説明

音声符号化装置選択方法

符号変換の必要及び選択は中央通話制御機能(17,35)により実行される。各符号変換装置(18,23,34,36)は適切な通話制御部(17,35)に登録する。続いて、通話制御部は音声符号化装置が必要であるのか否かを判定する。音声符号化が必要である場合、通話制御部(17,35)は適切な符号変換装置(18,34)を選択し、適切な符号変換装置をベアラトラフィックのストリーム(16)に挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動体の電気通信に関する。より詳細には、本発明は端点間の音声符号化装置の選択に関する。
【背景技術】
【0002】
無線接続ネットワーク(RAN)における移動局及びボイス・オーバ・インターネット・プロトコル電話ネットワークにおけるインターネットプロトコル電話機には、他のIP電話機又は移動局と通信するための音声符号化装置が必要である。これらのIP電話機又は移動局の音声符号化装置の要件は、異なる場合がある。
【0003】
大抵の電話システム及び無線システムでは、ネットワークを通じる伝送においてよく知られている音声符号化装置に対し各端点のユーザを符号変換することにより音声符号化装置の不一致の問題が解決されるが、これは最適な方法ではない。通常、そうした伝送においてはG.711プロトコルが用いられる。複数の端点が自身のサポートする音声符号化性能を交渉することにより、音声符号化が設定される。これは、不一致な音声符号化装置間での符号変換と呼ばれる。この符号変換は、符号変換が必要でない状況(即ち、音声符号化装置が一致している場合)においても実行されることがある。
【0004】
セッション開始プロトコル(SIP)を用いるボイス・オーバ・インターネット・プロトコルのネットワークにおいては、IP電話機のうちの1つが、2つの端点の音声符号化装置の性能間に不一致が存在することを検知し得る。この結果、通信を可能とする共通の音声符号化装置構成を一方の端点がサポートしないために、通話に失敗する場合がある。また、IP電話機又は端点が通話に符号変換装置を追加する要求を生成する場合がある。この場合、ネットワークを通じる幾つかの工程が必要である。さらに、符号変換装置の追加には、通話に挿入される符号変換装置に接続して制御する方法を、特定の端点又は電話機が認識する必要がある。そうした構成には多くの工程及びネットワーク処理が必要である。さらに、符号変換サービスを提供するために、通話には有意な遅延が挿入される。
【0005】
したがって、端点から独立であり、端点による音声符号化装置選択の必要なく端点間に透過性の通信を提供する、音声符号化装置選択方法を有することが非常に所望される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1には、本発明を実施する無線接続ネットワークのブロック図を示す。図1に示す2つの移動局(MS)12,27は、RAN(無線接続ネットワーク)14、基地局15、基地局20及びRAN25を介して端点間に接続されている。移動局12はRAN14への無線接続により、無線を通じてサービス提供されている。通常、ベアラ及び信号パストラフィックの両方は、RAN14により通話制御部17を通じて別の基地局22へと伝送され、移動局27に到達する。
【0007】
移動局12,27は非互換性の音声符号化装置を有し得るため、通話制御部17,22は、それぞれ符号変換装置18,23のベアラトラフィックパス16への挿入を制御する。信号情報即ち制御情報はパス13を介して伝送される。
【0008】
移動局12が移動局27と通信するより前に、符号変換装置18は通話制御部17に登録する。同様に、符号変換装置23は通話制御部22に登録する。この登録処理には、符号変換装置の性能のセットを適切な通話制御部に提供することが含まれる。このようにして、通話制御部17は、通話制御部17が接続可能な各符号変換装置、ここでは符号変換装置18を示す、に関する完全な性能を認識する。
【0009】
移動局12は、移動局27への通話を開始するとき、移動局12がサポートする音声符号化装置のセットを通信開始の際に組み込む。この音声符号化装置のセットは、パス13を介して通話制御部17へ伝送される。通話制御部17が移動局27への信号パスを確立させるとき、移動局27は自身がサポートする音声符号化装置のセットにより、通話制御部17に応答する。続いて、通話制御部17は、符号変換装置18内のいずれの音声符号化機能が移動局12の音声符号化装置のセット及び移動局27の音声符号化装置のセットとの互換性を有するかを判定する。続いて、通話制御部17は、その音声符号化機能をベアラトラフィックパス16に挿入するように符号変換装置18に指示することにより、音声符号化機能を挿入する。
【0010】
通常、従来技術においては、移動局12,27の間に複雑な交渉が行われる。さらに、音声符号化装置間の互換性を提供するため、移動局12,27のうちの一方が符号変換装置において接続を開始する方法を認識する必要がある。
【0011】
