説明

音響システム、音響信号処理装置および方法、並びに、プログラム

【課題】音の奥行き感を豊かにする。
【解決手段】スピーカ112L,112Rは、リスニング位置Pの前に略左右対称に配置されている。仮想スピーカ151L,151Rは、リスニング位置Pを中心とする中心角がスピーカ112Lとスピーカ112Rにより形成される中心角より大きく、かつ、リスニング位置Pの前後方向においてスピーカ112Lおよびスピーカ112Rよりリスニング位置Pに近くなるようにリスニング位置Pの前に略左右対称に配置されている。スピーカ112L,112Rは、ローパスフィルタ122L,122Rにより音響信号SLin,SRinの高域成分が減衰された音を出力し、仮想スピーカ151L,151Rは、ハイパスフィルタ121L,121Rにより音響信号SLin,SRinの中低域成分が減衰された音を出力する。本発明は、例えば、オーディオアンプに適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響システム、音響信号処理装置および方法、並びに、プログラムに関し、特に、音の奥行き感を豊かにする音響システム、音響信号処理装置および方法、並びに、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、音響の世界では、いわゆる立体音響を実現するためのサラウンドシステムの手法が各種提案され(例えば、特許文献1参照)、一般家庭への普及が進んでいる。
【0003】
一方、映像の世界では、近年、3Dテレビジョン受像機の普及等に伴い、いわゆる立体映像を再生するためのコンテンツ(以下、立体映像コンテンツと称する)の一般家庭への普及が進むことが予想されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3900208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのような立体映像コンテンツに付随する音響信号は、5.1チャンネル方式や2チャンネル(ステレオ)方式のような従来からあるフォーマットの音響信号である。そのため、立体映像が手前に飛び出したり、奥に引っ込んだりするのに対する音響効果が不十分である場合が多い。
【0006】
例えば、マイクロホンに近い音源から収録された音(以下、手前側音声と称する)の音像が、スピーカの手前(リスナーに近い側)に定位せずに、隣接するスピーカの間またはその近傍に定位する。また、マイクロホンから遠い音源から収録された音(以下、奥行き側音声と称する)の音像も、スピーカの奥(リスナーから遠い側)に定位せずに、手前側音声の音像とほぼ同じ位置に定位する。これは、不特定多数の観客を対象にする映画などのコンテンツでは、音像の定位をスピーカ間の音量バランスで制御することが多く、その結果、一般家庭の環境においてもスピーカ間に音像が定位するようになるためである。そのため、音場感が平面的になり、立体映像と比較して奥行き感に乏しいものになってしまう。
【0007】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、音の奥行き感を豊かにできるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面の音響信号処理装置は、所定のリスニング位置の前に前記リスニング位置に対して略左右対称に配置された第1のスピーカおよび第2のスピーカと前記リスニング位置を中心とした場合に、前記リスニング位置と各スピーカとを結ぶことによって形成される中心角が、前記リスニング位置と前記第1のスピーカおよび前記第2のスピーカとを結ぶことによって形成される中心角より大きくなり、かつ、前記リスニング位置の前後方向において前記第1のスピーカおよび前記第2のスピーカより前記リスニング位置に近くなるように前記リスニング位置の前に、前記リスニング位置に対して略左右対称に配置された第3のスピーカおよび第4のスピーカと、入力音響信号の所定の第1の周波数以下の成分を減衰させる第1の減衰手段と、前記入力音響信号に基づく音を前記第1のスピーカおよび前記第2のスピーカから出力し、前記入力音響信号の前記第1の周波数以下の成分を減衰させた第1の音響信号に基づく音を前記第3のスピーカおよび前記第4のスピーカから出力するように制御する出力制御手段とを備える。
【0009】
前記入力音響信号の所定の第2の周波数以上の成分を減衰させる第2の減衰手段をさらに設け、前記出力制御手段には、前記入力音響信号の前記第2の周波数以上の成分を減衰させた第2の音響信号に基づく音を前記第1のスピーカおよび前記第2のスピーカから出力するように制御させることができる。
【0010】
前記第3のスピーカと前記リスニング位置との距離、および前記第4のスピーカと前記リスニング位置との距離が、前記第1のスピーカと前記リスニング位置との距離、または前記第2のスピーカと前記リスニング位置との距離より小さくなるように、前記第1乃至第4のスピーカを配置するようにすることができる。
【0011】
前記第1の音響信号に基づく音が、仮想スピーカである前記第3のスピーカおよび仮想スピーカである前記第4のスピーカから仮想的に出力されるように前記第1の音響信号に対して所定の信号処理を行う信号処理手段をさらに設けることができる。
【0012】
本発明の第2の側面の音響信号処理装置は、入力音響信号の所定の周波数以下の成分を減衰させる減衰手段と、所定のリスニング位置の前に前記リスニング位置に対して略左右対称に配置された第1のスピーカおよび第2のスピーカから前記入力音響信号に基づく音を出力し、前記リスニング位置を中心とした場合に、前記リスニング位置と第3のスピーカおよび第4のスピーカとを結ぶことによって形成される中心角が、前記リスニング位置と前記第1のスピーカおよび前記第2のスピーカとを結ぶことによって形成される中心角より大きくなり、かつ、前記リスニング位置の前後方向において前記第1のスピーカおよび前記第2のスピーカより前記リスニング位置に近くなるように前記リスニング位置の前に、前記リスニング位置に対して略左右対称に配置された前記第3のスピーカおよび前記第4のスピーカから前記入力音響信号の前記所定の周波数以下の成分を減衰させた音響信号に基づく音を出力するように制御する出力制御手段とを備える。
