説明

靴下

【課題】本発明は、屈曲被覆部がしわ状になるおそれが少なく足の屈曲部に食い込み難いものであって、見栄えが悪くなるおそれのない靴下の提供を目的とする。
【解決手段】弾性糸95は、ベース糸91により編成した筒状体からなる編地本体9のコース編目列94に沿わされるとともに、編地本体9の軸方向に所定距離を隔てて複数の弾性糸95の列を形成するように編地本体9に配設されている。又、屈曲被覆部5におけるコース編目列94の軸方向の数に対する弾性糸95の列の数の割合が、足首被覆部におけるその割合よりも小さくなるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴下、より詳しくは、ベース糸を編んだ編地本体に弾性糸を配設した編地を有する靴下に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば足首からふくらはぎ側に向かって漸次、着用時の着圧を減少させることによって、ふくらはぎから足首への静脈血のスムーズな還流を可能とした、いわゆる弾力性靴下が知られている。このような弾力性靴下において、甲と足首との間の屈曲部を覆う屈曲被覆部を、足首被覆部における弾性力とほぼ同じ弾性力を有するものに形成すると、着用時に、屈曲被覆部がしわ状になって屈曲被覆部が足の屈曲部に食い込んでしまう。このように屈曲被覆部が足の屈曲部に食い込んでしまうと足の屈曲部の血行が悪くなるおそれが生じ、その結果、ふくらはぎから足首への静脈血のスムーズな還流が可能になっても、足首から足の屈曲部、更には足先への還流を損なうおそれが生じてしまう。
【0003】
一方、特許文献1に、距腿関節部(屈曲部)の内側を足甲部の屈伸時に距腿関節内側に皺を防止するためにパール編みとし、足甲部に常に足の甲部を予め定めた抱圧力(着圧)にて抱持するようにその周回方向に伸縮部を形成するようにした靴下が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−150401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような弾力性靴下における屈曲被覆部を、足首被覆部と異なる編み方で編成して足首被覆部よりも弾性力を弱くしても、着用時に屈曲被覆部がしわ状にならない程に十分に弱くなり難く、その結果、屈曲被覆部が未だ足の屈曲部に食い込んでしまう。又、屈曲被覆部を足首被覆部と異なる編み方で編成すると見栄えの悪いものになってしまい、靴下としての価値を低下させるおそれがある。
【0006】
本発明は、屈曲被覆部がしわ状になるおそれが少なく足の屈曲部に食い込み難いものであって、見栄えが悪くなるおそれのない靴下の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、ベース糸で編成した編地本体に弾性糸が配設された編地を有する靴下であって、足首の少なくとも一部を覆う足首被覆部と、足の甲と前記足首との間に形成される足の屈曲部を覆う屈曲被覆部とを備え、前記足首被覆部及び屈曲被覆部は、前記編地によって形成されているとともに、前記屈曲被覆部は、前記編地の弾性糸による編地弾性力を弱くさせる編地弾性力弱化手段によって前記足首被覆部よりも前記編地弾性力が弱くなるように構成されていることを特徴とする靴下である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の靴下において、前記編地本体は、筒状体から構成され、前記弾性糸は、前記筒状体の周方向に沿わせるようにして、前記筒状体の軸方向に所定距離を隔てて複数の弾性糸の列を形成するように前記編地本体に配設され、前記編地弾性力弱化手段は、前記屈曲被覆部における隣接する2つの列の弾性糸同士の距離が、前記足首被覆部における前記距離よりも広くなるように構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2の靴下において、前記編地本体は、筒状体から構成されているとともに、周方向に編目を並ばせるようにして形成されたコース編目列が軸方向に複数の列をなしており、前記弾性糸は、前記コース