音像頭外定位装置及び音像頭外定位方法
【課題】左、右チャンネルの仮想反射音の生成に必要な記憶手段を省容量化する
【解決手段】ヘッドホン着用者の頭部を基準にして仮想する任意の位置に音場を定位させるため、入力される左、右チャンネルのオーディオ信号それぞれに対して処理を行い、仮想音場から発生したオーディオ信号を算出する音像定位手段１０２，１０３と、前記入力される左、右チャンネルのオーディオ信号を加算して１チャンネルとしたオーディオ信号から、仮想音場空間における仮想反射音を左、右チャンネルそれぞれについて算出する仮想反射音発生手段１１１と、音像定位手段と仮想反射音発生手段から出力される左、右チャンネルのオーディオ信号をそれぞれ加算し、任意の仮想音場からのオーディオ信号を算出する加算手段１１２とを有する。
【解決手段】ヘッドホン着用者の頭部を基準にして仮想する任意の位置に音場を定位させるため、入力される左、右チャンネルのオーディオ信号それぞれに対して処理を行い、仮想音場から発生したオーディオ信号を算出する音像定位手段１０２，１０３と、前記入力される左、右チャンネルのオーディオ信号を加算して１チャンネルとしたオーディオ信号から、仮想音場空間における仮想反射音を左、右チャンネルそれぞれについて算出する仮想反射音発生手段１１１と、音像定位手段と仮想反射音発生手段から出力される左、右チャンネルのオーディオ信号をそれぞれ加算し、任意の仮想音場からのオーディオ信号を算出する加算手段１１２とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、オーディオ信号をヘッドホンにより聴取するとき、その音像を頭外の任意の位置に定位させる音像頭外定位装置及び音像頭外定位方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、オーディオ信号をヘッドホンにより聴取する際、その音像を頭外の任意の位置に定位させる手法として、左、右のチャンネルごとに入力するオーディオ信号に基づいて、仮想音場から発生する仮想スピーカ音と仮想反射音とを形成する方法が提案されている（例えば、特許文献１参照）。
【０００３】
図３は、上記従来の音像頭外定位方法を実現する音像頭外定位装置の内部構成を示す図である。適宜のオーディオ機器によって再生される左、右チャンネルのオーディオ信号を入力信号として（図中のＩＬ及びＩＲ）、この左、右チャンネルの入力信号がそれぞれ少なくとも２系統に分岐される。左、右チャンネルの各系統の信号から、ヘッドホン着用者の頭部を基準にして仮想する適宜の音場空間に仮想した左、右のスピーカ音と、その左、右の仮想スピーカから発された音の仮想音場空間における仮想反射音とを形成する。
【０００４】
つまり、左、右の仮想スピーカ音は、その音が直接音信号となるように直接音信号制御部（図中のＤSC）で処理され仮想スピーカ音信号を形成すると共に、仮想反射音は反射音信号となるように反射音信号制御部（図中のＥSC）で処理され仮想反射音信号を形成する。このようにして形成された左、右チャンネルの直接音信号と反射音信号が、左チャンネル用ミキサー及び右チャンネル用ミキサー（図中のＭL及びＭR）で混合され、左、右の各ミキサーの出力がヘッドホンの左、右の耳用スピーカにそれぞれ入力される。
【特許文献１】特開２０００−１１５８９９号公報（第３−６頁、第２図）
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
従来の音像頭外定位装置では、左、右のチャンネルごとに仮想反射音を形成するため、仮想反射音形成に用いるオーディオ信号の記憶手段が２つ必要であり、更に、仮想空間によっては、仮想反射音の継続時間を長くするために記憶手段の容量を増やす必要があり、そのため回路規模や演算量が増大して消費電力も増加するという課題があった。
【０００６】
本発明は、左、右チャンネルの仮想反射音の生成に必要な記憶手段を省容量化することができる音像頭外定位装置及び音像頭外定位方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