【0013】
本発明の第2の側面の音響信号処理方法は、入力音響信号の所定の周波数以下の成分を減衰させ、所定のリスニング位置の前に前記リスニング位置に対して略左右対称に配置された第1のスピーカおよび第2のスピーカから前記入力音響信号に基づく音を出力し、前記リスニング位置を中心とした場合に、前記リスニング位置と第3のスピーカおよび第4のスピーカとを結ぶことによって形成される中心角が、前記リスニング位置と前記第1のスピーカおよび前記第2のスピーカとを結ぶことによって形成される中心角より大きくなり、かつ、前記リスニング位置の前後方向において前記第1のスピーカおよび前記第2のスピーカより前記リスニング位置に近くなるように前記リスニング位置の前に、前記リスニング位置に対して略左右対称に配置された前記第3のスピーカおよび前記第4のスピーカから前記入力音響信号の前記所定の周波数以下の成分を減衰させた音響信号に基づく音を出力するように制御するステップを含む。
【0014】
本発明の第2の側面のプログラムは、入力音響信号の所定の周波数以下の成分を減衰させ、所定のリスニング位置の前に前記リスニング位置に対して略左右対称に配置された第1のスピーカおよび第2のスピーカから前記入力音響信号に基づく音を出力し、前記リスニング位置を中心とした場合に、前記リスニング位置と第3のスピーカおよび第4のスピーカとを結ぶことによって形成される中心角が、前記リスニング位置と前記第1のスピーカおよび前記第2のスピーカとを結ぶことによって形成される中心角より大きくなり、かつ、前記リスニング位置の前後方向において前記第1のスピーカおよび前記第2のスピーカより前記リスニング位置に近くなるように前記リスニング位置の前に、前記リスニング位置に対して略左右対称に配置された前記第3のスピーカおよび前記第4のスピーカから前記入力音響信号の前記所定の周波数以下の成分を減衰させた音響信号に基づく音を出力するように制御するステップを含む処理をコンピュータに実行させる。
【0015】
本発明の第1の側面または第2の側面においては、入力音響信号の所定の周波数以下の成分が減衰され、所定のリスニング位置の前に前記リスニング位置に対して略左右対称に配置された第1のスピーカおよび第2のスピーカから前記入力音響信号に基づく音が出力され、前記リスニング位置を中心とした場合に、前記リスニング位置と第3のスピーカおよび第4のスピーカとを結ぶことによって形成される中心角が、前記リスニング位置と前記第1のスピーカおよび前記第2のスピーカとを結ぶことによって形成される中心角より大きくなり、かつ、前記リスニング位置の前後方向において前記第1のスピーカおよび前記第2のスピーカより前記リスニング位置に近くなるように、前記リスニング位置の前に前記リスニング位置に対して略左右対称に配置された前記第3のスピーカおよび前記第4のスピーカから前記入力音響信号の前記所定の周波数以下の成分を減衰させた音響信号に基づく音が出力される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の側面または第2の側面によれば、音の奥行き感を豊かにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を適用した音響システムの第1の実施の形態を示すブロック図である。
【図2】仮想スピーカの位置を示す図である。
【図3】音響システムにより実行される音響信号処理を説明するためのフローチャートである。
【図4】反射音の入射角に対するIACCの測定結果の一例を示すグラフである。
【図5】反射音の入射角に対するIACCの測定条件を説明するための図である。
【図6】スピーカおよび仮想スピーカの配置条件の第1の例を示す図である。
【図7】スピーカおよび仮想スピーカの配置条件の第2の例を示す図である。
【図8】本発明を適用した音響システムの第2の実施の形態を示すブロック図である。
【図9】コンピュータの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態という)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(仮想スピーカを用いる例)
2.第2の実施の形態(実際のスピーカを用いる例)
3.変形例
【0019】
<1.第1の実施の形態>
[音響システムの構成例]
図1は、本発明を適用した音響システムの第1の実施の形態を示すブロック図である。
【0020】
図1の音響システム101は、音響信号処理装置111、および、スピーカ112L,112Rを含むように構成される。
【0021】
音響信号処理装置111は、音響信号SLin,SRinからなるステレオの音響信号に対して所定の信号処理を施すことにより、スピーカ112L,112Rから出力される音の奥行き感を豊かにする装置である。
【0022】
音響信号処理装置111は、ハイパスフィルタ121L,121R、ローパスフィルタ122L,122R、信号処理部123、合成部124、および、出力制御部125を含むように構成される。
【0023】
ハイパスフィルタ121Lは、音響信号SLinの所定の周波数以下の成分を減衰することにより、音響信号SLinの高域成分を抽出する。ハイパスフィルタ121Lは、抽出した高域成分からなる音響信号SL1を信号処理部123に供給する。
【0024】
ハイパスフィルタ121Rは、ハイパスフィルタ121Lとほぼ同じ周波数特性を有しており、音響信号SRinの所定の周波数以下の成分を減衰することにより、音響信号SRinの高域成分を抽出する。ハイパスフィルタ121Rは、抽出した高域成分からなる音響信号SR1を信号処理部123に供給する。
