不織布又は織布などが挙げられる。また、これらのシート又は布地は、あらかじめ足型に合わせて立体成形されたものを使用してもよい。
【0032】
また、請求項6に記載の発明によれば、靴下シューズの靴下表面に配設された熱可塑性樹脂シート又は布地、または液状の熱可塑性樹脂を靴下素材に含ませて硬化させたものからなる保形支持部材は、靴下と一体となってこれを支持することで所望の立体形状を維持し、さらには靴下底部に配設されたソール部とも接合されて足の動きを無駄なくソール部に伝達することができるようになり、この結果、足裏の動きに対するソール部の追従性が向上される。
【0033】
請求項7に記載の発明では、請求項6に記載の靴下シューズに配設される保形支持部材にナイロン、EVA、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンビニルアルコール、塩化ビニール、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル又はポリウレタンなどの中から選ばれた熱可塑性樹脂からなる材料を使用した。
【0034】
この結果、請求項7に記載の発明によれば、保形支持部材は靴下の伸縮を過度に拘束することがない適度の伸縮性や可撓性、弾力性を有する材料から構成することができるため、靴下が本来有する機能をほとんど阻害することがなく、それでいて靴下を立体形状に保ち、また、足裏の動きに合わせてソール部を無理なく追従させることが可能となる。なお、これらの熱可塑性樹脂は、これらを適当に組み合わせて1種類の保形支持部材を構成することもできるし、また、第1の保形支持部材および第2の保形支持部材との間で異なる熱可塑性樹脂を使用することもできる。
【0035】
請求項8に記載の発明では、請求項1ないし7のいずれかに記載の靴下シューズの保形支持部材を第1および第2の保形支持部材とから構成し、第1の保形支持部材は前記靴下の底部から履き口部へ甲被部に沿って延びており、第2の保形支持部材は前記靴下の底部から履き口部へ踵部に沿って延びるように配設した。
【0036】
この結果、請求項8に記載の発明によれば、保形支持部材を適切な位置に配設したので、靴下が本来有する機能を損なうことなく、第1および第2の保形支持部材といった必要最小限の保形支持部材の配置で靴下を立体形状に保つことが可能となり、また足裏の動きに合わせてソール部を無理なく追従させることができる。
【0037】
具体的には、靴下の底部から履き口部へ甲被部に沿って延びるように配設される第1の保形支持部材は、靴下の甲被部を吊り上げるようにして靴下の立体形状を保持すると共に、ソール部の爪先部と接合されることによってソール部先端の変形を足の爪先の動きに追従させる働きをする。また、靴下の底部から履き口部へ踵部に沿って延びるように配設される第2の保形支持部材は、靴下の踵部の立ち上がり形状を保持すると共に、ソール部の踵部と接合されることによってソール部後端の変形を足の踵の動きに追従させる働きをする。
【0038】
請求項9に記載の発明では、請求項8に記載の靴下シューズの保形支持部材を成形後のソール部を除く靴下表面積に対して20〜70%の範囲内で配設するようにした。
【0039】
この結果、請求項9に記載の発明によれば、保形支持部材の配設面積を靴下表面積を基準に適正化することにより、靴下が本来有する伸縮性や通気性といった機能の低下を最小限に留めながら、ソール部を足裏の動きに追従させ、かつ靴下の形状を所望の立体形状に保持することを可能にする。
【0040】
すなわち、靴下表面等に配設される保形支持部材が、成形後のソール部を除く靴下表面積に対して20%未満であると加熱処理後の保形性を悪化させてシューズとしての着脱の容易性を損なわせ、逆に70%より大きくなると、保形支持部材による形状保持機能が大きくなり過ぎて、足の動きの対する変形性を低下させてしまう。したがって、靴下表面等に配設される保形支持部材は、成形後のソール部を除く靴下表面積に対して20〜70%の範囲内で配設されることが好ましい。
【0041】
請求項10に記載の発明では、請求項1ないし9のいずれかに記載の靴下シューズの靴下の編み糸(形状記憶樹脂繊維からなる編み糸を除く)に、ひょうたん型、星型、L型などの異型断面を有する糸を選択して使用した。
【0042】