本発明の音像頭外定位装置は、ヘッドホン着用者の頭部を基準にして仮想する任意の位置に音場を定位させるため、入力される左、右チャンネルのオーディオ信号それぞれに対して処理を行い、仮想音場から発生したオーディオ信号を算出する音像定位手段と、前記入力される左、右チャンネルのオーディオ信号を加算して１チャンネルとしたオーディオ信号から、仮想音場空間における仮想反射音を左、右チャンネルそれぞれについて算出する仮想反射音発生手段と、前記音像定位手段と前記仮想反射音発生手段から出力される左、右チャンネルのオーディオ信号をそれぞれ加算し、任意の仮想音場からのオーディオ信号を算出する加算手段と、を有する。上記構成によれば、仮想反射音を形成するためのオーディオ信号はモノラルであるため、オーディオ信号を記憶する記憶手段は１つでよく、回路規模を小さくすることができる。
【０００８】
本発明において、前記仮想反射音発生手段は、任意の仮想音場空間の反射特性から特徴的な要素を抽出した左、右チャンネル個別の仮想反射音係数を用いて演算処理を行い、前記仮想反射音を算出する。上記構成によれば、仮想反射音係数を適用した演算を、同じ記憶手段に記憶されたモノラルのオーディオ信号に対して左、右個別に実行するため、同様に２つの記憶手段を設けなる必要がなく、回路規模を小さくすることができる。
【０００９】
本発明において、前記仮想反射音発生手段は、前記１チャンネルとしたオーディオ信号を記憶するための記憶手段と、記憶された当該オーディオ信号の最終オーディオ信号を所定のフィードバックゲイン値で乗算したオーディオ信号を、前記１チャンネルとしたオーディオ信号と加算して前記記憶手段にフィードバックするフィードバックループ手段とを有する。上記構成によれば、記憶手段の段数以上にオーディオ信号の保持時間を長くすることができる。
【発明の効果】
【００１０】
本発明によれば、仮想反射音係数を適用した演算をモノラルのオーディオ信号に対して１つの記憶手段で同時に実行して左、右の仮想反射音を形成するため、２つの記憶手段を設けなる必要がなく、回路構成を小規模化することができる。
【００１１】
また、本発明によれば、フィードバックループ手段により、記憶手段の段数以上にオーディオ信号の保持時間を長くすることができ、小規模の回路構成でも仮想反射音の継続時間を長期化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１２】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態に係る音像頭外定位装置について詳細に説明する。図１は、本発明の実施の形態における音像頭外定位装置の内部構成を示す図である。
【００１３】
音像頭外定位装置は、主に、左、右両チャンネル用の音像定位手段１０２及び１０３、仮想反射音発生手段１１１、直接音・仮想反射音加算手段１１２、などで構成される。
【００１４】
音像定位手段は、右チャンネル（以降、Ｒｃｈと称する）用のＲｃｈ用音像定位手段１０２と、左チャンネル（以降、Ｌｃｈと称する）用のＬｃｈ用音像定位手段１０３で構成され、オーディオ機器から出力される２チャンネルのオーディオ信号（Ｒｃｈオーディオ入力信号１００、Ｌｃｈオーディオ入力信号１０１）を入力とし、ヘッドホン着用者の頭部を基準にして仮想する任意の位置に音場を定位させるため、Ｒｃｈオーディオ入力信号１００及びＬｃｈオーディオ入力信号１０１それぞれに対して処理を行うことにより、仮想音場から発生したオーディオ信号を算出する。尚、音像定位処理は公知の手法を用いてよく、従って詳細な説明を省略する。
【００１５】
仮想反射音発生手段１１１は、その前方に設けたＲｃｈ・Ｌｃｈ入力加算器１１０でＲｃｈオーディオ入力信号１００とＬｃｈオーディオ入力信号１０１を加算して生成した１チャンネルのオーディオ信号から、仮想音場空間における仮想反射音を算出する。仮想反射音発生手段１１１の詳細構成については後述する。
【００１６】
直接音・仮想反射音加算手段１１２は、Ｒｃｈ直接音・仮想反射音加算器１１３及びＬｃｈ直接音・仮想反射音加算器１１４で構成され、Ｒｃｈ用音像定位手段１０２並びにＬｃｈ用音像定位手段１０３から出力されるオーディオ信号（Ｒｃｈメイン出力信号１０４、Ｒｃｈクロス出力信号１０５、Ｌｃｈクロス出力信号１０６、Ｌｃｈメイン出力信号１０７）と、仮想反射音発生手段１１１から出力されるオーディオ信号（Ｒｃｈ仮想反射音出力信号１０８、Ｌｃｈ仮想反射音出力信号１０９）とをそれぞれ加算する。この直接音・仮想反射音加算手段１１２により、仮想空間における任意の仮想音場から発せられるオーディオ信号（Ｒｃｈオーディオ出力信号１１５、Ｌｃｈオーディオ出力信号１１６）を出力することができる。
