説明

音の伝搬状態を可視化する装置

【課題】音源の方向に加えて音源の奥行き方向の広がりを把握することを可能にする。
【解決手段】集音器(パラボラ反射器)1と、複数の音/光変換器20を3次元マトリクス状に配列してなる音/光変換器群2と、音/光変換器群2を集音器1による音波の収束点近傍に支持する支持手段3とを組み合わせて音源探査支援装置を構成し、複数の音/光変換器20の各々は音/光変換器群2を集音器1の回転対称軸方向の視座から見たときに互いに重なり合わないように配列されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音の伝搬状態を可視化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術の一例としては、特許文献1に開示された音源探査装置が挙げられる。この音源探査装置は、パラボラ反射器と、このパラボラ反射器により収束させた音を収音する2次元マイクロホンアレイとを含んでいる。特許文献1に開示された技術では、2次元マイクロホンアレイを構成する各マイクロホンの出力信号(マイクロホンにより収音された音の波形を示すアナログ信号)にデジタル処理を施して等高線で表示したり、各マイクロホンに対応させて発光ダイオードを配列した2次元発光ダイオードアレイの各発光ダイオードを対応するマイクロホンの出力信号の振幅(音圧)に応じた輝度で発光させることで、2次元マイクロホンアレイのアレイ面に沿った音圧分布が可視化される。このようにして可視化される音圧分布を手掛りとして、探査対象の音源から放射された音波の到来方向(すなわち、音源探査装置から見た音源の方向)を推定することができるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平4−35716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような音源探査を行う場合、音源探査装置から見た音源の方向に加えて奥行き方向(例えば、マイクロホンアレイのアレイ面が音源に正対している場合には、当該アレイ面の法線方向)の音源の広がり具合を把握することができると音源探査の精度が一層向上すると考えられる。しかし、特許文献1に開示された技術では、音源の方向に加えて音源の奥行き方向の広がり具合を把握することはできない。何故ならば、特許文献1に開示された技術では、探査対象の音源から放射された音を2次元マイクロホンアレイを用いて収音しているため、音源の奥行き方向の広がりに関する情報を得ることはできないからである。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みて為されたものであり、音源の方向に加えて音源の奥行き方向の広がりを把握することを可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、(A)入射音を進行に伴って収束する音波にして出力する集音器と、(B)マイクロホンと、発光部と、前記マイクロホンの出力信号の瞬時値に応じた輝度で前記発光部を発光させる発光制御部とを各々が有する複数の音/光変換器を3次元的に配列してなる音/光変換器群と、(C)前記音/光変換器群を前記集音器の出力する音波の経路上に支持する支持手段と、を備え、(D)前記支持手段によって支持されている前記音/光変換器群を所定の視座から見た場合に、前記複数の音/光変換器の各々が互いに重なり合わないように配列されていることを特徴とする音の伝搬状態を可視化する装置を提供する。なお、複数の音/光変換器を3次元的に配列する態様(複数の音/光変換器の全てが同一平面上に並ばないように配列する態様)の一例としては、それら複数の音/光変換器の各々を3次元マトリクス状に配列する態様が考えられる。
【0007】
本発明の装置においては、集音器から出力される音波の経路上には音/光変換器群が支持手段によって支持されており、当該音/光変換器群を構成する複数の音/光変換器の各々はその配置位置における音圧に応じた輝度で発光する。このため、本発明に係る音の伝搬状態を可視化する装置を用いて音源探査を行い、音/光変換器群を構成する各音/光変換器が発光する様子を上記所定の視座から観察(或いは、上記所定の視座に設置した撮像装置により撮像した画像を解析)するようにすれば、各音/光変換器は互いに重なり合わないため、上記観測者は、各音/光変換器の発光の様子を漏れなく把握することができ、音/光変換器群における発光輝度の3次元的な分布から探査対象の音源の方向および奥行方向の広がり具合を立体的に把握することができる。
【0008】
