説明

音出力装置

【課題】操作に応じた信号を発生する音出力装置に関し、タッチパネルを座標検出ではなく、信号発生源として用い、タッチパネルの適用分野を拡大できる音出力装置を提供することを目的とする。
【解決手段】音を出力するスピーカと、導電膜を対向して配置し、該対向する導電膜の間に絶縁体が設けられ、操作および該絶縁体のパターンに応じた信号を発生するタッチパネルと、前記信号を検出する検出部と、前記検出部により検出された信号の周波数に応じた周波数である、予めサンプリングされた波形信号に基づいて前記スピーカを駆動する音源ICと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は音出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信機器や業務用端末市場の拡大に伴い、容易にX、Y座標入力が可能なタッチパネルの需要が拡大している。特に、抵抗膜方式のタッチパネルは、容易に制御でき、かつ、操作できるため、小型PDA、オフコン、パソコンにいたるまであらゆる分野での需要が拡大している。
【0003】
抵抗膜方式のタッチパネルは、導電膜が形成されたガラス基板と導電膜が形成されたフィルム基板とを互いの導電膜が対向するように配置し、フィルム基板又はガラス基板の一方の導電膜に電圧を印加して、ガラス基板又はフィルム基板の他方の導電膜の電圧を検出することにより、接触位置に応じた電圧を検出し、接触位置を認識する構成とされている。
【0004】
なお、タッチパネルの他の適用分野としては、タッチパネルにより操作位置座標を検出し、検出された座標位置に応じて音声を発生する装置が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2000−250548号公報
【特許文献2】実開平7−5155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、従来のこの主の入力装置は、いずれもタッチパネルの座標入力機能を用いて操作位置を検出し、操作位置に対応した処理を行なっており、操作に対応した直接的な信号出力は行なえなかった。このため、使用分野が制限されていた。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、タッチパネルを座標検出ではなく、信号発生源として用い、タッチパネルの適用分野を拡大できる音出力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、音を出力するスピーカと、導電膜を対向して配置し、該対向する導電膜の間に絶縁体が設けられ、操作および該絶縁体のパターンに応じた信号を発生するタッチパネルと、前記信号を検出する検出部と、前記検出部により検出された信号の周波数に応じた周波数である、予めサンプリングされた波形信号に基づいて前記スピーカを駆動する音源ICと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、導電膜を対向して配置し、対向する導電膜の接触位置に応じた信号を発生するタッチパネルを有し、タッチパネルの対向する導電膜の間に絶縁体を設け、操作に応じて絶縁体のパターンに応じた音を発生することにより、タッチパネルを座標検出ではなく、信号発生源として用いることができ、よって、タッチパネルの適用分野を拡大できるなどの特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
〔システム構成〕
図1は本発明の一実施例のシステム構成図を示す。
【0010】
本実施例の音発生システム100は、タッチパネル111、回路基板112、スピーカ113から構成されている。本実施例のタッチパネル111は座標入力装置ではなく、操作に応じた信号を発生する信号発生器として作用する。タッチパネル111で発生された信号は、回路基板112に供給される。回路基板112は、タッチパネル111で発生された信号に応じてスピーカ113を駆動する。スピーカ113は回路基板112からの駆動信号によって駆動されて駆動信号に応じた音を出力する。
【0011】
〔タッチパネル111〕
図2はタッチパネル111の分解斜視図を示す。
【0012】
タッチパネル111は、下部基板121、上部基板122、スペーサ123、パターン状スペーサ124から構成されている。
【0013】
下部基板121は、ガラス基板131、透明導電膜132、電極133a、133bから構成されている。
【0014】
ガラス基板131は、ガラスなどの透明の絶縁体から構成されている。透明導電膜132は、ITOなどの透明導電材から構成されており、ガラス基板131の上面、矢印Z1方向側の面の略全面に形成されている。
【0015】
電極133aは、ガラス基板131の矢印Y2方向側の辺縁部に沿って透明導電膜132上に形成されている。電極133bは、ガラス基板131の矢印Y1方向側の辺縁部に沿って透明導電膜132上に形成されている。スペーサ123は、下部基板121の周囲に張り付けられている。
【0016】
図3はパターン状スペーサ124の形状を説明するための図を示す。