編目列に沿わせるようにして、前記筒状体の軸方向に所定距離を隔てて複数の弾性糸の列を形成するように前記編地本体に配設され、前記編地弾性力弱化手段は、前記屈曲被覆部における前記コース編目列の軸方向の列の数に対する前記弾性糸の列の数の割合が、前記足首被覆部における前記割合よりも小さくなるように構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項の靴下において、前記弾性糸として、強弾性糸と、その強弾性糸が有する糸弾性力よりも弱い糸弾性力を有する弱弾性糸とが用いられ、前記編地弾性力弱化手段は、前記足首被覆部に前記強弾性糸を、前記屈曲被覆部に前記弱弾性糸を、夫々、配設するように構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか一項の靴下において、前記靴下は、ふくらはぎを覆うふくらはぎ被覆部を備えているとともに、前記足首被覆部側からふくらはぎ被覆部側に漸次、上記編地弾性力が弱くなるように構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1によれば、屈曲被覆部は、編地の弾性糸による編地弾性力を弱くさせる編地弾性力弱化手段によって足首被覆部よりも編地弾性力が弱くなるように構成されている。
【0013】
これにより、屈曲被覆部の編地弾性力を、足首被覆部の編地弾性力よりも十分に弱くでき、着用時に屈曲被覆部がしわ状になり難く足の屈曲部に食い込み難いものにできる。しかも、屈曲被覆部と足首被覆部とをベース糸で編成した編地本体と同じ編み方で形成でき、見栄えが悪くなるようなことを防止できる。
【0014】
請求項2によれば、弾性糸は、筒状体の周方向に沿わせるようにして、筒状体の軸方向に所定距離を隔てて複数の弾性糸の列を形成するように編地本体に配設される。又、編地弾性力弱化手段は、屈曲被覆部における隣接する2つの列の弾性糸同士の距離が、足首被覆部におけるその距離よりも広くなるように構成される。
【0015】
これにより、簡単な構成で、屈曲被覆部の編地弾性力を足首被覆部のそれよりも弱くできる。
【0016】
請求項3によれば、弾性糸は、コース編目列に沿わせるようにして、筒状体の軸方向に所定距離を隔てて複数の弾性糸の列を形成するように編地本体に配設される。又、編地弾性力弱化手段は、屈曲被覆部におけるコース編目列の軸方向の列の数に対する弾性糸の列の数の割合が、足首被覆部におけるその割合よりも小さくなるように構成される。
【0017】
例えばふくらはぎから足先まで覆う靴下を形成する場合には、ふくらはぎを覆うふくらはぎ被覆部側に設けた足挿入用の開口部から足首被覆部までの範囲にかけて、弾性糸の列を各コース編目列ごとにコース編目列と同じ数だけ配設し、一方、屈曲被覆部から足先を覆う足先被覆部までの範囲にかけて、弾性糸の列を、コース編目列に対して軸方向に1列おきに又は複数列おきに配設して、コース編目列の数よりも少なくなるようにする。これにより、屈曲被覆部の編地弾性力を足首被覆部のそれよりも弱くでき、編み機で容易に形成できる。
【0018】
請求項4によれば、弾性糸として強弾性糸と弱弾性糸とが用いられ、編地弾性力弱化手段は、足首被覆部に強弾性糸を、屈曲被覆部に弱弾性糸を、夫々、配設するようにして構成される。
【0019】
これにより、種類や太さの異なる弾性糸を用いて屈曲被覆部の編地弾性力を足首被覆部のそれよりも弱くでき、容易に形成できる。
【0020】
請求項5によれば、靴下は、ふくらはぎを覆うふくらはぎ被覆部を備えるとともに、前記足首被覆部側からふくらはぎ被覆部側に漸次、編地弾性力が強くなるように構成されている。
【0021】
これにより、足首からふくらはぎにかけて、血行促進を図りうる靴下における屈曲被覆部を、足首被覆部よりも編地弾性力が弱くなるように構成することにより、足の屈曲部の血行促進を図ることができる。その結果、足先からふくらはぎまでの血の還流を促進でき、血行促進を図ることができる。従って、血行促進を図りうる靴下として適したものにできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の靴下の側面図である。