この結果、請求項10に記載の発明によれば、靴下表面等に保形支持部材が配設された場合であっても異型断面を有する糸の使用により、靴下の通気性や伸縮性の他、さらには吸湿性や速乾性といった機能を付与することができる。なお、これらの異型断面を有する糸の構造は特に限定されることなく使用でき、例えば中空構造や芯鞘構造を有する異型断面の糸であってもよい。
【0043】
請求項11に記載の発明では、請求項1ないし10のいずれかに記載の靴下シューズの靴下の編み糸(形状記憶樹脂繊維からなる編み糸を除く)が、10番〜50番の範囲内にある天然繊維からなる単糸、または50d〜260dの範囲内にある合成繊維からなる単糸を選択して使用した。
【0044】
この結果、請求項11に記載の発明によれば、靴下表面に保形支持部材が配設された場合であっても比較的大きな糸径を有する単糸の使用により、靴下の伸縮性や通気性といった機能を一段と向上させることができる。
【0045】
靴下の伸縮性や通気性といった機能は、編み糸の糸径のみならずその編み方にも影響されるが、本発明による靴下シューズの場合は、特に10番未満の天然繊維からなる単糸又は50d未満の合成繊維からなる単糸を使用した場合は、靴下の伸縮性や通気性を著しく低下させ、逆に50番以上の天然繊維からなる単糸又は260d以上の合成繊維からなる単糸を使用した場合は、靴下の肌触りや履き心地の良さ、フィット性、アジャスト性、着脱の容易性を損なうことになる。したがって、靴下に使用される編み糸(形状記憶樹脂繊維からなる編み糸を除く)は、10番〜50番の範囲内にある天然繊維からなる単糸、または50d〜260dの範囲内にある合成繊維からなる単糸を選択して使用することが好ましい。
【0046】
なお、靴下に使用される編み糸(形状記憶樹脂繊維からなる編み糸を除く)は、特に制限されることなく通常靴下に使用される編み糸を選択することができるが、伸縮性や通気性などといった靴下素材が有する性質や、肌触りや履き心地の良さ、フィット性、アジャスト性、着脱の容易性などといった靴下が有する機能を維持するためにナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、天然ゴム、綿、レーヨンなどからなる溶融糸、指定外糸、オレフィン系糸、スパンデックス糸などを使用することが好ましい。
【0047】
なお、靴下に使用される編み糸の中には、ゲルマニウムなどの天然鉱石やセラミックスなどを練り込んだり含浸させたり、または編みあがった靴下表面にプリントを施してもよく、この場合は本発明による靴下シューズに遠赤外線効果を付与することができる。
【0048】
請求項12に記載の発明は、請求項1ないし11のいずれかに記載の靴下シューズの靴下表面又は内部に透湿性または通気性防水フィルム、膜又は層をさらに形成させたものであり、この結果、本発明による靴下シューズに防水機能を付与することができる。
【0049】
請求項13に記載の発明は、請求項1ないし12のいずれかに記載の靴下シューズの靴下及びソール部に導電性材料または静電性材料を含ませたものであり、この結果、本発明による靴下シューズに静電気除去機能や帯電防止機能を付与することができる。
【0050】
請求項14に記載の発明は、請求項1ないし13のいずれかに記載の靴下シューズの靴下にアラミドなどの難燃材からなる繊維を編み込み又は縫い込んだものであり、この結果、本発明による靴下シューズに耐火機能や耐熱機能を付与することができる。
【0051】
請求項15に記載の発明は、内部に靴型が挿入された形状記憶繊維が編み込み又は縫い込まれた靴下を準備し、前記靴下の底部にソール部を仮止めして、そして前記靴下とソール部を形状記憶樹脂繊維のガラス転移温度以上、融点以下の温度で加熱処理することにより所望の立体形状に一体成形することを特徴とする靴下シューズの製造方法であり、この製造方法の使用により、従来よりも製造工程が大幅に簡略化された低コストの請求項2及び3などに記載の靴下シューズを提供することができる。
【0052】
なお、靴下とソール部の接合及び立体成形には、通常の雰囲気加熱や加熱プレスの他、高周波加熱などを利用して熱融着させることができ、また、接着剤を使用して接合させてもよい。さらに、ソール部の接合は必ずしも靴下の立体成形と同時に行う必要はなく、形状記憶繊維が編み込み又は縫い込まれた靴下を加熱処理して立体形状を付与した後に、加熱又は接着剤の使用により、ソール部を靴下底部へ熱融着又は接着させてもよい。
【0053】