【0025】
ローパスフィルタ122Lは、音響信号SLinの所定の周波数以上の成分を減衰することにより、音響信号SLinの中低域成分を抽出する。ローパスフィルタ122Lは、抽出した中低域成分からなる音響信号SL2を合成部124に供給する。
【0026】
ローパスフィルタ122Rは、ローパスフィルタ122Lとほぼ同じ周波数特性を有しており、音響信号SRinの所定の周波数以上の成分を減衰することにより、音響信号SRinの中低域成分を抽出する。ローパスフィルタ122Rは、抽出した中低域成分からなる音響信号SR2を合成部124に供給する。
【0027】
なお、ハイパスフィルタ121Lとローパスフィルタ122Lの周波数特性を合成した周波数特性、および、ハイパスフィルタ121Rとローパスフィルタ122Rの周波数特性を合成した周波数特性は、それぞれほぼフラットになる。
【0028】
信号処理部123は、音響信号SL1および音響信号SR1に基づく音が、図2に示される仮想スピーカ151L,151Rから仮想的に出力されるように、音響信号SL1および音響信号SR1に対して所定の信号処理を行う。信号処理部123は、信号処理の結果得られた音響信号SL3,SR3を合成部124に供給する。
【0029】
なお、図2の上下方向が、所定のリスニング位置Pの前後方向であり、図2の左右方向がリスニング位置Pの左右方向である。また、図2の上方向が、リスニング位置Pの前側、すなわち、リスニング位置Pにいるリスナー152の正面側であり、図2の下方向が、リスニング位置Pの後ろ側、すなわち、リスナー152の背面側である。また、以下、リスニング位置Pの前後方向を、奥行き方向とも称する。
【0030】
合成部124は、音響信号SL2と音響信号SL3とを合成することにより音響信号SL4を生成し、音響信号SR2と音響信号SR3とを合成することにより音響信号SR4を生成する。合成部124は、音響信号SL4,SR4を出力制御部125に供給する。
【0031】
出力制御部125は、音響信号SL4をスピーカ112Lに出力し、音響信号SR4をスピーカ112Rに出力するように出力制御を行う。
【0032】
スピーカ112Lは、音響信号SL4に基づく音を出力し、スピーカ112Rは、音響信号SR4に基づく音を出力する。
【0033】
なお、詳細は図6および図7を参照して後述するが、スピーカ112L,112R、および、仮想スピーカ151L,151Rは、以下の条件1乃至3を満たすように配置される。
【0034】
条件1:スピーカ112Lとスピーカ112R、および、仮想スピーカ151Lと仮想スピーカ151Rが、それぞれリスニング位置Pの前でリスニング位置Pに対してほぼ左右対象になる。
【0035】
条件2:奥行き方向において、仮想スピーカ151L,151Rがスピーカ112L,112Rよりリスニング位置Pに近くなる。これにより、仮想スピーカ151L,151Rによる音像が、スピーカ112L,112Rによる音像より、奥行き方向においてリスニング位置Pに近い位置で定位する。
【0036】
条件3:リスニング位置Pを中心とした場合に、リスニング位置Pと仮想スピーカ151Lおよび仮想スピーカ151Rとを結ぶことによって形成される中心角が、前記リスニング位置Pとスピーカ112Lおよびスピーカ112Rとを結ぶことによって形成される中心角より大きくなる。これにより、仮想スピーカ151L,151Rから仮想的に出力される音が、スピーカ112L,112Rから出力される音より外側(側方)からリスニング位置Pに到達する。
【0037】
なお、リスニング位置Pは、音響システム101の設計を行うために設定される理想的なリスニング位置である。
【0038】
[音響信号処理]
次に、図3のフローチャートを参照して、音響システム101により実行される音響信号処理について説明する。なお、この処理は、例えば、音響信号処理装置111への音響信号の入力が開始されたとき開始され、音響信号処理装置111への音響信号の入力が停止されたとき終了する。
【0039】
ステップS1において、ハイパスフィルタ121L,122Rは、音響信号の高域成分を抽出する。すなわち、ハイパスフィルタ121Lは、音響信号SLinの高域成分を抽出し、抽出した高域成分からなる音響信号SL1を信号処理部123に供給する。また、ハイパスフィルタ121Rは、音響信号SRinの高域成分を抽出し、抽出した高域成分からなる音響信号SR1を信号処理部123に供給する。
【0040】
ステップS2において、信号処理部123は、抽出された高域成分が仮想スピーカから仮想的に出力されるように信号処理を行う。すなわち、信号処理部123は、音響信号SL1,SR1に基づく音をスピーカ112L,112Rから出力したときに、仮想スピーカ151L,151Rから出力されたようにリスナー152が聴感上感じるように、音響信号SL1,SR1に対して所定の信号処理を行う。換言すれば、信号処理部123は、音響信号SL1,SR1に基づく音の仮想的な音源が仮想スピーカ151L,151Rの位置になるように、音響信号SL1,SR1に対して所定の信号処理を行う。そして、信号処理部123は、得られた音響信号SL3,SR3を合成部124に供給する。
【0041】
なお、このとき行われる信号処理には、任意の手法を採用することができる。ここで、その一例について説明する。
【0042】
まず、信号処理部123は、音響信号SL1,SR1に対してバイノーラル化処理を行う。具体的には、信号処理部123は、仮想スピーカ151Lの位置に実際にスピーカを設置し、そこから音響信号SL1を出力した際に、リスニング位置Pにいるリスナー152の左右の耳に届く信号を生成する。すなわち、信号処理部123は、仮想スピーカ151Lの位置からリスナー152の耳元までの音響伝達関数(HRTF)を、音響信号SL1に重畳演算する処理を行う。
【0043】
