説明

音波式漏洩位置検知装置

【課題】マイク(音波検出器)が正常か否かを漏洩位置検知作業前に簡易に診断することができ、効率よく漏洩位置検知作業を進めることができる。
【解決手段】音波式漏洩位置検知装置1は、配管Pにおける設定された検知区間Lの一端側の開口端L1に接続される第1接続部10と他方側の開口端L2に接続される第2接続部20を備え、第1接続部10には、第1音波検出器11と第1音波発生器12が配備され、第2接続部20には、第2音波検出器21と第2音波発生器22が配置され、第1及び第2音波検出器11,21の検出信号が入力されると共に、第1及び第2音波発生器12,22の動作信号を出力する信号処理部30を備えている。信号処理部30は、漏洩位置検知手段31と、第1音波検出器診断手段32と、第2音波検出器診断手段33とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の漏洩位置を漏洩音の検出によって検知する音波式漏洩位置検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来の音波式漏洩位置検知装置を示した説明図である(下記特許文献1参照)。ガスや水道等の流体輸送用配管は、腐蝕や損傷などによって穴が開き輸送流体が漏洩する事態が生じうる。これに対しては、漏洩箇所を検知して迅速に漏洩箇所に修理を施すことが求められる。音響式漏洩検知装置J0は様々敷設状態の配管に対して適用可能であるが、特に地中埋設配管の漏洩位置検知に有効である。
【0003】
この音波式漏洩位置検知装置J0は、配管P上の任意の2点(A点とB点)から分岐した立て管に音波検出器としてのマイクJ2及びマイクJ3を取り付け、このマイクJ2,J3によってC点の漏洩位置から発せられる漏洩音を検出する。そして、マイクJ2で検出した音波信号とマイクJ3で検出した音波信号とを演算処理部J1で相互相関法にて処理することによって、ある時点でC点から発せられた漏洩音がA点とB点の2点に伝わる伝搬時間の差を求め、この伝搬時間の差に基づいてA点とB点の中間点(D点)から漏洩位置であるC点までの距離を求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−87669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような音波式漏洩位置検知装置では、マイクの出力が無い場合、漏洩音が発生されていないのか、故障や接続不良などでマイクに何らかの不具合があって出力が無いのかの区別ができない問題があった。実際上は作業者がマイクに向けて声を発するか或いは立て管を叩くなどして確認音を発生させ、この確認音をマイクが検出できるかどうかでマイクの不具合を診断した後に検知作業を行っていたが、これによると、複数区間で漏洩位置検知作業を連続して行う際に、マイクの設置箇所を変える度に確認音を発生させて接続不良などが無いかの確認作業を行わざるを得ず、効率よく作業を進めることができない問題があった。
【0006】
また、配管における漏洩検知区間の途中が土砂や差し水などで塞がれている場合があり、この場合に、漏洩検知区間の一箇所で配管が塞がれている場合には、2点に設置した一対のマイクの一方で漏洩音を検出することができるので配管が塞がれている事態を把握することができる。しかしながら、漏洩箇所を挟むように複数箇所で配管が塞がれている場合には、配管が塞がれて漏洩音が消されているのか、漏洩音が発生されていないのか区別できない問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、マイク(音波検出器)が正常か否かを漏洩位置検知作業前に簡易に診断することができ、効率よく漏洩位置検知作業を進めることができること、配管の途中が塞がれている事態を漏洩位置検知作業前に認知でき、漏洩位置検知作業の信頼性を向上させることができること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明による音波式漏洩位置検知装置は、以下の構成を少なくとも具備するものである。
【0009】