より好ましい態様においては、前記支持手段は、前記集音器からの距離を調整可能なように前記音/光変換器群を支持することを特徴とする。このような態様によれば、集音器による音の収束点近傍に音/光変換器群2を配置することができる。収束点近傍では集音器から出力される音波は充分に収束しているため、当該収束点近傍に音/光変換器群を配置することができると、集音器に対向する面の面積が小さい音/光変換器群を用いて当該集音器から出力される音波を漏れなく可視化することができる。つまり、このような態様によれば、音/光変換器群を小型化し、当該音/光変換器群を含む音の伝搬状態を可視化する装置全体を小型化できると期待される。
【0009】
また、別の好ましい態様においては、音/光変換器群に含まれる複数の音/光変換器は前記所定の視座から見たとき互いに重なり合わないもの同士でグループ分けされており、グループ毎に発光色または発光タイミングが異なっていることを特徴とする。具体的には、複数の音/光変換器の各々は、前記集音器の中心からの距離が同一または近似するもの同士で、または当該距離の前記集音器から出力される音波の経路(集音器がパラボラ反射器であれば、その回転対称軸方向)への射影の長さが同一または近似するもの同士でグループ分けされている、といった具合である。このような態様によれば、音/光変換器群を構成する複数の音/光変換器のなかに、上記方向の視座から見たときの配置位置が互いに重なり合う(或いは部分的に重なり合う)ものが含まれていたとしても、発光色または発光タイミングの相違を手掛かりに音/光変換器群に含まれる全ての音/光変換器の発光の様子を漏れなく観測することができる。
【0010】
また、音/光変換器群を構成する複数の音/光変換器を上記のようにグループ分けし、グループ毎に発光色または発光タイミングを異ならせることによって音/光変換器群を構成する全ての音/光変換器の発光の様子を漏れなく観測することができる場合には、必ずしも各音/光変換器20を互いに重なり合わないように配列する必要はない。つまり、本発明の別の態様としては、上記(A)、(B)および(C)の各構成要素を備えた音源探査支援装置において、(D)音/光変換器群に含まれる複数の音/光変換器を所定の視座から見た場合に互いに重なり合わないもの同士が同一グループに属するようにグループ分けしておき、グループ毎に発光色または発光タイミングを異ならせる態様も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態の音源探査支援装置の左側面図である。
【図2】同音源探査支援装置の正面図である。
【図3】同音源探査支援装置の構成要素である音/光変換器群2を構成する音/光変換器20の構成例を示す図である。
【図4】同音源探査支援装置における音/光変換器群2の装着態様、および同音/光変換器群2を支持する支持手段3の構成例を示す図である。
【図5】同音源探査支援装置の集音器1による集音の様子を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態を説明するための図である。
【図7】本発明の変形例を説明するための図である。
【図8】本発明の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
(A:第1実施形態)
(A−1:構成)
図1は、本発明による音の伝搬状態を可視化する装置の第1の実施形態の音源探査支援装置の左側面図であり、図2は同音源探査支援装置の正面図である。図1および図2に示すように、この音源探査支援装置は、集音器1、音/光変換器群2および支持手段3を含んでいる。集音器1は、回転放物面状の反射面1aを有するパラボラ反射器である。この集音器1は、入射音を進行に伴って収束する音波(反射面1aの回転対称軸C上の一点で交差するように進行する音波)にして出力する。音/光変換器群2は、集音器1から出力される音波の経路上に支持手段3によって支持されている。より詳細に説明すると、本実施形態の音源探査支援装置では、音/光変換器群2は反射面1aと対向するように同反射面1aの回転対称軸C上に支持されている。この音/光変換器群2は複数の音/光変換器20を3次元マトリクス状に配列して構成されており、これら音/光変換器20の各々は、その配置位置における音圧の瞬時値を計測し、その瞬時値に応じた輝度で発光するデバイスである。
【0013】
図3は、音/光変換器20の構成例を示す図である。図3に示すように、音/光変換器20は、マイクロホン110、発光制御部120、および発光部130を有している。図3では詳細な図示は省略したが、音/光変換器20は、図3に示す各構成要素を一辺が1cm程の基板に集積されて構成されている。マイクロホン110は、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical
Systems)マイクロホンや小型ECM(Electret Condenser Microphone)であり、収音した音の波形を表す音信号を出力する。発光制御部120は、図3に示すように、サンプルホールド回路122と電圧電流変換回路124を含んでいる。これらサンプルホールド回路122および電圧電流変換回路124としては周知の構成のものを用いるようにすれば良い。サンプルホールド回路122は、外部から与えられる制御信号SSの立上がりを契機として、マイクロホン110から出力される音信号のサンプリングを行い、サンプリングされた瞬時値(電圧)を次に制御信号SSが立上がるまで保持するとともに、その電圧を電圧電流変換回路124に印加する。電圧電流変換回路124は、サンプルホールド回路122から印加される電圧に比例した電流値の電流を発生させ、発光部130に与える。発光部130は、例えば可視光LEDであり、電圧電流変換回路124から与えられる電流の大きさに応じた輝度の可視光を放射する。
【0014】
図4(a)は、音/光変換器群2の外観、および同音/光変換器群2を支持する支持手段3の構成例を示す図である。本実施形態の音/光変換器群2は、中空の立方体状に形成された筐体2aに8個の音/変換機20を配置して構成されている。より詳細に説明すると、音/光変換器群2の筐体2aを形成する6つの面は透明樹脂等で形成されており、これら6つの面のうち互いに対向する1組の面は図4(a)に示すような4×4のメッシュ状に形成されている。図4(a)に示すように、音/光変換器群2は、これら2つのメッシュ状の面のうちの一方が反射面1aに対向するように支持手段3によって支持される。以下、上記2つのメッシュ状の面のうち、反射面1aに対向する面を「音/光変換器群2の裏面」と呼び、他方の面を「音/光変換器群2の正面」と呼ぶ。音/光変換器群2に含まれる8個の音/光変換器20は、音/光変換器群2の正面と同裏面に各4個ずつ配置されている。
【0015】
図4(b)は、音/光変換器群2を裏面側から見た図である。以下では、図4(b)に示すように、左上隅を(1,1,1)、右下隅を(4,4,1)とする16通りのインデックス(i,j,1)(i=1〜4、j=1〜4)を用いて音/光変換器群2の裏面側に形成されている4×4の網目の各々を識別する。図4(b)に示すように、音/光変換器群2の裏面側に配置される4つの音/光変換器20の各々は、インデックス(1,1,1)、(1,4,1)、(4,1,1)および(4,4,1)により識別される各網目にそれぞれ1つずつはめ込まれている。図4(c)は、音/光変換器群2を正面側から見た図である。図4(c)に示すように、音/光変換器群2の正面側に配置される4つの音/光変換器20の各々は、インデックス(2,2,2)、(2,3,2)、(3,2,2)および(3,3,2)により識別される各網目にそれぞれ1つずつはめ込まれている。なお、図4(b)のインデックス(i,j,1)と図4(c)のインデックス(i,j,2)とは互いに表裏の関係にある。図4(c)では、音/光変換器群2の裏面側に配置されている4つの音/光変換器20が点線で描画されている。図4(c)を参照すれば明らかように、上記8個の音/光変換器20は所定方向(例えば、回転対称軸C方向)の視座から見たときに互いに重なり合わないように配列されている。このように、所定方向の視座から見たときに互いに重なり合わないように各音/光変換器20を配列した理由は以下の通りである。
【0016】
仮に、音/光変換器群2の正面側に配置される4つの音/光変換器20の各々を、インデックス(1,1,2)、(1,4,2)、(4,1,2)および(4,4,2)により識別される各網目(図4(c)にて、裏面側に配置される音/光変換器20を表す点線丸印が描かれている網目)にそれぞれ1つずつはめ込んだとすると、上記所定方向の視座から音/光変換器群2の正面を見たときに、音/光変換器群2の裏面側に配列される4つの音/光変換器20の各々は同正面側に配列される4つの音/光変換器20の各々の陰に隠れてしまい、裏面側に配列されている4つの音/光変換器20の各々が発光する様子を視認できなくなってしまう場合がある。これに対して、図4(c)に示すように、所定方向の視座から見たときに、各音/光変換器20が互いに重なり合わないように配列しておけば、音/光変換器群2に含まれている8個の音/光変換器20の各々が発光する様子を漏れなく視認することができ、音/光変換器群2における発光輝度の3次元的な空間分布を通じで、集音器1から出力される音波の音/光変換器群2の配置位置における音圧分布を立体的に把握することできるのである。これが、所定方向の視座から見たときに互いに重なり合わないように各音/光変換器20を配列した理由である。なお、本実施形態では、8個の音/光変換器20を4個ずつ2層の3次元マトリクス状に配列して音/光変換器群2を構成したが、4〜7個の音/光変換器20を3次元的に配列して音/光変換器群2を構成しても良く、また、9個以上の音/光変換器20を3次元的に配列して音/光変換器群2を構成しても良い。また、複数の音/光変換器20を積層する際の層数は3以上であっても勿論良い。