請求項16に記載の発明は、内部に靴型が挿入された靴下を準備し、靴下の底部から履き口部へ甲被部に沿って延びた第1の熱可塑性樹脂からなるシート又は布地と、靴下の底部から履き口部へ踵部に沿って延びた第2の熱可塑性樹脂からなるシート又は布地を仮止めし、さらに前記靴下の底部にソール部を仮止めして、そして前記靴下と第1及び第2の熱可塑性樹脂からなるシート又は布地とソール部とを熱可塑性樹脂の軟化点以上の温度で加熱処理することにより所望の立体形状に一体成形することを特徴とする靴下シューズの製造方法であり、この製造方法の使用により、従来よりも製造工程が大幅に簡略化された低コストの請求項6及び7などに記載の靴下シューズを提供することができる。
【0054】
なお、第1及び第2の熱可塑性樹脂からなるシート又は布地が仮止めされた靴下とソール部の接合及び立体成形には、通常の雰囲気加熱や加熱プレスの他、高周波加熱などを利用して熱融着させることができ、また、接着剤を使用して接合させてもよい。さらに、ソール部の接合は必ずしも靴下の立体成形と同時に行う必要はなく、第1及び第2の熱可塑性樹脂からなるシート又は布地が仮止めされた靴下を加熱処理して立体形状を付与した後に、加熱又は接着剤の使用により、ソール部を靴下底部へ熱融着又は接着させてもよい。
【0055】
請求項17に記載の発明では、請求項16に記載の靴下シューズの製造方法における加熱処理を60〜200℃の温度範囲で60〜5秒間実施することとした。
【0056】
この結果、請求項17に記載の発明によれば、靴下とソール部および保形支持部材とを加熱処理することにより所望の立体形状に成形することができ、また、靴下と各部材との強固な結合を得ることができる。このため、靴下底部に装着されたソール部は、保形支持部材と一体となって足裏の動きに対して追従させることができ、また、平面素材を各サイズ毎に用意された靴型に合わせて裁断し、各部品を糊付け・積層・縫製するなどといった甲被部及び踵部を立体形状とするための製造工程を大幅に簡略化することが可能となるため、シューズの製造コストを大幅に低減することができる。
【0057】
請求項18に記載の発明は、内部に靴型が挿入された靴下を準備し、靴下の底部から履き口部へ甲被部に沿って延びた第1の形状記憶樹脂からなるシート又は布地と、靴下の底部から履き口部へ踵部に沿って延びた第2の形状記憶樹脂からなるシート又は布地を仮止めし、さらに前記靴下の底部にソール部を仮止めして、そして前記靴下と第1及び第2の形状記憶樹脂からなるシート又は布地とソール部とを形状記憶樹脂繊維のガラス転移温度以上、融点以下の温度で加熱処理することにより所望の立体形状に一体成形することを特徴とする靴下シューズの製造方法であり、この製造方法の使用により、従来よりも製造工程が大幅に簡略化された低コストの請求項4などに記載の靴シューズを提供することができる。
【0058】
なお、第1及び第2の形状記憶樹脂からなるシート又は布地が仮止めされた靴下とソール部の接合及び立体成形には、通常の雰囲気加熱や加熱プレスの他、高周波加熱などを利用して熱融着させることができ、また、接着剤を使用して接合させてもよい。さらに、ソール部の接合は必ずしも靴下の立体成形と同時に行う必要はなく、第1及び第2の形状記憶樹脂からなるシート又は布地が仮止めされた靴下を加熱処理して立体形状を付与した後に、加熱又は接着剤の使用により、ソール部を靴下底部へ熱融着又は接着させてもよい。
【0059】
請求項19に記載の発明は、内部に靴型が挿入された靴下を準備し、靴下の底部から履き口部へ甲被部に沿って延びた第1の領域と、靴下の底部から履き口部へ踵部に沿って延びた第2の領域に液状の熱可塑性樹脂を含ませ、さらに前記靴下の底部にソール部を仮止めし、そして前記靴下と第1及び第2の領域の熱可塑性樹脂とソール部とを熱可塑性樹脂の硬化点以上の温度で加熱処理することにより所望の立体形状に一体成形することを特徴とする靴下シューズの製造方法であり、この製造方法の使用により、従来よりも製造工程が大幅に簡略化された低コストの請求項6及び7などに記載の靴シューズを提供することができる。
【0060】
なお、第1及び第2の領域に液状の熱可塑性樹脂を含ませた靴下とソール部の接合及び立体成形には、通常の雰囲気加熱や加熱プレスの他、高周波加熱などを利用して硬化及び熱融着させることができ、また、ソール部の接合には接着剤や前記熱可塑性樹脂を使用して接着させてもよい。さらに、ソール部の接合は必ずしも靴下の立体成形と同時に行う必要はなく、第1及び第2の領域に液状の熱可塑性樹脂を含ませた靴下を加熱処理して立体形状を付与した後に、加熱又は接着剤などの使用により、ソール部を靴下底部へ熱融着又は接着させてもよい。
