説明

音楽データ処理装置及びプログラム

【課題】 複数の音楽データを簡単に一括変換できるようにする。
【解決手段】 再生規定情報に規定された複数の第1フォーマットの音楽データを、第1フォーマットとは異なる別の第2フォーマットへと変換すべき対象に特定する。特定した複数の第1フォーマットの音楽データを前記第2フォーマットの音楽データへとデータ変換する。再生規定情報は、記憶手段に記憶した多数の第1フォーマットの音楽データのうち、連続再生対象とする複数の第1フォーマットの音楽データ及びその再生順を規定しているものである。このように、再生規定情報に規定されている複数の第1フォーマットの音楽データを、変換対象とする音楽データの特定に利用することから、ユーザは予め再生のために作成済みの再生規定情報を用いるだけで、複数の音楽データを簡単に一括変換できるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、あるフォーマットの音楽データを異なる別のフォーマットの音楽データへと変換する音楽データ処理装置に関する。特に、再生対象及び再生順を規定した所定の再生規定情報に基づいて、複数の音楽データを一括変換できるようにした音楽データ処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、予め記憶しておいた1曲に該当する音楽データに基づいて電子的に楽音を発生することのできる、例えばハードディスクレコーダ等の電子音楽再生機器、電子楽器、あるいはパーソナルコンピュータ(ただし音源を含むもの)などの、電子音楽装置が一般的に用いられている。これらの電子音楽装置では、機器の種類やメーカー毎に異なる規格である独自フォーマットの音楽データを再生することが可能となっている。そのため、ユーザが現在使用している機器で再生可能な音楽データを異なる機器でも再生したいような場合には、現在使用している機器で再生可能な音楽データ(こうした変換前の音楽データを第1フォーマットの音楽データと呼ぶ)を、他の異なる機器で再生可能な音楽データ(こうした変換後の音楽データを第2フォーマットの音楽データと呼ぶ)へと変換しなければならない。そこで、あるフォーマット(前記第1フォーマット)から異なる別のフォーマット(前記第2フォーマット)へと音楽データを変換する装置及びプログラムが従来から知られている。こうした装置の一例を挙げると、下記に示す特許文献1に記載のものがある。該特許文献1に記載されている装置(システム)においては、変換対象とする変換元の第1フォーマットの音楽データをユーザが1つ1つ個別に指定し、該指定に応じて音楽データの変換が行われるようになっている。
また、一般的に電子音楽装置においては、1回1回ユーザが再生対象とする音楽データを選択せずとも、再生対象及び再生順序を規定した所定の再生規定情報(所謂プレイリスト)に基づき、再生対象の音楽データを再生順に従って順次に連続再生することのできるようにしている。このプレイリストを生成する場合には、ユーザが多数記憶されている音楽データの中から所望の再生対象としたい音楽データを再生順に1つ1つ選択するようになっていた。
なお、本明細書における音楽データのフォーマットとは、例えばデータの構造(例えば、モノラルやステレオなど)やデータのファイル形式(例えば、WAVファイル形式やMP3ファイル形式など)などを含む概念である。
【特許文献1】特開平10−124046号公報
【0003】
ところで、ユーザは現在使用している機器で作成したプレイリストと同じ再生対象及び再生順で他の機器でも同様に音楽データを再生したいことがある。上述したように、異なる機器で音楽データを再生したい場合、ユーザは利用する機器に応じて音楽データを変換しなければならない。しかし、従来では多数の音楽データの中からプレイリストで再生対象とされている該当の音楽データを1つ1つ選択して、該選択した音楽データを個別に変換しなければならなかったことから、特に多数の音楽データを変換しなければならない場合にこうした作業は非常に面倒なことであり、また全ての音楽データを変換するのに非常に時間がかかってしまい合理的でない、という問題点があった。また、ユーザは他の機器において音楽データの変換後に、多数記憶されている音楽データの中から所望の再生対象としたい音楽データを再生順に1つ1つ選択してプレイリストを生成しなければならず、こうした処理を音楽データを変換するたびに他の機器でも同じように行わなければならないのは手間がかかり都合が悪い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、あるフォーマットの音楽データを異なる別のフォーマットの音楽データへと変換する場合に、簡単に複数の音楽データを一括変換することのできるようにした音楽データ処理装置及びプログラムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る音楽データ処理装置は、異