【0017】
前述したように、音/光変換器群2は、支持手段3によって、その裏面が反射面1aに対向するように支持される。図4(a)に示すように、支持手段3は、4本の脚状部材3a、これら4本の脚状部材3aのうちの上下各一対のものの間を連結する連結部材3b、各連結部材3bの間を架け渡す架橋部材3c、上記2本の連結部材3bに各々固着されたガイド部材3e、ガイド部材3eによって摺動自在に挟持される架台3d、および架台3dに螺挿されたねじ軸3fからから構成されている。4本の脚状部材3aの各々は、反射面1aに設けられたフック(図示略)に各々の先端を係合させることで、集音器1に着脱自在に装着される。これら4本の脚状部材3aのうちの少なくとも1本は中空のパイプ状に形成されており、当該パイプ状に形成された脚状部材3aには、制御信号SSを伝送するための信号線4が挿通されている。前掲図1に示すように、ねじ軸3fは、反射面1aの回転対称軸C方向に反射面1aに向って延在しており、その先端は反射面1aを貫通している。図4(a)に示すように、架台3dには音/光変換器群2が反射面1aに対向するように載置されており、ねじ軸3fを螺回させることによって、架台3d(およびこの架台3dに載置されている音/光変換器群2)を図中のX方向(反射面1aに近づく方向)、或いは同Y方向(反射面1aから遠ざかる方向)に移動させることができる。このように、音/光変換器群2と反射面1aとの間の距離をねじ軸3fの螺回によって調整できるようにした理由は以下の通りである。
【0018】
前述したように本実施形態の集音器1はパラボラ反射器であり、入射音を進行に伴って収束する音波(より正確には、回転対称軸C上の1点で交差する音波)として出力する機能を有している。図5は、集音器1による音波の集音の様子を示す図である。図5に示すように、反射面1aとその焦点Fとの距離がfであり、反射面1aと音源S0との距離がaであり、集音器1によって集音された音波の収束点Pが反射面1aから距離bだけ隔てた位置にある場合、上記a、bおよびf間には、以下の式(1)に示す関係がある。
1/b+1/a=1/f・・・(1)
【0019】
式(1)を参照すれば明らかように、探査対象の音源と反射面1aとの間の距離aに応じて反射面1aから収束点Pまでの距離bは変化する。具体的には、探査対象の音源S0が反射面1aから遠くにあるほど、反射面1aから収束点Pまでの距離は短くなり、音源S0が充分に遠くに位置している(すなわち、a=∞)と、収束点Pは焦点Fに一致する。集音器1によって集音された音の音圧分布を、反射面1aに対向する面積が小さい音/光変換器群2によって精度良く可視化するためには、音/光変換器群2を上記収束点近傍に位置させておくことが好ましい。このため、本実施形態では、音/光変換器群2と反射面1aとの間の距離をねじ軸3fの螺回によって調整できるようにしたのである。
以上が本実施形態の音源探査支援装置の構成である。
【0020】
(A−2:本実施形態の音源探査支援装置の使用方法)
次いで、本実施形態の音源探査支援装置の使用方法について説明する。
図1および図2に示す音源探査支援装置を用いて音源の探査を行う場合、ユーザは、まず、探査対象の音源が存在する空間内に当該音源探査支援装置を設置する。なお、探査対象の音源が存在する空間内に音源探査支援装置を設置する際には、反射面1aの回転対称軸Cが音源探査支援装置から見た音源の方向に一致するように配置することが好ましいが、音源探査を行う前に音源の方向を知ることはできない。このため、トライアンドエラー的に音源探査支援装置の向き(回転対称軸Cの方向)を変えつつ音源探査を行うようにすることが考えられる。
【0021】
次いで、ユーザは、ねじ軸3fを操作して反射面1aに対する音/光変換器群2の位置を定める。例えば、反射面1aの中心からの距離がa1乃至a2(a1<a2)の範囲内に探査対象の音源があると想定される場合には、ユーザは反射面1aと音/光変換器群2との距離が以下の式(2)に示すb1乃至b2(b1<b2)の範囲に収まるように、ねじ軸3fを操作する、といった具合である。以下の式(2)においても、前掲式(1)と同様、fは反射面1aから同反射面1aの焦点Fまでの距離である。