音響伝達関数は、リスナーに音像を知覚させたい位置からリスナーの耳元までの音響インパルス応答である。1つのリスニング位置に対して、リスナーの左耳元までの音響伝達関数HLおよび右耳元までの音響伝達関数HRの2つが存在する。そして、仮想スピーカ151Lの位置に関する音響伝達関数をそれぞれHLL、HLRとすると、リスナーの左耳に直接届く直接音に対する音響信号SL1Lbは、音響信号SL1に音響伝達関数HLLを重畳することにより得られる。同様に、リスナーの右耳に直接届く直接音に対する音響信号SL1Rbは、音響信号SL1に音響伝達関数HLRを重畳することにより得られる。具体的には、音響信号SL1Lb,SL1Rbは、次式(1)および次式(2)により求められる。
【0044】
【数1】

【0045】
なお、nはサンプルの番号、dLLは音響伝達関数HLLの次数、dLRは音響伝達関数HLRの次数を表している。
【0046】
同様に、信号処理部123は、仮想スピーカ151Rの位置に実際にスピーカを設置し、そこから音響信号SR1を出力した際に、リスニング位置Pにいるリスナー152の左右の耳に届く信号を生成する。すなわち、信号処理部123は、仮想スピーカ151Rの位置からリスナー152の耳元までの音響伝達関数(HRTF)を、音響信号SR1に重畳演算する処理を行う。
【0047】
すなわち、仮想スピーカ151Rの位置に関する音響伝達関数をそれぞれHRL、HRRとすると、リスナーの左耳に直接届く直接音に対する音響信号SR1Lbは、音響信号SR1に音響伝達関数HRLを重畳することにより得られる。同様に、リスナーの右耳に直接届く直接音に対する音響信号SR1Rbは、音響信号SR1に音響伝達関数HRRを重畳することにより得られる。具体的には、音響信号SR1Lb、SR1Rbは、次式(3)および次式(4)により求められる。
【0048】
【数2】

【0049】
なお、dRLは音響伝達関数HRLの次数、dRRは音響伝達関数HRRの次数を表している。
【0050】
このようにして求められた音響信号SL1Lb、音響信号SR1Lbを次式(5)のように加算した信号を音響信号SLbとする。また、音響信号SL1Rb、音響信号SR1Rbを次式(6)のように加算した信号を音響信号SRbとする。
【0051】
SLb[n]=SL1Lb[n]+SR1Lb[n] ・・・(5)
SRb[n]=SL1Rb[n]+SR1Rb[n] ・・・(6)
【0052】
次に、信号処理部123は、音響信号SRbおよび音響信号SLbに対し、スピーカ再生のためのクロストークを除去する処理(クロストークキャンセラ)を実行する。すなわち、信号処理部123は、音響信号SLbに基づく音がリスナー152の左耳だけに届き、音響信号SRbに基づく音がリスナー152の右耳だけに届くように、音響信号SLb,SRbを加工する。その結果、得られる音響信号が、音響信号SL3,SR3となる。
【0053】
ステップS3において、ローパスフィルタ122L,122Rは、音響信号の中低域成分を抽出する。すなわち、ローパスフィルタ122Lは、音響信号SLinの中低域成分を抽出し、抽出した中低域成分からなる音響信号SL2を合成部124に供給する。また、ローパスフィルタ122Rは、音響信号SRinの中低域成分を抽出し、抽出した中低域成分からなる音響信号SR2を合成部124に供給する。
【0054】
なお、ステップS1およびS2の処理とステップS3の処理とは、並行して実行される。
【0055】
ステップS4において、合成部124は、音響信号を合成する。具体的には、合成部124は、音響信号SL2と音響信号SL3を合成し、音響信号SL4を生成する。また、合成部124は、音響信号SR2と音響信号SR3を合成し、音響信号SR4を生成する。そして、合成部124は、生成した音響信号SL4,SR4を出力制御部125に供給する。
【0056】
ステップS5において、出力制御部125は、音響信号を出力する。具体的には、出力制御部125は、音響信号SL4をスピーカ112Lに出力し、音響信号SR4をスピーカ112Rに出力する。そして、スピーカ112Lは、音響信号SL4に基づく音を出力し、スピーカ112Rは、音響信号SR4に基づく音を出力する。
【0057】
その結果、リスナー152は、ローパスフィルタ122L,122Rにより抽出された中低域成分の音(以下、中低域音と称する)がスピーカ112L,112Rから出力され、ハイパスフィルタ121L,121Rにより抽出された高域成分の音(以下、高域音と称する)が仮想スピーカ151L,151Rから出力されているように聴感上感じる。
【0058】
その後、音響信号処理は終了する。
【0059】
[本発明の効果]
ここで、図4および図5を参照して、本発明の効果について説明する。
【0060】
一般的に、音源からマイクロホンに直接到達する直接音は、音源がマイクロホンに近づくほどレベル(音圧レベルまたは音量レベル)が高くなり、音源がマイクロホンから遠ざかるほどレベルが低くなる。一方、反射等により音源からマイクロホンに間接的に到達する間接音のレベルは、直接音と比較して、音源とマイクロホンとの間の距離による変動は少ない。
【0061】
従って、マイクロホンから近い距離にある音源から発せられ、いわゆるオンマイクで収録される音(例えば、人物の台詞など)である手前側音声は、直接音が占める比率が高くなり、間接音が占める比率が低くなる。一方、マイクロホンから遠い距離にある音源から発せられ、いわゆるオフマイクで収録される音(例えば、自然環境音など)である奥行き側音声は、間接音が占める比率が高くなり、直接音が占める比率が低くなる。また、ある程度の距離の範囲内においては、音源がマイクロホンから離れるほど、間接音が占める比率が高くなり、直接音が占める比率が低くなる。
【0062】
ちなみに、例えば、映画などで、オンマイクで収録された効果音を遠くから聞こえるようにするために、オフマイクで収録されたような音作りをして、他の音とミックスする場合がある。
【0063】
また、手前側音声のレベルと奥行き側音声のレベルの相対関係にもよるが、一般的に、手前側音声は、奥行き側音声と比較してレベルが高くなる。
