説明

音声パケット通信システム

【課題】簡単な構成により片方向の遅延時間を測定することができる音声パケット通信システムを提供する。
【解決手段】
送信側においては、現在時刻を示す送信側現在時刻情報を生成し、無音パケットに当該送信側現在時刻情報を挿入する。受信側においては、当該無音パケットから当該送信側現在時刻情報を抽出し、当該送信側現在時刻情報を抽出した時点における受信側現在時刻情報が示す時刻との差分を遅延時間として算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IP電話端末や通信網からの音声ストリームパケットをRTP(Real-time Transport Protocol)などのプロトコルに従って中継する音声パケット通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、IP(Internet Protocol)電話による通話においては、音声RTPストリームパケット通信による音声通信を行う音声パケット通信装置が知られている(例えば特許文献1)。IP電話による通話の品質を評価する際には、送受信装置間における音声RTPストリームパケットの遅延時間が大きく影響する。
【0003】
IP電話による通話においては、音声データの送受信制御プロトコルであるRTCP(Real-time Transport Control Protocol)のパケット情報を参照することにより、ラウンドトリップすなわち往路及び復路の総和の遅延時間(以下、双方向の遅延時間と称する)を知ることができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−283667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、通話品質を正確に評価するためには、片方向の遅延時間すなわち往路及び復路のうちの一方の遅延時間を得るべきである。しかし、上述のRTCPのパケット情報を参照しても片方向だけの遅延時間を正確に知ることはできない。
【0006】
片方向の遅延時間を正確に知るには、例えば送信側及び受信側の装置における時間情報を同期させて音声パケットの送受信時間を正確に知る方法も考えられる。しかし、IP電話による通話においては、一般に送受信装置同士は非同期であるので時間情報を同期させることによって遅延時間を正確に知ることは困難である。
【0007】
専用の遅延時間測定装置を設けることも考えられるが、遅延時間の測定システムが大規模になりコストが増加してしまうという問題があり、また、送信側装置と受信側装置とが互いに遠隔の地にある場合には遅延時間の測定自体が困難になるという問題がある。
【0008】
本発明は上記した如き問題点に鑑みてなされたものであって、簡単な構成により片方向の遅延時間を測定することができる音声通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による音声パケット通信システムは、入力音声信号に対して符号化処理を施してパケット単位毎の符号化データを生成し、前記符号化データを各々が含む音声パケットを生成するパケット生成部と、前記音声パケットを通信網を介してストリーミング送信する送信部と、を含む送信側音声通信装置と、前記通信網を介して到来したパケットを順次受信してこれに含まれる前記符号化データを蓄積する受信蓄積部と、前記受信蓄積部に蓄積された符号化データに対してパケット単位毎に復号処理を施してPCM信号を生成しこれを出力する信号出力部と、を含む受信側音声通信装置と、を含む音声パケット通信システムであって、前記送信側音声通信装置は、現在時刻を示す送信側現在時刻情報を生成する送信側現在時刻生成部と、前記パケット生成部によって生成された音声パケットのうちから無音表示データを含む無音パケットを検出して前記無音パケットの少なくともいずれかに前記送信側現在時刻情報を挿入する時刻情報挿入部と、を含み、前記受信側音声通信装置は、前記無音パケットを検出して当該検出した無音パケットから前記送信側現在時刻情報を抽出する時刻情報抽出部と、現在時刻を示す受信側現在時刻情報を生成する受信側現在時刻生成部と、前記時刻情報抽出部が前記送信側現在時刻情報を抽出した時点における前記受信側現在時刻情報が示す時刻と前記送信側現在時刻情報が示す時刻との差分を遅延時間として算出する遅延時間算出部と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明による音声パケット通信システムによれば、簡単な構成により片方向の遅延時間を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】音声パケット通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1の音声通信装置に含まれる信号処理部の構成を示すブロック図である。