b1=a2×f/(a2−f),b2=a1×f/(a1−f)・・・(2)
【0022】
以上のようにして音源探査支援装置の設置、および音/光変換器群2と反射面1aとの間の距離の調整を終えると、ユーザは制御装置(図示略)を操作し、音/光変換器群2を構成する音/光変換器20の各々に制御信号SSを与える。一方、探査対象の音源から放射された音波は集音器1の反射面1aによる反射を経て収束点Pにおいて交差するように進行する。当該収束点Pの近傍に音/光変換器群2が支持されていると、当該音/光変換器群2を構成する複数の音/光変換器20の各々は、その配置位置における音圧の瞬時値を制御信号SSの立上がりに同期させてサンプリングし、そのサンプリング結果に応じた輝度で発光部130を発光させる。この発光の様子を回転対称軸C方向に設置した撮像装置を用いて撮像すれば、上記ユーザは、その撮像画像(或いは、当該撮像画像を適宜拡大して得られる画像)に表されている音/光変換器群2における発光輝度の3次元的な空間分布から探査対象の音源の方向および奥行き方向の広がりを把握することができるのである。本実施形態によれば、各音/光変換器20において計測された音圧の空間分布を表す画像を液晶ディスプレイなどに2次元的に表示させる態様に比較して、直感的に把握し易く、また、3次元→2次元変換等の演算を行う必要もない。なお、音/光変換器群2における各音/光変換器20の発光の様子を肉眼で把握することができる場合には、上記のような撮像を行う必要はない。
【0023】
(B:第2実施形態)
上記第1実施形態では、本発明による音の伝搬状態を可視化する装置を音源探査に利用する場合について説明した。しかし、本発明による音の伝搬状態を可視化する装置の用途は音源探査に限定されるものではなく、音源分離に利用することも可能である。具体的には、図6に示すように4つの音源(音源S1〜S4)が配置されている音響空間内に本実施形態の音の伝搬状態を可視化する装置(音源分離装置)を配置し、以下の手順の操作を行うことにより、音源分離を行うことができる。なお、本実施形態の音源分離装置の構成は、音/光変換器群2を構成する各音/光変換器20のマイクロホンの出力信号を外部に取り出す(例えば、録音装置等に与えるなど)ことが可能である点を除いて上記第1実施形態の音の伝搬状態を可視化する装置(図1および図2に示す音源探査支援装置)の構成と同一であるため、構成についての詳細な説明は省略する。また、以下の説明において、当該音源分離装置の各構成要素を引用する際には、第1実施形態におけるものと同一の符号を用いる。
【0024】
本実施形態の音源分離装置を用いて、図6に示す4つの音源(音源S1〜S4)の各々から放射される音の分離を行おうとするユーザは、まず、図6の音源S1のみに音を放射させ、この状態で制御信号SSを各音/光変換器20に与える。すると、各音/光変換器20は、その配置位置における音圧の瞬時値を制御信号SSの立上がりに同期してサンプリングし、そのサンプリング結果に応じた輝度で発光部130を発光させる。ユーザは、この発光の様子を撮像装置を用いて撮像し、その撮像画像(或いは、当該撮像画像を適宜拡大して得られる画像)から発光輝度が所定の閾値を上回っている音/光変換器20(或いは、最も発光輝度の高い音/光変換器20)を特定し、このように特定された音/光変換器20を音源S1に対応付ける。以下、音源S2〜S4の各々についても同様の操作を行って音/光変換器20の対応付けを行う。例えば、音源S1のみに音を放射させた場合にインデックス(1,1,1)に配置されている音/光変換器20の発光輝度が最も高い場合には、当該音/光変換器20を音源S1に対応付け、音源S2のみに音を放射させた場合にインデックス(2,2,2)に配置されている音/光変換器20の発光輝度が最も高い場合には、当該音/光変換器20を音源S1に対応付ける、といった具合である。そして、このような対応付けが完了した後に音源S1〜S4の各々に一斉に音を放射させ、各音源に対応付けられた音/光変換器20毎にマイクロホン110の出力信号を外部に取り出して各々別個に記録すれば、音源S1〜S4の各々から放射された音の合成音を音源毎に分離して記録する音源分離が実現されるのである。なお、このようにして音源分離された音信号の各々を適宜ミキシングして左右各1チャネルのステレオオーディオ信号、或いは5.1チャネルのオーディオ信号を生成するようにしても良いことは勿論である。また、上記撮像装置として高速度カメラを用い、かつ制御信号SSとして充分に周期の短い矩形波信号を用いるようにすれば、音/光変換器群2における各音/光変換器20の発光の様子を上記高速度カメラを用いて録画することで、音源S1〜S4の各々から放射された音の合成音を音源毎に分離して記録する音源分離が実現される。高速度カメラにより撮像された各音/光変換器20の発光輝度の時間変化から音圧の時間変化(すなわち、音波形)を再現することができるからである。なお、本実施形態では4つの音源の音源分離を行う場合について説明したが分離対象の音源の数が2または3、或いは5以上であっても良いことは勿論である。
