説明

音楽同調電飾を歌の巧拙により制御するカラオケ電飾システム

【課題】LEDディスプレイ技術・LED照明技術を活用することで、安価で簡単な回路構成により、多色発光可能な複数のLEDランプを備えた電飾器具を、カラオケ装置で演奏される個々の伴奏音楽に合わせて多彩に変化させる機能と、伴奏音楽に合わせて歌う人の歌の巧拙に合わせて変化させる機能の両方を備えた高性能なカラオケ電飾システムを実現する。
【解決手段】マイコン21は、各LEDランプ4の輝度と色を規定する128個分のランプ制御データを、カラオケ装置1から供給される音楽連係データに基づいて生成することでランプの動的制御を行う。マイコン21は、採点データに基づいて静的制御対象のランプ個数を決定し、全128個のLEDランプ4のうち、その個数分のランプを静的制御対象として指定し、そのランプを消灯状態に維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カラオケ場を装飾的に照明する多色発光可能な複数個のLEDランプをカラオケデータに基づいて伴奏音楽に同調させるカラオケ電飾システムに関し、とくに、音伴奏音楽に合わせて歌う人の歌のうまさに応じて音楽同調電飾を変化させるようにしたシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、音楽コンサートではステージ照明や電飾を音楽に合わせて変化させることは普通に行われてきた。そのため、音楽に合わせて自動的に照明や電飾さらにはディスプレイを制御するいろいろな技術も開発されてきた。たとえば、特開平7−289746号公報「音の変化を光の変化に変換する装置」、特許第3388530号公報「音楽演出用照明装置」、特開平4−151199号公報「アニメーション合成表示装置」、特開2004−163767号公報「環境同期制御システム」などに種々の技術が開示されている。
【0003】
もちろんカラオケの分野においても、カラオケデータに基づいて照明や電飾を音楽に合わせて自動的に変化させる照明制御技術が採用された。たとえば、特開平6−19488号公報「カラオケ装置」、特開平7−302686号公報「カラオケ用照明制御装置」、特開平7−73975号公報「照明制御装置」、特開平7−73976号公報「照明制御装置」、特許第4257300号公報「カラオケ端末装置」などに種々の技術が開示されている。
【0004】
最近のカラオケ利用シーンにおいて顕著なことの1つに、歌唱力の採点システムに対する利用者の人気がきわめて高いことがある。その背景には、歌唱力の採点技術が著しく進歩し、カラオケ装置の採点能力に対する利用者の信頼感が高まったことがあげられる。装置が機械的に行う採点に対する人々の信頼感が高まったため、多くの人が自分の採点結果と他人の採点結果を比べ、競うことを楽しむようになった。特開2004−206009号公報や特開2005−107087号公報には進歩した採点技術が詳しく解説されている。特開2005−99288号公報には採点結果を楽しく出力する技術が詳しく解説されている。
【0005】
カラオケ伴奏音楽に合わせて歌っている人の採点データに基づいて、歌の巧拙により照明を変化させるシステムも開発された。その詳細が特開平9−166992号公報に開示されている。このシステムにおいては、複数種類の照明の明るさやミラーボールの回転・停止などを歌唱中に逐次出力される採点データに基づいて変化させ、採点データが良いほど明るく華やかな照明環境を創出し、採点データが悪いと暗く陰鬱な照明環境にするように構成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の目的は、さいきん顕著に進歩したLEDディスプレイ技術・LED照明技術を活用することで、安価で簡単な回路構成により、多色発光可能な複数のLEDランプを備えた電飾器具を、カラオケ装置で演奏される個々の伴奏音楽に合わせて多彩に変化させる機能と、伴奏音楽に合わせて歌う人の歌の巧拙に合わせて変化させる機能の両方を備えた高性能なカラオケ電飾システムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るカラオケ電飾システムは、基本的に、つぎの事項(1)〜(8)により特定されるものである。
(1)カラオケ装置と、電飾器具と、電飾制御装置を備えたカラオケ電飾システムであること