なるフォーマット間で音楽データを変換する音楽データ処理装置であって、再生可能な第1フォーマットの音楽データを多数記憶する記憶手段と、前記記憶した多数の第1フォーマットの音楽データのうち、連続再生対象とする複数の第1フォーマットの音楽データ及びその再生順を規定した所定の再生規定情報を取得する取得手段と、前記取得した再生規定情報に基づき、前記第1フォーマットとは異なる別の第2フォーマットへと変換すべき対象とする複数の第1フォーマットの音楽データを特定する特定手段と、前記特定した複数の第1フォーマットの音楽データを前記第2フォーマットの音楽データへとデータ変換する変換手段とを具え、前記特定手段は変換対象とする音楽データの特定に、前記取得した再生規定情報に規定されている複数の第1フォーマットの音楽データを利用することを特徴とする。
【0006】
本発明によると、再生規定情報に規定された複数の第1フォーマットの音楽データを、前記第1フォーマットとは異なる別の第2フォーマットへと変換すべき対象に特定する。そして、該特定した複数の第1フォーマットの音楽データを前記第2フォーマットの音楽データへとデータ変換する。前記再生規定情報は、記憶手段に記憶した多数の第1フォーマットの音楽データのうち、連続再生対象とする複数の第1フォーマットの音楽データ及びその再生順を規定しているものである。この再生規定情報に規定されている複数の第1フォーマットの音楽データを、変換対象とする音楽データの特定に利用する。このようにすると、ユーザは予め再生のために作成済みである再生規定情報を用いるだけで、複数の音楽データの変換を一括して行うことが簡単にできるようになる。
【0007】
本発明は装置の発明として構成し実施することができるのみならず、方法の発明として構成し実施することができる。また、本発明は、コンピュータまたはDSP等のプロセッサのプログラムの形態で実施することができるし、そのようなプログラムを記憶した記憶媒体の形態で実施することもできる。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、あるフォーマットの音楽データを異なるフォーマットの音楽データへと変換する場合に、再生対象及び再生順序を規定した所定の再生規定情報に基づき変換対象の音楽データを特定し、該特定した音楽データを変換するようにした。こうすることにより、ユーザは予め作成済みの所定の再生規定情報を用いるだけで、複数の音楽データの変換を一括して行うことが簡単にできるようになる、という効果を得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に従って詳細に説明する。
【0010】
図1は、この発明に係る音楽データ処理装置を適用した電子音楽装置の全体構成を示したハード構成ブロック図である。本実施例に示す電子音楽装置は、マイクロプロセッサユニット(CPU)1、リードオンリメモリ(ROM)2、ランダムアクセスメモリ(RAM)3からなるマイクロコンピュータによって制御される。CPU1は、この電子音楽装置全体の動作を制御するものである。このCPU1に対して、データ及びアドレスバス1Dを介してROM2、RAM3、検出回路4,5、表示回路6、音源回路7、効果回路8、外部記憶装置10、MIDIインタフェース(I/F)11および通信インタフェース(I/F)12がそれぞれ接続されている。更に、CPU1には、タイマ割込み処理(インタラプト処理)における割込み時間や各種時間を計時するタイマ1Aが接続されている。例えば、タイマ1Aはクロックパルスを発生し、発生したクロックパルスをCPU1に対して処理タイミング命令として与えたり、あるいはCPU1に対してインタラプト命令として与える。CPU1は、これらの命令に従って各種処理を実行する。
【0011】
ROM2は、CPU1により実行される各種プログラムや各種データを格納するものである。RAM3は、CPU1が所定のプログラムを実行する際に発生する各種データを一時的に記憶するワーキングメモリとして、あるいは現在実行中のプログラムやそれに関連するデータを記憶するメモリ等として使用される。RAM3の所定のアドレス領域がそれぞれの機能に割り当てられ、レジスタやフラグ、テーブル、メモリなどとして利用される。演奏操作子4Aは楽音の音高を選択するための複数の鍵を備えた例えば鍵盤等のようなものであって、各鍵に対応してキースイッチを有しており、この演奏操作子4A(鍵盤等)はユーザによるマニュアル(手弾き)演奏のために使用できるのは勿論のこと、当該電子音楽装置における各種設定を行う入力手段などとして使用することもできる。検出回路4は、演奏操作子4Aの各鍵の押圧及び離鍵を検出することによって検出出力を生じる。設定操作子(スイッチ等)5Aは、例えばプレイリスト(後述する図2参照)を選択するプレイリスト選択スイッチ、プレイリストに追加又はプレイリストから削除する対象の音楽データ(後述する図3参照)を選択するデータ登録・削除スイッチ、音楽データの変換(エクスポートとも呼ぶ)を指示するエクスポートスイッチ、音楽データの再生開始・停止を指示する演奏ボタンなどがある。勿論、これら以外にも、音高、音色、効果等を選択・設定・制御するために用いる数値データ入力用のテンキーや文字データ入力用のキーボード、あるいはディスプレイ6Aに表示される所定のポインティングデバイスを操作するために用いるマウスなどの各種操作子を含んでいてよい。検出回路5は、上記各スイッチの操作状態を検出し、その操作状態に応じたスイッチ情報をデータ及びアドレスバス1Dを介してCPU1に出力する。