【0064】
さらに、音源がマイクロホンから離れるほど、高域のレベルの低下が大きくなる傾向がある。従って、手前側音声の周波数分布では、レベルの落ち込みはほとんど発生しないが、奥行き側音声の周波数分布では、高域のレベルの落ち込みが発生する。その結果、手前側音声と奥行き側音声を比較すると、中低域よりも高域のレベル差が相対的に大きくなる。
【0065】
また、上述したように、直接音の方が間接音に比べて、距離に対するレベルの低下が大きい。従って、奥行き側音声において、直接音の方が間接音に比べて、高域のレベルの落ち込みが大きくなる。その結果、奥行き側音声において、直接音に対して間接音が占める比率は、中低域よりも高域の方が相対的に高くなる。
【0066】
さらに、間接音は、様々な方向からほぼランダムな時間にマイクロホンに到達する。従って、間接音は、左右の相関が低い音となる。
【0067】
なお、このような手前側音声と奥行き側音声、および、直接音と間接音の物理的な特性は、従来の音声フォーマットでも、ほぼそのまま保存される。例えば、間接音は、2チャンネル以上の多チャンネルの音響信号に、左右の相関関係が低い成分として含まれる。
【0068】
上述したように、仮想スピーカ151L,151Rから仮想的に出力される高域音の音像(以下、高域音像と称する)は、スピーカ112L,112Rから出力される中低域音の音像(以下、中低域音像と称する)より、奥行き方向においてリスニング位置Pに近い位置に定位する。
【0069】
従って、高域成分を多く含む音ほど、仮想スピーカ151L,151Rによる高域音像のリスナー152に対する作用が大きくなり、リスナー152が感じる音像の位置が、リスナー152に近づく方向に移動する。これにより、リスナー152は、高域成分を多く含む音ほど、より近くで鳴っているように感じるようになり、その結果、一般的に高域成分を多く含む手前側音声を、高域成分が少ない奥行き側音声より近く感じるようになる。
【0070】
また、リスナーの両耳に到達する音響信号の相互相関が、リスナーが感じる音像の距離感に影響を与えることが知られている。
【0071】
具体的には、両耳に到達する音響信号の相互相関を表す指標の1つに、音の広がり感や空間的印象などを表すパラメータとして用いられるIACC(Inter-Aural Cross Correlation、両耳間相互相関度)がある。IACCは、両耳に到達する音響信号の違いを表す相互相関関数が、左右の音響信号の遅れ時間が1msec以下の範囲内で最大となる値を表す。
【0072】
そして、IACCが0以上の範囲において、IACCが小さくなるほど、すなわち、両耳に入る音響信号の相関が小さくなるほど、リスナーが感じる音像の距離が遠くなり、音が遠くに聞こえるようになることが知られている。
【0073】
このIACCは、例えば、直接音に対する間接音のエネルギー比率(R/D比)により変動する。すなわち、上述したように間接音は左右の相関が低いため、R/D比が大きくなるほど、IACCは小さくなる。従って、R/D比が大きくなるほど、リスナーが感じる音像の距離が遠くなり、音が遠くに聞こえるようになる。
【0074】
これは、例えば、リスナーに到達する直接音のエネルギーは、音源からの距離の自乗にほぼ比例して減衰する。一方、リスナーに到達する間接音のエネルギーの音源からの距離に対する減衰率は、直接音と比べて小さい。その結果、音源が遠くなるほど、直接音に対する間接音のエネルギー比率(R/D比)が高くなることからも明らかである。
【0075】
また、IACCは、例えば、間接音の到来方向によっても変動する。
【0076】
図4は、図5に示されるように、リスナー152の正面から到来する直接音に対する反射音(間接音)の水平方向の入射角θを変化させながらIACCを測定した結果の一例を示している。なお、図4のIACCは、反射音の振幅を直接音の1/2に設定し、反射音が直接音から約6msec遅れてリスナー152の耳に到達する条件で測定したものである。また、図4の横軸は、反射音の入射角θを示し、縦軸はIACCを示している。
【0077】
この測定結果から、反射音の入射角θが大きくなるほどIACCが小さくなることが分かる。すなわち、間接音と直接音の到来方向の差が大きくなり、間接音がよりリスナー152の側方から到来するほど、IACCが小さくなる。その結果、リスナー152が感じる音像の距離が遠くなり、音が遠くに聞こえるようになる。これは、複数のリスナーによる聴感実験でも実証されている。
【0078】
ここで、リスナー152は、仮想スピーカ151L,151Rから仮想的に出力される高域音が、スピーカ112L,112Rから出力される中低域音より外側から到来するように感じる。この高域音には、間接音の高域成分も含まれる。
【0079】
従って、間接音の比率が高い音ほど、IACCが小さくなり、リスナー152が感じる音像の位置が、リスナー152から遠ざかる方向に移動する。これにより、リスナー152は、間接音の比率が高い音ほど、より遠くで鳴っているように感じるようになり、その結果、間接音の比率が高い奥行き側音声を、間接音の比率が低い手前側音声より遠く感じるようになる。
【0080】
以上をまとめると、リスナー152は、仮想スピーカ151L,151Rによる高域音像の作用により、高域成分をより多く含む音ほど近くで鳴っているように感じる。また、リスナー152は、中低域音と高域音の到来方向との差により、間接音をより多く含む音ほど遠くで鳴っているように感じる。
【0081】
その結果、リスナー152は、高域成分を多く含み、間接音の比率が低い手前側音声の音像を近くに感じ、高域成分が少なく、間接音の比率が高い奥行き側音声の音像を遠くに感じる。また、リスナー152が感じる各音の音像の奥行き方向の位置は、各音に含まれる高域成分の量および間接音の比率により変化する。従って、各音の音像が奥行き方向に広がり、リスナー152が感じる音の奥行き感が豊かになる。
【0082】