移動局12,27が全く互換性の音声符号化装置を有すると通話制御部17が判定する場合、符号変換装置の挿入なしでパス19を介し移動局12,27の直接的な接続が行われる。しかしながら、例えば移動局12が特定の音声符号化装置V1を備え、移動局27が音声符号化装置V2を備える場合、通話制御部17には符号変換機能が必要である。続いて、通話制御部17は、音声符号化装置1から音声符号化装置2へ及び音声符号化装置2から音声符号化装置1への互換性情報を翻訳する符号変換装置を検出する。続いて、通話制御部17は、この特定の符号変換機能をベアラトラフィックパス16に挿入するように、符号変換装置18を設定する。次に、通話制御部17は、移動局12の音声符号化装置V1がデータ伝送のための互換性を有することを、移動局12に示す。続いて、通話制御部17は、移動局27の音声符号化装置V2が移動局12との伝送のための互換性を有することを、移動局27に示す。
【0012】
続いて、移動局12,27の間に通信が行われ得る。通話制御部17は符号変換装置が必要であるか否かを判定することにより、音声符号化の互換性に関する移動局12,27の間の複雑な交渉を回避する。符号変換装置18による符号変換装置機能のベアラパス16への挿入は、移動局12,27の両方に対し透過性である。このようにして、移動局12,27の必要及び要件に基づき、通話制御部17は符号変換機能を最適に選択し得る。
【0013】
図2には、本発明の音声符号化装置選択方法をサポートするボイス・オーバ・インターネット・プロトコル・ネットワーク30のブロック図を示す。図2に示すインターネット・プロトコル(IP)電話機32,42は、ワイドエリアネットワーク(WAN)40を介して接続されている。また、符号変換装置(XCDR)34,36もワイドエリアネットワーク40に接続されている。加えて、通話制御部35がWAN40及び符号変換装置34,36に接続されている。
【0014】
図1の無線接続ネットワークと同様に、図2のボイス・オーバ・インターネット・プロトコル(VOIP)ネットワークは、符号変換装置34,36の両方に接続されている。符号変換装置34,36は、それら自身の性能のセットを通話制御部35に登録する。
【0015】
IP電話機32が通話の発信側装置(originator)であり、SIP(セッション開始プロトコル)招待(INVITE)メッセージはワイドエリアネットワーク40を介して通話制御部35へ送信されると仮定する。通話制御部35は、この招待メッセージを受信側装置(terminator)42へ伝送し、受信側装置42の音声符号化装置の性能を要求する。招待メッセージにはSDP提示は含まれない。受信側装置のIP電話機42は、自身の音声符号化装置の性能を送信することにより、通話制御部35に応答する。
【0016】
続いて、通話制御部35は符号変換装置が必要であるか否かを判定する。符号変換装置が必要でない場合、通話制御部35は発信側装置32及び受信側装置42の両方に肯定応答を行い、符号変換装置の挿入なく、発信側装置32から受信側装置42へ直接的に通話が行われる。
【0017】
符号変換装置が必要である場合、通話制御部35は、いずれの符号変換装置が発信側装置32及び受信側装置42との互換性を有するかを判定する。続いて、通話制御部35はワイドエリアネットワーク40への挿入において、その符号変換装置を選択する。このとき、トラフィックパスはIP電話機即ち発信側装置32からワイドエリアネットワーク40へと続き、符号変換装置34又は符号変換装置36へと続き、ワイドエリアネットワーク40、WAN40へと戻り、受信側装置のIP電話機42へと続く。
【0018】
関与している発信側装置32及び受信側装置42の各々に必要なのは、自身の性能を通話制御部35へ送信することのみである。通話制御部35は符号変換装置が必要であるか否かを判定する。通話制御部35は、発信側装置32及び受信側装置42の性能に基づき、符号変換装置を最適に選択する。続いて、通話制御部35は、発信側装置32及び受信側装置42へ介入することなく、発信側装置32及び受信側装置42に対して透過性に、選択した符号変換装置を通話のストリームに挿入する。
【0019】
図3には、図2のVOIPネットワーク及び図1のRANネットワークの両方を説明する通話フロー図を示す。通話が行われるより前に、50にて、符号変換装置18,34の各々は通話制御部17,35に登録する。この登録には、符号変換装置の性能のリストを伝送することが含まれる。即ち、いずれの入力音声符号化装置がいずれの出力音声符号化装置に接続され得るかを示すリストが提供される。同様に、52にて、他方の符号変換装置23,36は、それぞれ通話制御部17,35に登録する。
【0020】
VOIPネットワークの場合、54にて、発信側装置32が通話制御部35に招待要求を送信する。RANネットワークの場合、54にて、移動局12による発信の際にメッセージが通話制御部17に送信される。招待及び開始には各々、発信側装置12,32が送信及び受信の性能を有する音声符号化装置のセットが含まれる。次に、通話制御部17,35は移動局27又は受信側装置42に招待又はメッセージを送信する。56にて、このメッセージには、発信側装置12,32の音声符号化性能や、受信側装置27,42において利用可能な音声符号化装置のセットが任意で含まれる。続いて、58にて、受信側装置27,42は自身の音声符号化性能のセットを含むメッセージにより応答する。通話制御部17,35は受信側装置27,42からこの応答を受信する。続いて、通話制御部17,35は符号変換が必要であるか否かを判定する。59にて、符号変換装置が必要であると通話制御部17,35が判定する場合、60にて、通話制御部17,35は適切な符号変換装置18,34を挿入する。
【0021】
VOIPネットワークの場合、62にて、通話制御部ネットワークは、200 okのメッセージにより応答する。RANネットワークの場合、通話制御部17は発信側装置12に応答し、特定の音声符号化装置が選択されたことを示す。VOIPネットワークの場合、次に、64にて、通話制御部35が受信側装置42に肯定応答(ACK)メッセージを送信し、特定の音声符号化装置が選択されたことを示す。RANの例の場合、発信側装置12との通話の互換性のために特定の音声符号化装置が選択されたことが、64にてメッセージにより示される。
【0022】
符号変換装置が必要でないと通話制御部17,35が判定する場合、66にて、ネットワークを通じて発信側装置から受信側装置へ直接的なパスが確立される。符号変換装置18,34がそれぞれ通話制御部17,35により挿入される場合、68にて、発信側装置12,32から符号変換装置18,34へのパスが確立される。加えて、70にて、符号変換装置18,34からのパスがそれぞれ受信側装置27,42まで確立される。
【0023】
符号変換装置の選択を最適に判定及び選択するため、通話制御部17,35は幾つかの方法を選択してよい。最初に、2つの端点(例えば、移動局又はIP電話機)により供給される音声符号化装置のセットに基づき、通話制御部は全ての可能な符号変換装置の選択肢を検出する。続いて、通話制御部17,35は以下の代替の方法のうちの1つを用いて、最適な符号変換装置を選択する。
【0024】
第1の方法では、通話制御部は最良の音声品質を与える符号変換装置を選択してよい。この選択は音響品質の得点化を用いて行われてよく、例えば、最高の端点間品質を有する符号変換装置が選択される。
【0025】
第2の方法では、通話制御部は2つの端点に関して最高の選択順位に最も良く一致する最適な符号変換装置を選択してよい。2つの端点12,27が通話制御部に音声符号化装置の順位順のリストを提供する場合、通話制御部17はその順に一致する1〜nの番号を各々与える。通話制御部は、2つの端点に関するプリファレンス(2つの順位の和が最小であること)に最も良く一致する符号変換装置を選択する。例えば、共通の符号変換装置が一方の端点のリストでは第1の順位にあり、他方の端点のリストでは第10の順位にある場合(合計=11)、この符号変換装置に優先して、両方のリストにて第2の順位にある符号変換装置(合計=4)が選択される。
【0026】
第3の方法では、通話制御部17は端点のうちの一方又は両方における帯域幅の要件を最小とする符号変換装置を選択してよい。例えば、通話制御部は、端点と符号変換装置との間に必要な帯域幅チャネルが最小である符号変換装置を選択し得る。
【0027】
発信側装置と受信側装置との間の複雑な交渉とは対照的に、本発明の音声符号化装置選択方法により、中央サーバ又は通話制御ユニットによる選択の利益が提供される。さらに、符号変換装置の挿入は発信側装置及び受信側装置に対し完全に透過性であり、発信側装置及び受信側装置の処理を非常に単純化して、所望されない交渉遅延を除去する。加えて、必要であると否とを問わず共通の符号変換装置を通じて接続することに代えて、通話制御部が発信側装置及び受信側装置の特定の性能において最良の符号変換装置を最適に選択し得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による無線電話ネットワークのブロック図。
【図2】本発明によるボイス・オーバ・インターネット・プロトコル電話ネットワークのブロック図。
【図3】本発明による音声符号化装置選択方法の通話フロー図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発信側装置の受信側装置との通信互換性及び受信側装置の発信側装置との通信互換性を提供する音声符号化装置選択方法であって、
発信側装置が通信ネットワークを通じて通話制御装置に受信側装置への接続を要求する接続要求工程と、
発信側装置と受信側装置との間の接続に符号変換装置が必要であるか否かを通話制御装置が判定する符号変換装置必要性判定工程と、
符号変換装置が必要である場合、通話制御装置が該接続に符号変換装置を挿入する符号変換装置挿入工程とからなる方法。
【請求項2】
符号変換装置が通話制御装置に登録する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
登録する工程は複数の符号変換装置が通話制御装置に登録する工程を含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