【発明の効果】
【0061】
以上の結果、本発明によれば、伸縮性や通気性などといった靴下素材が有する性質や、肌触りや履き心地の良さ、フィット性、アジャスト性、着脱の容易性などといった靴下が有する機能をほとんど損なうことなく、それでいてシューズのような耐久性や保形性を兼ね備えた軽量でかつ低コストの靴下シューズ及びその製造方法を提供することができる。
【0062】
また、本発明によれば、靴下とソール部および保形支持部材を適度な温度で加熱処理をすることにより所望の立体形状に成形することができるため、平面素材を各サイズ毎に用意された靴型に合わせて裁断し、各部品を糊付け・積層・縫製するなどといった甲被部及び踵部を立体形状とするための製造工程を大幅に簡略化することが可能となり、その結果、シューズの製造コストを大幅に低減することができる。
【0063】
また、本発明によれば、靴下素材の表面又は内部の適当な位置に保形支持部材を配設したことにより、足裏の動きに対してソール部を無理なく追従させることができ、かつ靴下の形状を所望の立体形状に保持することで靴下シューズの着脱の容易性をさらに高めることが可能となる。
【0064】
また、本発明によれば、足と接する部分はすべて靴下素材から作られているのでシューズを履くためにわざわざ靴下を履く必要がなくなり、また、靴下シューズの甲被部、踵部は適度な伸縮性が維持された靴下素材で形成されているため、多少の足のサイズの違いによっても無理なくフィットさせることができる、サイズ兼用靴下シューズを提供することができる。
【0065】
さらに、本発明によれば、本発明の靴下シューズに透湿性または通気性防水フィルム、または導電性又は静電性の有する繊維、アラミドなどの難燃材からなる繊維を適用することにより、防水機能または静電気除去機能や帯電防止機能、耐火機能や耐熱機能を付与することができる。また、本発明の靴下シューズは、その他の多くの機能を付加する場合にも適しており、例えば、専用の加工を施して抗菌消臭機能、抗菌防臭機能などを付加することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
以下、本発明の一実施形態に係る靴下シューズについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は以下に示される実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
【実施例1】
【0067】
図1には、靴下2と靴下の底部20を覆うソール部5とを備え、靴下2にはソール部5を足裏の動きに追従させ、かつ靴下2の形状を所望の立体形状に保持するために形状記憶樹脂繊維が靴下素材中に50%wtの配合比率で靴下全体に均一に編み込まれており、そして靴下2とソール部5を加熱処理することによって一体成形された実施例1の本発明による靴下シューズ1の側面図が示されており、図2にはその靴下シューズ1を上から見た平面図が示されている。
【0068】
実施例1の本発明による靴下シューズ1は、先ず、内部に靴型が挿入された形状記憶繊維が編み込まれた靴下2を準備し、次に、靴下2の底部20にソール部5を両面テープや接着剤を用いて仮止めし、そして靴下2とソール部5を形状記憶樹脂繊維のガラス転移温度以上、融点以下の温度で加熱処理し、さらに靴下2とソール部5とが接着する温度で加熱処理することにより、図1及び2に示されるような立体形状に一体成形した。
【0069】
この結果、実施例1の本発明による靴下シューズ1よれば、伸縮性や通気性などといった靴下素材が有する性質や、肌触りや履き心地の良さ、フィット性、アジャスト性、着脱の容易性などといった靴下2が有する機能をほとんど損なうことなく、それでいてシューズのような耐久性や保形性を兼ね備えた軽量でかつ低コストの靴下シューズ1を提供することができる。
【0070】
また、実施例1の本発明による靴下シューズ1よれば、形状記憶樹脂繊維が編み込まれた靴下2とソール部5とを適度な温度で加熱処理をすることにより所望の立体形状に成形することができるため、平面素材を各サイズ毎に用意された靴型に合わせて裁断し、各部品を糊付け・積層・縫製するなどといった甲被部及び踵部を立体形状とするための製造工程を大幅に簡略化することが可能となり、その結果、シューズ1の製造コストを大幅に低減することができる。
【0071】