【0017】
パターン状スペーサ124は、下部基板121の透明導電膜132上に形成されている。パターン状スペーサ124は、例えば、図3(A)に示すようにドット状であり、通常のタッチパネルに形成されているドットスペーサに比べてドットの大きさが大きく形成されている。これによって、パネル上で指を移動させた際に下部基板121と上部基板122とが接触、非接触を繰り返すような大きさに形成されている。また、密度は、出力する音の高さや操作者の使用感に応じて決定される。
【0018】
なお、本実施例では、パターン状スペーサ124をドット状としたが、パターン状スペーサ124は、ドット状に限定されるものではなく、図3(B)に示すように短冊状、図3(C)に示すような折り返しパターン、図3(D)に示すような格子状、図3(E)に示すような円環状などであってもよく、要は指やペンをスライドさせることにより、下部基板121の透明導電膜131と上部基板122の透明導電膜142とが接触、非接触状態に変位するパターンであれば、これに限定されるものではない。
【0019】
上部基板122は、フィルム基板141、透明導電膜142、電極143a、143bから構成されている。フィルム基板141は、PETフィルムなどの樹脂フィルムから構成されている。透明導電膜142は、ITOなどからなる透明導電材から構成され、フィルム基板141の下面、矢印Z2方向の面、略全面に形成されている。
【0020】
電極143aは、フィルム基板141の矢印X2方向側の辺縁部に沿って透明導電膜142上に形成されている。電極143bは、フィルム基板141の矢印X1方向側の辺縁部に沿って透明導電膜142上に形成されている。
【0021】
上部基板122は、透明導電膜142が下部基板121の透明導電膜132に対向するように配置され、スペーサ123を介して下部基板121に接着される。
【0022】
下部基板121の電極133a、133b及び上部基板122の電極143a、143bは、FPCケーブル151を介して回路基板112に供給される。回路基板112は、プリント配線板161上にチップコンデンサ、チップインダクタ、チップ抵抗、ICチップなどの各種電子部品162を搭載した構成とされている。
【0023】
図4は回路基板112のブロック構成図を示す。
【0024】
回路基板112には、電圧印加部161、基準電位設定部162、検出部163、アンプ164、制御回路165が搭載されている。
【0025】
電圧印加部161は、FPCケーブル151を介して上部基板122の電極143aと電極143bとの間に所定の電圧、例えば、5Vを印加する。
【0026】
図5は基準電位設定部162の回路構成図を示す。
【0027】
基準電位設定部162は、トランジスタQ1、Q2、抵抗R1、R2から構成されている。トランジスタQ1はPNPトランジスタから構成されており、エミッタには第1の基準電圧Vref1が印加され、コレクタは抵抗R1を介して下部基板121の電極133a又は電極133bに接続されるとともに検出部163に接続されており、ベースは制御回路165に接続されている。なお、第1の基準電圧Vref1は、例えば、5Vである。
【0028】
トランジスタQ2は、NPNトランジスタから構成されており、コレクタが抵抗R2を介してトランジスタQ1のコレクタに接続され、エミッタには第2の基準電圧Vref2が印加されており、ベースは制御回路165に接続されている。なお、第2の基準電圧Vref2は、例えば、0Vである。
【0029】
制御回路165はトランジスタQ1をオンしたときトランジスタQ2をオフし、トランジスタQ1をオフしたときトランジスタQ2をオンする。
【0030】
トランジスタQ1がオンし、トランジスタQ2がオフした状態では、下部基板121の電極133a又は133bには、第1の基準電圧Vref1、5Vが印加される。下部基板121の透明導電膜132と上部基板122の透明導電膜142とが非接触状態のときには、検出部163には第1の基準電圧Vref1、5Vが印加され、下部基板121の透明導電膜132と上部基板122の透明導電膜142とが接触状態のときには接触位置に応じた電圧0〜5Vが検出部163に供給される。したがって、接触時にローレベルとなるいわゆるアクティブローで動作する。
【0031】
トランジスタQ1がオフし、トランジスタQ2がオンした状態では、下部基板121の電極133a又は133bには、第2の基準電圧Vref2、0Vが印加される。下部基板121の透明導電膜132と上部基板122の透明導電膜142とが非接触状態のときには、検出部163には第2の基準電圧Vref2、0Vが印加され、下部基板121の透明導電膜132と上部基板122の透明導電膜142とが接触状態のときには接触位置に応じた電圧0〜5Vが検出部163に供給される。したがって、接触時にハイレベルとなるいわゆるアクティブハイで動作する。
【0032】
制御回路165によって、アクティブロー動作とアクティブハイ動作とを切り替えることができる。
【0033】
検出部163は、電極133a又は133bに接続されており、電極133a又は133bの電圧を検出し、パルス波形に整形する。
【0034】