【図2】図1の靴下における足首被覆部の編組織の模式図である。
【図3】図1の靴下における屈曲被覆部の編組織の模式図である。
【図4】足首被覆部及び屈曲被覆部の着圧測定データをあらわした図表である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の靴下の側面図、図2は、足首被覆部の編組織の模式図、図3は、屈曲被覆部の編組織の模式図である。
【0024】
本実施形態の靴下1は、図1に示すように、足先からふくらはぎにかけての部分を覆うように構成されており、上端側に足を挿入する足挿入用の開口部11を備えている。
【0025】
又、靴下1は、ふくらはぎを覆うふくらはぎ被覆部2、足首を覆う足首被覆部3、足の甲を覆う甲被覆部4、足首と甲との間の足の屈曲部を覆う屈曲被覆部5、足先を覆う足先被覆部6、足の踵を覆う踵被覆部7、足の裏を覆う足裏被覆部8等を備えている。
【0026】
屈曲被覆部5は、この実施形態では、図1中に点線で区画形成して表されているように、踵被覆部7を囲むように踵被覆部7の全周部に配設されているとともに、足のくるぶしから甲にかけての部分を覆う筒状を呈している。
【0027】
また、上記ふくらはぎ被覆部2、足首被覆部3、甲被覆部4、屈曲被覆部5、足先被覆部6及び足裏被覆部8は、ベース糸を編んだ編地本体に、弾性糸(インレイ糸)を挿入したインレイ編によって形成された筒状の編地から構成されている。以下、図2、図3に基づいて、詳しく説明する。
【0028】
ベース糸91は、この実施形態では、78デシテックスのナイロン糸を2本縒りあわせて形成したもの(NY78dt/2)が用いられている。そして、このベース糸91が編成されることによって、編地本体9が筒状体に形成されている。
【0029】
又、ベース糸91により形成された編地本体9は、編目93が周方向(コース方向、図のY−Y方向)に並んでコース編目列94を形成している。また、このように形成されたコース編目列94が、軸方向(ウエール方向、図のX−X方向)に複数の列をなした群からなるコース編目列群90を形成している。
【0030】
弾性糸95は、この実施形態では、235デシテックスのポリウレタン糸に13デシテックスのナイロン糸を2層に巻き付けたダブルカバードヤーン(DCY235dt/13dt/13dt)が用いられている。尚、弾性糸95は、上記DCY235dt/13dt/13dtに代えて、例えばDCY310dt/13dt/13dtやDCY156dt/13dt/13dtを用いることもできる。又、弾性糸95は、ダブルカバードヤーン(DCY)に限らず、例えば、シングルカバードヤーン(SCY)、伸縮性のあるウーリー加工をしたナイロン糸、伸縮性のあるウーリー加工をしたポリエステル糸等を用いることもでき、適宜変更できる。
【0031】
そして、この弾性糸95は、編地本体9のコース方向に沿わせされるようにして、踵被覆部7を除くふくらはぎ被覆部2の上端から足先被覆部6の先端に至るまで、らせん状に配設されており、編地本体9のウエール方向に所定距離を隔てて複数の弾性糸の列を形成している。
【0032】
又、屈曲被覆部5における隣接する2つの列の弾性糸95の距離L1が、足首被覆部3における上記距離L2よりも広くなるようになされている。
【0033】
この実施形態では、弾性糸95は、ふくらはぎ被覆部2及び足首被覆部3においては、図2に示すように、コース編目列94に沿って、即ち、周方向に沿って、編目を形成せずに上記編地本体9の編組織に挿入されるようにして、各コース編目列94ごとに配設されて軸方向のウエール方向に弾性糸95の列を形成している。従って、コース編目列94の軸方向の列の数に対する弾性糸95の列の数の割合は、1/1になっている。
【0034】
一方、甲被覆部4、屈曲被覆部5、足先被覆部6、踵被覆部7、及び足裏被覆部8においては、図3に示すように、弾性糸95は、上記足首被覆部3の場合と同様に、コース編目列94に沿って、編目を形成せずに上記編地本体9の編組織に挿入されるようにして配設されているが、弾性糸95の列が、コース編目列94に対して軸方向の1列おきに形成されている。従って、この実施形態では、コース編目列94の軸方向の列の数に対する弾性糸95の列の数の割合は、1/2になっており、上記足首被覆部3におけるその割合よりも小さいものにされ、上記屈曲被覆部5における隣接する2つの列の弾性糸95同士の距離L1が足首被覆部3における上記距離L2よりも広くなっている。