【００１７】
図２は、本発明の実施の形態における音像頭外定位装置の、仮想反射音発生手段１１１の詳細構成を示す図である。仮想反射音発生手段１１１は、主に、仮想反射音生成手段２０１、フィードバックループ手段２０２、記憶手段２０３、などで構成される。
【００１８】
仮想反射音生成手段２０１は、記憶手段２０３から任意の段数（ＭＲ１，ＭＲ２，…，ＭＲｎ，ＭＬ１，ＭＬ２，…，ＭＬｎ）における値に対して所定のゲイン値（Ｒ１，Ｒ２，…，Ｒｎ，Ｌ１，Ｌ２，…，Ｌｎ）を乗算して加算することによって各チャンネルの仮想反射音を算出する演算手段（Ｒｃｈ仮想反射音演算手段２０４、Ｌｃｈ仮想反射音演算手段２０５）で構成される。
【００１９】
フィードバックループ手段２０２は、記憶手段２０３の最終段（ＭEND）の値に対してフィードバック用のゲイン値（ＧＦＢ）を乗算するフィードバックゲイン乗算器２０６と、その出力を入力側の１チャンネルオーディオ入力信号２００と加算して記憶手段２０３に出力するフィードバック加算器２０７と、で構成される。
【００２０】
記憶手段２０３は、入力された１チャンネルオーディオ入力信号２００を一時的に蓄積する。
【００２１】
次に、上記構成の仮想反射音発生手段の動作について説明する。本発明の実施の形態における音像頭外定位装置では、記憶手段２０３から入力する段数（ＭＲ１，ＭＲ２，…，ＭＲｎ，ＭＬ１，ＭＬ２，…，ＭＬｎ）と、その段数における値に対して乗算するゲイン値（Ｒ１，Ｒ２，…，Ｒｎ，Ｌ１，Ｌ２，…，Ｌｎ）との組み合わせを演算手段（Ｒｃｈ仮想反射音演算手段２０４、Ｌｃｈ仮想反射音演算手段２０５）における仮想反射音係数と定義し、Ｒｃｈ用とＬｃｈ用それぞれにこの仮想反射音係数を適用する。
【００２２】
従って、図２に示すように、Ｒｃｈ・Ｌｃｈ入力加算器１１０から出力されて記憶手段２０３に入力した１チャンネルオーディオ入力信号２００に対して、Ｒｃｈ仮想反射音演算手段２０４は右チャンネル用の演算を行い、右チャンネル用の仮想反射音信号としてＲｃｈ仮想反射音出力信号２０８を出力する。同様に、Ｌｃｈ仮想反射音演算手段２０５は左チャンネル用の演算を行い、左チャンネル用の仮想反射音信号としてＬｃｈ仮想反射音出力信号２０９を出力する。このように、１チャンネルのオーディオ信号からでも左、右両方の仮想反射音を生成して出力することができる。
【００２３】
一方、Ｒｃｈ・Ｌｃｈ入力加算器１１０から出力されて記憶手段２０３に入力した１チャンネルオーディオ信号２００の最終段（ＭEND）の値に対して、フィードバックループ手段２０２は、フィードバックゲイン乗算器２０６でフィードバック用のゲイン値（ＧＦＢ）を乗算し、乗算値を再び記憶手段２０３に入力させる。このように、記憶手段の段数以上にオーディオ信号を保持できるようになり、仮想反射音の継続時間を記憶手段の容量以上に長期化させることができる。
【００２４】
次に、上記構成の音像頭外定位装置の動作について説明する。はじめに、オーディオ機器から出力された２チャンネルのオーディオ信号のうち、Ｒｃｈオーディオ入力信号１００に対して、Ｒｃｈ用音像定位手段１０２は、音像定位処理を行い、仮想音場から発生した直接音の右チャンネル用信号としてＲｃｈメイン出力信号１０４を出力する。また、Ｒｃｈクロス出力信号１０５も出力する。
【００２５】
同様に、Ｌｃｈオーディオ入力信号１０１に対して、Ｌｃｈ用音像定位手段１０３は、音像定位処理を行い、仮想音場から発生した直接音の左チャンネル用信号としてＬｃｈメイン出力信号１０７を出力する。また、Ｌｃｈクロス出力信号１０６も出力する。
【００２６】
一方、オーディオ機器から出力された２チャンネルのオーディオ信号のうち、Ｒｃｈ・Ｌｃｈ入力加算器１１０で加算処理が行われ、１チャンネルとされたオーディオ信号は、仮想反射音発生手段１１１で上述の仮想反射音発生処理を行い、右チャンネル用の仮想反射音としてＲｃｈ仮想反射音出力信号１０８を、左チャンネル用の仮想反射音としてＬｃｈ仮想反射音出力信号１０９を出力する。
【００２７】
次に、直接音・仮想反射音加算手段１１２のＲｃｈ直接音・仮想反射音加算器１１３は、Ｒｃｈ用音像定位手段１０２から出力されたＲｃｈメイン出力信号１０４と、Ｌｃｈ用音像定位手段１０３から出力されたＬｃｈクロス出力信号１０６と、仮想反射音発生手段１１１から出力されたＲｃｈ仮想反射音出力信号１０８を加算し、Ｒｃｈオーディオ出力信号１１５として出力する。