【0025】
(C:変形)
以上本発明の各実施形態について説明したが、これら実施形態を以下のように変形しても勿論良い。
(1)上述した各実施形態では、1つの音源探査支援装置(音源分離装置)を用いて音源探査(音源分離)を行う場合について説明したが、複数の音源探査支援装置(音源分離装置)を用いて音源探査(音源分離)を行っても勿論良い。具体的には、探査対象の音源(または音源分離の対象となる複数の音源)がある空間内の互いに異なる位置に複数の音源探査支援装置(音源分離装置)を配置し、それら音源探査支援装置(音源分離装置)の各々に対して上記各実施形態におけるものと同一手順の操作を行って音源探査(音源分離)を行えば良い。
【0026】
(2)上述した実施形態では集音器1としてパラボラ反射器を用いたが、パラボラ反射器に換えて音響凸レンズやホーンを用いても良い。要は、入射音を進行に伴って収束する音波にして出力する機能を有するものであれば、集音器1として用いることができる。なお、集音器として音響凸レンズを用いる場合には、図7(a)に示すように、音源と集音器とを結ぶ軸線C上において、音源とは反対側に音/光変換器群を配置すれば良い。集音器として音響凸レンズを用いる場合においても、集音器と音源との間の距離a、集音器から音の収束点(当該収束点は、集音器1から見て音源とは反対側に生じる)までの距離b、および集音器からその焦点までの距離fの間には前掲式(1)に示す関係が成り立つ。したがって、集音器の中心からの距離がa1乃至a2(a1<a2)の範囲内に探査対象の音源があると想定される場合には、集音器1の中心と音/光変換器群2との距離が前掲式(2)に示すb1乃至b2(b1<b2)の範囲に収まるように音/光変換器群を集音器から見て音源とは反対側に配置すれば良い。
【0027】
また、図7(a)では、1つの音響凸レンズを用いて集音器を構成したが、図7(b)に示すように複数の音響凸レンズを同軸上に並べて集音器を構成しても良く、また、図7(c)に示すように、音響凸レンズとパラボラ反射器とを同軸上に並べて集音器を構成しても良い。このように、複数の音響凸レンズを組み合わせて構成された集音器、或いは音響凸レンズとパラボラ反射器を組み合わせて構成された集音器によっても、入射音を進行に伴って収束する音波にして出力することができるからである。
【0028】
(3)上述した実施形態では、複数の音/光変換器20を3次元マトリクス状に配列して音/光変換器群2を構成した。しかし、例えば、4個の音/光変換器20により音/光変換器群2を構成する場合には各音/光変換器20を頂点として正四面体を為すようにそれら4個の音/光変換器20を配置しても良い。また、球体或いは球面を形成するように複数の音/光変換器20を配列して音/光変換器群2を構成しても良い。ただし、球体或いは球面を形成するように複数の音/光変換器20を配列して音/光変換器群2を構成する場合であっても、所定方向の視座から観たときに各音/光変換器20が互いに重なり合わないように各音/光変換器20を配列することが好ましいことは言うまでもない。
【0029】
また、透明な素材を扁平な立方体状に形成した筐体の1つの面(図8(a)に示す例では、2つの正方形状の面のうちの1つ)の中心にマイクロホン110を配置し、当該面の4隅のうちの1つと当該中心とを結ぶ線分(図8(a)では、点線で当該線分を明示)上に発光部130を配置して音/光変換器20を構成し、図8(b)に示すように、マイクロホン110から見た発光部130の配置位置が互いに異なるように4個の音/光変換器20を積層して音/光変換器群2を構成しても良い。また、図8(c)に示すように、透明な素材を扁平な立方体状に形成した筐体の1つの面(図8(a)に示す例では、2つの正方形状の面のうちの1つ)の中心と当該面の外周を成す4辺のうちの1つの辺の中点とを結ぶ線分(図8(a)と同様に点線で当該線分を明示)上に発光部130を配置して音/光変換器20を構成しても良く、図8(a)に示す態様の音/光変換器20と図8(c)に示す態様の音/光変換器20とを組み合わせて音/光変換器群2を構成しても良い。