【図3】時刻情報が挿入された時系列データの一例を示す図である。
【図4】時刻情報を示すデータを含む音声パケットの一例を示す図である。
【図5】時刻情報挿入処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】遅延時間算出処理ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施例について添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施例である音声パケット通信システム100の構成を示すブロック図である。音声通信装置(以下、単に通信装置と称する)1は、電話端末3と通信網5との間で例えばRTPなどのプロトコルに従って音声ストリームパケットを中継する例えばVoIP(Voice over Internet Protocol)ルータなどの通信装置である。音声通信装置(以下、単に通信装置と称する)2は、電話端末4と通信網5との間で音声ストリームパケットを例えばRTPなどの通信プロトコルに従って中継する例えばVoIPルータなどの通信装置である。電話端末3及び4の各々は、IP電話端末である。通信網5は、例えばインターネット網である。
【0014】
通信装置1は、アナログ入出力部11と、信号処理部12と、RTP制御部13と、WANポート14と、を含む。
【0015】
アナログ入出力部11は、電話端末3から供給されるアナログ信号すなわち入力音声信号にA/D変換処理を施してPCM信号に変換し、これを信号処理部12に与える。当該アナログ信号は、例えばITUにより勧告されたV.21方式に従って変調された信号である。また、アナログ入出力部11は、信号処理部12から供給されるPCM信号にD/A変換処理を施してアナログ信号すなわち音声信号に変換し、これを電話端末3に与える。
【0016】
信号処理部12は、アナログ入出力部11から供給されるPCM信号に対して信号処理を施して符号化データに変換し、これをRTP制御部13に与える。また、信号処理部12は、RTP制御部13から供給される符号化データに対して信号処理を施してPCM信号に変換し、これをアナログ入出力部11に与える。当該信号処理には、符号化処理及び復号処理が含まれる。信号処理部12は、例えばITU−Tによって策定されたG.711のμ則の規格に従って符号化処理及び復号処理を行う。以下、G.711のμ則を単にG.711と称する。信号処理部12による信号処理の詳細については図2によって後述する。
【0017】
RTP制御部13は、信号処理部12の送信バッファ部23(図2に示す)に蓄積されているパケット単位の符号化データを順次取り出し、取り出した符号化データを含むRTPパケットなどの音声パケットを生成して、これをWANポート14に供給する。また、RTP制御部13は、WANポート14から供給される音声パケットに含まれる符号化データを取り出して、これを信号処理部12に供給する。
【0018】
WANポート14は、RTP制御部13から順次供給される音声パケットを通信網5を介してRTPなどの通信プロトコルに従ってストリーミング送信する。また、WANポート14は、通信網5から到来した音声パケットをRTP制御部13に供給する。
【0019】
音声通信装置2は、アナログ入出力部11bと、信号処理部12bと、RTP制御部13bと、WANポート14bと、を含む。アナログ入出力部11bはアナログ入出力部11と、信号処理部12bは信号処理部12と、RTP制御部13bはRTP制御部13と、WANポート14bはWANポート14と、それぞれ同じ機能を有する。
【0020】
図2は、信号処理部12の構成を示すブロック図である。信号処理部12は、送信処理部20と、受信処理部30と、を含む。
【0021】
送信処理部20は、入力信号処理部21と、エンコーダ部22と、送信バッファ部23と、クロック部24と、時刻情報挿入部25と、を含む。
【0022】
入力信号処理部21は、アナログ入出力部11(図1)から供給されるPCM信号に対して例えば帯域制限のためのフィルタ処理やエコーキャンセラ処理などの信号処理を施し、信号処理後のPCM信号をパケット単位にまとめて出力する。
【0023】
エンコーダ部22は、パケット単位のPCM信号に対してG.711の規格に従って音声符号化処理すなわちエンコード処理を施してパケット単位毎すなわちパケット単位毎の符号化データを生成し、当該符号化データを送信バッファ部23に供給する。
【0024】
送信バッファ部23は、エンコーダ部22から供給されるパケット単位の符号化データを順次蓄積する。