【0012】
表示回路6は例えば液晶表示パネル(LCD)やCRT等から構成されるディスプレイ6Aに、既に登録されているプレイリストの一覧、各プレイリストに登録済みの音楽データの一覧、外部記憶装置10等に記憶されている音楽データの一覧、あるいはCPU1の制御状態などを表示する。ユーザは該ディスプレイ6Aに表示されるこれらの各種情報を参照することで、例えば既に登録されているプレイリストや各プレイリストの内容を確認したり、あるいはプレイリストに対する音楽データの登録・削除などを容易に行うことができる。音源回路7は複数のチャンネルで楽音信号の同時発生が可能であり、データ及びアドレスバス1Dを経由して与えられた、ユーザによる演奏操作子4Aの操作に応じて発生される、あるいは音楽データの再生に基づき発生される各種演奏情報を入力し、これらの演奏情報に基づいて楽音信号を発生する。音源回路7から発生された楽音信号は、効果回路8を介して効果付与されてアンプやスピーカなどを含むサウンドシステム9から発音される。この音源回路7と効果回路8とサウンドシステム9の構成には、従来のいかなる構成を用いてもよい。例えば、音源回路8はFM、PCM、物理モデル、フォルマント合成等の各種楽音合成方式のいずれを採用してもよく、また専用のハードウェアで構成してもよいし、CPU1によるソフトウェア処理で構成してもよい。
【0013】
外部記憶装置10は、既に登録済みのプレイリストや多数の音楽データなどの各種データ、CPU1が実行する各種制御プログラム等の制御に関するデータなどを記憶する。なお、上述したROM2に制御プログラムが記憶されていない場合、この外部記憶装置10(例えばハードディスク)に制御プログラムを記憶させておき、それをRAM3に読み込むことにより、ROM2に制御プログラムを記憶している場合と同様の動作をCPU1にさせることができる。このようにすると、制御プログラムの追加やバージョンアップ等が容易に行える。なお、外部記憶装置10はハードディスク(HD)に限られず、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD‐ROM・CD‐RAM)、光磁気ディスク(MO)、あるいはDVD(Digital Versatile Disk)等の着脱自在な様々な形態の外部記憶媒体を利用する記憶装置であればどのようなものであってもよい。あるいは、フラッシュメモリなどの半導体メモリであってもよい。
【0014】
MIDIインタフェース(I/F)11は、外部接続された他のMIDI機器11A等からMIDI形式の演奏データ(MIDIデータ)を当該電子音楽装置へ入力したり、あるいは当該電子音楽装置からMIDI形式の演奏データ(MIDIデータ)を他のMIDI機器11A等へ出力するためのインタフェースである。他のMIDI機器11Aはユーザによる操作に応じてMIDIデータを発生する機器であればよく、鍵盤型、弦楽器型、管楽器型、打楽器型、身体装着型等どのようなタイプの操作子を具えた(若しくは、操作形態からなる)機器であってもよい。なお、MIDIインタフェース11は専用のMIDIインタフェースを用いるものに限らず、RS-232C、USB(ユニバーサル・シリアル・バス)、IEEE1394(アイトリプルイー1394)等の汎用のインタフェースを用いてMIDIインタフェース11を構成するようにしてもよい。この場合、MIDIイベントデータ以外のデータをも同時に送受信するようにしてもよい。MIDIインタフェース11として上記したような汎用のインタフェースを用いる場合には、他のMIDI機器11AはMIDIイベントデータ以外のデータも送受信できるようにしてよい。勿論、演奏データのデータフォーマットはMIDI形式のデータに限らず他の形式であってもよく、その場合はMIDIインタフェース11と他のMIDI機器11Aはそれにあった構成とする。通信インタフェース(I/F)12は、例えばLANやインターネット、電話回線等の有線あるいは無線の通信ネットワークXに接続されており、該通信ネットワークXを介してサーバコンピュータ12Aと接続され、当該サーバコンピュータ12Aから制御プログラムあるいは各種データなどを電子音楽装置側に取り込むためのインタフェースである。すなわち、ROM2や外部記憶装置10(例えば、ハードディスク)等に制御プログラムや各種データが記憶されていない場合には、サーバコンピュータ12Aから制御プログラムや各種データをダウンロードするために用いられる。こうした通信インタフェース12は、有線あるいは無線のものいずれかでなく双方を具えていてよい。