さらに、実施例1の本発明による靴下シューズ1よれば、靴下2に編み込まれる形状記憶樹脂繊維が加熱成形後の靴下シューズ1の立体形状を保持する機能を発揮すると共に、人の足型の記憶によりフィット感が高まり、さらには形状記憶樹脂繊維が編み込まれた靴下素材がソール部5の周縁部24と接合されることによってソール部5に効率良く足の動きを伝達することができるようになるため、足裏の動きに対するソール部5の追従性を向上させることができる。
【0072】
なお、本発明に使用される靴下2は、伸縮性や通気性などといった靴下素材が有する性質や、肌触りや履き心地の良さ、フィット性、アジャスト性、着脱の容易性などといった靴下が本来有する機能を備えていればよく、したがって靴下2の編み糸(形状記憶樹脂繊維からなる編み糸を除く)の材質、糸径、断面形状や編み方などには制限されることなく通常の靴下に用いられている素材を使用することができる。ただし、本発明による靴下シューズ1に無縫製の靴下2を適用した場合には、本発明による靴下シューズ製造工程の前工程である靴下2の縫製工程を省略することができ、さらなるコスト低減を図ることが可能となる。
【0073】
また、本発明に使用されるソール部5に用いられる素材は、合成ゴム、天然ゴム、PVC、EVA、ポリウレタンなど、通常、ソール部5に利用される材料であれば特に制限されることなく使用することができ、特にウレタン樹脂のように弾力性、反発性、衝撃吸収性があって耐磨耗性、耐スリップ性に優れ、しかも軽量である素材が、本発明による靴下シューズのソール部5に適している。
【実施例2】
【0074】
図3には、靴下2と靴下の底部20を覆うソール部5とを備え、靴下2にはソール部5を足裏の動きに追従させ、かつ靴下2の形状を所望の立体形状に保持するために、靴下2の底部20から履き口部21へ甲被部22に沿って延びた低融点のポリエステル樹脂シートからなる第1の保形支持部材3と、靴下2の底部20から履き口部21へ踵部23に沿って延びた低融点のポリエステル樹脂シートからなる第2の保形支持部材4とが靴下表面に配置されており、そして靴下2と第1及び第2の保形支持部材3、4とソール部5とを加熱処理することによって一体成形された実施例2の本発明による靴下シューズ1aの側面図が示されており、図4にはその靴下シューズ1aを上から見た平面図が示されている。
【0075】
実施例2の本発明による靴下シューズ1aは、先ず、内部に靴型が挿入された靴下2を準備し、次に、靴下2の底部20から履き口部21へ甲被部22に沿って延びた低融点のポリエステル樹脂シートからなる第1の保形支持部材3と、靴下2の底部20から履き口部21へ踵部23に沿って延びた低融点のポリエステル樹脂シートからなる第2の保形支持部材4とを両面テープや接着剤を用いて仮止めし、さらに靴下2の底部20にソール部5を仮止めして、そして靴下2と第1及び第2の保形支持部材3、4とソール部5とを低融点のポリエステル樹脂の軟化点以上の温度で加熱処理し、さらに靴下2とソール部5とが接着する温度で加熱処理することにより、図2及び3に示されるような立体形状に一体成形した。
【0076】
この結果、実施例2の本発明による靴下シューズ1aよれば、伸縮性や通気性などといった靴下素材が有する性質や、肌触りや履き心地の良さ、フィット性、アジャスト性、着脱の容易性などといった靴下2が有する機能をほとんど損なうことなく、それでいてシューズのような耐久性や保形性を兼ね備えた軽量でかつ低コストの靴下シューズ1aを提供することができる。
【0077】
また、実施例2の本発明による靴下シューズ1aよれば、靴下2と第1及び第2の保形支持部材3、4とソール部5とを適度な温度で加熱処理をすることにより所望の立体形状に成形することができるため、平面素材を各サイズ毎に用意された靴型に合わせて裁断し、各部品を糊付け・積層・縫製するなどといった甲被部及び踵部を立体形状とするための製造工程を大幅に簡略化することが可能となり、その結果、シューズ1aの製造コストを大幅に低減することができる。
【0078】
さらに、実施例2の本発明による靴下シューズ1aによれば、靴下2の底部20から履き口部21へ甲被部22に沿って延びるように配設される第1の保形支持部材3は、靴下2の甲被部22を吊り上げるようにして靴下2の立体形状を保持すると共に、ソール部5の爪先部と接合されることによってソール部5先端の変形を足の爪先の動きに追従させることができる。また、靴下2の底部20から履き口部21へ踵部23に沿って延びるように配設される第2の保形支持部材4は、靴下2の踵部23の立ち上がり形状を保持すると共に、ソール部5の踵部と接合されることによってソール部5後端の変形を足の踵の動きに追従させることができる。