【0035】
この屈曲被覆部5におけるコース編目列94の軸方向の列の数に対する弾性糸95の列の数の割合を、足首被覆部3におけるコース編目列94の軸方向の列の数に対する弾性糸95の列の数の割合よりも少なくして、上記屈曲被覆部5における隣接する2つの列の弾性糸95同士の距離L1が足首被覆部3における上記距離L2よりも広くなるようにすることは、編地の弾性糸95による編地弾性力を弱くさせる編地弾性力弱化手段に該当する。
【0036】
又、この実施形態では、靴下は、足首被覆部3からふくらはぎ被覆部2側に向かって漸次編地の弾性糸による編地弾性力を減少させた弾力性靴下、換言すれば、足首被覆部3からふくらはぎ被覆部2側に向かって漸次着圧を減少させた弾力性靴下から構成されている。詳しくは、この実施形態では、ふくらはぎ被覆部2及び足首被覆部3は、ふくらはぎ被覆部2の上端側から足首被覆部3の下端側に行くに従って漸次引っ張り力が強くなるように弾性糸95に引っ張り力をかけた状態に配設し、下側に行く程、着用時の皮膚にかかる圧力(着圧)が強くなるように、即ち、足首被覆部3からふくらはぎ被覆部2側に向かって漸次着圧が弱くなるように構成されている。これにより、足首被覆部3からふくらはぎ被覆部2にかけての血行を良くできるものにしている。
【0037】
又、この実施形態では、踵被覆部7は、78デシテックスのナイロン糸を2本縒りあわせて形成したもの(78dt/2)を用いて、図示しないがコンベ編みにより形成されている。
【0038】
そして、この踵被覆部7は、屈曲被覆部5を編成する途中で編成されている。尚、周方向に踵被覆部7と隣接する屈曲被覆部5の部分における弾性糸95は、踵被覆部7で折り返されるようにして配設されている。
【0039】
次に、足首被覆部3と屈曲被覆部5とについての着圧測定を行ったので、説明する。この着圧測定は、足首及び屈曲部に夫々、エアパック式圧力センサーを取り付けた足型を用い、その足型に、本発明の靴下を装着させて、その装着時の足首被覆部3と屈曲被覆部5との夫々からエアパック式圧力センサーにかかる圧力を、着圧として測定することによって行なった。
【0040】
又、本発明の靴下として、DCY235dt/13dt/13dtの弾性糸95を用いたもの(上記実施形態のものと全て同じもの、以下、本実施例NO1)と、DCY310dt/13dt/13dtの弾性糸95を用いたもの(上記実施形態のものと弾性糸95だけが異なるもの、以下、本実施例NO2)との2つのものを製作し、夫々について行なった。
【0041】
又、本実施例NO1の比較例として、DCY235dt/13dt/13dtの同じ弾性糸95を用い、屈曲被覆部5についても、足首被覆部3と同様に、各コース編目列ごとに弾性糸95の列を形成するように弾性糸95を配設したもの(編地弾性力弱化手段を用いないもの、以下、比較例NO1)を製作し、本実施例NO1と同条件で着圧測定を行なった。
【0042】
また、本実施例NO2の比較例として、DCY310dt/13dt/13dtの同じ弾性糸95を用い、屈曲被覆部5に、足首被覆部3と同様に、各コース編目列ごとに弾性糸95の列を形成するように弾性糸95を配設したもの(編地弾性力弱化手段を用いないもの、以下、比較例NO2)を製作し、本実施例NO2と同条件で着圧測定を行なった。
【0043】
測定結果は、図4に示すように、本実施例NO1では、屈曲被覆部5が足首被覆部3よりも着圧が低いのに対し、比較例NO1では、足首被覆部3が屈曲被覆部5よりも着圧が低かった。
【0044】
尚、本実施例NO1では、足型に装着した際、屈曲被覆部5は、ほとんど皺の発生が見られなかった。また、足首被覆部3と屈曲被覆部5とは、目視で区別し難く、屈曲被覆部5だけを異なる編み方で編成した従来のもののように見栄えが悪くなるようなことがなかった。
【0045】