【0015】
なお、上述した電子音楽装置において、演奏操作子4Aは鍵盤楽器の形態に限らず、弦楽器や管楽器、あるいは打楽器等どのようなタイプの形態でもよい。また、電子音楽装置は演奏操作子4Aやディスプレイ6Aあるいは音源回路7などを1つの装置本体に内蔵したものに限らず、それぞれが別々に構成され、MIDIインタフェースや各種ネットワーク等の通信手段を用いて各装置を接続するように構成されたものであってもよいことは言うまでもない。さらに、本発明に係る電子音楽装置は上記したような電子楽器の形態に限らず、パーソナルコンピュータやカラオケ装置やゲーム装置など、どのような形態の装置・機器に適用してもよい。
【0016】
上記RAM3あるいは外部記憶装置10などに記憶され、当該電子音楽装置において音楽データ再生時だけでなく音楽データ変換(エクスポート)時においても利用するプレイリストについて、及び当該電子音楽装置で再生可能なエクスポート前の音楽データと他の電子音楽装置で再生可能なエクスポート後の音楽データについて、それぞれ図を用いて説明する。図2は、プレイリストのデータ構造の一実施例を示す概念図である。図3は、エクスポート前の音楽データ及びエクスポート後の音楽データのデータ構造の一実施例を示した概念図である。ただし、ここでは説明を理解し易くするために、当該電子音楽装置で再生可能なエクスポート前の音楽データを「独自フォーマットデータ」、他の電子音楽装置で再生可能なエクスポート後の音楽データを「汎用フォーマットデータ」と呼んで区別している。
【0017】
まず、プレイリストについて説明する。従来知られているように、一般的にプレイリストは上記ROM2やRAM3あるいは外部記憶装置10に記憶されている多数の音楽データのうち、ユーザによる個々の音楽データの再生指示操作がなくとも連続再生する複数の音楽データを再生順に規定した再生規定情報である。図2(a)に示すように、プレイリストは複数のアイテムデータを規定する。このプレイリストに規定される個々のアイテムデータは、図2(b)に示すように番号、チェックマーク、タイトル、音楽データ記憶パスを含んでなる。「番号」は、再生対象とする音楽データが追加された際に適宜に付加される固有の番号であり、例えば再生順にシリアル番号が割り振られる。「チェックマーク」は、プレイリスト中に規定された複数の音楽データのうち、さらに再生する音楽データを絞り込むためのデータである。すなわち、当該「チェックマーク」が「あり」の音楽データのみを再生対象とし、「なし」の音楽データは再生対象としない。この「チェックマーク」の有無は、アイテムデータ毎にユーザが適宜に付加することができる。「タイトル」は音楽データに関連した所定の情報であり、例えばディスプレイ等にプレイリスト中に規定されている音楽データを一覧表示する際に表示される曲名などの情報である。「音楽データ記憶パス」は、実際の音楽データが記憶されているデータ記憶領域を指し示す情報である。すなわち、プレイリストでは実際の音楽データそのものを記憶することなく、この音楽データの記憶パスに基づき、外部記憶装置10など実際の音楽データを記憶しているデータ記憶領域から該当する音楽データを読み出して再生するようにしている。なお、プレイリスト及びアイテムデータは上記した構成に限らない。
【0018】
次に、エクスポート前とエクスポート後の各音楽データについて説明する。図3(a)左側に示すエクスポート前の音楽データである独自フォーマットデータは、管理データ、WAVファイル形式の左チャンネル用のモノラルL(LEFT)データ、WAVファイル形式の右チャンネル用のモノラルR(RIGHT)データから構成されるデータである。管理データは、データ記録時の入力レベル、データ再生時の出力レベル、パンチイン/パンチアウトの各ポイント、データ再生範囲を指定するスタート/エンドポイント(つまり再生時にはこの間のみを再生する)などの音楽データの記録再生に関する各種パラメータを、各音楽データ毎に記憶している。管理データが付与されたWAVファイル形式の左チャンネル用のモノラルLデータ及び右チャンネル用のモノラルRデータからなる独自フォーマットデータは、例えば1曲全体の楽音を発生する元となるオーディオデータ等のデータ本体であって、図1に示した電子音楽装置において再生可能なデータである一方、機種あるいはメーカー等の異なる他の電子音楽装置において再生することのできないデータである。
【0019】