なお、ラウドネス曲線に表されるように、一般的に、人は低音量時の音よりも高音量時の高域成分の音に対する感度が高い。従って、仮想スピーカ151L,151Rから仮想的に出力される高域音によりもたらされる手前側音声(通常高音量)の効果は、ラウドネス効果により強調される。
【0083】
[スピーカおよび仮想スピーカの配置]
次に、図6および図7を参照して、スピーカ112L,112R、および、仮想スピーカ151L,151Rの配置の例について説明する。
【0084】
上述したように、スピーカ112L,112R、および、仮想スピーカ151L,151Rは、条件1乃至3を満たすように配置される。図6は、この条件を満たすスピーカ112L,112R、および、仮想スピーカ151L,151Rの配置の例を示している。
【0085】
まず、スピーカ112L,112Rは、リスニング位置Pの前にリスニング位置Pに対してほぼ左右対称に配置されている。
【0086】
また、図内の直線L1は、スピーカ112Lとスピーカ112Rの前面を通る直線である。直線L2は、リスニング位置Pを通り、直線L1に平行な直線である。領域A1は、スピーカ112L、スピーカ112R、および、リスニング位置Pを結ぶ領域である。領域A2Lは、直線L1と直線L2の間のリスニング位置Pより左側の領域であって、領域A1を除く領域である。領域A2Rは、直線L1と直線L2の間のリスニング位置Pより右側の領域であって、領域A1を除く領域である。
【0087】
そして、リスニング位置Pに対してほぼ左右対称になるように、仮想スピーカ151Lを領域A2L内に配置し、仮想スピーカ151Rを領域A2R内に配置することにより、上記の条件1乃至3を満たすことができる。
【0088】
ただし、仮想スピーカ151L,151Rの位置がスピーカ112L,112Rから遠くなりすぎると、リスナー152の耳に到達する中低域音と高域音の時間差が大きくなりすぎて、リスナー152が違和感を覚えるおそれがある。
【0089】
そこで、さらに、図7の領域A11Lおよび領域A11R内に、仮想スピーカ151L,151Rを配置するようにすることが望ましい。
【0090】
領域A11Lは、領域A2L内であって、リスニング位置Pからの距離がリスニング位置Pからスピーカ112Lまでの距離の範囲内となる領域である。従って、領域A11Lは、リスニング位置Pを中心とし、リスニング位置Pからスピーカ112Lまでの距離を半径とする扇形の領域となる。また、領域A11Rは、領域A2R内であって、リスニング位置Pからの距離がリスニング位置Pからスピーカ112Rまでの距離の範囲内となる領域である。従って、領域A11Rは、リスニング位置Pを中心とし、リスニング位置Pからスピーカ112Rまでの距離を半径とする扇形の領域となる。なお、リスニング位置Pからスピーカ112Lまでの距離とスピーカ112Rまでの距離とはほぼ等しいので、領域A11Lと領域A11Rは、ほぼ左右対称な領域となる。
【0091】
そして、リスニング位置Pに対してほぼ左右対称になるように、仮想スピーカ151Lを領域A11L内に配置し、仮想スピーカ151Rを領域A11R内に配置するようにすればよい。これにより、仮想スピーカ151L,151Rは、スピーカ112L,112Rよりリスニング位置Pの近くに配置される。換言すれば、仮想スピーカ151Lとリスニング位置Pとの距離、および仮想スピーカ151Rとリスニング位置Pとの距離が、スピーカ112Lとリスニング位置Pとの距離、またはスピーカ112Rとリスニング位置Pとの距離より小さくなる。
【0092】
その結果、リスナー152の耳に到達する中低域音と高域音の時間差が大きくなりすぎることが防止される。さらに、リスニング位置Pに対して仮想スピーカ151L,151Rをスピーカ112L,112Rより近くに配置することにより、ハース効果によって、仮想スピーカ151L,151Rによる高域音像が、スピーカ112L,112Rによる中低域音像よりリスナー152に対してより優位に作用するようになる。その結果、手前側音声の音像をよりリスナー152の近くに定位させることができる。
【0093】
なお、仮想スピーカ151L,151Rを領域A1に近づけすぎると、リスニング位置Pにおける中低域音と高域音の到来方向の差が小さくなり、奥行き側音声に対する効果が減少する。また、仮想スピーカ151L,151Rを直線L2に近づけすぎると、高域音像と中低域音像との距離が離れすぎて、リスナー152が違和感を覚えるおそれがある。従って、仮想スピーカ151L,151Rを、領域A1および直線L2からなるべく離すように配置することが望ましい。
【0094】
<2.第2の実施の形態>
次に、図8を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0095】
[音響システムの構成例]
図8は、本発明を適用した音響システムの第1の実施の形態を示すブロック図である。
【0096】
図8の音響システム201は、仮想スピーカ151L,151Rの代わりに実際のスピーカ212L,212Rを用いるようにしたシステムである。なお、図中、図1と対応する部分には同じ符号を付してあり、処理が同じ部分については、その説明は繰り返しになるので適宜省略する。
【0097】
音響システム201は、音響信号処理装置211、スピーカ112L,112R、および、スピーカ212L,212Rを含むように構成される。また、スピーカ112L,112Rは、音響システム101と同じ位置に配置され、スピーカ212L,212Rは、音響システム101の仮想スピーカ151L,151Rと同じ位置に配置される。
【0098】
音響信号処理装置211は、ハイパスフィルタ121L,121R、ローパスフィルタ122L,122R、および、出力制御部221を含むように構成される。
【0099】