同様に、本実施例NO2では、屈曲被覆部5が足首被覆部3よりも着圧が低いのに対し、比較例NO2では、足首被覆部3が屈曲被覆部5よりも着圧が低かった。
【0046】
尚、本実施例NO2においても、足型に装着した際、屈曲被覆部5は、ほとんど皺の発生が見られなかった。また、足首被覆部3と屈曲被覆部5とは、目視で区別し難いものであった。
【0047】
尚、上記実施形態では、編地弾性力弱化手段は、足首被覆部3に弾性糸95を、各コース編目列94ごとに配設し、屈曲被覆部5に弾性糸95を、コース編目列94の軸方向の1列おきごとに配設するようにしているが、屈曲被覆部5におけるコース編目列94の軸方向の列の数に対する弾性糸95の列の数の割合が、足首被覆部におけるその割合よりも小さくなるように構成するようにする。或いは、足首被覆部にだけ弾性糸95を配設して屈曲被覆部5に弾性糸95を配設しないようにしてもよい。この場合は、屈曲被覆部5における編地の弾性糸による編地弾性力が全く無い場合である。従って、特許請求の範囲でいう「編地弾性力弱化手段によって前記足首被覆部よりも前記編地弾性力が弱くなる」には、屈曲被覆部に弾性糸を配設しないで屈曲被覆部の編地弾性力を全く無い状態にする場合も含む。
【0048】
又、屈曲被覆部5における上記割合を足首被覆部における上記割合よりも小さくする場合において、例えば足首被覆部3に弾性糸95を、各コース編目列94ごとに弾性糸95を配設し、一方、屈曲被覆部5に弾性糸95を、コース編目列94の軸方向の2列おき(2列飛ばし)又は3列おき(3列飛ばし)に配設し、或いは、コース編目列94の1から2以上の適宜な数の列おきに(軸方向の列を適宜な数だけ飛ばすようにして)配設する。
【0049】
又、足首被覆部3に弾性糸95を、コース編目列94の1から2以上の適宜な数の列おきに配設し、屈曲被覆部5に弾性糸95を、足首被覆部3の弾性糸95の列よりも多くの数の列おきに(多くの数の列を飛ばして)配設するようにする。
【0050】
又、編地弾性力弱化手段は、足首被覆部3と屈曲被覆部5とのコース編目列94の軸方向の列の数に対する弾性糸95の列の数の割合による形態のものに限らず、強弾性糸と、その強弾性糸が有する糸弾性力よりも弱い糸弾性力を有する弱弾性糸、例えば強弾性糸と同じ素材のもので太さが細いもの、或いは、太さが同じで強弾性糸よりも弾性が小さい素材のものを用い、足首被覆部3に強弾性糸を、屈曲被覆部5に弱弾性糸を、夫々、配設するように構成する。
【0051】
強弾性糸と弱弾性糸とを用いる場合において、屈曲被覆部5における上記割合を足首被覆部における上記割合と同じにしてもよいが、小さくするようにしてもよい。
【0052】
又、編地弾性力弱化手段として、屈曲被覆部の弾性糸を、足首被覆部における弾性糸の引っ張り力よりも弱くなるように引っ張り力をかけた状態にするようにして編地の弾性糸による編地弾性力を弱くさせるようにしても良い。ただし、編地弾性力弱化手段を、このように構成した場合、着用時に屈曲被覆部がしわ状にならない程には編地弾性力を弱く(低く)し難いので、上述のように、屈曲被覆部におけるコース編目列94の軸方向の列の数に対する弾性糸の列の数の割合を、足首被覆部におけるその割合よりも小さくなるようにするのが好ましい。
【0053】
また、上記実施形態では、足首被覆部3を足首の略全体を覆う大きさのものから構成されているが、この形態のものに限らず、適宜変更できる。例えば足首被覆部3を、足首の一部、例えば足首の上部側だけを覆うものにする。
【0054】
又、屈曲被覆部5についても、上記実施形態では、踵被覆部7を囲むように踵被覆部7の全周部に配設された筒状のものから構成しているが、この形態のものに限らず、適宜変更できる。
【0055】
例えば図1中に2点鎖線で区画形成した部分のように、足首被覆部3と甲被覆部4との間に、足の屈曲部だけを覆う部分を屈曲被覆部50としてもよい。又、屈曲被覆部を、足の屈曲部とともに、足首の上部側と甲の一部との一方又は両方を覆うものでもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、踵被覆部7を、足首被覆部3等の他の部分と異なる編み方で形成しているが、例えば足首被覆部3等の他の部分と同じ編み方で形成し、即ち、ふくらはぎ被覆部2から足先被覆部6までの全体をインレイ編によって形成するようにしてもよく、適宜変更できる。
