説明

音声信号処理装置

【課題】 マルチCHサラウンドシステムにおいて、信号品位を低下することなくマルチCHと2CHの切り換えを行うことができる音声信号処理装置を提供する。
【解決手段】 マイコン1は、FL,FRオーディオデータ信号(ADOUT0)、SL,SRオーディオデータ信号(ADOUT1)、C,SWオーディオデータ信号(ADOUT2)、MIX−L,MIX−Rオーディオデータ信号(ADOUT3)のデータストリームを形成し、ADOUT0とADOUT0のいずれかが、セレクタ回路SELにより選択される。選択されたストリーム信号(ADOUT0とADOUT0のいずれか)がDAC1でアナログ信号に変換されて、アナログ信号、L,Rとして出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、5.1CHシステム等のマルチCHサラウンドシステムに適用される音声信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のマルチCHサラウンドシステムには、DVDプレーヤ等の音源装置からのマルチCHサラウンドステレオ信号を複数のデジタルストリーム信号として出力するデジタルストリーム信号処理装置を備えたものがあり、このような装置では、例えば5.1CHサラウンドシステムの場合、フロントL,Rの信号成分を含むストリーム信号FL−FR(以下、ストリーム1)と、サラウンドL,Rの信号成分を含むストリーム信号SL−SRと(以下、ストリーム2)、センタC、サブウーファSWの信号成分を含むストリーム信号C−SWと(以下、ストリーム3)、さらに、2CHの音源に対応するために、前記マルチCHサラウンドステレオ信号を2CHのL,R信号に合成したストリーム信号MIX−L,Rと(以下、ストリーム4)の4系統のストリーム信号を出力する。
【0003】
このようなシステムにおいて5.1CHと2CHの音源を選択するために、従来は、図4に示すようにストリーム信号の出力系統にアナログスイッチを設けて、切り換えていた。
【0004】
図4において、マイコン1は、DVDプレーヤ等の音源装置からの5.1CHサラウンドステレオ信号を、ADOUT0(ストリーム1に相当)、ADOUT1(ストリーム2に相当)、ADOUT2(ストリーム3に相当)、ADOUT3(ストリーム4に相当)として出力する。図5は、ADOUT0〜ADOUT3の各信号の内容を示している。
【0005】
すなわち、ADOUT0は、FL,FRオーディオデータ信号(フロントL,Rの信号成分の含むストリーム信号FL−FR)であり、ADOUT1は、SL,SRオーディオデータ信号(サラウンドL,Rの信号成分を含むストリーム信号SL−SR)であり、ADOUT2は、C,SWオーディオデータ信号(センタC、サブウーファSWの信号成分を含むストリーム信号C−SW)であり、ADOUT3は、5.1CHサラウンドステレオ信号を2CHのL,R信号に合成したMIX−L,MIX−Rオーディオデータ信号(ストリーム信号MIX−L,R)である。
【0006】
ADOUT0〜ADOUT3は、それぞれDAC(DAコンバータ)1〜4でアナログ信号に変換されるとともに(FL,FR)、(SL,SR)、(C,SW)、(MIX−L,MIX−R)に分離され、さらにLPFでノイズ除去などが行われる。LPFを通過した信号のうち、(FL,FR)と(MIX−L,MIX−R)については、アナログSWに入力し、(FL,FR)か(MIX−L,MIX−R)のいずれかが2CH//5.1CH切り換え信号により選択される。すなわち、2CHが設定されたときには、(MIX−L,MIX−R)が選択され、5.1CHが設定されたときには、(FL,FR)が選択される。
【0007】
一方、ホームシアター等の5.1CHオーディオシステムにおいて、デジタルストリームの段階で入力データの切り換えを行う構成が採用されることがある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−175799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図4に示すような構成では、マルチCHと2CHの切り換えをアナログSWにより行うため、周辺回路の熱雑音の影響を受け、音質低下の原因となる問題があった。また、上記特許文献1等に示されるオーディオシステムでは、デジタルストリームの段階で入力データの切り換えを行うことを示しているに過ぎず、マルチCHサラウンドシステムにおいて、5.1CH等のマルチCHと2CHそのものの切り換えを行うものではない。
【0009】
この発明の目的は、マルチCHサラウンドシステムにおいて、信号品位を低下することなくマルチCHと2CHの切り換えを行うことができる音声信号処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の音声信号処理装置は、上記課題を解決するために、
マルチCHサラウンドステレオ信号を複数のデジタルストリーム信号として出力し、この信号をDA変換する音声信号処理装置において、