出力制御部221は、ハイパスフィルタ121Lから供給される音響信号SL1をスピーカ212Lに出力し、ハイパスフィルタ121Rから供給される音響信号SR1をスピーカ212Rに出力する。また、出力制御部221は、ローパスフィルタ122Lから供給される音響信号SL2をスピーカ112Lに出力し、ローパスフィルタ122Rから供給される音響信号SR2をスピーカ112Rに出力する。
【0100】
スピーカ112Lは、音響信号SL2に基づく音を出力し、スピーカ112Rは、音響信号SR2に基づく音を出力する。これにより、スピーカ112L,112Rから、ローパスフィルタ122L,122Rにより抽出された中低域音が出力される。
【0101】
スピーカ212Lは、音響信号SL1に基づく音を出力し、スピーカ212Rは、音響信号SR1に基づく音を出力する。これにより、スピーカ212L,212Rから、ハイパスフィルタ121L,121Rにより抽出された高域音が出力される。
【0102】
これにより、音響システム101と同様に、音の奥行き感を豊かにすることができる。
【0103】
<3.変形例>
以下、本発明の実施の形態の変形例について説明する。
【0104】
[変形例1]
本発明は、2チャンネルより大きいチャンネル数の音響信号を処理する場合にも適用することが可能である。なお、2チャンネルより大きいチャンネル数の音響信号を処理対象とする場合、必ずしも全てのチャンネルについて上述した音響信号処理を適用する必要はない。例えば、立体映像の視聴者から見て映像側にあるフロントの左右の2チャンネルの音響信号のみに適用したり、フロントの左右および中央の2.1チャンネルの音響信号のみに適用したりすることが考えられる。
【0105】
[変形例2]
また、音響信号処理装置111および音響信号処理装置211において、ローパスフィルタ122L,122Rを省略することも可能である。すなわち、スピーカ112L,112Rから、音響信号SLinおよび音響信号SRinに基づく音をそのまま出力するようにしてもよい。この場合、ローパスフィルタ122L,122Rを設けた場合と比較して、音像が少しぼやける可能性があるが、音の奥行き感を豊かにすることが可能である。
【0106】
[変形例3]
さらに、ハイパスフィルタ121L,121R、ローパスフィルタ122L,122Rの代わりに、イコライザなどを用いて、抽出する音響信号の帯域を変更できるようにしてもよい。
【0107】
なお、本発明は、例えば、オーディオアンプ、イコライザ等の音響信号の増幅や補正を行う装置、オーディオプレーヤ、オーディオレコーダ等の音響信号の再生または録音を行う装置、ビデオプレーヤ、ビデオレコーダ等の音響信号を含む映像信号の再生または録画を行う装置など、音響信号を処理し出力する装置に適用できる。また、本発明は、例えば、サラウンドシステムなど、上記の装置を含むシステムに適用することができる。
【0108】
[コンピュータの構成例]
上述した音響信号処理装置111および音響信号処理装置211の一連の処理は、ハードウエアにより実行することもできるし、ソフトウエアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行する場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、コンピュータにインストールされる。ここで、コンピュータには、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータや、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどが含まれる。
【0109】
図9は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータのハードウエアの構成例を示すブロック図である。
【0110】
コンピュータにおいて、CPU(Central Processing Unit)301,ROM(Read Only Memory)302,RAM(Random Access Memory)303は、バス304により相互に接続されている。
【0111】
バス304には、さらに、入出力インタフェース305が接続されている。入出力インタフェース305には、入力部306、出力部307、記憶部308、通信部309、及びドライブ310が接続されている。
【0112】
入力部306は、キーボード、マウス、マイクロフォンなどよりなる。出力部307は、ディスプレイ、スピーカなどよりなる。記憶部308は、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる。通信部309は、ネットワークインタフェースなどよりなる。ドライブ310は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリなどのリムーバブルメディア311を駆動する。
【0113】
以上のように構成されるコンピュータでは、CPU301が、例えば、記憶部308に記憶されているプログラムを、入出力インタフェース305及びバス304を介して、RAM303にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
【0114】
コンピュータ(CPU301)が実行するプログラムは、例えば、パッケージメディア等としてのリムーバブルメディア311に記録して提供することができる。また、プログラムは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供することができる。
【0115】
コンピュータでは、プログラムは、リムーバブルメディア311をドライブ310に装着することにより、入出力インタフェース305を介して、記憶部308にインストールすることができる。また、プログラムは、有線または無線の伝送媒体を介して、通信部309で受信し、記憶部308にインストールすることができる。その他、プログラムは、ROM302や記憶部308に、あらかじめインストールしておくことができる。