【0057】
又、上記実施形態では、靴下を、弾力性靴下から構成したが、この形態のものに限らず、適宜変更でき、例えば足首被覆部3からふくらはぎ被覆部2までほぼ同じ弾性を有するものに適応してもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、靴下を、上部にふくらはぎ被覆部2を有するものから構成しているが、例えばふくらはぎ被覆部2を有しない足首被覆部3までのもの、又は、ふくらはぎ被覆部2の上部側にふくらはぎ被覆部、更には大腿被覆部を有するもの、更には、腰までを覆うパンティストッキング、タイツ或いは、足先被覆部6を有しないもの等でも良く、適宜変更できる。
【符号の説明】
【0059】
1 靴下
3 足首被覆部
5、50 屈曲被覆部
9 編地本体
91 ベース糸
93 編目
94 コース編目列
95 弾性糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース糸で編成した編地本体に弾性糸が配設された編地を有する靴下であって、
足首の少なくとも一部を覆う足首被覆部と、足の甲と前記足首との間に形成される足の屈曲部を覆う屈曲被覆部とを備え、
前記足首被覆部及び屈曲被覆部は、前記編地によって形成されているとともに、前記屈曲被覆部は、前記編地の弾性糸による編地弾性力を弱くさせる編地弾性力弱化手段によって前記足首被覆部よりも前記編地弾性力が弱くなるように構成されていることを特徴とする靴下。
【請求項2】
前記編地本体は、筒状体から構成され、
前記弾性糸は、前記筒状体の周方向に沿わせるようにして、前記筒状体の軸方向に所定距離を隔てて複数の弾性糸の列を形成するように前記編地本体に配設され、
前記編地弾性力弱化手段は、前記屈曲被覆部における隣接する2つの列の弾性糸同士の距離が、前記足首被覆部における前記距離よりも広くなるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の靴下。
【請求項3】
前記編地本体は、筒状体から構成されているとともに、周方向に編目を並ばせるようにして形成されたコース編目列が軸方向に複数の列をなしており、
前記弾性糸は、前記コース編目列に沿わせるようにして、前記筒状体の軸方向に所定距離を隔てて複数の弾性糸の列を形成するように前記編地本体に配設され、
前記編地弾性力弱化手段は、前記屈曲被覆部における前記コース編目列の軸方向の列の数に対する前記弾性糸の列の数の割合が、前記足首被覆部における前記割合よりも小さくなるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の靴下。
【請求項4】
前記弾性糸として、強弾性糸と、その強弾性糸が有する糸弾性力よりも弱い糸弾性力を有する弱弾性糸とが用いられ、
前記編地弾性力弱化手段は、前記足首被覆部に前記強弾性糸を、前記屈曲被覆部に前記弱弾性糸を、夫々、配設するように構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の靴下。
【請求項5】
前記靴下は、ふくらはぎを覆うふくらはぎ被覆部を備えているとともに、前記足首被覆部側からふくらはぎ被覆部側に漸次、上記編地弾性力が弱くなるように構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の靴下。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−94250(P2011−94250A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247554(P2009−247554)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000112299)ピップ株式会社 (46)
【出願人】(592205724)サン エース株式会社 (6)
【Fターム(参考)】