説明

【課題】 足をしっかりと保持できるとともに、着脱が容易な靴を提供する。
【解決手段】 靴10は、靴底11と、その上に位置し、足首まで覆う高さを有するアッパー部とを備える。アッパー部は、甲を覆う甲皮部と、踝を覆う高さを有し後方に向かって次第にその高さが減じられる左右の側皮部14a,14bと、左右の側皮部14a、14bを連結する後皮部17とを含む下部アッパー部12と、下部アッパー部12の上方領域に重なる位置から足首を覆う高さを有し、その一端が下部アッパー部20の右の側皮部14aに接続され、その途中領域が順に下部アッパー部12の右の側皮部14a上、後皮部17上、左の側皮部14b上に部分的に重なり、左の側皮部14bにつながる固定部27が上部アッパー部20の面ファスナ34に着脱可能に接続される上部アッパー部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は靴に関し、特に、履きやすい靴に関する。
【背景技術】
【0002】
履きやすさを考慮した靴が、たとえば特開平11−113609号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された靴においては、靴のヒール部分に、外側後端部と、内側後端部によって覆われる踵覆い部を設け、外側後端部には留め具と、その留め具掛けを有したバンドを設け、これが内側後端部に設けたバンド通しを通って、折り返されることで、ちょうど留め具で固定できる位置に来るようになっている。
【特許文献1】特開平11−113609号公報(段落番号0004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の、履きやすさを考慮した靴は、上記のように構成されていた。靴の脱ぎ履きの際に、ベルトを緩めたり、締めたりすることで、靴の着脱を容易にしていた。
【0005】
しかしながら、このような構成では、靴の脱ぎ履きの際に、ベルトを緩めたり、締めたりする必要があり、靴の着脱が容易であるとはいえなかった。
【0006】
この発明は、足をしっかりと保持できるとともに、着脱が容易な靴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる、靴底と、その上に位置し足首まで覆う高さを有するアッパー部とを備えた靴においては、アッパー部は、甲を覆う甲皮部と、踝を覆う高さを有し後方に向かって次第にその高さが減じられる左右の側皮部と、左右の側皮部を連結する後皮部とを含む下部アッパー部と、下部アッパー部の上方領域に重なる位置から足首を覆う高さを有し、その一端が下部アッパー部の一方の側皮部に接続され、その途中領域が順に下部アッパー部の一方の側皮部上、後皮部上、他方の側皮部上に部分的に重なり、その他端が一端上に着脱可能に接続される上部アッパー部とを備えることを特徴とする。
【0008】
下部アッパー部が、踝を覆う高さを有し、後方に向かって次第にその高さが減じられる左右の側皮部、およびそれを接続する後皮部を有しているため、踵部が開いており、足を容易に靴底に入れることができる。一方、上部アッパー部は、足を靴底に載置した後で、下部アッパー部の上方領域に重なる位置から足首を覆うように下部アッパー部の上に取付けられる。
【0009】
その結果、足をしっかりと保持できるとともに、着脱が容易な靴を提供できる。
【0010】
好ましくは、上部アッパー部の他端が一端上に接続されたとき、上部アッパー部の、下部アッパー部に重なる、一方の側皮部上、後皮部上、他方の側皮部上の部分は、一端上に接続される他端よりも高い位置まで延在する。
【0011】
さらに好ましくは、上部アッパー部と、下部アッパー部の一方の側皮部上、後皮部上、他方の側皮部上との部分的に重なる部分の寸法は、後皮部の高さの1/2以上である。
【0012】
さらに好ましくは、下部アッパー部の他方の側皮部上に部分的に重なる部分には、下部アッパー部と上部アッパー部とを接続する接続部が設けられ、接続部は、下部アッパー部の面の外部に設けられる。
【0013】
さらに好ましくは、左右の側皮部は、接続バンドで接続される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、この発明の一実施形態にかかる靴(右足用)を、乳幼児用靴に適用した場合の、幼児が足を入れる前の状態を示す斜視図であり、図2は、図1においてII−IIで示す部分の矢視図である。なお、左足用も同様の構成である。