【0025】
クロック部24は、現在時刻を示すデータを生成する。以下、当該データを送信側現在時刻情報と称する。クロック部24は、例えばネットワークタイムプロトコル(NTP:Network Time Protocol)を用いて現在時刻を示すデータを高精度に生成する。なお、クロック部24は、GPS(Global Positioning System)の時刻情報を取得し、これに基づいて現在時刻を高精度に生成するように許可することもできる。
【0026】
時刻情報挿入部25は、送信バッファ部23に蓄積されている複数の符号化データのうちから無音を示す符号化データ(以下、無音表示データと称する)を検出し、当該無音表示データを含む音声パケット毎に送信側現在時刻情報を挿入する。以下、無音表示データを含む音声パケットを無音パケットと称する。時刻情報挿入部25は、例えば無音表示データの検出時における送信側現在時刻情報を無音パケットに挿入する。
【0027】
時刻情報挿入部25は、G.711符号化方式において無音を示すデータである0x7F及び/又は0xFFが符号化データに含まれていると判別した場合に、当該符号化データを無音表示データとして検出する。なお、0x7F及び0xFFの各々は、データ値を2桁の16進数表記で表わしたものである。
【0028】
時刻情報挿入部25は、例えばNLP(Non-Linear Processing:非線形処理)により、符号化データが示す音量が一定レベル以下である場合に当該符号化データを無音表示データとして検出することができる。かかる処理によれば、時刻情報挿入部25が、符号化データを無音表示データであると判別する頻度が大きくなり、送信側現在時刻情報を音声パケットに挿入する頻度を高くすることができる。
【0029】
時刻情報挿入部25は、時刻を示す0x7F及び/又は0xFFのデータ列の直前に所定の識別データ列すなわち識別ヘッダを付加することが好ましい。
【0030】
受信処理部30は、受信バッファ部31と、デコーダ部32と、出力信号処理部33と、時刻情報抽出部34と、クロック部35と、遅延時間算出部36と、を含む。
【0031】
受信バッファ部31は、RTP制御部13から供給されるパケット単位の符号化データを順次蓄積する。受信バッファ部31は、符号化データを、当該符号化データを含んでいた音声パケットのヘッダに含まれるシーケンス番号と対応付けて蓄積する。
【0032】
デコーダ部32は、受信バッファ部31に蓄積されているパケット単位の符号化データを取得し、当該符号化データに対してG.711の規格に従って音声復号処理すなわちデコード処理を施してPCM信号を生成する。デコーダ部32は、当該生成したPCM信号を出力信号処理部33に供給する。
【0033】
出力信号処理部33は、デコーダ部32から供給されるPCM信号に対して例えば帯域制限のためのフィルタ処理やエコーキャンセラ処理などの信号処理を施し、信号処理後のPCM信号をアナログ入出力部11(図1)へ供給する。
【0034】
時刻情報抽出部34は、受信バッファ部31に蓄積されるパケット単位の符号化データを監視し、符号化データのうちから無音表示データを検出する。以下、時刻情報抽出部34が現在監視している符号化データを現在監視符号化データと称する。時刻情報抽出部34は、現在監視符号化データが無音表示データであると判別した場合には、当該無音表示データに対応する無音パケットに含まれる送信側現在時刻情報を抽出し、これを抽出時刻情報として遅延時間算出部36に供給する。
【0035】
時刻情報抽出部34は、時刻情報挿入部25によって無音パケットに挿入された識別ヘッダに基づいて送信側現在時刻情報の有無の検出や挿入位置を特定することもできる。
【0036】
クロック部35は、現在時刻を示すデータを生成する。以下、当該データを受信側現在時刻情報と称する。クロック部35は、例えばネットワークタイムプロトコル(NTP)に従って現在時刻を高精度に生成する。また、クロック部35は、GPSの時刻情報を取得し、これに基づいて現在時刻を高精度に生成することもできる。現在時刻を示すデータを生成する時刻カウンタである。クロック部35は、受信側現在時刻情報を遅延時間算出部36に供給する。
【0037】
クロック部24及びクロック部35の各々は同一の時刻調整方式に従って現在時刻の調整を行う。クロック部24とクロック部35とは共に例えばNTPによって高精度に時刻調整がなされる。故に、クロック部24によって生成される現在時刻とクロック部35によって生成される現在時刻とは同じである。
【0038】
遅延時間算出部36は、時刻情報抽出部34によって抽出された抽出時刻情報と、クロック部35によって生成された受信側現在時刻情報とに基づいて遅延時間を算出する。詳細には、遅延時間算出部36は、受信側現在時刻情報が示す時刻と抽出時刻情報が示す時刻との時間差を遅延時間として算出する。