例えば、図8(a)に示す態様の音/光変換器20と図8(c)に示す態様の音/光変換器20とを組み合わせて音/光変換器群2を構成する場合には、音/光変換器20の中心を通る軸線方向から見たときに、各音/光変換器20の発光部130が互いに重なり合わないような態様で8層まで音/光変換器20を積層することができる。また、図8(a)或いは図8(c)に示す態様で音/光変換器20を提供する場合には、マイクロホン110と発光部130との間の距離が互いに異なる複数種類の音/光変換器20を提供するようにしても良い。このような態様によっても、音/光変換器20を積層して音/光変換器群2を構成する際に、各音/光変換器20の発光部130が互いに重なり合わないように積層することが可能な層数を増加させることができる。
【0030】
さらに、図8(d)に示すように、透明な素材を扁平な立方体状に形成した筐体の1つの正方形状の面に、当該正方形の一辺と同じ長さ(或いは、やや短い長さ)の直径を有する円盤状部材を各々の中心を一致させつつ回転自在に装着し、当該円盤状部材の中心にマイクロホン110を設置し、当該円盤状部材の中心以外の位置に発光部130を配置して音/光変換器20を構成しても良い。図8(d)に示す態様の音/光変換器20では、配置位置を円盤状部材を回転させることによって、上記正方形の各辺(または、各角)に対する発光部130の相対的な配置位置を任意に調整することができるため、任意の層数の音/光変換器20を積層して音/光変換器群2を構成することが可能になる。
【0031】
(4)上述した実施形態では、音/光変換器群2を構成する全ての音/光変換器20の発光の様子を漏れなく観測することできるようするために、所定方向の視座から見たときに互いに重なり合わないように各音/光変換器20を配列した。しかし、所定方向の視座から見たときに互いに重なり合わないように各音/光変換器20を配列することに加えて、集音器1の中心からの距離または当該距離の回転対称軸Cへの射影(すなわち、集音器1から出力される音波の進行方向への射影)の長さが同一または近似するもの同士で各音/光変換器20をグループ分けしておき、グループ毎に発光色または発光タイミングを異ならせるようにしても良い。
【0032】
例えば、前述した第1および第2実施形態におけるもののように8個の音/光変換器20を3次元マトリクス状に配列して音/光変換器群2が構成されており、かつ、集音器1の中心からの距離の回転対称軸Cへの射影の長さが同一または近似するもの同士で各音/光変換器20をグループ分けする場合には、正面側に配列される音/光変換器20と同裏面側に配列される音/光変換器20とで発光色を異ならせる(前者については発光部130として赤色LEDを用い、後者については青色LEDを用いる等)、または、後者の音/光変換器20に比較して前者の音/光変換器20の発光タイミングを一定時間分だけ遅らせる、といった具合である。このような態様によれば、図7(d)に示すように、音/光変換器群2の正面側に配列される音/光変換器20と同裏面側に配列される音/光変換器20とが部分的に重なりあっている場合であっても、音/光変換器群2を構成する全ての音/光変換器20の発光の様子を漏れなく観測することができると期待される。なお、音/光変換器群2を構成する複数の音/光変換器20を、所定方向の視座から見た場合に互いに重なり合わないものが同一グループに属するようにグループ分けしておき、かつグループ毎に発光色または発光タイミングを異ならせるようにすることのみで音/光変換器群2を構成する全ての音/光変換器20の発光の様子を漏れなく観測することができる場合には、必ずしも各音/光変換器20を互いに重なり合わないように配列する必要はない。
【0033】
(5)上述した実施形態では、外部から与えられる制御信号SSの立上がりに同期させて各音/光変換器20のサンプルホールド回路122にマイクロホン110の出力信号のサンプリングを実行させたが、同信号SSの立下りに同期させて同サンプリングを実行させても良い。また、音/光変換器群2を構成する複数の音/光変換器20の何れかのマイクロホン110の出力信号が所定の閾値を上回ったことを契機として各音/光変換器20に制御信号SSを与える制御信号出力手段を音/光変換器群2に組み込んでも勿論良い。また、外部から与えられる制御信号に同期させてマイクロホン110の出力信号をサンプリングするのではなく、音/光変換器20の内部にて自動的にサンプリングを実行するようにしても勿論良い。
【0034】