登録する工程は音声符号化装置の性能のセットを符号変換装置から通話制御装置へ伝送する工程を含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
通話制御装置が通信ネットワークに受信側装置との接続を要求する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
通話制御装置が発信側装置に受信側装置との接続の肯定応答を行う工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
通話制御装置が受信側装置に発信側装置との接続の肯定応答を行う工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
符号変換装置必要性判定工程において符号変換装置は必要でないことが示される場合、発信側装置と受信側装置との間に直接的な接続を行うように通話制御装置が通信ネットワークに指示する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
接続要求工程は発信側装置の音声符号化装置の性能のセットを通話制御装置へ伝送する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
受信側装置の音声符号化装置の性能のセットを通話制御装置へ伝送する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
符号変換装置挿入工程は発信側装置及び受信側装置の通信性能を提供するための符号変換装置を通話制御装置が選択する符号変換装置選択工程を含む請求項10に記載の方法
【請求項12】
符号変換装置選択工程は音響品質に基づき符号変換装置を最適に選択する工程を含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
通信ネットワークは移動体電気通信ネットワークを含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
通信ネットワークはワイドエリアネットワークを含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
発信側装置は移動局及びインターネット・プロトコル電話機のうちの少なくとも一方を含み、受信側装置は移動局及びインターネット・プロトコル電話機のうちの少なくとも一方を含む請求項1に記載の方法。
【請求項16】
発信側装置と受信側装置との間の通信を提供する通信ネットワークにおける音声符号化装置選択方法であって、
発信側装置によりサポートされる音声符号化装置の第1のセットを通話制御装置が判定する第1音声符号化装置判定工程と、
受信側装置によりサポートされる音声符号化装置の第2のセットを通話制御装置が判定する第2音声符号化装置判定工程と、
音声符号化装置の第1のセットのうちの1つ以上の音声符号化装置と、音声符号化装置の第2のセットのうちの1つ以上の音声符号化装置とを有する符号変換装置を通話制御装置が挿入する符号変換装置挿入工程とからなる方法。
【請求項17】
符号変換装置挿入工程は音声符号化装置の第1のセット及び第2のセットの音響品質に基づき符号変換装置を最適に選択する工程を含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
符号変換装置挿入工程は第1及び第2の音声符号化装置の最小帯域幅に基づき符号変換装置を最適に選択する工程を含む請求項16に記載の方法。
【請求項19】
符号変換装置挿入工程は音声符号化装置の第1のセット及び第2のセットが好適に一致することに基づき符号変換装置を最適に選択する工程を含む請求項16に記載の方法。
【請求項20】
発信側装置と受信側装置との間の通信ネットワークを通じる通話をサポートする音声符号化装置選択方法であって、
発信側装置の音声符号化装置の第1のセットの性能を取得する工程と、
受信側装置の音声符号化装置の第2のセットの性能を取得する工程と、
発信側装置の音声符号化装置の第1のセットの性能のうちの1つ以上をサポートするため及び受信側装置の音声符号化装置の第2のセットの性能のうちの1つ以上をサポートするための符号変換装置を選択する工程とからなる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−510324(P2007−510324A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−535540(P2006−535540)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/032615
【国際公開番号】WO2005/041592
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(390009597)モトローラ・インコーポレイテッド (649)
【氏名又は名称原語表記】MOTOROLA INCORPORATED
【Fターム(参考)】