他方、図3(a)右側に示すエクスポート後の音楽データである汎用フォーマットデータは、WAVファイル形式の左右2チャンネル分のステレオLR(LEFT/RIGHT)データのみで構成されるデータである。この汎用フォーマットデータは、図1に示した電子音楽装置とは機種あるいはメーカー等の異なる他の電子音楽装置において再生可能なデータである(図1の電子音楽装置においては、再生できてもよいし、再生できなくてもよい)。また、図3(b)に示すように、図1に示した電子音楽装置では、上記独自フォーマットデータを上記汎用フォーマットデータにエクスポートする際に、前記管理データ内に設定されているスタートポイント〜エンドポイント間(図中斜線で示す箇所)のデータのみをデータ変換する。
なお、独自フォーマットデータと汎用フォーマットデータの各フォーマットは、例示したようなデータ構造(モノラル又はステレオ)やファイル形式(WAVファイル形式)などのフォーマットに限らない。
【0020】
上記のように、図1に示した電子音楽装置で再生可能な独自フォーマットデータと、機種あるいはメーカー等の異なる他の電子音楽装置で再生可能な汎用フォーマットデータとは、フォーマットが異なる。そのため、他の電子音楽装置では独自フォーマットデータを再生することができない。そこで、独自フォーマットデータの音楽内容を他の電子音楽装置においても再生可能とするため、独自フォーマットデータをデータ変換(エクスポート)して汎用フォーマットデータにする必要がある。こうしたデータ変換の処理形態としては、大きくいくつかの種類に分類することができる。そこで、独自フォーマットデータから汎用フォーマットデータへと変換する場合を例にして、データ変換(エクスポート)の処理形態について説明する。図4は、データ変換(エクスポート)の処理形態を分類別に説明するための概念図である。ただし、データ変換の処理形態として、ここでは便宜的にタイプ1からタイプ4までの4種類に分けて説明する。
【0021】
図4(a)に示す第1の処理形態(タイプ1エクスポート)は、プレイリストに規定された複数の独自フォーマットデータの各々を個別の汎用フォーマットデータに一括してエクスポートする処理形態である。すなわち、エクスポート前の独自フォーマットデータ(データ1〜データn)とエクスポート後の汎用フォーマットデータ(データ1´〜データn´)とは1対1に対応する。図4(b)に示す第2の処理形態(タイプ2エクスポート)は、タイプ1と同様に複数の独自フォーマットデータ(データ1〜データn)の各々を個別の汎用フォーマットデータ(データ1´〜データn´)に一括してエクスポートすると共に、さらにエクスポート後の汎用フォーマットデータを再生対象として再生順に規定したその他の電子音楽装置で用いるプレイリスト(これを便宜的に汎用フォーマット用プレイリストと呼ぶ)を新たに自動作成する処理形態である。これによると、その他の電子音楽装置においても、独自フォーマットデータで規定したプレイリストに従うデータ再生と同じようにして、汎用フォーマット用プレイリストに基づきエクスポート後の汎用フォーマットデータを再生することができるようになる。また、前記タイプ1の場合には、ユーザ自らが独自フォーマットデータで規定したプレイリストに従うデータ再生順と同様の順番で複数の汎用フォーマットデータを適宜に選択して登録する必要のあった汎用フォーマット用プレイリストを、前記タイプ2の場合にはユーザ自らが作成することなく新たに汎用フォーマット用プレイリストを自動作成することから、前記タイプ1の場合と比べて手間が省け便利である。なお、この汎用フォーマット用プレイリスト自体も、他の電子音楽装置にて解釈できる汎用形式のプレイリストであることは言うまでもない。
【0022】
図4(c)に示す第3の処理形態(タイプ3エクスポート)は、複数の独自フォーマットデータ(データ1〜データn)を1つの統合された汎用フォーマットデータにエクスポートする処理形態である。これによると、複数の独自フォーマットデータを元にメドレー形式の1つの汎用フォーマットデータを作成することができる。なお、このタイプ3については、時系列的に連続する汎用フォーマットデータとして管理することができればよく、メモリ上で汎用フォーマットデータが連続して記憶されているか否かは問題ではない。図4(d)に示す第4の処理形態(タイプ4エクスポート)は、複数の独自フォーマットデータ(データ1〜データn)を、クロスフェード処理により互いが接続されている1つの統合された汎用フォーマットデータにエクスポートする処理形態である。これによっても、タイプ3と同様に、複数の独自フォーマットデータを元にメドレー形式の1つの汎用フォーマットデータを作成することができる。タイプ4では、複数の独自フォーマットデータ(データ1〜データn)間をクロスフェード処理により接続することで、タイプ3に比べると再生時にデータ間が途切れることなく滑らかに次々と楽音を発生する汎用フォーマットデータが生成されることになる。
なお、上記4種類の分類は本明細書での説明のための一例にすぎず、更に多くの種類で分類してもよい。また、上記したようなデータ変換の処理形態(タイプ)をユーザが選択できるようになっていてよい。
【0023】
次に、上記したプレイリストに基づき独自フォーマットデータを連続再生する処理や、前記連続再生に用いたプレイリストに基づき該当する複数の独自フォーマットデータを汎用フォーマットデータに一括してエクスポートする処理などを実行する「メイン処理」について、図5を用いて説明する。図5は、図1に示した電子音楽装置で実行する「メイン処理」の一実施例を示すフローチャートである。
【0024】
図5に示す「メイン処理」では、まずユーザ操作に応じてプレイリストを作成・編集する(ステップS1)。例えば、プレイリストスイッチ操作に応じて新規に作成したプレイリスト、あるいは既存のプレイリストに対し、ユーザは音楽データ登録・削除スイッチを操作することで所望の音楽データ(独自フォーマットデータ)を追加・削除したりする。ステップS2では、ユーザによる演奏ボタン操作などに応じて前記プレイリストに基づく音楽データの再生処理を実行する。この音楽データの再生処理では、プレイリストに登録されている独自フォーマットデータを再生対象として、前記独自フォーマットデータを再生順に順次に読み出して連続再生する。こうした音楽データの再生処理は、公知のどのようなものであってもよい。ステップS3では、一括エクスポートを行うよう指定されたか否かを判定する。ユーザにより例えばエクスポートスイッチが操作されて一括エクスポートを行うよう指定されていた場合には(ステップS3のYES)、プレイリスト中に規定されている再生対象の独自フォーマットデータ全てについて「タイプに応じたエクスポート処理」を実行し(ステップS4)、独自フォーマットデータを汎用フォーマットデータにエクスポートする。この「タイプに応じたエクスポート処理」については、後述する(後述の図6〜図9参照)。
【0025】
次に、上記「メイン処理」で実行される「タイプに応じたエクスポート処理」(図5のステップS4参照)について、図4に示した処理形態(タイプ)別に説明する。図6〜図9に示す各図は、「タイプに応じたエクスポート処理」の一実施例をタイプ別に示したフローチャートである。ただし、ここでは図6にタイプ1(図4(a)参照)、図7にタイプ2(図4(b)参照)、図8にタイプ3(図4(c)参照)、図9にタイプ4(図4(d)参照)の各タイプに応じたエクスポート処理をそれぞれ示した、独自フォーマットから汎用フォーマットに変換するエクスポート処理を例に説明する。
【0026】
タイプ1のエクスポート処理について、図6を用いて説明する。図6は、タイプ1エクスポート処理の一実施例を示すフローチャートである。この図6に示す「タイプ1エクスポート処理」では、プレイリスト中に規定されているアイテムデータのうちの先頭(又は次の再生順)の独自フォーマットデータを外部記憶装置10から読み込む(ステップS11)。ステップS12では、上記読み込んだ独自フォーマットデータのモノラルL及びモノラルRの各データについて、管理データに設定されているスタートポイントからエンドポイントまでの範囲にあるデータを切り出す。ステップS13では、切り出されたモノラルL及びモノラルRの各データをそれぞれステレオL、ステレオRとしたステレオLRデータ(汎用フォーマットデータ)を作成し、これを外部記憶装置10に記憶する。つまり、独自フォーマットデータを汎用フォーマットデータにエクスポートする。エクスポート後の汎用フォーマットデータに付加するファイル名は、全データについて例えば変換前の独自フォーマットデータのファイル名を流用する、又は所定の文字列と連番との組み合わせとするなどして自動的に決定するようにしてもよいし、あるいは1つのデータを保存するごとにユーザに対してファイル名を問い合わせて、ユーザに入力させるようにしてもよい。ステップS14では、プレイリスト中に規定されているアイテムデータに従い該当する全ての音楽データ(独自フォーマットデータ)をエクスポートしたか否かを判定する。全ての独自フォーマットデータをエクスポートした場合には(ステップS14のYES)、当該エクスポート処理を終了する。未だ該当する全ての独自フォーマットデータをエクスポートしていない場合には(ステップS14のNO)、上記ステップS11の処理に戻って、ステップS11〜ステップS13の各処理を繰り返し実行する。このようにして、再生対象としてプレイリスト中に規定されている全ての独自フォーマットデータについて、データ変換(エクスポート)処理を実行する。
【0027】
タイプ2のエクスポート処理について、図7を用いて説明する。図7は、タイプ2エクスポート処理の一実施例を示すフローチャートである。上述したように、タイプ2とタイプ1とで異なる点は、データ変換時に汎用フォーマット用プレイリスト(その他の電子音楽装置で使用する再生対象の汎用フォーマットデータが再生順に規定されたプレイリスト)を新たに作成するか否かの違いだけである(図4参照)。そこで、「タイプ2のエクスポート処理」の殆どの処理は、「タイプ1エクスポート処理」と同様である。すなわち、ステップS21〜ステップS23までの各処理は図6のステップS11〜ステップS13までの各処理と同様であり、ステップS25は図6のステップS14と同様の処理である。これにより、再生対象としてプレイリスト中に規定されている全ての独自フォーマットデータについてデータ変換処理を実行する。そして、上記ステップS21〜ステップS23の処理後に、汎用フォーマット用プレイリストにアイテムデータを追記する処理(ステップS24)を実行することで、汎用フォーマット用プレイリストを作成するようにしている。
【0028】
タイプ3のエクスポート処理について、図8を用いて説明する。図8は、タイプ3エクスポート処理の一実施例を示すフローチャートである。図8に示す「タイプ3エクスポート処理」では、プレイリスト中に規定されているアイテムデータのうちの先頭(又は次の再生順)の独自フォーマットデータを外部記憶装置10から読み込む(ステップS31)。ステップS32では、上記読み込んだ独自フォーマットデータのモノラルL及びモノラルRの各データについて、管理データに設定されているスタートポイントからエンドポイントまでの範囲にあるデータを切り出す。ステップS33では、先頭のアイテムデータに基づく処理であるか否かを判定する。先頭のアイテムデータに基づく処理である場合には(ステップS33のYES)、切り出されたモノラルL及びモノラルRの各データをそれぞれステレオL、ステレオRとしたステレオLRデータ(汎用フォーマットデータ)を作成する(ステップS35)。つまり、エクスポートする。
【0029】
一方、先頭のアイテムデータに基づく処理でない場合には(ステップS33のNO)、切り出されたモノラルL及びモノラルRの各データを、上記ステップS35において作成済みの汎用フォーマットデータの末尾に追加記録する(ステップS34)。ステップS36では、プレイリスト中に規定されているアイテムデータに従い該当する全ての音楽データ(独自フォーマットデータ)をエクスポートしたか否かを判定する。全ての独自フォーマットデータをエクスポートした場合には(ステップS36のYES)、作成した汎用フォーマットデータを外部記憶装置10に保存して(ステップS37)、当該エクスポート処理を終了する。この汎用フォーマットデータに付加するファイル名は、例えば変換前の複数の独自フォーマットデータのうちの1つのファイル名を流用する、又は所定の文字列とするなどして自動的に決定するようにしてもよいし、ユーザに対してファイル名を問い合わせて、ユーザに適宜入力させるようにしてもよい。一方、全ての独自フォーマットデータをエクスポートしていない場合には(ステップS36のNO)、上記ステップS31の処理に戻って、ステップS31〜ステップS35の各処理を繰り返し実行する。このようにして、プレイリストに基づき、再生対象として規定されている複数の独自フォーマットデータを1つの統合された汎用フォーマットデータにエクスポートする。
【0030】
タイプ4のエクスポート処理について、図9を用いて説明する。図9は、タイプ4エクスポート処理の一実施例を示すフローチャートである。上述したように、タイプ4とタイプ3とで異なる点は、データ変換後において汎用フォーマットデータを互いにクロスフェード処理して接続するか否かの違いだけである(図4参照)。そこで、「タイプ4のエクスポート処理」の殆どの処理は、「タイプ3エクスポート処理」と同様である。すなわち、ステップS41〜ステップS47(ステップS44を除く)の各処理は、ステップS31〜ステップS37(ステップS34を除く)の各処理と同様である。ステップS44のみステップS34と処理内容が異なり、エクスポート後の汎用フォーマットデータをクロスフェードしながら接続する。これにより、再生対象としてプレイリスト中に規定されている全ての独自フォーマットデータを1つにまとめたエクスポート後の汎用フォーマットデータを生成する。
【0031】
なお、独自フォーマットから汎用フォーマットの音楽データへとエクスポートする際のタイプは、4つ例示したうちのすべてを備えるものに限らずそのうちの1以上を備えればよく、2以上のタイプを備える場合はいずれのタイプで処理するかをユーザに選択させるようにする。
なお、設定されたスタートポイント〜エンドポイント間のみをエクスポートするものに限らず、指定がないような場合には音楽データ全体をエクスポートするようにしてもよく、例えば一部区間/全体のいずれかを選択できるようにしてもよい。また、プレイリストのアイテムごとに一部区間/全体のいずれでエクスポートするか設定できるようにしてもよい。
なお、プレイリストに規定されている音楽データ全てをエクスポートするものに限らず、アイテムデータ中のチェックマークが「あり」の音楽データについてのみエクスポートするようにしてもよい。
なお、ユーザが適宜に音楽データ登録・削除スイッチ操作をしてプレイリストに音楽データを追加・削除してプレイリストを生成することに限らず、適宜の抽出条件に従って抽出された音楽データを再生対象としてプレイリストを自動的に生成してもよい。