【0079】
また、上述された第1及び第2の保形支持部材3、4は、いずれも人が靴下シューズ1aを着脱する際に足を出し入れする方向と一致して配置されているため、靴下シューズ1aの着脱の容易性を損なうことなくその立体形状を保持することができる。
【0080】
なお、本実施例2に適用される靴下及びソール部5の素材は、上述された実施例1の本発明による靴下シューズ1の場合と同じである。
【実施例3】
【0081】
図5及び図6には、実施例3の本発明による靴下シューズ1bが示されており、その中で図5には本発明による靴下シューズ1bの側面図が、図6には本発明による靴下シューズ1bを上から見た平面図が示されている。
【0082】
実施例3の本発明による靴下シューズ1bは、靴下2の底部20から履き口部21へ甲被部22に沿って延びた低融点のポリエステル樹脂からなる第1の保形支持部材3と、靴下2の底部20から履き口部21へ踵部23に沿って延びた第2の低融点のポリエステル樹脂からなる保形支持部材4の他に、さらに靴下2の底部20から甲部の内側25及び外側26を通って延びた低融点のポリエステル樹脂からなる第3の保形支持部材6が設けられていること以外、実施例2において示された靴下シューズ1aと同じ構造を有する。
【0083】
靴下シューズ1bに使用される保形支持部材6は、他の保形支持部材3、4と同じ素材及び異なる素材から作ることができ、複数本に分けて配設してもよい。この結果、保形支持部材6は、主に靴下シューズ1bの甲部の内側25及び外側26におけるフィット性や耐久性、立体形状の保持性と、足裏の土踏まず部の動きに対するソール部5の追従性を一段と向上させる。
【0084】
ただし、このような保形支持部材6の配設は、人が靴下シューズ1aに足を着脱する際に方向と対向して略直角に配設されることになるため、人が足を靴下シューズ1bに出し入れする際の着脱容易性を低下させる場合がある。
【0085】
したがって、このような場合に靴下シューズ1bの着脱容易性を確保しながら甲部の内側24及び外側25におけるフィット性を向上させるためには、靴下表面等に配設される保形支持部材3、4、6を成形後のソール部を除く靴下表面積に対して20〜70%の範囲内に抑えて配設することが有効であり、さらに、保形支持部材6は、甲被部22上で靴下2の底部20から履き口部21へ甲被部22に沿って延びた第1の保形支持部材3と重なり合う部分において、マジックテープや留め金を備えた開閉可能なバンド構造や靴紐(いずれも図示せず)を併用することにより、上記の問題を完全に解決することができる。
【0086】
なお、本実施例3に適用される靴下及びソール部5の素材は、上述された実施例1、2の本発明による靴下シューズ1、1aの場合と同じであり、また、実施例3の本発明による靴下シューズ1bの製造方法も、実施例2の中で説明された靴下シューズ1aの製造方法と略同じである。
【実施例4】
【0087】
実施例4の本発明による靴下シューズ1cは、靴下2にはソール部5を足裏の動きに追従させ、かつ靴下2の形状を所望の立体形状に保持するために、靴下素材の特定領域に液状の低融点ポリエステル樹脂を含ませ、これを加熱処理することにより、靴下2の表面及び内部に前記低融点ポリエステル樹脂が硬化した保形支持部材3、4を形成させたものである。図7には、実施例4の本発明による靴下シューズ1cの側面図が示されており、図8にはその靴下シューズ1cを上から見た平面図が示されている。
【0088】
実施例4の本発明による靴下シューズ1cは、先ず、内部に靴型が挿入された靴下2を準備し、次に、靴下2の底部20から履き口部21へ甲被部22に沿って延びた第1の領域3と、靴下2の底部20から履き口部21へ踵部23に沿って延びた第2の領域4に液状の低融点ポリエステル樹脂を含ませ、さらに靴下2の底部20にソール部5を仮止めして、そして靴下2と第1及び第2の領域3、4とソール部5とを低融点のポリエステル樹脂の硬化点以上の温度で加熱処理し、さらに靴下2とソール部5とが接着する温度で加熱処理することにより、図7及び8に示されるような立体形状に一体成形することができる。
【0089】
この結果、実施例4の本発明による靴下シューズ1cよれば、伸縮性や通気性などといった靴下素材が有する性質や、肌触りや履き心地の良さ、フィット性、アジャスト性、着脱の容易性などといった靴下2が有する機能をほとんど損なうことなく、それでいてシューズのような耐久性や保形性を兼ね備えた軽量でかつ低コストの靴下シューズ1cを提供することができる。