【0015】
図1および図2を参照して、乳幼児用靴10は、幼児が足を載置する靴底11と、靴底11に連続して靴底上に位置するアッパー部とを含む。
【0016】
アッパー部は、下部アッパー部12と上部アッパー部20とを含む。下部アッパー部12は、幼児の足の甲を覆う舌片部(甲皮部)13と、幼児の足の甲の位置から、後方に向かって次第にその高さが減じられる左右の側皮部14a、14bと、左右の側皮部14a、14bとを踵の下部で連結する後皮部17とを含む。左右の側皮部14a、14bは、図2に示すように、幼児が靴底に足載置したとき、幼児の足の踵(図中点線で示す)35を覆う高さを有している。
【0017】
左側皮部14bの踵方向には、後に説明する、踵回り保持部22に設けられた面ファスナ31に接続する面ファスナ33が設けられている。
【0018】
なお、この幼児用の靴10においては、全ての面ファスナは、その取付け面の外部(表面)側に設けられている。
【0019】
また、左右の側皮部14a,14bは、つま先側に設けられた接続バンド15で着脱自在に接続可能に構成されている。
【0020】
この実施の形態にかかる幼児用の靴においては、下部アッパー部12の踵部が大きく開いているため、幼児は容易に靴10を履くことができる。
【0021】
上部アッパー部20は、右側皮部14aに設けられた取付け部16に取付けられ、右側皮部14aに対して外方向に延びる。上部アッパー部20は、足の左右の側部および踵を覆って足首を保持する、足首保持部21と、足首保持部21に連続して設けられ、足首保持部21で足首を保持するために、その端部28を靴10に固定するための固定部27とを含む。
【0022】
足首保持部21は、下部アッパー部12の上方領域に重なる位置から足首を覆う高さを有し、取付け部16に取付けられた部分から、順に右側皮部14a上、後皮部17上、左側皮部14b上に部分的に重なるように構成されている。
【0023】
なお、固定部27の端部28は、面ファスナ32を有し、この面ファスナ32は、上アッパー部20の取付け部16近傍において、図示の面の反対側に設けられた、図1において点線で示す、面ファスナ34に着脱自在に接続される。
【0024】
足首保持部21は、幼児が足を靴底11に載置したときに、踵の周囲を保持する、踵回り保持部22と、踵回り保持部22の上部に設けられ、踵の上部を保持する、第1および第2の踵上保持部23a、23b、および中央踵上保持部24とを有する。
【0025】
第1および第2の踵上保持部23a、23b、および中央踵上保持部24は、踵回り保持部22と、図1中において、一点鎖線で示すように、縫い目で分けられており、それによって、足首保持部21全体が、縫い目部分以外の部分が膨らんだクッション性を有している。
【0026】
このように構成された靴10を履くときは、幼児は足を靴底11の上に置く。その後、上部アッパー部20を、図中矢印で示す方向に移動して、幼児の足首を踵の後ろ方向から覆い、上記した、それぞれ対応する面ファスナ28と34および31と32を接続する。接続バンド15を用いて、左右の側皮部14a、14bを幼児の足に合わせて接続する。
【0027】
図3は、そのようにして、幼児が靴10を履いた状態の斜視図であり、図4は、図3においてIV−IVで示す部分の矢視図であり、図5は、図3において、V−Vで示す部分の矢視図である。
【0028】
図3および4に示すように、固定部27および接続バンド15を用いて左右の側皮部14a、14bを調整可能に接続するため、幼児の中足骨を保持でき、幼児の足にあった靴を提供できる。
【0029】
さらに、第1および第2の踵上保持部23a、23b、および中央踵上保持部24は、固定部27より上方向に突出しているため、足首保持部材20によって、足首を十分保持できる。
【0030】
図4を参照して、上部アッパー部20の下端部25と左右の側皮部14a、14bの上端部26との重なり部分の寸法t1は、後皮部17の高さt2の1/2以上の寸法とされている。その結果、左側皮部14bと上部アッパー部20とは、面ファスナ31,33の接続力ともあいまって、容易に外れることなく、しっかりと幼児の足首を保持できる。