前記複数のデジタルストリーム信号を、フロントL,Rの信号成分の含むストリーム信号FL−FRと、サラウンドL,Rの信号成分を含むストリーム信号SL−SRと、センタC、サブウーファSWの信号成分を含むストリーム信号C−SWと、前記マルチCHサラウンドステレオ信号を2CHのL,R信号に合成したストリーム信号MIX−L,Rとの4系統のストリーム信号として出力するデジタルストリーム信号処理装置と、
前記ストリーム信号FL−FRと前記ストリーム信号MIX−L,Rとが入力し、入力された信号のいずれかを、2CH/マルチCH切り換え信号に基づいて選択して出力するセレクタ回路と、
前記セレクタ回路の出力をフロントL,Rのアナログ信号として出力し、前記デジタルストリーム信号処理装置から出力される前記ストリーム信号SL−SRをサラウンドL,Rのアナログ信号として出力し、前記デジタルストリーム信号処理装置から出力される前記ストリーム信号C−SWをセンタC、サブウーファSWのアナログ信号として出力するDAコンバータと、
を備えてなることを特徴とする。
【0011】
以上の構成において、セレクタ回路により、デジタルストリームの段階で、ストリーム信号FL−FRとストリーム信号MIX−L,Rとの切り換えを行う。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、デジタルストリームの段階で、ストリーム信号FL−FRとストリーム信号MIX−L,Rとの切り換えを行うために、アナログSWにより切り換えを行う場合に問題となるノイズ発生はなく、また、単純なスイッチ動作だけで良いために回路構成も簡素化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、この発明の実施形態である音声信号処理装置の概略構成図である。
【0014】
デジタルストリーム信号処理装置であるマイコン1は、DVDプレーヤ等の音源装置からの5.1CHサラウンドステレオ信号を、ADOUT0(ストリーム1に相当)、ADOUT1(ストリーム2に相当)、ADOUT2(ストリーム3に相当)、ADOUT3(ストリーム4に相当)として出力する。図2は、ADOUT0〜ADOUT3の各信号の内容を示している。
【0015】
すなわち、ADOUT0は、FL,FRオーディオデータ信号(フロントL,Rの信号成分の含むストリーム信号FL−FR)であり、ADOUT1は、SL,SRオーディオデータ信号(サラウンドL,Rの信号成分を含むストリーム信号SL−SR)であり、ADOUT2は、C,SWオーディオデータ信号(センタC、サブウーファSWの信号成分を含むストリーム信号C−SW)であり、ADOUT3は、5.1CHサラウンドステレオ信号を2CHのL,R信号に合成したMIX−L,MIX−Rオーディオデータ信号(ストリーム信号MIX−L,R)である。
【0016】
なお、フロントL,Rの信号とは、視聴者の前方左,前方右に設置されるスピーカにそれぞれ入力される信号を意味し、サラウンドL,Rの信号とは、視聴者の後方左,後方右に設置されるスピーカにそれぞれ入力される信号を意味し、センタC、サブウーファSWの信号とは、それぞれ、視聴者の前方中央に設置されるスピーカ,任意の位置に設置されるウーファに入力される信号を意味している。サブウーファのスピーカは重低音のみを再生する。
【0017】
ADOUT1、ADOUT2は、それぞれDAC(DAコンバータ)DAC2、3でアナログ信号に変換されるとともに(SL,SR)、(C,SW)に分離されて出力される。一方、ADOUT0、ADOUT3は、セレクタ回路SELに入力する。セレクタ回路SELは、2CH/5.1CH切り換え信号に基づいて、ADOUT0またはADOUT3のいずれかを選択する。選択されたストリーム信号がDAC1に入力する。DAC1では、セレクタ回路SELで選択されたストリーム信号をアナログ信号に変換し、(L,R)として出力する。
【0018】
セレクタ回路SELは、2CH/5.1CH切り換え信号が2CHを指定しているときはADOUT3を選択し、5.1CHを指定しているときはADOUT0を選択する。したがって、DAC1は、2CH指定時にはMIX−L,MIX−Rオーディオデータ信号をアナログのL信号、R信号として出力する。セレクタ回路SELは、ADOUT0またはADOUT3のストリーム信号のいずれかを選択して出力するだけであるため、構成が
簡易となる。
【0019】
なお、本実施形態では、上記音声信号処理装置はDVDプレーヤの出力側に内蔵されている。
【0020】
図3は、上記音声信号処理装置のアナログ出力信号を処理するコントロール装置の要部構成図である。
【0021】
DVDプレーヤ内の上記音声信号処理装置からのアナログ出力信号(L,R)、(SL,SR)、(C,SW)は、LPF(ローパスフィルタ)10で低域部の濾過処理が行われノイズ等が除去される。(SL,SR)、(C,SW)は、そのまま5.1CHスイッチ11に送られ、2CH/5.1CH切り換え信号により、2CH入力と5.1CH入力とを切り換える。2CH選択時には、アナログ出力信号(L,R)を選択して出力し、5.1CH選択時には、アナログ出力信号(L,R)、(SL,SR)、(C,SW)を選択して出力する。