【0090】
また、実施例4の本発明による靴下シューズ1aによれば、靴下2と液状の低融点ポリエステル樹脂を含ませた第1及び第2の領域3、4とソール部5とを適度な温度で加熱処理をすることにより所望の立体形状に成形することができるため、平面素材を各サイズ毎に用意された靴型に合わせて裁断し、各部品を糊付け・積層・縫製するなどといった甲被部及び踵部を立体形状とするための製造工程を大幅に簡略化することが可能となり、その結果、シューズ1cの製造コストを大幅に低減することができる。
【0091】
さらに、実施例4の本発明による靴下シューズ1cによれば、熱処理により、液状の低融点ポリエステル樹脂を硬化させることによって靴下2の底部20から履き口部21へ甲被部22に沿って延びるように形成された第1の保形支持部材領域3が、靴下2の甲被部22を吊り上げるようにして靴下2の立体形状を保持すると共に、ソール部5の爪先部と接合されることによってソール部5先端の変形を足の爪先の動きに追従させる。また、靴下2の底部20から履き口部21へ踵部23に沿って延びるように形成された第2の保形支持部材領域4は、靴下2の踵部23の立ち上がり形状を保持すると共に、ソール部5の踵部と接合されることによってソール部5後端の変形を足の踵の動きに追従させる。
【0092】
また、上述された第1及び第2の保形支持部材領域3、4は、いずれも人が靴下シューズ1aを着脱する際に足を出し入れする方向と一致して配置されているため、靴下シューズ1aの着脱の容易性を損なうことなくその立体形状を保持することができる。
【0093】
なお、本実施例2に適用される靴下及びソール部5の素材は、上述された実施例1〜3の本発明による靴下シューズ1、1a、1bの場合と同じである。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】実施例1の本発明による靴下シューズの側面図である。
【図2】図1に示される靴下シューズを上部から見た平面図である。
【図3】実施例2の本発明による靴下シューズの側面図である。
【図4】図3に示される靴下シューズを上部から見た平面図である。
【図5】実施例3の本発明による靴下シューズの側面図である。
【図6】図5に示される靴下シューズを上部から見た平面図である。
【図7】実施例4の本発明による靴下シューズの側面図である。
【図8】図7に示される靴下シューズを上部から見た平面図である。
【符号の説明】
【0095】
1、1a、1b、1c 靴下シューズ
2 靴下
3 第1の保形支持部材(領域)
4 第2の保形支持部材(領域)
5 ソール部
6 第3の保形支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴下と前記靴下の底部を覆うソール部とを備え、
前記靴下には、前記ソール部を足裏の動きに追従させ、かつ靴下の形状を所望の立体形状に保持するための保形支持部材が含まれており、そして
前記靴下とソール部は、加熱処理することによって一体成形されていることを特徴とする靴下シューズ。
【請求項2】
前記保形支持部材は、前記靴下に編み込み又は縫い込まれた形状記憶樹脂繊維である請求項1に記載の靴下シューズ。
【請求項3】
前記形状記憶樹脂繊維は、靴下素材中に30〜80wt%の範囲内で含まれている請求項2に記載の靴下シューズ。
【請求項4】
前記保形支持部材は、前記靴下表面に接着された形状記憶樹脂からなるシート又は布地である請求項1に記載の靴下シューズ。
【請求項5】
前記形状記憶樹脂のガラス転移温度は、30〜120℃の範囲内である請求項2ないし4のいずれかに記載の靴下シューズ。
【請求項6】
前記保形支持部材は、前記靴下表面に接着された熱可塑性樹脂からなるシート又は布地、または液状の熱可塑性樹脂を靴下素材に含ませて硬化させたものである請求項1に記載の靴下シューズ。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂は、ナイロン、EVA、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンビニルアルコール、塩化ビニール、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル又はポリウレタンの中から選ばれた樹脂である請求項6に記載の靴下シューズ。
【請求項8】