【0039】
通信装置2における信号処理部12bも、上述の信号処理部12と同じ構成からなる。
【0040】
図3は、時刻情報挿入部25によって送信側現在時刻情報が挿入された時系列データの一例を示す図である。データ列を構成するデータはパケット単位(すなわち音声処理単位)で示されており、音声データ41〜44と無音表示データ51〜53に区別される。無音表示データ51〜53の各々が送信側現在時刻情報を示す。時刻情報挿入部25は、送信バッファ部23に蓄積されている複数の符号化データのうちから無音表示データ51〜53を検出し、無音表示データ51〜53の各々に送信側現在時刻情報を挿入する。
【0041】
図4は、送信側現在時刻情報を含む音声パケットの一例を示す図である。音声パケットは、RTPヘッダとRTPペイロードとからなる。RTPヘッダの構成は一般的な構成であれば良い。RTPペイロードには符号化データとして送信側現在時刻情報が含まれる。G.711音声符号化規格においては、0x7F及び0xFFの各々が無音を示すデータ(以下、無音表示データと称する)とされており、送信側現在時刻情報は、例えば無音表示データの組合せで表わすことができる。
【0042】
0x7Fを例えば”0”、0xFFを例えば”1”のビットとみなして、”0”及び”1”のビット列からなる2進数によって時刻を表わすことができる。例えば、0〜24時を2進数の00000〜11000、0〜60分を2進数の00000〜111100、0〜60秒を2進数の000000〜111100、0〜999ミリ秒を2進数の0000000000〜1111100111によりそれぞれ表わすことができる。この例ようにした場合、最低27個の無音表示データの組合せによって「時」、「分」、「秒」、「ミリ秒」を表わすことができる。RTPペイロードに「時」、「分」、「秒」、「ミリ秒」の各々の無音表示データを連続して挿入するフォーマットとしても良いし、「時」、「分」、「秒」、「ミリ秒」の各々の無音表示データの間に区切りのための無音表示データを挿入するフォーマットとしても良い。このように、送信側現在時刻情報を、各々が「時」、「分」、「秒」、「ミリ秒」に対応する無音表示データの4組からなる情報として表わすことができる。なお、パケットの送信周期や通信装置1と通信装置2との間の距離等の条件に応じて、送信側現在時刻情報をマイクロ秒などのより小さい単位まで表わすこともできる。
【0043】
また、時刻を示す無音表示データの直前に所定の識別データ列すなわち先頭識別ヘッダを付加しても良い。先頭識別ヘッダは、例えば連続する10個の0xFFすなわち2進数の”1111111111”からなり、後続のデータ列が時刻を示すデータ列であることを示すものである。時刻情報抽出部34は、先頭識別ヘッダに基づいて符号化データに送信側現在時刻情報が含まれるか否か、及び送信側現在時刻情報の開始位置を判別しても良い。なお、識別ヘッダは、音声を表わすビット列と混同しないようなデータ列とするのが望ましい。
【0044】
また、時刻を示す無音表示データの直後に所定の識別データ列すなわち末尾識別ヘッダを付加しても良い。末尾識別ヘッダは、例えば連続する10個の0x7Fすなわち2進数の”0000000000”からなり、直前までのデータ列が時刻を示すデータ列であることを示すものである。
【0045】
サンプリングレートが8KHzの場合を例にとると、1パケット(例えば10ms相当)のPCMサンプル数は80個になるので、1パケットが全て無音の場合、最大で80ビット分のデータを用いて表わされた送信側現在時刻情報を1パケットに含めることができる。送信側現在時刻情報を表わすデータ列は、音声信号を表わすデータ列と異なるものとするのが好ましい。
【0046】
図5は、通信装置1における信号処理部12による時刻情報挿入処理ルーチンを示すフローチャートである。以下、図5を参照しつつ、時刻情報挿入処理について説明する。
【0047】
電話端末3から到来したアナログ信号は、アナログ入出力部11によるA/D変換処理によってPCM信号に変換される。
【0048】
先ず、入力信号処理部21は、PCM信号に対して例えば帯域制限のためのフィルタ処理やエコーキャンセラ処理などの信号処理を施し、信号処理後のPCM信号をパケット単位にまとめる(ステップS11)。
【0049】
次に、エンコーダ部22は、パケット単位のPCM信号に対してG.711の規格に従って音声符号化処理すなわちエンコード処理を施して符号化データを生成し、当該符号化データを送信バッファ部23に供給する(ステップS12)。
【0050】
次に、送信バッファ部23は、エンコーダ部22から供給されるパケット単位の符号化データを順次蓄積する(ステップS13)。