【００２８】
同様に、Ｌｃｈ直接音・仮想反射音加算器１１４は、Ｒｃｈ用音像定位手段１０２から出力されたＲｃｈクロス出力信号１０５と、Ｌｃｈ用音像定位手段１０３から出力されたＬｃｈメイン出力信号１０７と、仮想反射音発生手段１１１から出力されたＬｃｈ仮想反射音出力信号１０９を加算し、Ｌｃｈオーディオ出力信号１１６として出力する。
【００２９】
以上のように、本発明の実施の形態における音像頭外定位装置では、１つの記憶手段を用いて、１チャンネルのオーディオ信号から左、右両方の仮想反射音を生成して出力することができる。また、本発明の実施の形態における音像頭外定位装置では、記憶手段の段数以上にオーディオ信号を保持できるようになり、小規模の回路構成でも仮想反射音の継続時間を長期化することができる。
【産業上の利用可能性】
【００３０】
本発明の音像頭外定位装置及び音像頭外定位方法は、仮想反射音の算出において必要な記憶手段を省容量化することができ、また記憶手段の容量以上に仮想反射音の継続時間を長期化できるという効果を有し、携帯オーディオ機器やゲーム機器の立体音響装置等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【００３１】
【図１】本発明の実施の形態における音像頭外定位装置の内部構成を示す図
【図２】本発明の実施の形態における音像頭外定位装置の、仮想反射音発生手段の詳細構成を示す図
【図３】従来の音像頭外定位方法を実現する音像頭外定位装置の内部構成を示す図
【符号の説明】
【００３２】
１００ Ｒｃｈオーディオ入力信号
１０１ Ｌｃｈオーディオ入力信号
１０２ Ｒｃｈ用音像定位手段
１０３ Ｌｃｈ用音像定位手段
１０４ Ｒｃｈメイン出力信号
１０５ Ｒｃｈクロス出力信号
１０６ Ｌｃｈクロス出力信号
１０７ Ｌｃｈメイン出力信号
１０８ Ｒｃｈ仮想反射音出力信号
１０９ Ｌｃｈ仮想反射音出力信号
１１０ Ｒｃｈ・Ｌｃｈ入力加算器
１１１ 仮想反射音発生手段
１１２ 直接音・仮想反射音加算手段
１１３ Ｒｃｈ直接音・仮想反射音加算器
１１４ Ｌｃｈ直接音・仮想反射音加算器
１１５ Ｒｃｈオーディオ出力信号
１１６ Ｌｃｈオーディオ出力信号
２００ １チャンネルオーディオ入力信号
２０１ 仮想反射音生成手段
２０２ フィードバックループ手段
２０３ 記憶手段
２０４ Ｒｃｈ仮想反射音演算手段
２０５ Ｌｃｈ仮想反射音演算手段
２０６ フィードバックゲイン乗算器
２０７ フィードバック加算器
２０８ Ｒｃｈ仮想反射音出力信号
２０９ Ｌｃｈ仮想反射音出力信号
【技術分野】
【０００１】
本発明は、オーディオ信号をヘッドホンにより聴取するとき、その音像を頭外の任意の位置に定位させる音像頭外定位装置及び音像頭外定位方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、オーディオ信号をヘッドホンにより聴取する際、その音像を頭外の任意の位置に定位させる手法として、左、右のチャンネルごとに入力するオーディオ信号に基づいて、仮想音場から発生する仮想スピーカ音と仮想反射音とを形成する方法が提案されている（例えば、特許文献１参照）。
【０００３】
図３は、上記従来の音像頭外定位方法を実現する音像頭外定位装置の内部構成を示す図である。適宜のオーディオ機器によって再生される左、右チャンネルのオーディオ信号を入力信号として（図中のＩＬ及びＩＲ）、この左、右チャンネルの入力信号がそれぞれ少なくとも２系統に分岐される。左、右チャンネルの各系統の信号から、ヘッドホン着用者の頭部を基準にして仮想する適宜の音場空間に仮想した左、右のスピーカ音と、その左、右の仮想スピーカから発された音の仮想音場空間における仮想反射音とを形成する。
【０００４】
つまり、左、右の仮想スピーカ音は、その音が直接音信号となるように直接音信号制御部（図中のＤSC）で処理され仮想スピーカ音信号を形成すると共に、仮想反射音は反射音信号となるように反射音信号制御部（図中のＥSC）で処理され仮想反射音信号を形成する。このようにして形成された左、右チャンネルの直接音信号と反射音信号が、左チャンネル用ミキサー及び右チャンネル用ミキサー（図中のＭL及びＭR）で混合され、左、右の各ミキサーの出力がヘッドホンの左、右の耳用スピーカにそれぞれ入力される。
【特許文献１】特開２０００−１１５８９９号公報（第３−６頁、第２図）