(6)上述した実施形態では、集音器1と、この集音器1から出力される音の経路上に支持される音/光変換器群2との間の距離をねじ軸3fの螺回によって調整可能とし、音/光変換器群2が集音器1から出力される音波の収束点近傍に支持されるようにした。しかし、集音器1からの距離が変化しないように固定的に音/光変換器群2を集音器1から出力される音の経路上に支持するようにしても勿論良い。
【0035】
(7)上述した第1および第2実施形態では、サンプルホールド回路122から出力される電圧値を電圧電流変換回路124によってその電圧値に比例した電流値の電流に変換して発光部130に与えた。これにより、マイクロホン110により収音される音の音圧と発光部130の発光輝度の線形性が担保されるのであるが、このような線形性を必要としない場合には、電圧電流変換回路124を省略しても勿論良い。また、電圧電流変換回路124に換えてPWM変調回路やPDM変調回路を用いるとより好ましい。なお、PWM変調回路やPDM変調回路としては周知の構成のものを用いることが考えられる。また、電圧電流変換回路124に換えてPWM変調回路やPDM変調回路を用いる態様においては、PWM変調回路やPDM変調回路の前段にA/D変換器を設けておくことが好ましい。また、上述した実施形態では、サンプルホールド回路122を用いてマイクロホン110の出力信号の瞬時値をサンプルホールドしたが、サンプルホールド回路122を省略し、制御信号SSに同期させてマイクロホン110の出力信号の瞬時値を取得し、その瞬時値に応じた輝度で発光部130を発光させても良く、また、マイクロホン110の出力信号を電圧電流変換回路124に常に印加するようにしても良い。また、マイクロホン110の出力信号の信号強度が所定の閾値を上回ったことを契機として、マイクロホン110の出力信号を電圧電流変換回路124に印加して発光部130を発光させるようにしても良い。
【符号の説明】
【0036】
1…集音器、2…音/光変換器群、3…支持手段、20…音/光変換器、110…マイクロホン、120…発光制御部、122…サンプルホールド回路、124…電圧電流変換回路、130…発光部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)入射音を進行に伴って収束する音波にして出力する集音器と、
(B)マイクロホンと、発光部と、前記マイクロホンの出力信号の瞬時値に応じた輝度で前記発光部を発光させる発光制御部とを各々が有する複数の音/光変換器を3次元的に配列してなる音/光変換器群と、
(C)前記音/光変換器群を前記集音器の出力する音波の経路上に支持する支持手段と、
を備え、
(D)前記支持手段によって支持されている前記音/光変換器群を所定の視座から見た場合に、前記複数の音/光変換器の各々が互いに重なり合わないように配列されている
ことを特徴とする音の伝搬状態を可視化する装置。
【請求項2】
前記支持手段は、前記集音器からの距離を調整可能なように前記音/光変換器群を支持することを特徴とする請求項1に記載の音の伝搬状態を可視化する装置。
【請求項3】
前記複数の音/光変換器の各々は、前記集音器からの距離または当該距離の前記集音器から出力される音の経路への射影の長さが同一または近似するもの同士でグループ分けされており、グループ毎に発光色または発光タイミングが異なっていることを特徴とする請求項1または2に記載の音の伝搬状態を可視化する装置。
【請求項4】
前記複数の音/光変換器の各々は、前記マイクロホンの出力信号を外部へ送出可能なように構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1の請求項に記載の音の伝搬状態を可視化する装置。
【請求項5】
(A)入射音を進行に伴って収束する音波にして出力する集音器と、
(B)マイクロホンと、発光部と、前記マイクロホンの出力信号の瞬時値に応じた輝度で前記発光部を発光させる発光制御部とを各々が有する複数の音/光変換器を3次元的に配列してなる音/光変換器群と、
(C)前記音/光変換器群を前記集音器の出力する音波の経路上に支持する支持手段と、
を備え、
(D)前記音/光変換器群に含まれる複数の音/光変換器は、前記支持手段によって支持されている前記音/光変換器群を所定の視座から見た場合に互いに重なり合わないものが同一グループに属するように予めグループ分けされており、グループ毎に発光色または発光タイミングが異なっている
ことを特徴とする音の伝搬状態を可視化する装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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