(2)カラオケ装置は、カラオケデータに基づいて伴奏音楽を演奏する過程において、当該カラオケデータに基づく複数チャンネルの音楽連係データを電飾制御装置に送信すること
(3)カラオケ装置は、カラオケデータに基づいて伴奏音楽を演奏する過程において、伴奏音楽に合わせて歌う人の歌声に基づいて歌の巧拙を評価した採点データを逐次生成して電飾制御装置に送信すること
(4)電飾器具は、多色発光可能な複数個のLEDランプを含むこと
(5)電飾制御装置は、電飾器具における各LEDランプを個別に発光制御可能であり、静的制御手段と、動的制御手段を含むこと
(6)電飾制御装置は、カラオケ装置から逐次受信する採点データに基づいて、採点データが悪いほどより多数のLEDランプを静的制御対象として指定すること
(7)静的制御手段は、静的制御対象として指定されたLEDランプの状態を規定状態に維持すること
(8)動的制御手段は、静的制御対象として指定されていないLEDランプをカラオケ装置から逐次受信する音楽連係データに基づいて個別に発光制御し、各LEDランプの発光色および明滅動作を変化させること
【0008】
この発明においては、以下の構成を適宜に採用することが望ましい。
(A)静的制御手段は、静的制御対象として指定されたLEDランプの輝度をゼロまたは微小値に維持すること
(B)動的制御手段は、静的制御対象として指定されていないLEDランプの数が多いほど、これらLEDランプの輝度を高くすること
(C)動的制御手段は、静的制御対象として指定されていないLEDランプの数が多いほど、これらLEDランプの発光色の色数を多くすること
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例におけるカラオケ電飾システムの概略図である。
【図2】実施例における電飾制御装置と電飾器具の構成図である。
【実施例】
【0010】
===システムの前提的な構成===
この発明に係るカラオケ電飾システムの概要を図1に示している。カラオケ装置1は基本的に周知慣用のカラオケ装置と同等の構成を備えるものであり、この明細書において周知慣用のカラオケ技術についての記述は必要最小限に留める。
【0011】
この発明において、カラオケ装置1は、カラオケデータに基づいて伴奏音楽を演奏する過程において、当該カラオケデータに基づく複数チャンネルの音楽連係データを電飾制御装置2に送信する。また、カラオケ装置1は、カラオケデータに基づいて伴奏音楽を演奏する過程において、伴奏音楽に合わせて歌う人の歌声に基づいて歌の巧拙を評価した採点データを逐次生成して電飾制御装置2に送信する。
【0012】
電飾制御装置2は、カラオケ装置1から逐次受信する音楽連係データに基づいて電飾器具3における各LEDランプの制御データを逐次生成する。図2に示すように、電飾器具3は、多色発光可能な複数のLEDランプ4を備えており、これらのLEDランプ4の輝度と色が電飾制御装置2により個別に制御される。
【0013】
カラオケデータは、MIDIなどの電子楽譜形式の音楽生成データを主体に構成されている。音楽連係データは、カラオケデータを構成している複数の楽器のパートデータの中から抽出したいくつかの楽器のパートデータである。たとえば、演奏中の楽曲のリズム構造(拍節構造)を代表する時系列情報として、カラオケデータ中のドラムパートデータを音楽連係データの1つとして抽出する。また、演奏中の楽曲の和声進行を代表する時系列情報として、カラオケデータ中のベースパートデータを音楽連係データの1つとして抽出する。同様にして、楽曲の音楽的構成を代表する時系列情報として、前奏や間奏で活躍するメロディ楽器のパートデータを音楽連係データとして抽出する。
【0014】
好ましい実施例としては、各楽曲のカラオケデータからどのパートのデータを音楽連係データとして抽出するのかを、各楽曲ごとのカラオケデータの付加情報としてあらかじめ設定しておく。また、音楽同調電飾を実現するための専用の音楽連係データを各楽曲に合わせてあらかじめ作成し、これをカラオケデータの1つのパートデータとして含めておく実施例も好ましい。ただしカラオケデータの特定のいくつかの楽器のパートデータを音楽連係データとして抽出する実施例でもよい。
【0015】
===LEDランプの動的制御===