【0022】
また、5.1CHスイッチ11の入力側には、2CH→5.1CH変換器12が設けられている。この変換器12は、2CHの信号を擬似的に5.1CH信号に変換するものであり、マイコン13により、この疑似処理が選択されると、入力された2CH信号を5.1CHに変換して出力する。その変換された信号は、5.1CHスイッチ11を介してアナログ出力信号(L,R)、(SL,SR)、(C,SW)として出力される。この機能が選択されるときは、音源が2CHの場合である。
【0023】
5.1CHスイッチ11の出力信号は、ボリュームコントローラ14により、5.1CHの各信号ゲインがコントロールされて後段に設けられるメインアンプに出力される。ゲインコントロール信号はマイコン13により形成される。
【0024】
なお、マイコン14にはユーザが操作可能なスイッチ15(ボリュームを含む)が接続され、このスイッチの操作により音量、上記疑似処理、2CHと5.1CHの選択などが行われる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の実施形態である音声信号処理装置の概略構成図
【図2】ADOUT0〜ADOUT3の各信号の内容を示す図
【図3】コントロール装置の要部構成図
【図4】従来の音声信号処理装置の概略構成図
【図5】ADOUT0〜ADOUT3の各信号の内容を示す図
【符号の説明】
【0026】
1−マイコン
SEL−セレクタ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチCHサラウンドステレオ信号を複数のデジタルストリーム信号として出力し、この信号をDA変換する音声信号処理装置において、
前記複数のデジタルストリーム信号を、フロントL,Rの信号成分の含むストリーム信号FL−FRと、サラウンドL,Rの信号成分を含むストリーム信号SL−SRと、センタC、サブウーファSWの信号成分を含むストリーム信号C−SWと、前記マルチCHサラウンドステレオ信号を2CHのL,R信号に合成したストリーム信号MIX−L,Rとの4系統のストリーム信号として出力するデジタルストリーム信号処理装置と、
前記ストリーム信号FL−FRと前記ストリーム信号MIX−L,Rとが入力し、入力された信号のいずれかを、2CH/マルチCH切り換え信号に基づいて選択して出力するセレクタ回路と、
前記セレクタ回路の出力をフロントL,Rのアナログ信号として出力し、前記デジタルストリーム信号処理装置から出力される前記ストリーム信号SL−SRをサラウンドL,Rのアナログ信号として出力し、前記デジタルストリーム信号処理装置から出力される前記ストリーム信号C−SWをセンタC、サブウーファSWのアナログ信号として出力するDAコンバータと、
を備え、
前記DAコンバータから出力されるフロントL,Rのアナログ信号を疑似的なマルチCHサラウンドステレオ信号に選択的に変換する変換回路を設けた音声信号処理装置。
【請求項2】
マルチCHサラウンドステレオ信号を複数のデジタルストリーム信号として出力し、この信号をDA変換する音声信号処理装置において、
前記複数のデジタルストリーム信号を、フロントL,Rの信号成分の含むストリーム信号FL−FRと、サラウンドL,Rの信号成分を含むストリーム信号SL−SRと、センタC、サブウーファSWの信号成分を含むストリーム信号C−SWと、前記マルチCHサラウンドステレオ信号を2CHのL,R信号に合成したストリーム信号MIX−L,Rとの4系統のストリーム信号として出力するデジタルストリーム信号処理装置と、
前記ストリーム信号FL−FRと前記ストリーム信号MIX−L,Rとが入力し、入力された信号のいずれかを、2CH/マルチCH切り換え信号に基づいて選択して出力するセレクタ回路と、
前記セレクタ回路の出力をフロントL,Rのアナログ信号として出力し、前記デジタルストリーム信号処理装置から出力される前記ストリーム信号SL−SRをサラウンドL,Rのアナログ信号として出力し、前記デジタルストリーム信号処理装置から出力される前記ストリーム信号C−SWをセンタC、サブウーファSWのアナログ信号として出力するDAコンバータと、
を備えてなる音声信号処理装置。
【請求項3】
前記DAコンバータから出力されるフロントL,Rのアナログ信号を疑似的なマルチCHサラウンドステレオ信号に選択的に変換する変換回路を設けた請求項2記載の音声信号処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−96442(P2007−96442A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−279816(P2005−279816)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】