配管の漏洩位置を漏洩音の検出によって検知する音波式漏洩位置検知装置であって、前記配管における設定された検知区間の一端側の開口端に接続される第1接続部と前記検知区間の他方側の開口端に接続される第2接続部を備え、前記第1接続部には、前記配管内を伝搬する音波を検出する第1音波検出器と当該第1音波検出器の近傍に配置されて音波を発生させる第1音波発生器が配備され、前記第2接続部には、前記配管内を伝搬する音波を検出する第2音波検出器と当該第2音波検出器の近傍に配置されて音波を発生させる第2音波発生器が配置され、前記第1及び第2音波検出器の検出信号が入力されると共に、前記第1及び第2音波発生器の動作信号を出力する信号処理部を備え、前記信号処理部は、前記第1音波検出器の検出信号と前記第2音波検出器の検出信号に基づいて前記検知区間における漏洩位置を検知する漏洩位置検知手段と、前記第1音波発生器の動作信号出力に応じて前記第1音波検出器の検出信号を確認することで前記第1音波検出器が正常か異常かを診断する第1音波検出器診断手段と、前記第2音波発生器の動作信号出力に応じて前記第2音波検出器の検出信号を確認することで前記第2音波検出器が正常か異常かを診断する第2音波検出器診断手段とを備えることを特徴とする音波式漏洩位置検知装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、このような特徴を有することで、配管の漏洩位置を漏洩音の検出によって検知する音波式漏洩位置検知装置において、第1音波検出器と第2音波検出器の一方又は両方が正常か否かを漏洩位置検知作業前に簡易に診断することができ、効率よく漏洩位置検知作業を進めることができる。
【0011】
また、信号処理部が、第1音波発生器の動作信号出力に応じて第2音波検出器の検出信号を確認することで検知区間内の配管が閉塞状態に有るか否かを判定する配管閉塞判定手段を備えることで、配管の途中が塞がれている事態を漏洩位置検知作業前に認知でき、漏洩位置検知作業の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来の音波式漏洩位置検知装置を示した説明図。
【図2】本発明の実施形態に係る音波式漏洩位置検知装置を示した説明図。
【図3】本発明の実施形態に係る音波式漏洩位置検知装置の他の例を示した説明図。
【図4】本発明の実施形態における第1,第2接続部の構成例を示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。図2は、本発明の実施形態に係る音波式漏洩位置検知装置を示した説明図である。この音波式漏洩位置検知装置1は、従来技術と同様に、配管Pにおいて検知区間Lを特定し、検知区間Lの一端(A点)から分岐した分岐管(メータ立て管)P1の開口端L1と、検知区間Lの他端(B点)から分岐した分岐管(メータ立て管)P2の開口端L2に設置され、ある時点でC点から発せられた漏洩音がA点とB点の2点に伝わる伝搬時間の差を求め、この伝搬時間の差に基づいてA点とB点の中間点(D点)から漏洩位置であるC点までの距離を求めるものである。
【0014】
本発明の実施形態に係る音波式漏洩位置検知装置1は、配管Pにおける設定された検知区間Lの一端側の開口端L1に接続される第1接続部10と検知区間Lの他方側の開口端L2に接続される第2接続部20を備えると共に、信号処理部30を備えている。
【0015】
第1接続部10には、配管P内を伝搬する音波を検出する第1音波検出器(マイク)11と第1音波検出器11の近傍に配置されて音波を発生させる第1音波発生器(スピーカ)12が配備され、第2接続部20には、配管P内を伝搬する音波を検出する第2音波検出器(マイク)21と第2音波検出器21の近傍に配置されて音波を発生させる第2音波発生器(スピーカ)22が配置されている。
【0016】
信号処理部30は、第1音波検出器11及び第2音波検出器21の検出信号が入力されると共に、第1音波発生器12及び第2音波発生器22の動作信号を出力するように、第1接続部10及び第2接続部20と有線又は無線の信号回線で接続されている。
【0017】
そして、信号処理部30は、音波式漏洩位置検知装置1としての基本機能であって、第1音波検出器11の検出信号と第2音波検出器21の検出信号に基づいて検知区間Lにおける漏洩位置を検知する漏洩位置検知手段31を備えている。この漏洩位置検知手段31は、第1音波検出器11の検出信号と第2音波検出器21の検出信号とを相互相関法にて処理することによって、ある時点に発せられた漏洩音がA点(或いは開口端L1)とB点(或いは開口端L2)に伝わるまでの伝搬時間の差を求め、この伝搬時間の差に基づいて漏洩位置(C点)が検知区間Lの中間位置(D点)からどれ位の距離だけ離れているかを検知する機能を有している。
【0018】
そして、本発明の実施形態に係る音波式漏洩位置検知装置1における信号処理部30は、前述した漏洩位置検知手段31に加えて、第1音波検出器診断手段32と第2音波検出器診断手段33を少なくとも備えている。
【0019】
第1音波検出器診断手段32は、第1音波発生器12の動作信号出力に応じて第1音波検出器11の検出信号を確認することで第1音波検出器11が正常か異常かを診断する機能を有しており、第2音波検出器診断手段33は、第2音波発生器22の動作信号出力に応じて第2音波検出器21の検出信号を確認することで第2音波検出器21が正常か異常かを診断する機能を有している。
【0020】
すなわち、第1,第2音波検出器診断手段32,33は、第1,第2音波発生器12,22から音波を発生させ、その音波を第1,第2音波検出器11,21でそれぞれ検出することにより第1,第2音波検出器11,21が正常に動作しているか否かを確認するものであり、第1,第2音波発生器12,22から音波が発生されているにも係わらず、第1,第2音波検出器11,12から音波の検出信号が得られない場合は第1,第2音波検出器11,12を異常と診断する。
【0021】
第1音波検出器診断手段32と第2音波検出器診断手段33は、個別に機能することで第1音波検出器11と第2音波検出器21を個別に診断することができるが、第1音波検出器診断手段32と第2音波検出器診断手段33を同時に機能させ、第1音波検出器11と第2音波検出器21の何れか一方が異常と診断されたときに異常の出力を発生させるようにしてもよい。
【0022】
この第1,第2音波検出器診断手段32,33は、漏洩位置検知手段31の実行前に実行することが有効であり、特に、信号処理部30の動作開始時(例えば電源投入時)に実行することで、第1,第2音波検出器11,21の自動診断が可能になる。
【0023】
本発明の実施形態に係る音波式漏洩位置検知装置1は、信号処理部30において、第1,第2音波検出器診断手段32,33に加えて音波検出器異常表示手段34を具備することができる。音波検出器異常表示手段34は、第1音波検出器診断手段32と第2音波検出器診断手段33の一方又は両方が異常を診断した場合に異常表示を行うものである。異常表示は、音波式漏洩位置検知装置1に備えられる図示省略の表示部を信号処理部30からの出力によって駆動し、「マイク異常」等の文字表示や赤点表示など、操作者が異常を認識できる表示を行う。
【0024】
図3は、本発明の実施形態に係る音波式漏洩位置検知装置の他の例を示した説明図である。この例は、音波式漏洩位置検知装置1の信号処理部30が、前述した漏洩位置検知手段31,第1音波検出器診断手段32,第2音波検出器診断手段33,音波検出器異常表示手段34に加えて、配管閉塞判定手段35,検知区間配管長計測手段36を備えている。配管閉塞判定手段35と検知区間配管長計測手段36は両方具備しても良いが、いずれか一方を省略しても良い。
【0025】
配管閉塞判定手段35は、第1音波発生器12(又は第2音波発生器22)の動作信号出力に応じて第2音波検出器21(又は第1音波検出器11)の検出信号を確認することで、検知区間L内の配管Pが閉塞状態に有るか否かを判定する機能を有する。すなわち、検知区間Lの一端側から音波を配管P内に放出させて検知区間Lの他端側でその音波が検出できるか否かで検知区間L内の配管Pが閉塞状態に有るか否かを判定するものである。配管閉塞判定手段35を実行させて検知区間L内の配管Pが閉塞状態に有るか否かを判定しておけば、漏洩位置検知手段31において音波検出が無い場合に、漏洩が無いことで音波が検出されないのか、配管Pの閉塞で音波が検出されないのかを区別することができる。なお、この区別に際しては、第1,第2音波検出器11,21が正常に動作していることが前提になる。
【0026】
検知区間配管長計測手段36は、第1音波発生器12(又は第2音波発生器22)の動作信号出力に応じて第1音波検出器11の検出信号と第2音波検出器21の検出信号を比較することで、検知区間Lの配管長を計測する機能を有する。検知区間Lの配管長は配管図によって大まかには把握できるが複雑に屈曲配管されている場合などは正確な配管長を把握し難い。このような場合に、検知区間配管長計測手段36によって正確な配管長を計測し、検知区間Lの中間位置(D点)を正確に把握する。第1音波発生器12で発生した音波を第1音波検出器11で検出すると共に第2音波検出器21で検出し、音波が第1音波検出器11で検出されてから第2音波検出器21で検出されるまでの到達時間差によって検知区間Lの長さを計測する。ここで計測される配管長は分岐管P1,P2の長さを含むものになるが、分岐管P1,P2の配管長が既知の場合にはこれを差し引いて検知区間Lの配管長を求めることができる。
【0027】
図4は、本発明の実施形態における第1,第2接続部の構成例を示した説明図である。第1接続部10(又は第2接続部20)は、第1音波検出器11(又は第2音波検出器21)と第1音波発生器12(又は第2音波発生器22)を備えているが、第1音波発生器12を第1音波検出器11の回線に共振回路13を介して接続することで、第1音波検出器11と第2音波発生器12の回線を共用化することができる。このような構成にすることで、回線接続の煩雑さを回避できると共に接続不良の発生を抑制することができる。