電飾器具3の実施例について説明する。電飾器具3は、128個のLEDランプ4を備えている。LEDランプ4は赤色LED・緑色LED・青色LEDを含んだ集合ランプであり、3原色LEDの各輝度を多階調に変化させることで、LEDランプ4の輝度と色を変化させることができる。
【0016】
図2に示すように、電飾制御装置2は、マイコン21と定電流ドライバ22を備えている。定電流ドライバ22は、128個のLEDランプ4の赤色LED・緑色LED・青色LEDを駆動する合計384個の出力端子があり、各出力端子に接続されたLEDに所定時間だけ定電流が通電され、通電時間によりLEDの輝度が調整される。つまり、各LEDは定電流のパルス幅制御(PWM制御)により発光駆動される。
【0017】
マイコン21は、384個の各LEDの輝度データとして4ビットのデータ(16階調を表現可能)を生成して定電流ドライバ22に直列入力してラッチさせる。この動作を1/60秒の周期で繰り返し行う。つまりマイコン21は、1秒間に60回の繰り返し周期で、1個のLEDランプ4の輝度と色を指定する4×3=12ビットのランプ制御データを128個分生成して定電流ドライバ22にラッチし、128個のLEDランプ4の輝度と色を変化させることができる。
【0018】
マイコン21は、1/60秒の周期で実行する処理により、各LEDランプ4の輝度と色を規定する128個分のランプ制御データを、カラオケ装置1から供給される音楽連係データに基づいて生成する。これにより、128個のLEDランプ4の輝度と色の変化が織りなす電飾を、カラオケ装置1にて演奏されている伴奏音楽に同調させる。
【0019】
128個のLEDランプ4の輝度と色の変化が織りなす電飾を音楽連係データに基づいて伴奏音楽に同調させる処理としては、多くの技術文献に開示されているとおり、いろいろな方式が考えられる。たとえば、マイコン21において、各LEDランプ4ごとに異なる制御関数をプログラムしておき、各制御関数のパラメータに適宜に音楽連係データをとりいれてランプ制御データを計算するとともに、各LEDランプと各制御関数の対応関係を適宜な音楽連係データに基づいて組み替えるようにする。
【0020】
これにより、楽曲のリズム構造(拍節構造)を反映した音楽連係データに基づいてLEDランプの明滅表現を生みだし、楽曲の和声進行を反映した照明色の組み合わせを生みだし、楽曲の音量変化を反映した光量変化を生みだし、楽曲中の前奏や間奏における独奏楽器の演奏を反映した照明光の移動・収束・拡散といった表現を生みだす。実施例のように1/60秒の周期でランプ制御データを更新するので、きわめてスピード感のある躍動する音楽同調電飾を生みだすことができる。これをLEDランプ4の動的制御と称する。
【0021】
===静的制御の導入===
この発明は、上記の動的制御を行うことに加えて、静的制御という考え方をも採り入れたことに特徴を有するものである。つまり、上記の説明においては電飾器具3の128個のLEDランプ4のすべてを音楽連係データに基づいて動的制御するように説明しているが、必ずしもそのように制御するのではなく、128個のLEDランプ4の中の一部のランプは動的制御の対象から外され、静的制御の対象となる。
【0022】
LEDランプ4の静的制御とは、典型的には、LEDランプ4を消灯状態に維持することである。あるいは、LEDランプ4を発光させるものの微小な輝度に維持する制御である。128個のLEDランプ4のすべてを上述のように動的制御すると、電飾器具4はもっとも華やかな状態になる。128個のうちのたとえば78個のLEDランプ4を静的制御の対象として消灯状態に維持すると、動的制御されるLEDランプ4は残る50個であるから、その華やかさは大幅に減少することになる。
【0023】
===採点データと静的制御対象のランプ個数===
この発明では、カラオケ装置1は、カラオケデータに基づいて伴奏音楽を演奏する過程において、伴奏音楽に合わせて歌う人の歌声に基づいて歌の巧拙を評価した採点データを逐次生成して電飾制御装置2に送信する。電飾制御装置2のマイコン21は、受信した採点データに基づいて、採点データが悪いほどより多数のLEDランプ4を静的制御対象に指定する。採点データとランプ個数との関係は一律に決めておいても良いし、何らかの変動要因を加味しても良い。
【0024】
===静的制御対象の指定===
電飾制御装置2のマイコン21は、採点データに基づいて静的制御対象のランプ個数を決定したならば、全128個のLEDランプ4のうち、その個数分のランプを静的制御対象として指定する。静的制御対象のランプ個数がたとえば78個であるとすると、全128個のLEDランプ4のうち、ランダムに選出した78個のランプを静的制御対象として指定する。この選出方法はランダムに限らず、全128個のLEDランプ4の配置などに関連づけした何らかの規則性を持たせても良い。静的制御対象のランプ指定を動的に変化させても良い。
【0025】
上述したように、マイコン21は、1/60秒の周期で実行する処理により、各LEDランプ4の輝度と色を規定する128個分のランプ制御データを、カラオケ装置1から供給される音楽連係データに基づいて生成するところ、静的制御対象として指定された複数のLEDランプ4についての動的制御によるランプ制御データは無視して出力せず、代わりに該当LEDランプ4を消灯させる制御データ(4×3=12ビットをオールゼロ)を出力する。もちろん静的制御対象のランプについては動的制御のランプ制御データの演算を行わずにオールゼロを出力しても良い。
【0026】
カラオケ装置1は所定の採点区間ごとに歌の巧拙を評価した採点データを電飾制御装置2に与えるので、利用者がカラオケ歌唱をしている過程において、静的制御対象(消灯状態に維持される)のLEDランプ4の個数が変化し、歌が上手に歌えているとカラオケ装置1が採点した場合は音楽同調電飾の華やかさが増し、あまり上手に歌えていないとカラオケ装置1が採点した場合は音楽同調電飾の華やかさが低下してくる。そのため、歌っている人も聴いている人も、音楽同調電飾の楽しさと歌唱採点の楽しさを満喫することができる。
【0027】
この発明による歌唱採点を反映した音楽同調電飾のスリリングな楽しさは、静的制御対象として指定されていないLEDランプ4の個数が多いほど、これらLEDランプ4の輝度を高くするように構成したり、さらに、静的制御対象として指定されていないLEDランプ4の個数が多いほど、これらLEDランプ4の発光色の色数を多くするように構成することで、よりいっそう際立ったものとなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラオケ装置と、電飾器具と、電飾制御装置を備えたカラオケ電飾システムであって、
カラオケ装置は、カラオケデータに基づいて伴奏音楽を演奏する過程において、当該カラオケデータに基づく複数チャンネルの音楽連係データを電飾制御装置に送信し、
カラオケ装置は、カラオケデータに基づいて伴奏音楽を演奏する過程において、伴奏音楽に合わせて歌う人の歌声に基づいて歌の巧拙を評価した採点データを逐次生成して電飾制御装置に送信し、
電飾器具は、多色発光可能な複数個のLEDランプを含み、
電飾制御装置は、電飾器具における各LEDランプを個別に発光制御可能であり、静的制御手段と、動的制御手段を含み、
電飾制御装置は、カラオケ装置から逐次受信する採点データに基づいて、採点データが悪いほどより多数のLEDランプを静的制御対象として指定し、
静的制御手段は、静的制御対象として指定されたLEDランプの状態を規定状態に維持し、
動的制御手段は、静的制御対象として指定されていないLEDランプをカラオケ装置から逐次受信する音楽連係データに基づいて個別に発光制御し、各LEDランプの発光色および明滅動作を変化させる
カラオケ電飾システム。
【請求項2】
静的制御手段は、静的制御対象として指定されたLEDランプの輝度をゼロまたは微小値に維持する
請求項1に記載のカラオケ電飾システム。
【請求項3】
動的制御手段は、静的制御対象として指定されていないLEDランプの数が多いほど、これらLEDランプの輝度を高くする
請求項1または2に記載のカラオケ電飾システム。
【請求項4】
動的制御手段は、静的制御対象として指定されていないLEDランプの数が多いほど、これらLEDランプの発光色の色数を多くする
請求項1〜3のいずれかに記載のカラオケ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−232639(P2011−232639A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104215(P2010−104215)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(390004710)株式会社第一興商 (537)
【Fターム(参考)】