説明

音声認識装置および音声認識方法

【課題】使用環境に適した開始トリガを選択する音声認識装置を実現することである。
【解決手段】本実施形態の音声認識装置は、複数のトリガ検出手段とトリガ選択手段と認
識手段とを備える。トリガ検出手段は、機器を操作するためのコマンド発声の認識開始を
指示する開始トリガを検出する。トリガ選択手段は、前記機器に設置された1又は複数の
センサからの信号に基づいて、前記複数のトリガ検出手段から前記機器の使用環境に適し
たトリガ検出手段を選択する。認識手段は、前記トリガ選択手段で動作を有効にされた前
記トリガ検出手段が、前記開始トリガを検出した場合、前記コマンド発声の認識処理を開
始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、音声認識装置および音声認識方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユーザが発声したコマンド(コマンド発声)を認識して機器の操作を行う音声認
識装置が実用化されている。コマンド発声の認識を開始する指示(開始トリガ)として、
ユーザによる特定のキーワードの発声、ジェスチャ、拍手などが提案されている。これら
の開始トリガを用いた音声認識装置では、開始トリガを検出した後、コマンド発声の認識
処理を開始する。
【0003】
しかしながら、上述した開始トリガには、操作対象となる機器の使用環境に応じた一長
一短があり、使用環境に適しない開始トリガを用いた場合、開始トリガの検出精度が低下
するという問題があった。例えば、機器の周囲が暗い場合、画像認識の精度が低下するた
め、ジェスチャによる開始トリガを正しく検出することができなかった。また、複数の開
始トリガを受理可能な音声認識装置において、使用環境に適した開始トリガをユーザが適
宜選択することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−204266号公報
【特許文献2】特開2010−193355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明が解決しようとする課題は、使用環境に適した開始トリガを選択する音声認識装置
を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の音声認識装置は、複数のトリガ検出手段とトリガ選択手段と認識手段とを
備える。トリガ検出手段は、機器を操作するためのコマンド発声の認識開始を指示する開
始トリガを検出する。トリガ選択手段は、前記機器に設置された1又は複数のセンサから
の信号に基づいて、前記複数のトリガ検出手段から前記機器の使用環境に適したトリガ検
出手段を選択する。認識手段は、前記トリガ選択手段で動作を有効にされた前記トリガ検
出手段が、前記開始トリガを検出した場合、前記コマンド発声の認識処理を開始する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態の音声認識装置を示すブロック図。
【図2】実施形態の音声認識装置のハードウェア構成を示す図。
【図3】実施形態の拍手トリガ検出部のフローチャート。
【図4】実施形態の拍手トリガ検出部で検出される拍手の一例を示す図。
【図5】実施形態の音声認識装置のフローチャート。
【図6】実施形態のトリガ選択部のフローチャート。
【図7】変形例1のトリガ選択部のフローチャート。
【図8】テレビ受像機のディスプレイに表示された画像の一例を示す図。
【図9】テレビ受像機のディスプレイに表示された画像の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の音声認識装置は、ユーザのコマンド発声を認識して機器の操作を行う
装置である。音声認識装置はテレビ受像機に内蔵されており、ユーザはコマンド発声によ
り、テレビ受像機のチャンネルの切り替え、番組表の検索などを指示することができる。
【0010】
本実施形態の音声認識装置は、コマンド発声の認識を開始する指示(開始トリガ)に発
話ボタン押下などの操作を必要とせず、ジェスチャトリガ、ボイストリガ、拍手トリガの
3種類の開始トリガの中から、テレビ受像機の使用環境に適した開始トリガを選択する。
ここで、ジェスチャトリガはユーザによる特定のジェスチャを、ボイストリガはユーザに
よる特定のキーワード発声を、拍手トリガはユーザの拍手をそれぞれ開始トリガとするも
のである。
【0011】
図1は、第1の実施形態にかかる音声認識装置100を示すブロック図である。本実施
形態の音声認識装置100は、マイク208で取得された音からユーザの特定のキーワー
ド発声による開始トリガを検出するボイストリガ検出部101と、カメラ209で撮像さ
れた映像からユーザの特定のジェスチャによる開始トリガを検出するジェスチャトリガ検
出部102と、マイク208で取得された音からユーザの拍手による開始トリガを検出す
る拍手トリガ検出部103と、テレビ受像機周囲の音量を測定する音量センサ210、テ
レビ受像機からユーザまでの距離を測定する距離センサ211、テレビ受像機周囲の光量
を測定する光量センサ212からの信号に基づいて、上記各トリガ検出部のうち、使用環
境に適した開始トリガを検出するトリガ検出部の動作を有効にするトリガ選択部104と
、トリガ選択部104で動作を有効にされた何れかのトリガ検出部が開始トリガを検出し
た場合、マイク208で取得されたコマンド発声の音声波形に対する認識処理を開始する
認識部105とを備える。
【0012】
本実施形態の音声認識装置は、操作対象となる機器(テレビ受像機)に設置されたセン
サからの信号に基づいて、機器の使用環境に適したトリガ検出部の動作を有効にする。こ
れにより、開始トリガを高い精度で検出することができ、結果としてユーザのコマンド発
声の認識精度を向上させることができる。
【0013】
(ハードウェア構成)
本実施形態の音声認識装置は、図2に示すような通常のコンピュータを利用したハード
ウェアで構成することができ、装置全体を制御するCPU(Central Processing Unit)
等の制御部201と、各種データや各種プログラムを記憶するROM(Read Only Memory
)やRAM(Random Access Memory)等の記憶部202と、各種データや各種プログラム
を記憶するHDD(Hard Disk Drive)やCD(Compact Disk)ドライブ装置等の外部記
憶部203と、ユーザの指示入力を受け付ける操作部204と、外部装置との通信を制御
する通信部205と、ユーザのコマンド発声を取得するマイク208と、ユーザのジェス
チャを撮像するカメラ209と、テレビ受像機周囲の音量を測定する音量センサ210と
、テレビ受像機からユーザまでの距離を測定する距離センサ211と、テレビ受像機周囲
の光量を測定する光量センサ212と、これらを接続するバス206とを備えている。
【0014】
このようなハードウェア構成において、制御部201がROM等の記憶部202や外部
記憶部203に記憶された各種プログラムを実行することにより以下の機能が実現される

【0015】
(トリガ選択部)
トリガ選択部104は、音量センサ210、距離センサ211、光量センサ212から
の信号に基づいて、後述する各トリガ検出部のうちテレビ受像機の使用環境に適したトリ
ガ検出部を選択し、その動作を有効にする。
【0016】
ここで、音量センサ210は、テレビ受像機周囲の音量を測定するセンサであり、マイ
ク208で取得した周囲雑音の音量やテレビ受像機自体がスピーカから再生する音の音量
を測定する。なお、音量センサ210で音を時系列のディジタル信号として取得し、トリ
ガ選択部104でその信号から音量(例えば、所定区間における信号のパワー)を計算す
るようにしてもよい。この場合、音量センサ210はマイク208で代替することができ
る。
【0017】
距離センサ211は、テレビ受像機からユーザまでの距離を測定するセンサである。所
定の距離以内に人がいるかいないかを判別する人感センサで代替することもできる。
【0018】
光量センサ212は、テレビ受像機周囲の光量を測定する光量センサである。
【0019】
これらセンサからの信号に基づいた、トリガ選択部104における動作の詳細は後述す
る。
【0020】
(ボイストリガ検出部)
ボイストリガ検出部101は、マイク208で取得された音からユーザのキーワード発
声による開始トリガを検出する。
【0021】
ボイストリガを用いた音声認識では、特定のキーワード発声を開始トリガとして検出後
、それに続くユーザのコマンド発声を認識する(特開2001−67091号公報)。例
えば、「ハロー」をキーワードとして使用する場合、ユーザの「ハロー」というキーワー
ド発声を検出すると、「ピッ」という音を出力してユーザにコマンド発声を促す。そして
、それに続く「8チャンネル」などのユーザのコマンド発声を認識する。
【0022】
ボイストリガ検出部101は、特定のキーワードを認識語彙とした認識処理を継続的に
行い、得られた信頼度スコアが閾値Lを超えた場合に、特定のキーワードが発声されたと
判別する。閾値Lは、特定のキーワードを発声した場合の信頼度スコアの分布と、それ以
外を発声した場合の信頼度スコアの分布を予め実験的に求めておき、これら2つの分布を
適切に区別する値に設定することができる。
【0023】
ボイストリガ検出部101は、マイク208で取得された音を常時取り込んで認識処理
を行うが、認識語彙を特定のキーワードに絞ることができるため周囲雑音による誤認識の
危険性を減らすことができる。
【0024】
ただし、周囲雑音やテレビ受像機の出力音声が非常に大きい場合やユーザの声が小さい
場合は、キーワード発声のSNRが低下するため、キーワード発声による開始トリガの検
出精度が低下する。
【0025】
(ジェスチャトリガ検出部)
ジェスチャトリガ検出部102は、カメラ209で撮像された映像からユーザの特定の
ジェスチャによる開始トリガを検出する。
【0026】
ジェスチャトリガを用いた音声認識では、ユーザの特定のジェスチャを開始トリガとし
て検出後、それに続くユーザのコマンド発声を認識する(特開2010−182014号
公報)。例えば、「手を左右に振る」という動作をジェスチャとして使用する場合、画像
認識により「手を左右に振る」動作を検出すると、「ピッ」という音を出力してユーザに
コマンド発声を促す。そして、それに続く「8チャンネル」などのユーザのコマンド発声
を認識する。
【0027】
ジェスチャトリガ検出部102は、画像認識を用いて開始トリガを検出するため、周囲
雑音の影響を受けないが、カメラで捉えることのできる範囲でユーザがジェスチャをする
必要がある等の制約がある。また、照明条件によりジェスチャの認識精度が変動する。さ
らに、高度な画像認識処理を常に動作させる必要があるため、他のトリガ検出部と比較し
て消費電力が大きくなる。
【0028】
(拍手トリガ検出部)
拍手トリガ検出部103は、マイク208で取得された音からユーザの拍手による開始
トリガを検出する。ここで、本実施形態における拍手は、「パン、パン」という2回連続
した拍手とする。
【0029】
拍手トリガを用いた音声認識では、2回連続した拍手を検出すると、「ピッ」という音
を出力してユーザにコマンド発声を促す。そして、それに続くユーザのコマンド発声を認
識する。
【0030】
図3のフローチャートを利用して、拍手トリガ検出部103の処理を説明する。この処
理では、図4に示すように、所定間隔(閾値T)の間にパワーが閾値Sを2回超えるよ
うな音の波形を拍手として検出する。
【0031】
ここで、閾値Tは、2回連続した拍手を行った場合の拍手間の継続時間の分布を予め
求めておき、その分布が十分に包含される最小の値に設定することができる。また、閾値
Sは、拍手を行っていない時のパワーの分布と、拍手を行った時のパワーの分布を予め実
験的に求めておき、2つの分布を適切に区別するための最適値を用いて設定できる。
【0032】
まず、図3のステップS1では、マイク208で音の取得が開始された時刻をt=0と設
定する。ここで、tは、取得された音の波形をフレーム長25ms、間隔8msで分割し
た際のフレームの番号を表す。ステップS2では、tをt+1に更新する。ステップS3
では、t番目のフレームにおける波形のパワーを計算し、その値を予め設定した閾値Sと
比較する。パワーが閾値Sを超える場合はステップS4へ、超えない場合はステップS2
へ移行する。ステップS4では、T=0に設定する。ステップS5では、TをT+1に、
tをt+Tにそれぞれ更新する。ステップS6では、Tが予め設定した閾値Tより小さ
いか否かを判別する。TがTより小さい場合はステップS7へ、それ以外の場合はステ
ップS2へ移行する。ステップS7では、t番目のフレームにおける波形のパワーを計算
し、その値を閾値Sと比較する。パワーが閾値Sを超える場合はステップS8へ移行し、
2回連続した拍手を検出したものと判別する。それ以外の場合はステップS2へ移行し、
処理を継続する。
【0033】
本実施形態で用いる「パン、パン」という2回連続した拍手は他の周囲雑音と比較して
特別な特徴を持つため、拍手トリガ検出部103は、周囲雑音がある程度大きい場合でも
拍手による開始トリガを検出することができる。
【0034】
(認識部)
認識部105は、トリガ選択部104で有効とされた何れかのトリガ検出部が開始トリ
ガを検出した場合、コマンド発声の認識処理を開始する。具体的には、認識部105は、
何れかのトリガ検出部が開始トリガを検出した後に、マイク208で取得された音の取り
込みを開始し、この音に含まれるコマンド発声に対する認識処理を実行する。
【0035】
この他にも、マイク208で取得された音の取り込みとそれに対する認識処理を継続し