【0031】
一方、幼児が靴10を脱ぐときは、上記の反対の動作を行なう。すなわち、接続バンド15の面ファスナおよび固定部27の面ファスナ31から34を外し、上部アッパー部20を広げる。すると、靴の踵部分が大きく開き、幼児の踵部分が解放されるため、幼児は容易に靴から足を出す、すなわち、靴を脱ぐことができる。
【0032】
その結果、幼児にとって着脱の容易な靴が提供できる。
【0033】
上記実施の形態においては、上部アッパー部の他に、接続バンドを設けた場合について説明したが、これに限らず、上部アッパー部のみで幼児の足を保持してもよい。
【0034】
なお、上記実施の形態においては、この発明を幼児用の靴に利用した場合を例にあげて説明したが、これに限らず、大人用や老人用の靴にも同様に適用が可能である。
【0035】
図面を参照してこの発明の一実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態に限定されるものではない。本発明と同一の範囲内において、または均等の範囲内において、図示した実施形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この発明にかかる、靴は、履くときに開口部を大きくとれるとともに、足の寸法に合わせた状態で足首を保持できるため、靴の着脱が容易な靴として有利に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の一実施の形態にかかる靴において、足首保持部材を展開した状態を示す斜視図である。
【図2】図1においてII−IIで示す部分の矢視図である。
【図3】足首保持部材を組み立てた状態を示す靴の斜視図である。
【図4】図3においてIV−IVで示す部分の矢視図である。
【図5】図3においてV−Vで示す部分の矢視図である。
【符号の説明】
【0038】
10 幼児用靴、11 靴底、12 下部アッパー部、13 舌片(甲皮部)、14 側皮部、15 接続バンド、16 取付け部、20 上部アッパー部、21 足首保持部、22 踵回り保持部、27 固定部、31、32、33、34 平面ファスナ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴底と、その上に位置し足首まで覆う高さを有するアッパー部とを備えた靴において、
前記アッパー部は、
甲を覆う甲皮部と、踝を覆う高さを有し後方に向かって次第にその高さが減じられる左右の側皮部と、左右の側皮部を連結する後皮部とを含む下部アッパー部と、
前記下部アッパー部の上方領域に重なる位置から足首を覆う高さを有し、その一端が前記下部アッパー部の一方の側皮部に接続され、その途中領域が順に前記下部アッパー部の一方の側皮部上、後皮部上、他方の側皮部上に部分的に重なり、その他端が前記一端上に着脱可能に接続される上部アッパー部とを備えることを特徴とする、靴。
【請求項2】
前記上部アッパー部の他端が前記一端上に接続されたとき、前記上部アッパー部の、下部アッパー部に重なる、一方の側皮部上、後皮部上、他方の側皮部上の部分は、前記一端上に接続される他端よりも高い位置まで延在する、請求項1に記載の靴。
【請求項3】
前記上部アッパー部と、前記下部アッパー部の一方の側皮部上、後皮部上、他方の側皮部上との部分的に重なる部分の寸法は、後皮部の高さの1/2以上である、請求項1または2に記載の靴。
【請求項4】
前記下部アッパー部の他方の側皮部上に部分的に重なる部分には、前記下部アッパー部と上部アッパー部とを接続する接続部が設けられ、前記接続部は、前記下部アッパー部の面の外部に設けられる、請求項3に記載の靴。
【請求項5】
前記左右の側皮部は、接続バンドで接続される、請求項1から4のいずれかに記載の靴。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−25856(P2006−25856A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204921(P2004−204921)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(390006231)アップリカ育児研究会アップリカ▲葛▼西株式会社 (97)
【Fターム(参考)】