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
従来の音像頭外定位装置では、左、右のチャンネルごとに仮想反射音を形成するため、仮想反射音形成に用いるオーディオ信号の記憶手段が２つ必要であり、更に、仮想空間によっては、仮想反射音の継続時間を長くするために記憶手段の容量を増やす必要があり、そのため回路規模や演算量が増大して消費電力も増加するという課題があった。
【０００６】
本発明は、左、右チャンネルの仮想反射音の生成に必要な記憶手段を省容量化することができる音像頭外定位装置及び音像頭外定位方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
本発明の音像頭外定位装置は、ヘッドホン着用者の頭部を基準にして仮想する任意の位置に音場を定位させるため、入力される左、右チャンネルのオーディオ信号それぞれに対して処理を行い、仮想音場から発生したオーディオ信号を算出する音像定位手段と、前記入力される左、右チャンネルのオーディオ信号を加算して１チャンネルとしたオーディオ信号から、仮想音場空間における仮想反射音を左、右チャンネルそれぞれについて算出する仮想反射音発生手段と、前記音像定位手段と前記仮想反射音発生手段から出力される左、右チャンネルのオーディオ信号をそれぞれ加算し、任意の仮想音場からのオーディオ信号を算出する加算手段と、を有する。上記構成によれば、仮想反射音を形成するためのオーディオ信号はモノラルであるため、オーディオ信号を記憶する記憶手段は１つでよく、回路規模を小さくすることができる。
【０００８】
本発明において、前記仮想反射音発生手段は、任意の仮想音場空間の反射特性から特徴的な要素を抽出した左、右チャンネル個別の仮想反射音係数を用いて演算処理を行い、前記仮想反射音を算出する。上記構成によれば、仮想反射音係数を適用した演算を、同じ記憶手段に記憶されたモノラルのオーディオ信号に対して左、右個別に実行するため、同様に２つの記憶手段を設けなる必要がなく、回路規模を小さくすることができる。
【０００９】
本発明において、前記仮想反射音発生手段は、前記１チャンネルとしたオーディオ信号を記憶するための記憶手段と、記憶された当該オーディオ信号の最終オーディオ信号を所定のフィードバックゲイン値で乗算したオーディオ信号を、前記１チャンネルとしたオーディオ信号と加算して前記記憶手段にフィードバックするフィードバックループ手段とを有する。上記構成によれば、記憶手段の段数以上にオーディオ信号の保持時間を長くすることができる。
【発明の効果】
【００１０】
本発明によれば、仮想反射音係数を適用した演算をモノラルのオーディオ信号に対して１つの記憶手段で同時に実行して左、右の仮想反射音を形成するため、２つの記憶手段を設けなる必要がなく、回路構成を小規模化することができる。
【００１１】
また、本発明によれば、フィードバックループ手段により、記憶手段の段数以上にオーディオ信号の保持時間を長くすることができ、小規模の回路構成でも仮想反射音の継続時間を長期化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１２】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態に係る音像頭外定位装置について詳細に説明する。図１は、本発明の実施の形態における音像頭外定位装置の内部構成を示す図である。
【００１３】
音像頭外定位装置は、主に、左、右両チャンネル用の音像定位手段１０２及び１０３、仮想反射音発生手段１１１、直接音・仮想反射音加算手段１１２、などで構成される。
【００１４】
音像定位手段は、右チャンネル（以降、Ｒｃｈと称する）用のＲｃｈ用音像定位手段１０２と、左チャンネル（以降、Ｌｃｈと称する）用のＬｃｈ用音像定位手段１０３で構成され、オーディオ機器から出力される２チャンネルのオーディオ信号（Ｒｃｈオーディオ入力信号１００、Ｌｃｈオーディオ入力信号１０１）を入力とし、ヘッドホン着用者の頭部を基準にして仮想する任意の位置に音場を定位させるため、Ｒｃｈオーディオ入力信号１００及びＬｃｈオーディオ入力信号１０１それぞれに対して処理を行うことにより、仮想音場から発生したオーディオ信号を算出する。尚、音像定位処理は公知の手法を用いてよく、従って詳細な説明を省略する。
【００１５】
仮想反射音発生手段１１１は、その前方に設けたＲｃｈ・Ｌｃｈ入力加算器１１０でＲｃｈオーディオ入力信号１００とＬｃｈオーディオ入力信号１０１を加算して生成した１チャンネルのオーディオ信号から、仮想音場空間における仮想反射音を算出する。仮想反射音発生手段１１１の詳細構成については後述する。
【００１６】
直接音・仮想反射音加算手段１１２は、Ｒｃｈ直接音・仮想反射音加算器１１３及びＬｃｈ直接音・仮想反射音加算器１１４で構成され、Ｒｃｈ用音像定位手段１０２並びにＬｃｈ用音像定位手段１０３から出力されるオーディオ信号（Ｒｃｈメイン出力信号１０４、Ｒｃｈクロス出力信号１０５、Ｌｃｈクロス出力信号１０６、Ｌｃｈメイン出力信号１０７）と、仮想反射音発生手段１１１から出力されるオーディオ信号（Ｒｃｈ仮想反射音出力信号１０８、Ｌｃｈ仮想反射音出力信号１０９）とをそれぞれ加算する。この直接音・仮想反射音加算手段１１２により、仮想空間における任意の仮想音場から発せられるオーディオ信号（Ｒｃｈオーディオ出力信号１１５、Ｌｃｈオーディオ出力信号１１６）を出力することができる。
【００１７】
図２は、本発明の実施の形態における音像頭外定位装置の、仮想反射音発生手段１１１の詳細構成を示す図である。仮想反射音発生手段１１１は、主に、仮想反射音生成手段２０１、フィードバックループ手段２０２、記憶手段２０３、などで構成される。
【００１８】
仮想反射音生成手段２０１は、記憶手段２０３から任意の段数（ＭＲ１，ＭＲ２，…，ＭＲｎ，ＭＬ１，ＭＬ２，…，ＭＬｎ）における値に対して所定のゲイン値（Ｒ１，Ｒ２，…，Ｒｎ，Ｌ１，Ｌ２，…，Ｌｎ）を乗算して加算することによって各チャンネルの仮想反射音を算出する演算手段（Ｒｃｈ仮想反射音演算手段２０４、Ｌｃｈ仮想反射音演算手段２０５）で構成される。
【００１９】
フィードバックループ手段２０２は、記憶手段２０３の最終段（ＭEND）の値に対してフィードバック用のゲイン値（ＧＦＢ）を乗算するフィードバックゲイン乗算器２０６と、その出力を入力側の１チャンネルオーディオ入力信号２００と加算して記憶手段２０３に出力するフィードバック加算器２０７と、で構成される。
【００２０】
記憶手段２０３は、入力された１チャンネルオーディオ入力信号２００を一時的に蓄積する。
【００２１】
次に、上記構成の仮想反射音発生手段の動作について説明する。本発明の実施の形態における音像頭外定位装置では、記憶手段２０３から入力する段数（ＭＲ１，ＭＲ２，…，ＭＲｎ，ＭＬ１，ＭＬ２，…，ＭＬｎ）と、その段数における値に対して乗算するゲイン値（Ｒ１，Ｒ２，…，Ｒｎ，Ｌ１，Ｌ２，…，Ｌｎ）との組み合わせを演算手段（Ｒｃｈ仮想反射音演算手段２０４、Ｌｃｈ仮想反射音演算手段２０５）における仮想反射音係数と定義し、Ｒｃｈ用とＬｃｈ用それぞれにこの仮想反射音係数を適用する。
【００２２】
従って、図２に示すように、Ｒｃｈ・Ｌｃｈ入力加算器１１０から出力されて記憶手段２０３に入力した１チャンネルオーディオ入力信号２００に対して、Ｒｃｈ仮想反射音演算手段２０４は右チャンネル用の演算を行い、右チャンネル用の仮想反射音信号としてＲｃｈ仮想反射音出力信号２０８を出力する。同様に、Ｌｃｈ仮想反射音演算手段２０５は左チャンネル用の演算を行い、左チャンネル用の仮想反射音信号としてＬｃｈ仮想反射音出力信号２０９を出力する。このように、１チャンネルのオーディオ信号からでも左、右両方の仮想反射音を生成して出力することができる。
【００２３】
一方、Ｒｃｈ・Ｌｃｈ入力加算器１１０から出力されて記憶手段２０３に入力した１チャンネルオーディオ信号２００の最終段（ＭEND）の値に対して、フィードバックループ手段２０２は、フィードバックゲイン乗算器２０６でフィードバック用のゲイン値（ＧＦＢ）を乗算し、乗算値を再び記憶手段２０３に入力させる。このように、記憶手段の段数以上にオーディオ信号を保持できるようになり、仮想反射音の継続時間を記憶手段の容量以上に長期化させることができる。
【００２４】
次に、上記構成の音像頭外定位装置の動作について説明する。はじめに、オーディオ機器から出力された２チャンネルのオーディオ信号のうち、Ｒｃｈオーディオ入力信号１００に対して、Ｒｃｈ用音像定位手段１０２は、音像定位処理を行い、仮想音場から発生した直接音の右チャンネル用信号としてＲｃｈメイン出力信号１０４を出力する。また、Ｒｃｈクロス出力信号１０５も出力する。
【００２５】
同様に、Ｌｃｈオーディオ入力信号１０１に対して、Ｌｃｈ用音像定位手段１０３は、音像定位処理を行い、仮想音場から発生した直接音の左チャンネル用信号としてＬｃｈメイン出力信号１０７を出力する。また、Ｌｃｈクロス出力信号１０６も出力する。
【００２６】
一方、オーディオ機器から出力された２チャンネルのオーディオ信号のうち、Ｒｃｈ・Ｌｃｈ入力加算器１１０で加算処理が行われ、１チャンネルとされたオーディオ信号は、仮想反射音発生手段１１１で上述の仮想反射音発生処理を行い、右チャンネル用の仮想反射音としてＲｃｈ仮想反射音出力信号１０８を、左チャンネル用の仮想反射音としてＬｃｈ仮想反射音出力信号１０９を出力する。
【００２７】
次に、直接音・仮想反射音加算手段１１２のＲｃｈ直接音・仮想反射音加算器１１３は、Ｒｃｈ用音像定位手段１０２から出力されたＲｃｈメイン出力信号１０４と、Ｌｃｈ用音像定位手段１０３から出力されたＬｃｈクロス出力信号１０６と、仮想反射音発生手段１１１から出力されたＲｃｈ仮想反射音出力信号１０８を加算し、Ｒｃｈオーディオ出力信号１１５として出力する。
【００２８】
同様に、Ｌｃｈ直接音・仮想反射音加算器１１４は、Ｒｃｈ用音像定位手段１０２から出力されたＲｃｈクロス出力信号１０５と、Ｌｃｈ用音像定位手段１０３から出力されたＬｃｈメイン出力信号１０７と、仮想反射音発生手段１１１から出力されたＬｃｈ仮想反射音出力信号１０９を加算し、Ｌｃｈオーディオ出力信号１１６として出力する。
【００２９】
以上のように、本発明の実施の形態における音像頭外定位装置では、１つの記憶手段を用いて、１チャンネルのオーディオ信号から左、右両方の仮想反射音を生成して出力することができる。また、本発明の実施の形態における音像頭外定位装置では、記憶手段の段数以上にオーディオ信号を保持できるようになり、小規模の回路構成でも仮想反射音の継続時間を長期化することができる。
【産業上の利用可能性】
【００３０】
本発明の音像頭外定位装置及び音像頭外定位方法は、仮想反射音の算出において必要な記憶手段を省容量化することができ、また記憶手段の容量以上に仮想反射音の継続時間を長期化できるという効果を有し、携帯オーディオ機器やゲーム機器の立体音響装置等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【００３１】
【図１】本発明の実施の形態における音像頭外定位装置の内部構成を示す図
【図２】本発明の実施の形態における音像頭外定位装置の、仮想反射音発生手段の詳細構成を示す図
【図３】従来の音像頭外定位方法を実現する音像頭外定位装置の内部構成を示す図
【符号の説明】
【００３２】
１００ Ｒｃｈオーディオ入力信号
１０１ Ｌｃｈオーディオ入力信号
１０２ Ｒｃｈ用音像定位手段
１０３ Ｌｃｈ用音像定位手段
１０４ Ｒｃｈメイン出力信号
１０５ Ｒｃｈクロス出力信号
１０６ Ｌｃｈクロス出力信号
１０７ Ｌｃｈメイン出力信号
１０８ Ｒｃｈ仮想反射音出力信号
１０９ Ｌｃｈ仮想反射音出力信号
１１０ Ｒｃｈ・Ｌｃｈ入力加算器
１１１ 仮想反射音発生手段
１１２ 直接音・仮想反射音加算手段
１１３ Ｒｃｈ直接音・仮想反射音加算器
１１４ Ｌｃｈ直接音・仮想反射音加算器
１１５ Ｒｃｈオーディオ出力信号
１１６ Ｌｃｈオーディオ出力信号
２００ １チャンネルオーディオ入力信号
２０１ 仮想反射音生成手段
２０２ フィードバックループ手段
２０３ 記憶手段
２０４ Ｒｃｈ仮想反射音演算手段
２０５ Ｌｃｈ仮想反射音演算手段
２０６ フィードバックゲイン乗算器
２０７ フィードバック加算器
２０８ Ｒｃｈ仮想反射音出力信号
２０９ Ｌｃｈ仮想反射音出力信号
【特許請求の範囲】
【請求項１】
ヘッドホン着用者の頭部を基準にして仮想する任意の位置に音場を定位させるため、入力される左、右チャンネルのオーディオ信号それぞれに対して処理を行い、仮想音場から発生したオーディオ信号を算出する音像定位手段と、
前記入力される左、右チャンネルのオーディオ信号を加算して１チャンネルとしたオーディオ信号から、仮想音場空間における仮想反射音を左、右チャンネルそれぞれについて算出する仮想反射音発生手段と、
前記音像定位手段と前記仮想反射音発生手段から出力される左、右チャンネルのオーディオ信号をそれぞれ加算し、任意の仮想音場からのオーディオ信号を算出する加算手段と、を有する音像頭外定位装置。
【請求項２】