前記保形支持部材は、第1および第2の保形支持部材からなり、第1の保形支持部材は前記靴下の底部から履き口部へ甲被部に沿って延びており、第2の保形支持部材は前記靴下の底部から履き口部へ踵部に沿って延びていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の靴下シューズ。
【請求項9】
前記保形支持部材は、成形後の前記ソール部を除く靴下表面積に対して20〜70%の範囲内で配設されていることを特徴とする請求項8に記載の靴下シューズ。
【請求項10】
前記靴下の編み糸(形状記憶樹脂からなる編み糸を除く)は、ひょうたん型、星型、L型などの異型断面を有する糸である請求項1ないし9のいずれかに記載の靴下シューズ。
【請求項11】
前記靴下の編み糸(形状記憶樹脂からなる編み糸を除く)は、10番〜50番の範囲内にある天然繊維からなる単糸、または50d〜260dの範囲内にある合成繊維からなる単糸である請求項1ないし10のいずれかに記載の靴下シューズ。
【請求項12】
前記靴下表面又は内部には、透湿性または通気性防水フィルム、膜又は層がさらに形成されていることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の靴下シューズ。
【請求項13】
前記靴下及びソール部には、導電性または静電性材料が含まれていることを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載の靴下シューズ。
【請求項14】
前記靴下には、難燃材からなる繊維が編み込み又は縫い込まれていることを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載の靴下シューズ。
【請求項15】
内部に靴型が挿入された形状記憶繊維が編み込み又は縫い込まれた靴下を準備し、
前記靴下の底部にソール部を仮止めして、そして
前記靴下とソール部を形状記憶樹脂繊維のガラス転移温度以上、融点以下の温度で加熱処理することにより所望の立体形状に一体成形することを特徴とする靴下シューズの製造方法。
【請求項16】
内部に靴型が挿入された靴下を準備し、
靴下の底部から履き口部へ甲被部に沿って延びた第1の熱可塑性樹脂からなるシート又は布地と、靴下の底部から履き口部へ踵部に沿って延びた第2の熱可塑性樹脂からなるシート又は布地を仮止めし、さらに前記靴下の底部にソール部を仮止めして、そして
前記靴下と第1及び第2の熱可塑性樹脂からなるシート又は布地とソール部とを熱可塑性樹脂の軟化点以上の温度で加熱処理することにより所望の立体形状に一体成形することを特徴とする靴下シューズの製造方法。
【請求項17】
前記加熱処理は、60〜200℃の温度範囲で60〜5秒間実施する請求項16に記載の靴下シューズの製造方法。
【請求項18】
内部に靴型が挿入された靴下を準備し、
靴下の底部から履き口部へ甲被部に沿って延びた第1の形状記憶樹脂からなるシート又は布地と、靴下の底部から履き口部へ踵部に沿って延びた第2の形状記憶樹脂からなるシート又は布地を仮止めし、さらに前記靴下の底部にソール部を仮止めして、そして
前記靴下と第1及び第2の形状記憶樹脂からなるシート又は布地とソール部とを形状記憶樹脂繊維のガラス転移温度以上、融点以下の温度で加熱処理することにより所望の立体形状に一体成形することを特徴とする靴下シューズの製造方法。
【請求項19】
内部に靴型が挿入された靴下を準備し、
靴下の底部から履き口部へ甲被部に沿って延びた第1の領域と、靴下の底部から履き口部へ踵部に沿って延びた第2の領域に液状の熱可塑性樹脂を含ませ、さらに前記靴下の底部にソール部を仮止めし、そして
前記靴下と第1及び第2の領域の熱可塑性樹脂とソール部とを熱可塑性樹脂の硬化点以上の温度で加熱処理することにより所望の立体形状に一体成形することを特徴とする靴下シューズの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−236612(P2007−236612A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−62879(P2006−62879)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
【出願人】(391039966)株式会社フットテクノ (8)
【出願人】(506081013)有限会社K−イシハラ (1)
【Fターム(参考)】