【0051】
次に、時刻情報挿入部25は、送信バッファ部23に蓄積されている複数の符号化データのうちから無音表示データを検出し、クロック部24によって生成された現在時刻情報すなわち送信側現在時刻情報を、当該無音表示データを含む音声パケットである無音パケットに送信側現在時刻情報として挿入する(ステップS14)。
【0052】
時刻情報挿入部25は、符号化データに0x7F及び/又は0xFFのデータが含まれていることを検出した場合又は符号化データが示す音量が一定レベル以下である場合に、当該符号化データを無音表示データとして検出する。時刻情報挿入部25は、無音表示データである0x7Fを例えば”0”、0xFFを例えば”1”のビットとみなして、0x7F及び/又は0xFFのデータ列によって表わされる2進数のビット列により、クロック部24によって生成された送信側現在時刻情報に対応する例えば時刻12時30分10秒10ミリ秒を示す送信側現在時刻情報を無音パケットに挿入する。
【0053】
次に、送信バッファ部23は、符号化データをRTP制御部13に順次出力する(ステップS15)。
【0054】
図6は、通信装置2における信号処理部12bによる遅延時間算出処理ルーチンを示すフローチャートである。以下、図6を参照しつつ、遅延時間算出処理について説明する。
【0055】
通信網5を介して通信装置1から到来した音声ストリームパケットは、WANポート14bによって受信され、音声ストリームパケットに含まれる符号化データがRTP制御部13bによって取り出される。
【0056】
先ず、受信バッファ部31は、RTP制御部13bから供給される符号化データを順次蓄積する(ステップS21)。
【0057】
次に、時刻情報抽出部34は、受信バッファ部31に蓄積されるパケット単位の符号化データを監視する。そして、時刻情報抽出部34は、符号化データのうちから無音表示データを検出した場合には当該無音表示データに対応する無音パケットから送信側現在時刻情報を抽出時刻情報として抽出する(ステップS22)。時刻情報抽出部34は、符号化データが0x7F及び/又は0xFFを含むか否かを判別し、これらを含むと判別した場合に0x7F及び/又は0xFFのデータ列からなる送信側現在時刻情報を抽出する。この際、時刻情報抽出部34は、符号化データに含まれる所定の識別ヘッダ(例えば、連続する10個の0xFF)を検出することによって、送信側現在時刻情報を示す0x7F及び/又は0xFFの有無の検出や挿入位置を特定することもできる。
【0058】
時刻情報抽出部34は、0x7Fを例えば”0”、0xFFを例えば”1”のビットとみなして、”0”及び”1”のビット列からなる2進数から時刻を特定する。時刻情報抽出部34は、例えば時刻12時30分10秒20ミリ秒を示す送信側現在時刻情報を抽出時刻情報として抽出する。
【0059】
次に、遅延時間算出部36は、クロック部35によって生成された受信側現在時刻情報と、抽出時刻情報との差を遅延時間として算出する(ステップS23)。遅延時間算出部36は、時刻情報抽出部34から抽出時刻情報を受け取った時に、クロック部35から受信側現在時刻情報を取得する。遅延時間算出部36は、受信側現在時刻情報が示す例えば時刻12時30分10秒20ミリ秒と、抽出時刻情報が示す例えば時刻12時30分10秒10ミリ秒との差分である10ミリ秒を遅延時間として算出する。
【0060】
遅延時間は、音声ストリームパケットが送信側の音声通信装置1から受信側の音声通信装置2に至るまでに要した時間であり、片方向の遅延時間である。受信バッファ部31に蓄積された直後の符号化データを時刻情報抽出部34が監視する設定にした場合には、遅延時間は通信網5における伝搬遅延時間である。受信バッファ部31からデコーダ部32へ出力される直前の符号化データを時刻情報抽出部34が監視する設定にした場合には、遅延時間は送信側のエンコーダ部22から受信側のデコーダ部32までの遅延時間となる。これらのいずれの設定としても良いし、これら以外の任意のタイミングで時刻情報抽出部34が送信側現在時刻情報を抽出しても良い。
【0061】
遅延時間算出部36は、遅延時間を例えばディスプレイ(図示せず)に出力するようにしても良い。
【0062】
上記したように、本実施例による音声パケット通信システム100においては、送信側の音声通信装置1が無音パケットに時刻情報を挿入してストリームパケット送信し、受信側の音声通信装置2が当該パケットから抽出した時刻情報が示す時刻と受信側で生成した現在時刻情報が示す時刻との差分を遅延時間として算出する。音声通信装置1のクロック部24と音声通信装置2のクロック部35とは共に例えばNTPによって高精度な現在時刻を示す情報を生成するので、音声通信装置1のクロック部24によって生成される現在時刻と音声通信装置2のクロック部35によって生成される現在時刻とは同じである。故に、上記のように時刻の差分を算出することにより、遅延時間を算出することができる。