図6はタッチパネル111の出力波形図を示す。図6(A)はアクティブハイ時、図6(B)はアクティブロー時の出力波形図を示す。
【0035】
図6はタッチパネル111の操作面を点Cと点Dとの間で移動させた際の出力信号波形を示す。
【0036】
アクティブハイ時には、点Cは、電極133aに近いので、図6(A)に示すように検出電圧は大きくなる。また、点Dでは、電極133bに近くなるので、図6(A)に示すように検出電圧は小さくなる。なお、出力信号の周波数は、操作速度に応じた周波数となる。
【0037】
検出部163で検出されたパルス状の検出信号は、アンプ164に供給される。アンプ164は、検出部163から供給されたパルス状の検出信号を増幅して、スピーカ113を駆動する。これによって、スピーカ113から操作速度に応じた音調、操作位置に応じた音圧の音を出力することが可能となる。
【0038】
〔第1変形例〕
なお、本実施例では、タッチパネル111から検出した信号により直接スピーカ113を駆動したが、タッチパネル111から検出した信号に応じたパルスを発生して、スピーカ113を駆動するようにしてもよい。
【0039】
図7は回路基板112の変形例のブロック構成図を示す。同図中、図5と同一構成部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0040】
本変形例の回路基板211は、検出部163とアンプ164との間に音源IC221を有する。音源IC221は、検出部163で検出された信号の周波数に応じた周波数で、かつ、レベルに応じたレベルであり、予め設定されたサンプリングされた波形の信号を出力する。アンプ164は、音源IC221から供給された信号を増幅して、スピーカ113を駆動する。
【0041】
〔第2変形例〕
なお、タッチパネル111のパターン状スペーサ124を構成するドットの密度を操作領域毎に異ならせるようにしてもよい。
【0042】
図8はタッチパネル111の変形例の平面構成図を示す。同図中、図2と同一構成部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0043】
本変形例のタッチパネル311は、第1領域A1、第2領域A2、第3領域A3、第4領域A4を有する。第1領域A1に形成されるパターン状スペーサ124は、ドットの密度が第1の密度で形成されている。第2領域A2に形成されるパターン状スペーサ124は、ドットの密度が第1の密度より高い第2の密度で形成されている。
【0044】
第3領域A3に形成されるパターン状スペーサ124は、ドットの密度が第2の密度より高い第3の密度で形成されている。第4領域A4に形成されるパターン状スペーサ124は、ドットの密度が第3の密度より高い第4の密度で形成されている。
【0045】
図9はタッチパネル111の変形例の動作説明図を示す。図9(A)は第1領域A1、図9(B)は第2領域A2、図9(C)は第3領域A3、図9(D)は第4領域A4を操作したときに得られる信号を示す。
【0046】
第1領域A1を操作したときに得られる信号は、図9(A)、図9(B)に示すように第2領域A2を操作したときに得られる信号より周波数が低くなる。また、第3領域A3を操作したときに得られる信号は、図9(C)、図9(D)に示すように第4領域A4を操作したときに得られる信号より周波数が高くなる。
【0047】
さらに、第1領域A1、第2領域A2を操作したときに得られる信号は、図9に示すように第3領域A3、第4領域A4を操作したときに得られる信号よりレベルが大きくなる。
【0048】
図10はタッチパネル111の他の変形例のパターン状スペーサ124の断面図を示す。
【0049】
なお、上記実施例では、矩形状の信号を得るためにパターン状スペーサ124のドットの断面形状を図10(A)に示すように矩形状したが、図10(B)に示すように半円状とすることにより信号の波形の立ち上がり、立下りを滑らかにすることができる。
【0050】
これによって、出力される音を矩形状時とは異なる音色とすることが可能となる。なお、パターン状スペーサ124の断面形状は、矩形状或いは半円状に限定されるものではなく、他の形状、例えば、図10(C)に示すように三角形状などであってもよい。
【0051】
また、一つのタッチパネル111で、例えば、図10(A)、図10(B)、図10(C)に示すような異なる断面形状のパターン状スペーサ124を混在させるようにしてもよい。
【0052】
なお、上記実施例では、楽器などの音発生装置としてタッチパネル111を用いた信号発生装置を適用した例について説明したが、これに限定されるものではなく、周波数及びレベルの異なる信号を用いることができる電子装置一般に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施例のシステム構成図である。
【図2】タッチパネル111の分解斜視図である。
【図3】パターン状スペーサ124の形状を説明するための図である。
【図4】回路基板112のブロック構成図である。
【図5】基準電位設定部162の回路構成図である。
【図6】タッチパネル111の出力波形図である。
【図7】回路基板112の変形例のブロック構成図である。