なお、上述した電子音楽装置において、プレイリストに規定された音楽データを、プレイリストに規定された再生順ではなくランダムに再生するように指示することのできるようにしてあってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明に係る音楽データ処理装置を適用した電子音楽装置の全体構成を示したハード構成ブロック図である。
【図2】プレイリストのデータ構造の一実施例を示す概念図である。
【図3】エクスポート前の音楽データ及びエクスポート後の音楽データのデータ構造の一実施例を示した概念図である。
【図4】データ変換の処理形態を分類別に説明するための概念図である。
【図5】メイン処理の一実施例を示すフローチャートである。
【図6】タイプ1エクスポート処理の一実施例を示すフローチャートである。
【図7】タイプ2エクスポート処理の一実施例を示すフローチャートである。
【図8】タイプ3エクスポート処理の一実施例を示すフローチャートである。
【図9】タイプ4エクスポート処理の一実施例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0033】
1…CPU、2…ROM、3…RAM、4、5…検出回路、4A…演奏操作子、5A…設定操作子、6…表示回路、6A…ディスプレイ、7…音源回路、8…効果回路、9…サウンドシステム、10…外部記憶装置、11…MIDIインタフェース、11A…MIDI機器、12…通信インタフェース、12A…サーバコンピュータ、X…通信ネットワーク、1D…通信バス(データ及びアドレスバス)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なるフォーマット間で音楽データを変換する音楽データ処理装置であって、
再生可能な第1フォーマットの音楽データを多数記憶する記憶手段と、
前記記憶した多数の第1フォーマットの音楽データのうち、連続再生対象とする複数の第1フォーマットの音楽データ及びその再生順を規定した所定の再生規定情報を取得する取得手段と、
前記取得した再生規定情報に基づき、前記第1フォーマットとは異なる別の第2フォーマットへと変換すべき対象とする複数の第1フォーマットの音楽データを特定する特定手段と、
前記特定した複数の第1フォーマットの音楽データを前記第2フォーマットの音楽データへとデータ変換する変換手段と
を具え、
前記特定手段は変換対象とする音楽データの特定に、前記取得した再生規定情報に規定されている複数の第1フォーマットの音楽データを利用することを特徴とする音楽データ処理装置。
【請求項2】
前記第1フォーマットの音楽データ毎に再生する範囲を指定する指定手段を更に具えてなり、前記変換手段は前記指定された再生範囲のみについて前記第1フォーマットの音楽データを第2フォーマットの音楽データへとデータ変換することを特徴とする請求項1に記載の音楽データ処理装置。
【請求項3】
前記変換手段は、前記第1フォーマットの音楽データを変換して該第1フォーマットの音楽データに対応した前記第2フォーマットの音楽データを個別に生成すると共に、前記生成した第2フォーマットの音楽データを再生対象として再生順に規定した第2の再生規定情報を作成することを特徴とする請求項1又は2に記載の音楽データ処理装置。
【請求項4】
前記変換手段は、前記第1フォーマットの音楽データを変換して該第1フォーマットの音楽データに対応した前記第2フォーマットの音楽データを順次に並べた連続する単独の音楽データを生成することを特徴とする請求項1又は2に記載の音楽データ処理装置。
【請求項5】
前記変換手段は、前記第1フォーマットの音楽データを変換して該第1フォーマットの音楽データに対応した前記第2フォーマットの音楽データを順次に並べた連続する単独の音楽データを生成する際に、互いに連続する第2フォーマットの音楽データに対してクロスフェード処理を施して各音楽データを接続することを特徴とする請求項4に記載の音楽データ処理装置。
【請求項6】
コンピュータに、
再生可能な第1フォーマットの音楽データを多数記憶する手順と、
前記記憶した多数の第1フォーマットの音楽データのうち、連続再生対象とする複数の第1フォーマットの音楽データ及びその再生順を規定した所定の再生規定情報を取得する手順と、
前記取得した再生規定情報に基づき、前記第1フォーマットとは異なる別の第2フォーマットへと変換すべき対象とする複数の第1フォーマットの音楽データを特定する手順と、
前記特定した複数の第1フォーマットの音楽データを前記第2フォーマットの音楽データへとデータ変換する手順と
を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−172534(P2006−172534A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−359653(P2004−359653)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】