【0063】
このように、本実施例による音声パケット通信システム100によれば、無音パケットを時間情報の伝送のために利用したので、簡単な構成により片方向の遅延時間を測定することができる。これにより、通話品質をより正確に評価し得る。更に、上記した実施例においては、無線データパケットの全てに現在時刻情報を挿入したが、全ての無線データパケットに現在時刻情報を挿入する例に限定されず、無線データパケットの少なくともいずれかに現在時刻情報を挿入することも考えられる。
【符号の説明】
【0064】
1、2 音声通信装置(通信装置)
3、4 電話端末
5 通信網
11、21 アナログ入出力部
12、22 信号処理部
13、23 RTP制御部
14、24 WANポート(送信部、受信部)
20 送信処理部
21 入力信号処理部
22 エンコーダ部(パケット生成部)
23 送信バッファ部
24 クロック部(送信側現在時刻生成部)
25 時刻情報挿入部
30 受信処理部
31 受信バッファ部(受信蓄積部)
32 デコーダ部(信号出力部)
33 出力信号処理部(信号出力部)
34 時刻情報抽出部
35 クロック部(受信側現在時刻生成部)
36 遅延時間算出部
41、42、43、44 音声データ
51、52、53 無音表示データ
100 音声パケット通信システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力音声信号に対して符号化処理を施してパケット単位毎の符号化データを生成し、前記符号化データを各々が含む音声パケットを生成するパケット生成部と、前記音声パケットを通信網を介してストリーミング送信する送信部と、を含む送信側音声通信装置と、
前記通信網を介して到来したパケットを順次受信してこれに含まれる前記符号化データを蓄積する受信蓄積部と、前記受信蓄積部に蓄積された符号化データに対してパケット単位毎に復号処理を施してPCM信号を生成しこれを出力する信号出力部と、を含む受信側音声通信装置と、を含む音声パケット通信システムであって、
前記送信側音声通信装置は、
現在時刻を示す送信側現在時刻情報を生成する送信側現在時刻生成部と、
前記パケット生成部によって生成された音声パケットのうちから無音表示データを含む無音パケットを検出して前記無音パケットの少なくともいずれかに前記送信側現在時刻情報を挿入する時刻情報挿入部と、を含み、
前記受信側音声通信装置は、
前記無音パケットを検出して当該検出した無音パケットから前記送信側現在時刻情報を抽出時刻情報として抽出する時刻情報抽出部と、
現在時刻を示す受信側現在時刻情報を生成する受信側現在時刻生成部と、
前記時刻情報抽出部が前記送信側現在時刻情報を抽出した時点における前記受信側現在時刻情報が示す時刻と前記抽出時刻情報が示す時刻との差分を遅延時間として算出する遅延時間算出部と、を含むことを特徴とする音声パケット通信システム。
【請求項2】
前記送信側現在時刻情報は、前記無音表示データの組合せによって表示されていることを特徴とする請求項1に記載の音声パケット通信システム。
【請求項3】
前記送信側現在時刻情報は、各々が「時」、「分」、「秒」、「ミリ秒」に対応する無音表示データの4組からなることを特徴とする請求項1に記載の音声パケット通信システム。
【請求項4】
前記時刻情報挿入部は、識別データを前記無音パケットに含める手段を有し、
前記時刻情報抽出部は、前記識別データに基づいて前記無音パケットを検出することを特徴とする請求項1に記載の音声パケット通信システム。
【請求項5】
前記識別データは、音声データとは異なる内容のデータであることを特徴とする請求項4に記載の音声パケット通信システム。
【請求項6】
前記送信側現在時刻生成部及び前記受信側現在時刻生成部の各々は、同一の時刻調整方式に従って前記現在時刻の調整を行うことを特徴とする請求項1に記載の音声パケット通信システム。
【請求項7】
前記時刻調整方式は、ネットワークタイムプロトコルに従ってなされる調整方式であることを特徴とする請求項6に記載の音声パケット通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−160832(P2012−160832A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17919(P2011−17919)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(591051645)株式会社OKIソフトウェア (173)
【Fターム(参考)】