【図8】タッチパネル111の変形例の平面構成図である。
【図9】タッチパネル111の変形例の動作説明図である。
【図10】タッチパネル111の他の変形例のドットスペーサの断面図である。
【符号の説明】
【0054】
100 音発生システム
111 タッチパネル、112 回路基板、113 スピーカ113
121 下部基板、122 上部基板、123 スペーサ、124 パターン状スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音を出力するスピーカと、
導電膜を対向して配置し、該対向する導電膜の間に絶縁体が設けられ、操作および該絶縁体のパターンに応じた信号を発生するタッチパネルと、
前記信号を検出する検出部と、
前記検出部により検出された信号の周波数に応じた周波数であり、かつ、前記検出部により検出された信号のレベルに応じたレベルである、予めサンプリングされた波形信号に基づいて前記スピーカを駆動する音源ICと、を有することを特徴とする音出力装置。
【請求項2】
前記タッチパネルの前記対向する導電膜のうち一方の導電膜に電圧を印加し、
他方の導電膜の電圧を検出することにより、前記信号を取得することを特徴とする請求項1記載の音出力装置。
【請求項3】
前記他方の導電膜の基準電位を設定する基準電位設定手段を有することを特徴とする請求項2記載の音出力装置。
【請求項4】
前記基準電位設定手段は、前記対向する導電膜の接触時に前記他方の導電膜の信号がローレベルとなり、非接触時に前記他方の導電膜の信号がハイレベルとなるように前記基準電位を設定することを特徴とする請求項3記載の音出力装置。
【請求項5】
前記基準電位設定手段は、前記対向する導電膜の接触時に前記他方の導電膜の信号がハイレベルとなり、非接触時に前記他方の導電膜の信号がローレベルとなるように前記基準電位を設定することを特徴とする請求項3記載の音出力装置。
【請求項6】
前記基準電位設定手段は、前記対向する導電膜の接触時に前記他方の導電膜の信号がローレベルとなり、非接触時に前記他方の導電膜の信号がハイレベルとなるように前記基準電位を設定する第1の基準電位設定手段と、
前記対向する導電膜の接触時に前記他方の導電膜の信号がハイレベルとなり、非接触時に前記他方の導電膜の信号がローレベルとなるように前記基準電位を設定する第2の基準電位設定手段と、
前記第1の基準電位設定手段による基準電位の設定と、前記第2の基準電位設定手段による基準電位の設定とを切り替える切換手段とを有することを特徴とする請求項3記載の音出力装置。
【請求項7】
前記絶縁体は、信号の波形に応じて断面形状を異なることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項記載の音出力装置。
【請求項8】
前記タッチパネルに異なる断面形状の前記絶縁体を組み合わせて配置したことを特徴とする請求項7記載の音出力装置。
【請求項9】
前記タッチパネルは、前記絶縁体の間隔が異なる領域を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項記載の音出力装置。
【請求項10】
前記絶縁体は、そのパターンがドット状に配置されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項記載の音出力装置。
【請求項11】
前記絶縁体は、そのパターンが矩形状に配置されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項記載の音出力装置。
【請求項12】
前記絶縁体は、そのパターンが折り返しパターン状に配置されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項記載の音出力装置。
【請求項13】
前記絶縁体は、そのパターンが格子状に配置されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項記載の音出力装置。
【請求項14】
前記絶縁体は、そのパターンが円環状に配置されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項記載の音出力装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図9】
image rotate

【図8】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−258211(P2011−258211A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149452(P2011−149452)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【分割の表示】特願2005−229885(P2005−229885)の分割
【原出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(501398606)富士通コンポーネント株式会社 (848)
【Fターム(参考)】