前記仮想反射音発生手段は、任意の仮想音場空間の反射特性から特徴的な要素を抽出した左、右チャンネル個別の仮想反射音係数を用いて演算処理を行い、前記仮想反射音を算出する請求項１記載の音像頭外定位装置。
【請求項３】
前記仮想反射音発生手段は、前記１チャンネルとしたオーディオ信号を記憶するための記憶手段と、記憶された当該オーディオ信号の最終オーディオ信号を所定のフィードバックゲイン値で乗算したオーディオ信号を、前記１チャンネルとしたオーディオ信号と加算して前記記憶手段にフィードバックするフィードバックループ手段と、を有する請求項１記載の音像頭外定位装置。
【請求項４】
ヘッドホン着用者の頭部を基準にして仮想する任意の位置に音場を定位させるため、入力される左、右チャンネルのオーディオ信号それぞれに対して処理を行い、仮想音場から発生したオーディオ信号を算出する音像定位ステップと、
前記入力される左、右チャンネルのオーディオ信号を加算して１チャンネルとしたオーディオ信号から、仮想音場空間における仮想反射音を左、右チャンネルそれぞれについて算出する仮想反射音発生ステップと、
前記音像定位ステップと前記仮想反射音発生ステップにおいて出力される左、右チャンネルのオーディオ信号をそれぞれ加算し、任意の仮想音場からのオーディオ信号を算出する加算ステップと、を含む音像頭外定位方法。
【請求項１】
ヘッドホン着用者の頭部を基準にして仮想する任意の位置に音場を定位させるため、入力される左、右チャンネルのオーディオ信号それぞれに対して処理を行い、仮想音場から発生したオーディオ信号を算出する音像定位手段と、
前記入力される左、右チャンネルのオーディオ信号を加算して１チャンネルとしたオーディオ信号から、仮想音場空間における仮想反射音を左、右チャンネルそれぞれについて算出する仮想反射音発生手段と、
前記音像定位手段と前記仮想反射音発生手段から出力される左、右チャンネルのオーディオ信号をそれぞれ加算し、任意の仮想音場からのオーディオ信号を算出する加算手段と、を有する音像頭外定位装置。
【請求項２】
前記仮想反射音発生手段は、任意の仮想音場空間の反射特性から特徴的な要素を抽出した左、右チャンネル個別の仮想反射音係数を用いて演算処理を行い、前記仮想反射音を算出する請求項１記載の音像頭外定位装置。
【請求項３】
前記仮想反射音発生手段は、前記１チャンネルとしたオーディオ信号を記憶するための記憶手段と、記憶された当該オーディオ信号の最終オーディオ信号を所定のフィードバックゲイン値で乗算したオーディオ信号を、前記１チャンネルとしたオーディオ信号と加算して前記記憶手段にフィードバックするフィードバックループ手段と、を有する請求項１記載の音像頭外定位装置。
【請求項４】
ヘッドホン着用者の頭部を基準にして仮想する任意の位置に音場を定位させるため、入力される左、右チャンネルのオーディオ信号それぞれに対して処理を行い、仮想音場から発生したオーディオ信号を算出する音像定位ステップと、
前記入力される左、右チャンネルのオーディオ信号を加算して１チャンネルとしたオーディオ信号から、仮想音場空間における仮想反射音を左、右チャンネルそれぞれについて算出する仮想反射音発生ステップと、
前記音像定位ステップと前記仮想反射音発生ステップにおいて出力される左、右チャンネルのオーディオ信号をそれぞれ加算し、任意の仮想音場からのオーディオ信号を算出する加算ステップと、を含む音像頭外定位方法。
【図１】
【図２】
【図３】
【図２】
【図３】
【公開番号】特開２００６−２２９５４７（Ｐ２００６−２２９５４７Ａ）
【公開日】平成１８年８月３１日（２００６．８．３１）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００５−４０３２５（Ｐ２００５−４０３２５）
【出願日】平成１７年２月１７日（２００５．２．１７）
【出願人】（０００００５８２１）松下電器産業株式会社 (73,050)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１８年８月３１日（２００６．８．３１）
【国際特許分類】
【出願日】平成１７年２月１７日（２００５．２．１７）
【出願人】（０００００５８２１）松下電器産業株式会社 (73,050)
【Ｆターム（参考）】
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