【0028】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る音波式漏洩位置検知装置1は、音波検出器(マイク)と音波発生器(スピーカ)をセットにして、検知区間Lの両端開口部L1,L2にそれぞれ装着することで、音波検出器(マイク)の診断機能、音波検出器の異常表示機能、配管が閉塞状態に有るか否かの判定機能、検知区間配管長の計測機能を、漏洩位置検知機能に加えて具備している。
【0029】
このような機能を有する本発明の実施形態に係る音波式漏洩位置検知装置1は、配管Pの漏洩位置を漏洩音の検出によって検知する基本機能に加えて、第1音波検出器11と第2音波検出器21の一方又は両方が正常か否かを漏洩位置検知作業前に簡易に診断することができ、効率よく漏洩位置検知作業を進めることができる。
【0030】
また、音波式漏洩位置検知装置1が配管Pの閉塞状態を判定する判定機能を備えることで、配管Pの途中が塞がれている事態を漏洩位置検知作業前に認知でき、漏洩位置検知作業の信頼性を向上させることができる。そして、音波式漏洩位置検知装置1が検知区間配管長の計測機能を備えることで、正確な検知区間配管長の基で正確に漏洩位置を検知することができる。
【0031】
すなわち、本発明の音波式漏洩位置検知装置1は、音波検出器(マイク)と音波発生器(スピーカ)をセットにして、検知区間Lの両端開口部L1,L2にそれぞれ装着し、漏洩位置検知手段31に加えて、第1音波検出器診断手段32,第2音波検出器診断手段33,音波検出器異常表示手段34,配管閉塞判定手段35,検知区間配管長計測手段36を具備することで、漏洩位置検知の作業効率と作業精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0032】
1:音波式漏洩位置検知装置,
10:第1接続部,20:第2接続部,
11:第1音波検出器,12:第1音波発生器,
21:第2音波検出器,22:第2音波発生器,
30:信号処理部,
31:漏洩位置検知手段,
32:第1音波検出器診断手段,
33:第2音波検出器診断手段,
34:音波検出器異常表示手段,
35:配管閉塞判定手段,
36:検知区間配管長計測手段,
P:配管,L:検知区間,L1,L2:開口端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の漏洩位置を漏洩音の検出によって検知する音波式漏洩位置検知装置であって、
前記配管における設定された検知区間の一端側の開口端に接続される第1接続部と前記検知区間の他方側の開口端に接続される第2接続部を備え、
前記第1接続部には、前記配管内を伝搬する音波を検出する第1音波検出器と当該第1音波検出器の近傍に配置されて音波を発生させる第1音波発生器が配備され、
前記第2接続部には、前記配管内を伝搬する音波を検出する第2音波検出器と当該第2音波検出器の近傍に配置されて音波を発生させる第2音波発生器が配置され、
前記第1及び第2音波検出器の検出信号が入力されると共に、前記第1及び第2音波発生器の動作信号を出力する信号処理部を備え、
前記信号処理部は、
前記第1音波検出器の検出信号と前記第2音波検出器の検出信号に基づいて前記検知区間における漏洩位置を検知する漏洩位置検知手段と、
前記第1音波発生器の動作信号出力に応じて前記第1音波検出器の検出信号を確認することで前記第1音波検出器が正常か異常かを診断する第1音波検出器診断手段と、
前記第2音波発生器の動作信号出力に応じて前記第2音波検出器の検出信号を確認することで前記第2音波検出器が正常か異常かを診断する第2音波検出器診断手段と
を備えることを特徴とする音波式漏洩位置検知装置。
【請求項2】
前記信号処理部は、
前記第1音波検出器診断手段と前記第2音波検出器診断手段の一方又は両方が異常を診断した場合に異常表示を行う音波検出器異常表示手段を備えることを特徴とする請求項1記載の音波式漏洩位置検知装置。
【請求項3】
前記信号処理部は、
前記第1音波発生器の動作信号出力に応じて前記第2音波検出器の検出信号を確認することで、前記検知区間内の配管が閉塞状態に有るか否かを判定する配管閉塞判定手段を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の音波式漏洩位置検知装置。
【請求項4】
前記信号処理部は、
前記第1音波発生器の動作信号出力に応じて前記第1音波検出器の検出信号と前記第2音波検出器の検出信号を比較することで、前記検知区間の配管長を計測する検知区間配管長計測手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の音波式漏洩位置検知装置。
【請求項5】
前記第1音波検出器診断手段と前記第2音波検出器診断手段は、前記信号処理部の動作開始時に実行することを特徴とする請求項1に記載の音波式漏洩位置検知装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate