説明

音楽同調照明を歌の巧拙により制御するカラオケ照明システム

【課題】LEDディスプレイ技術・LED照明技術を活用することで、安価で簡単な回路構成により、多色発光可能な複数のLEDランプを備えた照明器具を、カラオケ装置で演奏される個々の伴奏音楽に合わせて多彩に変化させる機能と、伴奏音楽に合わせて歌う人の歌の巧拙に合わせて変化させる機能の両方を備えた高性能なカラオケ照明システムを実現する。
【解決手段】照明制御装置は、カラオケ装置から逐次受信する音楽連係データに基づいて各LEDランプの制御データを逐次生成し、各LEDランプに通電する定電流を制御データに基づいて個別にパルス幅制御することにより各LEDランプの輝度と色を個別に制御する。照明制御装置は、カラオケ装置から逐次受信する採点データに基づいて各LEDランプに通電する共通の定電流値を制御し、照明器具の全体的な明るさを採点データが良いほど明るくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カラオケ場を装飾的に照明する多色発光可能な複数個のLEDランプをカラオケデータに基づいて伴奏音楽に同調させるカラオケ照明システムに関し、とくに、音伴奏音楽に合わせて歌う人の歌のうまさに応じて音楽同調照明を変化させるようにしたシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、音楽コンサートではステージ照明を音楽に合わせて変化させることは普通に行われてきた。そのため、音楽に合わせて自動的に照明やディスプレイを制御するいろいろな技術も開発されてきた。たとえば、特開平7−289746号公報「音の変化を光の変化に変換する装置」、特許第3388530号公報「音楽演出用照明装置」、特開平4−151199号公報「アニメーション合成表示装置」、特開2004−163767号公報「環境同期制御システム」などに種々の技術が開示されている。
【0003】
もちろんカラオケの分野においても、カラオケデータに基づいて照明を音楽に合わせて自動的に変化させる照明制御技術が採用された。たとえば、特開平6−19488号公報「カラオケ装置」、特開平7−302686号公報「カラオケ用照明制御装置」、特開平7−73975号公報「照明制御装置」、特開平7−73976号公報「照明制御装置」、特許第4257300号公報「カラオケ端末装置」などに種々の技術が開示されている。
【0004】
最近のカラオケ利用シーンにおいて顕著なことの1つに、歌唱力の採点システムに対する利用者の人気がきわめて高いことがある。その背景には、歌唱力の採点技術が著しく進歩し、カラオケ装置の採点能力に対する利用者の信頼感が高まったことがあげられる。装置が機械的に行う採点に対する人々の信頼感が高まったため、多くの人が自分の採点結果と他人の採点結果を比べ、競うことを楽しむようになった。特開2004−206009号公報や特開2005−107087号公報には進歩した採点技術が詳しく解説されている。特開2005−99288号公報には採点結果を楽しく出力する技術が詳しく解説されている。
【0005】
カラオケ伴奏音楽に合わせて歌っている人の採点データに基づいて、歌の巧拙により照明を変化させるシステムも開発された。その詳細が特開平9−166992号公報に開示されている。このシステムにおいては、複数種類の照明の明るさやミラーボールの回転・停止などを歌唱中に逐次出力される採点データに基づいて変化させ、採点データが良いほど明るく華やかな照明環境を創出し、採点データが悪いと暗く陰鬱な照明環境にするように構成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の目的は、さいきん顕著に進歩したLEDディスプレイ技術・LED照明技術を活用することで、安価で簡単な回路構成により、多色発光可能な複数のLEDランプを備えた照明器具を、カラオケ装置で演奏される個々の伴奏音楽に合わせて多彩に変化させる機能と、伴奏音楽に合わせて歌う人の歌の巧拙に合わせて変化させる機能の両方を備えた高性能なカラオケ照明システムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るカラオケ照明システムは、基本的に、つぎの事項(1)〜(9)により特定されるものである。
(1)カラオケ装置と、照明器具と、照明制御装置を備えたカラオケ照明システムであること
(2)カラオケ装置は、カラオケデータに基づいて伴奏音楽を演奏する過程において、当該カラオケデータに基づく複数チャンネルの音楽連係データを照明制御装置に送信すること
(3)カラオケ装置は、カラオケデータに基づいて伴奏音楽を演奏する過程において、伴奏音楽に合わせて歌う人の歌声に基づいて歌の巧拙を評価した採点データを逐次生成して照明制御装置に送信すること
(4)照明器具は、多色発光可能な複数個のLEDランプを含むこと
(5)照明制御装置は、制御データ生成手段と、ランプ駆動手段と、電流制御手段を備えること
(6)制御データ生成手段は、カラオケ装置から逐次受信する音楽連係データに基づいて各LEDランプの制御データを逐次生成すること
(7)制御データは、各LEDランプごとの色別の輝度データを含むこと
(8)ランプ駆動手段は、各LEDランプに通電する定電流を制御データに基づいて個別にパルス幅制御することにより各LEDランプの輝度と色を個別に制御すること
(9)電流制御手段は、カラオケ装置から逐次受信する採点データに基づいて各LEDランプに通電する共通の定電流値を制御し、照明器具の全体的な明るさを採点データが良いほど明るくすること
【0008】
この発明において、望ましくは、制御データ生成手段は、生成する制御データにより表現する色数をカラオケ装置から逐次受信する採点データに基づいて変化させ、採点データが良いほど色数を多くするように構成する。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、LEDディスプレイ技術・LED照明技術の分野において一般的なLEDドライバ(定電流駆動・パルス幅制御の回路方式)を用いることで、きわめて簡単かつ安価なシステム構成により、カラオケ装置で演奏される個々の伴奏音楽に合わせて多彩に変化させる機能と、伴奏音楽に合わせて歌う人の歌の巧拙に合わせて変化させる機能の両方を備えた高性能なカラオケ照明システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例におけるカラオケ照明システムの概略図である。
【図2】実施例における照明制御装置と照明器具の構成図である。
【実施例】
【0011】
===音楽同調照明の生成系===
この発明に係るカラオケ照明システムの概要を図1に示している。カラオケ装置1は基本的に周知慣用のカラオケ装置と同等の構成を備えるものであり、この明細書においては周知慣用のカラオケ技術についての記述は必要最小限に留める。この発明においては、カラオケ装置1は、カラオケデータに基づいて伴奏音楽を演奏する過程において、当該カラオケデータに基づく複数チャンネルの音楽連係データを照明制御装置2に送信する。
【0012】
照明制御装置2は、カラオケ装置1から逐次受信する音楽連係データに基づいて照明器具3における各LEDランプの制御データを逐次生成する。図2に示すように、照明器具3は、多色発光可能な複数のLEDランプ4を備えており、これらのLEDランプ4の輝度と色が照明制御装置2により個別に制御される。
【0013】
カラオケデータは、MIDIなどの電子楽譜形式の音楽生成データを主体に構成されている。音楽連係データは、カラオケデータを構成している複数の楽器のパートデータの中から抽出したいくつかの楽器のパートデータである。たとえば、演奏中の楽曲のリズム構造(拍節構造)を代表する時系列情報として、カラオケデータ中のドラムパートデータを音楽連係データの1つとして抽出する。また、演奏中の楽曲の和声進行を代表する時系列情報として、カラオケデータ中のベースパートデータを音楽連係データの1つとして抽出する。同様にして、楽曲の音楽的構成を代表する時系列情報として、前奏や間奏で活躍するメロディ楽器のパートデータを音楽連係データとして抽出する。
【0014】
好ましい実施例としては、各楽曲のカラオケデータからどのパートのデータを音楽連係データとして抽出するのかを、各楽曲ごとのカラオケデータの付加情報としてあらかじめ設定しておく。また、音楽同調照明を実現するための専用の音楽連係データを各楽曲に合わせてあらかじめ作成し、これをカラオケデータの1つのパートデータとして含めておく実施例も好ましい。ただしカラオケデータの特定のいくつかの楽器のパートデータを音楽連係データとして抽出する実施例でもよい。
【0015】
照明器具3の実施例について説明する。照明器具3は、128個のLEDランプ4を備えている。LEDランプ4は赤色LED・緑色LED・青色LEDを含んだ集合ランプであり、3原色LEDの各輝度を多階調に変化させることで、LEDランプ4の輝度と色を変化させることができる。
【0016】
図2に示すように、照明制御装置2は、マイコン21と定電流ドライバ22を備えている。定電流ドライバ22は、128個のLEDランプ4の赤色LED・緑色LED・青色LEDを駆動する合計384個の出力端子があり、各出力端子に接続されたLEDに所定時間だけ定電流が通電され、通電時間によりLEDの輝度が調整される。つまり、各LEDは定電流のパルス幅制御(PWM制御)により発光駆動される。
【0017】
マイコン21は、384個の各LEDの輝度データとして4ビットのデータ(16階調を表現可能)を生成して定電流ドライバ22に直列入力してラッチさせる。この動作を1/60秒の周期で繰り返し行う。つまりマイコン21は、1秒間に60回の繰り返し周期で、1個のLEDランプ4の輝度と色を指定する4×3=12ビットのランプ制御データを128個分生成して定電流ドライバ22にラッチし、128個のLEDランプ4の輝度と色を変化させることができる。
【0018】
マイコン21は、1/60秒の周期で実行する処理により、各LEDランプ4の輝度と色を規定する128個分のランプ制御データを、カラオケ装置1から供給される音楽連係データに基づいて生成する。これにより、128個のLEDランプ4の輝度と色の変化が織りなす照明効果を、カラオケ装置1にて演奏されている伴奏音楽に同調させる。
【0019】
128個のLEDランプ4の輝度と色の変化が織りなす照明効果を音楽連係データに基づいて伴奏音楽に同調させる処理としては、前記した多くの技術文献に開示されているとおり、いろいろな方式が考えられる。たとえば、マイコン21において、各LEDランプ4ごとに異なる制御関数をプログラムしておき、各制御関数のパラメータに適宜に音楽連係データをとりいれてランプ制御データを計算するとともに、各LEDランプと各制御関数の対応関係を適宜な音楽連係データに基づいて組み替えるようにする。
【0020】
これにより、楽曲のリズム構造(拍節構造)を反映した音楽連係データに基づいてLEDランプの明滅表現を生みだし、楽曲の和声進行を反映した照明色の組み合わせを生みだし、楽曲の音量変化を反映した光量変化を生みだし、楽曲中の前奏や間奏における独奏楽器の演奏を反映した照明光の移動・収束・拡散といった表現を生みだす。実施例のように1/60秒の周期でランプ制御データを更新するので、きわめてスピード感のある躍動する音楽同調照明を生みだすことができる。
【0021】
===採点データに基づく照明制御系===
この発明においては、カラオケ装置1は、カラオケデータに基づいて伴奏音楽を演奏する過程において、伴奏音楽に合わせて歌う人の歌声に基づいて歌の巧拙を評価した採点データを逐次生成して照明制御装置2に送信する。そして、照明制御装置2は、カラオケ装置1から逐次受信する採点データに基づいて各LEDランプ4に通電する共通の定電流値を制御し、照明器具3の全体的な明るさを採点データが良いほど明るくする制御を行う。
【0022】
定電流ドライバ22における端子Rext は、ここに外付けする抵抗の値に応じてLEDに通電する定電流の値を設定するための端子である。この構成は定電流駆動・PWM制御方式の一般的なLEDドライバに採用されている。この発明においては定電流ドライバ22における端子Rext に電流設定値切替回路23が接続されている。電流設定値切替回路23は抵抗網とセレクタからなり、端子Rext に接続される抵抗値をセレクタにより8段階の中の1つに選択する回路である。これにより、定電流ドライバ22がLEDに通電する定電流の値を8段階に変化させることができる。
【0023】
カラオケ装置1は、カラオケデータに基づいて伴奏音楽を演奏する過程において、所定の採点区間ごとに歌の巧拙を評価した採点データを生成して照明制御装置2に送信する。照明制御装置2のマイコン21は、カラオケ装置1から採点データを受信するごとに、その採点データを8段階にランク分けし、ランク分けの結果に対応した選択信号を生成して電流設定値切替回路23に与える。この制御系により、採点データが良いほど定電流ドライバ22の定電流の値が大きくなるように構成している。
【0024】
また、この実施例においては、マイコン21により生成するランプ制御データにより表現する色数をカラオケ装置1から逐次受信する採点データに基づいて変化させ、採点データが良いほど色数を多くするアルゴリズムを採用している。具体的には、4ビットで構成される各LEDの輝度データを、採点データが悪くなるほど、有効桁数を3ビット(最小桁を0に固定)、2ビット(下2桁を0に固定)と変化させる。すると、採点データが悪いほどLEDの階調数が16→8→4と減少するので、赤色LED・緑色LED・青色LEDの各階調の組み合わせにより表現する色数が採点データが悪いほど少なくなる。
【0025】
以上の説明で明らかなように、利用者がカラオケ装置1に希望曲をリクエストし、その楽曲が演奏されて歌う際、カラオケ場に配設された照明器具3の128個のLEDランプ4のそれぞれの輝度と色が音楽連係データに基づいて多彩に変化し、演奏されている音楽に同調した華やかな照明効果が醸し出される。とくに、歌が上手に歌えているとカラオケ装置1が採点した場合は、照明器具3の全体的な明るさが増し、音楽同調照明の華やかさがいっそう際立つようになる。しかしながら、あまり上手に歌えていないとカラオケ装置1が採点した場合は、照明器具3の全体的に暗くなり、音楽同調照明の華やかさが低下してくる。この変化は、カラオケ歌唱の過程において採点データの変化に合わせて生じるので、歌っている人も聴いている人も、音楽同調照明の楽しさと歌唱採点の楽しさを満喫することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラオケ装置と、照明器具と、照明制御装置を備えたカラオケ照明システムであって、
カラオケ装置は、カラオケデータに基づいて伴奏音楽を演奏する過程において、当該カラオケデータに基づく複数チャンネルの音楽連係データを照明制御装置に送信し、
カラオケ装置は、カラオケデータに基づいて伴奏音楽を演奏する過程において、伴奏音楽に合わせて歌う人の歌声に基づいて歌の巧拙を評価した採点データを逐次生成して照明制御装置に送信し、
照明器具は、多色発光可能な複数個のLEDランプを含み、
照明制御装置は、制御データ生成手段と、ランプ駆動手段と、電流制御手段を備え、
制御データ生成手段は、カラオケ装置から逐次受信する音楽連係データに基づいて各LEDランプの制御データを逐次生成し、
制御データは、各LEDランプごとの色別の輝度データを含み、
ランプ駆動手段は、各LEDランプに通電する定電流を制御データに基づいて個別にパルス幅制御することにより各LEDランプの輝度と色を個別に制御し、
電流制御手段は、カラオケ装置から逐次受信する採点データに基づいて各LEDランプに通電する共通の定電流値を制御し、照明器具の全体的な明るさを採点データが良いほど明るくする
カラオケ照明システム。
【請求項2】
制御データ生成手段は、生成する制御データにより表現する色数をカラオケ装置から逐次受信する採点データに基づいて変化させ、採点データが良いほど色数を多くする
請求項1に記載のカラオケ照明システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−232638(P2011−232638A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104214(P2010−104214)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(390004710)株式会社第一興商 (537)
【Fターム(参考)】