て行い、開始トリガ検出後に生成された認識結果のみを認識部105が出力するようにし
てもよい。
【0036】
(フローチャート)
図5のフローチャートを利用して、本実施形態にかかる音声認識装置の処理を説明する

【0037】
ステップS11では、トリガ選択部104は、音量センサ210、距離センサ211、
光量センサ212からの信号に基づいて、ボイストリガ検出部101、ジェスチャトリガ
検出部102、拍手トリガ検出部103の中からテレビ受像機の使用環境に適したトリガ
検出部の動作を有効にする。
【0038】
図6のフローチャートを利用して、ステップS11の詳細を説明する。まず、ステップ
S21では、トリガ選択部104は、初期化のため全てのトリガ検出部(ボイストリガ検
出部101、ジェスチャトリガ検出部102、拍手トリガ検出部103)の動作を無効に
する。
【0039】
ステップS22では、トリガ選択部104は、距離センサ211で測定されたテレビ受
像機からユーザまでの距離が予め設定された閾値Dを超えるか否かを判別する。閾値Dを
超える場合は、ユーザまでの距離が遠くジェスチャトリガ検出部102おけるジェスチャ
の認識精度が低下する可能性がある。したがって、この場合は、ジェスチャトリガ検出部
102はこの使用環境に適していないものとしてステップS25に移行する。ユーザまで
の距離が閾値Dを超えない場合は、ステップS23に移行する。
【0040】
なお、閾値Dは、予め実験的に求めたユーザまでの距離とジェスチャの検出精度との関
係に基づいて設定することができる。
【0041】
ステップS23では、光量センサで測定されたテレビ受像機周囲の光量が予め設定され
た閾値Lを超えるか否かを判別する。閾値Lを超えない場合は、周囲が暗いためジェスチ
ャトリガ検出部102おけるジェスチャの認識精度が低下する可能性がある。したがって
、この場合は、ジェスチャトリガ検出部102はこの使用環境に適していないものとして
ステップS25に移行する。
【0042】
一方、光量が閾値Lを超える場合はステップS24に移行し、ユーザまでの距離および
光量の両条件がジェスチャトリガ検出部102おけるジェスチャの画像認識に適している
ものとして、ジェスチャトリガ検出部102の動作を有効にする。
【0043】
なお、閾値Lは、予め実験的に求めた光量とジェスチャの検出精度との関係に基づいて
設定することができる。
【0044】
ステップS25では、トリガ選択部104は、音量センサ210で測定されたテレビ受
像機周囲の音量が予め設定された閾値Nを超えるか否かを判別する。閾値Nを超える場合
は、周囲の雑音が大きすぎるためボイストリガ検出部101におけるキーワード発声の検
出精度が低下する可能性がある。したがって、この場合は、ボイストリガ検出部101は
この使用環境に適していないものとしてステップS27に移行する。
【0045】
一方、音量が閾値Nを超えない場合はステップS26に移行し、周囲の雑音が小さくボ
イストリガ検出部101におけるキーワード発声の認識に適しているものとして、ボイス
トリガ検出部101の動作を有効にする。
【0046】
なお、閾値Nは、予め実験的に求めた音量とキーワード発声の検出精度との関係に基づ
いて設定することができる。
【0047】
最後に、ステップ27では、拍手トリガ検出部103の動作を有効にする。本実施形態
では、拍手トリガ検出部103の動作を常に有効にする。これは、拍手トリガ検出部10
3は、周囲の雑音が大きくても、ユーザまでの距離が遠くても比較的高い精度で開始トリ
ガを検出できるからである。
【0048】
図5のフローチャートに戻って説明を続ける。ステップS12では、音声認識装置は、
ステップS11で有効とされたトリガ検出部の動作を開始する。
【0049】
ステップS13では、ステップS12で動作を開始した何れかのトリガ検出部が開始ト
リガを検出したか否かを判別する。開始トリガを検出した場合は、ステップS14へ移行
する。検出していない場合は、何れかのトリガ検出部が開始トリガを検出するまで待つ。
【0050】
ステップS14では、開始トリガを検出した後、ユーザのコマンド発声の認識処理を開
始する。
【0051】
(効果)
このように、本実施形態の音声認識装置は、操作対象となる機器に設置されたセンサか
らの信号に基づいて、機器の使用環境に適したトリガ検出部の動作を有効にする。これに
より、開始トリガを高い精度で検出することができ、結果としてユーザのコマンド発声の
認識精度を向上させることができる。
【0052】
(変形例1)
本実施形態のトリガ選択部104は、音量センサ210、距離センサ211、光量セン
サ212の計3つのセンサからの信号に基づいて、各トリガ検出部における動作の有効・
無効を選択したが、何れか1つのセンサを用いてトリガ検出部の動作を選択することも可
能である。例えば、音量センサ210があれば、図6のステップS25と同様な処理を用
いて、ボイストリガ検出部101の動作の有効・無効を選択することができる。
【0053】
また、距離センサ211からの信号を基に、ボイストリガ検出部101の動作の有効・
無効を選択することもできる。この場合、距離センサ211で測定された距離が閾値D以
下になったときに、ボイストリガ検出部101の動作を有効にする。これは、距離が小さ
い時は、テレビ受像機で受信されるユーザの音声が大きくなるため、ボイストリガ検出部
101での開始トリガの検出精度が高くなるからである。
【0054】
また、トリガ選択部104が、センサ以外からの制御信号を用いて、各トリガ検出部に
おける動作の有効・無効を選択することもできる。センサ以外からの制御信号としては、
ユーザが指示した消費電力に関するモード(電力モード)がある。例えば、ユーザが、消
費電力が少ないモード(省電力モード)を選択した場合、トリガ選択部104は、常時動
作時に消費電力が大きくなるジェスチャトリガ検出部102の動作を無効にすることがで
きる。
【0055】
図7は、電力モードを利用する場合のトリガ選択部104の動作を示すフローチャート
である。このフローチャートのステップS31では、トリガ選択部104は、ユーザが指
示した電力モードを判別する。電力モードが通常のモード(通常モード)である場合は、
ステップS22に移行しジェスチャトリガ検出部102を含めた各トリガ検出部における
動作の有効・無効を選択する。一方、電力モードが省電力モードである場合は、ステップ
S25に移行し、消費電力が高いジェスチャトリガ検出部102の動作が有効にならない
ようにする。
【0056】
このように、本変形例にかかる音声認識装置は、センサでは取得できない制御信号に基
づいて、トリガ検出部の動作の有効・無効を選択することができる。
【0057】
(変形例2)
本実施形態の音声認識装置は、トリガ選択部104における各トリガ検出部の動作の有
効・無効の選択結果を、提示部(図示なし)を介してユーザに提示することができる。提
示部としては、テレビ受像機のディスプレイなどが考えられる。
【0058】
図8および図9は、テレビ受像機のディスプレイ400に表示された画像を表している
。例えば、図8のマーク401はボイストリガ検出部101、マーク402は拍手トリガ
検出部103、マーク403はジェスチャトリガ検出部102の動作がそれぞれ有効であ
ることを表している。すなわち、図8の状態では、ユーザは全ての開始トリガを用いてコ
マンド発声の認識開始を指示することができる。
【0059】
一方、図9では、マーク401およびマーク402のみが表示されており、マーク40
3は表示されていない。すなわち、図9の状態では、ユーザはジェスチャを開始トリガと
して選択できないことを意味している。
【0060】
このように、有効に動作しているトリガ検出部の情報をユーザに提示することにより、
ユーザは使用する開始トリガを迷うことなく選択することができる。
【0061】
なお、ユーザへの提示方法は上述した方法に限ったものではなく、テレビ受像機にトリ
ガ検出部と同数のLEDを取りつけ、有効に動作しているトリガ検出部に対応したLED
を点灯させるようにしてもよい。
【0062】
(変形例3)
本実施形態におけるコマンド発声は、「8チャンネル」などのような孤立単語の発声だ
けでなく、「スポーツ番組を検索して」といった自然文の発声も含む。
【0063】
また、音声認識装置がクラウドサーバ上に設置され、テレビ受像機がネットワークを介
して音声認識装置と接続している場合でも、音声認識装置は本実施形態と同様な処理を実
行することができる。
【0064】
また、本実施形態におけるトリガ検出部は、ボイストリガ検出部101、ジェスチャト
リガ検出部102、拍手トリガ検出部103の3種類であるが、トリガ検出部はこれに限
られない。他の種類の開始トリガを検出するトリガ検出部であってもよい。
【0065】
また、本実施形態では、使用環境に適したトリガ検出部を選択しこのトリガ検出手段の
動作を有効にしていたが、複数のトリガ検出部を常時動作させておき、トリガ選択部10
4で選択されたトリガ検出部が開始トリガを検出した場合にコマンド発声の認識処理を開
始するようにしてよい。
【0066】
以上説明した本実施形態における一部機能もしくは全ての機能は、ソフトウェア処理に
より実現可能である。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したも
のであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その
他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の
省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や
要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる

【符号の説明】
【0068】
101 ボイストリガ検出部
102 ジェスチャトリガ検出部
103 拍手トリガ検出部
104 トリガ選択部
105 認識部
201 制御部
202 記憶部
203 外部記憶部
204 操作部
205 通信部
206 バス
208 マイク
209 カメラ
210 音量センサ
211 距離センサ
212 光量センサ
400 テレビ受像機のディスプレイ
401 ボイストリガが有効であることを示すマーク
402 拍手トリガが有効であることを示すマーク
403 ジェスチャトリガが有効であることを示すマーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器を操作するためのコマンド発声の認識開始を指示する開始トリガを検出する複数のト
リガ検出手段と、
前記機器に設置された1又は複数のセンサからの信号に基づいて、前記複数のトリガ検出
手段から前記機器の使用環境に適したトリガ検出手段を選択するトリガ選択手段と、
前記トリガ選択手段で選択された前記トリガ検出手段が、前記開始トリガを検出した場合
、前記コマンド発声の認識処理を開始する認識手段と、
を備える音声認識装置。
【請求項2】
前記1又は複数のセンサのうちの少なくとも1つが、前記機器の周囲の音量を測定する音
量センサであり、前記複数のトリガ検出手段のうちの少なくとも1つが、ユーザの特定の
キーワード発声による開始トリガを検出するボイストリガ検出手段である場合において、
前記トリガ選択手段が、前記音量が予め決められた閾値以下となる場合に、前記ボイスト
リガ検出手段を選択する請求項1記載の音声認識装置。
【請求項3】
前記1又は複数のセンサのうちの少なくとも1つが、前記機器の周囲の光量を測定する光
量センサであり、前記複数のトリガ検出手段のうちの少なくとも1つが、ユーザの特定の
ジェスチャによる開始トリガを検出するジェスチャトリガ検出手段である場合において、
前記トリガ選択手段が、前記光量が予め決められた閾値を超える場合に、前記ジェスチャ
トリガ検出手段を選択する請求項1記載の音声認識装置。
【請求項4】
前記1又は複数のセンサのうちの少なくとも1つが、前記機器からユーザまでの距離を測
定する距離センサであり、前記複数のトリガ検出手段のうちの少なくとも1つが、ユーザ
の特定のジェスチャによる開始トリガを検出するジェスチャトリガ検出手段である場合に
おいて、
前記トリガ選択手段が、前記距離が予め決められた閾値以下となる場合に、前記ジェスチ
ャトリガ検出手段を選択する請求項1記載の音声認識装置。
【請求項5】
前記1又は複数のセンサのうちの少なくとも1つが、前記機器からユーザまでの距離を測
定する距離センサであり、前記複数のトリガ検出手段のうちの少なくとも1つが、ユーザ
の特定のキーワード発声による開始トリガを検出するボイストリガ検出手段である場合に
おいて、
前記トリガ選択手段が、前記距離が予め決められた閾値以下となる場合に、前記ボイスト
リガ検出手段を選択する請求項1記載の音声認識装置。
【請求項6】
前記トリガ選択手段が、前記センサからの信号以外の制御信号に基づいて、前記使用環境
に適した前記トリガ検出手段を選択する請求項1記載の音声認識装置。
【請求項7】
コマンド発声での操作対象となる機器に設置された1又は複数のセンサからの信号に基づ
いて、前記コマンド発声の認識開始を指示する開始トリガを検出する複数のトリガ検出手
段から、前記機器の使用環境に適したトリガ検出手段を選択するトリガ選択ステップと、
前記トリガ選択ステップで選択された前記トリガ検出手段が、前記開始トリガを検出した
場合、前記コマンド発声の認識処理を開始する認識ステップと、
を備える音声認識方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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