【0116】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【0117】
また、本明細書において、システムの用語は、複数の装置、手段などより構成される全体的な装置を意味するものとする。
【0118】
さらに、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0119】
101 音響システム, 111 音響信号処理装置, 112L,112R スピーカ, 121L,121R ハイパスフィルタ, 122L,122R ローパスフィルタ, 123 信号処理部, 124 合成部, 125 出力制御部, 151L,151R 仮想スピーカ, 201 音響システム, 211 音響信号処理装置, 212L,212R スピーカ, 221 出力制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のリスニング位置の前に前記リスニング位置に対して略左右対称に配置された第1のスピーカおよび第2のスピーカと、
前記リスニング位置を中心とした場合に、前記リスニング位置と各スピーカとを結ぶことによって形成される中心角が、前記リスニング位置と前記第1のスピーカおよび前記第2のスピーカとを結ぶことによって形成される中心角より大きくなり、かつ、前記リスニング位置の前後方向において前記第1のスピーカおよび前記第2のスピーカより前記リスニング位置に近くなるように前記リスニング位置の前に、前記リスニング位置に対して略左右対称に配置された第3のスピーカおよび第4のスピーカと、
入力音響信号の所定の第1の周波数以下の成分を減衰させる第1の減衰手段と、
前記入力音響信号に基づく音を前記第1のスピーカおよび前記第2のスピーカから出力し、前記入力音響信号の前記第1の周波数以下の成分を減衰させた第1の音響信号に基づく音を前記第3のスピーカおよび前記第4のスピーカから出力するように制御する出力制御手段と
を備える音響システム。
【請求項2】
前記入力音響信号の所定の第2の周波数以上の成分を減衰させる第2の減衰手段を
さらに備え、
前記出力制御手段は、前記入力音響信号の前記第2の周波数以上の成分を減衰させた第2の音響信号に基づく音を前記第1のスピーカおよび前記第2のスピーカから出力するように制御する
請求項1に記載の音響システム。
【請求項3】
前記第3のスピーカと前記リスニング位置との距離、および前記第4のスピーカと前記リスニング位置との距離が、前記第1のスピーカと前記リスニング位置との距離、または前記第2のスピーカと前記リスニング位置との距離より小さくなるように、前記第1乃至第4のスピーカが配置される
請求項1に記載の音響システム。
【請求項4】
前記第1の音響信号に基づく音が、仮想スピーカである前記第3のスピーカおよび仮想スピーカである前記第4のスピーカから仮想的に出力されるように前記第1の音響信号に対して所定の信号処理を行う信号処理手段を
さらに備える請求項1に記載の音響システム。
【請求項5】
入力音響信号の所定の周波数以下の成分を減衰させる減衰手段と、
所定のリスニング位置の前に前記リスニング位置に対して略左右対称に配置された第1のスピーカおよび第2のスピーカから前記入力音響信号に基づく音を出力し、前記リスニング位置を中心とした場合に、前記リスニング位置と第3のスピーカおよび第4のスピーカとを結ぶことによって形成される中心角が、前記リスニング位置と前記第1のスピーカおよび前記第2のスピーカとを結ぶことによって形成される中心角より大きくなり、かつ、前記リスニング位置の前後方向において前記第1のスピーカおよび前記第2のスピーカより前記リスニング位置に近くなるように前記リスニング位置の前に、前記リスニング位置に対して略左右対称に配置された前記第3のスピーカおよび前記第4のスピーカから前記入力音響信号の前記所定の周波数以下の成分を減衰させた音響信号に基づく音を出力するように制御する出力制御手段と
を備える音響信号処理装置。
【請求項6】
入力音響信号の所定の周波数以下の成分を減衰させ、
所定のリスニング位置の前に前記リスニング位置に対して略左右対称に配置された第1のスピーカおよび第2のスピーカから前記入力音響信号に基づく音を出力し、前記リスニング位置を中心とした場合に、前記リスニング位置と第3のスピーカおよび第4のスピーカとを結ぶことによって形成される中心角が、前記リスニング位置と前記第1のスピーカおよび前記第2のスピーカとを結ぶことによって形成される中心角より大きくなり、かつ、前記リスニング位置の前後方向において前記第1のスピーカおよび前記第2のスピーカより前記リスニング位置に近くなるように前記リスニング位置の前に、前記リスニング位置に対して略左右対称に配置された前記第3のスピーカおよび前記第4のスピーカから前記入力音響信号の前記所定の周波数以下の成分を減衰させた音響信号に基づく音を出力するように制御する
ステップを含む音響信号処理方法。
【請求項7】
入力音響信号の所定の周波数以下の成分を減衰させ、
所定のリスニング位置の前に前記リスニング位置に対して略左右対称に配置された第1のスピーカおよび第2のスピーカから前記入力音響信号に基づく音を出力し、前記リスニング位置を中心とした場合に、前記リスニング位置と第3のスピーカおよび第4のスピーカとを結ぶことによって形成される中心角が、前記リスニング位置と前記第1のスピーカおよび前記第2のスピーカとを結ぶことによって形成される中心角より大きくなり、かつ、前記リスニング位置の前後方向において前記第1のスピーカおよび前記第2のスピーカより前記リスニング位置に近くなるように前記リスニング位置の前に、前記リスニング位置に対して略左右対称に配置された前記第3のスピーカおよび前記第4のスピーカから前記入力音響信号の前記所定の周波数以下の成分を減衰させた音響信号に基づく音を出力するように制御する
ステップを含む処理をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate